描画パターンの形成方法及び電子デバイス
【課題】パターンを形成するためのインクを画線部分のみに使用し、かつ高精細なパターニングが可能な描画パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】描画パターン4が形成される領域を囲む隔壁2を印刷法によって形成し、隔壁2の内側にインクジェット法によりインク3を注入して描画パターン4を形成した後に隔壁2を除去する。隔壁2の形成に用いられるインクとしては、水またはアルカリ水に可溶の樹脂を含むレジストがあげられる。
【解決手段】描画パターン4が形成される領域を囲む隔壁2を印刷法によって形成し、隔壁2の内側にインクジェット法によりインク3を注入して描画パターン4を形成した後に隔壁2を除去する。隔壁2の形成に用いられるインクとしては、水またはアルカリ水に可溶の樹脂を含むレジストがあげられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式により描画パターンを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで各種電気部品の製造には、高精細なパターニングが可能なフォトリソグラフィ法(フォトリソ法)が用いられてきた。しかしながら、フォトリソ法では、生産工程が長くなること、パターンが不要な部分にもインク膜を形成した後で必要部分を除去するという手順であるため、パターニングに用いる高価なインク(特に導電性パターンを形成するための銀粒子を含むインク)の使用量が増えコストが増大するなど、多くの問題がある。
生産工程を短縮するため、印刷法による各種電子部品の製造が望まれている。
【0003】
高精細なパターニングに最も適した方法として、凸版反転印刷法が知られている。しかしながら、凸版反転印刷法ではフォトリソ法と同様、パターンが必要な部分(画線部分)以外にもインクを使用し、不要なインクを除去することでパターンを形成する必要がある。電子部分などに用いられる材料は、銀、銅、ニッケル等の金属類であるため、画線部分以外にもインクを必要とする凸版反転印刷法は、インクのコストの点で問題がある。
【0004】
画線部分のみにインクを塗工する最良の印刷法としてインクジェット法がある。しかしながら、インクジェットに用いるインクは低粘度であるため、画線のにじみという問題があり、高精細なパターニングが困難である。
【0005】
特許文献1には、ブラックマトリックス遮光層を設けた基板上にインクジェット方式によりパターンを形成する発明が記載されている。この発明では、熱溶融物質を含むインクを加熱溶融し、インクジェットを用いてパターンを形成し、さらにパターン形成後の基板を加熱してインクを再溶解し、インクの表面張力で表面の平坦化を図っている。この発明の方式では熱溶融物質の含有を必須とするために高濃度のインクを得にくい、耐熱性が低いなどの問題がある。
【0006】
特許文献2には、熱乾燥と光硬化を併用してインクジェットインクを硬化させ、平滑な画素を形成する発明が記載されている。この方法では光硬化のタイミング、照射方向などの条件により、平坦化の状態が変化するという問題がある。
【0007】
特許文献3には、隔壁を除去可能なフォトレジストで作製し、隔壁に囲まれた部分に対するカラーインク打ち込み量を制御することで平坦なカラーフィルタを作製する発明が記載されている。この方法ではポジ型フォトレジストを用いた隔壁の形成、および除去、さらに黒色レジストを用いたブラックマトリックスの形成という複雑な工程が必要となる。
【0008】
特許文献4、及び特許文献6には、ブラックマトリックスとフォトレジストにより遮光層を形成し、遮光層に囲まれた部分にカラーインクを吐出するという発明が記載されている。この方法ではブラックマトリックス形成、フォトレジストの全面塗布、露光、画素部のフォトレジスト除去、カラーインクの吐出、ブラックマトリックス上のフォトレジスト除去と多くの工程が必要であり、通常のフォトレジスト法によるカラーフィルタの作製法同様、工程が複雑であるという問題がある。
【0009】
特許文献5には、幅の異なる2層を重ねた遮光層を形成し、その基板上にインクジェット方式によりパターンを形成する発明が記載されている。この発明は、遮光層とインクの界面でインクのはじきが生じ、画素中心部よりも膜厚が極端に薄くなるという問題点を解決するためのものである。しかし、この方法では2層の遮光層をそれぞれフォトリソグラフィ法で形成する必要があり、工程が複雑になるという問題がある。
【0010】
特許文献7には、印刷法により作製したブラックマトリックス遮光層上に撥インク剤層を形成し、そのマトリックスに囲まれた画素内にカラーインクを吐出することで、混色のないカラーフィルタを得る発明が記載されている。この方法では撥インク層の形成をフォトレジスト法により行うため工程が多くなる、また、吐出されたカラーインクは凸状になり、乾燥後もその形状を維持するために平坦性が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平08−160219号公報
【特許文献2】特開平11−142641号公報
【特許文献3】特開2000−075121号公報
【特許文献4】特開2001−042313号公報
【特許文献5】特開2001−183516号公報
【特許文献6】特開2004−198540号公報
【特許文献7】特開2006−163306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、パターンを形成するためのインクを画線部分のみに使用し、かつ高精細なパターニングが可能な描画パターンの形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明は、描画パターンが形成される領域を囲む隔壁を印刷法によって形成し、前記隔壁の内側にインクジェット法によりインクを注入して描画パターンを形成した後に前記隔壁を除去することを特徴とする描画パターンの形成方法を提供する。また、この描画パターンの形成方法により形成されたパターンを電極として用いることを特徴とする電子デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、描画パターンを形成するためのインクを画線部分のみに使用して、高精細なパターニングが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)〜(d)は、本発明を描画パターンの形成方法の説明図である。
【図2】実施例1において、隔壁を除去する前の印刷物の断面形状を表面粗さ測定装置により測定した一例を示すグラフである。
【図3】実施例1において、隔壁を除去した後の印刷物の断面形状を表面粗さ測定装置により測定した一例を示すグラフである。
【図4】比較例1において得られた印刷物の断面形状を表面粗さ測定装置により測定した一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、最良の形態に基づいて本発明を説明する。
(被印刷体)
被印刷体は、ガラス基板、金属基板、樹脂基板等が挙げられる。透明基板でも不透明基板でも良く、特に限定されない。
【0017】
(隔壁形成用印刷インク)
本発明で隔壁の作製に使用する印刷インクとしては、描画パターンの形成後に除去可能であれば特に限定されないが、例えばレジスト用インク等が挙げられる。レジスト用インクは、水またはアルカリ水に可溶の樹脂を含む。これを用いることで、水またはアルカリ水に可溶の樹脂を含む隔壁を形成することができる。
【0018】
レジストとしては、一般的なポジ型レジストが使用できる。レジストからなる隔壁の作製には、凸版反転印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法等様々な印刷法が使用できる。中でも、細線の再現性を考慮すると、凸版反転印刷法が望ましい。凸版反転印刷法を用いる場合には一般的なポジ型レジストに用いられる樹脂のほかに体質顔料、離型剤、速乾性有機溶剤、遅乾性有機溶剤、表面張力調整剤等と組み合わせることが必要となる。
【0019】
また、本発明で描画パターンを形成するには隔壁の内側にインクジェット法によりインクを注入するため、隔壁形成用印刷インクが、パターン形成用インクに使用する溶剤に不要な樹脂成分または顔料成分を含むことが好ましい。具体的には、パターン形成用インクが水溶性である場合には、水に不溶且つ有機溶剤に可溶である樹脂を含むことが好ましい。これにより、水に不溶且つ有機溶剤に可溶な隔壁を形成することができる。
【0020】
隔壁は、描画パターンを囲む形状に設けられる。描画パターンを複数設けるときに、描画パターン同士の間隔が広い場合は、それぞれの描画パターンの周囲に隔壁を設け、隔壁の片側(内側)のみが描画パターンに接するようにしても良い。また、描画パターン同士の間隔が狭い場合は、隣接する描画パターンの間に隔壁を設け、隔壁の両側が描画パターンに接するようにしても良い。描画パターンが高密度で形成される場合は、隔壁も描画パターン同士の間隔に収まるように、細線で構成することが必要である。また、描画パターンの平面形状が隔壁の形状によって制御されるので、直線状の描画パターンが求められる場合には、隔壁にも直線性が必要である。
【0021】
(凸版反転印刷法)
凸版反転印刷法によれば、同一の版を用いて重ね刷りをし、高アスペクト比印刷物を作製することが可能である。また、細線を印刷するときの直線性に優れる。このため、隔壁の形成は、凸版反転印刷法によることが好ましい。
【0022】
本発明において、凸版反転印刷法とは、ブランケット表面に形成された均一なインク塗膜を凸版にて画像化し、これを被印刷基材に転写する印刷法である(例えば特開2005−128346号公報を参照)。
【0023】
凸版反転印刷法において用いる印刷装置は、胴の表面に取り付けたブランケットと、ブランケット上にインクを塗布するためのインク塗布装置と、被印刷体に形成するパターンを反転させたパターンを有する凸版とを必須として構成されている。目的とするパターンを反転させたパターンを有する凸版とは、被印刷体に形成されるパターンに対応して凹部を、また、被印刷体に形成されるパターンではない領域に対応して凸部を有するものである。この印刷装置のブランケットには、シリコーンゴム等の一定の離型性を持つ材料を用いることが好ましい。
【0024】
次に、上記のインクによるパターンを被印刷体上に形成するための印刷方法について説明する。本発明に利用できる、凸版反転印刷法を用いた高アスペクト比印刷物の作製方法は、次の(1)から(3)の工程:
(1)ブランケット表面にインク塗膜を形成する工程(インク塗膜形成工程)、
(2)ブランケット表面に形成されたインク塗膜を凸版に押圧して、前記凸版の凸部に、前記ブランケット表面上のインク塗膜を付着および転写させる工程(パターン形成工程)、
(3)前記ブランケット表面に残存するインク塗膜を被印刷体上に転写する工程(転写工程)、
を順に複数回繰り返すことによりインク塗膜を被印刷体上に複数回積層するものである。
【0025】
すなわち、本発明では、(1)から(3)の工程を有する凸版反転印刷法による印刷工程を複数回繰り返し、被印刷体上にインク塗膜を複数回積層することにより、高アスペクト比の印刷物を形成する。印刷後、被印刷体上に複数積層されたインク塗膜からなる高アスペクト比の印刷物を硬化及び/又は乾燥させることにより、インク乾燥塗膜パターンとする。硬化は、インクが熱硬化性化合物、紫外線硬化性化合物、電子線硬化性化合物等の硬化性成分を含有する場合に行うことができ、硬化を行うときには、加熱処理、紫外線照射処理、電子線照射処理等のうち当該成分を硬化させる作用を有する処理を行う。また、乾燥は、インクが溶剤等の揮発性成分を含有する場合に行うことができ、加熱、真空等により、揮発性成分を揮発させる。
【0026】
この際、被印刷体を担持する定盤から、該被印刷体を移動することなく、一の凸版及び一のブランケットを用いて、(1)から(3)の工程を順に複数回繰り返すことによりインク塗膜を前記被印刷体上に複数回積層することが好ましい。このように、複数回の積層工程を通じて同一の凸版及びブランケットを繰り返して使用することにより、異なる凸版及びブランケットを用いた場合の個体のばらつき等の要素を排除して、積層精度の向上を図ることができる。
なお、本発明において、インク層の「積層」とは、先刷りのインク層の上に後刷りのインク層が刷り重ねられることを意味するが、後刷りのインク層の一部が先刷りのインク層の外側にはみ出して、更に下にあるインク層又は被印刷体の表面に接触する場合を排除するものではない。
【0027】
インク塗膜形成工程、パターン形成工程、転写工程を備える凸版反転印刷法を利用することにより、これらインク塗膜を複数回積層する間に、被印刷体上に転写されているインク塗膜を乾燥させる工程を介在させず、ブランケット表面に残存するインク塗膜を被印刷体の表面上のインク塗膜の上にウェットオンウェット方式で積層する(すなわち、乾燥していないインク塗膜の上に乾燥していないインク塗膜を積層する)ことができる。複数のインク塗膜をウェットオンウェット方式で積層した後、被印刷体上で、高アスペクト比印刷物を構成する全層を一度に硬化及び/又は乾燥させる場合、硬化及び/又は乾燥の工程が一度で済むという利点がある。
【0028】
本発明において、均一な塗布膜を形成するため低粘度のインクを用い、インク塗布装置からブランケット上に塗布される段階のインクは低粘度とすることが好ましい。しかし、インク塗布工程から転写工程までの間に、インク中の溶剤の一部もしくは全部を常温付近で揮発させ、又はブランケット上でインク中の溶剤の一部もしくは全部をブランケットに吸収させることにより、ブランケット上のインクの粘度を急上昇させることができる。
【0029】
インク中の溶剤を常温付近で揮発させる場合でも、多数回の印刷工程を行う全体の時間の長期化を避けるため、インク塗膜形成工程においてブランケット表面にインク塗膜を形成した後、転写工程においてブランケット表面に残存するインク塗膜を被印刷体上に転写するまでの時間は、望ましくは5分以内、より好ましくは3分以内、さらに好ましくは1分以内とすることが好ましい。これにより、ブランケット上のインク塗膜の乾燥について過度に時間がかかることを避けることができる。
【0030】
また、ブランケット上でインク塗膜中の溶媒含有率を減少させ、ブランケット上のインクの粘度を急上昇させることにより、先刷りインク塗膜上に、後刷りインクを転写して刷り重ねる際に、インクが押しつぶされて印刷線幅が拡がってしまうことを防止できるので、被印刷体上にインク塗膜を転写したあと、その上に次のインク塗膜を転写するまでの間に、加熱乾燥や真空乾燥などの乾燥工程を介在させて先刷りインク塗膜を乾燥固化する必要がない。すなわち、被印刷体上に転写されているインク塗膜を乾燥せずに、次々とインク塗膜を転写させて多数回の重ね刷りが可能となる。
【0031】
既に被印刷体に転写されているインクの動的粘性率を大きくするため、次のインクを転写する前に、電子線及び/又は紫外線で被印刷体上に転写されているインク塗膜を硬化する工程を行うことができる。この硬化工程を行う場合、該インク塗膜は、電子線硬化性化合物及び/又は紫外線硬化性化合物を含有するインクを用いて形成する。電子線硬化及び/又は紫外線硬化によれば、加熱乾燥や熱硬化による場合に比べてインク塗膜の寸法変化を抑制できるので、パターンの寸法精度を維持することができる。
【0032】
この場合、被印刷体上にインク塗膜を転写したあと、その上に次のインク塗膜を転写するまでの間に硬化工程を介在させることになるが、電子線及び/又は紫外線による硬化工程は乾燥工程よりも短時間で済ませることができるので、硬化工程を介在させても多数回の積層に要する時間を長期化させるおそれがない。また、電子線硬化性化合物及び/又は紫外線硬化性化合物を含有するインクを用いる場合でも、上述したように、ブランケット上でインクの粘度を急上昇させるためインク組成物中には溶剤が配合されており、被印刷体への転写後のインク塗膜には若干の溶剤が残留する。ウエットオンウエット方式の場合、転写後のインク塗膜の溶剤の乾燥工程は、先に説明した理由により、各層の転写工程の間に介在させるのではなく、全層の積層後に一度で行うことが好ましい。しかしながら、既に被印刷体に転写されているインクの動的粘性率を大きくするために、寸法変化の影響が現れない程度に、送風、減圧等の手段により、残留溶剤の含有率を低減することは、より高いアスペクト比を得るために有効である。
【0033】
また、本発明においては、パターン形成用インク(後述)が、隔壁形成用インクに使用する樹脂成分を溶解しない溶剤を含む場合には、隔壁形成用インクを印刷した後で、隔壁を硬化することなしに、隔壁の内側にインクジェット法によりインクを注入して描画パターンを形成することも可能である。
【0034】
(パターン形成用インク)
本発明でパターンの形成に使用するインクは、インクジェット(以下、「IJ」と略記することがある。)方式で吐出可能なインクジェット用インクが用いられる。インクジェット用インクは、一般に硬化型着色樹脂組成物で、少なくとも染料及び顔料等の着色剤と、熱や光照射等エネルギー付与により硬化する樹脂を含有する。
【0035】
樹脂としてはアルキド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等の溶液が使用できる。例えば、公知の樹脂と架橋剤の組み合わせの熱硬化型の樹脂組成物として、メラミン樹脂、水酸基或いはカルボキシル基含有ポリマーとメラミン、水酸基或いはカルボキシル基含有ポリマーと多官能エポキシ化合物、水酸基或いはカルボキシル基含有ポリマーと繊維素反応型化合物、エポキシ樹脂とレゾール型樹脂、エポキシ樹脂とアミン類、エポキシ樹脂とカルボン酸または酸無水物、エポキシ化合物などが挙げられる。光硬化型樹脂組成物としては、例えばネガ型レジスト等である光硬化型樹脂組成物が用いられる。
【0036】
パターン形成用インクとしては、目的とする電気部品に要求される特性に応じて、導電性インク、絶縁性インク、半導体インクからなる群から選択される1種又は2種以上が用いられる。導電性インクの場合には金属粉や有機導電体(導電性高分子)等の導電性材料を配合し、半導体インクの場合には無機半導体または有機半導体を配合する。絶縁性インクの場合は、樹脂自体の絶縁性でインクの絶縁性を確保しても良いし、他に抵抗体や高誘電体等、特性の優れた絶縁体を添加しても良い。
【0037】
パターン形成用インクが導電性インクの場合に添加される導電性材料としては、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等の金属粒子、もしくはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリアニリン(PANI)等の導電性高分子が好ましい。金属粒子は、ナノメートルオーダー(1μm未満。例えば数十〜数百nm)の平均粒子径を有するナノ粒子が好ましく、中でも、導電性が高いことからナノ銀粒子を含有するものが好ましい。導電性高分子については、透明性が高く、耐有機溶剤性のあるドーピングされたPEDOTが好ましい。
【0038】
また、IJ用インクには着色剤を添加することもできる。着色剤としては、染料系、顔料系のいずれでもよく、特に限定はないが、例えばキナクリドン系、キナクリドンキノン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系、アントラピリミジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、ペリノン系、キノフタロン系、アントラキノン系、チオインジゴ系、ベンツイミダゾロン系、アゾ系等の染料や顔料およびカーボンブラック等の無機顔料などが挙げられる。
【0039】
またIJ用インクに用いられる溶剤としては、例えば水及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。これら溶剤は1種を単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
【0040】
さらに、上記成分の他に必要に応じて所望の特性を得るために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等の添加剤を用いることもできる。
また、光または熱硬化型樹脂のうち、水や有機溶剤等に溶解しないものでも安定に吐出可能なものであれば良く、例えば、染料及び顔料をモノマーに溶解した無溶剤タイプとすることもできる。
また、インクの分散に用いられる分散機械としては、サンドグラインダー、ボールミル、アトライターなどのビーズミルや、ロールミル、ニーダー、ディゾルバー、ハイスピードミキサー等が挙げられる。
【0041】
(パターン形成方法)
本発明において用いるインクジェット方式はコンティニュアス型のインクジェット法、オンデマンド型のバブルジェット(登録商標)法、ピエゾジェット法などが利用できるが、特に限定されるものではない。
【0042】
特に、図1(a)〜(c)に示すように、被印刷体1上に設けられた隔壁2で囲まれた領域(凹部)に、インクジェット方式によりインク3を注入して描画パターン4を形成するとき、インク3の膜厚Aが隔壁2の高さHの41%以下となるように注入することが好ましい。その後、インク3を熱や光照射等エネルギー付与により硬化させることで、描画パターン4(厚みB)を形成する。この方法で形成された描画パターン4の面は平坦であり、表面研磨等の後加工が不要である。
【0043】
(隔壁の除去方法)
上述したように、隔壁2は除去可能であるので、描画パターン4を形成した後で、図1(d)に示すように、隔壁2を除去する。これにより、基板1の上に描画パターン4が形成される。
【0044】
このように、本発明によれば、パターン形成用インク3は、描画パターン4を形成する分のみ使用すれば済み、非画線部にパターン形成用インク3を用いる必要がない。これにより、描画パターン4によって電気部品を作製するコストを低減することが可能になる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0046】
(実施例1)
ガラス基板を被印刷体として用い、シリコーンブランケットを有する胴と、線幅18μmの凸版を用いた凸版反転印刷法により、レジスト用インキ(DIC株式会社製、RERT−01)を印刷し、マトリックス形状の隔壁を形成した。
このマトリックス形状の隔壁の内側(凹部)にインクジェット印刷機(コニカミノルタ株式会社製:IJ評価ボードEB100、武蔵エンジニアリング株式会社製:SHOTMASTER300)を用い、インクジェット用インク(DIC株式会社製、IJ用Blueインク:7423−SE02BJ)を吐出した。230℃で30分間焼成した。このときのガラス基板上の印刷物の表面形状を表面粗さ測定装置により測定したところ、図2に示すように、隔壁とその内側にインクジェット用インクが注入された印刷物が得られた。
【0047】
図2の印刷物を、ガラス基板ごとアルカリ系レジスト剥離剤(50℃のモノエタノールアミン30%水溶液)に1分間浸漬し、隔壁を除去した。
得られたガラス基板上の印刷物の表面形状を表面粗さ測定装置により測定したところ、隔壁の部分が除去され、その内側に囲まれた部分に、図3に示すように、インクジェット用インクの印刷物が得られた。
【0048】
(比較例1)
ガラス基板を被印刷体(隔壁なし)として用い、インクジェット印刷機(コニカミノルタ株式会社製:IJ評価ボードEB100、武蔵エンジニアリング株式会社製:SHOTMASTER300)を用い、インクジェット用インク(DIC株式会社製、IJ用Blueインク:7423−SE02BJ)を吐出した。230℃で30分間焼成してインクを硬化させた。
得られたガラス基板上の印刷物の表面形状を表面粗さ測定装置により測定したところ、図4に示すように、頭上面が円弧状で裾が広がったインクジェット用インクの印刷物が得られた。
【0049】
(実施例2)
ガラス基板を被印刷体として用い、シリコーンブランケットを有する胴と、線幅18μmの凸版を用いた凸版反転印刷法により、レジスト用インキ(DIC株式会社製、RERT−01)を印刷し、マトリックス形状の隔壁を形成した。
このマトリックス形状の隔壁の内側(凹部)にインクジェット印刷機(コニカミノルタ株式会社製:IJ評価ボードEB100、武蔵エンジニアリング株式会社製:SHOTMASTER300)を用い、導電性インクジェット用インク(Sun Chemical社製、IJ用導電性インク:SunTRONIC U5603)を吐出した。230℃で30分間焼成した。このときのガラス基板上の印刷物の表面形状を表面粗さ測定装置により測定したところ、隔壁とその内側にインクジェット用インクが注入された印刷物が得られた。
【0050】
作製した印刷物を、ガラス基板ごとアルカリ系レジスト剥離剤(50℃のモノエタノールアミン30%水溶液)に1分間浸漬し、隔壁を除去した。
得られたガラス基板上の印刷物の表面形状を表面粗さ測定装置により測定したところ、隔壁の部分が除去され、その内側に囲まれた部分に、インクジェット用インクの印刷物が得られた。
【0051】
(比較例2)
ガラス基板を被印刷体(隔壁なし)として用い、インクジェット印刷機(コニカミノルタ株式会社製:IJ評価ボードEB100、武蔵エンジニアリング株式会社製:SHOTMASTER300)を用い、導電性インクジェット用インク(Sun Chemical社製、IJ用導電性インク:SunTRONIC U5603)を吐出した。230℃で30分間焼成してインクを硬化させた。
得られたガラス基板上の印刷物の表面形状を表面粗さ測定装置により測定したところ、頭上面が円弧状で裾が広がったインクジェット用インクの印刷物が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、配線基板、TFT、CMOS、有機EL素子、積層セラミックコンデンサ等の各種電気部品の作製に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…被印刷体、2…隔壁、3…パターン形成用インク、4…描画パターン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式により描画パターンを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで各種電気部品の製造には、高精細なパターニングが可能なフォトリソグラフィ法(フォトリソ法)が用いられてきた。しかしながら、フォトリソ法では、生産工程が長くなること、パターンが不要な部分にもインク膜を形成した後で必要部分を除去するという手順であるため、パターニングに用いる高価なインク(特に導電性パターンを形成するための銀粒子を含むインク)の使用量が増えコストが増大するなど、多くの問題がある。
生産工程を短縮するため、印刷法による各種電子部品の製造が望まれている。
【0003】
高精細なパターニングに最も適した方法として、凸版反転印刷法が知られている。しかしながら、凸版反転印刷法ではフォトリソ法と同様、パターンが必要な部分(画線部分)以外にもインクを使用し、不要なインクを除去することでパターンを形成する必要がある。電子部分などに用いられる材料は、銀、銅、ニッケル等の金属類であるため、画線部分以外にもインクを必要とする凸版反転印刷法は、インクのコストの点で問題がある。
【0004】
画線部分のみにインクを塗工する最良の印刷法としてインクジェット法がある。しかしながら、インクジェットに用いるインクは低粘度であるため、画線のにじみという問題があり、高精細なパターニングが困難である。
【0005】
特許文献1には、ブラックマトリックス遮光層を設けた基板上にインクジェット方式によりパターンを形成する発明が記載されている。この発明では、熱溶融物質を含むインクを加熱溶融し、インクジェットを用いてパターンを形成し、さらにパターン形成後の基板を加熱してインクを再溶解し、インクの表面張力で表面の平坦化を図っている。この発明の方式では熱溶融物質の含有を必須とするために高濃度のインクを得にくい、耐熱性が低いなどの問題がある。
【0006】
特許文献2には、熱乾燥と光硬化を併用してインクジェットインクを硬化させ、平滑な画素を形成する発明が記載されている。この方法では光硬化のタイミング、照射方向などの条件により、平坦化の状態が変化するという問題がある。
【0007】
特許文献3には、隔壁を除去可能なフォトレジストで作製し、隔壁に囲まれた部分に対するカラーインク打ち込み量を制御することで平坦なカラーフィルタを作製する発明が記載されている。この方法ではポジ型フォトレジストを用いた隔壁の形成、および除去、さらに黒色レジストを用いたブラックマトリックスの形成という複雑な工程が必要となる。
【0008】
特許文献4、及び特許文献6には、ブラックマトリックスとフォトレジストにより遮光層を形成し、遮光層に囲まれた部分にカラーインクを吐出するという発明が記載されている。この方法ではブラックマトリックス形成、フォトレジストの全面塗布、露光、画素部のフォトレジスト除去、カラーインクの吐出、ブラックマトリックス上のフォトレジスト除去と多くの工程が必要であり、通常のフォトレジスト法によるカラーフィルタの作製法同様、工程が複雑であるという問題がある。
【0009】
特許文献5には、幅の異なる2層を重ねた遮光層を形成し、その基板上にインクジェット方式によりパターンを形成する発明が記載されている。この発明は、遮光層とインクの界面でインクのはじきが生じ、画素中心部よりも膜厚が極端に薄くなるという問題点を解決するためのものである。しかし、この方法では2層の遮光層をそれぞれフォトリソグラフィ法で形成する必要があり、工程が複雑になるという問題がある。
【0010】
特許文献7には、印刷法により作製したブラックマトリックス遮光層上に撥インク剤層を形成し、そのマトリックスに囲まれた画素内にカラーインクを吐出することで、混色のないカラーフィルタを得る発明が記載されている。この方法では撥インク層の形成をフォトレジスト法により行うため工程が多くなる、また、吐出されたカラーインクは凸状になり、乾燥後もその形状を維持するために平坦性が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平08−160219号公報
【特許文献2】特開平11−142641号公報
【特許文献3】特開2000−075121号公報
【特許文献4】特開2001−042313号公報
【特許文献5】特開2001−183516号公報
【特許文献6】特開2004−198540号公報
【特許文献7】特開2006−163306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、パターンを形成するためのインクを画線部分のみに使用し、かつ高精細なパターニングが可能な描画パターンの形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明は、描画パターンが形成される領域を囲む隔壁を印刷法によって形成し、前記隔壁の内側にインクジェット法によりインクを注入して描画パターンを形成した後に前記隔壁を除去することを特徴とする描画パターンの形成方法を提供する。また、この描画パターンの形成方法により形成されたパターンを電極として用いることを特徴とする電子デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、描画パターンを形成するためのインクを画線部分のみに使用して、高精細なパターニングが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)〜(d)は、本発明を描画パターンの形成方法の説明図である。
【図2】実施例1において、隔壁を除去する前の印刷物の断面形状を表面粗さ測定装置により測定した一例を示すグラフである。
【図3】実施例1において、隔壁を除去した後の印刷物の断面形状を表面粗さ測定装置により測定した一例を示すグラフである。
【図4】比較例1において得られた印刷物の断面形状を表面粗さ測定装置により測定した一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、最良の形態に基づいて本発明を説明する。
(被印刷体)
被印刷体は、ガラス基板、金属基板、樹脂基板等が挙げられる。透明基板でも不透明基板でも良く、特に限定されない。
【0017】
(隔壁形成用印刷インク)
本発明で隔壁の作製に使用する印刷インクとしては、描画パターンの形成後に除去可能であれば特に限定されないが、例えばレジスト用インク等が挙げられる。レジスト用インクは、水またはアルカリ水に可溶の樹脂を含む。これを用いることで、水またはアルカリ水に可溶の樹脂を含む隔壁を形成することができる。
【0018】
レジストとしては、一般的なポジ型レジストが使用できる。レジストからなる隔壁の作製には、凸版反転印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法等様々な印刷法が使用できる。中でも、細線の再現性を考慮すると、凸版反転印刷法が望ましい。凸版反転印刷法を用いる場合には一般的なポジ型レジストに用いられる樹脂のほかに体質顔料、離型剤、速乾性有機溶剤、遅乾性有機溶剤、表面張力調整剤等と組み合わせることが必要となる。
【0019】
また、本発明で描画パターンを形成するには隔壁の内側にインクジェット法によりインクを注入するため、隔壁形成用印刷インクが、パターン形成用インクに使用する溶剤に不要な樹脂成分または顔料成分を含むことが好ましい。具体的には、パターン形成用インクが水溶性である場合には、水に不溶且つ有機溶剤に可溶である樹脂を含むことが好ましい。これにより、水に不溶且つ有機溶剤に可溶な隔壁を形成することができる。
【0020】
隔壁は、描画パターンを囲む形状に設けられる。描画パターンを複数設けるときに、描画パターン同士の間隔が広い場合は、それぞれの描画パターンの周囲に隔壁を設け、隔壁の片側(内側)のみが描画パターンに接するようにしても良い。また、描画パターン同士の間隔が狭い場合は、隣接する描画パターンの間に隔壁を設け、隔壁の両側が描画パターンに接するようにしても良い。描画パターンが高密度で形成される場合は、隔壁も描画パターン同士の間隔に収まるように、細線で構成することが必要である。また、描画パターンの平面形状が隔壁の形状によって制御されるので、直線状の描画パターンが求められる場合には、隔壁にも直線性が必要である。
【0021】
(凸版反転印刷法)
凸版反転印刷法によれば、同一の版を用いて重ね刷りをし、高アスペクト比印刷物を作製することが可能である。また、細線を印刷するときの直線性に優れる。このため、隔壁の形成は、凸版反転印刷法によることが好ましい。
【0022】
本発明において、凸版反転印刷法とは、ブランケット表面に形成された均一なインク塗膜を凸版にて画像化し、これを被印刷基材に転写する印刷法である(例えば特開2005−128346号公報を参照)。
【0023】
凸版反転印刷法において用いる印刷装置は、胴の表面に取り付けたブランケットと、ブランケット上にインクを塗布するためのインク塗布装置と、被印刷体に形成するパターンを反転させたパターンを有する凸版とを必須として構成されている。目的とするパターンを反転させたパターンを有する凸版とは、被印刷体に形成されるパターンに対応して凹部を、また、被印刷体に形成されるパターンではない領域に対応して凸部を有するものである。この印刷装置のブランケットには、シリコーンゴム等の一定の離型性を持つ材料を用いることが好ましい。
【0024】
次に、上記のインクによるパターンを被印刷体上に形成するための印刷方法について説明する。本発明に利用できる、凸版反転印刷法を用いた高アスペクト比印刷物の作製方法は、次の(1)から(3)の工程:
(1)ブランケット表面にインク塗膜を形成する工程(インク塗膜形成工程)、
(2)ブランケット表面に形成されたインク塗膜を凸版に押圧して、前記凸版の凸部に、前記ブランケット表面上のインク塗膜を付着および転写させる工程(パターン形成工程)、
(3)前記ブランケット表面に残存するインク塗膜を被印刷体上に転写する工程(転写工程)、
を順に複数回繰り返すことによりインク塗膜を被印刷体上に複数回積層するものである。
【0025】
すなわち、本発明では、(1)から(3)の工程を有する凸版反転印刷法による印刷工程を複数回繰り返し、被印刷体上にインク塗膜を複数回積層することにより、高アスペクト比の印刷物を形成する。印刷後、被印刷体上に複数積層されたインク塗膜からなる高アスペクト比の印刷物を硬化及び/又は乾燥させることにより、インク乾燥塗膜パターンとする。硬化は、インクが熱硬化性化合物、紫外線硬化性化合物、電子線硬化性化合物等の硬化性成分を含有する場合に行うことができ、硬化を行うときには、加熱処理、紫外線照射処理、電子線照射処理等のうち当該成分を硬化させる作用を有する処理を行う。また、乾燥は、インクが溶剤等の揮発性成分を含有する場合に行うことができ、加熱、真空等により、揮発性成分を揮発させる。
【0026】
この際、被印刷体を担持する定盤から、該被印刷体を移動することなく、一の凸版及び一のブランケットを用いて、(1)から(3)の工程を順に複数回繰り返すことによりインク塗膜を前記被印刷体上に複数回積層することが好ましい。このように、複数回の積層工程を通じて同一の凸版及びブランケットを繰り返して使用することにより、異なる凸版及びブランケットを用いた場合の個体のばらつき等の要素を排除して、積層精度の向上を図ることができる。
なお、本発明において、インク層の「積層」とは、先刷りのインク層の上に後刷りのインク層が刷り重ねられることを意味するが、後刷りのインク層の一部が先刷りのインク層の外側にはみ出して、更に下にあるインク層又は被印刷体の表面に接触する場合を排除するものではない。
【0027】
インク塗膜形成工程、パターン形成工程、転写工程を備える凸版反転印刷法を利用することにより、これらインク塗膜を複数回積層する間に、被印刷体上に転写されているインク塗膜を乾燥させる工程を介在させず、ブランケット表面に残存するインク塗膜を被印刷体の表面上のインク塗膜の上にウェットオンウェット方式で積層する(すなわち、乾燥していないインク塗膜の上に乾燥していないインク塗膜を積層する)ことができる。複数のインク塗膜をウェットオンウェット方式で積層した後、被印刷体上で、高アスペクト比印刷物を構成する全層を一度に硬化及び/又は乾燥させる場合、硬化及び/又は乾燥の工程が一度で済むという利点がある。
【0028】
本発明において、均一な塗布膜を形成するため低粘度のインクを用い、インク塗布装置からブランケット上に塗布される段階のインクは低粘度とすることが好ましい。しかし、インク塗布工程から転写工程までの間に、インク中の溶剤の一部もしくは全部を常温付近で揮発させ、又はブランケット上でインク中の溶剤の一部もしくは全部をブランケットに吸収させることにより、ブランケット上のインクの粘度を急上昇させることができる。
【0029】
インク中の溶剤を常温付近で揮発させる場合でも、多数回の印刷工程を行う全体の時間の長期化を避けるため、インク塗膜形成工程においてブランケット表面にインク塗膜を形成した後、転写工程においてブランケット表面に残存するインク塗膜を被印刷体上に転写するまでの時間は、望ましくは5分以内、より好ましくは3分以内、さらに好ましくは1分以内とすることが好ましい。これにより、ブランケット上のインク塗膜の乾燥について過度に時間がかかることを避けることができる。
【0030】
また、ブランケット上でインク塗膜中の溶媒含有率を減少させ、ブランケット上のインクの粘度を急上昇させることにより、先刷りインク塗膜上に、後刷りインクを転写して刷り重ねる際に、インクが押しつぶされて印刷線幅が拡がってしまうことを防止できるので、被印刷体上にインク塗膜を転写したあと、その上に次のインク塗膜を転写するまでの間に、加熱乾燥や真空乾燥などの乾燥工程を介在させて先刷りインク塗膜を乾燥固化する必要がない。すなわち、被印刷体上に転写されているインク塗膜を乾燥せずに、次々とインク塗膜を転写させて多数回の重ね刷りが可能となる。
【0031】
既に被印刷体に転写されているインクの動的粘性率を大きくするため、次のインクを転写する前に、電子線及び/又は紫外線で被印刷体上に転写されているインク塗膜を硬化する工程を行うことができる。この硬化工程を行う場合、該インク塗膜は、電子線硬化性化合物及び/又は紫外線硬化性化合物を含有するインクを用いて形成する。電子線硬化及び/又は紫外線硬化によれば、加熱乾燥や熱硬化による場合に比べてインク塗膜の寸法変化を抑制できるので、パターンの寸法精度を維持することができる。
【0032】
この場合、被印刷体上にインク塗膜を転写したあと、その上に次のインク塗膜を転写するまでの間に硬化工程を介在させることになるが、電子線及び/又は紫外線による硬化工程は乾燥工程よりも短時間で済ませることができるので、硬化工程を介在させても多数回の積層に要する時間を長期化させるおそれがない。また、電子線硬化性化合物及び/又は紫外線硬化性化合物を含有するインクを用いる場合でも、上述したように、ブランケット上でインクの粘度を急上昇させるためインク組成物中には溶剤が配合されており、被印刷体への転写後のインク塗膜には若干の溶剤が残留する。ウエットオンウエット方式の場合、転写後のインク塗膜の溶剤の乾燥工程は、先に説明した理由により、各層の転写工程の間に介在させるのではなく、全層の積層後に一度で行うことが好ましい。しかしながら、既に被印刷体に転写されているインクの動的粘性率を大きくするために、寸法変化の影響が現れない程度に、送風、減圧等の手段により、残留溶剤の含有率を低減することは、より高いアスペクト比を得るために有効である。
【0033】
また、本発明においては、パターン形成用インク(後述)が、隔壁形成用インクに使用する樹脂成分を溶解しない溶剤を含む場合には、隔壁形成用インクを印刷した後で、隔壁を硬化することなしに、隔壁の内側にインクジェット法によりインクを注入して描画パターンを形成することも可能である。
【0034】
(パターン形成用インク)
本発明でパターンの形成に使用するインクは、インクジェット(以下、「IJ」と略記することがある。)方式で吐出可能なインクジェット用インクが用いられる。インクジェット用インクは、一般に硬化型着色樹脂組成物で、少なくとも染料及び顔料等の着色剤と、熱や光照射等エネルギー付与により硬化する樹脂を含有する。
【0035】
樹脂としてはアルキド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等の溶液が使用できる。例えば、公知の樹脂と架橋剤の組み合わせの熱硬化型の樹脂組成物として、メラミン樹脂、水酸基或いはカルボキシル基含有ポリマーとメラミン、水酸基或いはカルボキシル基含有ポリマーと多官能エポキシ化合物、水酸基或いはカルボキシル基含有ポリマーと繊維素反応型化合物、エポキシ樹脂とレゾール型樹脂、エポキシ樹脂とアミン類、エポキシ樹脂とカルボン酸または酸無水物、エポキシ化合物などが挙げられる。光硬化型樹脂組成物としては、例えばネガ型レジスト等である光硬化型樹脂組成物が用いられる。
【0036】
パターン形成用インクとしては、目的とする電気部品に要求される特性に応じて、導電性インク、絶縁性インク、半導体インクからなる群から選択される1種又は2種以上が用いられる。導電性インクの場合には金属粉や有機導電体(導電性高分子)等の導電性材料を配合し、半導体インクの場合には無機半導体または有機半導体を配合する。絶縁性インクの場合は、樹脂自体の絶縁性でインクの絶縁性を確保しても良いし、他に抵抗体や高誘電体等、特性の優れた絶縁体を添加しても良い。
【0037】
パターン形成用インクが導電性インクの場合に添加される導電性材料としては、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等の金属粒子、もしくはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリアニリン(PANI)等の導電性高分子が好ましい。金属粒子は、ナノメートルオーダー(1μm未満。例えば数十〜数百nm)の平均粒子径を有するナノ粒子が好ましく、中でも、導電性が高いことからナノ銀粒子を含有するものが好ましい。導電性高分子については、透明性が高く、耐有機溶剤性のあるドーピングされたPEDOTが好ましい。
【0038】
また、IJ用インクには着色剤を添加することもできる。着色剤としては、染料系、顔料系のいずれでもよく、特に限定はないが、例えばキナクリドン系、キナクリドンキノン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系、アントラピリミジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、ペリノン系、キノフタロン系、アントラキノン系、チオインジゴ系、ベンツイミダゾロン系、アゾ系等の染料や顔料およびカーボンブラック等の無機顔料などが挙げられる。
【0039】
またIJ用インクに用いられる溶剤としては、例えば水及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。これら溶剤は1種を単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
【0040】
さらに、上記成分の他に必要に応じて所望の特性を得るために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等の添加剤を用いることもできる。
また、光または熱硬化型樹脂のうち、水や有機溶剤等に溶解しないものでも安定に吐出可能なものであれば良く、例えば、染料及び顔料をモノマーに溶解した無溶剤タイプとすることもできる。
また、インクの分散に用いられる分散機械としては、サンドグラインダー、ボールミル、アトライターなどのビーズミルや、ロールミル、ニーダー、ディゾルバー、ハイスピードミキサー等が挙げられる。
【0041】
(パターン形成方法)
本発明において用いるインクジェット方式はコンティニュアス型のインクジェット法、オンデマンド型のバブルジェット(登録商標)法、ピエゾジェット法などが利用できるが、特に限定されるものではない。
【0042】
特に、図1(a)〜(c)に示すように、被印刷体1上に設けられた隔壁2で囲まれた領域(凹部)に、インクジェット方式によりインク3を注入して描画パターン4を形成するとき、インク3の膜厚Aが隔壁2の高さHの41%以下となるように注入することが好ましい。その後、インク3を熱や光照射等エネルギー付与により硬化させることで、描画パターン4(厚みB)を形成する。この方法で形成された描画パターン4の面は平坦であり、表面研磨等の後加工が不要である。
【0043】
(隔壁の除去方法)
上述したように、隔壁2は除去可能であるので、描画パターン4を形成した後で、図1(d)に示すように、隔壁2を除去する。これにより、基板1の上に描画パターン4が形成される。
【0044】
このように、本発明によれば、パターン形成用インク3は、描画パターン4を形成する分のみ使用すれば済み、非画線部にパターン形成用インク3を用いる必要がない。これにより、描画パターン4によって電気部品を作製するコストを低減することが可能になる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0046】
(実施例1)
ガラス基板を被印刷体として用い、シリコーンブランケットを有する胴と、線幅18μmの凸版を用いた凸版反転印刷法により、レジスト用インキ(DIC株式会社製、RERT−01)を印刷し、マトリックス形状の隔壁を形成した。
このマトリックス形状の隔壁の内側(凹部)にインクジェット印刷機(コニカミノルタ株式会社製:IJ評価ボードEB100、武蔵エンジニアリング株式会社製:SHOTMASTER300)を用い、インクジェット用インク(DIC株式会社製、IJ用Blueインク:7423−SE02BJ)を吐出した。230℃で30分間焼成した。このときのガラス基板上の印刷物の表面形状を表面粗さ測定装置により測定したところ、図2に示すように、隔壁とその内側にインクジェット用インクが注入された印刷物が得られた。
【0047】
図2の印刷物を、ガラス基板ごとアルカリ系レジスト剥離剤(50℃のモノエタノールアミン30%水溶液)に1分間浸漬し、隔壁を除去した。
得られたガラス基板上の印刷物の表面形状を表面粗さ測定装置により測定したところ、隔壁の部分が除去され、その内側に囲まれた部分に、図3に示すように、インクジェット用インクの印刷物が得られた。
【0048】
(比較例1)
ガラス基板を被印刷体(隔壁なし)として用い、インクジェット印刷機(コニカミノルタ株式会社製:IJ評価ボードEB100、武蔵エンジニアリング株式会社製:SHOTMASTER300)を用い、インクジェット用インク(DIC株式会社製、IJ用Blueインク:7423−SE02BJ)を吐出した。230℃で30分間焼成してインクを硬化させた。
得られたガラス基板上の印刷物の表面形状を表面粗さ測定装置により測定したところ、図4に示すように、頭上面が円弧状で裾が広がったインクジェット用インクの印刷物が得られた。
【0049】
(実施例2)
ガラス基板を被印刷体として用い、シリコーンブランケットを有する胴と、線幅18μmの凸版を用いた凸版反転印刷法により、レジスト用インキ(DIC株式会社製、RERT−01)を印刷し、マトリックス形状の隔壁を形成した。
このマトリックス形状の隔壁の内側(凹部)にインクジェット印刷機(コニカミノルタ株式会社製:IJ評価ボードEB100、武蔵エンジニアリング株式会社製:SHOTMASTER300)を用い、導電性インクジェット用インク(Sun Chemical社製、IJ用導電性インク:SunTRONIC U5603)を吐出した。230℃で30分間焼成した。このときのガラス基板上の印刷物の表面形状を表面粗さ測定装置により測定したところ、隔壁とその内側にインクジェット用インクが注入された印刷物が得られた。
【0050】
作製した印刷物を、ガラス基板ごとアルカリ系レジスト剥離剤(50℃のモノエタノールアミン30%水溶液)に1分間浸漬し、隔壁を除去した。
得られたガラス基板上の印刷物の表面形状を表面粗さ測定装置により測定したところ、隔壁の部分が除去され、その内側に囲まれた部分に、インクジェット用インクの印刷物が得られた。
【0051】
(比較例2)
ガラス基板を被印刷体(隔壁なし)として用い、インクジェット印刷機(コニカミノルタ株式会社製:IJ評価ボードEB100、武蔵エンジニアリング株式会社製:SHOTMASTER300)を用い、導電性インクジェット用インク(Sun Chemical社製、IJ用導電性インク:SunTRONIC U5603)を吐出した。230℃で30分間焼成してインクを硬化させた。
得られたガラス基板上の印刷物の表面形状を表面粗さ測定装置により測定したところ、頭上面が円弧状で裾が広がったインクジェット用インクの印刷物が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、配線基板、TFT、CMOS、有機EL素子、積層セラミックコンデンサ等の各種電気部品の作製に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…被印刷体、2…隔壁、3…パターン形成用インク、4…描画パターン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画パターンが形成される領域を囲む隔壁を凸版反転印刷法によって形成し、前記隔壁の内側にインクジェット法によりインクを注入して描画パターンを形成した後に前記隔壁を除去することを特徴とする描画パターンの形成方法。
【請求項2】
前記隔壁が水またはアルカリ水に可溶の樹脂を含む請求項1に記載の描画パターンの形成方法。
【請求項3】
隔壁形成用印刷インクが、パターン形成用インクに使用する溶剤に不要な樹脂成分または顔料成分を含む請求項1または2に記載の描画パターンの形成方法。
【請求項4】
パターン形成用インクが、隔壁形成用印刷インクに使用する樹脂成分を溶解しない溶剤を含み、前記隔壁形成用印刷インクを印刷した後で前記隔壁を硬化することなしに、前記隔壁の内側にインクジェット法によりインクを注入して描画パターンを形成する請求項1〜3のいずれかに記載の描画パターンの形成方法。
【請求項5】
パターン形成用インクが、ナノ銀粒子を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の描画パターンの形成方法。
【請求項6】
前記パターン形成用インクが、導電性を有する高分子化合物を含有する水性インクである請求項1〜5のいずれかに記載の描画パターンの形成方法。
【請求項7】
前記導電性を有する高分子化合物がドーピングされたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)である請求項6記載の描画パターンの形成方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の描画パターンの形成方法により形成されたパターンを電極として用いることを特徴とする電子デバイス。
【請求項1】
描画パターンが形成される領域を囲む隔壁を凸版反転印刷法によって形成し、前記隔壁の内側にインクジェット法によりインクを注入して描画パターンを形成した後に前記隔壁を除去することを特徴とする描画パターンの形成方法。
【請求項2】
前記隔壁が水またはアルカリ水に可溶の樹脂を含む請求項1に記載の描画パターンの形成方法。
【請求項3】
隔壁形成用印刷インクが、パターン形成用インクに使用する溶剤に不要な樹脂成分または顔料成分を含む請求項1または2に記載の描画パターンの形成方法。
【請求項4】
パターン形成用インクが、隔壁形成用印刷インクに使用する樹脂成分を溶解しない溶剤を含み、前記隔壁形成用印刷インクを印刷した後で前記隔壁を硬化することなしに、前記隔壁の内側にインクジェット法によりインクを注入して描画パターンを形成する請求項1〜3のいずれかに記載の描画パターンの形成方法。
【請求項5】
パターン形成用インクが、ナノ銀粒子を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の描画パターンの形成方法。
【請求項6】
前記パターン形成用インクが、導電性を有する高分子化合物を含有する水性インクである請求項1〜5のいずれかに記載の描画パターンの形成方法。
【請求項7】
前記導電性を有する高分子化合物がドーピングされたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)である請求項6記載の描画パターンの形成方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の描画パターンの形成方法により形成されたパターンを電極として用いることを特徴とする電子デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2011−171453(P2011−171453A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32809(P2010−32809)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
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