説明

接触角計

【課題】液滴の平面視輪郭形状をより簡便な方法で接触角と共に測定可能な接触角計を提供する。
【解決手段】本発明に係る接触角計1は、試料2が載置されるステージ20と、試料2上の液滴4を側方から撮像して液滴4の接触角を測定する第1撮像装置30と、試料2上の液滴4を上方から撮像して液滴4の平面視輪郭形状を測定する第2撮像装置40と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体表面に対する液体のぬれ性を示す指標として用いられる接触角を測定する接触角計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体表面における液体の接触角は、一般的に平板状の固体の試料上に所定量の液体を滴下して側方から撮像することにより測定されている。すなわち、試料上の液滴を側方からCCDカメラ等により撮像し、これにより得られた液滴の側面の画像に基づいて、液滴が試料表面と接する部分の角度を算出する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように、液滴を側方から撮像する場合、例えば液滴の背後から照明することにより、コントラストのはっきりした液滴のシルエット画像を得ることができる。このため、撮像した画像から比較的容易に接触角を算出することが可能であり、液滴を側方から撮像して接触角を求める接触角計は、簡便な装置として広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−277373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような液滴を側方から撮像する接触角計では、液滴の平面視の輪郭形状が真円形であると仮定した上で接触角を測定している。しかしながら、液滴の平面視輪郭形状は、必ずしも真円形になるわけではなく、固体表面の性状によっては楕円形やいびつな形状となる場合があり、これが接触角測定のバラツキの要因の1つとなっている。
【0006】
このため、近年の各種新材料や表面コーティング等の開発分野においては、液滴の平面視輪郭形状を考慮することにより、接触角の測定値をより厳密に評価したいという要望が生じてきている。また、接触角と液滴の平面視輪郭形状を同時に評価することにより、固体表面の性状をより多角的に評価したいという要望も生じてきている。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、液滴の平面視輪郭形状をより簡便な方法で接触角と共に測定可能な接触角計を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、試料が載置されるステージと、前記試料上の液滴を側方から撮像して前記液滴の接触角を測定する第1撮像装置と、前記試料上の液滴を上方から撮像して前記液滴の平面視輪郭形状を測定する第2撮像装置と、を備えることを特徴とする、接触角計である。
【0009】
(2)本発明はまた、前記第2撮像装置の光軸を中心とする円環状の光源を備え、前記第2撮像装置によって前記液滴を撮像する場合に前記液滴を照明する照明装置をさらに備えることを特徴とする、上記(1)に記載の接触角計である。
【0010】
(3)本発明はまた、前記照明装置は、前記第2撮像装置の光軸を中心とすると共に上から下に向けて漸次径が拡大する笠状の光放射面を備え、前記光放射面の内側に光を放射することを特徴とする、上記(2)に記載の接触角計である。
【0011】
(4)本発明はまた、前記照明装置は、前記液滴の上方から前記液滴に向けて収束する方向に光を照射するように構成されることを特徴とする、上記(3)に記載の接触角計である。
【0012】
(5)本発明はまた、前記照明装置は、前記第2撮像装置の光軸を中心とする円筒状の光放射面を備え、前記光放射面の内側に光を放射することを特徴とする、上記(2)に記載の接触角計である。
【0013】
(6)本発明はまた、前記照明装置は、前記液滴の側方の全周囲から前記液滴に向けて前記光軸に直交する方向に光を照射するように構成されることを特徴とする、上記(5)に記載の接触角計である。
【0014】
(7)本発明はまた、前記照明装置は、前記試料表面に対して所定の隙間を空けて配置されることを特徴とする、上記(2)乃至(6)のいずれかに記載の接触角計である。
【0015】
(8)本発明はまた、前記第2撮像装置は、同軸落射照明装置を備えることを特徴とする、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の接触角計である。
【0016】
(9)本発明はまた、前記第1撮像装置および前記第2撮像装置によって撮像した画像を処理する画像処理装置をさらに備え、前記画像処理装置は、前記試料上の前記液滴を前記第1撮像装置によって撮像した液滴側面画像に基づいて接触角を導出する接触角導出手段と、前記試料上の前記液滴を前記第2撮像装置によって撮像した液滴平面画像に基づいて前記液滴の平面視輪郭形状を導出する形状導出手段と、を備えることを特徴とする、上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の接触角計である。
【0017】
(10)本発明はまた、前記形状導出手段は、前記液滴平面画像の各画素を他の画素と比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果に基づいて前記液滴平面画像の各画素が前記液滴の平面視輪郭形状を示しているか否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする、上記(9)に記載の接触角計である。
【0018】
(11)本発明はまた、前記比較手段は、前記液滴平面画像の各画素を、前記試料上に前記液滴がない状態を上方から撮像した基準平面画像における同一位置の画素と比較することを特徴とする、上記(10)に記載の接触角計である。
【0019】
(12)本発明はまた、前記比較手段は、前記液滴平面画像の各画素を、前記液滴平面画像における周囲の画素と比較することを特徴とする、上記(10)に記載の接触角計である。
【0020】
(13)本発明はまた、前記画像処理装置は、前記試料上の前記液滴を前記第1撮像装置によって撮像した液滴幅導出用画像に基づいて前記液滴の幅方向寸法を導出する液滴幅導出手段をさらに備え、前記形状導出手段は、前記液滴幅導出手段が導出した前記液滴の幅方向寸法に基づいて前記比較手段が比較する画素の範囲を設定する比較範囲設定手段をさらに備えることを特徴とする、上記(10)乃至(12)のいずれかに記載の接触角計である。
【0021】
(14)本発明はまた、前記判定手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記液滴平面画像の各画素が前記液滴内において前記液滴の平面視輪郭形状と相似形に生じた光輪の形状を示しているか否かを判定し、前記形状導出手段は、前記光輪の形状を拡大することで前記液滴の平面視輪郭形状を導出する拡大手段をさらに備えることを特徴とする、上記(10)乃至(12)のいずれかに記載の接触角計である。
【0022】
(15)本発明はまた、前記判定手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記液滴平面画像の各画素が前記液滴内において前記液滴の平面視輪郭形状と相似形に生じた光輪の形状を示しているか否かを判定し、前記形状導出手段は、前記液滴幅導出手段が導出した前記液滴の幅方向寸法に基づいて前記光輪の形状を拡大することで、前記液滴の平面視輪郭形状を導出する拡大手段をさらに備えることを特徴とする、上記(13)に記載の接触角計である。
【0023】
(16)本発明はまた、前記画像処理装置は、前記ステージ上に載置した校正用標準試料を前記第1撮像装置によって撮像した校正用側面画像、または前記ステージ上に載置した前記校正用標準試料を前記第2撮像装置によって撮像した校正用平面画像に基づいて、校正を行う校正手段をさらに備えることを特徴とする、上記(9)乃至(15)のいずれかに記載の接触角計である。
【0024】
(17)本発明はまた、前記校正手段は、前記校正用側面画像に基づいて前記第1撮像装置によって撮像した画像における1画素の寸法を校正し、前記校正用平面画像に基づいて前記第2撮像装置によって撮像した画像における1画素の寸法を校正する画素寸法校正手段を備えることを特徴とする、上記(16)に記載の接触角計である。
【0025】
(18)本発明はまた、前記校正手段は、前記校正用側面画像および前記校正用平面画像に基づいて、前記第1撮像装置によって撮像した画像および前記第2撮像装置によって撮像した画像における位置の対応関係を校正する位置関係校正手段を備えることを特徴とする、上記(16)または(17)に記載の接触角計である。
【0026】
(19)本発明はまた、前記校正用標準試料は、平板と、前記平板の表面から突出する部分球状の突出部と、から構成されることを特徴とする、上記(16)乃至(18)のいずれかに記載の接触角計である。
【0027】
(20)本発明はまた、前記校正用標準試料は、前記平板に円形断面且つテーパ状の貫通孔が形成されており、前記貫通孔の小径側の開口から一部を突出させた状態で球体が固定されることで前記突出部が形成されることを特徴とする、上記(19)に記載の接触角計である。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る接触角計によれば、液滴の平面視輪郭形状をより簡便な方法で接触角と共に測定することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る接触角計の概略図である。
【図2】(a)〜(c)第2照明装置の構成を示した概略図である。
【図3】画像処理装置の主な機能構成を示したブロック図である。
【図4】(a)〜(c)校正用標準試料を示した概略図である。
【図5】校正手順の流れを示したフローチャートである。
【図6】(a)および(b)校正において撮像する画像を示した概略図である。
【図7】測定手順の流れを示したフローチャートである。
【図8】画像処理の手順の流れを示したフローチャートである。
【図9】(a)および(b)接触角導出手段による接触角の導出の概要を示した概略図である。
【図10】接触角の導出手順の流れを示したフローチャートである。
【図11】形状導出手段による平面視輪郭形状の導出の概要を示した概略図である。
【図12】平面視輪郭形状の導出手順の流れを示したフローチャートである。
【図13】液滴平面画像のみから平面視輪郭形状を導出する場合を示した概略図である。
【図14】液滴平面画像のみから平面視輪郭形状を導出する場合の手順の流れを示したフローチャートである。
【図15】(a)および(b)第1照明装置を使用して第2撮像装置による撮像を行う場合の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0031】
まず、本発明の実施の形態に係る接触角計について説明する。図1は、本実施形態に係る接触角計1の概略図である。接触角計1は、平板状の個体試料2上に滴下した液体試料の液滴4を撮像して液滴4の接触角および平面視輪郭形状を測定するものである。
【0032】
同図に示されるように、接触角計1は、ベース10と、ベース10上に配置されたステージ20と、ステージ20の側方に配置された第1撮像装置30と、ステージ20の上方に配置された第2撮像装置40と、第1撮像装置30の反対側のステージ20の側方に配置された第1照明装置50と、ステージ20と第2撮像装置40の間に配置された第2照明装置60と、第2照明装置60の上方に配置されたディスペンサ70と、コンピュータ100と、を備えて構成されている。
【0033】
ベース10は、ステージ20、第1撮像装置30、第2撮像装置40、第1照明装置50、第2照明装置60およびディスペンサ70等を支持する部材である。本実施形態では、これらの装置はブラケット12、14等を介して適宜の位置に配置されている。また、ベース10は、透明な素材から構成されてこれらの装置全体を覆うカバー16を備えており、温度や湿度等の測定雰囲気を一定に保つことができるようになっている。また、ベース10は、ステージ20上面の水平度を維持するために、高さ調整機構を備えた脚部18を備えている。
【0034】
ステージ20は、固体試料2が上面に載置される所謂X−Yステージであり、水平面内の2方向(X、Y方向)に移動して固体試料2の水平方向の位置を調整することができるように構成されている。さらに、本実施形態では、ステージ20は、昇降可能(すなわちZ方向に移動可能)に構成されると共に、載置された固体試料2を垂直方向を軸として回転可能に構成されている。従って、様々な方向から固体試料2上の液滴4を観測することが可能となっている。なお、さらに、ステージ20の上面を所定の角度に傾斜させることが可能となるように構成してもよい。
【0035】
第1撮像装置30は、固体試料2上の液滴4を側方から撮像するものであり、本実施形態では、拡大レンズ系を備えるCCDカメラから構成されている。第1撮像装置30は、コンピュータ100に制御されて固体試料2上の液滴4を拡大して撮像し、画像データをコンピュータ100に送信する。コンピュータ100は、第1撮像装置30から受信した画像データをハードディスク等の所定の記憶手段(図示省略)に記憶して保存する。
【0036】
第2撮像装置40は、固体試料2上の液滴4を上方から撮像するものであり、本実施形態では、テレセントリックレンズを備えるCCDカメラから構成されている。また、本実施形態の第2撮像装置40は、例えばハロゲンランプを光源とする同軸落射照明装置42を備えている。第2撮像装置40は、コンピュータ100に制御されて固体試料2上の液滴4を拡大して撮像し、画像データをコンピュータ100に送信する。コンピュータ100は、受信した画像データをハードディスク等の所定の記憶手段に保存する。
【0037】
第1照明装置50は、第1撮像装置30によって固体試料2上の液滴4を撮像する場合に液滴4を背後から照明するものである。第1照明装置50は、例えばハロゲンランプやLED等の光源を備え、ステージ20上の固体試料2および液滴4に向けて光を放射するように構成されている。
【0038】
第2照明装置60は、円環状の光源を備え、第2撮像装置40によって固体試料2上の液滴4を撮像する場合にやや上方の全周囲から液滴4を照明するものである。従って、本実施形態では、第2撮像装置40によって撮像を行う場合に、同軸落射照明装置42または第2照明装置60のいずれかを使用することができるようになっている。本実施形態では、このように2つの異なる方式の照明装置を適宜に使い分けることにより、固体試料2上の液滴4を上方から撮像する場合に、固体試料2の表面の状態(特に光の反射特性)によらず、液滴4の鮮明な画像を得ることができるようになっている。
【0039】
図2(a)〜(c)は、第2照明装置60の構成を示した概略図である。なお、同図(a)は第2照明装置60の平面図であり、同図(b)および(c)は第2照明装置60の側断面図である。同図(a)に示されるように、第2照明装置60は、円筒状の筐体62の内部に複数のLED64を円周上に配列して構成した光源65を備えて構成されている。筐体62の中央には孔部66が形成されており、第2撮像装置40による撮像は、この孔部66を通して行われる。
【0040】
同図(b)に示されるように、光源65を構成するLED64は、上下2段に配置されると共に、内側やや下方に向けられている。そして、LED64の前方(光源65の内側)には、上から下に向けて漸次径が拡大する笠状の拡散板68が配置されており、この拡散板68の内側面が内側に向けて光を放射する光放射面となっている。この拡散板68には、光源65の光を適宜に拡散させるような表面処理が施されている。
【0041】
第2照明装置60は、光源65および拡散板68が第2撮像装置40の光軸Sを中心(軸心)とする位置に配置される。また、第2照明装置60は、第1撮像装置30による撮像に影響しないように、ステージ20上の固体試料2から隙間Hを開けた位置に配置される。従って、光源65が発せられる光は、拡散板68から下方の液滴4に向けて収束する方向に照射される。
【0042】
なお、拡散板68の光軸Sに対する傾斜角度は、特に限定されるものではなく、固体試料2の光の反射特性等に応じて適宜に設定することができる。また、同図(c)に示されるように、拡散板68が光軸Sと平行となるようにしてもよい。すなわち、拡散板68を円筒状に構成し、光放射面となる内側面から内側に向けて光軸Sと直交する方向に光を放射するようにしてもよい。
【0043】
また、第2照明装置60と固体試料2の間の隙間Hは、特に限定されるものではなく、拡散板68の傾斜角度や、固体試料2および液滴4の状態に応じて適宜に設定することができる。本実施形態では、第2照明装置60を昇降可能に構成しており、液滴4の撮像状態に応じて隙間Hを調節することができるようになっている。また、同図(c)に示すように、第2照明装置60を固体試料2に当接させた状態で第2撮像措置による撮像を行うことも可能となっている。なお、この場合において、第1撮像装置30による撮像を行うときには、第2照明装置60を上方に待避させる。
【0044】
図1に戻って、ディスペンサ70は、上方から固体試料2上に液体試料を滴下して液滴4を形成するものである。ディスペンサ70は、コンピュータ100に制御されて管状の針72の先端から所定量の液滴を滴下するように構成されている。また、ディスペンサ70は、コンピュータ100に制御されて昇降し、針72の先端をステージ20上の固体試料に近接離隔させることが可能に構成されている。
【0045】
ディスペンサ70は、第1撮像装置30および第2撮像装置40による撮像を行う前に、上方の待避位置から下降して針72の先端を固体試料2上面に近づけ、適量の液体試料を固体試料2上に滴下し、その後上昇して待避位置に戻る。本実施形態では、ディスペンサ70を垂直方向に対して斜めに配置すると共に、針72を途中で曲折させて先端部分が略鉛直方向に沿うようにしている。このようにすることで、針72の先端部分を固体試料2に対して垂直に対向させ、直上から液滴を滴下可能としながらも、第2撮像装置40による撮像を行う場合に、針72からピントを外して画像中に針72が映り込まないようにしている。
【0046】
なお、ディスペンサ70により滴下される液体試料としては、主に純水が使用されるが、測定の目的によってはアルコール類や油脂類等を使用するようにしてもよいし、ハンダ等の液体金属を使用するようにしてもよい。
【0047】
コンピュータ100は、図示は省略するが、CPUと、ROM、RAMおよびハードディスク等の記憶手段と、液晶ディスプレイ等の表示手段と、キーボードおよびマウス等の入力手段と、を備えて構成されている。また、コンピュータ100は、記憶手段にインストールされたプログラムを実行することにより実現される機能構成として制御装置110と、画像処理装置120と、を備えている。
【0048】
制御装置110は、ステージ20、第1撮像装置30、第2撮像装置40、第1照明装置50、第2照明装置60およびディスペンサ70等を制御するものである。そして、画像処理装置120は、第1撮像装置30および第2撮像装置40により撮像した画像を処理するものである。なお、本実施形態では、制御装置110および画像処理装置120をプログラムの実行によって実現しているが、これらの装置を専用の回路から構成するようにしてもよい。
【0049】
図3は、画像処理装置120の主な機能構成を示したブロック図である。同図に示されるように、画像処理装置120は、接触角導出手段130と、形状導出手段140と、校正手段150と、液滴幅導出手段160と、を備えて構成されている。
【0050】
接触角導出手段130は、第1撮像装置30によって固体試料2上の液滴4を側方から撮像した画像(以下、液滴側面画像)について画像処理を行うことにより、接触角を導出するものである。接触角導出手段130は、液滴側面画像の各画素を他の画素と比較する比較手段132と、比較手段132の比較結果に基づいて、液滴側面画像の各画素が液滴4(および固体試料2)の側面視輪郭形状を示すものであるか否かを判定する判定手段134と、を備えている。
【0051】
形状導出手段140は、第2撮像装置40によって固体試料2上の液滴4を上方から撮像した画像(以下、液滴平面画像)について画像処理を行うことにより、液滴4の平面視輪郭形状を導出すると共に、導出した平面視輪郭形状を評価するための各種パラメータ等を算出するものである。
【0052】
形状導出手段140は、液滴平面画像の各画素を他の画素と比較する比較手段142と、比較手段142の比較結果に基づいて、液滴平面画像の各画素が液滴の平面視輪郭形状を示すものであるか否かを判定する判定手段144と、液滴平面画像において比較手段142が比較する画素の範囲を設定する比較範囲設定手段146と、備えている。また、形状導出手段140は、液滴平面画像において液滴4の内部に生じた光輪の形状に基づいて平面視輪郭形状を導出する場合(詳細は後述する)に、光輪の形状を拡大して平面視輪郭形状とする拡大手段148を備えている。
【0053】
なお、接触角導出手段130の比較手段132と形状導出手段140の比較手段142は、同一のプログラムにより実現するようにしてもよいし、それぞれ専用のプログラムにより実現するようにしてもよい。この点は、接触角導出手段130の判定手段134と形状導出手段140の判定手段144についても同様である。
【0054】
校正手段150は、事前に画像処理装置120の校正を行うためのものである。校正手段150は、液滴側面画像および液滴平面画像における1画素の寸法を校正(設定)する画素寸法校正手段152と、液滴側面画像および液滴平面画像における位置の対応関係を校正(設定)する位置関係校正手段154と、を備えている。
【0055】
液滴幅導出手段160は、液滴側面画像に基づいて液滴4の幅方向寸法を導出するものである。形状導出手段140の比較範囲設定手段146は、液滴幅導出手段160が導出した液滴4の幅方向寸法に基づいて比較範囲を設定する。なお、液滴幅導出手段160は、本実施形態のように独立して設けてもよいし、接触角導出手段130が備える1機能として設けてもよい。
【0056】
接触角計1は、また、画像処理装置120の校正において使用される校正用標準試料80を備えている。図4(a)〜(c)は、校正用標準試料80を示した概略図である。なお、同図(a)は校正用標準試料80の平面図であり、同図(b)は校正用標準試料80の正面図であり、同図(c)は校正用標準試料80の断面の一部を拡大して示した断面図である。
【0057】
同図(a)および(b)に示されるように、校正用標準試料80は、固体試料2を模した平板82と、液滴4を模した部分球状の突出部84と、からなり、平板82の表面(上面82a)から球体の少なくとも一部を突出させた形状に構成されている。同図(c)に示されるように、突出部84は、平板82に設けたテーパ状の固定孔86内に球体88を挿入し、上面82aから一部を突出させた状態で固定することにより形成される。
【0058】
固定孔86は、円形断面で下面82bから上面82aに向けて漸次内径が縮小するように形成されており、球体88を下面82b側から挿入することにより上面82a側に所定の突出量で固定することができるように形成されている。球体88は、例えば接着剤89により固定孔86に固定される。なお、平板82の下面82b側に固定孔86を塞ぐカバーを設けるようにしてもよい。
【0059】
校正用標準試料80は、突出部84の直径(液滴幅)d、半径r、高さhおよび接触角θが所定の値になるように設定されている。画像処理装置120の校正手段150は、第1撮像装置30によって校正用標準試料80を撮像した画像(以下、校正用側面画像)、および第2撮像装置40によって校正用標準試料80を撮像した画像(以下、校正用平面画像)に基づいて校正を行う。
【0060】
校正用標準試料80を校正する平板82および球体88の材質は、特に限定されるものではないが、第1撮像装置30および第2撮像装置40により撮像した場合にコントラストのはっきりした鮮明な画像を得るためには、表面が平滑で光を反射しやすいステンレス等の金属やガラスであることが好ましい。
【0061】
次に、接触角計1による接触角および平面視輪郭形状の測定に先だって行われる校正の手順について説明する。
【0062】
図5は、校正手順の流れを示したフローチャートである。校正手順の最初のステップS101では、ステージ20上に校正用標準試料80を載置する。
【0063】
ステップS102では、第1撮像装置30によってステージ20上の校正用標準試料80を撮像し、校正用側面画像200を取得する(図6(a)参照)。校正用側面画像200は、コンピュータ100に送信され、ハードディスク等の記憶手段に記憶される。ステップS103では、第2撮像装置40によって校正用標準試料80を撮像し、校正用平面画像210を取得する(図6(b)参照)。校正用平面画像210は、校正用側面画像200と同様に、コンピュータ100が備えるハードディスク等の記憶手段に記憶される。
【0064】
ステップS104では、後述する測定時の画像処理と同様の手順により、校正用側面画像200および校正用平面画像210について画像処理を行う。
【0065】
図6(a)および(b)は、校正において撮像する画像を示した概略図である。同図(a)に示されるように、校正用側面画像200は、第1照明装置50で背後から照明することにより、平板82および突出部84が暗いシルエットとしてはっきりしたコントラストで映し出された画像となる。従って、校正用側面画像200は、平板82が映し出された暗い領域202と、突出部84が映し出された暗い領域204と、背景の明るい領域206と、から構成されている。
【0066】
また、同図(b)に示されるように、校正用平面画像210は、平板82を背景として突出部84がはっきりしたコントラストで映し出された画像となる。第2撮像装置40による校正用標準試料80の撮像では、第2照明装置60を使用した場合は平板82が暗く、突出部84が明るく映し出され、同軸落射照明装置42を使用した場合は平板82が明るく、突出部84が暗く映し出される。校正においてはいずれの照明装置を使用してもよいが、ここでは同軸落射照明装置42を使用した場合を示している。従って、校正用平面画像210は、平板82が映し出された明るい領域212と、突出部84が映し出された暗い領域214と、から構成されている。
【0067】
校正手順のステップS104では、まず、校正用側面画像200について突出部84の領域204および平板82の領域202の輪郭形状(側面視輪郭形状)を導出する。そして、これに基づき、突出部84の領域204における特徴的な点について、画素数を基準とする画像中の2次元座標(x,y)を求める。ここでは、例えば領域204のx方向の端点である点Aおよび点B、ならびに領域204のy方向の頂点である点T等について座標を求める。
【0068】
次に、校正用平面画像210についても同様に、突出部84の領域214の輪郭形状(平面視輪郭形状)を導出し、これに基づいて突出部84の領域212における特徴的な点の画像中の座標(x,y)を求める。ここでは、例えばx方向の端点である点A'および点B'ならびにy方向の端点である点C'および点D'等について座標を求める。
【0069】
図5に戻って、ステップS105では、ステップS104で求めた各点の座標に基づき、校正用側面画像200および校正用平面画像210における画素寸法の校正を行う。ここでは、まず校正用側面画像200について、予め記憶しておいた校正用標準試料80の突出部84の直径dの値を点Aと点B間のx方向の距離(画素数)で除算する、または突出部84の高さhの値を点Tと点Aもしくは点B間のy方向の距離(画素数)で除算する等の処理により、校正用側面画像200における1画素当りの寸法、すなわち画像中の1画素が例えば何μmを示しているかを算出する。そして、算出した1画素当りの寸法を第1撮像装置30によって撮像した画像における1画素当りの寸法として設定し、所定の記憶手段に記憶する。
【0070】
次に、校正用平面画像210について、予め記憶しておいた校正用標準試料80の突出部84の直径dの値を、点A'と点B'間のx方向の距離(画素数)または点C'と点D'の間のy方向の距離(画素数)で除算する等の処理により、校正用平面画像210における1画素当りの寸法を算出する。そして、算出した1画素当りの寸法を第2撮像装置40によって撮像した画像における1画素当りの寸法として設定し、所定の記憶手段に記憶する。
【0071】
ステップS106では、ステップS104で求めた各点の座標に基づき、校正用側面画像200および校正用平面画像210における位置の対応関係を求める。本実施形態では、校正用側面画像200のA点に校正用側面画像210のA'点が対応(同一位置を示している)し、校正用側面画像200のB点に校正用側面画像210のB'点が対応するように、第1撮像装置30および第2撮像装置40の向きが設定されている。
【0072】
従って、ここでは、校正用側面画像200におけるA点の座標と校正用平面画像210におけるA'点の座標の関係、ならびに校正用側面画像200におけるB点の座標と校正用平面画像210におけるB'点の座標の関係から、校正用側面画像200における座標と校正用平面画像210における座標の対応関係を求める。すなわち、同一位置を示している校正用側面画像200の座標と校正用平面画像210の座標の関係式を導出する。そして、第1撮像装置30によって撮像した画像における座標と第2撮像装置40によって撮像した画像における座標の関係式として設定し、所定の記憶手段に記憶する。
【0073】
ステップS107では、その他の測定値の校正を必要に応じて行う。ここでは、通常の測定と同様に、ステップS104の画像処理に基づいて突出部84の接触角および平面視輪郭形状等の各種パラメータを導出し、校正用標準試料80に設定された実際の値と比較する。そして、この比較結果に基づいて、例えばレンズの歪み等を補正する計数等を設定し、所定の記憶手段に記憶する。
【0074】
次に、接触角計1による接触角および平面視輪郭形状の測定手順について説明する。
【0075】
図7は、測定手順の流れを示したフローチャートである。測定手順の最初のステップS201では、ステージ20上に固体試料2を載置する。このとき、必要に応じてステージ20を操作し、第1撮像装置30および第2撮像装置40によって撮像するための最適な位置に固体試料2を移動させる。また、必要に応じて第1照明装置50および第2照明装置60の光量および位置等を調節する。同軸落射照明42を使用する場合は、必要に応じて同軸落射照明42の光量を調節する。
【0076】
ステップS202では、第2撮像装置40によって固体試料2上に液滴がない状態を撮像し、基準平面画像を取得する。この基準平面画像は、後述する画像処理において第2撮像装置40によって固体試料2上の液滴4を撮像した液滴平面画像と比較することにより、液滴4が映し出されている領域を抽出するためのものである。基準平面画像の撮像は、固体試料2の表面状態に応じて第2照明装置60または同軸落射照明装置42のいずれかのみを点灯させて行う。撮像した基準平面画像は、コンピュータ100に送信されてハードディスク等の所定の記憶手段に記憶される。
【0077】
ステップS203では、ディスペンサ70を操作して液体試料を固体試料2上に滴下し、液滴4を生成する。ステップS204では、第1撮像装置30によって固体試料2上の液滴4を側方から撮像し、液滴側面画像を取得する。液滴側面画像の撮像は、第1照明装置50のみを点灯させて行う。撮像した液滴側面画像は、コンピュータ100に送信されてハードディスク等の所定の記憶手段に記憶される。
【0078】
ステップS205では、第2撮像装置40によって固体試料2上の液滴4を上方から撮像し、液滴平面画像を取得する。液滴平面画像の撮像は、基準平面画像の撮像と同じ照明装置(第2照明装置60または同軸落射照明装置42)を使用して行う。撮像した液滴平面画像は、コンピュータ100に送信されてハードディスク等の所定の記憶手段に記憶される。なお、液滴平面画像を液滴側面画像よりも先に撮像するようにしてもよい。
【0079】
ステップS206では、規定回数の撮像を行ったか否かを判定する。規定回数の撮像を行っていない場合は、規定回数になるまでステップS204の液滴側面画像の撮像およびステップS205の液滴平面画像の撮像を繰り返す。このとき、撮像ごとにステージ20を回転させ、複数の異なる方向(例えば8箇所)の接触角を測定するようにしてもよい。撮像回数が規定回数に達している場合は、ステップS207に進む。
【0080】
ステップS207では、コンピュータ100が備える画像処理装置120により、所定の記憶手段に記憶した液滴側面画像および液滴平面画像について画像処理を行い、液滴4の接触角および平面視輪郭形状を導出する。なお、本実施形態では、所定の記憶手段に記憶した液滴側面画像、液滴平面画像および基準平面画像は、グレースケール画像であるが、カラー画像であってもよい。
【0081】
次に、測定手順におけるステップS207の画像処理の手順について説明する。
【0082】
図8は、画像処理の手順の流れを示したフローチャートである。画像処理の最初のステップS301では、画像処理装置120の接触角導出手段130により、液滴側面画像に基づいて接触角の導出を行う。接触角の導出の詳細については後述する。
【0083】
ステップS302では、画像処理装置120の液滴幅導出手段160により、液滴側面画像に基づいて、液滴4の幅方向(x方向)寸法である液滴幅d、および液滴4の幅方向(x方向)の端点である点Aおよび点Bの座標(図9(b)参照)を導出する。なお、本実施形態では、液滴幅導出手段160は、ステップS304において接触角導出手段130が後述する手順で導出して記憶した液滴幅d、ならびに点Aおよび点Bの座標を取得するようにしている。
【0084】
ステップS303では、画像処理装置120の形状導出手段140により、液滴平面画像を基準平面画像と比較することにより、液滴4の平面視輪郭形状を導出する。平面視輪郭形状の導出の詳細については後述する。
【0085】
ステップS304では、撮像した全ての液滴側面画像および液滴平面画像についてステップS301〜S303の処理を行ったか否かを判定する。全ての画像について上記処理を行った場合はステップS305に進み、上記処理を行っていない液滴側面画像および液滴平面画像がある場合は、ステップS301に戻って上記処理を繰り返す。
【0086】
ステップS305では、ステップS301およびステップS303で導出した各種データをコンピュータ100の表示装置に表示すると共に、ハードディスク等の所定の記憶手段に保存する。また、複数回の測定を行った場合は、各測定について算出した接触角や各種パラメータの平均値、Δ幅、標準偏差等を算出して表示および保存する。
【0087】
次に、画像処理におけるステップS301の接触角の導出手順について説明する。
【0088】
図9(a)および(b)は、接触角導出手段130による接触角θの導出の概要を示した概略図である。同図(a)に示されるように、液滴側面画像300は、第1照明装置50による背後からの照明により、固体試料2が映し出された暗い領域202と、液滴4が映し出された暗い領域204と、背景の明るい領域206と、から構成される画像となっている。
【0089】
接触角の導出では、まず、液滴4の領域304および固体試料2の領域302の輪郭形状(側面視輪郭形状)308を導出する。この側面視輪郭形状308の導出では、液滴側面画像300において互いに隣接する画素P同士を順に比較していくことにより、側面視輪郭形状308を示す画素Poを探索して抽出する。そして抽出した画素Poを繋ぐことにより側面視輪郭形状308を導出する。
【0090】
具体的には、例えば背景の領域306内の任意の開始点から、所定の方向に向けて順番に隣接する2つの画素Pの階調の値の差分を、比較手段132によって算出していく。そして、判定手段134により、比較手段132が算出した差分の値が予め設定した閾値未満である場合は、比較した画素Pはいずれも背景の領域306内にあると判定し、差分の値が閾値以上である場合は、比較した一方の画素Pは液滴4の領域304内(または固体試料2の領域302内)にあると判定する。すなわち、判定手段134は、差分の値が閾値以上である場合に、比較した一方の画素Pが側面視輪郭形状308を示す画素Poであると判定する。
【0091】
開始点の位置をずらしながら上記手順を繰り返していくことにより、画素Poを複数抽出することができる。このとき、背景の領域306との境界の近傍の画素Pのみを、画素Poとして抽出するようにしてもよいし、液滴4の領域304および固体試料2の領域302内の全ての画素Pを、画素Poとして抽出するようにしてもよい。このようにして、抽出した複数の画素Poを繋ぐことで、側面視輪郭形状308を導出することができる。
【0092】
なお、側面視輪郭形状308を示す画素Poを最初に抽出した後は、この画素Poを新たな開始点として周囲の画素Pを順番に比較していき、階調の差分が閾値未満である場合に比較した画素Pが新たな画素Poであると判定するようにしてもよい。すなわち、最初に側面視輪郭形状308を示す画素Poを抽出した後は、これと同等の階調の画素Pを画素Poとして抽出していくようにしてもよい。
【0093】
また、初めから液滴4の領域204内または固体試料2の領域302内の任意の点を比較の開始点としてもよい。また、単独の画素P同士を比較するのではなく、複数の画素Pからなる領域同士を比較するようにしてもよい。
【0094】
側面視輪郭形状308を導出した後、接触角導出手段130は、同図(b)に示されるように、側面視輪郭形状308に基づいて、x方向の端点である点Aおよび点B、ならびにy方向の頂点である点Tの座標を求める。そして、点Aおよび点Bのx座標の差から液滴4の直径(液滴幅)d、半径rを算出し、点Tと点Aまたは点Bのy座標の差から液滴4の高さhを算出する。本実施形態では、事前の校正によって1画素当りの寸法が設定されているため、液滴4の直径(液滴幅)d、半径rおよび高さhは、実際の値を求めることができる。
【0095】
接触角θは、既知の手法、例えばθ/2法によって算出することができる。具体的には、液滴4の半径rと高さhの値から、数式θ=2・φ=2・arctan(h/r)を用いて接触角θを求めることができる。なお、その他の既知の手法である接線法やカーブフィッティング法等を用いて、より詳細に接触角θを求めるようにしてもよい。
【0096】
図10は、接触角θの導出手順の流れを示したフローチャートである。接触角θの導出の最初のステップS401では、比較する2つの画素Pを選択する。ステップS402では、比較手段132により、選択した2つの画素Pの階調の差分を求めて比較する。ステップS403では、判定手段134により、ステップS402で求めた差分の値と閾値に基づき、比較した2つの画素Pの一方が側面視輪郭形状308を示す画素Poであるか否かを判定し、側面視輪郭形状308を示すと判定した場合は画素Poを抽出する。
【0097】
ステップS406では、抽出した画素Poにより側面視輪郭形状308を導出可能であるか否かを判定する。側面視輪郭形状308を導出可能である場合はステップS405に進み、導出不可能である場合はステップS401に戻って、画素Poをさらに探索する。
【0098】
ステップS405では、抽出した画素Poを繋げて側面視輪郭形状308を導出する。ステップS406では、導出した側面視輪郭形状308に基づき、接触角θを算出する。
【0099】
次に画像処理におけるステップS303の平面視輪郭形状の導出手順について説明する。
【0100】
図11は、形状導出手段140による平面視輪郭形状408の導出の概要を示した概略図である。なお、同図では、光を反射しにくい固体試料2上の液滴4を、第2照明装置60を使用して撮像した場合の液滴平面画像400および基準平面画像500の例を示している。
【0101】
この場合、液滴平面画像400は、固体試料2が映し出されたやや暗い領域402と、液滴4が映し出された暗い領域404と、から構成される。また、液滴平面画像400には、条件によって液滴4の領域404の周囲にやや明るい領域405や、液滴4の領域404内部に生じた光輪が映し出されたやや明るい領域406が発生する。基準平面画像500は、固体試料2が映し出されたやや暗い領域502のみから構成される。
【0102】
光を反射しにくい固体試料2の場合、第2照明装置60および同軸落射照明装置42のいずれを使用しても、コントラストのはっきりした画像が得られない場合がある。このような場合には、液滴平面画像400と基準平面画像500を比較することによって液滴4の平面視輪郭形状408を導出する手法が有効となる。
【0103】
平面視輪郭形状408の導出では、まず比較範囲設定手段146により、画素Pを比較する比較範囲407、507を設定し、液滴平面画像400および基準平面画像500からそれぞれ抽出する。この比較範囲407、507は、液滴幅導出手段160が導出した液滴幅dを所定の拡大率で拡大した大きさに設定される。また、比較範囲407、507は、液滴幅導出手段160が導出した液滴側面画像300の点Aおよび点Bに対応する点である点A'および点B'の座標に基づき、液滴4の領域404を含む位置に設定される。
【0104】
次に、比較手段142により、比較範囲407の画素Pを、同一位置の比較範囲507の画素Pと順番に比較していく。具体的には、比較範囲407の画素Pと同一位置の比較範囲507の画素Pとについて、階調の値の差分を比較手段142によって算出する。そして、判定手段144により、比較手段142が算出した差分の値が予め設定した閾値未満である場合は、比較した比較範囲407の画素Pは液滴4の領域404以外にあると判定し、差分の値が閾値以上である場合は、比較範囲407の画素Pは液滴4の領域404内にあると判定する。すなわち、判定手段134は、差分の値が閾値以上である場合に、比較範囲407の画素Pが平面視輪郭形状408を示す画素Poであると判定する。
【0105】
ここで、閾値の値を適宜に設定することにより、または比較範囲407の画素Pが比較範囲507の画素Pよりも暗い場合にのみ比較範囲407の画素Pが画素Poであると判定することにより、液滴4の領域404と周囲の領域405および光輪の領域406を区別することができる。
【0106】
上記手順を比較範囲407、507の全ての画素について行うことにより、比較範囲407において液滴4の領域404内にあり、平面視輪郭形状408を示す画素Poを抽出することができる。そして、これに基づいて液滴4の平面視輪郭形状408を導出することができる。
【0107】
なお、液滴4内に生じた光輪の形状は、液滴4の平面視輪郭形状408と相似形となっている。従って、上記手順と同様の手順により、光輪の領域406内にあって光輪の形状を示す画素Poを比較範囲407から抽出するようにしてもよい。この場合には、拡大手段148により、液滴幅導出手段160で導出した液滴幅dと光輪の領域406の幅方向(x方向)寸法dsの比率に基づく拡大率で光輪の領域406の形状を拡大することにより、液滴4の平面視輪郭形状408を導出する。液滴4の輪郭部分がぼやけている場合には、この手法が有効となる。
【0108】
図12は、平面視輪郭形状408の導出手順の流れを示したフローチャートである。平面視輪郭形状408の導出の最初のステップS501では、比較範囲設定手段146により、比較範囲407、507を設定し、液滴平面画像400および基準平面画像500からそれぞれ抽出する。ステップS502では、比較する同一位置の画素Pを比較範囲407、507から選択する。
【0109】
ステップS503では、比較手段142により、選択した比較範囲407の画素Pおよび比較範囲507の画素Pの階調の差分を求めて比較する。ステップS504では、判定手段144により、ステップS503で求めた差分の値と閾値に基づき、比較した比較範囲407の画素Pが平面視輪郭形状408を示す画素Poであるか否かを判定し、平面視輪郭形状408を示すと判定した場合は画素Poを抽出する。液滴4内に生じた光輪に基づいて平面視輪郭形状408を導出する場合は、比較した比較範囲407の画素Pが光輪の形状を示す画素Poであるか否かを判定し、光輪の形状を示すと判定した場合は画素Poを抽出する。
【0110】
ステップS505では、比較範囲407、507の全画素を比較したか否かを判定する。全画素を比較した場合はステップS506に進み、全画素を比較していない場合はステップS502に戻って次の画素Pを比較および判定する。
【0111】
ステップS506では、抽出した画素Poに基づき、平面視輪郭形状408を導出する。液滴4内に生じた光輪に基づいて平面視輪郭形状408を求める場合は、拡大手段148により、光輪の領域406の形状を拡大して平面視輪郭形状408を導出する。
【0112】
ステップS507では、平面視輪郭形状408に関する各種パラメータを算出する。本実施形態では、例えば真円度((=最大半径−最小半径)/平均半径)、アスペクト比(=最大直径/最小直径)、配向性(=y軸に対する最大直径の傾き角度)等を平面視輪郭形状408を評価するパラメータとして算出する。
【0113】
なお、図9(a)で説明した側面視輪郭形状308の導出と同様の手順を用いることにより、基準平面画像500を使用せずに液滴平面画像400のみから液滴4の平面視輪郭形状408を導出することもできる。
【0114】
図13は、液滴平面画像400のみから平面視輪郭形状408を導出する場合を示した概略図である。なお、同図では、光を反射しやすい固体試料上の液滴4を、第2照明装置60を使用して撮像した場合の液滴平面画像400の例を示している。
【0115】
この場合、液滴平面画像400は、固体試料2が映し出された暗い領域402と、液滴4が映し出された明るい領域404と、から構成されるコントラストのはっきりした画像となる。また、液滴平面画像400には、条件によって液滴4の領域404の内部に暗い領域409が発生する。
【0116】
光を反射しやすい固体試料2の場合、第2照明装置60および同軸落射照明装置42のいずれかを使用することにより、コントラストのはっきりした画像が得られる。このような場合には、側面視輪郭形状308の導出と同じ手順により液滴4の平面視輪郭形状408を導出することができる。
【0117】
この例の平面視輪郭形状408の導出では、先述の手順と同様に、まず比較範囲設定手段146により、液滴幅dならびに点A'および点B'の座標に基づいて比較範囲407を設定し、液滴平面形状400から抽出する。なお、液滴側面画像300を撮像していない場合には、比較範囲407を設定しなくてもよい。
【0118】
次に、比較手段142により比較範囲407において互いに隣接する画素P同士を順に比較すると共に、判定手段144により比較した画素Pの一方が平面視輪郭形状408を示す画素Poであるか否かを判定することで画素Poを探索する。
【0119】
具体的には、側面視輪郭形状308の導出と同様に、例えば固体試料2の領域402内の任意の開始点から、所定の方向に向けて順番に隣接する2つの画素Pの階調の値の差分を、比較手段142によって算出していく。そして、判定手段144により、比較手段142が算出した差分の値が予め設定した閾値未満である場合は、比較した画素Pはいずれも固体試料2の領域402内にあると判定し、差分の値が閾値以上である場合は、比較した一方の画素Pは液滴4の領域404内にある画素Poと判定する。そして、このようにして抽出した複数の画素Poを繋ぐことにより、平面視輪郭形状408を導出する。
【0120】
なお、初めに点A'または点B'の座標から、平面視輪郭形状408を示す画素Po1を求め、この画素Po1と同等の階調の画素Pを比較手段142および判定手段144によって探索し、画素Poとして抽出するようにしてもよい。また、液滴4の領域404内の領域409の平面視輪郭形状を導出し、光輪の場合と同様に、拡大手段148によって領域409の平面視輪郭形状を拡大することで、液滴4の平面視輪郭形状408を導出するようにしてもよい。
【0121】
図14は、液滴平面画像400のみから平面視輪郭形状408を導出する場合の手順の流れを示したフローチャートである。最初のステップS601では、比較範囲設定手段146により、比較範囲407を設定し、液滴平面画像400から抽出する。なお、比較範囲407は、必要に応じて設定すればよい。ステップS602では、比較範囲407から比較する2つの画素Pを選択する。
【0122】
ステップS603では、比較手段142により、選択した2つの画素Pの階調の差分を求めて比較する。ステップS604では、判定手段134により、ステップS603で求めた差分の値と閾値に基づき、比較した2つの画素Pの一方が平面視輪郭形状408を示す画素Poであるか否かを判定し、平面視輪郭形状408を示すと判定した場合は画素Poを抽出する。液滴4の領域404内の領域409に基づいて平面視輪郭形状408を導出する場合は、比較した2つの画素Pの一方が領域409の輪郭形状を示す画素Poであるか否かを判定し、領域409の輪郭形状を示すと判定した場合は画素Poを抽出する。
【0123】
ステップS605では、抽出した画素Poにより平面視輪郭形状408を導出可能であるかを判定する。領域409に基づいて平面視輪郭形状408を導出する場合は、領域409の輪郭形状を導出可能であるか否かを判定する。平面視輪郭形状408(領域409の輪郭形状)を導出可能である場合はステップS606に進み、導出不可能である場合はステップS602に戻って、画素Poをさらに探索する。
【0124】
ステップS606では、抽出した画素Poに基づき、平面視輪郭形状408を導出する。領域409に基づいて平面視輪郭形状408を求める場合は、拡大手段148により、領域409の形状を拡大して平面視輪郭形状408を導出する。
【0125】
なお、本実施形態では、第2照明装置60または同軸落射照明装置42のいずれかを使用して第2撮像装置40による撮像を行うが、これらの代わりに第1照明装置30を使用して第2撮像装置40による撮像を行うようにしてもよい。
【0126】
図15(a)および(b)は、第1照明装置50を使用して第2撮像装置40による撮像を行う場合の例を示した図である。同図(a)に示す例では、第1照明装置50による照明で固体試料2上の液滴4を部分的に白く光らせ、これを第2撮像装置40により上方から撮像する。これにより、液滴4の平面視輪郭形状408の一部を導出することができる。従って、ステージ20を操作して固体試料2および液滴4を回転させながら複数回の撮像を行い、複数の液滴平面画像400から導出した部分的な平面視輪郭形状408を組み合わせることで、液滴4の全体的な平面視輪郭形状408を導出することができる。
【0127】
また、ステージ20を回転させるのではなく、同図(b)に示されるように、ステージ20の周囲に複数の第1照明装置50を配置して照明することにより、液滴4を全体的に白く光らせるようにしてもよい。この場合、1回の撮像で液滴4の全体的な平面視輪郭形状を導出することができる。なお、この場合において第1撮像装置30による撮像を行う場合には、いずれかの第1照明装置50を撮像に影響しない位置に退避させるようにすればよい。
【0128】
固体試料2および液滴4の状態によっては、このように第1照明装置50を使用して第2撮像装置40による撮像を行う方が、より鮮明な画像を得ることができる場合がある。
【0129】
また、本実施形態では、液滴平面画像400から画像処理装置120によって固体試料2上の液滴4の平面視輪郭形状408を導出するが、平面視輪郭形状408の導出と共に、液滴平面画像400からその他の情報を取得するようにしてもよい。
【0130】
例えば、固体試料2が紙等である場合に、液滴4から固体試料2に液体試料がにじみ出た部分の面積を導出するようにしてもよい。この場合、液体試料がにじみ出た部分の面積は、平面視輪郭形状408の導出と同様の手順で求めることができる。そして、にじみ出た部分の面積と共に液滴4の面積を導出し、例えばにじみ度(=(にじみ出た部分の面積+液滴面積)/液滴面積)というパラメータを算出することで、さらに多角的な観点から固体表面の性状を評価することが可能となる。
【0131】
以上説明したように、本実施形態に係る接触角計1は、試料(固体試料)2が載置されるステージ20と、試料2上の液滴4を側方から撮像して液滴4の接触角θを測定する第1撮像装置30と、試料2上の液滴4を上方から撮像して液滴4の平面視輪郭形状408を測定する第2撮像装置40と、を備えている。
【0132】
このため、接触角θと共に、迅速且つ簡便な方法で液滴4の平面視輪郭形状408を測定することができる。また、接触角θと液滴4の平面視輪郭形状408を同時に評価することにより、固体表面の性状をより多角的に評価することが可能となる。
【0133】
また、接触角計1は、第2撮像装置40の光軸Sを中心とする円環状の光源65を備え、第2撮像装置40によって液滴4を撮像する場合に液滴4を照明する照明装置(第2照明装置)60をさらに備えている。
【0134】
このため、固体試料2上の液滴4を上方から撮像する場合に、固体試料2の表面の状態によらず液滴4の鮮明な画像を得ることが可能となり、液滴4の平面視輪郭形状408を正確に導出することができる。例えば、個体試料2表面が光を反射しにくい場合、同軸落射照明による上方からの撮像では液滴4の鮮明な画像が得られないということが従来知られているが、本実施形態では、第2照明装置60を使用することで、このような固体試料2についても液滴4の鮮明な画像を得ることが可能となっている。
【0135】
なお、本実施形態では、複数のLED64から光源65を構成した例を示したが、例えば蛍光灯や有機EL等、その他の照明機器から光源65を構成するようにしてもよい。また、本実施形態では、LED64の前方に拡散板68を備えた例を示したが、拡散板68を備えないようにしてもよい。
【0136】
また、照明装置(第2照明装置)60は、第2撮像装置40の光軸Sを中心とすると共に上から下に向けて漸次径が拡大する笠状の光放射面(拡散板68の内側面)を備え、光放射面の内側に光を放射する。また、照明装置(第2照明装置)60は、液滴4の上方から液滴4に向けて収束する方向に光を照射するように構成されている。
【0137】
このような構成とすることで、固体試料2が例えば木材や紙等の光を反射しにくい素材である場合にも、第2撮像装置40による上方からの撮像において液滴4の鮮明な画像を得ることができる。なお、拡散板68の代わりに通常の透明板等を光放射面とするようにしてもよい。
【0138】
また、照明装置(第2照明装置)60は、第2撮像装置40の光軸Sを中心とする円筒状の光放射面(拡散板68の内側面)を備え、光放射面の内側に光を放射するものであってもよい。また、照明装置(第2照明装置)60は、液滴4の側方の全周囲から液滴4に向けて光軸Sに直交する方向に光を照射するように構成されるものであってもよい。
【0139】
固体試料2の素材によっては、このような構成とすることで、第2撮像装置40による上方からの撮像において液滴4の鮮明な画像を得ることができる。
【0140】
また、照明装置(第2照明装置)60は、試料2表面に対して所定の隙間Hを空けて配置されている。このため、第2照明装置60に影響されることなく、第1撮像装置30による側方からの撮像を行うことができる。
【0141】
また、第2撮像装置40は、同軸落射照明装置42を備えている。このため、固体試料2が例えばガラスや金属等の光を反射しやすい素材である場合に、第2撮像装置40による上方からの撮像においてコントラストのはっきりした液滴4の鮮明な画像を得ることができる。
【0142】
また、接触角計1は、第1撮像装置30および第2撮像装置40によって撮像した画像を処理する画像処理装置120をさらに備え、画像処理装置120は、試料2上の液滴4を第1撮像装置30によって撮像した液滴側面画像300に基づいて接触角θを導出する接触角導出手段130と、試料2上の液滴4を第2撮像装置40によって撮像した液滴平面画像400に基づいて液滴4の平面視輪郭形状408を導出する形状導出手段140と、を備えている。
【0143】
このため、接触角計1において、接触角θと共に液滴4の平面視輪郭形状408をより高精度に測定することができる。また、平面視輪郭形状408について真円度やアスペクト比、配向性等の各種パラメータを容易に求めることが可能となるため、固体表面の性状をより多角的に評価することができる。
【0144】
また、形状導出手段140は、液滴平面画像400の各画素Pを他の画素Pと比較する比較手段142と、比較手段142の比較結果に基づいて液滴平面画像400の各画素Pが液滴4の平面視輪郭形状408を示しているか否かを判定する判定手段144と、を備えている。
【0145】
このため、液滴平面画像400から液滴4の平面視輪郭形状408を高精度に導出することができる。なお、本実施形態では、グレースケール画像を使用することから、比較手段132、142によって画素Pの階調の値の差分を求めるようにしているが、カラー画像を使用すると共に、比較手段132、142によって例えば色度、明度または彩度等の差分を単独または複合的に求めるようにしてもよい。
【0146】
また、比較手段142は、液滴平面画像400の各画素Pを、試料2上に液滴4がない状態を上方から撮像した基準平面画像500における同一位置の画素Pと比較する。このため、コントラストのはっきりした液滴平面画像400を得ることが困難である場合にも、液滴4の平面視輪郭形状408を高精度に導出することができる。
【0147】
また、比較手段142は、液滴平面画像400の各画素Pを、液滴平面画像400における周囲の画素Pと比較することもできる。このため、液滴平面画像400がコントラストのはっきりした画像である場合には、液滴平面画像400のみから液滴4の平面視輪郭形状408を導出することが可能となる。これにより、画像処理装置120の処理負荷を低減すると共に、接触角θおよび平面視輪郭形状408の測定を高速化することができる。
【0148】
また、画像処理装置120は、試料2上の液滴4を第1撮像装置30によって撮像した液滴幅導出用画像(本実施形態では、液滴側面画像300を兼用)に基づいて液滴4の幅方向寸法(液滴幅)dを導出する液滴幅導出手段160をさらに備え、形状導出手段140は、液滴幅導出手段160が導出した液滴4の幅方向寸法dに基づいて比較手段142が比較する画素Pの範囲を設定する比較範囲設定手段146をさらに備えている。
【0149】
このような構成とすることで、画素Pを比較する範囲を限定することができるため、画像処理装置120の処理負荷を低減すると共に、接触角θおよび平面視輪郭形状408の測定を高速化することができる。なお、本実施形態では、液滴側面画像300を液滴幅導出用画像と兼用した例を示したが、液滴側面画像300とは別に液滴幅導出用画像を撮像するようにしてもよい。
【0150】
また、判定手段144は、比較手段142の比較結果に基づいて、液滴平面画像400の各画素Pが液滴4内において液滴4の平面視輪郭形状408と相似形に生じた光輪の形状を示しているか否かを判定し、形状導出手段140は、光輪の形状を拡大することで液滴4の平面視輪郭形状を導出する拡大手段148をさらに備えるようにすることもできる。
【0151】
さらに、判定手段144は、比較手段142の比較結果に基づいて、液滴平面画像400の各画素Pが液滴4内において液滴4の平面視輪郭形状408と相似形に生じた光輪の形状を示しているか否かを判定し、形状導出手段140は、液滴幅導出手段160が導出した液滴4の幅方向寸法dに基づいて光輪の形状を拡大することで、液滴4の平面視輪郭形状408を導出する拡大手段148をさらに備えるようにすることもできる。
【0152】
このような構成とすることで、液滴平面画像400が不鮮明であっても、液滴4の平面視輪郭形状を高精度に導出することができる場合がある。
【0153】
また、画像処理装置120は、ステージ20上に載置した校正用標準試料80を第1撮像装置30によって撮像した校正用側面画像200、またはステージ20上に載置した校正用標準試料80を第2撮像装置40によって撮像した校正用平面画像210に基づいて、校正を行う校正手段150をさらに備えている。
【0154】
このような構成とすることで、画像処理装置120を容易に校正することができるため、より高精度な測定を行うことが可能となる。
【0155】
また、校正手段150は、校正用側面画像200に基づいて第1撮像装置30によって撮像した画像における1画素の寸法を校正し、校正用平面画像210に基づいて第2撮像装置40によって撮像した画像における1画素の寸法を校正する画素寸法校正手段152を備えている。
【0156】
このような構成とすることで、接触角θおよび液滴4の平面視輪郭形状408の測定において、容易に実際の寸法を求めることが可能となり、固体表面の性状についてより多角的な評価を行うことができる。
【0157】
また、校正手段150は、校正用側面画像200および校正用平面画像210に基づいて、第1撮像装置30によって撮像した画像および第2撮像装置40によって撮像した画像における位置の対応関係を校正する位置関係校正手段154を備えている。
【0158】
このため、第1撮像装置30によって撮像した画像と第2撮像装置40によって撮像した画像を連携させて効率的に画像処理を行うことが可能であり、測定を高速化することができる。
【0159】
また、校正用標準試料80は、平板82と、平板82の表面から突出する部分球状の突出部84と、から構成されている。このため、1つの校正用標準試料80で、第1撮像装置30および第2撮像装置40による撮像の両方を同時に校正することができる。
【0160】
また、校正用標準試料80は、平板82に円形断面且つテーパ状の貫通孔(固定孔)86が形成されており、貫通孔(固定孔)86の小径側の開口から一部を突出させた状態で球体88が固定されることで突出部84が形成されている。このような構成とすることで、少ないコストで高精度に校正用標準試料80を作成することができる。
【0161】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の接触角計は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明の接触角計は、固体の表面性状の測定および評価の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0163】
1 接触角計
2 固体試料
4 液滴
20 ステージ
30 第1撮像装置
40 第2撮像装置
42 同軸落射照明装置
60 第2照明装置
65 光源
68 拡散板
80 校正用標準試料
82 平板
84 突出部
86 固定孔
88 球体
120 画像処理装置
130 接触角導出手段
140 形状導出手段
142 比較手段
144 判定手段
146 比較範囲設定手段
148 拡大手段
150 校正手段
152 画素寸法校正手段
154 位置関係校正手段
160 液滴幅導出手段
200 校正用側面画像
210 校正用平面画像
300 液滴側面画像
400 液滴平面画像
500 基準平面画像
408 液滴の平面視輪郭形状
d 液滴幅
H 第2照明装置と固体試料表面の隙間
P 画素
S 第2撮像装置の光軸
θ 接触角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が載置されるステージと、
前記試料上の液滴を側方から撮像して前記液滴の接触角を測定する第1撮像装置と、
前記試料上の液滴を上方から撮像して前記液滴の平面視輪郭形状を測定する第2撮像装置と、を備えることを特徴とする、
接触角計。
【請求項2】
前記第2撮像装置の光軸を中心とする円環状の光源を備え、前記第2撮像装置によって前記液滴を撮像する場合に前記液滴を照明する照明装置をさらに備えることを特徴とする、
請求項1に記載の接触角計。
【請求項3】
前記照明装置は、前記第2撮像装置の光軸を中心とすると共に上から下に向けて漸次径が拡大する笠状の光放射面を備え、前記光放射面の内側に光を放射することを特徴とする、
請求項2に記載の接触角計。
【請求項4】
前記照明装置は、前記液滴の上方から前記液滴に向けて収束する方向に光を照射するように構成されることを特徴とする、
請求項3に記載の接触角計。
【請求項5】
前記照明装置は、前記第2撮像装置の光軸を中心とする円筒状の光放射面を備え、前記光放射面の内側に光を放射することを特徴とする、
請求項2に記載の接触角計。
【請求項6】
前記照明装置は、前記液滴の側方の全周囲から前記液滴に向けて前記光軸に直交する方向に光を照射するように構成されることを特徴とする、
請求項5に記載の接触角計。
【請求項7】
前記照明装置は、前記試料表面に対して所定の隙間を空けて配置されることを特徴とする、
請求項2乃至6のいずれかに記載の接触角計。
【請求項8】
前記第2撮像装置は、同軸落射照明装置を備えることを特徴とする、
請求項1乃至7のいずれかに記載の接触角計。
【請求項9】
前記第1撮像装置および前記第2撮像装置によって撮像した画像を処理する画像処理装置をさらに備え、
前記画像処理装置は、
前記試料上の前記液滴を前記第1撮像装置によって撮像した液滴側面画像に基づいて接触角を導出する接触角導出手段と、
前記試料上の前記液滴を前記第2撮像装置によって撮像した液滴平面画像に基づいて前記液滴の平面視輪郭形状を導出する形状導出手段と、を備えることを特徴とする、
請求項1乃至8のいずれかに記載の接触角計。
【請求項10】
前記形状導出手段は、
前記液滴平面画像の各画素を他の画素と比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて前記液滴平面画像の各画素が前記液滴の平面視輪郭形状を示しているか否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする、
請求項9に記載の接触角計。
【請求項11】
前記比較手段は、前記液滴平面画像の各画素を、前記試料上に前記液滴がない状態を上方から撮像した基準平面画像における同一位置の画素と比較することを特徴とする、
請求項10に記載の接触角計。
【請求項12】
前記比較手段は、前記液滴平面画像の各画素を、前記液滴平面画像における周囲の画素と比較することを特徴とする、
請求項10に記載の接触角計。
【請求項13】
前記画像処理装置は、前記試料上の前記液滴を前記第1撮像装置によって撮像した液滴幅導出用画像に基づいて前記液滴の幅方向寸法を導出する液滴幅導出手段をさらに備え、
前記形状導出手段は、前記液滴幅導出手段が導出した前記液滴の幅方向寸法に基づいて前記比較手段が比較する画素の範囲を設定する比較範囲設定手段をさらに備えることを特徴とする、
請求項10乃至12のいずれかに記載の接触角計。
【請求項14】
前記判定手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記液滴平面画像の各画素が前記液滴内において前記液滴の平面視輪郭形状と相似形に生じた光輪の形状を示しているか否かを判定し、
前記形状導出手段は、前記光輪の形状を拡大することで前記液滴の平面視輪郭形状を導出する拡大手段をさらに備えることを特徴とする、
請求項10乃至12のいずれかに記載の接触角計。
【請求項15】
前記判定手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記液滴平面画像の各画素が前記液滴内において前記液滴の平面視輪郭形状と相似形に生じた光輪の形状を示しているか否かを判定し、
前記形状導出手段は、前記液滴幅導出手段が導出した前記液滴の幅方向寸法に基づいて前記光輪の形状を拡大することで、前記液滴の平面視輪郭形状を導出する拡大手段をさらに備えることを特徴とする、
請求項13に記載の接触角計。
【請求項16】
前記画像処理装置は、前記ステージ上に載置した校正用標準試料を前記第1撮像装置によって撮像した校正用側面画像、または前記ステージ上に載置した前記校正用標準試料を前記第2撮像装置によって撮像した校正用平面画像に基づいて、自身を校正する校正手段をさらに備えることを特徴とする、
請求項9乃至15のいずれかに記載の接触角計。
【請求項17】
前記校正手段は、前記校正用側面画像に基づいて前記第1撮像装置によって撮像した画像における1画素の寸法を校正し、前記校正用平面画像に基づいて前記第2撮像装置によって撮像した画像における1画素の寸法を校正する画素寸法校正手段を備えることを特徴とする、
請求項16に記載の接触角計。
【請求項18】
前記校正手段は、前記校正用側面画像および前記校正用平面画像に基づいて、前記第1撮像装置によって撮像した画像および前記第2撮像装置によって撮像した画像における位置の対応関係を校正する位置関係校正手段を備えることを特徴とする、
請求項16または17に記載の接触角計。
【請求項19】
前記校正用標準試料は、平板と、前記平板の表面から突出する部分球状の突出部と、から構成されることを特徴とする、
請求項16乃至18のいずれかに記載の接触角計。
【請求項20】
前記校正用標準試料は、前記平板に円形断面且つテーパ状の貫通孔が形成されており、前記貫通孔の小径側の開口から一部を突出させた状態で球体が固定されることで前記突出部が形成されることを特徴とする、
請求項19に記載の接触角計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−179973(P2011−179973A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44556(P2010−44556)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000162504)協和界面科学株式会社 (10)
【Fターム(参考)】