説明

接触部材

【課題】大きな動作ストロークを必要とする電気機器の操作部に用いられ、電気機器に組み入れられる電気回路基板に実装することでスイッチの一部構成として働き、僅か2つの部品で大きな動作ストローク、安定した接触状態を有するスイッチを構成することとなる接触部材の提供。
【解決手段】底板と側壁とによって収容部が形成された導電性を有するケースと弾性変形可能な押圧部材からなり、前記底板は開口部を有し、該開口部には前記側壁の立ち上がり方向に傾斜して延出する舌片が形成され、前記押圧部材は、前記収容部に載置される台座部と、外部からの押圧力が作用する作用部と、前記台座部と前記作用部とを連続させる変形部で構成することにより、前記作用部に外部からの押圧力が加わることにより前記変形部が変形し、前記作用部が前記舌片を押圧し下方向へ変位し、大きな動作ストロークが得られることを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路基板に実装されることによってスイッチが構成されることとなる接触部材に関するものであり、導電性を有するケースと弾性変形可能な押圧部材とからなるものである。
【背景技術】
【0002】
大きな動作ストロークおよび安定した接触状態を必要とする操作部に用いられるスイッチには図8に示すようなスイッチ100がある。スイッチ100は、開口部に接触面が露出した導電性を有するターミナル002を一体成形したモールド材料からなるハウジング001と、ターミナル002に外周部が載置された際に中央部の舌片がターミナル002から離間するように形成された接触片003と、接触片003に台座部が載置され上部に押圧力を受ける作用部が形成された内側が中空のすり鉢状の弾性体004と、ハウジング001に上下方向に摺動可能に嵌合されたキーステム005とからなり、操作時には、キーステム005の天面に押圧力が加わることにより弾性体004の作用部が下方向に大きなストロークで変位し、接触片003の舌片を押すこととなり、これによって接触片003を介してハウジング001に一体成形された中央接点を有するターミナルと中央接点の外側に外側接点を有するターミナルとが電気的に短絡しスイッチがON状態となるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4209222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のスイッチ100においては、ON−OFF動作を成すスイッチ単品としての物流が可能であるものの、スイッチ100を電気機器に組み込む際には、スイッチ100を実装するための電気回路基板(図示せず)およびキーステム005を押すためのキートップ(図示せず)は必ず必要となる。またスイッチ100はターミナル002を一体成形したハウジング001、接触片003、弾性体004、キーステム005といった5点もの部品からなり、大きな部品コスト、組み立てコストが生じるものである。また動作ストロークが大きいが故にハウジング001とキーステム005との摺動距離も大きくなり、塵埃等によりこの摺動動作が妨げられ易いという問題点を有するものであった。
【0005】
そこで本発明は上述の問題を鑑み、少ない部品点数で構成され、且つ大きな動作ストロークをもってしてもスムーズな動作が可能であり、また物流においても問題なく、さらに電気機器に組み入れる際においても従来のスイッチ100同様、実装するための電気回路基板およびキートップのみを必要とすることでON−OFF動作が可能となるスイッチを構成することが出来る接触部材を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この従来の問題を解決するために、請求項1記載の接触部材は、底板と側壁とによって収容部が形成された導電性を有するケースと、弾性変形可能な押圧部材と、からなる接触部材において、前記底板には、開口部と、収容部に延出する舌片とが形成され、前記押圧部材は、前記底板に載置される台座部と、外部からの押圧力が加えられる動作部と、前記台座部から延出し前記動作部へと連続する変形部とを有し、前記動作部に押圧力が加わることにより前記変形部が変形し、前記動作部が前記舌片を押圧し、前記舌片が開口部を経て前記収容部の外側に突出可能となることことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の接触部材は、請求項1の構成に加え、前記側壁は、上端部が前記収容部の内側に折り返された折り返し部を形成し、該折り返し部によって前記押圧部材の収容部への収容状態が維持されることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3記載の接触部材は、請求項1又は請求項2の構成に加え、前記底板には外側へ突出した実装用はんだ付け部が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4記載の接触部材は、請求項1、2又は請求項3の構成に加え、前記底板の前記収容部とは反対側の面には絶縁処理が施されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5記載の接触部材は、請求項1、2、3又は請求項4の構成に加え、前記舌片は、前記底板から延出する舌片腕部と、該舌片腕部から更に延出し前記動作部により押圧される接触片と、からなり、該接触片には前記開口部に向って突出した少なくとも一つの接触凸部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によると、収容部が形成された導電性を有するケースと弾性変形可能な押圧部材との2点のみの部品によって接触部材が構成されるため、部品コスト、組立コストを小さくすることが可能であり、また押圧部材のストロークが容易に大きくできることにより動作ストロークを大きくすることが容易に可能で、動作ストロークの設定も自在に出来る。また、本接触部材を実装するための電気回路基板および押圧するためのキートップを電気機器に備えることのみで、ON−OFF動作が行なえるスイッチを構成することが可能である。
【0012】
請求項2の発明によると、側壁の上端部が内側に折り返されていることにより、押圧部材の台座部が折り返し部分を越えて収容部の外側に出ることが出来なくなり、これによって物流等において押圧部材が収容部から脱落する等の事故を防ぐことが可能となる。
【0013】
請求項3の発明によると、底板に外側へ突出した実装用はんだ付け部を形成することにより、押圧部材が収容された収容部へはんだ付け実装時に発生するフラックスが侵入することを防ぐことができ、また実装用はんだ付け部へはんだ付けする際においてはんだフィレット形成が確実にでき、大きな実装強度を得ることが可能となる。
【0014】
請求項4の発明によると、底板の収容部とは反対側の面、つまり底板の電気回路基板側の面に絶縁処理が施されているため電気回路基板の電気回路パターンに絶縁処理を施す必要がなくなり、自由度の大きな電気回路パターンの引き廻しが可能となる。
【0015】
請求項5の発明によると、舌片が舌片腕部と接触片からなることにより舌片の弾性力の設定を容易に行なうことが可能となり、また、接触片に開口部に向って突出した接触凸部を形成することにより、本接触部材を電気回路基板に実装させた際に、接触凸部と電気回路基板上に形成された接触パターンとの接触がより確実に行なわれることとなり、電気回路基板への実装によって構成されるスイッチの接触性能を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る接触部材の正面斜視図
【図2】本発明に係る接触部材の分解正面斜視図
【図3】本発明に係る接触部材と電気回路基板の分解正面斜視図
【図4】本発明に係る接触部材を電気回路基板に実装した状態の正面斜視図
【図5】図4のa−a線における断面図
【図6】本発明に係る接触部材が押圧力により動作された状態での図4のa−a線における断面図
【図7】本発明に係るその他の接触部材の実施例についての分解正面斜視図
【図8】従来のスイッチの分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1乃至図7は本発明の実施の形態を示したものであり、図1は本発明に係る接触部材の正面斜視図、図2は本発明に係る接触部材の分解正面斜視図、図3は本発明に係る接触部材と電気回路基板の分解正面斜視図、図4は本発明に係る接触部材を電気回路基板に実装した状態の正面斜視図、図5は図4のa−a線における断面図、図6は本発明に係る接触部材が押圧力により動作された状態での図4のa−a線における断面図、図7は本発明に係るその他の接触部材の実施例についての分解正面斜視図である。接触部材01は、ケース10、押圧部材30とからなる。
【0018】
ケース01は、導電性金属板を加工したものであり、円形状の底板11には、ほぼ同心円状に空いた開口部12が形成され開口部12からは内側方向に切片状の舌片13が延出しており、舌片13は後述する側壁20が立ち上がっている方向である上方向へ傾斜して形成され、前述の上方向からの矢視においては、舌片13は対称に2本の舌片腕部15により構成され、舌片腕部15は開口部12から延出した後に開口部12とほぼ同心円状の弧を描いて形成され、後に2本の舌片腕部15が連結されることとなる。そして連結された部位からは接触片14が開口部12の中央へ向かって延出し、この接触片14が底板11に対してほぼ平行に上方向に一定距離を離間して形成されることとなる。
【0019】
また底板11の外周からはほぼ垂直方向に立ち上がる側壁20が形成され、この側壁20と前述の底板11とによって略円筒状の空間を有する収容部18が形成される。ここで側壁20の上端部は収容部18の内側方向へ折り返され側壁20との角度を90度未満とする折り返し部19が形成される。さらに側壁20には、立ち上がりの起点である底板11から上方が切り欠かれた切り欠き部22が形成され、切り欠き部22においては底板11から底板11と同一平面で形成され収容部18の外側へ延出する実装用はんだ付け部21が形成される。また、底板11の開口部12の周囲には、後述の押圧部材30の位置を維持するために上方に凸状に形成された環状位置決め凸部16が形成される。
【0020】
押圧部材30はラバー等の弾性材料からなり、一定肉厚を有しケース10の底板11の外形よりも僅かに小さな外形を有する円環状に形成された台座部31と、上面に平面状の押圧面36を有する略円筒状の作用部32と、が薄肉で形成された変形部33によって連結されており、全体の形状として、すり鉢状の空間を上下反対にした空間が内側に形成されることになる。そして押圧面36の反対側の面からは前述の内側の空間37に臨む押圧部34が突出している。
【0021】
次に以上の構成部品による接触部材01の組み立ておよび電気回路基板40への実装について説明する。接触部材01はケース10に押圧部材30を組み入れることによって完成する。押圧部材30の台座部31を撓ませながら折り返し部19を乗り越えさせ台座部31の台座底面35を底板11に載置し、押圧部材30が収容部18に収容されることとなる。これによって台座部31の上面が折り返し部19の下端部と同じ高さあるいは僅かに下側に位置することとなり、折り返し部19によって台座部31が折り返し部19を超えることができなくなる。つまり、収容部18から押圧部材30が抜け出ることが出来なくなり、組み立ておよび物流時の運搬等において押圧部材30が収容部18から抜け落ちる等の事故を防止できることとなる。
【0023】
そして完成した接触部材01は電気機器に組み入れられる際には図3乃至図6に示すように電気機器に備えられる電気回路基板40に実装され、これによって電気回路基板を含んだ状態でスイッチとして機能することとなる。
【0024】
電気回路基板40には、接触部材01の実装用はんだ付け部21に対応する位置にはんだ付け可能な電気回路パターンである実装部43が形成され、接触片14に対応する位置に実装部43とは独立した接触片14と接触可能な電気回路パターンである中央接点41が形成され、接触部材01の実装用はんだ付け部21が実装部43にはんだ付けにて電気的に接続可能となることにより接触部材01の電気回路基板への実装が完了し、これによって接触片14は中央接点41のほぼ真上に離間して位置することとなる。またこの際、中央接点41から延出する電気回路パターンは底板11の下に配置され底板11に接触する可能性が有るため、相当する電気回路パターンの表面には絶縁処理が施されている。
【0025】
このように完成および実装された接触部材01は以下のように動作される。図5、図6に示すように、まず、押圧部材30の作用部32の天面に電気機器に備えられたキートップを介して押圧力が加わる。これによって変形部33が弾性変形しながら作用部32が下方向へ変位し、押圧部34が接触片14に当接し、さらに押圧力が加わることで、接触片14は舌片13の下方向への弾性変形を伴って電気回路基板40の中央接点41に接近し、ついには接触片14に形成された中央接点41の方向である下方向に突出した接触凸部17が中央接点41に接触することとなる。
【0026】
これによって電気回路基板40の中央接点41と実装部43とは導電性金属板からなるケース10を介して電気的に短絡することになり、接触部材01と電気回路基板41とによって構成されたスイッチがON状態となる。
【0027】
このように本発明における接触部材01はケース01と押圧部材30のみによって構成されるにもかかわらず、電気回路基板に実装するのみでスイッチの構成の一部として機能する。また、押圧部材30の使用により大きな動作ストロークを得ることが可能となる。
【0028】
更には、押圧部材30の形状、材質を変更することにより、動作ストローク、動作荷重を自由に設定することが可能となる。
【0029】
なお、以上の実施例において本接触部材01に用いるケース10は、収容部18が略円筒形状の空間を成すものとしたが、これに限るものではなく、図7(a)に示すように収容部が略立方形状または略長方形状、図7(b)に示すように収容部が略多角形の筒形状を成すケースを用いることも可能であり、押圧部材も前述の各種ケースに対応する形状のものであれば、本発明に係る接触部材とすることは可能である。
【符号の説明】
【0030】
01 接触部材
10 ケース
11 底板
12 開口部
13 舌片
14 接触片
15 舌片腕部
16 環状位置決め凸部
17 接触凸部
18 収容部
19 折り返し部
20 側壁
21 実装用はんだ付け部
22 切り欠き部
30 押圧部材
31 台座部
32 作用部
33 変形部
34 押圧部
35 台座底面
36 押圧面
37 内側の空間
40 電気回路基板
41 中央接点
43 実装部
100 スイッチ
001 ハウジング
002 ターミナル
003 接触片
004 弾性体
005 キーステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と側壁とによって収容部が形成された導電性を有するケースと、弾性変形可能な押圧部材と、からなる接触部材において、前記底板には、開口部と、収容部に延出する舌片とが形成され、前記押圧部材は、前記底板に載置される台座部と、外部からの押圧力が加えられる動作部と、前記台座部から延出し前記動作部へと連続する変形部とを有し、前記動作部に押圧力が加わることにより前記変形部が変形し、前記動作部が前記舌片を押圧し、前記舌片が開口部を経て前記収容部の外側に突出可能となることを特徴とする接触部材。
【請求項2】
前記側壁は、上端部が前記収容部の内側に折り返された折り返し部を形成し、該折り返し部によって前記押圧部材の収容部への収容状態が維持されることを特徴とする請求項1記載の接触部材。
【請求項3】
前記底板には前記収容部の外側へ突出した実装用はんだ付け部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の接触部材。
【請求項4】
前記底板の前記収容部とは反対側の面には絶縁処理が施されていることを特徴とする請求項1、2または請求項3記載の接触部材。
【請求項5】
前記舌片は、前記底板から延出する舌片腕部と、該舌片腕部から更に延出し前記動作部により押圧される接触片と、からなり、該接触片には前記開口部に向って突出した少なくとも一つの接触凸部が形成されていることを特徴とする請求項1、2、3または請求項4記載の接触部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−26204(P2013−26204A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173390(P2011−173390)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】