接近対象物検出装置
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば自動車に搭載されて車両周辺状況を監視するために用いられる接近対象物検出装置に関し、特に後方からの接近対象物を自動的且つ確実に検出して事故を未然に防止するのに適した接近対象物検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、道路上を走行中の車両に対して後方から別の車両が接近すると、前方の車両の運転者には気付きにくいため、思わぬ大事故につながり易い。特に、走行中の車両が車線を変更する場合、変更後の車線に接近中の後続車両が存在すると、自車両との相対速度によっては衝突するおそれがある。従って、近年、後方車両の接近を運転者に報知する装置が種々提案されている。
【0003】例えば、走行車両に対する後続接近車両を検出するための接近対象物検出装置としては、超音波や電波を用いたドップラーレーダで接近速度を測定する装置、レーダを用いて特定領域内の車両を判定する装置、又は、ビデオカメラ等の撮像手段を用いて表示された画像上にマーカを付加して後方車両の位置を確認できるようにした装置などがある。
【0004】図10は例えば特開平1-321600号公報に記載された従来の接近対象物検出装置を示すブロック図であり、超音波を用いたドップラーレーダの例を示している。図において、Xは車両の後部に設けられて超音波の送信及び受信機能を有するドップラーレーダ、YはドップラーレーダXからの電圧信号に基づいて後方車両の接近を検知する接近検知装置、Zは接近検知装置Yからの出力信号により駆動される表示装置である。
【0005】ドップラーレーダXは、発振信号を生成する水晶発振子1と、発振信号を分周する分周器2と、分周信号に基づいて送信信号を生成する送信増幅器3と、送信信号により駆動されて超音波を送信する送波用圧電振動子4と、送波用圧電振動子4の超音波送信部4aと、後方車両からの反射超音波を受信する受波用圧電振動子5と、受波用圧電振動子5の超音波受信部5aと、受波用圧電振動子5からの受信信号を増幅する受信増幅器6と、分周信号に基づいて受信信号を周波数変換する周波数変換回路7と、変換された周波数を電圧信号に変換する周波数電圧変換回路8とを備えている。
【0006】接近検知装置Yは、ドップラーレーダXからの電圧信号を所定電圧と比較する電圧比較回路9と、比較結果に基づいて表示装置Zに対する駆動信号を生成する出力回路10とを備えている。表示装置Zは、例えば図示したようにLEDアレイ11から構成されている。
【0007】図11は走行中の複数の車両を図式的に示す説明図であり、Aは前方を走行する車両、Bは後方を走行する車両、Vaは前方車両Aの走行速度、Vbは後方車両Bの走行速度、foは前方車両Aから送信される超音波の周波数である。
【0008】次に、図11を参照しながら、図10に示した従来の接近対象物検出装置の動作について説明する。ドップラーレーダX内の送信増幅器3により送波用圧電振動子4を駆動し、前方車両Aから後方車両Bに向けて周波数foの超音波を送信すると、後方車両Bで反射された超音波は、受波用圧電振動子5で受信される。
【0009】このとき、両車両A及びBの接近速度即ち相対速度ΔV(=Vb−Va)に比例したドップラーシフトが生じる。このドップラーシフトは、周波数変換回路7により、受信増幅器6を介した受信信号と送信信号とのビートとして抽出され、更に、ビート周波数は、周波数電圧変換回路8により電圧信号に変換されて出力される。
【0010】前方車両Aに対する後方車両Bの接近速度を表わす電圧信号は、接近検知装置Y内の電圧比較回路9により基準電圧と比較され、速度を表わす信号として表示装置Zに表示される。
【0011】又、図12は例えば特公昭62-29265号公報に記載された従来の接近対象物検出装置を示す説明図であり、レーダアンテナを用いた例を示している。この場合、前方車両Aのサイドミラー位置にレーダアンテナX′を設け、レーダアンテナX′で受信された信号を車両A内の表示装置(図示せず)に表示し、後方車両Bの有無及び距離を検出する。
【0012】しかしながら、図10のドップラーレーダX及び図12のレーダアンテナX′は、超音波や電波を放射しているため、同機能を有する他の車両からの超音波や電波と干渉して解析が困難になるおそれがある。又、複数の対象物が存在する場合には、どの対象物からの反射信号か判別することができないため、明確に検出することは困難である。
【0013】又、図13は例えば特公平3-47213号公報に記載された従来の接近対象物検出装置の表示画面を示す説明図であり、ビデオカメラを用いた例を示している。この場合、車両の後部に設けられたビデオカメラによって撮影された画像aが車両内の表示装置に表示される。このとき、図示したように、画面内に車間距離を示すマーカbを付加しておけば、後方車両Bまでの概略距離及び接近状態を認識することができる。しかし、このように画像aを表示させた場合、運転者は、運転中であるにもかかわらず、常に画像aを注視していなければならない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】従来の接近対象物検出装置は以上のように、ドップラーレーダX(図10)又はレーダアンテナX′(図12)を用いて後方車両Bとの距離や相対速度を検出するか、又は、ビデオカメラからの画像a(図13)及びマーカbを用いて後方車両Bの位置を認識している。
【0015】しかし、ドップラーレーダX又はレーダアンテナX′を用いた場合には、後方車両Bの方向及び位置を検出することができないうえ信号同士の干渉が発生し、もし複数の対象物が存在すると、後方車両Bを特定して検出することができないという問題点があった。
【0016】又、ビデオカメラによる画像aを用いた場合には、装置そのものに判定機能がなく、単に画像aを表示するのみであるため、後方車両Bとの距離及び相対速度等を運転者が経験的に判断しなければならない。従って、危険性の有無を確実に判定することができないうえ、運転者が自車両の運転に集中できずかえって危険になるおそれがあるという問題点があった。
【0017】この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、接近対象物を自動的且つ確実に判定することのできる接近対象物検出装置を得ることを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】この発明の請求項1に係る接近対象物検出装置は、画像を撮影する撮像手段と、画像を複数のウィンド領域に分割するウィンド処理部と、ウィンド領域毎の特徴量を代表値として抽出する代表値抽出部と、各代表値をデータ列として画像に対応したパターンを作成するパターン作成部と、異なる撮像タイミングでの画像の各パターンを比較してシフト量を算出するシフト量演算部と、シフト量が接近対象物の存在を示す所定値以上のときに判定信号を生成する判定部とを備えたものである。
【0019】又、この発明の請求項2に係る接近対象物検出装置は、請求項1において、撮像手段が車両に設置されて車両の後方画像を撮影するものである。
【0020】又、この発明の請求項3に係る接近対象物検出装置は、請求項2において、判定信号に応答して警報駆動信号を生成するコントローラと、警報駆動信号により駆動される警報手段とを設けたものである。
【0021】又、この発明の請求項4に係る接近対象物検出装置は、請求項3において、車両の走行方向の変更時に操作されるスイッチ手段を備え、撮像手段が車両の走行方向に対応した複数の後方画像を撮像し、判定部が各後方画像に対する判定信号を生成し、コントローラが、スイッチ手段からの操作信号に応答して、変更後の走行方向に対する判定信号が検出されたときに警報駆動信号を生成するものである。
【0022】又、この発明の請求項5に係る接近対象物検出装置は、請求項2〜請求項4のいずれかにおいて、車両の旋回状態を検出する旋回検出手段を備え、ウィンド処理部が、旋回検出手段からの旋回信号に応答してウィンド領域の設定位置を変更するものである。
【0023】又、この発明の請求項6に係る接近対象物検出装置は、請求項1〜請求項5のいずれかにおいて、ウィンド領域が無限遠の注視点からの放射線に沿って設定され、パターンが一次元のデータ列からなるものである。
【0024】又、この発明の請求項7に係る接近対象物検出装置は、請求項1〜請求項5のいずれかにおいて、ウィンド領域が、無限遠の注視点からの放射線に沿って設定されると共に、放射線に対して垂直な方向に沿って設定され、パターンが二次元のデータ列からなるものである。
【0025】
【作用】この発明の請求項1においては、画像内に形成された各ウィンド領域の特徴量に基づいて代表値パターンを作成し、代表値パターンを時系列的に比較演算することにより、接近中の対象物を自動的且つ確実に判定する。
【0026】又、この発明の請求項2においては、車両に接近中の後方対象物を自動的且つ確実に判定する。
【0027】又、この発明の請求項3においては、後方接近対象物を判定したときに警報手段を駆動し、運転者に注意を促して安全性を確保する。
【0028】又、この発明の請求項4においては、走行方向を変更する前に、変更後の走行路上で接近中の後方対象物の存在を判定すると警報手段を駆動し、運転者に注意を促して安全性を確保する。
【0029】又、この発明の請求項5においては、車両の旋回方向に応答してウィンド領域を最適に更新設定し、旋回後の走行路において接近中の後方対象物を確実に判定する。
【0030】又、この発明の請求項6においては、無限遠からの放射線に沿ったウィンド領域を設定し、一次元のパターンに基づいて接近対象物を判定する。
【0031】又、この発明の請求項7においては、無限遠からの放射線に沿った且つ放射線に対して垂直な方向に沿ったウィンド領域を設定し、二次元のパターンに基づいて接近対象物を信頼性良く判定する。
【0032】
【実施例】
実施例1.以下、この発明の実施例1(請求項1、請求項2及び請求項6に対応)を図について説明する。図1はこの発明の実施例1の機能構成を示すブロック図であり、20は以下の21〜29から構成される接近対象物検出手段である。
【0033】21は車両の両側のドアミラー部などに設置されて後方及び側方の画像Gを撮影する撮像手段即ちカメラ、22は画像Gをデータとして処理する画像処理部、23はデータ処理された画像Gを表示する表示装置、24は画像Gを更にデータ処理して複数(n個)のウィンド領域W1〜Wnに分割するウィンド処理部、25は領域毎の特徴量を代表値F1〜Fnとして抽出する代表値抽出部、26は各代表値F1〜Fnをパターン化して画像Gに対応したパターンPを作成するパターン作成部である。
【0034】27はパターンPを所定時間間隔Δtだけ遅延させて前回パターンPoとして記憶する記憶部、28は異なる撮像タイミングでの各画像のパターン即ち記憶部25内の前回パターンPoと今回パターンPとを比較してパターンのシフト量ΔPを算出するシフト量演算部、29はシフト量ΔPが所定値以上のときに自車両に接近中の後方車両の存在を示す判定信号Dを生成する判定部である。所定値は、接近対象物(後続接近車両)の存在を示すレベルに予め設定されている。
【0035】ウィンド処理部24の出力信号及び判定部29からの判定信号Dは、必要に応じて表示装置23に入力され、ウィンド領域W1〜Wnの状態及び判定結果が表示画面内に表示される。
【0036】図2はカメラ21で撮影されて表示装置23に表示された後方画像Gの一例を示す説明図であり、W1〜W7は例えば7個に分割されたウィンド領域、Bはウィンド領域W1〜W7内に入るように撮影された後方車両である。ここでは、画像Gとして、車両の送行車線の右に隣接する車線側の後方が撮影された場合を示している。又、ウィンド領域W1〜W7は、無限遠の注視点からの放射線に沿って、走行路に沿って設定されている。
【0037】図3は図2内の各ウィンド領域W1〜W7の代表値F1〜F7に基づいて形成される前回パターンPo及び今回パターンPを示す説明図であり、(a)は或る時刻toにおける代表値f1〜f7からなる前回パターンPo、(b)はΔt(例えば、0.1秒)経過後の時刻to+Δtにおける代表値F1〜F7からなる今回パターンPである。
【0038】図4はパターンPのシフト補正量ΔPfに対する代表値偏差ΔFの関係を示す特性図であり、シフト量演算部28内の処理で用いられる。ここで、シフト補正量ΔPfは整数であり、例えば図3(b)内の今回パターンPをウィンド領域番号の減少方向にシフトさせる量に対応し、代表値偏差ΔFは、各ウィンド領域W1〜Wn毎の前回パターンP′と今回パターンPとの偏差の総和に対応する。又、代表値偏差ΔFを最小にするシフト補正量ΔPfがシフト量ΔPとして求められる。
【0039】次に、図2〜図4を参照しながら、図1に示したこの発明の実施例1の動作について説明する。カメラ21で撮影された画像Gは、画像処理部22で各画素毎の輝度情報に変換された後、表示装置23に表示されると共にウィンド処理部24に入力される。
【0040】ウィンド処理部24は、n個のウィンド領域W1〜Wn、例えば図2のように7個のウィンド領域W1〜W7を設定し、これらを表示装置23に入力して画像G上に表示させると共に、代表値抽出部25に入力する。ウィンド領域W1〜Wnは、上述したように、走行車線上の無限遠の注視点からの放射線道路に沿って設定される。
【0041】代表値抽出部25は、或る時刻toにおける各ウィンド領域W1〜Wn毎の特徴量即ち代表値F1〜Fnとして、例えばウィンド領域W1〜Wn毎の各画素全体の明るさを総和平均した値を抽出する。
【0042】又、パターン作成部26は、各ウィンド領域W1〜Wn毎の代表値F1〜Fnを一次元のデータ列として図3のようにパターン化し、パターンPを作成して記憶部27及びシフト量演算部28に入力する。このパターンPは、シフト量演算部28においては代表値F1〜Fnからなる今回パターンPとして前回パターンPoと比較され、記憶部27においては代表値f1〜fnからなる前回パターンPoとして格納される。
【0043】同様に、微小時間Δt(0.1秒程度)だけ経過した時刻to+Δtの画像Gに対してウィンド領域W1〜Wn毎の代表値F1〜FnからなるパターンPが作成され、記憶部27及びシフト量演算部28に入力される。続いて、シフト量演算部28は、微小時間Δt毎に、今回パターンPと記憶部27内の前回パターンPoとを比較し、シフト量ΔPを求めるための演算を行う。
【0044】即ち、異なる撮像タイミングのパターンP及びPoの各代表値に関して、今回パターンPに対するシフト補正量ΔPfを変化させながら代表値偏差ΔFを逐次演算し、代表値偏差ΔFを最小にするシフト補正量ΔPfを、各パターンPo及びPを一致させるためのシフト量ΔPとして求める。各代表値偏差ΔFの演算は、以下のように、k=1〜nによる総和式(1)で表わされる。
【0045】
ΔF=(1/n)Σ|f(k)−F(k+ΔPf)| …(1)
【0046】(1)式において、f(k)は前回パターンPoのk番目のウィンド領域Wkの代表値、F(k+ΔPf)は今回パターンPのk+ΔPf番目の代表値である。従って、代表値偏差ΔFは、今回パターンPをシフト補正量ΔPfだけずらしたときの、前回パターンPoに対する各ウィンド領域毎の代表値の偏差の総和を正規化した値を表わす。
【0047】こうして、シフト補正量ΔPfを変化させながら(1)式を繰り返し演算することにより、図4の特性図が得られ、代表値偏差ΔFを最小にするシフト量ΔPが求められる。このシフト量ΔPは、各パターンPo及びPを最も一致させる値である。
【0048】続いて、判定部29は、シフト量ΔPが正の値のときには後方車両Bが自車両から離間中の車両であると判定し、シフト量ΔPが負のときには後方車両Bが自車両に接近中の車両であると判定する。もし、シフト量ΔPが所定値以上であって、接近中の後方車両Bを検出したときには、接近対象物の存在を示す判定信号Dを生成する。この判定信号Dは、後述するように運転者に危険を報知するために用いられる。
【0049】図2の画像Gを例にとって詳述すると、道路面上の反射光が少ないものとすれば、時刻toにおける前回パターンPoは、図3(a)のように、後方車両Bの位置に対応したウィンド領域W3及びW4付近の代表値f3及びf4が極大となる。又、後方車両Bが自車両に接近中であるとすれば、時刻to+Δtにおける今回パターンPは、図3(b)のように、画像G内での前方のウィンドW2及びW3付近の代表値F2及びF3が極大となる。
【0050】このとき、シフト量ΔPは、ほぼ「−1」となり、シフト量ΔPの絶対値と所定値(例えば、1)とを比較すれば、|ΔP|≧1となる。従って、判定部29は、シフト量ΔPが所定値以上であることから、後方車両Bが接近中であることを示す判定信号Dを生成する。
【0051】もし後方車両Bが存在しない場合には、各ウィンド領域W1〜Wnが専ら道路面を表示するので、シフト補正量ΔPfを変えながら各パターンPo及びPを比較しても、代表値偏差ΔF(図4参照)の極小点が生じることはない。従って、実在しない接近対象物を誤検出することはない。
【0052】又、道路面上に影等が存在した場合には、パターンPの変化により影の動きを検出するが、自車両が走行しているので、代表値偏差ΔFの極小点位置即ちシフト量ΔPが正となり、接近対象物として誤検出することはない。
【0053】このように、カメラ21からの画像Gに複数のウィンドW1〜Wnを設定し、各ウィンド領域の代表値(明るさ)によるパターンPを作成し、パターンPの時系列的相関処理に基づいてシフト量ΔPを求めることにより、接近中の後方車両B、又は離間中の対象物等を自動的且つ正確に判定することができる。
【0054】又、カメラ21の画像Gを自動解析するため、超音波や電波等の信号を放射しないので、干渉や混信等による誤検出を生じることはない。又、対象物が複数存在したとしても、代表値偏差ΔFの極小値が複数箇所に生じることから、各対象物の接近状態を判定することができる。
【0055】実施例2.尚、上記実施例1では、接近対象物検出手段20を車両に設置し、接近中の後方車両Bを検出する場合を例にとって説明したが、接近対象物を検出する必要性があるものであれば、他の分野で適用可能であることは言うまでもない。例えば、交差点における接近対象物の検出及び判定に用いることもでき、又、接近対象物を検出したときの判定信号Dを、表示又は警報するのみに限らず、任意に使用することができる。
【0056】実施例3.又、接近対象物検出手段20が単に判定信号Dを生成するようにしたが、接近中の後方車両Bを判定した場合には、必要に応じて、判定信号Dによる判定結果を表示装置23に警報表示してもよい。例えば、表示画像G内の後方車両Bに注目し易いように赤いマーカ等を付加し、更にマーカを点滅させることもできる。
【0057】実施例4.(請求項3に対応)
又、図示しないが、表示装置23以外に、音声等で報知できる警報手段と、判定信号Dに応答して警報手段の駆動信号を生成するコントローラとを設け、接近中の後方車両Bが非常に危険な状態を示すときには、判定信号Dに応答して警報手段を駆動するようにしてもよい。これにより、特に危険な接近対象物を確実に運転者に報知することができる。
【0058】実施例5.(請求項4に対応)
又、上記実施例4では、自車両の運転状態を特に考慮せずに、単に判定信号Dのみに基づいて警報駆動信号を生成するようにしたが、自車両の走行方向の変更時に応答して警報駆動信号を生成してもよい。図5はこの発明の実施例5を示すブロック図であり、20は前述と同様のものである。
【0059】31は自車両の走行方向の変更時に操作されるスイッチ手段即ちウィンカスイッチ、32はウィンカスイッチ31からの操作信号Sに応答して判定信号Dの有無を判定するコントローラ、33はコントローラ32からの警報駆動信号Eにより駆動される警報手段である。
【0060】この場合、判定信号Dは、異なる方向の各画像Gに対する複数の判定結果を含んでいる。又、コントローラ32は、操作信号Sに応答して、変更後の走行方向に対する判定信号Dを選択的に検出し、判定信号Dが検出されると警報駆動信号Eを生成するようになっている。
【0061】例えば、自車両の走行方向に向かって右側の追い越し車線に進路を変更しようとする場合、運転者が走行方向変更を指示するためにウィンカスイッチ31を操作すると、右折を示す操作信号Sに応答して、コントローラ32は、右側の後方画像に基づく判定信号Dの有無を検出する。
【0062】このとき、もし右側の車線に接近対象物即ち後方車両B(図2参照)が存在すれば、判定信号Dに応答して警報駆動信号Eを生成し、警報手段33を駆動して音声等により運転者に注意を促す。従って、運転者は、ウィンカスイッチ31の操作時に、変更後の車線上に接近中の後方車両Bが存在することを認識して直ちに右折を中止し、特に危険性の高い車線変更時の事故を未然に防止することができる。又、更に事故を確実に防止するために、判定信号Dに応答してハンドルの右旋回を困難となるようにしてもよい。
【0063】実施例6.(請求項5に対応)
又、自車両のが直進走行することを仮定して所定のウィンド領域を設定するようにしたが、自然旋回を要する道路状態に応じてウィンド領域を更新設定することが望ましい。
【0064】この場合、旋回状態を検出するための旋回検出手段としては、ハンドル角度センサやヨーレートセンサ等(図示せず)を用い、接近対象物検出手段20内のウィンド処理部24(図1参照)は、旋回検出手段からの旋回信号に応答してウィンド領域の設定位置を変更すればよい。
【0065】図6は、右カーブの道路に倣って右旋回したときのウィンド領域W1〜W7を示す説明図であり、自車両に近いウィンド領域W1〜W3は、画像G内で右旋回するように、又は、圧縮されるように設定される。即ち、ウィンド処理部24は、自車両の旋回信号に応じて、相対的に旋回する画像Gを想定して各ウィンド領域W1〜W7を設定する。
【0066】このように、ハンドル操作による実際の旋回量又は旋回速度等に応じてウィンド領域を設定することにより、道路状態にかかわらず最適に後方車両Bを検出することができる。従って、接近対象物検出手段20は、自車両に対する後方車両Bの動きを適確に検出することができ、例えば、旋回時の自車両に後方車両Bが衝突する可能性がある場合には直ちに判定信号Dを生成することができる。
【0067】実施例7.又、後方車両Bの動きを容易に識別するために、図2のように、ウィンド領域W1〜Wnを放射線道路に沿って設定したが、要求に応じて任意の方向に沿って設定することができる。
【0068】又、ウィンド領域W1〜Wnの数nが7個の場合を例示したが、任意の数に設定することができる。このとき、ウィンド領域数nを大きく設定すればするほど後方車両Bの判定精度が向上するが、それだけ演算時間を要するため、代表値抽出部25やシフト量演算部28等の演算時間との兼合いで適切な値に設定される。
【0069】実施例8.又、1つの表示画像に対して1ブロックのウィンド領域W1〜Wnを設定し、代表値F1〜FnのパターンPを1つのデータ列のみ生成したが、ウィンド領域W1〜Wnを複数ブロックに分割して各ブロック毎にパターンを設定してもよい。この場合、各ブロック内に存在する後方車両の動きを、個々に分割して高精度に監視することができる。
【0070】実施例9.又、各ウィンド領域W1〜Wnの代表値F1〜Fnとしてウィンド領域内の画素の明るさの平均値を採用したが、明るさの最大値、最小値、最大値と最小値との差、又は、最大値と最小値との比を代表値F1〜Fnとして採用してもよい。特に、夜間等ではヘッドライトの点灯によりヘッドライト部のみが明るくなるので、各ウィンド領域W1〜Wn毎の特徴量を顕著にするためには、明るさの平均値よりも最大値を代表値F1〜Fnとすることが望ましい。
【0071】実施例10.(請求項7に対応)
又、ウィンド領域W1〜Wnを一次元に設定して各代表値F1〜Fnの一次元のデータ列からなるパターンPを作成したが、ウィンド領域を二次元に設定して二次元のデータ列からなるパターンを作成してもよい。
【0072】図7は二次元のウィンド領域W11〜Wnm(例えばW11〜W76)を設定した実施例6による画像Gを示す説明図であり、ここでは、道路方向に沿って7個、道路面に垂直な方向に沿って6個だけ設定した例を示す。図8は図7内の後方車両Bによる二次元パターンPo′及びP′を示す説明図であり、図8(a)のパターンPo′は時刻toにおける前回パターン、図8(b)のパターンP′は時刻to+Δtにおける今回パターンである。
【0073】図9はパターンP′のシフト補正量ΔPfn及びΔPfmに対する代表値偏差ΔF′の関係を示す特性図であり、代表値偏差ΔF′を最小にするシフト補正量(ΔPfn,ΔPfm)が二次元座標からなるシフト量(ΔPn,ΔPm)として求められる。
【0074】この場合、シフト量演算部28は、或る時刻toでのパターンPo′と、微小時間Δt後の時刻to+ΔtでのパターンP′とのシフト量(ΔPn,ΔPm)を、図9のように求めるため、二次元のシフト補正量(ΔPfn,ΔPfm)を変化させながら、以下の代表値偏差ΔF′の演算を繰り返し行う。
【0075】
ΔF′=(1/n)(1/m)ΣΣ|f′(k,j)−F′(k+ΔPfn,j+ΔPfm)|…(2)
【0076】但し、(2)式において、k=1〜n、j=1〜mであり、f′(k,j)は前回パターンPo′の(k,j)番目のウィンド領域Wkjの代表値、F′(k+ΔPfn,j+ΔPfm)は今回パターンP′の(k+ΔPfn,j+ΔPfm)番目の代表値である。従って、代表値偏差ΔF′は、今回パターンP′をシフト補正量(ΔPfn,ΔPfm)だけずらしたときの、各ウィンド領域毎の代表値の各偏差の総和を正規化した値を示している。
【0077】(2)式のように、放射線道路方向及び垂直方向にシフト補正量(ΔPfn,ΔPfm)を変化させながら繰り返し演算することにより、図9の特性図が得られる。この結果、代表値偏差ΔF′を最小にする二次元シフト量(ΔPn,ΔPm)が求められ、このシフト量(ΔPn,ΔPm)は、前回パターンPo′と今回パターンP′とを最も一致させる値となる。
【0078】従って、後方車両Bは、微小時間Δtの間に、図9内のベクトルVだけ移動したことになり、前述と同様に、ベクトルVが正方向を示せば離間中、ベクトルVが負方向を示せば接近中であることが判定される。このように、二次元のパターンP′を用いれば、対象物の動きを更に詳細に把握することができ、接近対象物の判定信頼性が向上する。
【0079】
【発明の効果】以上のようにこの発明の請求項1によれば、画像を撮影する撮像手段と、画像を複数のウィンド領域に分割するウィンド処理部と、ウィンド領域毎の特徴量を代表値として抽出する代表値抽出部と、各代表値をデータ列として画像に対応したパターンを作成するパターン作成部と、異なる撮像タイミングでの画像の各パターンを比較してシフト量を算出するシフト量演算部と、シフト量が接近対象物の存在を示す所定値以上のときに判定信号を生成する判定部とを設けたので、接近対象物を自動的且つ確実に判定することのできる接近対象物検出装置が得られる効果がある。
【0080】又、この発明の請求項2によれば、請求項1において、撮像手段を車両に設置して車両の後方画像を撮影するようにしたので、車両の後方からの接近対象物を自動的且つ確実に判定することのできる接近対象物検出装置が得られる効果がある。
【0081】又、この発明の請求項3によれば、請求項2において、判定信号に応答して警報駆動信号を生成するコントローラと、警報駆動信号により駆動される警報手段とを設け、後方からの接近対象物を判定したときに警報手段を駆動し、運転者に注意を促すようにしたので、車両の後方からの接近対象物を自動的且つ確実に判定して安全性を確保した接近対象物検出装置が得られる効果がある。
【0082】又、この発明の請求項4によれば、請求項3において、車両の走行方向の変更時に操作されるスイッチ手段を備え、撮像手段が車両の走行方向に対応した複数の後方画像を撮像し、判定部が各後方画像に対する判定信号を生成し、コントローラが、スイッチ手段からの操作信号に応答して、変更後の走行方向に対する判定信号が検出されたときに警報駆動信号を生成して注意を促すようにしたので、変更後の走行路における接近対象物を自動的且つ確実に判定すると共に、危険を報知して安全性を確保した接近対象物検出装置が得られる効果がある。
【0083】又、この発明の請求項5によれば、請求項2〜請求項4のいずれかにおいて、車両の旋回状態を検出する旋回検出手段を備え、ウィンド処理部が、旋回検出手段からの旋回信号に応答してウィンド領域の設定位置を変更し、旋回後の走行路上で接近中の後方対象物を検出するようにしたので、道路状態にかかわらず接近対象物を自動的且つ確実に判定して安全性を確保した接近対象物検出装置が得られる効果がある。
【0084】又、この発明の請求項6によれば、請求項1〜請求項5のいずれかにおいて、ウィンド領域を無限遠の注視点からの放射線に沿って設定し、代表値パターンを一次元のデータ列としたので、接近対象物を自動的且つ確実に判定することのできる接近対象物検出装置が得られる効果がある。
【0085】又、この発明の請求項7によれば、請求項1〜請求項5のいずれかにおいて、ウィンド領域を、無限遠の注視点からの放射線に沿って設定すると共に、放射線に対して垂直な方向に沿って設定し、代表値パターンを二次元のデータ列としたので、接近対象物を自動的且つ確実に判定することのできる接近対象物検出装置が得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例1による接近対象物検出手段の機能構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施例1により設定されるウィンド領域を画像と共に示す説明図である。
【図3】この発明の実施例1により作成されるパターンを示す説明図である。
【図4】この発明の実施例1により演算されるシフト補正量に対する代表値偏差の変化を示す特性図である。
【図5】この発明の実施例5の機能構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施例6により設定されるウィンド領域を示す説明図である。
【図7】この発明の実施例10により設定されるウィンド領域を画像と共に示す説明図である。
【図8】この発明の実施例10により作成されるパターンを示す説明図である。
【図9】この発明の実施例10により演算されるシフト補正量に対する代表値偏差の変化を示す特性図である。
【図10】従来の接近対象物検出装置の一例を示すブロック図である。
【図11】図10の装置による接近対象物検出動作を示す説明図である。
【図12】従来の接近対象物検出装置の第2例による動作を示す説明図である。
【図13】従来の接近対象物検出装置の第3例による表示画像を示す説明図である。
【符号の説明】
21 カメラ(撮像手段)
24 ウィンド処理部
25 代表値抽出部
26 パターン作成部
28 シフト量演算部
29 判定部
31 ウィンカスイッチ(スイッチ手段)
32 コントローラ
33 警報手段
G 画像
B 後方車両
D 判定信号
E 警報駆動信号
S 操作信号
F1〜Fn 代表値
P、P′ 今回パターン
Po、Po′ 前回パターン
ΔP、ΔPn、ΔPm シフト量
W1〜Wn ウィンド領域
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば自動車に搭載されて車両周辺状況を監視するために用いられる接近対象物検出装置に関し、特に後方からの接近対象物を自動的且つ確実に検出して事故を未然に防止するのに適した接近対象物検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、道路上を走行中の車両に対して後方から別の車両が接近すると、前方の車両の運転者には気付きにくいため、思わぬ大事故につながり易い。特に、走行中の車両が車線を変更する場合、変更後の車線に接近中の後続車両が存在すると、自車両との相対速度によっては衝突するおそれがある。従って、近年、後方車両の接近を運転者に報知する装置が種々提案されている。
【0003】例えば、走行車両に対する後続接近車両を検出するための接近対象物検出装置としては、超音波や電波を用いたドップラーレーダで接近速度を測定する装置、レーダを用いて特定領域内の車両を判定する装置、又は、ビデオカメラ等の撮像手段を用いて表示された画像上にマーカを付加して後方車両の位置を確認できるようにした装置などがある。
【0004】図10は例えば特開平1-321600号公報に記載された従来の接近対象物検出装置を示すブロック図であり、超音波を用いたドップラーレーダの例を示している。図において、Xは車両の後部に設けられて超音波の送信及び受信機能を有するドップラーレーダ、YはドップラーレーダXからの電圧信号に基づいて後方車両の接近を検知する接近検知装置、Zは接近検知装置Yからの出力信号により駆動される表示装置である。
【0005】ドップラーレーダXは、発振信号を生成する水晶発振子1と、発振信号を分周する分周器2と、分周信号に基づいて送信信号を生成する送信増幅器3と、送信信号により駆動されて超音波を送信する送波用圧電振動子4と、送波用圧電振動子4の超音波送信部4aと、後方車両からの反射超音波を受信する受波用圧電振動子5と、受波用圧電振動子5の超音波受信部5aと、受波用圧電振動子5からの受信信号を増幅する受信増幅器6と、分周信号に基づいて受信信号を周波数変換する周波数変換回路7と、変換された周波数を電圧信号に変換する周波数電圧変換回路8とを備えている。
【0006】接近検知装置Yは、ドップラーレーダXからの電圧信号を所定電圧と比較する電圧比較回路9と、比較結果に基づいて表示装置Zに対する駆動信号を生成する出力回路10とを備えている。表示装置Zは、例えば図示したようにLEDアレイ11から構成されている。
【0007】図11は走行中の複数の車両を図式的に示す説明図であり、Aは前方を走行する車両、Bは後方を走行する車両、Vaは前方車両Aの走行速度、Vbは後方車両Bの走行速度、foは前方車両Aから送信される超音波の周波数である。
【0008】次に、図11を参照しながら、図10に示した従来の接近対象物検出装置の動作について説明する。ドップラーレーダX内の送信増幅器3により送波用圧電振動子4を駆動し、前方車両Aから後方車両Bに向けて周波数foの超音波を送信すると、後方車両Bで反射された超音波は、受波用圧電振動子5で受信される。
【0009】このとき、両車両A及びBの接近速度即ち相対速度ΔV(=Vb−Va)に比例したドップラーシフトが生じる。このドップラーシフトは、周波数変換回路7により、受信増幅器6を介した受信信号と送信信号とのビートとして抽出され、更に、ビート周波数は、周波数電圧変換回路8により電圧信号に変換されて出力される。
【0010】前方車両Aに対する後方車両Bの接近速度を表わす電圧信号は、接近検知装置Y内の電圧比較回路9により基準電圧と比較され、速度を表わす信号として表示装置Zに表示される。
【0011】又、図12は例えば特公昭62-29265号公報に記載された従来の接近対象物検出装置を示す説明図であり、レーダアンテナを用いた例を示している。この場合、前方車両Aのサイドミラー位置にレーダアンテナX′を設け、レーダアンテナX′で受信された信号を車両A内の表示装置(図示せず)に表示し、後方車両Bの有無及び距離を検出する。
【0012】しかしながら、図10のドップラーレーダX及び図12のレーダアンテナX′は、超音波や電波を放射しているため、同機能を有する他の車両からの超音波や電波と干渉して解析が困難になるおそれがある。又、複数の対象物が存在する場合には、どの対象物からの反射信号か判別することができないため、明確に検出することは困難である。
【0013】又、図13は例えば特公平3-47213号公報に記載された従来の接近対象物検出装置の表示画面を示す説明図であり、ビデオカメラを用いた例を示している。この場合、車両の後部に設けられたビデオカメラによって撮影された画像aが車両内の表示装置に表示される。このとき、図示したように、画面内に車間距離を示すマーカbを付加しておけば、後方車両Bまでの概略距離及び接近状態を認識することができる。しかし、このように画像aを表示させた場合、運転者は、運転中であるにもかかわらず、常に画像aを注視していなければならない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】従来の接近対象物検出装置は以上のように、ドップラーレーダX(図10)又はレーダアンテナX′(図12)を用いて後方車両Bとの距離や相対速度を検出するか、又は、ビデオカメラからの画像a(図13)及びマーカbを用いて後方車両Bの位置を認識している。
【0015】しかし、ドップラーレーダX又はレーダアンテナX′を用いた場合には、後方車両Bの方向及び位置を検出することができないうえ信号同士の干渉が発生し、もし複数の対象物が存在すると、後方車両Bを特定して検出することができないという問題点があった。
【0016】又、ビデオカメラによる画像aを用いた場合には、装置そのものに判定機能がなく、単に画像aを表示するのみであるため、後方車両Bとの距離及び相対速度等を運転者が経験的に判断しなければならない。従って、危険性の有無を確実に判定することができないうえ、運転者が自車両の運転に集中できずかえって危険になるおそれがあるという問題点があった。
【0017】この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、接近対象物を自動的且つ確実に判定することのできる接近対象物検出装置を得ることを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】この発明の請求項1に係る接近対象物検出装置は、画像を撮影する撮像手段と、画像を複数のウィンド領域に分割するウィンド処理部と、ウィンド領域毎の特徴量を代表値として抽出する代表値抽出部と、各代表値をデータ列として画像に対応したパターンを作成するパターン作成部と、異なる撮像タイミングでの画像の各パターンを比較してシフト量を算出するシフト量演算部と、シフト量が接近対象物の存在を示す所定値以上のときに判定信号を生成する判定部とを備えたものである。
【0019】又、この発明の請求項2に係る接近対象物検出装置は、請求項1において、撮像手段が車両に設置されて車両の後方画像を撮影するものである。
【0020】又、この発明の請求項3に係る接近対象物検出装置は、請求項2において、判定信号に応答して警報駆動信号を生成するコントローラと、警報駆動信号により駆動される警報手段とを設けたものである。
【0021】又、この発明の請求項4に係る接近対象物検出装置は、請求項3において、車両の走行方向の変更時に操作されるスイッチ手段を備え、撮像手段が車両の走行方向に対応した複数の後方画像を撮像し、判定部が各後方画像に対する判定信号を生成し、コントローラが、スイッチ手段からの操作信号に応答して、変更後の走行方向に対する判定信号が検出されたときに警報駆動信号を生成するものである。
【0022】又、この発明の請求項5に係る接近対象物検出装置は、請求項2〜請求項4のいずれかにおいて、車両の旋回状態を検出する旋回検出手段を備え、ウィンド処理部が、旋回検出手段からの旋回信号に応答してウィンド領域の設定位置を変更するものである。
【0023】又、この発明の請求項6に係る接近対象物検出装置は、請求項1〜請求項5のいずれかにおいて、ウィンド領域が無限遠の注視点からの放射線に沿って設定され、パターンが一次元のデータ列からなるものである。
【0024】又、この発明の請求項7に係る接近対象物検出装置は、請求項1〜請求項5のいずれかにおいて、ウィンド領域が、無限遠の注視点からの放射線に沿って設定されると共に、放射線に対して垂直な方向に沿って設定され、パターンが二次元のデータ列からなるものである。
【0025】
【作用】この発明の請求項1においては、画像内に形成された各ウィンド領域の特徴量に基づいて代表値パターンを作成し、代表値パターンを時系列的に比較演算することにより、接近中の対象物を自動的且つ確実に判定する。
【0026】又、この発明の請求項2においては、車両に接近中の後方対象物を自動的且つ確実に判定する。
【0027】又、この発明の請求項3においては、後方接近対象物を判定したときに警報手段を駆動し、運転者に注意を促して安全性を確保する。
【0028】又、この発明の請求項4においては、走行方向を変更する前に、変更後の走行路上で接近中の後方対象物の存在を判定すると警報手段を駆動し、運転者に注意を促して安全性を確保する。
【0029】又、この発明の請求項5においては、車両の旋回方向に応答してウィンド領域を最適に更新設定し、旋回後の走行路において接近中の後方対象物を確実に判定する。
【0030】又、この発明の請求項6においては、無限遠からの放射線に沿ったウィンド領域を設定し、一次元のパターンに基づいて接近対象物を判定する。
【0031】又、この発明の請求項7においては、無限遠からの放射線に沿った且つ放射線に対して垂直な方向に沿ったウィンド領域を設定し、二次元のパターンに基づいて接近対象物を信頼性良く判定する。
【0032】
【実施例】
実施例1.以下、この発明の実施例1(請求項1、請求項2及び請求項6に対応)を図について説明する。図1はこの発明の実施例1の機能構成を示すブロック図であり、20は以下の21〜29から構成される接近対象物検出手段である。
【0033】21は車両の両側のドアミラー部などに設置されて後方及び側方の画像Gを撮影する撮像手段即ちカメラ、22は画像Gをデータとして処理する画像処理部、23はデータ処理された画像Gを表示する表示装置、24は画像Gを更にデータ処理して複数(n個)のウィンド領域W1〜Wnに分割するウィンド処理部、25は領域毎の特徴量を代表値F1〜Fnとして抽出する代表値抽出部、26は各代表値F1〜Fnをパターン化して画像Gに対応したパターンPを作成するパターン作成部である。
【0034】27はパターンPを所定時間間隔Δtだけ遅延させて前回パターンPoとして記憶する記憶部、28は異なる撮像タイミングでの各画像のパターン即ち記憶部25内の前回パターンPoと今回パターンPとを比較してパターンのシフト量ΔPを算出するシフト量演算部、29はシフト量ΔPが所定値以上のときに自車両に接近中の後方車両の存在を示す判定信号Dを生成する判定部である。所定値は、接近対象物(後続接近車両)の存在を示すレベルに予め設定されている。
【0035】ウィンド処理部24の出力信号及び判定部29からの判定信号Dは、必要に応じて表示装置23に入力され、ウィンド領域W1〜Wnの状態及び判定結果が表示画面内に表示される。
【0036】図2はカメラ21で撮影されて表示装置23に表示された後方画像Gの一例を示す説明図であり、W1〜W7は例えば7個に分割されたウィンド領域、Bはウィンド領域W1〜W7内に入るように撮影された後方車両である。ここでは、画像Gとして、車両の送行車線の右に隣接する車線側の後方が撮影された場合を示している。又、ウィンド領域W1〜W7は、無限遠の注視点からの放射線に沿って、走行路に沿って設定されている。
【0037】図3は図2内の各ウィンド領域W1〜W7の代表値F1〜F7に基づいて形成される前回パターンPo及び今回パターンPを示す説明図であり、(a)は或る時刻toにおける代表値f1〜f7からなる前回パターンPo、(b)はΔt(例えば、0.1秒)経過後の時刻to+Δtにおける代表値F1〜F7からなる今回パターンPである。
【0038】図4はパターンPのシフト補正量ΔPfに対する代表値偏差ΔFの関係を示す特性図であり、シフト量演算部28内の処理で用いられる。ここで、シフト補正量ΔPfは整数であり、例えば図3(b)内の今回パターンPをウィンド領域番号の減少方向にシフトさせる量に対応し、代表値偏差ΔFは、各ウィンド領域W1〜Wn毎の前回パターンP′と今回パターンPとの偏差の総和に対応する。又、代表値偏差ΔFを最小にするシフト補正量ΔPfがシフト量ΔPとして求められる。
【0039】次に、図2〜図4を参照しながら、図1に示したこの発明の実施例1の動作について説明する。カメラ21で撮影された画像Gは、画像処理部22で各画素毎の輝度情報に変換された後、表示装置23に表示されると共にウィンド処理部24に入力される。
【0040】ウィンド処理部24は、n個のウィンド領域W1〜Wn、例えば図2のように7個のウィンド領域W1〜W7を設定し、これらを表示装置23に入力して画像G上に表示させると共に、代表値抽出部25に入力する。ウィンド領域W1〜Wnは、上述したように、走行車線上の無限遠の注視点からの放射線道路に沿って設定される。
【0041】代表値抽出部25は、或る時刻toにおける各ウィンド領域W1〜Wn毎の特徴量即ち代表値F1〜Fnとして、例えばウィンド領域W1〜Wn毎の各画素全体の明るさを総和平均した値を抽出する。
【0042】又、パターン作成部26は、各ウィンド領域W1〜Wn毎の代表値F1〜Fnを一次元のデータ列として図3のようにパターン化し、パターンPを作成して記憶部27及びシフト量演算部28に入力する。このパターンPは、シフト量演算部28においては代表値F1〜Fnからなる今回パターンPとして前回パターンPoと比較され、記憶部27においては代表値f1〜fnからなる前回パターンPoとして格納される。
【0043】同様に、微小時間Δt(0.1秒程度)だけ経過した時刻to+Δtの画像Gに対してウィンド領域W1〜Wn毎の代表値F1〜FnからなるパターンPが作成され、記憶部27及びシフト量演算部28に入力される。続いて、シフト量演算部28は、微小時間Δt毎に、今回パターンPと記憶部27内の前回パターンPoとを比較し、シフト量ΔPを求めるための演算を行う。
【0044】即ち、異なる撮像タイミングのパターンP及びPoの各代表値に関して、今回パターンPに対するシフト補正量ΔPfを変化させながら代表値偏差ΔFを逐次演算し、代表値偏差ΔFを最小にするシフト補正量ΔPfを、各パターンPo及びPを一致させるためのシフト量ΔPとして求める。各代表値偏差ΔFの演算は、以下のように、k=1〜nによる総和式(1)で表わされる。
【0045】
ΔF=(1/n)Σ|f(k)−F(k+ΔPf)| …(1)
【0046】(1)式において、f(k)は前回パターンPoのk番目のウィンド領域Wkの代表値、F(k+ΔPf)は今回パターンPのk+ΔPf番目の代表値である。従って、代表値偏差ΔFは、今回パターンPをシフト補正量ΔPfだけずらしたときの、前回パターンPoに対する各ウィンド領域毎の代表値の偏差の総和を正規化した値を表わす。
【0047】こうして、シフト補正量ΔPfを変化させながら(1)式を繰り返し演算することにより、図4の特性図が得られ、代表値偏差ΔFを最小にするシフト量ΔPが求められる。このシフト量ΔPは、各パターンPo及びPを最も一致させる値である。
【0048】続いて、判定部29は、シフト量ΔPが正の値のときには後方車両Bが自車両から離間中の車両であると判定し、シフト量ΔPが負のときには後方車両Bが自車両に接近中の車両であると判定する。もし、シフト量ΔPが所定値以上であって、接近中の後方車両Bを検出したときには、接近対象物の存在を示す判定信号Dを生成する。この判定信号Dは、後述するように運転者に危険を報知するために用いられる。
【0049】図2の画像Gを例にとって詳述すると、道路面上の反射光が少ないものとすれば、時刻toにおける前回パターンPoは、図3(a)のように、後方車両Bの位置に対応したウィンド領域W3及びW4付近の代表値f3及びf4が極大となる。又、後方車両Bが自車両に接近中であるとすれば、時刻to+Δtにおける今回パターンPは、図3(b)のように、画像G内での前方のウィンドW2及びW3付近の代表値F2及びF3が極大となる。
【0050】このとき、シフト量ΔPは、ほぼ「−1」となり、シフト量ΔPの絶対値と所定値(例えば、1)とを比較すれば、|ΔP|≧1となる。従って、判定部29は、シフト量ΔPが所定値以上であることから、後方車両Bが接近中であることを示す判定信号Dを生成する。
【0051】もし後方車両Bが存在しない場合には、各ウィンド領域W1〜Wnが専ら道路面を表示するので、シフト補正量ΔPfを変えながら各パターンPo及びPを比較しても、代表値偏差ΔF(図4参照)の極小点が生じることはない。従って、実在しない接近対象物を誤検出することはない。
【0052】又、道路面上に影等が存在した場合には、パターンPの変化により影の動きを検出するが、自車両が走行しているので、代表値偏差ΔFの極小点位置即ちシフト量ΔPが正となり、接近対象物として誤検出することはない。
【0053】このように、カメラ21からの画像Gに複数のウィンドW1〜Wnを設定し、各ウィンド領域の代表値(明るさ)によるパターンPを作成し、パターンPの時系列的相関処理に基づいてシフト量ΔPを求めることにより、接近中の後方車両B、又は離間中の対象物等を自動的且つ正確に判定することができる。
【0054】又、カメラ21の画像Gを自動解析するため、超音波や電波等の信号を放射しないので、干渉や混信等による誤検出を生じることはない。又、対象物が複数存在したとしても、代表値偏差ΔFの極小値が複数箇所に生じることから、各対象物の接近状態を判定することができる。
【0055】実施例2.尚、上記実施例1では、接近対象物検出手段20を車両に設置し、接近中の後方車両Bを検出する場合を例にとって説明したが、接近対象物を検出する必要性があるものであれば、他の分野で適用可能であることは言うまでもない。例えば、交差点における接近対象物の検出及び判定に用いることもでき、又、接近対象物を検出したときの判定信号Dを、表示又は警報するのみに限らず、任意に使用することができる。
【0056】実施例3.又、接近対象物検出手段20が単に判定信号Dを生成するようにしたが、接近中の後方車両Bを判定した場合には、必要に応じて、判定信号Dによる判定結果を表示装置23に警報表示してもよい。例えば、表示画像G内の後方車両Bに注目し易いように赤いマーカ等を付加し、更にマーカを点滅させることもできる。
【0057】実施例4.(請求項3に対応)
又、図示しないが、表示装置23以外に、音声等で報知できる警報手段と、判定信号Dに応答して警報手段の駆動信号を生成するコントローラとを設け、接近中の後方車両Bが非常に危険な状態を示すときには、判定信号Dに応答して警報手段を駆動するようにしてもよい。これにより、特に危険な接近対象物を確実に運転者に報知することができる。
【0058】実施例5.(請求項4に対応)
又、上記実施例4では、自車両の運転状態を特に考慮せずに、単に判定信号Dのみに基づいて警報駆動信号を生成するようにしたが、自車両の走行方向の変更時に応答して警報駆動信号を生成してもよい。図5はこの発明の実施例5を示すブロック図であり、20は前述と同様のものである。
【0059】31は自車両の走行方向の変更時に操作されるスイッチ手段即ちウィンカスイッチ、32はウィンカスイッチ31からの操作信号Sに応答して判定信号Dの有無を判定するコントローラ、33はコントローラ32からの警報駆動信号Eにより駆動される警報手段である。
【0060】この場合、判定信号Dは、異なる方向の各画像Gに対する複数の判定結果を含んでいる。又、コントローラ32は、操作信号Sに応答して、変更後の走行方向に対する判定信号Dを選択的に検出し、判定信号Dが検出されると警報駆動信号Eを生成するようになっている。
【0061】例えば、自車両の走行方向に向かって右側の追い越し車線に進路を変更しようとする場合、運転者が走行方向変更を指示するためにウィンカスイッチ31を操作すると、右折を示す操作信号Sに応答して、コントローラ32は、右側の後方画像に基づく判定信号Dの有無を検出する。
【0062】このとき、もし右側の車線に接近対象物即ち後方車両B(図2参照)が存在すれば、判定信号Dに応答して警報駆動信号Eを生成し、警報手段33を駆動して音声等により運転者に注意を促す。従って、運転者は、ウィンカスイッチ31の操作時に、変更後の車線上に接近中の後方車両Bが存在することを認識して直ちに右折を中止し、特に危険性の高い車線変更時の事故を未然に防止することができる。又、更に事故を確実に防止するために、判定信号Dに応答してハンドルの右旋回を困難となるようにしてもよい。
【0063】実施例6.(請求項5に対応)
又、自車両のが直進走行することを仮定して所定のウィンド領域を設定するようにしたが、自然旋回を要する道路状態に応じてウィンド領域を更新設定することが望ましい。
【0064】この場合、旋回状態を検出するための旋回検出手段としては、ハンドル角度センサやヨーレートセンサ等(図示せず)を用い、接近対象物検出手段20内のウィンド処理部24(図1参照)は、旋回検出手段からの旋回信号に応答してウィンド領域の設定位置を変更すればよい。
【0065】図6は、右カーブの道路に倣って右旋回したときのウィンド領域W1〜W7を示す説明図であり、自車両に近いウィンド領域W1〜W3は、画像G内で右旋回するように、又は、圧縮されるように設定される。即ち、ウィンド処理部24は、自車両の旋回信号に応じて、相対的に旋回する画像Gを想定して各ウィンド領域W1〜W7を設定する。
【0066】このように、ハンドル操作による実際の旋回量又は旋回速度等に応じてウィンド領域を設定することにより、道路状態にかかわらず最適に後方車両Bを検出することができる。従って、接近対象物検出手段20は、自車両に対する後方車両Bの動きを適確に検出することができ、例えば、旋回時の自車両に後方車両Bが衝突する可能性がある場合には直ちに判定信号Dを生成することができる。
【0067】実施例7.又、後方車両Bの動きを容易に識別するために、図2のように、ウィンド領域W1〜Wnを放射線道路に沿って設定したが、要求に応じて任意の方向に沿って設定することができる。
【0068】又、ウィンド領域W1〜Wnの数nが7個の場合を例示したが、任意の数に設定することができる。このとき、ウィンド領域数nを大きく設定すればするほど後方車両Bの判定精度が向上するが、それだけ演算時間を要するため、代表値抽出部25やシフト量演算部28等の演算時間との兼合いで適切な値に設定される。
【0069】実施例8.又、1つの表示画像に対して1ブロックのウィンド領域W1〜Wnを設定し、代表値F1〜FnのパターンPを1つのデータ列のみ生成したが、ウィンド領域W1〜Wnを複数ブロックに分割して各ブロック毎にパターンを設定してもよい。この場合、各ブロック内に存在する後方車両の動きを、個々に分割して高精度に監視することができる。
【0070】実施例9.又、各ウィンド領域W1〜Wnの代表値F1〜Fnとしてウィンド領域内の画素の明るさの平均値を採用したが、明るさの最大値、最小値、最大値と最小値との差、又は、最大値と最小値との比を代表値F1〜Fnとして採用してもよい。特に、夜間等ではヘッドライトの点灯によりヘッドライト部のみが明るくなるので、各ウィンド領域W1〜Wn毎の特徴量を顕著にするためには、明るさの平均値よりも最大値を代表値F1〜Fnとすることが望ましい。
【0071】実施例10.(請求項7に対応)
又、ウィンド領域W1〜Wnを一次元に設定して各代表値F1〜Fnの一次元のデータ列からなるパターンPを作成したが、ウィンド領域を二次元に設定して二次元のデータ列からなるパターンを作成してもよい。
【0072】図7は二次元のウィンド領域W11〜Wnm(例えばW11〜W76)を設定した実施例6による画像Gを示す説明図であり、ここでは、道路方向に沿って7個、道路面に垂直な方向に沿って6個だけ設定した例を示す。図8は図7内の後方車両Bによる二次元パターンPo′及びP′を示す説明図であり、図8(a)のパターンPo′は時刻toにおける前回パターン、図8(b)のパターンP′は時刻to+Δtにおける今回パターンである。
【0073】図9はパターンP′のシフト補正量ΔPfn及びΔPfmに対する代表値偏差ΔF′の関係を示す特性図であり、代表値偏差ΔF′を最小にするシフト補正量(ΔPfn,ΔPfm)が二次元座標からなるシフト量(ΔPn,ΔPm)として求められる。
【0074】この場合、シフト量演算部28は、或る時刻toでのパターンPo′と、微小時間Δt後の時刻to+ΔtでのパターンP′とのシフト量(ΔPn,ΔPm)を、図9のように求めるため、二次元のシフト補正量(ΔPfn,ΔPfm)を変化させながら、以下の代表値偏差ΔF′の演算を繰り返し行う。
【0075】
ΔF′=(1/n)(1/m)ΣΣ|f′(k,j)−F′(k+ΔPfn,j+ΔPfm)|…(2)
【0076】但し、(2)式において、k=1〜n、j=1〜mであり、f′(k,j)は前回パターンPo′の(k,j)番目のウィンド領域Wkjの代表値、F′(k+ΔPfn,j+ΔPfm)は今回パターンP′の(k+ΔPfn,j+ΔPfm)番目の代表値である。従って、代表値偏差ΔF′は、今回パターンP′をシフト補正量(ΔPfn,ΔPfm)だけずらしたときの、各ウィンド領域毎の代表値の各偏差の総和を正規化した値を示している。
【0077】(2)式のように、放射線道路方向及び垂直方向にシフト補正量(ΔPfn,ΔPfm)を変化させながら繰り返し演算することにより、図9の特性図が得られる。この結果、代表値偏差ΔF′を最小にする二次元シフト量(ΔPn,ΔPm)が求められ、このシフト量(ΔPn,ΔPm)は、前回パターンPo′と今回パターンP′とを最も一致させる値となる。
【0078】従って、後方車両Bは、微小時間Δtの間に、図9内のベクトルVだけ移動したことになり、前述と同様に、ベクトルVが正方向を示せば離間中、ベクトルVが負方向を示せば接近中であることが判定される。このように、二次元のパターンP′を用いれば、対象物の動きを更に詳細に把握することができ、接近対象物の判定信頼性が向上する。
【0079】
【発明の効果】以上のようにこの発明の請求項1によれば、画像を撮影する撮像手段と、画像を複数のウィンド領域に分割するウィンド処理部と、ウィンド領域毎の特徴量を代表値として抽出する代表値抽出部と、各代表値をデータ列として画像に対応したパターンを作成するパターン作成部と、異なる撮像タイミングでの画像の各パターンを比較してシフト量を算出するシフト量演算部と、シフト量が接近対象物の存在を示す所定値以上のときに判定信号を生成する判定部とを設けたので、接近対象物を自動的且つ確実に判定することのできる接近対象物検出装置が得られる効果がある。
【0080】又、この発明の請求項2によれば、請求項1において、撮像手段を車両に設置して車両の後方画像を撮影するようにしたので、車両の後方からの接近対象物を自動的且つ確実に判定することのできる接近対象物検出装置が得られる効果がある。
【0081】又、この発明の請求項3によれば、請求項2において、判定信号に応答して警報駆動信号を生成するコントローラと、警報駆動信号により駆動される警報手段とを設け、後方からの接近対象物を判定したときに警報手段を駆動し、運転者に注意を促すようにしたので、車両の後方からの接近対象物を自動的且つ確実に判定して安全性を確保した接近対象物検出装置が得られる効果がある。
【0082】又、この発明の請求項4によれば、請求項3において、車両の走行方向の変更時に操作されるスイッチ手段を備え、撮像手段が車両の走行方向に対応した複数の後方画像を撮像し、判定部が各後方画像に対する判定信号を生成し、コントローラが、スイッチ手段からの操作信号に応答して、変更後の走行方向に対する判定信号が検出されたときに警報駆動信号を生成して注意を促すようにしたので、変更後の走行路における接近対象物を自動的且つ確実に判定すると共に、危険を報知して安全性を確保した接近対象物検出装置が得られる効果がある。
【0083】又、この発明の請求項5によれば、請求項2〜請求項4のいずれかにおいて、車両の旋回状態を検出する旋回検出手段を備え、ウィンド処理部が、旋回検出手段からの旋回信号に応答してウィンド領域の設定位置を変更し、旋回後の走行路上で接近中の後方対象物を検出するようにしたので、道路状態にかかわらず接近対象物を自動的且つ確実に判定して安全性を確保した接近対象物検出装置が得られる効果がある。
【0084】又、この発明の請求項6によれば、請求項1〜請求項5のいずれかにおいて、ウィンド領域を無限遠の注視点からの放射線に沿って設定し、代表値パターンを一次元のデータ列としたので、接近対象物を自動的且つ確実に判定することのできる接近対象物検出装置が得られる効果がある。
【0085】又、この発明の請求項7によれば、請求項1〜請求項5のいずれかにおいて、ウィンド領域を、無限遠の注視点からの放射線に沿って設定すると共に、放射線に対して垂直な方向に沿って設定し、代表値パターンを二次元のデータ列としたので、接近対象物を自動的且つ確実に判定することのできる接近対象物検出装置が得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例1による接近対象物検出手段の機能構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施例1により設定されるウィンド領域を画像と共に示す説明図である。
【図3】この発明の実施例1により作成されるパターンを示す説明図である。
【図4】この発明の実施例1により演算されるシフト補正量に対する代表値偏差の変化を示す特性図である。
【図5】この発明の実施例5の機能構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施例6により設定されるウィンド領域を示す説明図である。
【図7】この発明の実施例10により設定されるウィンド領域を画像と共に示す説明図である。
【図8】この発明の実施例10により作成されるパターンを示す説明図である。
【図9】この発明の実施例10により演算されるシフト補正量に対する代表値偏差の変化を示す特性図である。
【図10】従来の接近対象物検出装置の一例を示すブロック図である。
【図11】図10の装置による接近対象物検出動作を示す説明図である。
【図12】従来の接近対象物検出装置の第2例による動作を示す説明図である。
【図13】従来の接近対象物検出装置の第3例による表示画像を示す説明図である。
【符号の説明】
21 カメラ(撮像手段)
24 ウィンド処理部
25 代表値抽出部
26 パターン作成部
28 シフト量演算部
29 判定部
31 ウィンカスイッチ(スイッチ手段)
32 コントローラ
33 警報手段
G 画像
B 後方車両
D 判定信号
E 警報駆動信号
S 操作信号
F1〜Fn 代表値
P、P′ 今回パターン
Po、Po′ 前回パターン
ΔP、ΔPn、ΔPm シフト量
W1〜Wn ウィンド領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】 画像を撮影する撮像手段と、前記画像を複数のウィンド領域に分割するウィンド処理部と、前記ウィンド領域毎の特徴量を代表値として抽出する代表値抽出部と、前記各代表値をデータ列として前記画像に対応したパターンを作成するパターン作成部と、異なる撮像タイミングでの前記画像の各パターンを比較してシフト量を算出するシフト量演算部と、前記シフト量が所定値以上のときに判定信号を生成する判定部とを備え、前記所定値は、前記撮像手段に接近する対象物の存在を示すレベルに設定されたことを特徴とする接近対象物検出装置。
【請求項2】 前記撮像手段は、車両に設置されて前記車両の後方画像を撮影することを特徴とする請求項1の接近対象物検出装置。
【請求項3】 前記判定信号に応答して警報駆動信号を生成するコントローラと、前記警報駆動信号により駆動される警報手段とを設けたことを特徴とする請求項2の接近対象物検出装置。
【請求項4】 前記車両の走行方向の変更時に操作されるスイッチ手段を備え、前記撮像手段は、前記車両の走行方向に対応した複数の後方画像を撮像し、前記判定部は、前記各後方画像に対する判定信号を生成し、前記コントローラは、前記スイッチ手段からの操作信号に応答して、変更後の前記走行方向に対する判定信号が検出されたときに、前記警報駆動信号を生成することを特徴とする請求項3の接近対象物検出装置。
【請求項5】 前記車両の旋回状態を検出する旋回検出手段を備え、前記ウィンド処理部は、前記旋回検出手段からの旋回信号に応答して前記ウィンド領域の設定位置を変更することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかの接近対象物検出装置。
【請求項6】 前記ウィンド領域は、無限遠の注視点からの放射線に沿って設定され、前記パターンは、一次元のデータ列からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかの接近対象物検出装置。
【請求項7】 前記ウィンド領域は、無限遠の注視点からの放射線に沿って設定されると共に、前記放射線に対して垂直な方向に沿って設定され、前記パターンは、二次元のデータ列からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかの接近対象物検出装置。
【請求項1】 画像を撮影する撮像手段と、前記画像を複数のウィンド領域に分割するウィンド処理部と、前記ウィンド領域毎の特徴量を代表値として抽出する代表値抽出部と、前記各代表値をデータ列として前記画像に対応したパターンを作成するパターン作成部と、異なる撮像タイミングでの前記画像の各パターンを比較してシフト量を算出するシフト量演算部と、前記シフト量が所定値以上のときに判定信号を生成する判定部とを備え、前記所定値は、前記撮像手段に接近する対象物の存在を示すレベルに設定されたことを特徴とする接近対象物検出装置。
【請求項2】 前記撮像手段は、車両に設置されて前記車両の後方画像を撮影することを特徴とする請求項1の接近対象物検出装置。
【請求項3】 前記判定信号に応答して警報駆動信号を生成するコントローラと、前記警報駆動信号により駆動される警報手段とを設けたことを特徴とする請求項2の接近対象物検出装置。
【請求項4】 前記車両の走行方向の変更時に操作されるスイッチ手段を備え、前記撮像手段は、前記車両の走行方向に対応した複数の後方画像を撮像し、前記判定部は、前記各後方画像に対する判定信号を生成し、前記コントローラは、前記スイッチ手段からの操作信号に応答して、変更後の前記走行方向に対する判定信号が検出されたときに、前記警報駆動信号を生成することを特徴とする請求項3の接近対象物検出装置。
【請求項5】 前記車両の旋回状態を検出する旋回検出手段を備え、前記ウィンド処理部は、前記旋回検出手段からの旋回信号に応答して前記ウィンド領域の設定位置を変更することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかの接近対象物検出装置。
【請求項6】 前記ウィンド領域は、無限遠の注視点からの放射線に沿って設定され、前記パターンは、一次元のデータ列からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかの接近対象物検出装置。
【請求項7】 前記ウィンド領域は、無限遠の注視点からの放射線に沿って設定されると共に、前記放射線に対して垂直な方向に沿って設定され、前記パターンは、二次元のデータ列からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかの接近対象物検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図11】
【図5】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図11】
【図5】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図10】
【特許番号】特許第3014233号(P3014233)
【登録日】平成11年12月17日(1999.12.17)
【発行日】平成12年2月28日(2000.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−5877
【出願日】平成5年1月18日(1993.1.18)
【公開番号】特開平6−214014
【公開日】平成6年8月5日(1994.8.5)
【審査請求日】平成9年8月8日(1997.8.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【参考文献】
【文献】特開 平6−293236(JP,A)
【文献】特開 平3−41599(JP,A)
【文献】特開 平6−247246(JP,A)
【文献】特開 平6−314340(JP,A)
【文献】特開 平2−241855(JP,A)
【文献】特開 平5−278541(JP,A)
【文献】特開 平1−161507(JP,A)
【文献】特公 平6−92976(JP,B2)
【文献】特許2887039(JP,B2)
【登録日】平成11年12月17日(1999.12.17)
【発行日】平成12年2月28日(2000.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成5年1月18日(1993.1.18)
【公開番号】特開平6−214014
【公開日】平成6年8月5日(1994.8.5)
【審査請求日】平成9年8月8日(1997.8.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【参考文献】
【文献】特開 平6−293236(JP,A)
【文献】特開 平3−41599(JP,A)
【文献】特開 平6−247246(JP,A)
【文献】特開 平6−314340(JP,A)
【文献】特開 平2−241855(JP,A)
【文献】特開 平5−278541(JP,A)
【文献】特開 平1−161507(JP,A)
【文献】特公 平6−92976(JP,B2)
【文献】特許2887039(JP,B2)
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