説明

掲示具、及び掲示具の製造方法

【課題】壁面に限定されることなく、かつ掲示物や壁面にキズを付けることなく、安定した掲示が可能であり、かつ立体的形状及び豊かな色彩によってデザイン性に優れ、宣伝活動等に利用可能な掲示具を提供することを課題とする。
【解決手段】掲示具1は、透明性を有する樹脂プレート10を三次元形状に成型加工し、一方のプレート面10a側に開口部11及び開口部11と連通する凹状の充填空間7を有するゲル充填部6が構築された樹脂成型体3と、樹脂成型体3の充填空間7と相対する一方のプレート面10aに印刷加工された印刷インク層4と、印刷インク層4の上から重ねられ、印刷加工されたゲル接着層5と、ゲル接着層5と当接し、開口部11から少なくとも一部が盛上がった状態で充填空間7に粘着性状のウレタンゲル8を充填して構成される粘着部9とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掲示具、及び掲示具の製造方法に関するものであり、特にポスターやメモ用紙等の薄葉状の掲示物を壁面に貼付し、掲示等をするための掲示具、及び掲示具の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、学校、オフィス、及び一般家庭等において、ポスター等の主に紙素材の各種掲示物を壁面に貼付し、掲示等することが行われている。係る掲示を行う場合、各種の掲示具(または掲示具)が用いられている。例えば、突出した針を有する画鋲(画針)、セロハンテープや両面テープ等のテープ類、及び磁力を利用した掲示用マグネット等が用いられている。係る掲示具は、周知のものであり、詳細な説明は省略するものとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した各種掲示具は、下記に掲げるデメリットを有していた。例えば、画鋲の場合、一般に掲示物の四隅に針を突き刺し、さらに掲示する木材やコルク等の壁面に当該針を刺す必要があった。そのため、掲示後の掲示物及び壁面の双方には、針を刺した後の穴が残ることがあった。したがって、掲示物や壁面にキズを付けたくない場合や、壁面がコンクリート等の硬い素材で形成され、針を刺すことができない場合には、当該画鋲を使用することはできなかった。
【0004】
一方、セロハンテープ等のテープ類を用いた場合、上記画鋲のように掲示物を直接キズ付けるような虞はなかった。しかしながら、基材に塗布された粘着性物質によって、貼り痕が残ったり、粘着性の弱いテープの場合、十分な掲示力を保持することができないことがあった。その結果、使用する対象や用途等が限定されることがあった。さらに、掲示用マグネットを使用する場合、対象となる壁面が磁石がつく性質を有する金属製の素材や金属粉等を混入した素材で形成されている必要があり、使用可能な場所が限定されることがあった。特に、掲示用マグネットは、コンピュータのハードディスクドライブ等の磁気記憶手段に影響を与える可能性があり、コンピュータや電子機器の周辺での使用を制限される可能性もあった。
【0005】
また、これらの掲示具は、画鋲等のように定形のデザインであったり、テープ類等のように無色透明或いは単色であり、デザインや色彩の変化に乏しいものであった。掲示用マグネットの場合、壁面に吸着する磁石部以外をデザイン化したものも各種存在しているものの、一般に円形等の簡易なデザインであることが多く、立体的形状でかつ豊かな色彩を施したものは少なかった。さらに、掲示具に文字やデザインを付加し、商品の宣伝広告活動の一環としての宣伝グッズとして提供したりするものではほとんどなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、掲示物を掲示する壁面に限定されることなく、かつ掲示物や壁面にキズを付けることなく、安定した掲示が可能であり、かつ立体的形状及び豊かな色彩によってデザイン性に優れ、宣伝活動等に利用可能な掲示具、及び当該掲示具の製造方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の掲示具は、「透明性を有する無延伸の樹脂プレートを三次元形状に成型加工し、一方のプレート面側に開口部及び前記開口部と連通する凹状の充填空間を有するゲル充填部が構築された樹脂成型体と、前記樹脂成型体の前記プレート面に印刷加工された印刷インク層と、前記印刷インク層の上から重ねて印刷加工されたゲル接着層と、前記ゲル接着層と当接し、前記開口部から少なくとも一部が盛上がった状態で前記充填空間に粘着性状のゲル状物質を充填して構成される粘着部と」を具備して主に構成されている。
【0008】
ここで、樹脂成型体とは、成型加工によって三次元形状(立体形状)を呈するように構成されたものであり、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、及びアクリル系樹脂等の各種プラスチック素材を使用することができる。これらは、真空成型等の各種成型加工によって自由にその形状を変化させることができるものであり、成型加工後はその形状を保持することができるものである。また、一般に無色透明性状を呈するものであり、従って、樹脂成型体の成型加工前の平板状の樹脂プレートの一面に彩色を施すことによって、樹脂成型体を種々の色で着色することができる。なお、平状の樹脂プレートを成型加工等することで三次元形状の樹脂成型体を形成するため、上記プラスチック樹脂は、延伸処理のなされていない無延伸プラスチックを使用する必要がある。さらに、成型加工を施すことによって、平板状の樹脂プレートの一方のプレート面が凹状に窪む(換言すれば、他方のプレート面が凸状に突出する)ことによって樹脂プレートのプレート側面の一部が開口部を形成し、当該開口部と連通する充填空間を有するゲル充填部が構築されることになる。ここで、成型加工後の樹脂プレートは、凹状に凹んだ部分(ゲル充填部)とそれ以外の部分とを含んでいる。そこで、トムソン抜き加工を施し、三次元形状の樹脂成型体以外の部分をカットする。これにより、切り離した部分に開口部が形成されることになる。
【0009】
一方、印刷インク層は、掲示具に彩色を施すためのものであり、樹脂プレートの一方のプレート面(掲示具の裏面側に相当)に形成されている。ここで、樹脂成型体(樹脂プレート)は無色透明性状のため、プレート面に形成された印刷インク層によって掲示具が着色される。ここで、印刷インク層の形成は、周知の印刷技術を使用することができ、使用する印刷インクの種類も種々選択することができる。例えば、インクジェット印刷用インク、シルク印刷用インク、オフセット印刷用インク等が挙げられる。なお、印刷インク層を形成するために、必要に応じてインク乾燥工程等が必要となる。
【0010】
また、ゲル接着層とは、充填空間に充填される後述のゲル状物質との接着性を良好にし、充填されたゲル状物質(粘着部)が樹脂成型体の充填空間から脱落したり、剥離する不具合を防止するものであり、接着剤に対するプライマーとしての機能を付与するものである。ここで、ゲル接着層は、上述した印刷インク層の形成と同様に印刷加工によって形成され、樹脂プレート上に形成された印刷インク層の上に重ねるようにしてゲル接着層が形成される。その結果、樹脂プレート(樹脂成型体)、印刷インク層、ゲル接着層の三層構造が構成される。
【0011】
さらに、粘着部とは、粘着性状を呈するゲル状物質を樹脂成型体の充填空間に充填したものであり、粘着性を利用して掲示物を壁面に貼付し、掲示可能とする機能を有している。なお、上記機能を発揮するため樹脂成型体の開口部から少なくともゲル状物質の一部が盛上がるようにして、換言すれば、開口部からゲル状物質の表面張力によって僅かに上方に突出した状態で充填されている。ここで、ゲル状物質は応力に対する弾性変形性を有し、かつ壁面や紙等の各種素材に対する密着性、接着性を有している。これにより、壁面と本発明の掲示具の間に紙等の掲示物を挟み、掲示することが可能となる。このとき、粘着部の上方は壁面と直に接触し、一方、下方は掲示物と接触している。その結果、掲示物の掲示が可能となる。
【0012】
したがって、本発明の掲示具によれば、粘着部の粘着性を利用して、ポスター等の掲示物を壁面に貼付し、掲示することができる。特に粘着部は、粘着性及び密着性に優れるとともに、容易に剥離することができ、掲示後の壁面及び掲示物を汚損する等の問題もない。さらに、粘着部の粘着面(開口部から露出した部分)以外は、立体的に形成された樹脂成型体に覆われているため、粘着部自体の形状が大きく変化することがない。そのため、掲示物の貼付の際には当該樹脂成型体を把持することによって、粘着部に必要以上の力が加わることがなく、貼付作業時及び貼付後に安定した状態を保つことが可能となる。さらに、貼付対象となる壁面も紙、金属、ガラス、石膏、コンクリート、及びコルク・木材等の幅広い対象に適用することができ、貼付対象が制限されることがない。
【0013】
さらに、本発明の掲示具は、上記構成に加え、「前記ゲル接着層は、二液硬化型のウレタン系樹脂成分が使用され、前記ゲル状物質は、二液硬化型のウレタンゲルが使用される」ものであっても構わない。
【0014】
したがって、本発明の掲示具によれば、ゲル接着層及び粘着部のゲル状物質のそれぞれに対し、いずれも二液硬化型のウレタン系化合物が用いられる。さらに具体的に説明すると、ウレタン系化合物は、一般にポリオール成分を有する主剤と、ジイソシアネート系化合物を有する硬化剤とを所定比率で混合することにより、硬化反応が進行し、ウレタン結合が生成する。これにより、ウレタン系化合物が形成される。なお、ゲル接着層とゲル状物質を同系素材で構築したことにより、両者の密着性及び接着性が良好かつ強固なものとなり、ゲル充填部の充填空間に充填された粘着部(ゲル状物質)が脱落する可能性が小さくなる。
【0015】
一方、本発明の掲示具の製造方法は、「上記記載の掲示具の製造方法であって、透明性を有する無延伸の樹脂プレートの一方のプレート面に印刷インク層を印刷加工によって形成する印刷インク層形成工程と、形成された前記印刷インク層の上からゲル接着層を印刷加工によって重ねて形成するゲル接着層形成工程と、前記印刷インク層及び前記ゲル接着層の形成された前記樹脂プレートを三次元形状に成型加工する成型工程と、前記成型工程によって前記樹脂プレートを三次元形状に成型加工した樹脂成型体の凹状の充填空間にゲル状物質を開口部から少なくとも一部が盛上がった状態で充填するゲル充填工程と、前記ゲル充填部に充填された前記ゲル状物質を乾燥させるゲル乾燥工程と」を具備するものから主に構成されている。
【0016】
したがって、本発明の掲示具の製造方法によれば、平板状の樹脂プレートのプレート面に印刷インク層及びゲル接着層をそれぞれ印刷加工した後、三次元形状に加工するための成型加工を行う。その後、真空成型等によって生成した凹状の充填空間にゲル状物質(ウレタンゲル等)を充填し、乾燥(硬化)反応を促進させることによって製造される。なお、充填されるゲル状物質は乾燥(硬化)反応の際に減容するため、充填される充填量は当該減容分を考慮して規定されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、樹脂成型体に充填されたゲル状物質の粘着性を利用して掲示対象物を壁面に貼付し、掲示することが容易になる。特に、掲示対象物及び壁面を傷付けることがなく、かつ幅広い掲示対象面に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の掲示具の構成を示す(a)正面図、(b)平面図、(c)底面図、及び(d)右側面図である。
【図2】掲示具の構成を示す断面図及び一部拡大断面図である。
【図3】掲示具の使用例を示す(a)正面図、及び(b)右側面図である。
【図4】掲示具の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態である掲示具1、及び掲示具の製造方法2について、図1乃至図4に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の掲示具の構成を示す(a)正面図、(b)平面図、(c)底面図、及び(d)右側面図であり、図2は掲示具1の構成を示す断面図及び一部拡大断面図であり、図3は掲示具1の使用例を示す(a)正面図、及び、(b)右側面図であり、図4は掲示具の製造方法2の流れを示すフローチャートである。なお、本実施形態の掲示具1は、その三次元形状として、薬剤のカプセルを模した楕円球状で構成され、長手方向に沿って半分に分割した形状について例示する。
【0020】
本実施形態の掲示具1は、図1乃至図3に主として示されるように、三次元形状を呈して構成される樹脂成型体3と、樹脂成型体3を構成する樹脂プレート10の一方のプレート面10aに印刷加工された印刷インク層4と、印刷インク層4の上からさらに印刷加工されたゲル接着層5と、樹脂成型体3のゲル充填部6の充填空間7に粘着性状のウレタンゲル8が充填された粘着部9とを具備して主に構成されている。
【0021】
さらに具体的に説明すると、樹脂成型体3は、無色透明、かつ無延伸のポリカーボネート樹脂から構成された平板状の樹脂プレート10を用いて形成され、当該樹脂プレート10に対して所定圧力を加え、周知の真空成型技術を利用して真空成型加工を施すことにより、図1等に示されるような樹脂プレート10の他方のプレート面10b方向に膨出した過プレス状の立体物として構築されている。このとき、樹脂成型体3は、樹脂プレート10の一方のプレート面10a(掲示具1における裏面側、図1(b)における紙面奥行側に相当)を凹状に窪ませるように成型加工することで、開口部11と開口部11に連通する凹状の充填空間7を有するゲル充填部6とが形成される。これにより、充填空間7に後述するウレタンゲル8を充填することが可能となる。なお、本実施形態の掲示具1の場合、充填空間7に充填されるウレタンゲル8の充填量は3gになるように設定されている。これにより、開口部11から僅かに盛上がった状態でウレタンゲル8が充填される(図2における二点鎖線内参照)。
【0022】
一方、印刷インク層4は、樹脂成型体3を真空成型加工する前の樹脂プレート10の状態にあるときに、一方のプレート面10aに対して印刷加工されるものである。ここで、本実施形態の貼付具の場合、通常のインクジェット印刷の技法を利用して、植物性アルコールからなるインクジェット印刷用インクをカラー出力することによって構成されている。なお、印刷インク層4は、上記インクジェット印刷に限定されるものではなく、その他、シルク印刷、オフセット印刷等の周知の印刷技法を利用するものであっても構わない。この場合、必要に応じて乾燥工程や多色塗工の工程が行われる。
【0023】
さらに、ゲル接着層5は、上述した印刷インク層4の上から重ね塗りすることで形成されるものであり、本実施形態の場合、シルク印刷の技法を利用して二液硬化型のウレタン系樹脂からなるインクを塗布して形成することができる。さらに、具体的に説明すると、アクリルポリオール系化合物を含む主剤に対し、ジイソシアネート系化合物を含む硬化剤を所定量混合し、上記印刷インク層4の上に印刷することでウレタン系化合物による樹脂層(ゲル接着層5)が形成される。なお、主剤及び硬化剤の反応を十分に促進させ、ウレタン結合を生成するため、及び主剤または硬化剤中の溶剤を十分に蒸散させるために、硬化乾燥工程を行っても構わない。これにより、ウレタン系化合物のゲル接着層5によって印刷インク層4をコーティングした状態となる。なお、本実施形態の掲示具1の場合、上記印刷インク層4及びゲル接着層5の形成は、成型加工前の樹脂プレート10の状態で行われる。
【0024】
また、粘着部9は、ゲル状物質としてウレタンゲル8を使用したものであり、前述した樹脂成型体3の充填空間7に一定量ずつ注入されたものである。ここで、ウレタンゲル8は二液硬化型の素材であり、充填直前に主剤及び硬化剤を混合し、充填空間7への注入後、乾燥及び硬化反応を経ることでウレタン結合を生成し、所定応力に対して弾性変形するゲル状物質として充填空間7に留まることができる。さらに、樹脂成型体3に形成されたゲル接着層5によって、ウレタンゲル8(粘着部9)と樹脂成型体3との接着性・密着性が良好なものとなる。その結果、充填後に粘着部9が樹脂成型体3の充填空間7から脱落する可能性が低くなる。さらに、ウレタンゲル8及びゲル接着層5によって、プレート面10aに印刷可能された印刷インク層4を保護する機能を有している。その結果、印刷インク層4に直に力が加わらないため、印刷インク層4を傷付けることがない。
【0025】
ウレタンゲル8自体は、粘着性を有する素材であるため、充填され、開口部11から若干膨出したウレタンゲル8の粘着表面9aによって掲示物12を壁面13等に貼付し、掲示することができる。この場合、図2等に示すように、開口部11から露出した粘着部9の上方の粘着表面9aは被掲示対象の壁面13と接触し、密着性及び接着性を発揮することができる。一方、開口部11から露出した粘着部9の下方の粘着表面9aは掲示対象の掲示物12と接触し、密着性及び接着性を発揮することができる。係る双方の作用によって、掲示物12は壁面13に貼付され、当該状態を長期に渡って安定的に維持することができる(図3(a)、(b)参照)。また、ウレタンゲル8は白色または乳白色等の単色または種々の着色を施すことができる。但し、複雑な色彩や柄等を精度よく付けることは困難である。そのため、上述した印刷インク層4と組合わせることにより、掲示具1を色彩豊かなデザインを有するものとして構成することができる。
【0026】
次に、本実施形態の掲示具の製造方法2について、主に図4に基づいて説明する。ここで、図4は先に説明した掲示具1を製造するための製造方法2の各工程の流れを示すフローチャートである。
【0027】
始めに、ポリカーボネート樹脂製の平板状の樹脂プレート10にインクジェット印刷用インクを印刷加工し、樹脂プレート10の一方のプレート面10aに印刷インク層4を形成する(印刷インク層形成工程S1)。その後、印刷インク層4の上からシルク印刷技術を利用して、ウレタン系化合物からなるゲル接着層5を形成する(ゲル接着層形成工程S2)。これにより、下から樹脂プレート10、印刷インク層4、及びゲル接着層5の三層構造が構築される。なお、ゲル接着層5に使用されるウレタン系化合物は、二液硬化型のものであるため、ウレタン結合反応及び溶剤の乾燥等を十分にするゲル接着層乾燥工程を設けても構わない。
【0028】
ここで、樹脂プレート10は無色透明であり、印刷インク層4がプレート面10aに形成されていることにより、掲示具1の表側(他方のプレート面10b側)からは色彩豊かなデザインを視認することができる。また、ゲル接着層5は白色または黒色等の単色で構成されているため、印刷インク層4の色彩をより引き立たせる機能を有している。
【0029】
上記三層構造が形成された樹脂プレート10等を真空成型加工機を用いて三次元形状に真空成型加工する(成型工程S3)。なお、上記印刷インク層4は、三次元形状に真空成型する際の樹脂プレート10の曲折具合を考慮して予め色彩が調整されている。上記成型工程S3によって、樹脂プレート10及び層状に構築された印刷インク層4及びゲル接着層5が変形する。これにより、樹脂プレート10は樹脂成型体3となる。このとき、樹脂成型体3の凹状に窪んだ裏側(一方のプレート面10a側)は、樹脂プレート10に伴って変形した印刷インク層4及びゲル接着層5が構成されている。ここで、樹脂成型体3は、上記ゲル接着層5と相対する充填空間7を有するゲル充填部6が形成されている。このとき、樹脂成型体3のゲル充填部6の周囲は、真空成型加工の際に加工されなかった部分、すなわち、平板状の樹脂プレート10の部分が残存している。
【0030】
そこで、トムソン抜き加工を施すことで、真空成型加工によって三次元形状となった成形物(樹脂成型体3)の部分と、周囲の樹脂プレート10の部分とを切り離す(トムソン抜き工程S4)。これにより、予め設定した形状(カプセル状)の樹脂成型体3が完了する。
【0031】
次に、トムソン抜き加工された樹脂成型体3を開口部11を上方に向けて載置する。なお、樹脂成型体3の形状によって、開口部11を上方に向けた状態で安定した載置ができない場合には、専用治具等を使用するものであっても構わない。その後、上方に開口した開口部11から、所定の混合比率で主剤(ポリオール系)及び硬化剤(ジイソシアネート系)を混合した液状のウレタンゲル8を注入し、充填空間7に充填する(ゲル充填工程S5)。このとき、その後の乾燥による収縮を考慮して、開口部11から少しウレタンゲル8が盛上がるような状態で注入(約3g)を行う。その後、二液硬化型のウレタンゲル8の硬化及び乾燥を行う(ゲル乾燥工程S6)。係るゲル乾燥工程S6は、例えば、所定温度に設定された乾燥炉内に1時間程度導入することによって完了する。その結果、開口部11から僅かに膨出した粘着表面9aを有し、充填空間7に充填された粘着部9が完成する。なお、樹脂成型体3の裏側に印刷加工されたゲル接着層5とウレタンゲル8とが当接することにより、同系化合物同士によって互いの密着性はさらに高められる。その結果、乾燥工程後の粘着部9が充填空間7から脱落するようなことはない。
【0032】
上記した各工程を経ることにより、カプセル形状の掲示具1が完成する(ウレタンゲルの硬化完了・掲示具の製造完了S7)。これにより、ポスター等の紙等の掲示物12を画針やテープ類、及び掲示用マグネット等を利用することなく掲示することができる。その結果、従来の掲示具の欠点であった掲示物12等に対するキズ付きや粘着性物質による汚れ、使用場所の限定等を解消することができる。なお、本実施形態の掲示具1のウレタンゲル8は表面に汚れが付着した場合、水で洗い流すことにより、再び粘着性能が復元する性質を有するため、何度でも繰返し使用が可能である。さらに、従来は掲示が困難であったモルタルやコンクリート等の表面の粗い素材に対してもウレタンゲル8が当該表面形状に合わせて変形することで貼付及び掲示が可能となる。加えて、印刷インク層4によって掲示具1を豊かなデザイン等で彩色することができるため、POPや宣伝用のノベルティグッズとしての使用が可能となる。
【0033】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0034】
すなわち、本実施形態の掲示具1及び掲示具の製造方法2において、ゲル状物質としてウレタンゲル8を使用するものを示したが、これに限定されるものではなく粘着性を有し、かつ使用後の壁面等に後残りすることがない素材であれば構わない。しかしながら、入手容易性及び粘着性能等を勘案すると、ウレタンゲル8の使用が好適と考えられる。
【0035】
さらに、樹脂成型体3を成型加工する際に、周知の真空加工技術を用いるものを示したが、これに限定されるものではなく、通常の型(アルミ金型、樹脂型等)を用いて成型加工するものであっても構わない。また、本実施形態の掲示具1として、比較的簡単なカプセル形状を例示したがこれに限定されるものではなく、成型加工技術によって構築可能なものであれば、さらに複雑な形状(例えば、立体化したキャラクター等)であっても構わない。これにより、ノベルティーとして配布する宣伝用効果がさらに高いものとなる。
【符号の説明】
【0036】
1 掲示具
2 掲示具の製造方法
3 樹脂成型体
4 印刷インク層
5 ゲル接着層
6 ゲル充填部
7 充填空間
8 ウレタンゲル
9 粘着部
9a 粘着表面
10 樹脂プレート
10a,10b プレート面
11 開口部
12 掲示物
13 壁面
S1 印刷インク層形成工程
S2 ゲル接着層形成工程
S3 成型工程
S5 ゲル充填工程
S6 ゲル乾燥工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する無延伸の樹脂プレートを三次元形状に成型加工し、一方のプレート面側に開口部及び前記開口部と連通する凹状の充填空間を有するゲル充填部が構築された樹脂成型体と、
前記樹脂成型体の前記プレート面に印刷加工された印刷インク層と、
前記印刷インク層の上から重ねて印刷加工されたゲル接着層と、
前記ゲル接着層と当接し、前記開口部から少なくとも一部が盛上がった状態で前記充填空間に粘着性状のゲル状物質を充填して構成される粘着部と
を具備することを特徴とする掲示具。
【請求項2】
前記ゲル接着層は、
二液硬化型のウレタン系樹脂成分が使用され、
前記ゲル状物質は、
二液硬化型のウレタンゲルが使用されることを特徴とする請求項1に記載の掲示具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の掲示具の製造方法であって、
透明性を有する無延伸の樹脂プレートの一方のプレート面に印刷インク層を印刷加工によって形成する印刷インク層形成工程と、
形成された前記印刷インク層の上からゲル接着層を印刷加工によって重ねて形成するゲル接着層形成工程と、
前記印刷インク層及び前記ゲル接着層の形成された前記樹脂プレートを三次元形状に成型加工する成型工程と、
前記成型工程によって前記樹脂プレートを三次元形状に成型加工した樹脂成型体の凹状の充填空間にゲル状物質を開口部から少なくとも一部が盛上がった状態で充填するゲル充填工程と、
前記ゲル充填部に充填された前記ゲル状物質を乾燥させるゲル乾燥工程と
を具備することを特徴とする掲示具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−37313(P2013−37313A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175580(P2011−175580)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(301070380)株式会社 パックマン (2)