説明

推進装置

【課題】推進作業の時間短縮が可能となり、簡素化および小型化を図ることが可能な推進装置を提供する。
【解決手段】推進工法に用いられる推進装置24であって、管を支持して押圧する移動台29に、二つのグループに分別された複数本のシリンダ装置51a,51b,52a,52bが設けられ、各シリンダ装置は後端部に係止部56を有し、レール装置26に複数の被係止部37a,37b,38a,38bが設けられ、第一のグループのシリンダ装置51a,51bのピストンロッド55の伸縮と第二のグループのシリンダ装置52a,52bのピストンロッド55の伸縮とを交互に繰り返すことにより、伸長するピストンロッドの係止部が被係止部に係合し、短縮するピストンロッドの係止部が被係止部から離脱して前隣の被係止部を後方から前方へ乗り越えながら、移動台が前進して管を押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管を押圧して接続しながら地下に敷設するための推進工法に用いられる推進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の推進装置としては、例えば図11〜図13に示すように、発進抗1内に、左右一対のレール2と、レール2に支持案内されて管軸方向に沿った一定経路3上を前後方向へ移動自在な移動台4とを備えたものがある。移動台4には、推進管5を押圧する押圧フレーム6と、左右一対の推進用シリンダ7とが設けられている。両推進用シリンダ7のピストンロッド7aの後端部間には対ピン用押圧部材8が設けられ、対ピン用押圧部材8には左右一対の係合部9が設けられている。
【0003】
両レール2にはそれぞれ、一定経路3に沿って前後方向に一定間隔をあけて複数本のピン10が配列されている。これら各ピン10は、レール2の上面から上方へ突出する係止作用位置A(図13の仮想線参照)と、レール2の上面から下方へ退避する非作用位置B(図13の実線参照)とに上下動自在である。
【0004】
両レール2には、ピン10を係止作用位置Aと非作用位置Bとに切換える切換装置11が各ピン10毎に対応して設けられている。尚、切換装置11はテコ部材等から構成されている。また、対ピン用押圧部材8には、切換装置11を作動させるためのピン操作用シリンダ12が設けられている。
【0005】
これによると、ピン操作用シリンダ12によって一番手前端に位置するピン10を非作用位置B(図13の実線参照)から係止作用位置A(図13の仮想線参照)に切換え、両推進用シリンダ7のピストンロッド7aを同期して伸長させることにより、対ピン用押圧部材8の係合部9が上記一番手前端の係止作用位置Aのピン10の上部に係合し、上記一番手前端のピン10を反力支点として移動台4が前進し、推進管5が押圧フレーム6によって前方へ押圧される。
【0006】
その後、両推進用シリンダ7のピストンロッド7aを同期して短縮させることにより、対ピン用押圧部材8の係合部9が上記一番手前端のピン10の前方へ離脱し、このピン10が係止作用位置Aから非作用位置Bへ切換えられる。
【0007】
次に、最も手前端から二番目に位置するピン10をピン操作用シリンダ12によって非作用位置Bから係止作用位置Aに切換え、両推進用シリンダ7のピストンロッド7aを同期して伸長させることにより、対ピン用押圧部材8の係合部9が上記二番目の係止作用位置Aのピン10に係合し、上記二番目のピン10を反力支点として移動台4が前進し、推進管5が押圧フレーム6によって前方へさらに押圧される。
【0008】
その後、両推進用シリンダ7のピストンロッド7aを同期して短縮させることにより、対ピン用押圧部材8の係合部9が上記二番手前端のピン10の前方へ離脱し、このピン10が係止作用位置Aから非作用位置Bへ切換えられる。
【0009】
次に、最も手前端から三番目に位置するピン10をピン操作用シリンダ12によって非作用位置Bから係止作用位置Aに切換え、順次、上記と同様な手順を繰り返すことで、移動台4を尺取虫状に前進させて推進管5を前方へ押圧していく。
【0010】
尚、上記のような推進装置は、例えば下記特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開昭61−38096
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上記の従来形式では、両推進用シリンダ7(伸縮装置)のピストンロッド7aが同期して伸長している際、移動台4は前進するが、両推進用シリンダ7のピストンロッド7aが同期して短縮している際には、移動台4は前進せずに停止した状態になる。このため、両推進用シリンダ7のピストンロッド7aが短縮している間は推進管5の推進が中断され、推進作業が長時間化するといった問題がある。
【0012】
また、各ピン10(被係止部)を係止作用位置Aと非作用位置Bとに切換えるための切換装置11を、各ピン10毎に設ける必要があるため、レール2の構造が複雑になり、レール2が大型化するという問題がある。さらに、切換装置11を作動させるためのピン操作用シリンダ12を、移動台4側に設ける必要があるため、構造が複雑になり、移動台4が大型化するという問題がある。これにより、推進装置が全体的に複雑になり大型化するという問題がある。
【0013】
本発明は、推進作業の時間短縮が可能となり、また、簡素化および小型化を図ることが可能な推進装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本第一発明は、管を地中に推進させることにより管路を敷設する推進工法に用いられる推進装置であって、
管軸方向に沿って形成された一定経路上を前後方向へ移動自在な移動台に、管を押圧する押圧部と、一定経路方向に伸縮自在で且つ上下方向に揺動自在な複数本の伸縮装置とが設けられ、
各伸縮装置は後端部に係止部を有し、
一定経路に沿って前後複数の被係止部が設けられ、
複数本の伸縮装置は、一方のグループに属する伸縮装置と、他方のグループに属する伸縮装置とに分別され、
一方のグループの伸縮装置の伸縮と他方のグループの伸縮装置の伸縮とを交互に繰り返すことにより、伸長される伸縮装置の係止部が前方から被係止部に係合し、短縮される伸縮装置の係止部が被係止部から前方に離脱して前隣の被係止部上を後方から前方へ越えながら、移動台が一定経路上を前進して管を押圧するものである。
【0015】
これによると、一方のグループの伸縮装置を伸長するとともに他方のグループの伸縮装置を短縮することによって、一方のグループの伸縮装置の係止部が被係止部に係止して移動台が前進するとともに、他方のグループの伸縮装置の係止部が被係止部から前方へ離脱し、他方のグループの伸縮装置が上方に揺動しながら他方のグループの伸縮装置の係止部が前隣の被係止部上を後方から前方へ越え、その後、他方のグループの伸縮装置が下方に揺動し、他方のグループの伸縮装置の係止部が被係止部に係止する。
【0016】
次に、他方のグループの伸縮装置を伸長するとともに一方のグループの伸縮装置を短縮することによって、移動台が前進するとともに、一方のグループの伸縮装置の係止部が被係止部から前方へ離脱し、一方のグループの伸縮装置が上方に揺動しながら一方のグループの伸縮装置の係止部が前隣の被係止部上を後方から前方へ越え、その後、一方のグループの伸縮装置が下方に揺動し、一方のグループの伸縮装置の係止部が被係止部に係止する。
【0017】
上記のような動作を繰り返すことにより、移動台が一定経路上を前進し、管が移動台の押圧部で押圧される。したがって、一方のグループと他方のグループとのいずれか片方のグループの伸縮装置が短縮している間であっても、もう片方のグループの伸縮装置が伸長しているため、移動台が前進し続け、管の推進が中断されることはない。これにより、推進作業の時間短縮が可能となる。
【0018】
また、被係止部を固定した構成で、移動台を前進させることができるため、従来のように被係止部を係止作用位置と非作用位置とに上下動させる必要はなく、推進装置を簡素化および小型化することができる。
【0019】
また、本第二発明は、伸縮装置はシリンダ装置であり、
係止部はシリンダ装置のピストンロッドの後端部に設けられ、
係止部は、後向きに突出した上下一対の爪と、両爪の間に形成された凹部とを有し、
係止部の凹部は被係止部に前方から係脱自在であり、
上記凹部の前部奥端から上部の爪の後部先端までの突出量をL1とし、凹部の前部奥端から下部の爪の後部先端までの突出量をL2とすると、突出量L1は突出量L2よりも大きく設定され、
被係止部は、各シリンダ装置に対応して、一定経路に沿って前後方向に所定間隔をあけて配列され、
上記シリンダ装置のピストンロッドのストロークをCとし、被係止部の前後間の距離をDとすると、上記ストロークCと上記距離Dと上記突出量L1,L2とは、
D+L2<C<D+L1
の関係に設定されているものである。
【0020】
これによると、一方のグループのシリンダ装置のピストンロッドを伸長するとともに他方のグループのシリンダ装置のピストンロッドを短縮することによって、一方のグループのシリンダ装置の係止部が被係止部に係止して移動台が前進するとともに、他方のグループのシリンダ装置の係止部が被係止部から前方へ離脱し、他方のグループのシリンダ装置が上方に揺動しながら他方のグループのシリンダ装置の係止部が前隣の被係止部上を後方から前方へ越え、その後、他方のグループのシリンダ装置の係止部の下部の爪が被係止部上を通過し、他方のグループのシリンダ装置が下方に揺動し、他方のグループのシリンダ装置の係止部の上部の爪が被係止部上に重なって、他方のグループのシリンダ装置の係止部が被係止部に係止する。
【0021】
次に、他方のグループのシリンダ装置のピストンロッドを伸長するとともに一方のグループのシリンダ装置のピストンロッドを短縮することによって、移動台が前進するとともに、一方のグループのシリンダ装置の係止部が被係止部から前方へ離脱し、一方のグループのシリンダ装置が上方に揺動しながら一方のグループのシリンダ装置の係止部が前隣の被係止部上を後方から前方へ越え、その後、一方のグループのシリンダ装置の係止部の下部の爪が被係止部上を通過し、一方のグループのシリンダ装置が下方に揺動し、一方のグループのシリンダ装置の係止部の上部の爪が被係止部上に重なって、一方のグループのシリンダ装置の係止部が被係止部に係止する。
【0022】
上記のような動作を繰り返すことにより、移動台が一定経路上を前進し、管が移動台の押圧部で押圧される。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によると、一方のグループと他方のグループとのいずれか片方のグループの伸縮装置が短縮している場合であっても、もう片方のグループの伸縮装置が伸長しているため、移動台が前進し続け、管の推進が中断されることはない。これにより、推進作業の時間短縮が可能となる。
【0024】
また、被係止部を固定した構成で、移動台を前進させることができるため、従来のように被係止部を係止作用位置と非作用位置とに上下動させる必要はなく、推進装置を簡素化および小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明における実施の形態を図面を参照にして説明する。
図1は推進工法を示す概略図であり、発進坑21と到達坑(図示省略)との間に埋設されているさや管22内に、このさや管22よりも小径の新管23を接続しながら挿入して管路を敷設している。このような推進工法には、新管23を推進させる推進装置24が用いられる。尚、新管23には、例えば日本ダクタイル鉄管協会規格におけるPN形のダクタイル鋳鉄管等が用いられる。
【0026】
図1,図2に示すように、推進装置24は、発進坑21の底部に設置されたレール装置26と、レール装置26に支持案内され且つ管軸方向に沿った一定経路27上を前後方向へ移動自在な移動台29とを有している。
【0027】
レール装置26は、レール本体31と、レール本体31を支持する複数本の脚32とを備えている。図2〜図5に示すように、レール本体31は、左右一対のチャンネル状の外レール材33a,33bと、左右一対のチャンネル状の内レール材34a,34bと、対向する外レール材33a,33bと内レール材34a,34bとの間に設けられた中間仕切板35a,35bとを有している。尚、これら外および内レール材33a,33b,34a,34bと中間仕切板35a,35bとの長さ方向は一定経路27の方向と同じである。
【0028】
左右いずれか一方の外レール材33aと中間仕切板35aとの間ならびに他方の外レール材33bと中間仕切板35bとの間にはそれぞれ、外側被係止部37a,37bが前後複数個設けられている。同様に、左右いずれか一方の内レール材34aと中間仕切板35aとの間ならびに他方の内レール材34bと中間仕切板35bとの間にはそれぞれ、内側被係止部38a,38bが前後複数個設けられている。
【0029】
尚、各被係止部37a,37b,38a,38bは一定経路27に沿って前後方向に所定間隔Sをあけて設けられている。図3,図8に示すように、各被係止部37a,37b,38a,38bは、側面視において前方が開放されたコ形状に形成され、上部には、前方へ突出した突出部39を有している。
【0030】
図3〜図5に示すように、移動台29は、台本体41と、台本体41の上部に立設された押圧板42と、台本体41の左右両側部に設けられたブラケット43と、ブラケット43に設けられた複数の回転自在な車輪45〜47とを有している。台本体41の上面は新管23の一端部を支持する支持面41aとして機能する。また、押圧板42は新管23を押圧する押圧部の一例である。また、各車輪45〜47のうち、前後一対の上車輪45は外レール材33a,33bの上板部49の上面を転動し、前後一対の下車輪46は外レール材33a,33bの上板部49の下面を転動し、前後一対の横車輪47は外レール材33a,33bの上板部49の外側縁を転動する。尚、図1,図2に示すように、一定経路27上の一端部には、新管23の推進を開始する開始位置Psが設定され、一定経路27上の他端部には、新管23の推進を終了する終了位置Peが設定され、移動台29は開始位置Psと終了位置Peとの間を移動する。
【0031】
図3〜図5に示すように、移動台29には、一定経路27の方向(前後方向)に伸縮自在な四本(複数本)の油圧式シリンダ装置51a,51b,52a,52b(伸縮装置の一例)が設けられている。これら各シリンダ装置51a,51b,52a,52bはそれぞれ、前端部が台本体41に横ピン53を介して連結され、横ピン53を中心として上下方向に揺動自在である。
【0032】
また、各シリンダ装置51a,51b,52a,52bはそれぞれ、シリンダ本体54と、伸縮自在なピストンロッド55と、ピストンロッド54の後端部に設けられた係止部56とを有している。図8に示すように、各係止部56は、後向きに突出した上下一対の爪57,58と、両爪57,58の間に形成された凹部59とを有している。各係止部56の凹部59は各被係止部37a,37b,38a,38bの突出部39に前方から係脱自在となるように構成されている。
尚、凹部59の前部奥端から上部の爪57の後部先端までの突出量をL1とし、凹部59の前部奥端から下部の爪58の後部先端までの突出量をL2とすると、突出量L1は突出量L2よりも大きく(L1>L2)設定されている。
【0033】
各シリンダ装置51a,51b,52a,52bは、第一のグループ(一方のグループの一例)に属する左右一対の外側シリンダ装置51a,51bと、第二のグループ(他方のグループの一例)に属する左右一対の内側シリンダ装置52a,52bとに分別されている。
【0034】
また、第一のグループの両外側シリンダ装置51a,51bのピストンロッド55は同期して伸縮するように設定され、同様に、第二のグループの両内側シリンダ装置52a,52bのピストンロッド55は同期して伸縮するように設定されている。
【0035】
さらに、第一のグループの外側シリンダ装置51a,51bのピストンロッド55の伸縮と第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bのピストンロッド55の伸縮とが交互に行われるように設定されている。
【0036】
尚、外側被係止部37a,37bは第一のグループの外側シリンダ装置51a,51bに対応して配列され、内側被係止部38a,38bは第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bに対応して配列されている。
【0037】
また、図2,図4に示すように、外側被係止部37a(一方のグループの伸縮装置に対応する被係止部)と内側被係止部38a(他方のグループの伸縮装置に対応する被係止部)とは平面視において千鳥状(ジグザグ状)に配列され、同様に、外側被係止部37b(一方のグループの伸縮装置に対応する被係止部)と内側被係止部38b(他方のグループの伸縮装置に対応する被係止部)とは平面視において千鳥状(ジグザグ状)に配列されている。
【0038】
尚、各シリンダ装置51a,51b,52a,52bのピストンロッド55のストロークは同じである。また、図6に示すように、上記ピストンロッド55のストロークをC、外側被係止部37a,37bと内側被係止部38a,38bとの前後間の距離をDとすると、上記ストロークCと上記距離Dと上記爪57,58の突出量L1,L2とは下記の式に示す関係に設定されている。
【0039】
D+L2<C<D+L1
尚、第一のグループの両外側シリンダ装置51a,51bには、これらシリンダ装置51a,51bのピストンロッド55が伸び切ったことを検出する第一の検出手段(図示省略)が設けられ、第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bには、これらシリンダ装置52a,52bのピストンロッド55が伸び切ったことを検出する第二の検出手段(図示省略)が設けられている。また、推進装置24には、各シリンダ装置51a,51b,52a,52bへの作動油圧(作動流体圧)の供給を自動的に切り替える自動切替手段(図示省略)が設けられている。
【0040】
上記自動切替手段は、第一の検出手段によって第一のグループの外側シリンダ装置51a,51bのピストンロッド55が伸び切ったことが検出されると、第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bのピストンロッド55を伸長させるとともに第一のグループの両外側シリンダ装置51a,51bのピストンロッド55を短縮させるように自動的にバルブ(図示省略)の開閉操作を行い、また、第二の検出手段によって第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bのピストンロッド55が伸び切ったことが検出されると、第一のグループの外側シリンダ装置51a,51bのピストンロッド55を伸長させるとともに第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bのピストンロッド55を短縮させるように自動的にバルブの開閉操作を行い、これらを順次繰り返し実行させるものである。
【0041】
但し、上記各シリンダ装置51a,51b,52a,52bのピストンロッド55の短縮は必ずしも作動油圧(作動流体圧)による必要はなく、スプリング等を用いてピストンロッド55を短縮してもよい。
【0042】
また、図1に示すように、レール本体31には、新管23を芯出しするための芯出装置62が設けられている。芯出装置62は、レール本体31上を移動自在な台車63と、台車63に設けられたシリンダ64と、シリンダ64のピストンロッドの先端に設けられた支持ローラ65とで構成されている。
【0043】
また、さや管22の入口直前には、さや管22内の先行する新管23の一端を支持する支持装置66が設置されている。
また、図9,図10に示すように、71a,71bは補助台車であり、各補助台車71a,71bは、各シリンダ装置51a,51b,52a,52bを停止した状態で作業者が手動で移動台29を移動させる場合に使用されるものである。このうち、一方の補助台車71aは、一方の外側および内側シリンダ装置51a,52aを下方から支持可能な支持板72aと、支持板72aの左右両端部に設けられた回転自在な車輪73aとを有している。同様に、他方の補助台車71bは、他方の外側および内側シリンダ装置51b,52bを下方から支持可能な支持板72bと、支持板72bの左右両端部に設けられた回転自在な車輪73bとを有している。
【0044】
以下、上記構成における作用を説明する。
図6の(a)に示すように、予め、第一のグループの外側シリンダ装置51a,51bのピストンロッド55を伸長させるとともに、第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bのピストンロッド55を短縮させた状態で、移動台29を開始位置Psに待機させておく。
【0045】
そして、図1に示すように、新管23を発進坑21内に下ろし、新管23の一端部を移動台29の支持面41aに載置して支持するとともに、新管23の他端部を芯出装置62の支持ローラ63で支持する。
【0046】
次に、図6の(b)に示すように、第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bのピストンロッド55を伸長するとともに第一のグループの外側シリンダ装置51a,51bのピストンロッド55を短縮することによって、第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bの係止部56が内側被係止部38a,38bに係止して移動台29が一定経路27上を前進するとともに、第一のグループの外側シリンダ装置51a,51bの係止部56が外側被係止部37a,37bから前方へ離脱し、第一のグループの外側シリンダ装置51a,51bが横ピン53を中心に上方へ揺動しながら、図6の(c)および図8の(a)〜(c)に示すように、第一のグループの外側シリンダ装置51a,51bの係止部56が前隣の外側被係止部37a,37b上を後方から前方へ乗り越え、その後、第一のグループの外側シリンダ装置51a,51bの係止部56の下部の爪58が外側被係止部37a,37b上を通過し、第一のグループの外側シリンダ装置51a,51bが横ピン53を中心に下方へ揺動し、第一のグループの外側シリンダ装置51a,51bの係止部56の上部の爪57が外側被係止部37a,37b上に重なって、第一のグループの外側シリンダ装置51a,51bの係止部56が外側被係止部37a,37bに係止する。
【0047】
次に、図7の(a),図8の(d)に示すように、第一のグループの外側シリンダ装置51a,51bのピストンロッド55を伸長するとともに、第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bのピストンロッド55を短縮することによって、移動台29が一定経路27上を前進するとともに、第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bの係止部56が内側被係止部38a,38bから前方へ離脱し、第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bが横ピン53を中心に上方へ揺動しながら、図7の(b)および図8の(a)〜(c)に示すように、第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bの係止部56が前隣の内側被係止部38a,38b上を後方から前方へ乗り越え、その後、第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bの係止部56の下部の爪58が内側被係止部38a,38b上を通過し、第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bが横ピン53を中心に下方へ揺動し、第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bの係止部56の上部の爪57が内側被係止部38a,38b上に重なって、第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bの係止部56が内側被係止部38a,38bに係止する。
【0048】
次に、図7の(b)に示すように、第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bのピストンロッド55を伸長するとともに、第一のグループの外側シリンダ装置51a,51bのピストンロッド55を短縮することによって、移動台29が一定経路27上を前進する。
【0049】
このように、上記図6の(a)〜(c)および図7の(a)(b)に示した動作を繰り返すことにより、移動台29が一定経路27上を前進し、新管23が移動台29の押圧板42で前方へ押圧されるため、新管23を接続しながらさや管22内に挿入して管路を敷設することができる。この際、図6の(b)に示すように、第一のグループの外側シリンダ装置51a,51bのピストンロッド55が短縮している間であっても、第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bのピストンロッド55が伸長し、また、図7の(a)に示すように、第二のグループの内側シリンダ装置52a,52bのピストンロッド55が短縮している間であっても、第一のグループの外側シリンダ装置51a,51bのピストンロッド55が伸長しているため、移動台29が前進し続け、新管23の推進が中断されることはない。これにより、推進作業の時間短縮が可能となる。
【0050】
また、外側被係止部37a,37bと内側被係止部38a,38bとをそれぞれレール装置26のレール本体31に固定した構成で、移動台29を前進させることができるため、従来(図13参照)のように被係止部(ピン10)を係止作用位置Aと非作用位置Bとに上下動させる必要はなく、推進装置24を簡素化および小型化することができる。
【0051】
尚、上記図6の(a)〜(c)および図7の(a)(b)に示した動作を繰り返して移動台29が開始位置Psから終了位置Peに到達すると、各係止部56を各被係止部37a,37b,38a,38bから離脱させた状態で各シリンダ装置51a,51b,52a,52bの作動を停止し、作業者が各シリンダ装置51a,51b,52a,52bを持ち上げて上方へ揺動させ、図9,図10に示すように、一方および他方の補助台車71a,71bをレール装置26のレール本体31上に載置し、一方の外側シリンダ装置51aのピストンロッド55と内側シリンダ装置52aのピストンロッド55とを一方の補助台車71aの支持板72a上に載置し、他方の外側シリンダ装置51bのピストンロッド55と内側シリンダ装置52bのピストンロッド55とを他方の補助台車71bの支持板72b上に載置する。
【0052】
これにより、各シリンダ装置51a,51b,52a,52bの後部が補助台車71a,71bで支持され、この状態で、作業者が移動台29を後向けに押すことにより、一方の補助台車71aの左右両車輪73aが一方の外レール材33aと内レール材34aとの上面を転動するとともに、他方の補助台車71bの左右両車輪73bが他方の外レール材33bと内レール材34bとの上面を転動し、作業者が手動で移動台29を後進させて終了位置Peから開始位置Psへ戻すことができる。
【0053】
上記実施の形態では、図4に示すように、移動台29に四本のシリンダ装置51a,51b,52a,52bを設けているが、四本に限定されるものではなく、四本以外の複数本設けてもよい。また、第一のグループは二本のシリンダ装置51a,51bを有しているが、二本に限定されるものではなく、三本以上の複数本又は単数本であってもよい。同様に、第二のグループは二本のシリンダ装置52a,52bを有しているが、二本に限定されるものではなく、三本以上の複数本又は単数本であってもよい。
【0054】
上記実施の形態では、前後複数に並べた各被係止部37a,37b,38a,38bを左右四列配列しているが、左右四列に限定されるものではなく、各シリンダ装置51a,51b,52a,52bの本数に対応して、左右複数列配列してもよい。
【0055】
上記実施の形態では、新管23として、日本ダクタイル鉄管協会規格におけるPN形のダクタイル鋳鉄管を用いているが、PN形以外の他の形式であってもよく、また、ダクタイル鋳鉄管以外の他の材質の管であってもよい。
【0056】
上記実施の形態では、シリンダ装置51a,51b,52a,52bを油圧駆動式にしているが、空気圧駆動式(エアシリンダ)でもよい。
上記実施の形態では、図2,図4に示すように、外側被係止部37aと内側被係止部38aとを千鳥状に配列し、外側被係止部37bと内側被係止部38bとを千鳥状に配列しているが、千鳥状の配列に限定されるものではなく、例えば梯子状に配列してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態における推進装置の側面図である。
【図2】同、推進装置の平面図である。
【図3】同、推進装置の移動台の側面図である。
【図4】同、推進装置の移動台の平面図である。
【図5】図4におけるX−X矢視図である。
【図6】同、推進装置の移動台の前進時の動作を示す平面図である。
【図7】同、推進装置の移動台の前進時の動作を示す平面図である。
【図8】同、推進装置の移動台が前進している時の被係止部に対する係止部の動きを示す側面図である。
【図9】同、補助台車を用いて、推進装置の移動台を後進させる際の側面図である。
【図10】図9におけるX−X矢視図である。
【図11】従来の推進装置の側面図である。
【図12】同、推進装置の移動台の平面図である。
【図13】同、推進装置の移動台の一定経路に直交する断面の図である。
【符号の説明】
【0058】
23 新管
24 推進装置
27 一定経路
29 移動台
37a,37b,38a,38b 被係止部
42 押圧板(押圧部)
51a,51b,52a,52b シリンダ装置(伸縮装置)
55 ピストンロッド
56 係止部
57 上部の爪
58 下部の爪
59 凹部
C ストローク
D 距離
L1,L2 突出量
S 所定間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管を地中に推進させることにより管路を敷設する推進工法に用いられる推進装置であって、
管軸方向に沿って形成された一定経路上を前後方向へ移動自在な移動台に、管を押圧する押圧部と、一定経路方向に伸縮自在で且つ上下方向に揺動自在な複数本の伸縮装置とが設けられ、
各伸縮装置は後端部に係止部を有し、
一定経路に沿って前後複数の被係止部が設けられ、
複数本の伸縮装置は、一方のグループに属する伸縮装置と、他方のグループに属する伸縮装置とに分別され、
一方のグループの伸縮装置の伸縮と他方のグループの伸縮装置の伸縮とを交互に繰り返すことにより、伸長される伸縮装置の係止部が前方から被係止部に係合し、短縮される伸縮装置の係止部が被係止部から前方に離脱して前隣の被係止部上を後方から前方へ越えながら、移動台が一定経路上を前進して管を押圧することを特徴とする推進装置。
【請求項2】
伸縮装置はシリンダ装置であり、
係止部はシリンダ装置のピストンロッドの後端部に設けられ、
係止部は、後向きに突出した上下一対の爪と、両爪の間に形成された凹部とを有し、
係止部の凹部は被係止部に前方から係脱自在であり、
上記凹部の前部奥端から上部の爪の後部先端までの突出量をL1とし、凹部の前部奥端から下部の爪の後部先端までの突出量をL2とすると、突出量L1は突出量L2よりも大きく設定され、
被係止部は、各シリンダ装置に対応して、一定経路に沿って前後方向に所定間隔をあけて配列され、
上記シリンダ装置のピストンロッドのストロークをCとし、被係止部の前後間の距離をDとすると、上記ストロークCと上記距離Dと上記突出量L1,L2とは、
D+L2<C<D+L1
の関係に設定されていることを特徴とする請求項1記載の推進装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−144351(P2009−144351A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320260(P2007−320260)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】