説明

接近報知装置

【課題】歩行者の安全を確保することができる接近報知装置を提供する。
【解決手段】地域判定手段24Aは、自車位置が、接近を報知すべき接近報知地域に該当するか否かを判定する。時間帯判定手段24Bは、時刻情報生成部16によって検出された現在時刻が、接近報知地域に関連付けられた接近報知時間帯に該当するか否かを判定する。制御手段24Cは、地域判定手段24Aおよび時間帯判定手段24Bの双方の判定結果が肯定であるという条件が成立したときに接近報知手段を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車、ハイブリッド自動車などの走行時の騒音が少ない車両に搭載される接近報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリを動力源として使用する電気自動車(Electric Vehicle、 EV)、バッテリとエンジンを組み合わせて動力源として使用するハイブリッド自動車(Hybrid Vehicle、 HV)、等の車両は、エンジンを動力源として使用する自動車と比較して、走行時の騒音が少なく、走行者や自転車に乗る者(以下”歩行者等”という)がこれらEV、HV等の車両の接近に気づかない、という問題がある。
【0003】
そこで、EV、HV等の走行時の騒音が少ない車両では、歩行者等に車両が接近したことを気づかせることが行われている。
接近の報知のトリガとしては、車両に搭載されているカメラにより撮影された人の動きを検出して接近音を発生させる、車速が所定速度未満のときに報知させる、など様々なケースが考えられる。
【0004】
また、特許文献1では、車両の現在位置近辺の地域が走行音が必要な地域であるかどうかを検出して歩行者等に対する接近音を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−253236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では以下の問題がある。
走行音が必要とされる地域であっても時間帯によって報知(走行音)の要/不要は変化する。例えば、学校や塾などがある地域の場合、登下校時間は走行音が必要な時間帯に相当し、それ以外の授業中の時間は走行音が不要な時間帯に相当する。
したがって、上記従来技術では、時間帯による走行音の要/不要に対処できていない。その結果、例えば、走行音発生の必要性がないにもかかわらず、走行音を発生して走行する状況が発生し、EV、HV等の静粛性を不必要に損ねる状況が起こってしまう。
本発明は、かかる問題を改善するためになされたものであって、時間帯に応じて的確に報知させることにより歩行者の安全を確保することができる接近報知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の接近報知装置は、車両の外部に向けて接近を報知する接近報知手段と、前記車両の自車位置を検出する自車位置検出手段と、前記自車位置が、前記接近を報知すべき接近報知地域に該当するか否かを判定する地域判定手段と、現在時刻が、前記接近報知地域に関連付けられ前記接近を報知すべき接近報知時間帯に該当するか否かを判定する時間帯判定手段と、前記地域判定手段および前記時間帯判定手段の双方の判定結果が肯定であるという条件が成立したときに前記接近報知手段を作動させる制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、自車位置が接近報知地域に該当し、かつ、現在時刻が接近報知時間帯に該当する場合には、接近報知手段を作動させることにより歩行者に対して的確に車両の接近を報知させることができるため、歩行者の安全を確保することができる。一方、自車位置が接近報知地域に該当しないか、あるいは、該当しても現在時刻が接近報知時間帯に該当しない場合には、無駄に接近報知手段を作動させることがない。
請求項2記載の発明によれば、自車位置を検出したのちは、データベースに基づいて接近報知地域および接近報知時間帯の判定を簡単に行うことができるため、処理の簡素化を図る上で有利となる。
請求項3記載の発明によれば、受信した判定情報に基づいて接近報知地域および接近報知時間帯の判定を行うため、接近報知時間帯が変更された場合であっても的確に接近報知手段を作動させることができ、歩行者の安全を確保する上でより有利となる。
請求項4記載の発明によれば、現在時刻が接近報知時間帯に該当しない場合であっても、接近報知地域における状況に応じて的確に接近報知手段を作動させることができ、歩行者の安全を確保する上でより有利となる。
請求項5記載の発明によれば、運転者に対して車両が歩行者優先道路を走行していることを警告するようにしたので、歩行者優先道路の迂回、進入の回避を促すことができ、歩行者の安全を高める上でより有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態に係る接近報知装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】データベース26に格納されている情報を説明するための図である。
【図3】データベース26の構成例を示す説明図である。
【図4】第1の実施の形態に係る接近報知装置10の動作を説明するフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態に係る接近報知装置10の構成を示すブロック図である。
【図6】第2の実施の形態に係る接近報知装置10の動作を説明するフローチャートである。
【図7】第4の実施の形態に係る接近報知装置10の構成を示すブロック図である。
【図8】第4の実施の形態に係る接近報知装置10の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施の形態)
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る接近報知装置10の構成を示すブロック図である。
接近報知装置10は車両に搭載され、通信部12、GPS受信機14、時刻情報生成部16、接近音制御部18、アンプ20、スピーカ22、ECU24、データベース26などを含んで構成されている。
通信部12は、路車間通信、車車間通信などにより外部との間で情報の授受を行うものである。
【0011】
GPS受信機14は、複数のGPS衛星から送信される電波を受信することにより自車位置を検出すると共に、後述するデータベース26に格納されている地図情報上における自車位置を特定する自車位置情報を生成しECU24に供給する。
本実施の形態では、GPS受信機14は、自車位置を検出する自車位置検出手段を構成する。
【0012】
時刻情報生成部16は、現在時刻を示す時刻情報をECU24に供給するものである。
時刻情報には、西暦年、月、日を含む時刻データ、曜日データが含まれている。
本実施の形態では、時刻情報生成部16は、GPS受信機14によって構成されている。
すなわち、GPS受信機14は、複数のGPS衛星から送信される電波に基づいて時刻情報を生成する機能を有している。
なお、時刻情報生成部16として現在時刻を計時することで時刻情報を生成する装置をGPS受信機14とは別に設けても良い。
【0013】
接近音制御部18は、ECU24から供給される制御信号に応じて接近音用信号を生成してアンプ20に供給するものである。
アンプ20は、接近音用信号を増幅してスピーカ22に供給するものである。
スピーカ22は、増幅された接近音用信号によって駆動されることで接近音を発生させるものである。
本実施の形態では、接近音制御部18、アンプ20、スピーカ22によって、接近音発生手段(接近報知手段)が構成されている。
【0014】
ECU24は、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
ECU24は、前記のCPUが前記制御プログラムを実行することにより、通信部12を介した情報の授受を行い、GPS受信機14から自車位置情報を受け付け、時刻情報生成部16から時刻情報を受け付け、接近音制御部18に制御信号を与え、データベース26の照合、更新などを行う。
また、ECU24は、前記のCPUが前記制御プログラムを実行することにより、後述する地域判定手段24A、時間帯判定手段24B、制御手段24Cを実現するものである。
【0015】
データベース26は、地図情報、地域情報、接近音発生時間帯情報などが関連付けて構成されたものである。
図2はデータベース26に格納されている情報を説明するための図、図3はデータベース26の構成例を示す説明図である。
図2に示すように、地図情報は、施設30や道路32などを特定する情報を含む。図2では、施設30として、A小学校、B公園、Cスーパーマーケットが例示され、これら施設30の近傍に設けられた道路32が例示されている。
【0016】
地域情報は、地図情報上で接近報知地域の範囲を特定する情報である。
接近報知地域とは、例えば接近音を発生すべき接近音発生地域である。具体的には、幼稚園、保育園、各種学校、通学路、学習塾、スポーツ施設、各種商業施設などのように歩行者の出入りが頻繁になされる施設の周辺である。したがって、接近音発生地域は、接近音を発生させて歩行者に車両の接近を知らせる必要度が高い地域である。
図2では、二点鎖線で囲んだ部分が各接近音発生地域S1、S2、S3を示し、各地域S1、S2、S3のそれぞれが地域情報D1、D2、D3によって特定される。
なお、本実施の形態では、接近音発生地域S1、S2、S3が各施設30を含む矩形状を呈している場合を示すが、接近音発生地域をどのように規定するかは任意であり、接近音発生地域の形状や面積は限定されない。
【0017】
接近報知時間帯は、例えば接近音を発生すべき接近音発生時間帯であり接近音発生地域S1、S2、S3に関連付けられて定められている。
図3に示すように、接近音発生時間帯は、接近音発生時間帯情報によって特定され、本実施の形態では、接近音発生時間帯情報は、時間帯の開始時点と終了時点とによって特定されている。なお、図3の最左欄に記載されている「接近発生地域に含まれる施設」の項目は説明上記載したものであり省略しても良い。
【0018】
接近音発生時間帯は、接近音発生地域に含まれる施設によって異なる。すなわち、接近音発生地域S1はA小学校が含まれているので、接近音発生地域S1に関連付けられる接近音発生時間帯は、A小学校の登下校の時間帯を考慮して設定される。
接近音発生地域S2はB公園が含まれているので、接近音発生地域S2に関連付けられる接近音発生時間帯は、B公園の利用時間帯を考慮して設定される。
接近音発生地域S3は、Cスーパーマーケットが含まれているので、接近音発生地域S3に関連付けられる接近音発生時間帯は、Cスーパーマーケットの営業時間帯を考慮して設定される。
【0019】
このように、接近音発生時間帯は、接近音発生地域に含まれる施設の利用状況、営業形態などに対応して適宜設定される。
例えば、施設が学習塾であれば開始時刻、終了時刻に基づいて、接近音発生時間帯が設定される。施設がスポーツ施設であれば、スポーツ教室の開始時刻、終了時刻に基づいて、接近音発生時間帯が設定される。
すなわち、データベース26は、地図情報上における接近音発生地域S1、S2、S3の範囲を特定する地域情報D1、D2、D3と、接近音発生時間帯を特定する接近音発生時間帯情報とを対応付けて格納するものである。
【0020】
次に、図1に示す地域判定手段24A、時間帯判定手段24B、制御手段24Cについて説明する。
地域判定手段24Aは、自車位置が、接近音を発生すべき接近音発生地域に該当するか否かを判定するものである。本実施の形態では、地域判定手段24Aは、GPS受信機14によって検出された自車位置情報からデータベース26に基づいて自車位置が接近音発生地域に該当するか否かを判定する。
【0021】
時間帯判定手段24Bは、時刻情報生成部16によって検出された現在時刻が、接近音発生地域に関連付けられた接近音発生時間帯に該当するか否かを判定するものである。本実施の形態では、時間帯判定手段24Bは、地域判定手段24Aによって自車位置が接近音発生地域に該当したと判定された場合、該当したと判定された地域情報からデータベース26に基づいて接近音発生時間帯を特定し、現在時刻が特定した接近音発生時間帯に該当するか否かを判定する。
【0022】
制御手段24Cは、地域判定手段24Aおよび時間帯判定手段24Bの双方の判定結果が肯定であるという条件が成立したときに接近音発生手段から接近音を発生させるものである。
【0023】
次に図4のフローチャートを参照して接近報知装置10の動作について説明する。
まず、ECU24は、GPS受信機14から自車位置情報を取得する(ステップS10)。
次いで、ECU24は、取得した自車位置情報をデータベース26上の地域情報と照合して自車位置情報が地域情報にあるか否かを判定する(ステップS12、S14:地域判定手段24A)。
ステップS14が肯定であれば、ECU24は、時刻情報生成部16から現在時刻を示す時刻情報を取得する(ステップS16)。
【0024】
次いで、ECU24は、取得した時刻情報をデータベース26上の接近音発生時間帯情報と照合して時刻情報が接近音発生時間帯に該当するか否かを判定する(ステップS18、S20:時間帯判定手段24B)。
ステップS20が肯定であれば、ECU24は、接近音制御部18に制御信号を供給することによりアンプ20によりスピーカ22を駆動して接近音を発生させ(ステップS22)、ステップS10に戻る。
ステップS14で否定、あるいは、ステップS20で否定の場合は、ECU24は、接近音制御部18に制御信号を供給せず接近音を非発生とし(ステップS24)、ステップS10に戻る。
【0025】
以上説明したように、本実施の形態によれば、自車位置が接近音発生地域に該当し、かつ、現在時刻が、該当する接近音発生地域に関連付けられた接近音発生時間帯に該当するという条件が成立したときに、接近音を発生させるようにした。
したがって、自車位置が接近音発生地域に該当し、かつ、現在時刻が接近音発生時間帯に該当する場合には、接近音を発生させることにより歩行者に対して的確に接近音を発生させることができるため、歩行者の安全を確保することができる。言い換えると、接近報知手段を作動させることにより歩行者に対して的確に車両の接近を報知させて歩行者の安全を確保することができる。
一方、接近報知手段が接近音発生手段の場合には、自車位置が接近音発生地域に該当しないか、あるいは、該当しても現在時刻が接近音発生時間帯に該当しない場合には、無駄に接近音を発生させることがないため、車両の静粛性を損ねることがない。言い換えると、無駄に接近報知手段を作動させることがない。
すなわち、時間帯に応じて的確に接近音を発生させることにより静粛性を損ねることなく歩行者の安全を確保することができる。
【0026】
また、本実施の形態では、地図情報上における接近音発生地域の範囲を特定する地域情報と、接近音発生時間帯を特定する接近音発生時間帯情報とを対応付けて格納するデータベース26を備え、このデータベース26に基づいて、自車位置が接近音発生地域に該当するか否かを判定すると共に、接近音発生時間帯を特定し、現在時刻が特定した接近音発生時間帯に該当するか否かを判定するようにした。
したがって、自車位置を検出したのちは、データベース26に基づいて接近音発生地域および接近音発生時間帯の判定を簡単に行うことができ処理の簡素化を図ることができる。
【0027】
なお、第1の実施の形態では、接近音発生時間帯が各曜日で同一であるものとして説明したが、接近音発生地域に含まれる施設の利用状況が曜日によって異なる場合もある。
例えば、月曜〜金曜の平日のみ施設が利用可能であり、土曜、日曜は施設の休日である場合は、月曜〜金曜に対応する接近音発生時間帯情報のみデータベース26に設定しておけばよい。
この場合、時刻情報に含まれる曜日データが月曜〜金曜であれば、ECU24は接近音発生時間帯情報を使用する。時刻情報に含まれる曜日データが土曜、日曜であれば、ECU24は、接近音発生時間帯情報が存在しないため、接近音を発生させる必要がないと判断する。
【0028】
あるいは、施設の利用時間が曜日によって異なる場合は、曜日に対応した複数の接近音発生時間帯情報をデータベース26に設定しておけばよい。
この場合は、ECU24は時刻情報に含まれる曜日データに基づいて複数の接近音発生時間帯情報を使い分ければよい。
【0029】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。以下の実施の形態において第1の実施の形態と同様の部分、部材については同一の符号を付してその説明を省略しあるいは簡単に行う。
第1の実施の形態では、接近音発生時間帯情報が予めデータベース26上に格納されている場合について説明した。
これに対して、第2の実施の形態では、図5に示すように、データベース26を用いる代わりに、情報送信元40から通信部12(第1の通信手段)によって受信した判定情報を用いる。
判定情報は、地図情報上における接近音発生地域の範囲を特定する地域情報と、接近音発生時間帯を特定する接近音発生時間帯情報とが関連付けられた情報であり、データベース26に格納されている情報と同様である。
情報送信元40は、判定情報を随時更新しており、最新の判定情報を送信するように構成されている。
情報送信元40から通信部12への判定情報の送信は、例えば路車間通信など従来公知のさまざまな通信を用いてなされる。
【0030】
地域判定手段24Aは、自車位置情報から判定情報に基づいて自車位置が接近音発生地域に該当するか否かを判定する。
時間帯判定手段24Bは、地域判定手段24Aによって自車位置が接近音発生地域に該当したと判定された場合、該当したと判定された地域情報から判定情報に基づいて接近音発生時間帯を特定し、現在時刻が特定した接近音発生時間帯に該当するか否かを判定する。
制御手段24Cは、地域判定手段24Aおよび時間帯判定手段24Bの双方の判定結果が肯定であるという条件が成立したときに接近音発生手段から接近音を発生させるものである。
【0031】
次に図6のフローチャートを参照して接近報知装置10の動作について説明する。
ECU24は、情報送信元40から送信される判定情報を随時受信し、EEPROMなどに格納する(ステップS30)。
ECU24は、GPS受信機14から自車位置情報を取得する(ステップS32)。
次いで、ECU24は、取得した自車位置情報を判定情報上の地域情報と照合して自車位置情報が地域情報にあるか否かを判定する(ステップS34、S36:地域判定手段24A)。
ステップS36が肯定であれば、ECU24は、時刻情報生成部16から現在時刻を示す時刻情報を取得する(ステップS38)。
【0032】
次いで、ECU24は、取得した時刻情報を判定情報上の接近音発生時間帯情報と照合して時刻情報が接近音発生時間帯に該当するか否かを判定する(ステップS40、S42:時間帯判定手段24B)。
ステップS42が肯定であれば、ECU24は、接近音制御部18に制御信号を供給することによりアンプ20によりスピーカ22を駆動して接近音を発生させ(ステップS44)、ステップS30に戻る。
ステップS36で否定、あるいは、ステップS42で否定の場合は、ECU24は、接近音制御部18への制御信号を供給しないことにより接近音を非発生とし(ステップS46)、ステップS30に戻る。
【0033】
以上説明したように、第2の実施の形態においても自車位置が接近音発生地域に該当し、かつ、現在時刻が、該当する接近音発生地域に関連付けられた接近音発生時間帯に該当するという条件が成立したときに、接近音を発生させるようにした。
したがって、第1の実施の形態と同様に、時間帯に応じて的確に接近音を発生させることにより静粛性を損ねることなく歩行者の安全を確保することができることは無論のこと、受信した判定情報に基づいて接近音発生地域および接近音発生時間帯の判定を行うため、接近音発生時間帯が変更された場合であっても的確に接近音の発生を行うことができ、歩行者の安全を確保する上でより有利となる。
【0034】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について説明する。
例えば、学校の行事の都合などにより、下校時刻が急に繰り上がるなどして変更された場合、あるいは、運動会などのイベントが開催されるなどして普段とは歩行者が歩く時間帯が大きく異なるような場合は、接近音の発生を的確に行うことが難しい。
そこで、第3の実施の形態では、第1、第2の実施の形態の構成に加えて、通信部12(第2の通信手段)により例えば無線通信を用いて、接近音を強制的に発生させる旨を指令する接近音発生指令情報を受信するようにする。このような接近音発生指令情報は、例えば、施設に設けられた送信機から送信される。
そして、ECU24(制御手段24C)は、自車位置が接近音発生地域に該当したと判定された場合において、現在時刻が接近音発生時間帯に該当するか否かの判定結果に優先して、受信された接近音発生指令情報に基づいて接近音を発生させる。
なお、接近音発生指令情報に前記の地域情報(接近音発生地域の範囲を特定する情報)を乗せる(加える)ようにすれば、行事やイベント等で接近音を発生させたい地域が一時的あるいは恒久的に発生した場合、接近音発生地域の変更や新規設定をECU24が行うこともできる。
【0035】
第3の実施の形態によれば、第1、第2の実施の形態と同様の効果が奏されることは無論のこと、現在時刻が接近音発生時間帯に該当しない場合であっても、接近音発生地域における状況に応じて的確に接近音の発生を行うことができ、歩行者の安全を確保する上でより有利となる。
なお、第2の実施の形態に第3の実施の形態を適用した場合、通信部12は共通に使用してもよいし、別々の通信部を用いてもよい。
【0036】
(第4の実施の形態)
次に第4の実施の形態について説明する。
第1乃至第3の実施の形態では、接近音発生地域として学校などの施設を含む地域を例示したが、接近音発生地域は、通学路、あるいは、シルバーロードのように特定の時間帯に歩行者の通行が優先される歩行者優先道路であってもよい。
車両が歩行者優先道路を走行する際に接近音を発生させることで歩行者の安全を図ることはできるが、可能であれば、歩行者優先道路を迂回し、進入を回避することが好ましい。そのため、車両が歩行者優先道路を走行する際に運転者に対して歩行者優先道路の迂回、進入の回避を促すことが考えられる。
そこで、第4の実施の形態では、運転者に対して車両が歩行者優先道路を走行していることを警告するようにしたものである。なお、警告方法としてはブザー音、音声、表示などであってもよい。
【0037】
図7に示すように、警報制御部50、アンプ52、室内スピーカ54が新たに設けられ、ECU24には、歩行者優先道路判定手段24Dが追加されている。
警報制御部50は、ECU24から供給される制御信号に応じて警報音用信号を生成してアンプ54に供給するものである。
アンプ54は、警報音用信号を増幅して室内スピーカ54に供給するものである。
室内スピーカ54は、増幅された警報音用信号によって駆動されることで警報音を室内で発生させるものである。
本実施の形態では、警報制御部50、アンプ52、室内スピーカ54によって、車両の運転者に対して警報を発する警報手段が構成されている。
【0038】
歩行者優先道路判定手段24Dは、自車位置が、接近音発生地域のうち歩行者優先道路に該当するか否かを判定するものである。
本実施の形態では、データベース26に、地域情報と、接近音発生時間帯情報と、歩行者優先道路とを対応付けて格納している。歩行者優先道路判定手段24Dは、自車位置からデータベース26に基づいて自車位置が、接近音発生地域のうち歩行者優先道路に該当するか否かを判定する。
制御手段24Cは、地域判定手段24Aおよび時間帯判定手段24Bの双方の判定結果が肯定であるという条件が成立したときに接近音発生手段から接近音を発生させることに加え、接近音を発生させている状態で、歩行者優先道路判定手段24Dの判定結果が肯定であるという条件が成立したときに室内スピーカ54から警報音を室内で発生させる。
【0039】
次に図8のフローチャートを参照して接近報知装置10の動作について説明する。なお、図4のフローチャートと同一の処理については同一のステップ番号を付してその説明を省略する。
ステップS22において、制御手段24Cがスピーカ22から接近音を発生させたならば、ECU24は、自車位置が歩行者優先道路に該当するか否かを判定する(ステップ50:歩行者優先道路判定手段24D)。
ステップS50で肯定ならば、ECU24は、警報制御部50に制御信号を供給することによりアンプ52によりスピーカ54を駆動して警報音を発生させ(ステップS52)、ステップS10に戻る。
ステップS50で否定の場合は、ECU24は、警報制御部50に制御信号を供給しないことにより警報音を非発生とし(ステップS54)、ステップS10に戻る。
【0040】
以上説明したように、第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が奏されることは無論のこと、運転者に対して車両が歩行者優先道路を走行していることを警告するようにしたので、歩行者優先道路の迂回、進入の回避を促すことができ、歩行者の安全を高める上でより有利となる。
また、第4の実施の形態では、データベース26に、地域情報と、接近音発生時間帯情報と、歩行者優先道路とを対応付けて格納した場合について説明したが、第2の実施の形態と同様に地域情報と、接近音発生時間帯情報と、歩行者優先道路とを対応付けた判定情報を情報送信元から通信部12で受信するようにしてもよい。
【0041】
なお、本発明に係る接近報知装置10の通信部12から車車間通信によって隣接する他の車両に搭載された既存の接近音発生装置の通信部に対して接近音の発生を促す接近音発生要求情報を送信させると共に、他の車両の既存の接近音発生装置は、受信した接近音発生要求情報に基づいて接近音を発生させるようにしてもよい。
この場合、接近報知装置10のECU24は、接近音を発生させる処理が実行されたという条件が成立したときに通信部12から接近音発生要求情報を他の車両に向けて送信させる。
このようにすると、本発明に係る接近報知装置10を搭載する車両が1台あれば、近隣の車両においても、時間帯に応じて的確に接近音を発生させることができ、静粛性を損ねることなく歩行者の安全を確保することができる。
【0042】
また、上記実施の形態では、接近報知手段が、接近音を発生させることによって車両の外部に向けて接近を報知するものである場合について説明した。
しかしながら、接近報知手段が作動することによって車両の接近を歩行者に報知することができればよいのであり、報知の形態は音に限定されない。例えば、光や波動によって報知してもよく、さらに歩行者に受信機を携帯させ、その受信機に接近報知手段から車両の接近を知らせる報知信号を送信することによって受信機が作動し、受信機が作動することで歩行者に接近を報知させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10……接近音報知装置、12……通信部(第1、第2の通信手段)、14……GPS受信機、16……時刻情報生成部、18……接近音制御部、20……アンプ、22……スピーカ、24……ECU、24A……地域判定手段、24B……時間帯判定手段、24C……制御手段、24D……歩行者優先道路判定手段、26……データベース、30……施設、32……道路、40……情報送信元、50……警報制御部、52……アンプ、54……室内スピーカ、S1、S2、S3……接近音発生地域(接近報知地域)、D1、D2、D3……地域情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部に向けて車両の接近を報知する接近報知手段と、
前記車両の自車位置を検出する自車位置検出手段と、
前記自車位置が、前記接近を報知すべき接近報知地域に該当するか否かを判定する地域判定手段と、
現在時刻が、前記接近報知地域に関連付けられ前記接近を報知すべき接近報知時間帯に該当するか否かを判定する時間帯判定手段と、
前記地域判定手段および前記時間帯判定手段の双方の判定結果が肯定であるという条件が成立したときに前記接近報知手段を作動させる制御手段と、
を備えることを特徴とする接近報知装置。
【請求項2】
地図情報上における前記接近報知地域の範囲を特定する地域情報と、前記接近報知時間帯を特定する接近報知時間帯情報とを対応付けて格納するデータベースをさらに備え、
前記自車位置検出手段は、前記自車位置を検出することにより前記地図情報上における前記自車位置を特定する自車位置情報を生成し、
前記地域判定手段は、前記自車位置情報から前記データベースに基づいて前記自車位置が前記接近報知地域に該当するか否かを判定し、
前記時間帯判定手段は、前記地域判定手段によって前記自車位置が前記接近報知地域に該当したと判定された場合、前記該当したと判定された地域情報から前記データベースに基づいて前記接近報知時間帯を特定し、前記現在時刻が前記特定した接近報知時間帯に該当するか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の接近報知装置。
【請求項3】
地図情報上における前記接近報知地域の範囲を特定する地域情報と、前記接近報知時間帯を特定する接近報知時間帯情報とが関連付けられた判定情報を受信する第1の通信手段をさらに備え、
前記地域判定手段は、前記自車位置情報から前記判定情報に基づいて前記自車位置が前記接近報知地域に該当するか否かを判定し、
前記時間帯判定手段は、前記地域判定手段によって前記自車位置が前記接近報知地域に該当したと判定された場合、前記該当したと判定された地域情報から前記判定情報に基づいて前記接近報知時間帯を特定し、前記現在時刻が前記特定した接近報知時間帯に該当するか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の接近報知装置。
【請求項4】
前記接近報知を強制的に発生させる旨を指令する接近報知指令情報を受信する第2の通信手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記時間帯判定手段の判定結果に優先して、前記通信手段で受信された前記接近報知指令情報に基づいて前記接近報知手段を作動させる、
ことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の接近報知装置。
【請求項5】
前記自車位置が、前記接近報知地域のうち歩行者優先道路に該当するか否かを判定する歩行者優先道路判定手段と、
前記車両の運転者に対して警報を発する警報手段とをさらに備え、
前記制御手段は、前記接近報知手段を作動させている状態で、歩行者優先道路判定手段の判定結果が肯定であるという条件が成立したときに前記警報手段を作動させる、
ことを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の接近報知装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−153264(P2012−153264A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14330(P2011−14330)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】