説明

推進管用シール装置および推進管

【課題】一方の推進管本体の継手部の外周面にあって他方の推進管本体の後端より突出した継手カラーの内周面に嵌入する際のシールめくり上がりを防止できる推進管用シール装置を提供する。
【解決手段】推進管用シール装置24は、一方の推進管本体22のシール溝28に嵌合して接着する環状のシール本体31の外周部から、他方の推進管21aの継手カラー25aの内周面に密着する環状の複数のリップ部35を突設する。シール本体31の先端から推進管本体22の先端に向って、一方の推進管本体22の継手部23の外周面に嵌合して接着する環状の拡大部36を突設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法に用いられる推進管および推進管用シール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
推進工法では、コンクリート製の一方の推進管本体の先端を、一方の推進管本体の先端と対向するコンクリート製の他方の推進管本体の後端より突出された継手カラー内へ順次嵌合する。その際、一方の推進管本体の継手部の外周面に嵌合して接着された推進管用シール装置を継手カラーの内周面に密着させて水密性を確保する。
【0003】
この種の推進管用シール装置としては、2種類の異なる性質の推進管用シール装置を用いたもの(例えば、特許文献1参照)や、Oリング状の推進管用シール装置を用いたもの(例えば、特許文献2参照)などが知られているが、この種の推進管用シール装置としては、十分な信頼性が得られていない。
【0004】
一方、推進工法用推進管は、日本下水道協会が定める「下水道推進工法用鉄筋コンクリート管(JSWAS A−2)」に基づき製造されており、推進管用シール装置については同基準では水密性を確保できるもので、耐久性のあるものでなければならない。
【0005】
そして、推進管用シール装置として水道用ゴムを用いる場合には、JIS K 6353(水道用ゴム)に規定するものとして、標準管用ではIV類に適合したものを用いるとしており、図6に示された同附属書2登録管のうち登録番号JA1,管の名称E型管のゴム輪が、標準的な推進管用シール装置1として一般的に用いられている。
【0006】
この推進管用シール装置1は、図6に示されるように、環状のシール本体2において継手カラーの先端と対向する側に流線形断面の斜面部3を形成し、その後方にてシール本体2の外周部に複数の切込溝4を設けることで、複数のリップ部5を形成し、また、シール本体2の内部に中空部6を形成したものである。
【0007】
この推進管用シール装置1は、図7に示されるように一方の推進管本体11の外周面に形成された推進管継手部12に嵌合して接着され、一方の推進管本体11の先端と緩衝材13を介し対向する他方の推進管本体14の後端より突出された継手カラー15の内周面に嵌合して密着される。
【0008】
そして、この嵌入時に、一方の推進管本体11と継手カラー15との間で推進管用シール装置1が押し潰されるように圧縮され、その反発力Fのみにより、浸入してきた水Wを止水している。
【特許文献1】特開平10−159487号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開2002−276286号公報(第3頁、図1−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この従来の推進管用シール装置1は、リップ部5や中空部6が、止水に必要な反発力Fを生じさせるとともに、一方の推進管本体11を他方の推進管本体14から突出された継手カラー15内へ嵌合する推進管継手接合時のシールめくり上がりMを軽減する対策となっているものの、そのシールめくり上がり対策は十分とはいえず、施工時にこの推進管用シール装置1のシールめくり上がりによる漏水が発生することがある。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、一方の推進管本体の継手部の外周面にあって他方の推進管本体の後端より突出された継手カラーの内周面に嵌入される際のシールめくり上がりを防止できる推進管用シール装置と、そのシール装置を備えた推進管とを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、一方の推進管本体の継手部の外周面に形成されたシール溝に嵌合して接着されるとともに、一方の推進管本体の継手部と管継手接合される他方の推進管本体の後端より突出された継手カラーの内周面に嵌合して密着される推進管用シール装置であって、一方の推進管本体のシール溝に嵌合して接着される環状のシール本体と、シール本体の外周部から突設されて継手カラーの内周面に密着する環状のリップ部と、他方の推進管本体の継手カラー内に嵌合される一方の推進管本体の先端に向ってシール本体の先端から突設され一方の推進管本体の継手部の外周面に嵌合して接着される環状の拡大部とを具備した推進管用シール装置であり、そして、他方の推進管本体の継手カラー内に嵌合される一方の推進管本体の先端に向ってシール本体の先端から突設された環状の拡大部を、一方の推進管本体の継手部の外周面に嵌合して接着することで、大きなシール接着面積を確保するとともに、管継手接合時に継手カラーが推進管用シール装置のリップ部を倒す力が、シール本体にシールめくり上がり力として作用しても、シール本体の先端から突設された拡大部が、このシールめくり上がり力を抑えることで、シール最前部のシールめくり上がりを防止する。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の推進管用シール装置において、シール本体から内周側に突出されて一方の推進管本体のシール溝内に形成された係合溝と嵌合して接着する突起部を具備したものであり、そして、シール本体から内周側に突出された突起部を、一方の推進管本体のシール溝内の係合溝と嵌合して接着させることで、シール溝が同一溝幅であっても、V形断面の係合溝と突起部との接着面積分、推進管本体に嵌合して接着されるシール接着面積が増大するとともに、突起部と係合溝との係合構造により、管継手接合時に継手カラーから作用する管軸方向の力に対抗する抵抗力が増大するので、シールめくり上がりを防止する。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の推進管用シール装置において、シール本体の内部に設けられた中空部を具備したものであり、そして、シール本体に中空部を設けたことにより、継手嵌合時にシール本体が圧縮しやすくなり、接合完了後には圧縮されたシール本体の復元力によりリップ部を必要な高さに復元できるので、管継手接合時にリップ部は他方の推進管の継手カラー内にスムーズに嵌合するとともに、継手カラーとリップ部の密着性が向上し、止水性能が確保される。また、管継手接合時に中空部によるシール本体の変形によって継手カラーからの力を吸収することで、シールめくり上がり力を軽減し、シールめくり上がりを防止する。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか記載の推進管用シール装置におけるリップ部が、シール本体の外周部から継手カラーが当接する方向と順方向の斜めに突設されたものであり、そして、シール本体の外周部からリップ部を、継手カラーが当接する方向と順方向の斜めに突設することで、リップ部を継手カラー内に嵌合する際に、リップ部を後側に倒れやすくしたので、リップ部を他方の推進管の継手カラー内に嵌合する管継手接合がスムーズになり、また、継手カラー当接方向に斜めのリップ部は、管継手接合時の逃げ変形によって継手カラーからの力を吸収することで、この管継手接合時のシールめくり上がりが発生しにくい。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか記載の推進管用シール装置におけるリップ部が、複数設けられ、これらの複数のリップ部は、後側に各リップ部の後方への倒れを可能にする倒れ代部を有するとともに、継手カラーが当接する方向に向って順次高く形成されたものであり、そして、倒れ代部により、推進管用シール装置のリップ部の後側に倒れ代用としてのスペースを設けることで、管継手接合時に、リップ部を後側に倒れやすくしたので、管継手接合時のリップ部は継手カラー内にスムーズに嵌合されるとともに、倒れ代部へのリップ部の逃げ変形によって継手カラーからの力が吸収されるので、管継手接合時の継手カラーからの力によるシールめくり上がりが防止され、また、リップ部は、先端側から後端側に向って順次高く形成することで、管継手接合時に、リップ部は先端側のものから順次倒れやすく、リップ部が他方の推進管の継手カラー内にスムーズに嵌合されるとともに、シールめくり上がりが防止される。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか記載の推進管用シール装置におけるリップ部が複数設けられ、最も後端のリップ部は、シール本体の後端面と連続的にかつ最も高く形成されたものであり、そして、最も後端のリップ部を、シール本体の後端面と連続的にかつ最も高く形成することで、この最も後端のリップ部は、後側に倒れやすいとともにシール本体の後端面より後方へ突出した状態で継手カラーの内周面に密着するので、継手カラーの開口から浸入した水は、この最も後端のリップ部を水圧により継手カラーの内周面に押付け、自らの封入圧により十分な止水効果を発揮する。
【0017】
請求項7記載の発明は、推進管本体と、この推進管本体の先端側に設けられた継手部の外周面に嵌合して接着された請求項1乃至6のいずれか記載の推進管用シール装置と、推進管本体の後端側の端部から突出された継手カラーとを具備した推進管であり、そして、管継手接合時の嵌合性が良いとともに、管継手部での止水性が高い推進管を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、他方の推進管本体の継手カラー内に嵌合される一方の推進管本体の先端に向ってシール本体の先端から突設された環状の拡大部を、一方の推進管本体の継手部の外周面に嵌合して接着することで、大きなシール接着面積を確保するとともに、管継手接合時に継手カラーが推進管用シール装置のリップ部を倒す力が、シール本体にシールめくり上がり力として作用しても、シール本体の先端から突設された拡大部が、このシールめくり上がり力を抑えることで、シール最前部のシールめくり上がりを防止できる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、シール本体から内周側に突出された突起部を、一方の推進管本体のシール溝内の係合溝と嵌合して接着させることで、シール溝が同一溝幅であっても、V形断面の係合溝と突起部との接着面積分、推進管本体に嵌合して接着されるシール接着面積が増大するとともに、突起部と係合溝との係合構造により、管継手接合時に継手カラーから作用する管軸方向の力に対抗する抵抗力が増大するので、シールめくり上がりを防止できる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、シール本体に中空部を設けたことにより、継手嵌合時にシール本体が圧縮しやすくなり、接合完了後には圧縮されたシール本体の復元力によりリップ部を必要な高さに復元できるので、管継手接合時にリップ部を他方の推進管の継手カラー内にスムーズに嵌合できるとともに、継手カラーとリップ部の密着性を向上でき、止水性能を確保できる。また、管継手接合時に中空部によるシール本体の変形によって継手カラーからの力を吸収することで、シールめくり上がり力を軽減でき、シールめくり上がりを防止できる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、シール本体の外周部からリップ部を、継手カラーが当接する方向と順方向の斜めに突設することで、リップ部を継手カラー内に嵌合する管継手接合時に、リップ部を後側に倒れやすくしたので、管継手接合をスムーズにでき、また、継手カラー当接方向に斜めのリップ部は、管継手接合時の逃げ変形によって継手カラーからの力を吸収することで、この管継手接合時のシールめくり上がりの発生を防止できる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、倒れ代部により、推進管用シール装置のリップ部の後側に倒れ代用としてのスペースを設けることで、管継手接合時に、リップ部を後側に倒れやすくしたので、管継手接合時のリップ部を継手カラー内にスムーズに嵌合できるとともに、倒れ代部へのリップ部の逃げ変形によって継手カラーからの力を吸収することで、管継手接合時の継手カラーからの力によるシールめくり上がりを防止でき、また、リップ部を、先端側より後端側に向って順次高く形成することで、管継手接合時に、リップ部は先端側のものから順次倒れやすく、リップ部を他方の推進管の継手カラー内にスムーズに嵌合できるとともに、シールめくり上がりを防止できる。
【0023】
請求項6記載の発明によれば、最も後端のリップ部を、シール本体の後端面と連続的にかつ最も高く形成することで、この最も後端のリップ部は、後側に倒れやすいとともにシール本体の後端面より後方へ突出した状態で継手カラーの内周面に密着するので、継手カラーの開口から浸入した水は、この最も後端のリップ部を水圧により継手カラーの内周面に押付け、自らの封入圧により十分な止水効果を発揮できる。
【0024】
請求項7記載の発明によれば、管継手接合時の嵌合性を向上できるとともに、管継手部での止水性が高い推進管を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を、図1乃至図4に示された一実施の形態を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、推進工法用の推進管21を示し、遠心成形法または振動締め固め成形法などにより成形されたコンクリート製の一方の推進管本体22と、この推進管本体22の先端側に設けられた継手部23の外周面に嵌合して接着されたゴム製の推進管用シール装置24と、推進管本体22の後端部から突出された継手カラー25とを具備している。この継手カラー25は、推進管本体22内の配筋26と一体的に設けられている。さらに、推進管本体22の後端面には緩衝材27が貼付けられている。
【0027】
図4は、成形後の推進管21を示し、推進管本体22の継手部23の外周面には、2条のシール溝28が形成されているので、これらのシール溝28に、図1に示されるように推進管用シール装置24をそれぞれ嵌着する。これらの各推進管用シール装置24の内周面は、接着剤により推進管本体22に嵌合して接着される。
【0028】
図1に示されるように、推進管用シール装置24は、一方の推進管本体22の継手部23の外周面に形成されたシール溝28に嵌合して接着されるとともに、一方の推進管本体22の継手部23と緩衝材27aを介し管継手接合される他方の推進管21aにおける推進管本体22aの後端より突出された継手カラー25aの内周面に、図3に示されるように嵌合して密着される。
【0029】
図2および図3に示されるように、この推進管用シール装置24は、一方の推進管本体22のシール溝28に嵌合して接着される環状のシール本体31と、シール本体31の外周部から突設されて継手カラー25aの内周面に密着する環状の複数のリップ部32,33,34,35と、他方の推進管本体22aの継手カラー25a内に嵌合される一方の推進管本体22の先端に向ってシール本体31の先端から突設され一方の推進管本体22の継手部23の外周面に嵌合して接着される環状の拡大部36とを具備している。
【0030】
シール本体31は、その内部に円形断面に形成された複数の中空部37が設けられている。さらに、シール本体31から内周側にV形に突出された突起部38が設けられ、この突起部38が、一方の推進管本体22のシール溝28内に形成された係合溝39に密着嵌合され、接着されている。
【0031】
複数のリップ部32,33,34,35は、後側に各リップ部32,33,34,35の後方への倒れを可能にする倒れ代部41を有する。これらの倒れ代部41は、各リップ部32,33,34,35の後側に十分な溝幅などの倒れ代用としてのスペースを確保できるように形成されている。さらに、これらの各リップ部32,33,34,35は、シール本体31の外周部から継手カラー25aが当接する方向と順方向の斜めに突設されている。
【0032】
さらに、図2に示されるように、これらのリップ部32,33,34,35は、継手カラー25aが当接する方向に向って、すなわちシール本体31の先端側に位置するリップ部32から後端側に位置するリップ部35に向って順次高く形成されたものであり、その結果、最も後端のリップ部35は、シール本体31の後端面と連続的にかつ最も高く形成されている。
【0033】
次に、この実施の形態の作用効果を説明する。
【0034】
(1)管継手接合時の嵌合性の向上
倒れ代部41により、推進管用シール装置24のリップ部32,33,34,35の後側に倒れ代用のスペースを設けることで、一方の推進管本体22の継手部23を他方の推進管21aの継手カラー25a内に嵌合する管継手接合時に、リップ部32,33,34,35を後側に倒れやすくしたので、これらの管継手接合時のリップ部32,33,34,35を継手カラー25a内にスムーズに嵌合できるとともに、倒れ代部41へのリップ部32,33,34,35の逃げ変形によって継手カラー25aからの力を吸収することで、管継手接合時の継手カラー25aからの力によるシールめくり上がりを防止できる。
【0035】
複数のリップ部32,33,34,35は、先端側から後端側に向って順次高く形成することで、管継手接合時に、これらのリップ部32,33,34,35は、先端側のものから順次倒れやすく、リップ部32,33,34,35を他方の推進管の継手カラー25a内にスムーズに嵌合できるとともに、管継手接合時の継手カラー25aからの力による推進管用シール装置24のシールめくり上がりを防止できる。
【0036】
シール本体31の外周部からリップ部32,33,34,35を、継手カラー25aが当接する方向と順方向の斜めに突設することで、これらのリップ部32,33,34,35を継手カラー25a内に嵌合する際に、これらのリップ部32,33,34,35を後側に倒れやすくしたので、リップ部32,33,34,35を他方の推進管21aの継手カラー25a内に嵌合する管継手接合をスムーズにでき、また、継手カラー当接方向に斜めのリップ部32,33,34,35は、管継手接合時の逃げ変形によって継手カラー25aからの力を吸収することで、この管継手接合時の継手カラー25aからの力によるシールめくり上がりを防止できる。
【0037】
推進管用シール装置24のシール本体31に中空部37を設けたことにより、継手嵌合時にシール本体31が圧縮しやすくなり、接合完了後には圧縮されたシール本体31の復元力によりリップ部32,33,34,35を必要な高さに復元できるので、管継手接合時にリップ部32,33,34,35を他方の推進管21aの継手カラー25a内にスムーズに嵌合できるとともに、この継手カラー25aとリップ部32,33,34,35との密着性を向上でき、止水性能を確保できる。また、管継手接合時に中空部37によるシール本体31の変形によって継手カラー25aからの力を吸収することで、シールめくり上がり力を軽減でき、推進管用シール装置24のシールめくり上がりを防止できる。
【0038】
推進管継手部23にシール溝28を設け、このシール溝28にシール本体31を嵌合して接着することで、一方の推進管本体22の継手部23を他方の推進管21aの継手カラー25a内に嵌合する管継手接合時に、継手カラー25aから作用する管軸方向の力に対抗する抵抗力を一方の推進管本体22からシール溝28を介しシール本体31に確実に伝達できる。
【0039】
一方の推進管本体22のシール溝28内の中央部にV形断面の係合溝39を設けるとともに、シール本体31から内周側に係合溝39と同一寸法のV形断面の突起部38を突出させ、この突起部38を一方の推進管本体22のシール溝28内の係合溝39と嵌合して接着させることで、シール溝28が同一溝幅であっても、V形断面の係合溝39と突起部38との接着面積分、推進管本体22に嵌合して接着されるシール接着面積を増大させることができるとともに、突起部38と係合溝39との係合構造により、管継手接合時に継手カラー25aから作用する管軸方向の力に対抗する抵抗力が増大するので、推進管用シール装置24のシールめくり上がりを防止できる。
【0040】
他方の推進管本体22aの継手カラー25a内に嵌合される一方の推進管本体22の先端に向ってシール本体31の先端から突設された環状の拡大部36を、一方の推進管本体22の継手部23の外周面に嵌合して接着することで、すなわち、推進管用シール装置24の形状をシール溝28の前方まで大きく突出させてシール溝28の前部にも嵌合して接着することで、大きなシール接着面積を確保するとともに、管継手接合時に継手カラー25aが推進管用シール装置24のリップ部32,33,34,35を倒す力が、シール本体31にシールめくり上がり力として作用しても、シール本体31の先端から突設された拡大部36が、このシールめくり上がり力を抑えることで、シールめくり上がり力によるシール最前部のシールめくり上がりを防止できる。
【0041】
上記のように、シール本体31およびリップ部32,33,34,35が変形しやすいので、推進管21,21aの管継手接合をスムーズにでき、管継手接合時の嵌合性を向上できるとともに、シールめくり上がりを防止でき、推進管本体22の継手部23と推進管用シール装置24との密着性を確保でき、推進管継手部の止水性を高めることができる。
【0042】
ここで、シールめくり上がりの抵抗力は、拡大部36、V形の突起部38などの対策により、推進管用シール装置24の接着面積を大きくすることで増加させることができるが、一方で、シール本体31は大型化していないので、ゴム材料を節約でき、図6に示された全国ヒューム管協会規格の標準管用ゴム輪に対して、図2に示された推進管用シール装置24の断面積は、約80%に縮小させることが可能となり、コストダウンを図ることができる。
【0043】
例えば、図6に示された全国ヒューム管協会規格の標準管用ゴム輪は、全幅Bが50mm、全高Hが20mm、リップ部5の高さhが6mmであるのに対し、図2に示された本発明に係る推進管用シール装置24は、全幅Bが45mm、全高Hが22mm、最も高いリップ部35の高さhが7mmであり、シール本体31が小型化しているものの、十分な止水性能が得られる。
【0044】
(2)自封効果による止水性能の確保
推進管用シール装置24の複数のリップ部32,33,34,35のうち、最も後端のリップ部35を、シール本体31の後端面と連続的にかつ最も高く形成することで、この最も後端のリップ部35は、後側に倒れやすいとともにシール本体31の後端面より後方へ突出した状態で継手カラー25aの内周面に密着するので、継手カラー25aの開口から浸入した水は、この最も後端のリップ部35を水圧により継手カラー25aの内周面に押し付け、自らの封入圧により十分な止水性能を確保できる。
【0045】
次の表1および表2は、その十分な止水性能を裏付ける実験データを示す。これらの表1および表2において、地震時の抜出し長aは、図5に示されるように、一方の推進管本体22の継手部先端を他方の推進管本体22aから突出された継手カラー(図示せず)の内部で角度を付けて接続する曲線施工において、両推進管本体22,22a間の内側の目開き量を表わし、また、曲線推進時の抜出し長bは、両推進管本体22,22a間の外側の目開き量を表わす。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
以上のように、推進管本体22と、この推進管本体22の先端側に設けられた継手部23の外周面に嵌合して接着された上記のような推進管用シール装置24と、推進管本体22の継手部23とは反対側の後端部から突出された継手カラー25とを具備した推進管21は、管継手接合時の嵌合性が良いとともに、管継手部での止水性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る推進管用シール装置および推進管の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】同上シール装置の断面図である。
【図3】同上シール装置の作用を示す断面図である。
【図4】同上シール装置を装着する前の推進管の正面図である。
【図5】2つの推進管本体間の目開き量を説明する説明図である。
【図6】従来の推進管用シール装置を示す断面図である。
【図7】従来の推進管用シール装置の作用を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
22 一方の推進管本体
22a 他方の推進管本体
23 継手部
24 推進管用シール装置
25 継手カラー
25a 継手カラー
28 シール溝
31 シール本体
32,33,34,35 リップ部
36 拡大部
37 中空部
38 突起部
39 係合溝
41 倒れ代部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の推進管本体の継手部の外周面に形成されたシール溝に嵌合して接着されるとともに、一方の推進管本体の継手部と管継手接合される他方の推進管本体の後端より突出された継手カラーの内周面に嵌合して密着される推進管用シール装置であって、
一方の推進管本体のシール溝に嵌合して接着される環状のシール本体と、
シール本体の外周部から突設されて継手カラーの内周面に密着する環状のリップ部と、
他方の推進管本体の継手カラー内に嵌合される一方の推進管本体の先端に向ってシール本体の先端から突設され一方の推進管本体の継手部の外周面に嵌合して接着される環状の拡大部と
を具備したことを特徴とする推進管用シール装置。
【請求項2】
シール本体から内周側に突出されて一方の推進管本体のシール溝内に形成された係合溝と嵌合して接着する突起部
を具備したことを特徴とする請求項1記載の推進管用シール装置。
【請求項3】
シール本体の内部に設けられた中空部
を具備したことを特徴とする請求項1または2記載の推進管用シール装置。
【請求項4】
リップ部は、シール本体の外周部から継手カラーが当接する方向と順方向の斜めに突設された
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の推進管用シール装置。
【請求項5】
リップ部は、複数設けられ、
これらの複数のリップ部は、後側に各リップ部の後方への倒れを可能にする倒れ代部を有するとともに、継手カラーが当接する方向に向って順次高く形成された
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の推進管用シール装置。
【請求項6】
リップ部は複数設けられ、
最も後端のリップ部は、シール本体の後端面と連続的にかつ最も高く形成された
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の推進管用シール装置。
【請求項7】
推進管本体と、
この推進管本体の先端側に設けられた継手部の外周面に嵌合して接着された請求項1乃至6のいずれか記載の推進管用シール装置と、
推進管本体の後端側の端部から突出された継手カラーと
を具備したことを特徴とする推進管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−177094(P2006−177094A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373342(P2004−373342)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000228660)日本コンクリート工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】