説明

推進管情報管理システム

【課題】推進工法に適用されてそのまま管路となる推進管の履歴を施工時以降も管理可能として、当該推進管の高度な品質管理と供用後の維持管理性を向上することが可能な推進管情報管理システムを提供する。
【解決手段】推進工法に用いられて坑内で位置が遷移する推進管4個々に、それらに個別の情報を記録したIDシール8を貼り付け、製造後から施工前までの適宜時点で、推進管それぞれのIDシールの情報を管理室のコンピュータのデータベースソフトに蓄積して、推進管の管理用データベースを作成するようにした推進管情報管理システムであって、少なくとも推進管の内周面4bに貼り付けられるIDシールと、管理用データベースに推進管個々の施工時以降における情報を追加するために、推進管内周面のIDシールをカメラ機能で読み取ってコンピュータに送信する携帯電話10とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法に適用されてそのまま管路となる推進管の履歴を施工時以降も管理可能として、当該推進管の高度な品質管理と供用後の維持管理性を向上することが可能な推進管情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、推進管を用いる推進工法に関連する技術として、特許文献1が知られている。特許文献1の「管路構築方法」は、発進立坑に掘進機を設置し、元押しジャッキの推力により推進施工を開始する。シールドジャッキを備えた掘進機後部のジャッキ筒に、推力伝達リング、1リング目のセグメントリングおよびアダプターリングを接続して推進施工を開始し、発進立坑内で、順次、推進管を継ぎ足しながら推進施工を行う。推進施工からシールド施工に移る際、推力伝達リングを取り外し、掘進機による掘進を行い、ジャッキ筒の後方でセグメントを組立て、セグメントリングに反力をとって掘進しながらシールド施工を行い、順次、セグメントを組立てて行くようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−057128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設工事における構造物建設費と供用期間中の維持管理費を含めたライフサイクルコストを縮減する技術が求められており、維持管理に直結する施工情報の管理システムの構築が社会的なニーズとなっている。
【0005】
シールド工事においても、例えば、推進工法において、推進後そのまま管路となる推進管の供用後のアセットマネジメントを考慮に入れて、推進管の製造情報、出荷、受入、使用位置などの履歴に関する情報、受入検査、工程内検査に代表される品質管理情報を推進管1本ごとの固有情報としてデータベース化し、管理を一元化することが望ましい。
【0006】
そして特に、施工時以降における情報を入手できるようにすれば、管路となる推進管の供用後における維持管理性を向上できることから、そのような構成を含む管理システムの構築が求められていた。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、推進工法に適用されてそのまま管路となる推進管の履歴を施工時以降も管理可能として、当該推進管の高度な品質管理と供用後の維持管理性を向上することが可能な推進管情報管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる推進管情報管理システムは、推進工法に用いられて坑内で位置が遷移する推進管個々に、それらに個別の情報を記録したIDシールを貼り付け、製造後から施工前までの適宜時点で、該推進管それぞれの該IDシールの情報を管理室のコンピュータのデータベースソフトに蓄積して、推進管の管理用データベースを作成するようにした推進管情報管理システムであって、少なくとも上記推進管の内周面に貼り付けられる上記IDシールと、上記管理用データベースに上記推進管個々の施工時以降における情報を追加するために、該推進管内周面の上記IDシールをカメラ機能で読み取って上記コンピュータに送信する携帯電話とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる推進管情報管理システムにあっては、推進工法に適用されてそのまま管路となる推進管の履歴を施工時以降も管理することができ、当該推進管の高度な品質管理と供用後の維持管理性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる推進管情報管理システムの好適な一実施形態を示す説明図である。
【図2】図1の推進管情報管理システムの対象となる推進管の位置遷移を説明する説明図である。
【図3】図1の推進管情報管理システムに適用されるIDシールを携帯電話のカメラ機能で読み取る様子を示す推進管の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる推進管情報管理システムの好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。推進工法は従来周知であって、図1および図2に示すように、発進立坑1内に設置したジャッキ2の推力で、先頭に位置する掘進機3およびこれに後続する推進管4を推進するもので、推進管4は、ジャッキ2の伸縮動作に伴って、順次継ぎ足されるようになっている。
【0012】
従って、推進工法に用いられる推進管4は図2(a)および(b)に示すように、後続する他の推進管4の継ぎ足しにより、坑内5での位置が発進立坑1から次第に遠方へ遠ざかるように遷移する(図中、梨地で表示した推進管4の位置x→y参照)。
【0013】
推進管4は、推進管製造工場6で製造され、現場ヤード7へ運搬され、施工時には、発進立坑1内へと搬入される。各推進管4には、トレーサビリティによる識別管理で1本ごとの識別を可能とするために、図3に示すように、それらに個別の情報を記録したIDシール8が貼り付けられる。
【0014】
本実施形態では、推進管製造工場6でIDシール8を作成して、当該推進管製造工場6で推進管4に貼り付けるようにしていて、情報としては、推進管ID、製品の呼び名、成形年月日、製造メーカー等の製造時データ9がIDシール8に表示される。製造時データ9は、IDシール8に、文字表記およびQRコードやバーコードなどの形態で記録される。IDシール8に記録したこれら文字表記はそのまま読むことができると共に、QRコード等のコード情報は、カメラ機能やコード読み取り機能を有する携帯電話10により読み取りが可能となっている。
【0015】
管理室のコンピュータ11には、一般周知のデータベースソフトが搭載され、このデータベースソフトに、各推進管4に貼り付けたIDシール8の情報を蓄積することで、推進管4の管理用データベースが作成される。従って、推進管製造工場6にて、IDシール8を携帯電話10で撮影してその情報を読み取り、コンピュータ11に送信することで、製造時データ9を一次情報とする管理用データベースが作成される。
【0016】
製造後から施工前まで、すなわち現場ヤード7での受入までの適宜時点で、IDシール8の読み取りが可能である。現場ヤード7では、各IDシール8の携帯電話10による読み取りと共に、各推進管4のヤード受入日や受入検査結果の情報が受入データ12として、携帯電話10からコンピュータ11に送信される。データベースソフトは、推進管IDに基づき、受入データ12を二次情報として管理用データベースに追記し、各推進管4の履歴を更新する。
【0017】
特に本実施形態にあっては、IDシール8は、推進管4の製造後から施工前までに限らず、坑内5に設置する施工時以降であっても、いつでも当該IDシール8の読み取りが可能なように、図3に示すように、推進管4の外周面4aと内周面4b、少なくとも一枚のIDシール8が推進管4の内周面4bに貼り付けられる。
【0018】
施工時、すなわち推進管4を発進立坑1内に搬入して使用する際には、発進立坑1内で、各IDシール8の携帯電話10による読み取りと共に、各推進管4の使用日時と各推進管4に付与される管番号の情報が施工時データ13として、携帯電話10からコンピュータ11に送信される。管番号は、使用する順序で各推進管4に割り振られる番号である。データベースソフトは、推進管IDに基づき、施工時データ13を三次情報として管理用データベースに追記し、各推進管4の履歴を更新する。
【0019】
さらに、その後の推進施工時では、ジャッキ2による推進時に発生する推進施工時情報14、例えば、水平・鉛直蛇行量や推力などがコンピュータ11に送信される。当該推進施工時情報14も、携帯電話10で推進管内周面4bのIDシール8を読み取って、コンピュータ11に送信するようにしても良い。
【0020】
以後、データベースソフトは、各推進管4に関し、推進管ID(製造時データ9)、ヤード受入日(受入データ12)、管番号(施工時データ13)を関連付けし、さらに管番号をキーとして、データ整理を行うことができるようになっている。
【0021】
具体的には、データベースソフトは、推進管IDを照合し、管番号ごとに、製造時データ9、施工時データ13、受入データ12、必要な場合には推進施工時情報14のすべての情報を自動的に整理し、推進管4の管理用データベースを作成する。この管理用データベースを使用することで、管番号をもとにデータの閲覧や抽出が行われる。特に、不具合発生時の原因究明にあたっては、当該発生位置から推進管4を特定することで、再発防止対策を講じることが可能となる。
【0022】
以上説明した本実施形態にかかる推進管情報管理システムにあっては、推進工法に用いられて坑内5で位置が遷移する推進管4個々に、それらに個別の情報を記録したIDシール8を貼り付け、製造後から施工前までの適宜時点で、推進管4それぞれのIDシール8の情報を管理室のコンピュータ11のデータベースソフトに蓄積して、推進管4の管理用データベースを作成するようにした推進管情報管理システムであって、少なくとも推進管4の内周面4bに貼り付けられるIDシール8と、管理用データベースに推進管4個々の施工時以降における情報を追加するために、推進管内周面4bのIDシール8をカメラ機能で読み取ってコンピュータ11に送信する携帯電話10とを備えたので、そのまま管路となる推進管4の履歴を施工前までだけでなく、施工時以降も管理用データベースで管理することができ、推進管4の高度な品質管理と供用後の維持管理性を向上することができる。
【0023】
すなわち、推進工法によって坑内5での位置が遷移する推進管4を施工後に確認したい場合、当該推進管4の内周面4bにIDシール8を貼り付けているので、容易にそのIDシール8を携帯電話10で読み取ることができる。そして、読み取ったIDシール8の情報をコンピュータ11に送信することで、管理用データベースの推進管4の履歴を確認することができる。これにより、例えば、坑内5に設置した後の推進管4に「欠け」などの不具合があった場合に、それを補修するなどした情報も、各推進管4個別の履歴情報として追加できると共に、そのような推進管4の製造時データ9を参照することで、再発防止も可能となる。
【0024】
また、携帯電話10で情報を送信するので、ぺーバーレスで効率的に作業をすることができる。
【符号の説明】
【0025】
4 推進管
4b 推進管内周面
5 坑内
8 IDシール
10 携帯電話
11 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進工法に用いられて坑内で位置が遷移する推進管個々に、それらに個別の情報を記録したIDシールを貼り付け、製造後から施工前までの適宜時点で、該推進管それぞれの該IDシールの情報を管理室のコンピュータのデータベースソフトに蓄積して、推進管の管理用データベースを作成するようにした推進管情報管理システムであって、
少なくとも上記推進管の内周面に貼り付けられる上記IDシールと、上記管理用データベースに上記推進管個々の施工時以降における情報を追加するために、該推進管内周面の上記IDシールをカメラ機能で読み取って上記コンピュータに送信する携帯電話とを備えたことを特徴とする推進管情報管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−36572(P2012−36572A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174613(P2010−174613)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】