説明

推進型プロペラを備えるターボプロップ推進装置

【課題】推進システムの総合的な信頼性が高いターボプロップ推進装置を提供する。
【解決手段】本発明のターボプロップ推進装置は、航空機用ガスタービンエンジンにより駆動される少なくとも1個の推進型プロペラ5、6を備え、航空機用ガスタービンエンジンは飛行方向において推進型プロペラ5、6の前方に配置され、タービン排気口部は飛行方向において前部に配置され、コンプレッサ部14は推進型プロペラ5、6に向けて配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用ガスタービンエンジンにより駆動される少なくとも1個の推進型プロペラを備えるターボプロップ推進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最新技術によれば、ターボプロップ推進装置に航空機用ガスタービンエンジンを用いること、および推進型プロペラを利用することは公知である。飛行方向に沿って見た場合、航空機用ガスタービンエンジンは1個もしくは複数の推進型プロペラの前方に配置される。より詳細には、このような推進装置は、航空機尾部構造として公知である。
【0003】
公知のターボプロップ推進装置において、航空機用ガスタービンエンジンは通常の気流の方向に配置される。すなわち、航空機用ガスタービンエンジンは(航空機の長さ方向の軸に対して)前方方向から気流を受け、これにより、通常の構造においては流入空気は燃焼室に到達する前にコンプレッサを通過し、排出ガスはタービンに供給される。この場合、コンプレッサに直接接続するピトー式流入口はエンジン室の前方部分に配置される。従って、1個もしくは複数の推進型プロペラにタービン軸を介して出力を伝達するタービンは、下流方向に配置される。この場合、出力はプロペラ減速ギアを介して、もしくは直接プロペラに伝達する。公知の配置において、更に下流方向には排出ガスを排出するためのノズルが配置される。
【0004】
最新技術による構成は以下のような不都合を有する。
【0005】
プロペラ駆動が高温排出ガスの出射口の直近に位置するため、プロペラはターボ機械の高温排出ガス内で動作する。これによりプロペラの寿命が大幅に減少する。更に、騒音が増大する。
【0006】
更に、主な不都合として、高温排出ガスがプロペラギア周囲を流れるため、サスペンション構造、制御機構、およびギア自体を冷却するために相当な労力を要するという点がある。このような冷却は通常、コスト高であり重量増加の原因となる、大型の油・空気冷却器により実行される。
【0007】
上述のような装置の他の不都合は、装置に不具合が起きやすく、短い稼動時間で大規模な分解修理が必要となることである。推進システムの総合的な信頼性が不十分である。更に、ギアおよびプロペラブレードピッチ制御機構から油が漏れた場合に火災が発生する恐れがあり、危険性が高い。
【0008】
最新技術として、特許文献1を参照する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開公報第2008/258005号
【発明の概要】
【0010】
本発明は広義には、冒頭で説明したような、構成が単純で容易にコスト効率よく製造可能でありながら、最新技術における不都合を防止し、高い信頼性を有するターボプロップ推進装置を提供するものである。
【0011】
本発明の詳細な目的は、請求項1に記載の特徴の組合せにより、上述の問題に対する解決策を提供することである。本発明の更に効果的な実施の形態は、従属請求項により明らかとなる。
【0012】
したがって本発明によれば、航空機用ガスタービンエンジンが気流方向に対して逆方向に設置されたターボプロップ推進装置が提供される。したがって、航空機用ガスタービンエンジンは高温排出ガスが飛行方向に対して前方において出射するよう構成され、冷却器コンプレッサ部は推進型プロペラに隣接して配置される。
【0013】
本発明の好ましい形態において、タービン軸は推進型プロペラに向かって伸長し、推進型プロペラを駆動するギアに接続される。すなわち、ギアは高温排出ガスの領域内に配置されず、これにより、高価な冷却装置を完全に省略もしくは、小型化することが可能となる。
【0014】
プロペラ、ギア、および制御機構の熱負荷を軽減することにより、信頼性を向上し、大規模な分解修理までの稼動時間を延長することが可能となる。
【0015】
本発明による装置はまた、ノズルから出射する排出ガスが直接プロペラに誘導されず、後方ノズル内を流れないため、騒音を軽減する。
【0016】
更なる利点は、サスペンション構造を小型化し、その結果、軽量化することが可能な点である。
【0017】
本発明によれば、特に好ましくは、流入空気をコンプレッサの方へ方向転換し、コンプレッサの流入部分内に伸長する少なくとも1個の吸気管を備える。これにより、供給される空気は180°方向転換され、飛行方向に対して後方から航空機用ガスタービンエンジンのコンプレッサに供給される。
【0018】
また、特に好ましくは、排出ガス流を推力プロペラの方向に方向転換する排出ガス流管を備える。これにより、排出ガスもまた180°方向転換され、後方のプロペラ部分内へ明確に配向される。ターボプロップ推進装置の構造長により、タービンから出射し、排出ガス流管に進入した際には非常に高温であるガス流は大幅に冷却され、プロペラ部分に到達する時は例えばたった100°Cとなる。好ましい実施の形態において、排出ガス流管はターボプロップ推進装置の前方部分内に伸長してもよく、これにより、コンプレッサに供給される排出ガスおよび外気の流れが遮断されないよう確実に誘導する。この場合、特に好ましくは、吸気管および排出ガス流管はターボプロップ推進装置の周方向においてオフセット配置される。
【0019】
本発明によれば、2個の二重反転推進型プロペラ用の構成を提供することができる。
【0020】
本発明は二重反転プロペラの尾部構造に制限されるものではなく、1個のプロペラのみを備える尾部構造もしくはプロップファン構造も含む。
【0021】
以下に、好ましい実施の形態を示す添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、部分的に断面図として示す、航空機に設けられる本発明によるターボプロップ推進装置の尾部構造の部分側面図である。
【図2】図2は、簡略化した部分斜視図である。
【図3】図3は、図1と同じ部分の正面図である。
【図4】図4は、排出ガス変流ケーシングの実施の形態の概略斜視図である。
【図5】図5は、本発明による流入管の実施の形態の簡略化した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、航空機の機体23の後方部分(尾部)を示す。図3に示すように、エンジン室2はパイロン1により機体23に取付けられる。エンジン室は、通常通り、航空機用ガスタービンエンジンを含むターボ機械を内包する。
【0024】
エンジン室上には2個の推進型プロペラ、詳細には前プロペラ5および後プロペラ6が設けられる。図1は、前プロペラハブの整流板3および後プロペラハブの整流板4を示す。前プロペラハブ21および後プロペラハブ22を含む推進型プロペラ5および6は最新技術によるものであり、ここでは詳細な説明は省略する。
【0025】
2個の推進型プロペラ5、6は、気流の方向において推進型プロペラ5、6の上流に配置されるプロペラ減速ギア12を介して、タービン軸により駆動される。
【0026】
本発明によれば、航空機用ガスタービンエンジンは、コンプレッサ吸気ケーシング13が飛行方向においてプロペラ減速ギア12の前に配置されるよう構成される。エンジン吸気口7からの空気は、流入管11(吸気管)を介してコンプレッサ吸気ケーシング13内に流れ込む。図1に示すように、流入空気はコンプレッサ14内に進入する前に原則的に180°方向転換される。
【0027】
空気は、飛行方向と対向する方向にコンプレッサ14から燃焼室15に流れ、その後、ガス発生器のタービン16内に流れる。その後、ガスが参照番号17で表す出力タービンを流れる。排出ガスはその後、排出ガス変流ケーシング10(排出ガス流管)内に流れ込み、ここでは、排出ガスが約180°方向転換されてプロペラ5、6に向かって後方に排出される。参照番号9は、排出ガス変流ケーシング10の整流板を備えるノズルを示す。
【0028】
したがって、流入空気はまずプロペラ5、6に隣接する後方部分に到達し、その後、航空機用ガスタービンエンジン内を飛行方向に対向して前方に通過し、出射口において再度後方に方向転換される。
【0029】
図1は更に、エンジンサスペンション構造の連結部18、および図3に示す流入口8を備える空気・油冷却器19を示す。参照番号20はターボ機械付属部材駆動ケーシングを表わす。
【0030】
図3は、二重反転プロペラブレードの回転方向を示す正面図である。更に、図3によれば、油冷却器への流入口8、エンジン吸気口7およびノズル9は気流が阻害されないよう周方向においてオフセット配置される。
【0031】
図2は、図3を参照して既に説明したパイロン1、吸気/流入口7、8、およびノズル9によりエンジン室2のサスペンション構造の概略斜視図を示す。
【0032】
図4および図5はそれぞれ、排出ガス変流ケーシング/排出ガス流管10(図4)および流入管/吸気管11(図5)の簡略化した斜視図を示す。
【0033】
図4は、図示しない出力タービン17からの排出ガスの流入、および排出ガスを2個の側方ノズル9に供給するための排出ガスの方向転換および配流を示す。排出ガスの流入口は環状である。気流の最適化を通して、ノズル9により残留推力が生成される。
【0034】
図5は、エンジン吸気口7から、コンプレッサ吸気ケーシング13(図1参照)に設けられる環状で放射状の流入口への、連続するディフューザ型の通気路を形成する空気流入管(吸気管)11を示す。
【0035】
したがって本発明によるターボプロップ推進装置は、航空機の尾部において、推力および全エンジン負荷をパイロン1を通して機体23に伝達する。プロペラ5、6は、エンジン室2の下流において、自由なサスペンション配置で推進型プロペラ尾部構造に対応して動作する。
【0036】
本発明においては、吸気口/流入口7、8およびノズル9を例えば環帯状もしくは複合的構造に変形してもよい。本発明によれば、気流および排出ガス流の方向転換に関し、ターボ機械を反転して構成することが重要である。
【符号の説明】
【0037】
1 パイロン
2 エンジン室
3 前プロペラハブの整流板
4 後プロペラハブの整流板
5 前プロペラ/推進型プロペラ
6 後プロペラ/推進型プロペラ
7 エンジン吸気口
8 空気・油冷却器への流入口
9 排出ガス変流ケーシング/タービン排気口部の整流板を備えるノズル
10 排出ガス変流ケーシング/排出ガス流管
11 流入管/吸気管
12 プロペラ減速ギア
13 コンプレッサ吸気ケーシング
14 コンプレッサ
15 燃焼室
16 ガス発生器のタービン
17 出力タービン
18 エンジンサスペンション構造の連結部
19 (空気流入口8を備える)空気・油冷却器
20 ターボ機械付属部材駆動ケーシング
21 前プロペラハブ
22 後プロペラハブ
23 機体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機用ガスタービンエンジンにより駆動される少なくとも1個の推進型プロペラ(5、6)を備え、
前記航空機用ガスタービンエンジンは飛行方向において前記推進型プロペラ(5、6)の前方に配置され、
タービン排気口部(9)は飛行方向において前部に配置され、
コンプレッサ部(14)は前記推進型プロペラ(5、6)に向けて配置されることを特徴とするターボプロップ推進装置。
【請求項2】
タービン軸は前記推進型プロペラ(5、6)に向かって伸長し、前記推進型プロペラ(5、6)を駆動するギア(12)に接続されることを特徴とする請求項1に記載のターボプロップ推進装置。
【請求項3】
少なくとも1個の吸気管(11)は流入空気を前記コンプレッサ(14)の方へ方向転換し、前記コンプレッサ(14)の流入部分内に伸長することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のターボプロップ推進装置。
【請求項4】
少なくとも1個の排出ガス流管(10)は、排出ガス流を前記推力プロペラ(5、6)方向へ方向転換することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のターボプロップ推進装置。
【請求項5】
前記排出ガス流管(10)は飛行方向に沿って見た場合、前記ターボプロップ推進装置の前方部分内に伸長し、排出ガスを前記ノズル(9)の方へ方向転換することを特徴とする請求項4に記載のターボプロップ推進装置。
【請求項6】
前記吸気管(11)および前記排出ガス流管(10)は前記ターボプロップ推進装置の周方向においてオフセット配置されることを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載のターボプロップ推進装置。
【請求項7】
複数の吸気管(11)および/又は複数の排出ガス流管(10)を備えることを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載のターボプロップ推進装置。
【請求項8】
2個の二重反転推進型プロペラ(5、6)用に構成されることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のターボプロップ推進装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−196699(P2010−196699A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−29927(P2010−29927)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(505421788)ロールスロイス ドイチランド リミテッド ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (9)
【氏名又は名称原語表記】Rolls−Royce Deutschland Ltd & Co KG
【住所又は居所原語表記】Eschenweg 11,15827 Blankenfelde−Mahlow,Germany