説明

掲示板のための照明装置

【課題】掲示板の照明に関して比較的均一な照度分布が得られ、また、比較的低いコストでの製造又は完成を可能とする照明装置を提供すること。
【解決手段】
照明装置(3)は、掲示板(1)の板体(5)が規定する掲示面(7)に対して板体(5)の一の縁辺(9)から他の縁辺(11)に向けて光(L)を放射するように配置された光源(13)と、板体(5)に相対するように配置された透明体(15)とを備え、透明体(15)が光源(13)の光の照射を受ける、板体の掲示面(7)に対向する面(17)を有し、面(17)が、板体(5)の一の縁辺(9)及び他の縁辺(11)を含む平面(20)に対して板体(5)の一の縁辺(9)から他の縁辺(11)に向けて漸近することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は掲示板のための照明装置、より詳細には掲示板に掲げられた情報(掲示情報)についての視認性の改善に寄与する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の掲示板、例えばバス停留所に設置され運行時刻表を掲示情報として掲げる板体からなるほとんどの掲示板には照明手段が設けられていないため、曇天、夕暮れ時、夜間等における比較的暗い環境の下での掲示情報についての視認性が確保されないという事情がある。また、他の既存の掲示板、例えば公園、公共施設等に設置され案内、広告、公告等を掲示情報として掲げる板体からなる掲示板又は該板体を含む掲示板には照明手段が設けられてはいるものの、当該照明手段を構成する光源から離れるに従って低下する照度のため、掲示情報の全てについて視認性が十分に確保されないという事情がある。
【0003】
掲示板の照明に関するこのような事情に鑑み、従来、掲示情報についての視認性を確保し、また視認性の改善に寄与する照明機能をもった掲示板装置が提案されている(後記特許文献1)。
【0004】
この従来の掲示板装置は、表面と掲示情報が直接に記載された裏面とを有する透明基板と、該透明基板に相対するように配置された、表面と裏面とを有する導光板と、該導光板に対してその厚さを規定する側面から光を照射するように配置された光源とを備える。透明基板と導光板とは、透明基板の表面と導光板の裏面とにおいて、互いに間隔を置いて配置された透明な多数の接着剤層を介して接着されている。
【0005】
前記従来の掲示板装置によれば、光源から照射され導光板の側面からその内部に入射した光は、導光板の表裏両面で全反射しながら該導光板内を進む。この間、光の一部は導光板及び透明基板間の透明な各接着剤層を経て、透明基板の表面から該透明基板の内部へと進み、掲示情報の記載面である裏面において反射する。掲示情報を含む反射光は、透明基板と、接着剤層及び該接着剤相互間の空間と、導光板とを順次に経て、導光板の表面からその外部に出射する。これによれば、掲示情報の全てに対する比較的均一な照度分布が得られ、これにより、比較的暗い環境の下にある掲示情報に対する良好な視認性が確保される。
【0006】
ところで、前記従来の掲示板装置によって前記掲示面に対する比較的均一な照度分布を実現するためには、前記接着剤層が所定の範囲の大きさを有し、かつ所定の仕方及び密度で分布することが必要とされる。このため、前記掲示板装置の製造には、その構成部材に対する特別な加工を施すことが必要であり、これが製造コストの増大を招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−288968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、掲示板の照明に関して比較的均一な照度分布が得られ、また、比較的低いコストでの製造又は完成を可能とする照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(請求項1に記載の発明の特徴)
請求項1に記載の発明は、情報が掲示される掲示面を規定する、互いに相対する一の縁辺及び他の縁辺を有する板体を備える掲示板のための照明装置であって、
前記板体の掲示面に対して前記板体の一の縁辺から他の縁辺に向けて光を放射するように配置された光源と、前記板体に相対して配置された透明体であって前記光源の光の照射を受ける、前記板体の掲示面に対向する面を有し、該面が前記板体の一の縁辺及び他の縁辺を含む平面に対して前記板体の一の縁辺から他の縁辺に向けて漸近する透明体とを含むことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、光源から放射され、掲示板の板体の一の縁辺から他の縁辺に向けて進行する光が前記板体の掲示面と透明体の面とを入射する。前記板体の掲示面への光の入射により、前記掲示面、したがって該掲示面に掲示される掲示情報が照らされ、前記掲示板の周囲が比較的暗い環境下にあるときにおける前記掲示情報の視認が可能とされる。また、前記透明体の面に入射した光の一部は前記板体の掲示面に向けて反射し、これに入射する。この反射光の入射により、前記板体の掲示面がより一層明るく照らされる。
【0011】
ところで、特に点光源のような光放射の場合、その放射光はその光源から離れるに従ってその強度又はエネルギが低下するという性質がある。このため、前記板体の掲示面における照度は、前記光源から遠い箇所におけるほど、すなわち前記板体の一の縁辺から他の縁辺に至るに従って、低下する。
【0012】
本発明にあっては、光の反射面をなす前記透明体の面が、前記板体の平面に対して前記板体の一の縁辺から他の縁辺に向けて漸近する。このことから、前記透明体の面と前記板体の平面との間の間隔が前記光源から遠ざかるに従って次第に減少する。この構造により、前記光源からの光を前記透明体の面で反射させ、前記板体の掲示面に入射する光量を増大させる。したがって、前記板体の掲示面に入射する光は、その入射位置が前記光源から比較的遠くにあっても光量が多く、比較的高い強度を有する。その結果、前記掲示面における照度分布の均一化が図られ、前記掲示面に掲示される内容である掲示情報に対する視認性のより一層の向上が図られる。
【0013】
本発明に係る照明装置は、前記掲示板に対して前記光源及び前記透明体を前記した位置関係に配置することにより完成される。また、前記掲示板が光源を備えるものであるときは、当該光源を本発明の構成要素として、該光源に対する前記透明体の相対位置が定められる。したがって、本発明によれば、照明装置の完成のためには、従来におけるような構成部材の特別な加工及びこれに要するコストを必要としない。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記透明体が平板からなり、また請求項1に記載の発明の構成要素に加えて、さらに、前記透明体に相対してかつ前記板体の平面と平行に配置された透明なカバー板を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、前記光源から放射され前記カバー板に到達し、該カバー板で反射する光の一部を前記掲示面のための照射光として利用することができ、これにより、前記掲示面における照度をより一層高めることができる。前記カバー板は、前記掲示板がその板体と平行に配置されたカバーガラスを備えるものであるときは、当該カバーガラスを本発明の構成要素であるカバー板とすることができる。
【0016】
(請求項3に記載の発明の特徴)
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の前記透明体が、前記板体の平面と平行である平坦面を有することを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、前記板体の平面と平行をなす前記透明体の平坦面が、請求項2に記載されたカバー板におけると同様の光の反射機能を担う。すなわち、前記透明体の平坦面が、前記光源から放射され前記透明体の面を経てその内部に入射する光の反射面として機能する。前記平坦面で反射する光の一部は前記掲示面のための照射光として利用することができ、これにより、前記掲示面における照度をさらに高めることができる。
【0018】
(請求項4に記載の発明の特徴)
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の構成要素に加えて、さらに、前記光源から放射される光を拡散するための光拡散板を含むことを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、前記光源から放射される光を光拡散板に通すことにより、該光拡散板に通さない場合と比べて、前記板体の掲示面と前記透明体の平坦面とに当たる暗部の光量(光のエネルギー量)をより増大させることができ、これにより、前記掲示面における照度及び照度分布の均一性のさらなる増大を図ることができる。
【0020】
(請求項5に記載の発明の特徴)
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の前記板体の掲示面が、前記平面と同一の面又は前記透明体の面に対して凹状の湾曲面からなることを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、前記板体の掲示面を規定する面は一般的に用いられている掲示板におけると同様の平坦面すなわち平面であることを基本とするところ、前記掲示面を前記透明体の面に対して凹状の湾曲面からなるものとするときは、これを前記平面と同一の面とする場合に比べて、前記掲示情報に対する視認性をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、掲示板の掲示面についての照明に関し、照度が比較的高いまた照度分布が比較的均一な状態のものとすることができる。また、比較的低いコストでの製造又は完成を可能とする照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】照明手段を有しない既存の掲示板に適用された本発明に係る照明装置の一例の概念を示す断面図である。
【図2】図1に示す照明装置の一例の概念を示す正面図である。
【図3】照明手段を有しない既存の掲示板に適用された本発明に係る照明装置の他の一例を概略的に示す断面図である。
【図4】照明手段を有しない既存の掲示板に適用された本発明に係る照明装置のさらに他の一例を概略的に示す断面図である。
【図5】照明手段を有する既存の掲示板に適用された本発明に係る照明装置の一例を概略的に示す断面図である。
【図6】図3と図1とにそれぞれ記載された本発明の適用例と、2つの非適用例とについての掲載面における輝度分布の比較を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1及び図2を参照すると、照明手段を有しない既存の掲示板1に適用された本発明の一例に係る照明装置が全体に符号3で示されている。
【0025】
図示の掲示板1は、例えばバス停留所に設置され運行時刻表を情報として掲げる矩形の板体5からなる。板体5は、前記情報(掲示情報)が掲げられた掲示面7と、該掲示面を規定する互いに相対する一の縁辺(図1において上縁)9及び他の縁辺(同下縁)11とを有する。板体5の掲示面7は、基本的に、平坦面(図1に実線で示す。)からなるが、これに代えて、後記透明体15の面17に対して凹状をなす湾曲面(図1に想像線で示す。)からなるものとすることができる。前記凹状の湾曲面からなる掲示面7も、前記平坦面からなる掲示面7と同様、これを規定する一の縁辺9及び他の縁辺11(すなわち、それぞれが直線からなる2つの線分)を有する。前記凹状の湾曲面からなる掲示面7は、例えば板体5を構成する金属板に曲げ加工を施し、あるいは板体5を構成する平板の一面に切削加工を施してこれを凹面に仕上げることにより得ることができる。なお、板体5の掲示面7に掲げられる前記掲示情報は、掲示面7に直接に記載されたものであるか、あるいは掲示面7に貼付された紙片や他のシート片のような媒体に記載されたものであるかを問わない。掲示面7に貼付された紙片や他のシート片のような前記媒体の表面は、光の拡散性が高い構造を有するため、視認性の向上に寄与する。
【0026】
本発明に係る照明装置3は、掲示板1の板体5の掲示面7、したがって掲示面7に掲げられた前記掲示情報を照らすための光源13を備える。光源13は板体5の掲示面7をその上方位置から下方に向けて照らす位置、すなわち掲示面7に対して板体5の上縁9からその下縁11に向けて光Lを放射する位置に配置されている。光源13は、任意の支持手段(図示せず)を介して、板体5に支持される。なお、図2に示す照明装置3(光源13)は、光拡散板25(透明体15)の幅寸法よりも短くなっているが、これを長くしてもよい。
【0027】
光源13は、発光ダイオード(LED)、EL、蛍光管、電球等の光を発するもののうちから任意に選択された、好ましくは前記発光ダイオードからなる。光源13はこれを常に点灯状態におくことが可能であるが、点灯に要する電気エネルギの節減の観点から、掲示板1の周囲が比較的明るい昼間に消灯状態とされ、比較的暗い夕暮から夜間に点灯状態とされることが好ましい。このために、例えば消灯状態にある光源13を手動にて点灯状態にするためのスイッチ(図示せず)を掲示板1又は該掲示板のための支柱(図示せず)などの任意の箇所に設置し、あるいは、光源13の点灯及び消灯が遠隔的に制御されるように設定することができる。また、光源13を点灯させるための電気エネルギ源として商用電源を利用し、あるいは太陽光発電手段又は手回しハンドル式、足踏み式の発電手段と蓄電手段とを含む自己発電装置(図示せず)を利用することができる。前記自己発電装置は例えば掲示板1のための前記支柱に取り付けることができる。
【0028】
本発明に係る照明装置3は、また、掲示板1の板体5に相対するように配置された透明体15を備える。図1に示す例において、透明体15は平板からなり、掲示板1の板体5にその下縁11で固定された水平な板部材19の上に支持されている。透明体15は、光源13が放射する光Lを受ける面であって板体5の掲示面7に対向する面17を有する。面17は、図1に示すように、これを平坦な面からなるものとし、あるいは板体5の掲示面7に対して凸状に張り出す、例えば円弧面や放物面のような曲面(図示せず)からなるものとすることができる。透明体15の面17は、板体5の上縁9と下縁11とを含む平面すなわち図1において実線で示す掲示面7と同一の面20に対して、板体5の上縁9から下縁11に向けて漸近するように上下方向へ斜めに伸び、板体5の下縁11において掲示面7と交差し、又は下縁11の下方の位置において掲示面7の延長と交差している。このため、透明体15の面17と平面20との間には、板体5の上縁9から下縁11に向けて漸減する間隔Dが存する。このように配置された透明板15は、掲示板1の板体5の上縁9及び下縁11とそれぞれ同じ高さ位置にある上端部15a及び下端部15bを有する。
【0029】
透明体15の面17が前記平坦面からなる場合、板体5の平面20又はその延長と透明板15の面17との交差角度αは、0度及び90度の範囲(0°>α>90°)で任意に定めることができる。ただし、交差角度αの値が大きいほど間隔Dの値、したがって照明装置3の厚さ寸法が大きいものとなることから、これを回避してより薄型の照明装置3を実現するために交差角度αの値は、比較的小さい角度、例えば2〜7度に設定することが好ましい。透明体15はアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ガラス等の光を透過させ得る材料のうちから任意に選択された材料、好ましくは前記アクリル樹脂からなるものとすることができる。
【0030】
透明体15は、昼間における陽光のような掲示板1の周囲から放射される光が板体5の掲示面7に至るようにこれを透過すること(入射光の透過)を許し、さらに、板体5の掲示面7に当たって反射した光が透過すること(反射光の透過)を許す。また、透明体15は、光源13から放射され掲示面7で反射する光の透過も同様に許す。このことから、掲示板1の閲覧者は、掲示板1の掲示面7に入射する光が掲示板1の周囲から放射されるものであるか、光源13から放射されるものであるかを問わず、透明体15を通して、前記掲示情報を読み取ることができる。
【0031】
ところで、光源13を出た光Lはその進行の間に次第に減衰する性質を有することから、光Lの照射を受けて照らされる板体5の掲示面7における照度は板体5の上縁9から下縁11に向けて次第に減少する。このため、板体5の下縁11に近づくほど、前記掲示情報に対するいわゆる照明不足が顕著になる。
【0032】
本発明によれば、光源13が発する光Lは、間隔Dが最大である板体5の上縁9の高さ位置において、板体5の掲示面7と透明体15の面17との間からこれらが規定する空間21に入射し、間隔Dが次第に減少する空間21内を板体5の下縁11に向けて進み、この間に板体5の掲示面7を照らす。これにより、掲示板1の周囲が比較的暗い環境下にあるときの掲示面7上における前記掲示情報の視認が可能とされる。また、空間21内を進行中の光Lは同時に透明体15の面17をも照らす。このとき、透明体15の面17を照らす光の一部L1が板体5の掲示面7に向けて反射し、掲示面7に到達してこれを照らす。これにより、掲示面7における照度が増し、前記掲示情報の視認性がより向上される。なお、好ましくは、空間21外への光L,L1の漏れの低減を図るべく、板体5及び透明体15の双方に接する両側面(図1で見て三角形の外形をなす面)にそれぞれ矩形状の一対の板部材23(図1にはその一方のみを示す。)が配置されており、これにより、空間21が閉鎖されている。
【0033】
本発明にあっては、前記したように、光源13が発する光Lを受ける透明体15の面17が、板体5の平面20に対して、板体5の上縁9から下縁11に向けて漸近するように斜めに設置されている。このため、反射光L1は板体5の掲示面7に対して上方から下方に向けて斜めに入射する。これにより、掲示面7に対する入射光量の増大が図られる。その結果、掲示面7全体における照度分布の不均一が改善され、前記掲示情報についての視認性がより良好なものとされる。また、板体5の掲示面7が前記凹状の湾曲面からなる場合にあっては、これが前記平坦面からなる場合と比べて、掲示面7に入射する光L1がより垂直に近いものとなるため、より高い照度が得られ、これにより、前記掲示情報についての視認性がより一層良好なものとされる。
【0034】
照明装置3は、好ましくは、さらに、光源13から放射され板体5と透明体15との間の空間21に入射する光Lに拡散作用を及ぼす光拡散板25を備える。光拡散板25は、板体5の上縁9と透明体15の上端部15aとにおいてこれらの上に支持されている。特に集光などのレンズの機能を有する光拡散板の場合、光拡散板25に通された光は、光拡散板25に通されない光と比べて拡散および集光の度合いが高く、より多くの量の光が板体5の掲示面7と透明体15の面17に向かう。これが拡散板25を設けたことによる効果である。このため、掲示面7と面17とのそれぞれに当たる光の量(光量)が増大し、掲示面7を照らす光の量が拡散板25の効果の分だけ増大する。これにより、掲示面7における照度がより高められ、前記掲示情報についての視認性がより良好にされる。特に、光源13がLEDのような輝度の高い点光源からなる場合、高輝度の光を光拡散板25に通すことにより、掲示面7をより均一に照射し、また、掲示板の閲覧者に対する眩しさを緩和することができる。なお、光拡散板25の加工形状を変更し、あるいは光源13と光拡散板25との間にレンズ(図示せず)を配置することにより、前記光量の増大を図ることができる。
【0035】
次に、図3を参照する。図3には、図1に示すと同一の構成を有する掲示板1に適用された本発明の他の例に係る照明装置が全体に符号33で示されている。この照明装置33は、図1に示す照明装置3と同一の構成要素と、これに付加された透明なカバー板35とを備える。
【0036】
カバー板35は、透明体15に相対してかつ掲示板1の板体5と平行に配置されている。図示のカバー板35は板体5とほぼ同一の全体形状を有し、その下端部35bにおいて、透明体15を支持する板部材19上に支持され、また、その上端部35aにおいて、透明体15の上端部15aに接している。これに代えて、カバー板35を透明体15から間隔をおいて、すなわちカバー板35の上端部35aが透明体15の上端部15aに接しないように透明板15から離して配置することも可能である。この例においても、板体5の掲示面7が、透明体15の面17に対して前記凹状の湾曲面からなるものとすることができる。また、カバー板35は、これを掲示板1の板体5と平行に配置する図示の例に代えて、板体5に対して非平行状態にすなわち傾斜状態に配置することができる。
【0037】
照明装置33において、カバー板35は、昼間における陽光のような掲示板1の周囲から放射される光の透過及び板体5の掲示面7からの反射光の透過、並びに光源13から出て掲示面7で反射される光の透過を許す。このため、掲示板1の閲覧者は、掲示面7を照らす光が掲示板1の周囲から放射されるものであるか、光源13から放射されるものであるかを問わず、カバー板35を通して、前記掲示情報を読み取ることができる。
【0038】
照明装置33においても、光源13から放射された光Lは、板体5の掲示面7及び透明体15の面17に対して図1に示す照明装置3におけると同様の挙動を示すが、照明装置33にあっては、この挙動に加えて、透明体15の面17に当たった光Lの他の一部L2が透明体15を透過し、カバー板35に当たる。カバー板35に当たった光L2の一部L3は該カバー板で反射し、透明体15を経て板体5の掲示面7に到達し、これを照らす。照明装置33によれば、板体5の掲示面7を照らす光として、光Lの一部及び透明体15の面17からの反射光L1のほかに、カバー板35からの反射光L3が加わることから、掲示面7に到達する光量がさらに増大され、掲示面7における照度がより高められ、前記掲示情報についての視認性がより良好なものとされる。照明装置33においても、透明体15とカバー板35とが規定する空間37からその外部への光L2及び光L3の漏洩を少なくするために空間37を閉鎖することが望ましい。このために、図3に示す例では、板体5と透明体15とが規定する空間21を閉鎖するために用いられている一対の板部材23の一部によって透明体15とカバー板35との両側面間がそれぞれ覆われている。
【0039】
ここで、参考のため、前記した図3と図1とにそれぞれ記載した本発明の適用例と、2つの非適用例とについての比較実験の結果(掲示面における輝度分布)を、図6を参照して、以下に記す。前記2つの非適用例は、それぞれ、図3に示す適用例から透明体15を取り除き、カバー板35を残してなる例(非適用例1)と、図1に示す適用例から透明体15を取り除いてなる例(非適用例2)とからなる。この比較実験において、光源による光の照射を受ける掲示面(図1及び図3において符号7で示す面)をA4版の大きさの上質紙の紙面とし、前記掲示面に掲げられる掲示情報を前記紙面に記載されたバス運行時刻表とした。また、便宜上、前記紙面をその上縁から下縁に向けて順にA〜Eの5つのエリアに区分し、これらのエリアを互いに区分する線をそれぞれA-B境界、B-C境界、C-D境界及びD-E境界とし、前記紙面の上縁及び下縁をそれぞれ0−A境界及びE-end境界と名付けた。これらの0−A境界、A-B境界、B-C境界、C-D境界、D-E境界及びE-end境界は、それぞれ、前記紙面の上下方向の長さを1として、前記上縁から0/8、1/8、2/8、4/8、6/8及び8/8の距離を隔てたところに位置する。
【0040】
【表1】

【0041】
前記輝度分布と図6とを参照すると、本発明の適用例及び非適用例のいずれにおいても、光源にもっとも近い掲示面(図1及び図3において符号7で示す面)の最上端(0−A境界(上縁))における輝度は同一の値(130cd/m)であるが、光源から離れるほど、すなわち前記掲示面の下方位置におけるほど、輝度の値は小さい。しかし、前記掲示面の最下端(E-end境界(下縁))についてみると、輝度の値は、適用例(図3)において最も高く(2.9cd/m)、適用例(図1)がこれに次ぐ(2.5cd/m)。また、これらのいずれの適用例においても、非適用例1(1.1cd/m)及び非適用例2(0.3cd/m)におけるよりも高い。さらに、この比較実験における前記掲示情報の肉眼による識別は、主観的には、2.0cd/m以上の輝度があるときに比較的容易であり、この輝度の値よりも低い箇所(非適用例1におけるD−E境界及びE−end境界、並びに、非適用例2におけるC-D境界、D−E境界及びE−end境界)での識別は比較期困難であった。さらに、前記掲示面の最上端の輝度に対する最下端の輝度の程度は、本発明の適用例(図3)及び適用例(図1)においてそれぞれ約2.2%(2.9/130)及び約2.0%(2.5/130)であり、非適用例1及び非適用例2における約0.8%(1.1/130)及び約0.2%(0.3/130)を大きく上回る。これらのことは、本発明が掲示面の照度をより均一にするのに有効であることを示している。また、本発明の各適用例において、これを構成する透明体(図1及び図3において符号15で示されている。)の面(同じく符号17で示されている。)に対して前記掲示面を凹状の湾曲面(図1において想像線で示されかつ符号7が付されている。)とすると、1.0〜2.0cd/m程度の輝度の増大が見られた。またこれとは反対に面17を前記掲示面に対して凸状の湾曲面(図示を省略)としたときも上記同様に1.0〜2.0cd/m程度の輝度の増大の効果が見られた。
【0042】
次に、図4を参照すると、図1に示すと同一の構成を有する掲示板1に適用された本発明のさらに他の例に係る照明装置が全体に符号43で示されている。この照明装置43は、図1に示す照明装置3の構成要素のうちの透明体15のみを、非平板からなる透明体45に置き換えたものからなる。
【0043】
照明装置43の透明体45は、図4に示す例では全体に直角三角形の横断面形状を有する三角柱からなり、斜面47と、該斜面に連なる2つの直交面(平坦面)49,51とを有する。透明体45はその一方の直交面49を底面として板部材19上に支持され、両直交面49,51と交差する上面53が板体5の上縁9と同一の高さに位置する。この配置状態において、透明体45の斜面47が、図1の照明装置3における透明体15の面17と同一構成の面をなす。また、他方の直交面51は板体5に相対しかつ板体5の平面20と平行である平坦面をなす。この例においても、板体5の掲示面7が、透明体45の斜面47に対して前記凹状の湾曲面からなるものとすることができる。透明体45は、これが直角三角形の横断面形状を有する三角柱からなる図示の例に代えて、非直角三角形の横断面形状を有する三角柱からなるものとすることができる。また、透明体45の一方の直交面(平坦面)に代えて、これを、段落0028にて説明したと同様の円弧面や放物面のような曲面からなるものとすることができる。
【0044】
照明装置43において、透明体45は、昼間における陽光のような掲示板1の周囲から放射される光の通過及び板体5の掲示面7からの反射光の透過、並びに光源13から出て掲示面7で反射される光の透過を許す。このため、掲示板1の閲覧者は、掲示面7を照らす光が掲示板1の周囲から放射されるものであるか、光源13から放射されるものであるかを問わず、透明体45を通して、前記掲示情報を読み取ることができる。
【0045】
照明装置43においても、光源13から放射された光Lは、図1に示す照明装置3における板体5の掲示面7及び透明体15の面17に対するのと同様の挙動を示すが、照明装置43にあっては、この挙動に加えて、透明体45の斜面すなわち面47に当たった光Lの他の一部L2が面47を経て透明体45の内部に入射し、透明体45の他の面51に当たる。他の面51に当たった光L2の一部L4は他の面51で反射し、透明体45を経て板体5の掲示面7に到達し、これを照らす。照明装置43によれば、板体5の掲示面7を照らす光として、光Lの一部及び透明体45の面47からの反射光L1のほかに、透明体45の他の面51からの反射光L4が加わることから、図3に示す照明装置33におけると同様に、掲示面7に到達する光量がさらに増大され、掲示面7における照度がより高められ、前記掲示情報についての視認性がより良好なものとされる。照明装置43においても、透明体45の両側面からその外部への光L2及び光L4の漏洩を少なくするため、図4に示す例では、板体5と透明体45とが規定する空間21を閉鎖するために用いられている一対の板部材23の一部によって透明体45の両側面が被覆されている。
【0046】
本発明に係る照明装置3,33,43は、図1、図3及び図4に示す態様とは異なる態様のものとすることができる。例えば、各照明装置3,33、43について、図1、図3及び図4のそれぞれを上下逆さにして見たときの態様からなるものとすることができる。この態様では、光源13が板体5の下方の位置におかれ、光源13の光Lは板体5の一の縁辺9から他の縁辺11に向けて上方へ放射される。
【0047】
また、例えば、各照明装置3,33,43について、板体5の両側縁55,57(図2参照)をそれぞれ前記一の縁辺及び他の縁辺とする態様のものとすることができる。この態様においては、光源13が板体5の掲示面7に対して板体5の一方の側縁55から他方の側縁57に向けて光を放射するように配置され、透明体15,45が板体5に相対しかつ透明体15,45の面17,47が板体5の平面20に対して板体5の一方の側縁55から他方の側縁57に向けて漸近するように配置される。この態様にあっては、光源13の光Lは一方の側縁55から他方の側縁57に向けて照射される。
【0048】
前記のいずれの照明装置3,33,43及びいずれの態様の照明装置においても、光源13は、これが放射する光Lのできる限り多くの量が板体5と透明板15,45とが規定する空間21に入射することとなるように、その周囲が適当な覆い手段(図示せず)で覆われることが望ましい。
【0049】
最後に図5を参照すると、照明手段を有する既存の掲示板61に適用された本発明の他の一例に係る照明装置が全体に符号63で示されている。
【0050】
図示の掲示板61は箱状体65と、該箱状体の内部に配置された前記照明手段である光源67とを備える。箱状体65は1の開放面69を有し、開放面69に相対する矩形の板部材71と、該板部材の周囲を取り巻く頂板部材73、該頂板部材に相対する底板部材75及び互いに相対する一対の側板部材77(これらのうちの一方のみを示す。)とからなる。また、既存の光源67は、発光ダイオード(LED)、EL、LD、蛍光管、電球等のいずれからなるものであってもよい。光源67は、頂板部材73に支持されている。
【0051】
この掲示板61にあっては、箱状体65の板部材71の一部、すなわち光源67よりも下方に位置する部分(以下「下方部」という。)79が、図1に示す掲示板1の板体5に相当し、下方部79の内面、すなわち箱状体65の開放面69に相対する面が、前記掲示情報が掲げられる掲示面81をなす。掲示面81は、図1に示す板体5の掲示面7に相当する。また、この例においても、下方部79の掲示面81が、透明体15の面17に対して前記凹状の湾曲面からなるものとすることができる。
【0052】
照明装置63は、掲示面81を規定する下方部79の上縁83及び下縁85をそれぞれ前記一の側縁及び他の側縁とした、図1に示す照明装置3と同一の構成のものからなる。すなわち、照明装置63は、下方部79の掲示面81に対してその上縁83から下縁85に向けて光Lを放射するように配置された光源67と、下方部79に相対して配置された平板からなる透明体15とを備え、透明体15は光源67の光Lの照射を受けまた下方部79の掲示面81に対向する平坦面からなる面17を有し、面17は下方部79の掲示面81と同一の面である平面20に対して下方部79の上縁83から下縁85に向けて漸近している。さらに、配置することが好ましい、光源67が発する光Lを拡散するための光拡散板25も設けられている。したがって、照明装置61においても、光源13から放射された光Lは、板体5の掲示面7及び透明体15の面17に対して図1に示す照明装置3におけると同様の挙動を示し、これにより、照明装置3におけると同様、掲示面81全体における照度分布の不均一が改善され、前記掲示情報についての視認性がより良好なものとされる。
【0053】
なお、照明装置63にあっては、その透明体15が、掲示板61を構成する底板部材75に支持されている。また、下方部79の掲示面81と透明体15の平坦面17とが規定する空間21が、掲示板61を構成する両側板部材77により閉鎖されている。
【0054】
また、照明装置63に、図3に示す透明なカバー板35と同じ構成のカバー板を加えて、図3の照明装置33と同じ構成を有し、これと同じ作用効果を奏する他の照明装置(図示せず)とすることができる。前記カバー板は、掲示板61の底板部材75上に支持することができる。
【0055】
さらに、照明装置63の透明体15を、図4に示す透明体45と同じ構成の透明体に置き換えて、図4の照明装置33と同じ構成を有し、これと同じ作用効果を奏する他の照明装置とすることができる。前記透明体は、掲示板61の底板部材75上に支持することができる。さらに、透明体15の面17について、これを平坦面とすることに代えて、段落0028にて説明したと同様の円弧面や放物面のような曲面からなるものとすることができる。
【0056】
本発明に係る前記した照明装置は、いずれも、これが適用される掲示板に、その構成要素である光源、透明板、カバー板、光拡散板等を前記した所定の位置関係のもとに配置することによって完成する。このため、本発明の照明装置は比較的簡単な構造をもち、また、比較的低コストでの提供が可能である。また、前記したところでは、本発明を既存の掲示板に適用した例について説明したが、本発明の適用対象は、これに限らず、前記既存の掲示板と同様の構成を有する新たな掲示板についても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1,61 掲示板
3,33,43,63 照明装置
5 板体
7,81 掲示面
9,11,83,85 板体の縁辺
13,67 光源
15,45 透明体
17,47 透明体の面
20 平面
25 光拡散板
35 カバー板
79 下方部(板体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報が掲示される掲示面を規定する、互いに相対する一の縁辺及び他の縁辺を有する板体を備える掲示板のための照明装置であって、
前記板体の掲示面に対して前記板体の一の縁辺から他の縁辺に向けて光を放射するように配置された光源と、
前記板体に相対して配置された透明体であって前記光源の光の照射を受ける、前記板体の掲示面に対向する面を有し、該面が前記板体の一の縁辺及び他の縁辺を含む平面に対して前記板体の一の縁辺から他の縁辺に向けて漸近する透明体とを含む、
ことを特徴とする、掲示板のための照明装置。
【請求項2】
前記透明体は平板からなり、また、
前記透明体に相対してかつ前記板体の平面と平行に配置された透明なカバー板をさらに含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記透明体は、前記板体の平面と平行である平坦面を有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
さらに、前記光源から放射される光を拡散するための光拡散板を含む、
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記板体の掲示面は、前記平面と同一の面又は前記透明体の面に対して凹状の湾曲面からなる、
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の照明装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−209337(P2011−209337A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74034(P2010−74034)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【出願人】(593230866)株式会社オージ (3)
【Fターム(参考)】