説明

推進剤推進式定量エアロゾルのための衝突ノズル

弁または弁システムを備える推進剤ガス吸入器であり、弁または弁システムを通して、0度より大きく180度以下の角度で互いに向かって進む、少なくとも2つのエアロゾル雲または少なくとも2つのスプレー噴流が生成され、個々のエアロゾル粒子が互いに少なくとも部分的に衝突し、これにより運動エネルギーを失う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入により肺へエアロゾル製剤の投与を行う推進剤推進式吸入器のための新規なノズル、または新規なノズルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
推進剤推進式吸入器では、カートリッジのようなキャニスタ内に活性物質が推進剤と共に貯蔵される。これらのキャニスタは、一般的に、弁が組み込まれたアルミニウム製の弁カップでシールされたアルミニウム容器からなる。この種のキャニスタは、吸入器にカートリッジのように入れられ、そこに永久に残され、または使用後に新たなカートリッジと交換される。
【0003】
通常、キャニスタまたは容器は、アルミニウム、不活性樹脂で内側が覆われたアルミニウム、または、ステンレス鋼等で作られたケーシングによって形成される。通常、このような容器の一つは、4つの異なる領域を有する。すなわち、平面のまたは内部にくぼむドーム状の基部と、円筒型の胴部と、胴部の頂部が合体している第3部分であるテーパー状の首部と、最終的に容器の開口を包囲し終端する端部と、例えばクリンプされた端部である。
【0004】
典型的には、これらの容器は、5〜50mlの量を保持することができるような寸法である。
【0005】
閉鎖状態では、容器は、医薬製剤と推進剤を充填後に弁カップでしっかりとシールされる。弁カップの一例として英国特許第2324121号があり、この特許を本件明細書に援用する。
【0006】
キャニスタの閉鎖状態では、弁カップは、開口端部で容器の周囲をクリンプする。一般的に、シールが容器から弁カップをシールする。シールは、環状または円盤状の構造であり、推進剤としてフルオロハイドロカーボンを伴う医薬製剤の使用に適した材料からなる。例として、熱可塑性樹脂、エラストマー、ネオプレン、イソブチレン、イソプレン、ブチルゴム、ブナゴム、ニトリルゴム等の材料、エチレンとプロピレンのコポリマー、エチレンとプロピレンとジエン(例えばブタジエン)のターポリマー、またはフッ素化ポリマーを含む。好ましい材料は、エチレン/プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)である。
【0007】
弁カップは、弁によって貫かれ、弁は、容器の内側に面する側に、且つエアロゾル製剤を含む推進剤を霧状にするノズルの外側に弁ステムを有する。弁は、シールによって開口中央で弁カップからシールされる。最も簡単な場合では、弁は円筒形である。この円筒の基端部は容器の内部へ突出し、先端部は容器の外部へ突出する。先端部は、ノズル開口を含む。基端部は、液体またはガスを容器内に導くための注入口を有する。
【0008】
この種の弁は、バネまたは弁部材のような他の構成部品を内部に有する。弁は、バネに抗する容器内への上下運動によって開く。バネは、この運動に対抗し、動作後に自動的に弁を閉じる。
【0009】
エアロゾル製剤が、推進剤の断熱膨張を用いて、従来技術で知られている推進剤推進式吸入器により霧化されエアロゾルになると、生成されたエアロゾルは高速で移動する。これは、推進剤が高蒸気圧を有し、その結果、弁が開くと、対応する高圧が放出されることによる。これらの高速は、生成されたエアロゾルのかなりの部分が、これを吸入する患者の口腔咽頭の腔内に浮遊したままになり、したがって活性の目標部位、すなわち肺で利用できないことを意味する。
【0010】
【特許文献1】英国特許第2324121号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来技術で知られている推進剤推進式吸入器の欠点を解消することである。
【0012】
特に、本発明は、より低速で移動するエアロゾルを生成するために、推進剤推進式吸入器の弁を改良している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、この課題を、個々のエアロゾル粒子が少なくとも部分的に互いに衝突し、その結果、運動エネルギーを失うように、互いのなす角度が0度より大きく180度以下で移動する、少なくとも2つのエアロゾル雲または少なくとも2つのスプレー噴流を生成する弁または弁システムを有する推進剤推進式吸入器を提供することによって解決する。ノズル開口は、好ましくは、開口を越えたノズルチャンネルの直線状の延長線と、ノズルの長手方向軸とが、一つの平面に位置するように配置される。換言すると、すべての実施形態で、ノズル開口を形成するチャンネルの部位は、好ましくは、当該の弁の長手方向主軸線に対して0度より大きく90度以下の角度で傾斜する。0度より大きく45度以下の角度が好ましい。角度0度は、弁開口が弁の長手方向面と一直線になることを意味する。
【0014】
好ましい実施形態では、本発明の基礎となる課題は、マルチチャンネルノズルであって、ノズル開口の前のノズル開口までの領域で、少なくとも先端部でチャンネルが互いに或る角度で傾斜し、通過するエアロゾル噴流がノズル後方の下流側で互いに衝突するノズルによって解決される。
【0015】
本発明に係るノズルは、第1のエアロゾル粒子が高運動エネルギーで生成され、これにより微粒子破片が相応して高運動エネルギーを有することに特徴付けられる。そして、第1のエアロゾル粒子は、噴流の衝突によって再び減速される。放出されたエネルギーは、時には、これらのエアロゾル粒子を含む第1の推進剤のさらなる粉砕をもたらし、第2のエアロゾル粒子を形成する。
【0016】
特に好ましい実施形態によれば、ノズルは2チャンネルノズルであり、これら両方のチャンネルが、弁の基端部、すなわち弁ステムから始まり、弁を通って、0度<α≦180度の角度αで、ノズル開口領域で互いに傾斜し、これにより、出てくるスプレー噴流またはエアロゾル雲が、0度<α≦180度の角度αで互いに向かって移動することが想定される。最適な角度は、とりわけ推進剤ガス製剤の構成および他のパラメータによって決定される。
【0017】
好ましくは、エアロゾル製剤がどのチャンネルを通過したとしても、エアロゾル製剤がノズルを通過するのに要する時間が等しくなるように、この種のマルチチャンネルノズルのチャンネルは、等しい直径および等しい長さを有する。換言すると、ノズルを通過する距離が等しい長さで、等しい直径である。本実施形態は、最低限の2つのエアロゾル噴流のどちらも、衝突相手を持つことなく、ノズルから早く出過ぎないという利点を有する。
【0018】
この種の他の実施形態は、そのようなチャンネルを2以上有する。
【0019】
他の実施形態では、弁の基端部に一つのチャンネルのみがあり、これは弁本体内で少なくとも2つのチャンネルに分岐し、これら2つのチャンネルは等しい流動抵抗を有する。好ましくは、2つのチャンネルは、等しい長さと直径を有する。ここで、また、2つのチャンネルは、ノズル開口領域で互いに向かって移動し、これにより出てくるスプレー噴流またはエアロゾル雲は、0度<α≦180度の角度αで互いに向かって移動する。
【0020】
この種の他の実施形態は、分岐領域での先端部で2以上のそのようなチャンネルを含む。
【0021】
他の実施形態では、本発明の基礎をなす課題は、エアロゾル容器は1つの弁だけではなく、少なくとも2つの弁を含むことによって解決される。最低限の2つの弁では、ノズルの開口に至るまでの開口の前の領域でチャンネルはある角度をなし、これにより出てくるスプレー噴流またはエアロゾル雲が、0度<α≦180度の角度αで互いに向かって移動する。
【0022】
本実施形態の好ましい変形では、最低限の2つの弁を容器内で上下方向に一緒にしか移動させない手段によって、最低限の2つの弁を一体に連結することができ、その結果、弁はいつも同時に開く。このような手段は、例えば両弁に固定して取り付けられたブリッジのような剛体のブリッジ、または両弁の先端部を覆う共有キャップからなる。
【0023】
キャップは、個々の弁の各ノズル開口上に一つ以上の開口を有する。
【0024】
ブリッジは、先端部と基端部の両方で、すなわち容器の外側に位置する側または容器の内側に位置する側で、2つの弁を連結できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、2つのチャンネル2、3を有する2チャンネルノズルの形態のマルチチャンネルノズル1を示している。このマルチチャンネルノズルは、弁の先端領域にスプレーヘッドとして構成することができる。チャンネル2、3は、角度αで互いに傾斜している。この角度を図示するために、各チャンネルの仮想長手方向軸線が示されており、これらの交差点が、エアロゾル噴流/雲の衝突点に相当する。この角度は、衝突点における2つの曲線状の矢印と2つの長手方向軸を連結する曲線によって示されている。角度αは、0度より大きく180度までにすることができる。この傾斜は、チャンネル1から出てくるエアロゾル噴流またはエアロゾル雲を、チャンネル2から出てくるものと確実に衝突させるだけでなく、エアロゾル粒子を確実に互いを減速させる。図1に示す実施形態では、2つのチャンネル1、2で均一に推進剤ガス製剤が供給される。
【0026】
上述のように、これらのエアロゾル噴流は、0度より大きく180度までの任意の所望の角度、ノズル開口表面からの任意の所望の間隔、任意の所望の速度で互いに衝突することができる。パラメータの比が、形成される二次的なエアロゾル雲の分散の程度および速度を決定する。
【0027】
図2は、2つの弁5、6を有する計量エアロゾル容器4の実施形態を示す。2つの弁5、6の開口7、8は、本発明にしたがって互いに傾斜している。2つの弁5、6には、弁開口7、8の前側に少なくとも一つの開口を有する共有キャップ9が装着され、これにより2つの弁5、6は一緒にしか移動できない。これら弁は、バネ10に抗して容器内へ垂直に移動することができる。図面は、2つの弁ステムを示しており、これらは容器の長手方向軸線と平行に(上部から下部へ垂直に)、これらの基端部から弁カップの直上まで延び、弁カップの上方で互いに向かって曲がっている。他の実施形態では、弁ステムはまっすぐで、開口に通じるチャンネル7、8のみが同様に傾斜する。
【0028】
図3は、2つの弁5、6を有する計量エアロゾル容器4の実施形態を示す。2つの弁5、6の開口7、8は、本発明にしたがって互いに傾斜している。2つの弁5、6には、2つの弁を互いにしっかりと堅固に結合する共有ブリッジ11が装着され、これにより2つの弁5、6は一緒にしか移動することができない。弁の外形に関しては、弁ステムが必ずしも弁カップ上で曲がっていなくてもよいことは、本実施形態についても当てはまる。しかし、弁カップ内でチャンネルのみが傾斜することが可能である(図2に関連する記載を参照)。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】マルチチャンネルノズルを示す図である。
【図2】一実施形態に係る計量エアロゾル容器を示す図である。
【図3】他の実施形態に係る計量エアロゾル容器を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進剤推進式定量エアロゾルのためのキャニスタであって、
容器と弁カップからなり、少なくとも一つの弁または弁システムが、前記弁カップに組み込まれ且つ該弁カップを貫通し、
前記弁または弁システムの基端部は前記容器の内側に突出し、先端部は容器の外側に位置し、
前記弁または弁システムは、容器の内側から外側へ推進剤ガス製剤を搬送するための一または複数のチャンネルを有し、
前記弁または弁システムは、少なくとも2つの外部のノズル状の弁開口を含み、該弁開口は、少なくとも一つのチャンネルに連結され、且つこれら弁開口から出現する流体噴流、エアロゾル噴流またはエアロゾル雲を、互いに0度より大きく180度以下の角度をなして導くように整列され、
前記弁または弁システムは、前記弁カップの中を通って部分的に垂直に移動可能であり、これにより開く、
ことを特徴とするキャニスタ。
【請求項2】
前記弁または弁システムは、互いに連結されず、各々がノズル開口で終端する少なくとも2つのチャンネルを含む、
請求項1に記載のキャニスタ。
【請求項3】
前記弁または弁システムは、互いに連結されず、各々がノズル開口で終端する2つのチャンネルを含む、
請求項1に記載のキャニスタ。
【請求項4】
前記弁または弁システムの基端部に、前記弁または弁システムの内部で少なくとも2つの枝に分岐した単一のチャンネルが形成され、前記2つの枝の各々がノズル開口へ通じている、
請求項1に記載のキャニスタ。
【請求項5】
最低限の2つの枝が、等しい長さと直径を有する、
請求項4に記載のキャニスタ。
【請求項6】
前記弁または弁システムの容器内への垂直な移動は、バネに抗するように方向付けられている、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のキャニスタ。
【請求項7】
ノズル開口を通って延長される直線と、弁カップへの垂線とが、一つの平面に位置する、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のキャニスタ。
【請求項8】
ノズル開口を通って延長される直線によって形成される平面と、弁カップへの垂線とが、或る角度をなす、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のキャニスタ。
【請求項9】
平面への垂線と弁カップへの垂線は、第2の平面をなす、
請求項8に記載のキャニスタ。
【請求項10】
平面への垂線と弁カップへの垂線は、互いに或る角度をなす、
請求項8に記載のキャニスタ。
【請求項11】
前記弁または弁システムは、単一の円筒型の弁であり、その長手方向軸線は、弁カップを垂直に貫通する、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載のキャニスタ。
【請求項12】
前記弁または弁システムは、少なくとも2つの円筒型の弁からなる弁システムであり、
前記少なくとも2つの円筒型の弁は、その長手方向軸線が弁カップを垂直に貫通し且つ堅固なブリッジによって一緒に固定的に一体にされ、一体的にのみ移動できる、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載のキャニスタ。
【請求項13】
前記ブリッジは、弁の2つの先端部を覆い、且つ弁開口を外部に開放する少なくとも一つの開口を含むキャップである、
請求項12に記載のキャニスタ。
【請求項14】
前記ブリッジは、容器の外部の固定連結部である、
請求項12に記載のキャニスタ。
【請求項15】
前記ブリッジは、容器の内部の固定連結部である、
請求項12に記載のキャニスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−526809(P2007−526809A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501165(P2007−501165)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001803
【国際公開番号】WO2005/087298
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】