説明

描画制御方法、レーザ照射装置、描画制御プログラム、及びこれを記録した記録媒体

【課題】高品質かつ効率的に描画を行うことのできる描画制御方法、レーザ照射装置、描画制御プログラム、及びこれを記録した記録媒体を提供すること。
【解決手段】媒体の表面の複数の単位領域に描画対象を描画する描画装置をコンピュータが制御する描画制御方法であって、前記コンピュータは、相隣接する複数の単位領域にわたる複数の連続的な線分を連続的に描画するように、前記描画対象に含まれる線分の描画順を決定する描画順決定工程を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画制御方法、レーザ照射装置、描画制御プログラム、及びこれを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在まで、熱可逆記録媒体(媒体)への画像形成及び画像消去は、加熱源を媒体に接触させて媒体を加熱する接触式で行われている。加熱源としては、通常、画像形成にはサーマルヘッドが用いられ、画像消去には熱ローラ、セラミックヒータなどが用いられている。
【0003】
このような接触式の記録方法は、熱可逆記録媒体がフィルム、紙等のフレキシブルなものである場合には、プラテンなどによって媒体を加熱源に均一に押し当てることにより、均一な画像形成及び画像消去を行うことができ、かつ従来の感熱紙用のプリンタの部品を転用することによって画像形成装置及び画像消去装置を安価に製造することができるという利点があった。
【0004】
しかしながら、接触式での記録方法であるために、印字と消去を繰り返すと媒体表面が削れて凹凸が生じ、サーマルヘッドやホットスタンプ等の加熱源に接触しない部分が出てきて均一に加熱されないため濃度低下や消去不良が生じるという問題がある。
【0005】
そこで、例えば、非接触で均一に画像形成及び画像消去する方法として、レーザを用いる方法が提案されている。この方法は、物流ラインに用いる搬送用容器に熱可逆記録媒体を使用して非接触で記録を行うものであり、書き込みはレーザで実施し、消去は熱風、温水、又は赤外線ヒータなどで行う。非接触の記録方法であれば、熱可逆記録媒体の表面に凹凸が生じた場合でも記録を行うことができる。
【0006】
このようなレーザによる非接触での記録を行う装置の一例として、金属、プラスチック、感熱紙等の媒体にレーザ光を照射して加熱することで、媒体に文字、数字、又は記号等を書き込む技術を活用したレーザ照射装置(レーザマーカ、又はレーザマーキング装置)が市販されている。
【0007】
レーザ照射装置のレーザ光源としてガスレーザ、固体レーザ、液体レーザ、半導体レーザ等を用いてレーザ光を照射することにより、文字等を金属、プラスチック、感熱紙等の媒体に書き込むことができる。
【0008】
金属やプラスチックは、レーザ光を照射して加熱することにより、削ったり焦がしたりすることで描画が行われる。一方、感熱紙は、熱により変色する性質をもっており、レーザ光照射による加熱で記録層が発色することで描画が行われる。
【0009】
感熱紙は、金属やプラスチックの媒体に比べて取り扱いが容易であるため、例えば、物流等の分野で物品の宛先や物品名を印字する媒体として広く用いられている。
【0010】
また、熱可逆記録媒体を用いる場合は、レーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、媒体中の光熱変換材料が光を吸収して熱に変換し、その熱で記録及び消去を行うことが可能である。これまでレーザによる画像形成及び消去を行う方法として、ロイコ染料と可逆性顕色剤、種々の光熱変換材料を組み合わせて、近赤外レーザ光により記録するレーザ記録方法が提案されている。
【0011】
そして、このようなレーザ記録方法を用いて媒体に2次元コードを印字する技術が既に知られている。
【0012】
また、図1(a)のように、正方形状の単位領域であるセルに収まる2次元コード部品(以下、2次元コード部品に含まれる要素をセル毎に分けた部品を2次元コード部品と称す)を6つ含む2次元コードを描きたい場合に、図1(c)のように、ラスタスキャンで描画を行う方法がある。この描画方法では、2次元コードを描画する各線分を、1行ずつ描画していく。2次元コードに含まれる各2次元コード部品を2本の線分で構成する場合、図1(a)の2次元コードを描画するには4行にわたる描画を行う必要があるため、1行目の2次元コード部品の1本目の線分(描画順1で示す線分と、描画順2で示す線分)を描いてから2本目の線分(描画順3、4の線分)を描く。その後、3行目の線分(描画順5,6で示す線分)と、4行目の線分(描画順7,8で示す線分)を描くことになる。このようにラスタスキャンを行うことで、連結している2次元コード部品の線分はつなげて描画することができ、描画した線分から次の線分へ移動する際の総距離が短くてすむため、短い時間で描画を行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、今までのレーザ記録方法においては、2次元コードを描画する際に、印字時間が長くかかったり、印字品質が悪かったりするという問題があった。また、これらは、熱可逆記録媒体だけに限られず、金属やプラスチック等へのレーザ加工においても同様に生じる問題である。
【0014】
具体的には、例えば、図1(b)に示す描画順1〜12のように、6つの2次元コード部品の各々を描画していく方法がある。この方法では図1(a)に示す2次元コードに含まれる6つの2次元コード部品について、1つの2次元コード部品を描画し終わってから次の2次元コード部品を描画する。
【0015】
しかしながら、図1(b)に示す2次元コード部品が2本の線分で描画されているように、一般的に、1つの2次元コード部品は複数本(複数行)の線分で構成されることが多いため、図1(b)に示す描画方法では、次の2次元コード部品に移るのに毎回移動時間がかかり、全体の描画に長い時間がかかってしまうという問題点がある。
【0016】
また、各線分の始点は他の部分に比べて蓄熱が少ないため、発色しにくいという問題がある。図2(a)のような2次元コード部品を描画したい場合、始点が発色しないと、図1(b)の描画方法で描画を行うと、図2(b)に示すように、行方向(図中横方向)において、隣の2次元コード部品との間に隙間があいてしまう。
始点を発色させるためには、より強い描画出力でレーザを照射する必要があるが、始点だけレーザの出力を増大させると、媒体に大きなエネルギがかかり、発色低下や消え残り等が生じて繰り返し耐久性が低下してしまうという問題がある。
【0017】
また、図1(c)の方法では、行方向に連結している2次元コード部品を描画するための長い線分は、短い線分に比べて蓄熱が大きいため、印字濃度が高くなってしまう。すなわち、図3(a)のような2次元コード部品を描画したい場合、図3(b)に示すように、連結している2次元コード部品は、単独の2次元コード部品に比べて濃く印字されてしまうという問題点がある。
【0018】
また、図1(c)の方法においても、図1(b)に示す描画方法と同様に、始点の発色が弱い分だけ線分が短くなる。そして、線分が短くなるという現象の影響は、連結している2次元コード部品より単独や短い2次元コード部品の方が相対的に大きいため、図2(c)に示すように、連結している2次元コード部品より単独や短い2次元コード部品の方が相対的に大きくなる(すなわち、単独や短い2次元コード部品は連結している2次元コード部品に比べてより小さく印字されてしまう)という問題点がある。
【0019】
また、2次元コードの1行の長さが小さかったり、描画速度が速かったりする場合には、次の行を描画した際に、前の行を描画した際の熱の影響が残っていることがある。このような場合、次の行を描画した際に、図4に示すように、6つの2次元コード部品以外の本来発色すべきではない部分が発色してしまい、印字品質が悪くなってしまうという問題があった。このように、本来発色すべきではない部分が発色することは、図1(b)、図1(c)のどちらの描画方法でも生じる問題であった。
【0020】
そこで、本発明は、高品質かつ効率的に描画を行うことのできる描画制御方法、レーザ照射装置、描画制御プログラム、及びこれを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の実施の形態の一観点の描画制御方法は、媒体の表面の複数の単位領域に描画対象を描画する描画装置をコンピュータが制御する描画制御方法であって、前記コンピュータは、相隣接する複数の単位領域にわたる複数の連続的な線分を連続的に描画するように、前記描画対象に含まれる線分の描画順を決定する描画順決定工程を実行する。
【0022】
本発明の実施の形態の他の観点の描画制御方法は、媒体の表面の複数の単位領域に描画対象を描画する描画装置をコンピュータが制御する描画制御方法であって、前記コンピュータは、前記描画対象を描画するための描画情報に基づき、前記媒体に前記描画対象に含まれる線分を描画する描画位置を決定する際に、一又は複数の連続する前記線分の描画開始位置を描画方向において所定距離後退させる描画位置決定工程を実行する。
【0023】
本発明の実施の形態のさらに他の観点の描画制御方法は、媒体の表面の複数の単位領域に描画対象を描画する描画装置をコンピュータが制御する描画制御方法であって、前記コンピュータは、前記描画対象に含まれる一又は複数の連続する線分を複数の描画区間に分割し、一又は複数の連続する前記描画区間毎に、前記描画装置が前記描画対象を描画するための描画出力をパルス状に設定する描画出力設定工程を実行する。
【0024】
本発明の実施の形態のさらにまた他の観点の描画制御方法は、媒体の表面の複数の単位領域に描画対象を描画する描画装置をコンピュータが制御する描画制御方法であって、前記描画対象は、複数の線分を含み、かつ、当該線分は複数行に配列されており、前記コンピュータは、前記描画対象に含まれる複数の線分の描画順を決定する際に、奇数行の線分を行単位で順次描画してから偶数行の線分を行単位で順次描画するように、又は、偶数行の線分を行単位で順次描画してから奇数行の線分を行単位で順次描画するように、前記線分の描画順を決定する描画順決定工程を実行する。
【0025】
本発明の実施の形態の一観点のレーザ照射装置は、前記いずれかの描画制御方法により制御されるレーザ照射装置において、レーザを照射するレーザ発振器と、前記レーザ発振器が照射するレーザの照射方向を制御する方向制御ミラーと、前記方向制御ミラーを駆動する方向制御モータと、を有する。
【0026】
本発明の実施の形態の一観点の描画制御プログラムは、前記いずれかの描画制御方法を実行するための描画制御プログラムである。
【0027】
本発明の実施の形態の一観点の描画制御プログラムを記録した記録媒体は、前記に記載の描画制御プログラムを記録したものである。
【発明の効果】
【0028】
高品質かつ効率的に描画を行うことのできる描画制御方法、レーザ照射装置、描画制御プログラム、及びこれを記録した記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来の描画方法を説明する図である。
【図2】従来の描画方法における問題点を説明する図である。
【図3】従来の描画方法における問題点を説明する図である。
【図4】従来の描画方法における問題点を説明する図である。
【図5】実施の形態1のレーザマーキング装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図6】描画制御装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図7】実施の形態1の描画制御装置20の機能ブロックを示す図である。
【図8】(a)は、2次元コードDB41の一例を示す図であり、(b)は、描画条件DB43の一例を示す図の一例を示す図である。
【図9】実施の形態1の描画制御方法によって描画が行われる描画順を示す図である。
【図10】実施の形態1の描画制御方法による描画順決定処理を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態2の描画制御方法によって線分の始点を描画方向において後退させることを説明するための概念図である。
【図12】実施の形態2の描画制御方法によって2つの線分を断続的に描画する際に、それぞれの線分の始点を描画方向において後退させる処理を示す図である。
【図13】実施の形態2の描画制御方法による描画順決定処理を示すフローチャートである。
【図14】実施の形態3の描画制御装置320の機能ブロックを示す図である。
【図15】実施の形態3の描画制御方法による描画順決定処理を示すフローチャートである。
【図16】実施の形態3の描画制御方法によって描画が行われる描画順を示す図である。
【図17】実施の形態4の描画制御方法による描画順を示す概念図である。
【図18】実施の形態4の描画制御方法による描画の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の描画制御方法、レーザ照射装置、描画制御プログラム、及びこれを記録した記録媒体を適用した実施の形態について説明する。
【0031】
ここでは、「描画対象」なる文言は、描画の対象となる2次元コード又はその部品を表すものとして用いる。
【0032】
また、「線分」とは、描画対象としての2次元コード又はその部品に含まれ、描画対象を描画するために両端の座標が決まっている区間をいう。この線分は、直線の一部だけでなく、曲線の一部も含み、太さを有する。
【0033】
また、「一筆部品」とは、描画が開始される位置から次に描画が終了される位置までに連続的に描画される一又は複数の線分を含むものとして用いる。例えば、レーザ照射で描画を行う場合は、レーザの1回の照射開始点から照射終了点までに描画される一画が一筆部品となる。
【0034】
このため、描画対象としての2次元コード又はその部品は、1以上の一筆部品を含み、一筆部品は、1以上の線分を含む。
【0035】
また、「描画順」なる文言は、描画対象に含まれる線分を描画する順(線分をどちらの端部から描画するかという描画順も含む)と、2次元コードに含まれる複数の描画対象の各々を描画する順との2つの意味を有するものとして用いる。
【0036】
[実施の形態1]
図5は、実施の形態1のレーザマーキング装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0037】
レーザマーキング装置100は、レーザを照射する描画装置10、及び、描画装置10の描画を制御する描画制御装置20を有する。描画装置10は、レーザを照射するレーザ発振器11、レーザの照射方向を変える方向制御ミラー13、方向制御ミラー13を駆動する方向制御モータ12、光学レンズ14、及び集光レンズ15を含む。
【0038】
レーザ発振器11は、半導体レーザ(LD(Laser Diode))であるが、気体レーザ、固体レーザ、液体レーザ等でもよい。方向制御モータ12は、方向制御ミラー13の反射面の向きを2軸に制御する例えばサーボモータである。方向制御モータ12と方向制御ミラー13とによりガルバノミラーを構成する。光学レンズ14は、レーザ光のスポット径を大きくするレンズであり、集光レンズ15はレーザ光を収束させるレンズである。
【0039】
リライタブル媒体50は、180℃以上の温度に加熱して急冷することで発色し、130〜170℃の温度に加熱することで消色する書き換え可能な感熱媒体である。通常の感熱紙やサーマルリライタブル媒体は近赤外領域のレーザ光を吸収しないので、近赤外レーザ波長を発振するレーザ光源(半導体レーザや固体レーザのYAG等)を用いる場合は、感熱紙、サーマルリライタブル媒体にレーザ光を吸収する材料の添加や層を追加する必要がある。なお、書き換えとは、レーザ光で加熱して記録を行い、レーザ光又は温風、ホットスタンプ等で加熱して消去することである。また、書き換えができないサーマルペーパとは、加熱により消色が困難な感熱紙をいう。本実施の形態では、使用する媒体の例として、リライタブル媒体50を使用した場合を説明するが、書き換えができないサーマルペーパ、プラスチック、金属等のように書き換えが可能でない媒体に対しても、好適に適用できる。
【0040】
図6は、描画制御装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。図6は、主にソフトウェアによって描画制御装置20を実装する場合のハードウェア構成図であり、コンピュータを実体としている。コンピュータを実体とせず描画制御装置20を実現する場合、ASIC((Application Specific Integrated Circuit))等の特定機能向けに生成されたICを利用する。
【0041】
描画制御装置20は、CPU31、メモリ32、ハードディスク35、入力装置36、CD−ROMドライブ33、ディスプレイ37及びネットワーク装置34を有する。ハードディスク35には、2次元コード及び2次元コードに含まれる部品を表すデータを格納する2次元コードDB41、2次元コードを描画するための描画命令を生成し描画装置10を制御する描画プログラム42、及び描画条件DB43が記憶されている。
【0042】
CPU31は、ハードディスク35から描画プログラム42を読み出して実行し、2次元コードDB41を参照し、後述する手順で、リライタブル媒体50に2次元コードを描画する。メモリ32は、DRAM等の揮発性メモリで、CPU31が描画プログラム42を実行する際の作業エリアとなる。
【0043】
入力装置36は、マウスやキーボード等の描画装置10を制御する指示をユーザが入力するための装置である。リライタブル媒体50に描画する2次元コードに含まれる部品等の描画対象のサイズ等を表す描画条件は、例えば、入力装置36を介してユーザによって入力される。入力された描画条件は、描画条件DB43として、例えば、ハードディスク35に記憶される。描画条件には、2次元コードの中における部品としての各描画対象の位置、及びサイズ等を表すデータが含まれる。描画条件のデータ構造については図8を用いて後述する。
【0044】
ディスプレイ37は、例えば描画プログラム42が指示する画面情報に基づき所定の解像度や色数で、GUI(Graphical User Interface)画面を表示するユーザインターフェイスとなる。例えば、リライタブル媒体50に描画する2次元コード又は部品の入力欄が表示される。
【0045】
CD−ROMドライブ33は、CD-ROM38を脱着可能に構成され、CD−ROM38からデータを読み出し、また、記録可能な記録媒体にデータを書き込む際に利用される。2次元コードDB41及び描画プログラム42は、CD-ROM38に記憶された状態で配布され、CD-ROM38から読み出されてハードディスク35にインストールされる。CD−ROM38は、この他、DVD、ブルーレイディスク、SDカード、メモリースティック(登録商標)、マルチメディアカード、xDカード等、不揮発性のメモリで代用することができる。
【0046】
ネットワーク装置34は、LANやインターネット等のネットワークに接続するためのインターフェイス(例えばイーサネット(登録商標)カード)であり、OSI基本参照モデルの物理層、データリンク層に規定されたプロトコルに従う処理を実行して、描画装置10に2次元コードの種別を表すコードに応じた描画命令を送信することを可能とする。2次元コードDB41及び描画プログラム42は、ネットワークを介して接続した所定のサーバからダウンロードすることができる。なお、ネットワーク経由でなく、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、ワイヤレスUSB、Bluetooth等で直接、描画制御装置20と描画装置10を接続してもよい。
【0047】
リライタブル媒体50に描画される2次元コードは、上述のように入力装置36から入力され、例えばリスト状のデータとしてハードディスク35に記憶されている。なお、リライタブル媒体50に描画される2次元コードに含まれる描画対象のサイズは、描画条件を構成する。
【0048】
2次元コードは、2次元コードの種別を表すコードで特定され、描画制御装置20は2次元コードの種別に対応する2次元コードのデータを2次元コードDB41から読み出し、描画装置10を制御するための描画命令を生成する際に用いる。
【0049】
次に、図7を用いて実施の形態1の描画制御装置の機能ブロックについて説明する。
【0050】
図7は、実施の形態1の描画制御装置20の機能ブロックを示す図である。各ブロックをソフトウェアで実現する場合、各ブロックはCPU31が描画プログラム42を実行することで実現される。
【0051】
描画制御装置20は、描画位置決定手段21、描画順決定手段22、描画命令生成手段23、2次元コード取得手段24、描画条件取得手段25を含む。
【0052】
描画位置決定手段21は、2次元コード取得手段24によって2次元コードDB41から読み出される2次元コード又は2次元コード部品の種別を表すデータと、描画条件取得手段25によって描画条件DB43から読み出される描画条件とに基づいて、描画対象をリライタブル媒体50に描画する描画位置である座標データを決定する。なお、描画条件には、2次元コードの中における各描画対象としての部品の位置、及びサイズ等を表すデータが含まれる。描画条件を表すデータについては図8を用いて後述する。
【0053】
描画命令生成手段23は、描画位置決定手段21によって決定される座標データと、描画順決定手段22によって決定される描画順とを反映した描画命令を生成する。生成された描画命令は、描画装置10に入力され、この結果、ユーザによって入力装置36に入力された2次元コード又は部品を表す描画対象が描画装置10によってリライタブル媒体50に描画される。
【0054】
描画条件取得手段25は、リライタブル媒体50に描画する描画対象である部品を含む2次元コードや、2次元コードに含まれる描画対象としての部品のサイズの条件を表す描画条件をハードディスク35に記憶された描画条件DB43から取得する。
【0055】
図8(a)は、2次元コードDB41の一例を示す図であり、図8(b)は、描画条件DB43の一例を示す図の一例を示す図である。
【0056】
図8(a)に示すように、2次元コードDB41は、2次元コード又は2次元コード部品の種別を特定するためのコードと、このコードによって特定される2次元コード又は2次元コード部品のデータ内容を表す識別子が格納されている。
【0057】
図8(b)に示すように、描画条件DB43は、描画対象としての2次元コード又は2次元コード部品の種別を特定するためのコード、描画対象の各々が配置される位置(x、y座標)を表す位置データ、及びサイズを表すデータを含む。描画対象の位置を示す座標値は、例えば、描画対象が配置される領域の左上の点の座標である。
【0058】
なお、図8(a)、(b)に含まれるデータとして、アルファベットと数字を組み合わせた記号を示すが、実際の描画制御装置では具体的な数値等が与えられる。
【0059】
図9は、実施の形態1の描画制御方法によって描画が行われる描画順を示す図である。図9(a)、図9(b)では、図中に示すようにx軸、y軸をとる。このx軸、y軸は、描画対象が配置される座標値(x、y)を表すx、y座標系を構成する。
【0060】
図9(a)に示す2次元コードは、図1(a)に示した2次元コードと同一である。この2次元コード200は、左上から右下にかけて6つの2次元コード部品201〜206を含む。各2次元コード部品201〜206は、2行で描画されるものである。また、ここでは、2次元コード部品の大きさは、リライタブル媒体50の表面に描画を行う際の単位領域であるセルの大きさと等しいものとして説明を行う。
【0061】
実施の形態1の描画制御方法では、図9(b)に示すように、描画順1、2でレーザを照射して左上の2次元コード部品201及び202を描画する。次に、描画順3、4でレーザを照射して2次元コード部品203を描画する。次に、描画順5、6でレーザを照射して2次元コード部品204を描画する。最後に、描画順7、8でレーザを照射して2次元コード部品205及び206を描画する。このような描画順の決定は、図10に示す描画順決定処理によって実現される。
【0062】
図10は、実施の形態1の描画制御方法による描画順決定処理を示すフローチャートである。
【0063】
まず、描画位置決定手段21は、2次元コード取得手段24によって2次元コードDB41から読み出される2次元コードに含まれるすべての2次元コード部品と、描画条件取得手段25によって描画条件DB43から読み出される描画条件とに基づいて、描画対象をリライタブル媒体50に描画する描画位置である座標データを決定する(ステップS1)。これにより、すべての2次元コード部品201〜206がレーザ照射によって描画される座標が決定される。
【0064】
次に、描画順決定手段22は、すべての2次元コード部品のうち、左上にある2次元コード部品を最初の2次元コード部品として選択する(ステップS2)。これにより、図9(a)に示す例では、2次元コード部品201が選択される。
【0065】
次いで、描画順決定手段22は、ステップS2で選択した2次元コード部品に含まれる線分のうち、左上にある線分を選択する(ステップS3)。
【0066】
次に、描画順決定手段22は、ステップS3で選択した線分に、行方向(横方向:x軸方向)において連続する線分があるか否かを判定する(ステップS4)。このステップS4の処理は、ステップS3で選択した線分に行方向(x軸方向)において連続するすべての線分の有無を判定する処理である。
【0067】
ステップS4で連続する線分があると判定した場合は、描画順決定手段22は、ステップS4で存在を確認したすべての連続する線分の描画順をステップS3で選択した線分に連続する描画順とする(ステップS5)。
【0068】
次いで、描画順決定手段22は、同じ2次元コード部品内で1行下の行に線分があるか否かを判定する(ステップS6)。これにより、図9(a)に示す例では、2次元コード部品201に隣接する2次元コード部品202の1行目の線分が選択される。
【0069】
ステップS6で下の行に線分があると判定した場合は、描画順決定手段22は、フローをステップS3にリターンし、その行の一番左側にある線分を選択される。その後、ステップS3からS6の処理が繰り返し実行されることにより、ステップS2で最初に選択された2次元コード部品についての描画順が決定する。これにより、図9(a)に示す例では、2次元コード部品201及び202の2行目の線分が選択され、図9(b)に示す描画順1,2が決定する。
【0070】
ステップS6で下の行に線分がないと判定した場合は、フローはステップS7に進行し、描画順決定手段22は、最後の2次元コード部品であるか否かを判定する(ステップS7)。
【0071】
ステップS7で最後の2次元コード部品ではないと判定した場合は、描画順決定手段22は、次の2次元コード部品を選択し(ステップS8)、フローをステップS3にリターンする。ステップS8では、すべての2次元コード部品を順次左上から右下にかけて選択する。これにより、図9(a)に示す例では、2次元コード部品202のさらに右にある2次元コード部品203が選択される。2次元コード部品203の次は、2次元コード部品204、205、206の順に繰り返し選択されることになる。
【0072】
ステップS7で最後の2次元コード部品であると判定した場合は、描画順決定手段22は、それまでに決定した描画順を確定する(ステップS9)。これにより、2次元コード部品に含まれるすべての線分の描画順が決定する。
【0073】
次いで、描画命令生成手段23は、描画位置決定手段21によって決定される座標データと、描画順決定手段22によって決定される描画順とを反映した描画命令を生成する(ステップS10)。これにより、図9(a)に示す例では、2次元コード部品201〜206について図9(b)に示す描画順1〜8が決定する。
【0074】
そして、描画命令に基づいた描画が実行される(ステップS11)。これにより、図9(a)に示す2次元コード部品200がレーザ照射によって描画される。
【0075】
以上、実施の形態1の描画制御方法によって決定される描画順によれば、図1(b)に示す線分1終点→線分2の始点、線分2の終点→線分3の始点、線分3の終点→線分4の始点の移動時間が削減される。
【0076】
このように、実施の形態1の描画制御方法によれば、連続する2次元コード部品毎に描画するように描画順を決定するので、2次元コードの全体を描画する時間を短縮化することができる。
【0077】
なお、以上の実施の形態1では、2次元コードを描画する形態について説明したが、実施の形態1の描画制御方法は、媒体に文字、数字、記号、又は図形等の2次元コード以外の描画対象の描画に適用してもよい。
【0078】
[実施の形態2]
実施の形態2の描画制御方法は、描画位置決定手段21によって実行される描画位置決定工程において、線分の始点を描画方向において所定の距離だけ後退させるものである。
【0079】
図5乃至図8に示すハードウェア構成、ブロック構成、データ構造は実施の形態1の描画制御方法を実行する描画制御装置と同一であるため、その説明を省略し、また、以下の説明において援用する。
【0080】
図11は、実施の形態2の描画制御方法によって線分の始点を描画方向(x軸方向)において後退させることを説明するための概念図である。
【0081】
図12は、実施の形態2の描画制御方法によって2つの線分を断続的に描画する際に、それぞれの線分の始点を描画方向において後退させる処理を示す図である。
【0082】
描画位置決定手段21は、2次元コード取得手段24によって2次元コードDB41から読み出される2次元コード又は2次元コード部品の種別を表すデータと、描画条件取得手段25によって描画条件DB43から読み出される描画条件とに基づいて、座標データを決定する際に、始点となる線分の描画開始位置を所定の距離dだけ後退させる。すなわち、この処理により、始点を含む線分は、描画方向(x軸方向)において後退する方向に、距離dだけ延伸されることになり、レーザは、距離dだけ後退された描画開始位置から照射されることになる。
【0083】
なお、ここで、始点とは、描画方向において上流側に描画対象が存在せず、その行の中で描画を開始する描画開始位置のことをいい、描画方向とは、図中横方向をいう。
【0084】
また、実施の形態2の描画制御方法によって2つの線分12A、12Bを断続的に描画する際には、図12に示すようにそれぞれ線分の始点を描画方向において距離dだけ後退させればよい。この結果、レーザ照射を開始する位置は、描画したい線分12A、12Bの発色が開始する点A2、B2よりも描画方向において距離dだけ後退した点A1、B1になる。
【0085】
図13は、実施の形態2の描画制御方法による描画順決定処理を示すフローチャートである。
【0086】
図13に示す実施の形態2の描画制御方法による描画順決定処理は、実施の形態1の描画制御方法による描画順決定処理(図10参照)のステップS5とステップS6との間に、ステップS130を挿入した処理である。図13に示すステップS1〜S11の処理は、すべて図10に示すステップS1〜S11の処理と同一であるため、その説明を省略する。
【0087】
図13では、ステップS4において描画順決定手段22によって連続する線分がないと判定された場合、又は、ステップS5において描画順決定手段22によって描画順が設定された場合に、ステップS130の処理が行われる。
【0088】
ステップS130では、描画位置決定手段21は、始点となる線分の描画開始位置を所定の距離dだけ後退させる(ステップS130)。これにより、始点を含む線分は、描画方向において後退する方向に、距離dだけ延伸されることになり、レーザは、距離dだけ後退された描画開始位置から照射されることになる。
【0089】
なお、始点となる線分の描画開始位置を所定の距離dについては、描画する線分の幅、レーザ出力、媒体(リライタブル媒体50、書き換えができないサーマルペーパ、プラスチック、金属等のように書き換えが可能でない媒体)の熱特性等、又は、描画時の媒体の温度等の描画条件によって予め実験値を求めておき、描画条件に応じて最適な値に設定すればよい。
【0090】
ステップS130の処理が終了すると、描画順決定手段22は、同じ2次元コード部品内で1行下の行に線分があるか否かを判定する(ステップS6)。
【0091】
以下、実施の形態1の描画制御方法による描画順決定処理と同様に、ステップS6以下の処理が実行される。
【0092】
以上、実施の形態2の描画制御方法によれば、始点の座標が描画方向において距離dだけ後退させられているので、描画対象の始点部分は短くならず、図2(b)、図2(c)に示したように始点が発色しにくいことによって生じる問題点を解決し、2次元コード部品間の隙間や単独2次元コード部品・連結2次元コード部品の違いによる2次元コード部品の大きさのばらつきを低減した2次元コードを描画できる。すなわち、正確で高品質な描画を効率よく実行することができる。
【0093】
なお、以上の実施の形態2では、2次元コードを描画する形態について説明したが、実施の形態1の描画制御方法は、媒体に文字、数字、記号、又は図形等の2次元コード以外の描画対象の描画に適用してもよい。
【0094】
[実施の形態3]
実施の形態3の描画制御方法は、一又は複数の連続する線分を複数の描画区間に分割して、描画区間毎に描画出力(レーザ出力)をパルス状に設定するものである。
【0095】
図14は、実施の形態3の描画制御装置320の機能ブロックを示す図である。各ブロックをソフトウェアで実現する場合、各ブロックはCPU31が描画プログラム42を実行することで実現される。
【0096】
描画制御装置320は、描画位置決定手段21、描画順決定手段22、描画命令生成手段23、2次元コード取得手段24、描画条件取得手段25に加えて描画出力決定手段326を含む。このうち、描画位置決定手段21、描画順決定手段22、描画命令生成手段23、2次元コード取得手段24、描画条件取得手段25については、実施の形態1の描画制御装置20に含まれるものと同一であるため、その説明を省略する。
【0097】
描画出力決定手段326は、一又は複数の連続する線分を複数の描画区間に分割して、描画区間毎に描画出力(レーザ出力)をパルス状に設定する。描画出力決定手段326は、レーザ発振器11をオン/オフさせることによって、パルス状のレーザ出力を生成する。なお、ガルバノミラーの走査の仕方は、レーザ出力がパルス状ではない実施の形態1と同一であり、レーザ出力をパルス状にしたことによる変更点はない。
【0098】
図15は、実施の形態3の描画制御方法による描画順決定処理を示すフローチャートである。
【0099】
図15に示す実施の形態3の描画制御方法による描画順決定処理は、実施の形態1の描画制御方法による描画順決定処理(図10参照)のステップS5とステップS6との間に、ステップS150を挿入した処理である。図15に示すステップS1〜S11の処理は、すべて図10に示すステップS1〜S11の処理と同一であるため、その説明を省略する。
【0100】
図15では、ステップS4において描画順決定手段22によって連続する線分があると判定され、その後のステップS5において描画順決定手段22によって描画順が設定された場合に、ステップS150の処理が行われる。
【0101】
ステップS150では、描画出力決定手段326は、連続する線分を描画する際に、連続する線分を描画するための描画出力がパルス状になるように描画出力を設定する(ステップS150)。
【0102】
具体的には、描画出力決定手段326は、連続する線分を描画する際に、連続する線分同士の間(線分同士の継ぎ目)にレーザ出力が零になる区間が存在するようにすることにより、連続する線分を描画するための描画出力がパルス状に設定する。
【0103】
すなわち、連続する線分の各々を(線分単位で)一つのパルスで描画し、線分同士の間(線分同士の継ぎ目)にレーザ出力が零になる区間を設ける。これにより、他の線分と連続しない単独の線分も、連続する複数の線分の各々も、線分単位で連続的にレーザが出力されて描画が行われることになる。
【0104】
なお、レーザ出力が零になる区間の長さについては、描画する線分の幅、レーザ出力、媒体(リライタブル媒体50、書き換えができないサーマルペーパ、プラスチック、金属等のように書き換えが可能でない媒体)の熱特性等、又は、描画時の媒体の温度等の描画条件によって予め実験値を求めておき、描画条件に応じて最適な値に設定すればよい。
【0105】
ステップS150の処理が終了すると、描画順決定手段22は、同じ2次元コード部品内で1行下の行に線分があるか否かを判定する(ステップS6)。
【0106】
以下、実施の形態1の描画制御方法による描画順決定処理と同様に、ステップS6以下の処理が実行される。
【0107】
図16は、実施の形態3の描画制御方法によって描画が行われる描画順を示す図である。
【0108】
図16(a)に示す2次元コードは、図1(a)に示した2次元コードと同一である。この2次元コード200は、左上から右下にかけて6つの2次元コード部品201〜206を含む。各2次元コード部品201〜206は、2行で描画されるものとする。
【0109】
実施の形態3の描画制御方法では、図16(b)に示すように、全体の描画順としては、図1(c)に示したラスタスキャンと同一である場合を示すが、連続する線分を分割し、分割された描画区間毎に描画出力をパルス状にしている。なお、実施の形態3の描画制御方法は、一又は複数の連続する線分を複数の描画区間に分割して、描画区間毎に描画出力(レーザ出力)をパルス状に設定したものであればよく、図16(b)に示すように、ラスタスキャンのような順番に限定されるものではない。
【0110】
例えば、図16(c)に示すように、一つの線分301の次に、ブランクを挟んで4つの連続する線分302〜305を描画する場合は、連続する線分302〜305の各々を描画する際に、図16(d)に示すように、パルス状の描画出力を描画装置10に与える描画命令を生成する。パルス状の描画出力を実現するための描画命令は、連続する線分を描画する際に、描画出力決定手段326がパルス状の描画出力を出力するように決定する手法に限らず、描画出力決定手段326を備えることなく、座標データにおいて、連続する線分を分割し、かつ、各線分が接続しないように、所定の長さだけ短くすることによってパルス状の描画出力が得られるようにしてもよい。
【0111】
このようにすることで、長い連結2次元コード部品の蓄熱を減少させることができ、短い線分も連結した線分も均一な濃度で描画することができる。
【0112】
なお、図16に示す例では、パルスのON/OFFの境界をセルのサイズに合わせたが、パルス幅やパルス間隔はこれに限らず任意に決めてよい。
【0113】
また、図16(c)に示す線分301のような1本の線分を複数の区間に分割してもよい。
【0114】
なお、以上の実施の形態3では、レーザの出力(描画出力)をパルス状にするために、レーザ発振器11をオン/オフさせており、パルス状のレーザ出力を生成するためにガルバノミラーを動作させることは行っていない。従って、レーザ発振器11のオン/オフのみでパルス状のレーザ出力を生成することができ、レーザ出力を高速でオン/オフできるため、高速で描画する際にも適用可能である。
【0115】
また、このように描画出力をパルス状にすることは、実施の形態1,2の描画制御方法に組み込んでもよいし、後述する実施の形態4の描画制御方法に組み込んでもよい。
【0116】
また、以上の実施の形態3では、2次元コードを描画する形態について説明したが、実施の形態1の描画制御方法は、媒体に文字、数字、記号、又は図形等の2次元コード以外の描画対象の描画に適用してもよい。
【0117】
[実施の形態4]
図17は、実施の形態4の描画制御方法による描画順を示す概念図である。
【0118】
実施の形態4の描画制御方法は、描画順決定手段22によって実行される描画順決定工程において、複数の行を描画することによって完成される2次元コード400の描画順を決定する際に、複数行の線分のうち、奇数行の線分を行単位で順次描画してから偶数行の線分を行単位で順次描画するように、又は、偶数行の線分を行単位で順次描画してから奇数行の線分を行単位で順次描画するように、2次元コード400に含まれるすべての線分の描画順を決定する。
【0119】
このため、ハードウェア構成、ブロック構成、データ構造は図5乃至図8に示す実施の形態1の描画制御方法を実行する描画制御装置と同一であるため、その説明を省略し、また、以下の説明において援用する。
【0120】
これは、すなわち、図17に示すように、上の行から下の行にかけて、インターレース方式で奇数行(1行目から21行目)に含まれる線分を左から右に描画し、一番下の21行目が終了すると、上に戻り、インターレース方式で偶数行(2行目から20行目)に含まれる線分を左から右に描画する描画方法である。
【0121】
2次元コードの1行の長さが小さかったり印字速度が速かったりする場合、次の行を描画した際に前の行の熱の影響が残っていて、本来発色すべきではない部分が発色してしまい、印字品質が悪くなってしまうという問題点があった。
【0122】
しかしながら、図17に示す描画順では、奇数行と偶数行をインターレース方式で順次描画するため、偶数行は隣り合う奇数行の描画の際の熱の影響が抑制され、同様に、奇数行は隣り合う偶数行の描画の際の熱の影響が抑制される。
【0123】
これにより、前の行の熱の影響で本来発色すべきではない部分が発色してしまうことを防ぐことができる。
【0124】
なお、これは、例えば、1セルの大きさに相当する2次元コード部品に含まれる線分が1本の場合であっても複数本であっても同様の効果が得られる。
【0125】
図18は、実施の形態4の描画制御方法による描画の手順を示す図である。
【0126】
図18において、横軸は時間を表し、縦軸はy軸方向における描画位置を表す。図18は、y軸方向に6行の2次元コードの描画する際の描画手順を表す。図18には、y軸方向の描画位置を、上方向を正として縦軸に表すが、実際に描画される2次元コードは、図17に示す21行の2次元コードと同様に、上から下に向けて描画を行う。
【0127】
また、図18(A)は、2次元コード部品が1本の線分で描画されている場合の描画手順を示し、図18(B)は、2次元コード部品が2本の線分で描画されている(図9参照)場合の描画手順を示す。
【0128】
図18(A)、図18(B)において、破線で示す区間は、描画を行わずに次に描画する線分の始点に移動(空走)する区間を表す。実線で示す区間は、線分を描画する区間を表す。
【0129】
なお、実際の描画では、空走区間の始点と終点で、ガルバノミラーが安定するのを待機するための待機時間を設けるが、待機時間は描画区間や空走区間に要する時間に比べて微小であるため、図18では省略する。また、以下では、図18(A)、図18(B)に示す手順を、実施の形態4の描画制御装置20(図7を援用)が実行するものとして説明する。
【0130】
図18(A)では、描画制御装置20は、時刻t=0で描画を開始し、t=0〜t1まで1行目の線分を描画する。次に、3行目に移動し、時刻t1〜t2で3行目を描画する。次に、5行目に移動し、時刻t2〜t3で5行目を描画する。
【0131】
5行目の線分の描画が終了すると、描画制御装置20は、偶数行目の描画を行うために2行目に移動し、時刻t3〜t4で2行目の線分を描画する。次に、4行目に移動し、時刻t4〜t5で4行目を描画する。次に、6行目に移動し、時刻t5〜t6で6行目を描画する。
【0132】
以上により、描画制御装置20による描画処理が終了し、図17に示す2次元コード400と同様の要領で、奇数行、偶数行に分けた描画を行うことができる。
【0133】
次に、図18(B)に示す描画手順について説明する。
【0134】
図18(B)では、描画制御装置20は、時刻t=0で描画を開始し、t=0〜t1まで1行目の1本目の線分を描画する。次に、時刻t1〜t2で1行目の2本目の線分を描画する。次に、3行目に移動し、時刻t2〜t3で3行目の1本目を描画し、時刻t3〜t4で3行目の2本目を描画する。次に、5行目に移動し、時刻t4〜t5で5行目の1本目を描画し、時刻t5〜t6で5行目の2本目を描画する。
【0135】
5行目の線分の描画が終了すると、描画制御装置20は、偶数行目の描画を行うために2行目に移動し、時刻t6〜t7で2行目の1本目を描画し、時刻t7〜t8で2行目の2本目を描画する。次に、4行目に移動し、時刻t8〜t9で4行目の1本目を描画し、時刻t9〜t10で4行目の2本目を描画する。次に、6行目に移動し、時刻t10〜t11で6行目の1本目を描画し、時刻t11〜t12で6行目の2本目を描画する。
【0136】
以上により、描画制御装置20による描画処理が終了し、図17に示す2次元コード400と同様の要領で、2次元コード部品を2本の線分で描画する必要のある描画対象に対して、奇数行、偶数行に分けた描画を行うことができる。
【0137】
以上、実施の形態4の描画制御方法によれば、隣り合う奇数行と偶数行との間における熱の影響を抑制することにより、正確で高品質な描画を効率よく実行することができる。
【0138】
なお、このインターレース方式の描画制御方法は、実施の形態1乃至3の描画制御方法と組み合わせることもできる。
【0139】
また、以上の実施の形態4では、2次元コードを描画する形態について説明したが、実施の形態1の描画制御方法は、媒体に文字、数字、記号、又は図形等の2次元コード以外の描画対象の描画に適用してもよい。
【0140】
以上、本発明の例示的な実施の形態の描画制御方法、レーザ照射装置、描画制御プログラム、及びこれを記録した記録媒体について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0141】
10 描画装置
11 レーザ発振器
12 方向制御モータ
13 方向制御ミラー
14 光学レンズ
15 集光レンズ
20 描画制御装置
21 描画位置決定手段
22 描画順決定手段
23 描画命令生成手段
24 2次元コード取得手段
25 描画条件取得手段
31 CPU
32 メモリ
33 CD−ROMドライブ
34 ネットワーク装置
35 ハードディスク
36 入力装置
37 ディスプレイ
38 CD−ROM(記憶媒体)
41 2次元コードDB
42 描画プログラム
43 描画条件DB
50 リライタブル媒体
100 レーザマーキング装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0142】
【特許文献1】特許第3501987号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の表面の複数の単位領域に描画対象を描画する描画装置をコンピュータが制御する描画制御方法であって、
前記コンピュータは、
相隣接する複数の単位領域にわたる複数の連続的な線分を連続的に描画するように、前記描画対象に含まれる線分の描画順を決定する描画順決定工程を実行する、描画制御方法。
【請求項2】
媒体の表面の複数の単位領域に描画対象を描画する描画装置をコンピュータが制御する描画制御方法であって、
前記コンピュータは、
前記描画対象を描画するための描画情報に基づき、前記媒体に前記描画対象に含まれる線分を描画する描画位置を決定する際に、一又は複数の連続する前記線分の描画開始位置を描画方向において所定距離後退させる描画位置決定工程を実行する、描画制御方法。
【請求項3】
媒体の表面の複数の単位領域に描画対象を描画する描画装置をコンピュータが制御する描画制御方法であって、
前記コンピュータは、
前記描画対象に含まれる一又は複数の連続する線分を複数の描画区間に分割し、一又は複数の連続する前記描画区間毎に、前記描画装置が前記描画対象を描画するための描画出力をパルス状に設定する描画出力設定工程を実行する、描画制御方法。
【請求項4】
媒体の表面の複数の単位領域に描画対象を描画する描画装置をコンピュータが制御する描画制御方法であって、前記描画対象は、複数の線分を含み、かつ、当該線分は複数行に配列されており、
前記コンピュータは、
前記描画対象に含まれる複数の線分の描画順を決定する際に、奇数行の線分を行単位で順次描画してから偶数行の線分を行単位で順次描画するように、又は、偶数行の線分を行単位で順次描画してから奇数行の線分を行単位で順次描画するように、前記線分の描画順を決定する描画順決定工程を実行する、描画制御方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の描画制御方法により制御されるレーザ照射装置において、
レーザを照射するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器が照射するレーザの照射方向を制御する方向制御ミラーと、
前記方向制御ミラーを駆動する方向制御モータと、
を有するレーザ照射装置。
【請求項6】
請求項1乃至4の描画制御方法を実行するための描画制御プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載の描画制御プログラムを記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−104990(P2011−104990A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202723(P2010−202723)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】