説明

描画方法、情報記録媒体製造用原盤の製造方法、および情報記録媒体の製造方法

【課題】サーボ情報を正確に読出しできるサーボパターンを形成可能な露光パターンを描画する。
【解決手段】両位相サーボ部のパターンPS5a,PS5bの描画時に、これらを構成する露光領域A1および非露光領域A2のうちの回転方向で並ぶ一組の領域A1,A2の各半径位置毎の回転方向に沿った合計長をそれぞれ第1の長さとしたときに、両パターンPS5a,PS5bの一方の領域A1における回転方向と交差する辺の半径方向に対する交差角度と、他方の交差角度との同一の半径位置における角度差が最大となる半径位置を含む領域内において、1つのサーボトラックSTにおける第1の長さの範囲内への描画用ビームの総照射量を第1の長さで除した第1の値が、同一の半径位置において、両パターンPS5a,PS5bのうちのトラックST内の交差角度が小さい一方よりも、交差角度が大きい一方の方が大きくなるようにビームを照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体製造用原盤や情報記録媒体を製造する際に使用する凹凸パターンを形成するための露光パターンを描画する描画方法、並びに、描画した露光パターンを利用して形成した凹凸パターンを使用して情報記録媒体製造用原盤や情報記録媒体を製造する製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録密度の向上を図り得る磁気記録媒体として、ディスクリートトラック媒体やビットパターンド媒体などのパターンド型の磁気ディスクが提案されている。これらの磁気ディスクの製造方法としては、磁性層(記録層)をエッチングする方法や、磁性層(記録層)にイオンを注入する方法が知られている。また、磁性層(記録層)をエッチングする際に使用するマスクパターンや、磁性層(記録層)にイオンを注入する際に使用するマスクパターンの製造方法としては、微細凹凸パターンが形成されたインプリント用スタンパー(製造用原盤)を使用して形成する方法(ナノインプリント法)が知られている。一方、連続記録層型の磁気ディスクの製造方法としては、サーボ情報の記録処理を効率化するために、微細凹凸パターンが形成された磁気転写用スタンパー(製造用原盤)を使用して、磁気ディスクの全域にサーボ情報を一括して記録する(サーボパターンを磁気転写する)方法が提案されている。これらインプリント用スタンパーや磁気転写用スタンパー(以下、区別しないときには、単に「スタンパー」ともいう)は、一例として、電子ビーム描画装置を用いて描画した露光パターンを現像して形成される凹凸パターンを使用して製造される。
【0003】
例えば、特開2010−118100号公報には、情報記録用原盤を製造するためのパターンを電子ビーム描画装置によって描画する方法が開示されている。この描画方法では、原盤を固定したターンテーブルをモータによって回転させながら、原盤(原盤に塗布したレジストの層)に対して電子ビームを断続的に照射することで所望のパターンを描画する。この場合、この描画方法では、一例として、サーボパターンにおける1トラックピッチ分の幅を6回に分けて描画する方法が採用されている。具体的には、ブランカ制御データ(電子ビームを断続させて照射するための制御データ)に基づき、電子ビームの照射を開始すべき開始位置から、照射を停止すべき停止位置まで原盤の回転方向に沿って電子ビームを照射することによって描画対象のパターンにおける半径方向の一部(回転方向に沿って長い帯状の領域:以下、「帯状領域」ともいう)を描画し、この帯状領域の位置を、原盤が1回転させられる都度、原盤の半径方向に「1/6・トラックピッチ」ずつ変更することで、原盤が6回転する間に1トラックピッチ分のサーボパターンを描画する。
【0004】
この場合、位相サーボパターンを構成する一対の位相サーボ部のパターンのように、露光すべき領域における原盤の回転方向の上流側および下流側の両辺が原盤の半径方向に対して傾斜している(半径方向に対して交差している)パターンを描画する際には、上記公開公報の図4に示すように、原盤が1回転させられる都度、上記の帯状領域の位置を「1/6・トラックピッチ」ずつ原盤の半径方向に沿って変更すると共に、この帯状領域の位置を描画すべきパターンの傾斜角度に応じて回転方向に沿って変更する。これにより、回転方向と交差する両辺が原盤の半径方向に対して平行な露光領域で構成されたパターン、および回転方向と交差する両辺が原盤の半径方向に対して傾斜している(半径方向と交差している)露光領域を有するパターンの双方を含む各種のサーボパターンがレジストに描画される。この後、所望のパターンが描画された原盤に対する現像処理を実行することでレジストの層に凹凸パターンを形成し、この凹凸パターンを使用して各種スタンパーを製造する。これにより、パターンド型の磁気ディスク、およびサーボ情報が磁気転写された連続記録層型の磁気ディスクなどを製造する際に使用するスタンパーが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−118100号公報(第2−10頁、図1−18)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、出願人は、従来の描画方法によって描画されるパターンに、以下の問題点があることを見い出した。すなわち、例えば、回動アームの先端部に磁気ヘッドが設けられているタイプの記録再生装置に搭載される磁気ディスクを製造するためのサーボパターンを描画する際には、磁気ディスクの内周部や外周部に対応する領域におけるパターンの露光領域や非露光領域に対してスキュー角をそれぞれ付与する必要がある。一方、前述した位相サーボパターンを構成する一対の位相サーボ部のパターンは、例えば上記公開公報の図15に示すように、その回転方向と交差する辺の半径方向に対する交差の向き(傾斜の向き)が互いに相違している。また、例えば、付与するスキュー角が0°の半径位置において両位相サーボ部のパターンにおける回転方向と交差する辺の半径方向に対する交差角度が互いに等しい角度の位相サーボパターンを描画する際には、両位相サーボ部のパターンにおける露光領域や非露光領域の半径方向に対する交差の向きを互いに相違させることに起因して、スキュー角を付与すべき半径位置においては、両位相サーボ部のパターンにおける露光領域や非露光領域の回転方向と交差する辺の半径方向に対する交差角度を互いに相違する角度にする必要が生じる。
【0007】
この場合、出願人は、図26に示すように、回転方向(矢印Rの向き)と交差する両辺の半径方向に対する交差角度θ2が小さな露光領域A1axについては、開始位置P1Sx〜P4Sxから停止位置P1Ex〜P4Exまで原盤の回転方向に沿って長さLxだけ電子ビームを照射することで、その回転方向に沿った長さが長さLaxとなり、図27に示すように、回転方向と交差する両辺の半径方向に対する交差角度θ2が大きな露光領域A1bxについては、開始位置P1Sx〜P4Sxから停止位置P1Ex〜P4Exまで原盤の回転方向に沿って上記の露光領域A1axの描画時と同じ長さLxだけ電子ビームを照射したときに、その回転方向に沿った長さLbxが、露光領域A1axの長さLaxよりも短くなることを見いだした。また、出願人は、露光領域における回転方向と交差する両辺の半径方向に対する交差角度が大きくなるほど、電子ビームを照射する距離(開始位置から停止位置までの回転方向に沿った距離:上記の例における長さLxに対応する距離)に対する露光領域の回転方向に沿った距離の比が小さくなることを見いだした。
【0008】
したがって、原盤の内周部から外周部までの全域において、描画すべき露光領域における各半径位置毎の回転方向に沿った基準の長さ(回転方向で並ぶ一組の露光領域および非露光領域の回転方向に沿った合計長)に対して比例するように電子ビームの照射距離を規定して(各半径位置毎(各サーボトラック毎)の1つのサーボパターン領域の回転方向に沿った長さに対して比例するように照射距離を規定して)位相サーボパターンを描画したときには、両位相サーボ部のパターンの一方を構成する露光領域の回転方向と交差する両辺の半径方向に対する交差角度と、両位相サーボ部のパターンの他方を構成する露光領域の回転方向と交差する両辺の半径方向に対する交差角度との同一半径位置における角度差が大きい半径位置において、半径方向に対する交差角度が大きい方のパターンを構成する露光領域(例えば、上記の露光領域A1bx)の回転方向に沿った長さが、そのパターンにおける各半径位置毎の回転方向に沿った基準の長さに対して比例する本来的な長さよりも短くなる。
【0009】
この結果、このような描画方法に従って描画したパターンを利用してスタンパーを製造し、そのスタンパーを使用して情報記録媒体を製造したときには、サーボ情報の正確な読み出しが困難となるおそれがある。
【0010】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、サーボ情報を正確に読み出すことができるサーボパターンを形成可能な露光パターンを描画し得る描画方法、並びに、サーボ情報を正確に読み出すことができるサーボパターンを形成し得る情報記録媒体製造用原盤の製造方法および情報記録媒体の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく本発明に係る描画方法は、情報記録媒体製造用の凹凸パターンを形成するための樹脂層に描画用ビームを照射して、当該凹凸パターンを形成するための露光領域および非露光領域で構成された露光パターンを当該樹脂層に描画する際に、当該樹脂層が形成された基材を回転させつつ、当該基材の回転方向に沿って前記描画用ビームを前記樹脂層に照射することで前記露光領域における当該基材の半径方向の一部を描画する部分描画処理と、前記部分描画処理による描画位置を前記基材の回転中心に接近する方向および当該回転中心から離間する方向のいずれかに変更する描画位置変更処理とを複数回実行する描画方法であって、前記露光パターンのうちの位相サーボパターンにおける前記回転方向で並んだ一対の位相サーボ部のパターンをそれぞれ描画する際に、当該両パターンを構成する複数の当該露光領域および複数の当該非露光領域のうちの当該回転方向で並ぶ一組の当該露光領域および当該非露光領域の各半径位置毎の当該回転方向に沿った合計長をそれぞれ第1の長さとしたときに、前記両パターンのうちの一方の前記露光領域における前記回転方向と交差する辺の前記半径方向に対する交差角度と、前記両パターンのうちの他方の前記露光領域における前記回転方向と交差する辺の前記半径方向に対する交差角度との同一の半径位置における角度差が最大となる半径位置を含む領域内において、1つのサーボトラックにおける前記第1の長さの範囲内への前記描画用ビームの総照射量を当該第1の長さで除した第1の値が、同一の半径位置において、前記両パターンのうちの前記サーボトラック内の前記交差角度が小さいパターンよりも、当該両パターンのうちの当該サーボトラック内の前記交差角度が大きいパターンの方が大きくなるように前記部分描画処理および前記描画位置変更処理を実行する。
【0012】
なお、本明細書における「露光パターン」とは、ポジ型のレジスト等で樹脂層が形成されている場合においては、描画を完了した後の現像処理によって基材上から樹脂層が消失する領域の平面パターンを意味し、ネガ型のレジスト等で樹脂層が形成されている場合においては、現像処理によって基材上に樹脂層が残留する領域の平面パターンを意味する。
【0013】
また、本発明に係る描画方法は、前記角度差が最大となる半径位置を含む前記領域内において、1つのサーボトラックにおける前記第1の長さの範囲内に前記描画用ビームを照射するビーム照射距離の合計長を当該第1の長さで除した第2の値が、同一の半径位置において、前記交差角度が小さい前記パターンよりも、前記交差角度が大きい前記パターンの方が大きくなるように前記部分描画処理および前記描画位置変更処理を実行する。
【0014】
また、本発明に係る描画方法は、前記角度差が最大となる半径位置を含む前記領域内において、1つのサーボトラックにおける前記第1の長さの範囲内に前記描画用ビームを照射するビーム照射距離の1描画パス当りの合計長を当該第1の長さで除した第3の値が、同一の半径位置において、前記交差角度が小さいパターンよりも、前記交差角度が大きいパターンの方が大きくなるように前記部分描画処理および前記描画位置変更処理を実行する。なお、本明細書においては、「対象とする露光領域を描画するための部分描画処理の実行回数」を「描画パス数」という。したがって、「1描画パス当り」とは、「1つの露光領域を描画するための1回の部分描画処理当り」を意味する。
【0015】
さらに、本発明に係る描画方法は、前記角度差が最大となる半径位置を含む前記領域内において、1つのサーボトラックにおける前記第1の長さの範囲内への前記描画用ビームの描画パス数が、同一の半径位置において、前記交差角度が小さい前記パターンよりも、前記交差角度が大きい前記パターンの方が大きくなるように前記部分描画処理および前記描画位置変更処理を実行する。この場合、本明細書における「描画パス数」が上記した通りのため、例えば、描画対象パターンを構成する露光領域における2つのサーボトラック分の領域を3回の部分描画処理によって描画する場合、この露光領域における1つのサーボトラック分の領域を描画するための描画パス数は、1.5となる。
【0016】
また、本発明に係る描画方法は、前記角度差が最大となる半径位置を含む前記領域内において、1つのサーボトラックにおける前記第1の長さの範囲内への前記描画用ビームの照射時における前記回転方向の下流側に向かっての当該描画用ビームの偏向速度が、同一の半径位置において、前記交差角度が小さい前記パターンよりも、前記交差角度が大きい前記パターンの方が大きくなるように前記部分描画処理および前記描画位置変更処理を実行する。
【0017】
また、本発明に係る情報記録媒体製造用原盤の製造方法は、上記のいずれかの描画方法に従って前記樹脂層に前記露光パターンを描画した後に当該樹脂層に対して所定の処理を実行して前記凹凸パターンを形成して情報記録媒体製造用原盤を製造する。
【0018】
また、本発明に係る情報記録媒体の製造方法は、上記の情報記録媒体製造用原盤の製造方法によって製造した情報記録媒体製造用原盤に形成されている凹凸パターンを使用して情報記録媒体を製造する。
【0019】
なお、「凹凸パターンを使用する」との処理は、具体的には、「凹凸パターンの物理的形状を任意の材料に転写する処理」や、「凹凸パターンを利用した磁気転写処理によって凹凸パターンにおける凸部(または凹部)の平面パターンに対応する磁化パターンを転写する処理」を意味する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る描画方法では、露光パターンのうちの位相サーボパターンにおける回転方向で並んだ一対の位相サーボ部のパターンをそれぞれ描画する際に、両パターンを構成する複数の露光領域および複数の非露光領域のうちの回転方向で並ぶ一組の露光領域および非露光領域の各半径位置毎の回転方向に沿った合計長をそれぞれ第1の長さとしたときに、両パターンのうちの一方の露光領域における回転方向と交差する辺の半径方向に対する交差角度と、両パターンのうちの他方の露光領域における回転方向と交差する辺の半径方向に対する交差角度との同一の半径位置における角度差が最大となる半径位置を含む領域内において、1つのサーボトラックにおける第1の長さの範囲内への描画用ビームの総照射量を第1の長さで除した第1の値が、同一の半径位置において、両パターンのうちのサーボトラック内の交差角度が小さいパターンよりも、両パターンのうちのサーボトラック内の交差角度が大きいパターンの方が大きくなるように部分描画処理および描画位置変更処理を実行する。
【0021】
具体的には、角度差が最大となる半径位置を含む領域内において、1つのサーボトラックにおける第1の長さの範囲内に描画用ビームを照射するビーム照射距離の合計長を第1の長さで除した第2の値が、同一の半径位置において、交差角度が小さいパターンよりも、交差角度が大きいパターンの方が大きくなるように部分描画処理および描画位置変更処理を実行する描画方法と、角度差が最大となる半径位置を含む領域内において、1つのサーボトラックにおける第1の長さの範囲内に描画用ビームを照射するビーム照射距離の1描画パス当りの合計長を第1の長さで除した第3の値が、同一の半径位置において、交差角度が小さいパターンよりも、交差角度が大きいパターンの方が大きくなるように部分描画処理および描画位置変更処理を実行する描画方法と、角度差が最大となる半径位置を含む領域内において、1つのサーボトラックにおける第1の長さの範囲内への描画用ビームの描画パス数が、同一の半径位置において、交差角度が小さいパターンよりも、交差角度が大きいパターンの方が大きくなるように部分描画処理および描画位置変更処理を実行する描画方法と、角度差が最大となる半径位置を含む領域内において、1つのサーボトラックにおける第1の長さの範囲内への描画用ビームの照射時における回転方向の下流側に向かっての描画用ビームの偏向速度が、同一の半径位置において、交差角度が小さいパターンよりも、交差角度が大きいパターンの方が大きくなるように部分描画処理および描画位置変更処理を実行する描画方法とのいずれか、または、これらの描画方法を任意に組み合わせて露光パターンを描画する。
【0022】
したがって、本発明に係る描画方法によれば、回転方向で並んだ一対の位相サーボ部のパターンを構成する露光領域の半径方向に対する交差角度の同一半径位置における角度差が最大となる半径位置を含む領域内において、半径方向に対する交差角度が大きい露光領域で構成される一方を描画すべき部位に対して、半径方向に対する交差角度が小さい露光領域で構成される一方を描画すべき部位と同様に十分な量の描画用ビームを照射することができる。これにより、この描画方法によれば、上記の角度差が最大となる半径位置を含む領域内において、両位相サーボ部のパターンのうちの半径方向に対する交差角度が大きい一方における露光領域の回転方向に沿った長さが、半径方向に対する交差角度が小さい一方における露光領域の回転方向と同様にして、各半径位置毎の基準の長さに対して比例する本来的な長さとなっている露光パターンを描画することができるため、描画した露光パターンに対応して情報記録媒体製造用原盤に形成される凹凸パターンにおいて上記の両位相サーボ部のパターンに対応する部位の凹部や凸部の回転方向に沿った長さを、それぞれ各半径位置毎の本来的な長さとすることができる。
【0023】
また、本発明に係る情報記録媒体製造用原盤の製造方法によれば、上記のいずれかに記載の描画方法に従って樹脂層に露光パターンを描画した後に樹脂層に対して所定の処理を実行して凹凸パターンを形成して情報記録媒体製造用原盤を製造することにより、露光パターンに対応して情報記録媒体製造用原盤に形成される凹凸パターンや、その情報記録媒体製造用原盤を使用して製造される他の情報記録媒体製造用原盤の凹凸パターンにおいて、上記の両パターンに対応して形成される一対の位相サーボ部のパターンのうちの交差角度が大きいパターン構成する凹部(または、凸部)の回転方向に沿った長さを、交差角度が小さいパターン構成する凹部(または、凸部)の回転方向に沿った長さと同様にして、各半径位置毎の基準の長さに対して比例する本来的な長さとすることができる。これにより、製造した情報記録媒体製造用原盤を使用して製造される他の情報記録媒体製造用原盤や、製造した情報記録媒体製造用原盤を使用して製造される情報記録媒体の凹凸パターンにおいて、上記の両パターンに対応する一対の位相サーボ部のパターンのうちの交差角度が大きいパターンにおける凸部および凹部の回転方向に沿った長さを、交差角度が小さいパターンにおける凸部および凹部の回転方向に沿った長さと同様にして、各半径位置毎の基準の長さに対して比例する本来的な長さとすることができる。
【0024】
また、本発明に係る情報記録媒体の製造方法によれば、上記の情報記録媒体製造用原盤の製造方法によって製造した情報記録媒体製造用原盤に形成されている凹凸パターンを使用して情報記録媒体を製造することにより、情報記録媒体製造用原盤を使用して製造される情報記録媒体のサーボパターン(凹凸パターン)において上記の両位相サーボ部のパターンのうちの交差角度が大きいパターンにおける凸部および凹部の回転方向に沿った長さや、情報記録媒体製造用原盤を使用して製造される情報記録媒体のサーボパターン(磁化パターン)において上記の両位相サーボ部のパターンのうちの交差角度が大きいパターンにおける磁化領域の回転方向に沿った長さを、交差角度が小さいパターンと同様にして、各半径位置毎の基準の長さに対して比例する本来的な長さとすることができる結果、正確なトラッキングサーボを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】電子ビーム描画装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】露光パターンを描画する基材10の断面図である。
【図3】磁気ディスク15におけるデータ記録領域Atおよびサーボ領域Asと磁気ヘッド16との関係について説明するための説明図である。
【図4】電子ビーム描画装置1によって描画する露光パターンPの平面図である。
【図5】露光パターンPの外周領域ApoにおけるサーボパターンPSの位相サーボパターンPS5(位相サーボ部のパターンPS5a)について説明するための説明図である。
【図6】露光パターンPの中周領域ApcにおけるサーボパターンPSの位相サーボパターンPS5(位相サーボ部のパターンPS5a)について説明するための説明図である。
【図7】露光パターンPの内周領域ApiにおけるサーボパターンPSの位相サーボパターンPS5(位相サーボ部のパターンPS5a)について説明するための説明図である。
【図8】露光パターンPの外周領域ApoにおけるサーボパターンPSの位相サーボパターンPS5(位相サーボ部のパターンPS5b)について説明するための説明図である。
【図9】露光パターンPの中周領域ApcにおけるサーボパターンPSの位相サーボパターンPS5(位相サーボ部のパターンPS5b)について説明するための説明図である。
【図10】露光パターンPの内周領域ApiにおけるサーボパターンPSの位相サーボパターンPS5(位相サーボ部のパターンPS5b)について説明するための説明図である。
【図11】交差角度θ2が小さな露光領域A1(一例として、外周領域Apoにおける位相サーボ部のパターンPS5a)の描画方法の一例について説明するための説明図である。
【図12】交差角度θ2が大きな露光領域A1(一例として、外周領域Apoにおける位相サーボ部のパターンPS5b)の描画方法の一例について説明するための説明図である。
【図13】図14を参照して説明する位相サーボ部のパターンPS5a,PS5bの描画方法について説明するための説明図である。
【図14】位相サーボパターンPS5における位相サーボ部のパターンPS5a,PS5bの描画方法の一例について説明するための説明図である。
【図15】位相サーボパターンPS5における位相サーボ部のパターンPS5a,PS5bの描画方法の他の一例について説明するための説明図である。
【図16】位相サーボパターンPS5における位相サーボ部のパターンPS5a,PS5bの描画方法のさらに他の一例について説明するための説明図である。
【図17】位相サーボパターンPS5における位相サーボ部のパターンPS5a,PS5bの描画方法のさらに他の一例について説明するための説明図である。
【図18】位相サーボパターンPS5における位相サーボ部のパターンPS5a,PS5bの描画方法のさらに他の一例について説明するための説明図である。
【図19】実施例1および比較例1の露光パターンの位相サーボ部における両パターンの露光領域の回転方向に沿った長さの設計値(本来的な長さ)と、実測値(現像処理後の凹部の回転方向に沿った長さ)との差について説明するための説明図である。
【図20】露光パターンPを描画した基材10を現像して凹凸パターン21を形成した状態の原盤11の断面図である。
【図21】原盤11の凹凸パターン21に成膜層12aおよび電解ニッケル層12bを順に形成してスタンパー12を作製した状態の断面図である。
【図22】スタンパー12を使用してインプリント法によって磁気ディスク15を製造する工程を示す中間体15mおよびスタンパー12の断面図である。
【図23】スタンパー12の凹凸パターン22を樹脂層15cに転写した状態の中間体15mの断面図である。
【図24】凹凸パターン23が形成された樹脂層15cをマスクとして用いて記録層15bをエッチングした状態の磁気ディスク15の断面図である。
【図25】磁気ディスク35の製造に際してスタンパー32,32を使用して中間体35mにサーボパターンを磁気転写している状態の断面図である。
【図26】交差角度θ2が小さな露光領域A1axの描画方法の一例について説明するための説明図である。
【図27】交差角度θ2が大きな露光領域A1bxの描画方法の一例について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る描画方法、情報記録媒体製造用原盤の製造方法、および情報記録媒体の製造方法の実施の形態について説明する。
【0027】
最初に、電子ビーム描画装置1の構成、および電子ビーム描画装置1によって描画した露光パターンを使用して製造されるスタンパー12,32や磁気ディスク15,35の構成について、図面を参照して説明する。
【0028】
電子ビーム描画装置1(以下、「描画装置1」ともいう)は、図1に示すように、X−Y移動機構2、ターンテーブル3、ビーム発生部4、ブランキング制御部5、ビーム成形部6、ビーム偏向器7、制御部8および記憶部9を備えて構成されている。この描画装置1は、後述する描画方法に従って電子ビームEB(「描画用ビーム」の一例)を照射することにより、図4に示す露光パターンPなどの各種露光パターンを基材10に描画可能に構成されている。
【0029】
この場合、基材10は、スタンパー12(図21,22参照)や、スタンパー32(図25参照)を製造するための原盤11(「情報記録媒体製造用原盤」の一例:図20参照)を製作するための板体であって、図2に示すように、円板状のSiウエハ10aの表面に、厚み50nm程度の樹脂層10b(一例として、電子ビーム感光性を有するポジ型レジストを塗布して形成したレジスト層)が形成されて構成されている。また、図20に示すように、基材10を用いて製作される原盤11は、後述するようにして描画装置1によって基材10の樹脂層10bに描画された露光パターンP等を現像して形成した凹凸パターン21(「情報記録媒体製造用の凹凸パターン」の一例)を備えている。
【0030】
また、スタンパー12は、パターンド型の磁気ディスク15(図24参照)を製造するための原盤(「情報記録媒体製造用原盤」の他の一例である「インプリント用スタンパー」の一例)であって、図21,22に示すように、原盤11の凹凸パターン21をスタンパー形成材料に転写することによって形成した凹凸パターン22(「情報記録媒体製造用の凹凸パターン」の一例)を備えている。さらに、スタンパー32は、連続記録層型の磁気ディスク35(図25参照)を製造するための原盤(「情報記録媒体製造用原盤」のさらに他の一例である「磁気転写用スタンパー」の一例)であって、図25に示すように、原盤11の凹凸パターン21をスタンパー形成材料に転写することによって形成した凹凸パターン42(「情報記録媒体製造用の凹凸パターン」の他の一例)を備えている。
【0031】
また、スタンパー12を使用して製造される磁気ディスク15は、「情報記録媒体」の一例であって、図24に示すように、突端部側が磁性材料(記録層15b)で形成された複数の凸部と、隣り合う凸部の間の凹部とが形成されて、データトラックパターンやサーボパターンを構成する凹凸パターン24が形成されている。なお、実際の磁気ディスク15には、基材15aの裏面側にも凹凸パターン24が形成されているが、発明についての理解を容易にするために、基材15aの裏面側の図示を省略する。この磁気ディスク15は、磁気ディスク15を回転させるモータや(図示せず)、磁気ディスク15に対する記録データの記録再生を実行する磁気ヘッド16(図3参照)などと共に筐体内に収容されて、記録再生装置(ハードディスクドライブ)を構成する。
【0032】
この場合、図3に示すように、磁気ディスク15には、データ記録領域Atおよびサーボ領域Asが回転方向(矢印Rの向き)で交互に並んで設けられて、データ記録領域At内に上記の凹凸パターン24によってデータトラックパターンが形成されると共に、サーボ領域As内に上記の凹凸パターン24によってサーボパターンが形成されている。なお、本明細書では、回転方向において並ぶ2つの「データ記録領域」によって挟まれた領域(1つの「データ記録領域」における回転方向に対して下流側の端部から、他の1つの「データ記録領域」における回転方向に対して上流側の端部までの間の領域)を「サーボ領域」とする。また、「データ記録領域」における回転方向側の端部は、そのデータ記録領域に形成された複数の「データ記録トラック」における回転方向側の各端部を連結した仮想線分と一致しているものとする。この場合、この磁気ディスク15には、一例として、1トラックにつき(磁気ディスク15の1周当りに)200箇所のサーボ領域Asが設けられている。
【0033】
また、この磁気ディスク15は、記録再生装置に搭載された状態において角速度一定で回転させられる。したがって、この磁気ディスク15では、単位時間当たりに磁気ヘッド16の下方を通過させられる磁気ディスク15上の長さに比例して、データ記録領域Atやサーボ領域Asの回転方向に沿った長さがサーボパターンやデータトラックパターンの中心から離間するほど長くなるように規定されている。この結果、データ記録領域At内に形成されたデータ記録トラック(凸部)における突端面の回転方向に沿った長さ、およびデータ記録領域At内に形成されたトラック間凹部における開口部の回転方向に沿った開口長や、サーボ領域As内に形成されたサーボパターン用の同種の各凸部における突端面の回転方向に沿った長さ、およびサーボパターン用の同種の各凹部の回転方向に沿った開口長は、磁気ディスク15の内周側領域よりも外周側領域ほど長くなっている。
【0034】
さらに、図3に示すように、磁気ディスク15に対する磁気的信号の読出しや書込みを実行するための磁気ヘッド16は、回動中心16oを中心として矢印Sの向きに回動させられるアーム16aの先端部(アーム16aの先端部に設けられたスライダの底面)に配設されている。したがって、このような磁気ヘッド16を使用して磁気的信号の読出しや書込みが実行される磁気ディスク15では、サーボパターンにスキュー角が付与がされている。この場合、各パターンに付与されるスキュー角は、一例として、中周領域Acにおける中周部を中心として、外周領域Aoにおける外周側ほど大きく、かつ、内周領域Aiにおける内周側ほど大きくなるように規定されている。なお、本明細書においては、「スキュー角」に関して、ディスクの半径方向に対する角度成分で表現する。したがって、ディスクの半径方向と平行な方向のスキュー角を「スキュー角=0°」という。
【0035】
また、スタンパー32を使用して製造される磁気ディスク35は、「情報記録媒体」の他の一例であって、図25に示すように、軟磁性層35b、配向層35cおよび記録層35dが基材35aの表裏両面にこの順でそれぞれ形成されると共に、スタンパー32を使用した磁気転写処理によって両記録層35dにサーボパターンが磁気的にそれぞれ転写されて構成されている。この磁気ディスク35は、磁気ディスク35を回転させるモータ(図示せず)や、磁気ディスク35に対する記録データの記録再生を実行する磁気ヘッド(図示せず)などと共に筐体内に収容されて、記録再生装置(ハードディスクドライブ)を構成する。
【0036】
この場合、磁気ディスク35には、データ記録領域およびサーボ領域が回転方向で交互に並んで設けられて、サーボ領域内にサーボパターンが記録されて(磁化パターンが転写されて)いる。また、この磁気ディスク35は、上記の磁気ディスク15と同様にして、記録再生装置に搭載された状態において角速度一定で回転させられる。したがって、この磁気ディスク35では、上記の磁気ディスク15と同様にして、単位時間当たりに磁気ヘッドの下方を通過させられる磁気ディスク35上の長さに比例して、データ記録領域やサーボ領域の回転方向に沿った長さがサーボパターンやデータトラックの中心から離間するほど長くなるように規定されている(図示せず)。この結果、サーボ領域内に記録されたサーボパターンにおける同種の各磁化領域の回転方向に沿った長さは、磁気ディスク35の内周側領域よりも外周側領域ほど長くなっている。
【0037】
さらに、磁気ディスク35に対する磁気的信号の読出しや書込みを実行するための磁気ヘッドは、磁気ディスク15に対する磁気的信号の読出しや書込みを実行するための磁気ヘッド16と同様にして、回動中心を中心として回動させられるアームの先端部(アームの先端部に設けられたスライダの底面)に配設されている(図示せず)。したがって、このような磁気ヘッドを使用して磁気的信号の読出しや書込みが実行される磁気ディスク35では、サーボパターンにおける各磁化領域にスキュー角が付与がされている。
【0038】
一方、X−Y移動機構2は、制御部8の制御に従い、ターンテーブル3(回転機構)によって回転させられている基材10の回転面に沿ってターンテーブル3を移動させる(「描画位置変更処理」の一例)。ターンテーブル3は、基材10を載置可能に構成されると共に、制御部8の制御に従って基材10を所定の回転速度で回転させる。また、ターンテーブル3は、その内部でテーブルの回転に同期して生成する信号に基づいて基材10の回転に同期した基準信号S0を生成して、一例として、基材10を一回転させる間に基準信号S0を複数回に亘って出力する。この場合、ターンテーブル3は、一例として、基材10の一回転当りに、磁気ディスク15の一周当りにおけるサーボ領域の数と同数の基準信号S0を出力する。
【0039】
ビーム発生部4は、樹脂層10bに露光パターンP等を描画するための電子ビームEBを生成して出力する。ブランキング制御部5は、ビーム発生部4と相俟って「ビーム照射部」を構成し、制御部8の制御に従い、ビーム発生部4からの電子ビームEBの出力をON/OFF制御(ブランキング制御)する。ビーム成形部6は、ビーム成形レンズおよびアパーチャ(図示せず)などを備えて、ブランキング制御部5を通過した電子ビームEBを成形(細径化)する。この場合、この描画装置1では、その有効描画幅が露光パターンP等を構成する各露光領域A1(図4参照)の半径方向に沿った幅や回転方向に沿った長さよりも十分に狭い電子ビームEBを照射して露光パターンPを描画する。
【0040】
ビーム偏向器7は、制御部8の制御に従って電子ビームEBを偏向することによって樹脂層10bに対する照射位置を変化させる。この場合、この描画装置1では、後述するように、ビーム偏向器7が制御部8の制御に従って電子ビームEBを基材10の半径方向に偏向することで、「部分描画処理による描画位置」を基材10の回転中心に接近する方向(または、回転中心から離間する方向)に変更する(「描画位置変更処理」の他の一例)。また、この描画装置1では、後述するように、露光パターンP等の一部の描画に際して、ビーム偏向器7が制御部8の制御に従って電子ビームEBを基材10の回転方向に沿って偏向する処理を実行する。
【0041】
制御部8は、記憶部9に記憶されている描画手順データDPに従い、X−Y移動機構2を制御してターンテーブル3と共に基材10を移動させると共に、ターンテーブル3を制御して所定の線速度で基材10を回転させる。また、制御部8は、ターンテーブル3から出力される基準信号S0に応じて、ビーム発生部4、ブランキング制御部5およびビーム偏向器7を制御することにより、ターンテーブル3によって回転させられている基材10の樹脂層10bにおける所定の位置に電子ビームEBを照射させて、露光パターンP等を構成する露光領域A1における半径方向の一部を描画する処理(「部分描画処理」の一例)を実行する。
【0042】
記憶部9は、基材10に描画すべき露光パターンP等の描画手順を特定可能な描画手順データDPを記憶する。この場合、描画手順データDPは、制御部8が描画装置1の各部を制御して、後述する「第1の描画方法」から「第3の描画方法」までの各描画方法のいずれか(または、複数の組み合わせ)によって露光パターンPを描画するのに必要な情報で構成されている。具体的には、描画手順データDPには、描画処理時に基材10をどのような回転速度で回転させるべきかを特定可能なデータと、基準信号S0が出力されてからブランキング制御部5に対して電子ビームEBの照射を開始させるまでの待機時間、および電子ビームEBの照射を停止させるまでの待機時間を各サーボパターン毎に特定可能な情報と、ビーム偏向器7によって電子ビームEBをどのように偏向すべきかを特定可能なデータと、移動機構2によってターンテーブル3をどのように移動させるべきかを特定可能なデータとが記録されている。
【0043】
次に、描画装置1によって描画する露光パターンPについて、図面を参照して説明する。
【0044】
図4に示す露光パターンPは、磁気ディスク15を製造するためのスタンパー12に形成すべき凹凸パターン22や、磁気ディスク35を製造するためのスタンパー32に形成すべき凹凸パターン42(すなわち、スタンパー12,32を製造するための原盤11に形成すべき凹凸パターン21)に対応して露光領域A1および非露光領域A2が規定されている。具体的には、本例では、原盤11における凹凸パターン21の各凹部(すなわち、スタンパー12,32における凹凸パターン22,42の各凸部)に対応して露光領域A1が規定されると共に、原盤11における凹凸パターン21の各凸部(すなわち、スタンパー12,32における凹凸パターン22,42の各凹部)に対応して非露光領域A2が規定されている なお、実際には、インプリント用のスタンパー12を製造するために原盤11に形成すべき凹凸パターン21と、磁気転写用のスタンパー32を製造するために原盤11に形成すべき凹凸パターン21とは、スタンパー12,32に求められる機能に応じて相違する場合もあるが、本明細書では、「描画方法」や「製造方法」についての理解を容易とするために、これらを区別せずに説明する。
【0045】
また、本明細書における「露光領域A1」とは、ポジ型のレジスト等で樹脂層10bが形成されているこの例においては、描画を完了した後の現像処理によってSiウエハ10a上から樹脂層10bが消失する領域と一致する領域を意味し、樹脂層10bに代えてネガ型のレジスト等で樹脂層を形成した場合においては、現像処理によってSiウエハ10a上に樹脂層が残留する領域と一致する領域を意味する。さらに、本明細書における「非露光領域A2」とは、描画用ビーム(この例では、電子ビームEB)が照射されない領域だけでなく、上記の露光領域A1に対する照射に伴って描画用ビームが僅かに照射されるものの、現像後において描画用ビームが照射されない領域と同様の状態となる領域を含む。具体的には、ポジ型のレジスト等で樹脂層10bが形成されているこの例においては、描画用ビームが照射されない領域と同様にして現像後にSiウエハ10a上に樹脂層10bが残留する領域を意味し、樹脂層10bに代えてネガ型のレジスト等で樹脂層を形成した場合においては、描画用ビームが照射されない領域と同様にして現像時にSiウエハ10a上から樹脂層が消失する領域を意味する。
【0046】
この場合、磁気ディスク15,35のサーボパターンは、一例として、プリアンブルパターン(オートゲインコントロールパターン)、サーボアドレスマークパターン(サーボマークパターン)、セクターアドレスパターン、トラックアドレスパターン、および位相サーボパターンが回転方向における上流側からこの順で形成されると共に、位相サーボパターンとデータ記録領域Atとの間にはパッド領域が規定されて、一例として、プリアンブルパターンと同様のパターンがパッド領域用パターン(ポストアンブルパターン、ギャップパターン)として形成されている(図示せず)。また、磁気ディスク15,35の位相サーボパターンは、一例として、ディスクの半径方向に対する交差の向き(傾斜の向き)が互いに相違する一対のパターン(「位相サーボ部のパターン」:傾斜パターン)で構成されている(図示せず)。なお、パッド領域(パッド領域用パターンを形成する領域)については、位相サーボパターンとデータ記録領域Atとの間(サーボパターンの回転方向における下流側の端部)に限定されず、例えば、トラックアドレスパターンと位相サーボパターンとの間に規定される場合もある。
【0047】
一方、図4に示すように、スタンパー12を製造するための露光パターンPは、磁気ディスク15の上記の各サーボパターンに対応して、基材10の回転方向(矢印Rの向き)においてデータトラックパターンPTおよびサーボパターンPSが交互に並ぶように規定されている。また、スタンパー32を製造するための露光パターンPは、データトラックパターンPTが存在しない点を除き、スタンパー12を製造するための露光パターンPと同様にサーボパターンPSが規定されている。したがって、以下、主としてスタンパー12を製造するための露光パターンPの描画方法について説明する。
【0048】
この場合、サーボパターンPSは、プリアンブルパターンPS1、サーボアドレスマークパターンPS2、セクターアドレスパターンPS3、トラックアドレスパターンPS4、位相サーボパターンPS5(位相サーボ部のパターンPS5a,PS5b)およびパッド領域用パターンPS6が回転方向における下流側からこの順で規定されている。なお、図4、および後に参照する図5〜12では、各露光領域A1を左下がりの斜線で塗り潰すと共に、各非露光領域A2を白色で図示している。また、図4〜10では、サーボトラックSTにおける半径方向の端部(半径方向において隣り合うサーボトラックST,STの境界)を破線で図示している。この場合、各サーボトラックSTの幅は、内周から外周までの全域において互いに等しい幅となっている。
【0049】
また、この露光パターンPに対応して形成される磁気ディスク15,35の各サーボパターンについては、前述したように、中周領域Acの中周部から外周領域Aoの外周側に向かうほど大きく、また、中周領域Acの中周部から内周領域Aiの内周側に向かうほど大きなスキュー角を付与する必要がある。このため、例えば、磁気ディスク15,35のサーボパターンに対応するサーボパターンPSの描画に際しては、外周領域における外周側ほど大きなスキュー角θ1を付与すると共に、内周領域における内周側ほど大きなスキュー角θ1を付与して各パターンPS1〜PS6の露光領域A1を描画する必要がある。
【0050】
この場合、図26に示すように、回転方向と交差する両辺の半径方向に対する交差角度θ2が小さな露光領域A1axについては、原盤の回転方向(同図に示す矢印Rの向き)に沿って、例えば、原盤の1回転目に開始位置P1Sxから停止位置P1Exまで長さLxに亘って電子ビームを照射し、原盤の2回転目以降において、開始位置P2Sx〜P4Sxから停止位置P2Ex〜P4Exまで長さLxに亘って電子ビームをそれぞれ照射したときに、原盤の2回転目以降に生じる多重露光に起因して、開始位置P1Sx〜P4Sxの近傍や、停止位置P1Ex〜P4Exの近傍(すなわち、回転方向の端部領域)についても十分な露光状態となる。これに対して、図27に示すように、回転方向と交差する両辺の半径方向に対する交差角度θ2が大きな露光領域A1bxについては、上記の露光領域A1axの描画時と同様に開始位置P1Sx〜P4Sxから停止位置P1Ex〜P4Exまで長さLxに亘って電子ビームをそれぞれ照射したときに、各帯状領域の位置を原盤の回転方向に沿って大きく変更していることに起因して、開始位置P1Sx〜P4Sxの近傍や、停止位置P1Ex〜P4Exの近傍(すなわち、回転方向の端部領域)において、原盤の2回転目以降に生じる多重露光の影響が小さくなる可能性がある。
【0051】
一方、本例の露光パターンP(サーボパターンPS)は、図6,9に示すように、付与すべきスキュー角θ1が0°の中周領域Apcの中周部において、位相サーボパターンPS5における両パターンPS5a,PS5bを構成する各露光領域A1の回転方向と交差する両辺が基材10の半径方向に対して互いに等しい交差角度θ2(一例として、交差角度θ2=52.6°)でそれぞれ交差するように斜めに描画される。この場合、位相サーボパターンPS5は、パターンPS5aを構成する各露光領域A1および各非露光領域A2のうちの回転方向で並ぶ一組の露光領域A1および非露光領域A2のそれぞれの回転方向に沿った長さの比と、パターンPS5bを構成する各露光領域A1および各非露光領域A2のうちの回転方向で並ぶ一組の露光領域A1および非露光領域A2のそれぞれの回転方向に沿った長さの比とが互いに等しくなっている。なお、本例の位相サーボパターンPS5におけるパターンPS5a,PS5bは、同一半径位置における露光領域A1の回転方向に沿った長さが互いに等しく、かつ、同一半径位置における非露光領域A2の回転方向に沿った長さが互いに等しくなるように(すなわち、露光領域A1の回転方向に沿った長さと非露光領域A2の回転方向に沿った長さとの合計長である「第1の長さ」が同一半径位置において等しくなるように)描画される。
【0052】
また、本例の露光パターンPでは、図5,8、および図7,10に示すように、回動中心16oを中心として回動させられる磁気ヘッド16の軌跡に合わせて、上記の中周領域Apcにおける中周部を中心として、サーボパターンPSに対して付与されるスキュー角θ1の傾斜の向きが相違している。このため、図5〜7に示すように、回転方向の上流側から下流側に向かうほど外周側に位置するように露光領域A1が斜めに描画されるパターンPS5aでは、内周領域Apiの内周側ほど上記の交差角度θ2がやや大きくなり(外周領域Apoの外周側ほど交差角度θ2がやや小さくなり)、図8〜10に示すように、回転方向の上流側から下流側に向かうほど内周側に位置するように露光領域A1が斜めに描画されるパターンPS5bでは、外周領域Apoの外周側ほど上記の交差角度θ2が大きくなる(内周領域Apiの内周側ほど交差角度θ2が小さくなる)。
【0053】
したがって、両位相サーボ部のパターンPS5a,PS5bの描画に際して、外周領域Apoから内周領域Apiまでの全域において、1つのサーボトラックSTにおける「回転方向で並ぶ一組の露光領域A1および非露光領域A2の各半径位置毎の回転方向に沿った合計長(第1の長さ)」の範囲内への電子ビームEBの総照射量を「第1の長さ」で除した「第1の値」が、同一半径位置の両位相サーボ部のパターンPS5a,PS5bにおいて互いに等しくなるように位相サーボパターンPS5を描画したとき(露光領域A1の回転方向に沿った長さが同一半径位置において等しいパターンPS5a,PS5bを描画する例においては、同一半径位置における電子ビームEBの照射距離が互いに等しくなるように各半径位置毎に照射距離を規定して位相サーボパターンPS5を描画したとき:以下、このような描画については、「第1の値が互いに等しくなるように照射量を規定して描画したとき」ともいう)には、露光領域A1における回転方向と交差する両辺の近傍(回転方向の端部領域)における多重露光の影響の度合いが、回転方向と交差する両辺の半径方向に対する交差角度θ2の相違に応じてパターンPS5aおよびパターンPS5bの間で相違する半径位置が生じることとなる。なお、本明細書では、対象物に照射される電子ビームEBの電流値に、電子ビームEBの照射時間を乗じた値を「電子ビームEBの総照射量」とする。
【0054】
このため、同一半径位置のパターンPS5a,PS5bについての第1の値が互いに等しくなるように各半径位置毎(各サーボトラックST毎)に照射量を規定して位相サーボパターンPS5を描画したときに、同一半径位置のパターンPS5a,PS5bにおける露光領域A1の交差角度θ2が互いに等しい中周領域Apcにおける中周部においては、両パターンPS5a,PS5bにおける露光領域A1の回転方向に沿った長さが互いに等しくなる。これに対して、同一半径位置のパターンPS5a,PS5bにおける露光領域A1の交差角度θ2が互いに相違する外周領域Apoや内周領域Api、および中周領域Apcにおける外周領域Apo側や中周領域Apcにおける内周領域Api側の部位においては、両パターンPS5a,PS5bにおける露光領域A1のうちの回転方向と交差する両辺の半径方向に対する交差角度θ2が大きい露光領域A1の回転方向に沿った長さが、両位相サーボ部のパターンPS5a,PS5bにおける露光領域A1のうちの回転方向と交差する両辺の半径方向に対する交差角度θ2が小さい露光領域A1の回転方向に沿った長さよりも短くなる(その露光領域A1で構成されるパターンにおける半径位置毎の回転方向に沿った基準の長さに対して比例する本来的な長さよりも短くなる)。
【0055】
この結果、第1の値が互いに等しくなるように照射量を規定して位相サーボパターンPS5を描画したときには、パターンPS5bの外周領域Apoにおいて基材10の回転方向で並ぶ一組の露光領域A1および非露光領域A2の回転方向に沿った合計長である長さL3o(長さL1o+長さL2o:「第1の長さ」)に占める露光領域A1の回転方向に沿った長さL1oの割合が、パターンPS5aの外周領域Apoにおいて基材10の回転方向で並ぶ一組の露光領域A1および非露光領域A2の回転方向に沿った合計長である長さL3o(「第1の長さ」)に占める露光領域A1の回転方向に沿った長さL1oの割合よりも小さくなる現象が生じる。
【0056】
また、パターンPS5aの内周領域Apiにおいて基材10の回転方向で並ぶ一組の露光領域A1および非露光領域A2の回転方向に沿った合計長である長さL3i(長さL1i+長さL2i:「第1の長さ」)に占める露光領域A1の回転方向に沿った長さL1iの割合が、パターンPS5bの内周領域Apiにおいて基材10の回転方向で並ぶ一組の露光領域A1および非露光領域A2の回転方向に沿った合計長である長さL3i(「第1の長さ」)に占める露光領域A1の回転方向に沿った長さL1iの割合よりも小さくなる現象が生じる。つまり、このような描画方法に従って位相サーボパターンPS5を描画したときには、外周領域Apoや内周領域Apiにおいて、両位相サーボ部のパターンPS5a,PS5bのうちの交差角度θ2が大きい一方の露光領域A1における回転方向に沿った長さが、その露光領域A1で構成されるパターンにおける半径位置毎の回転方向に沿った基準の長さに対して比例する本来的な長さよりも短い位相サーボパターンPS5が描画されることとなる。
【0057】
したがって、この電子ビーム描画装置1による露光パターンPの描画に際しては、両位相サーボ部のパターンPS5a,PS5bのうちの一方の露光領域A1における回転方向と交差する辺の半径方向に対する交差角度θ2と、両パターンPS5a,PS5bのうちの他方の露光領域A1における回転方向と交差する辺の半径方向に対する交差角度θ2との同一の半径位置における角度差が最大となる半径位置(例えば、最外周の半径位置)を含む領域内(例えば、交差角度θ2の差の絶対値が10°以上の領域)において、1つのサーボトラックSTにおける「第1の長さ」の範囲内への電子ビームEBの総照射量を「第1の長さ」で除した「第1の値」が、同一の半径位置において、両パターンPS5a,PS5bのうちのサーボトラックST内の交差角度θ2が小さいパターンPS5a,PS5b(この例では、外周領域ApoのパターンPS5a)よりも、両パターンPS5a,PS5bのうちのサーボトラックST内の交差角度θ2が大きいパターンPS5a,PS5b(この例では、外周領域ApoのパターンPS5b)の方が大きくなるように「部分描画処理」および「描画位置変更処理」を交互に実行する。
【0058】
次いで、描画装置1による露光パターンPの描画方法について、図面を参照して説明する。
【0059】
露光パターンPの描画に際しては、まず、樹脂層10bの形成面を上向きにして基材10をターンテーブル3の上に載置する。この状態において、描画処理の開始が指示されると、制御部8は、まず、描画手順データDPに従い、ターンテーブル3を制御して、定められた回転速度で基材10を回転させる。次いで、制御部8は、X−Y移動機構2を制御してターンテーブル3を基材10の載置面に沿って移動させることで基材10を移動させて、基材10に対する露光パターンPの描画開始位置がビーム発生部4の下方に位置するように位置決めする。この場合、この描画装置1では、一例として、その外周領域Apoから露光パターンPの描画を開始する。したがって、制御部8は、X−Y移動機構2を制御して、基材10の外周部がビーム発生部4の下方に位置するように半径方向の位置決めを行う。次に、制御部8は、ターンテーブル3によって基準信号S0が出力されたか否かを監視すると共に、基準信号S0が出力されたときには、描画手順データDPに従い、データトラックパターンPTおよびサーボパターンPSにおける外周側の一部の描画を開始する。
【0060】
この際に、制御部8は、一例として、基準信号S0が出力された時点から露光パターンPにおいて最初に描画すべき露光領域A1の描画を開始する時点が到来するまでの時間だけ待機した後に、ブランキング制御部5に電子ビームEBのON/OFF制御を開始させる。同時に、制御部8は、ビーム偏向器7を制御して、描画すべき露光領域A1に応じて電子ビームEBを偏向させる。これにより、露光領域A1とすべき部位に電子ビームEBが照射されて露光パターンPにおける半径方向の一部が描画される(「部分描画処理」の一例)。この後、制御部8は、露光パターンPにおける2つ目以降の露光領域A1についても同様にして描画することにより、露光パターンPにおける外周側の一部(半径方向の一部)を基材10の1回転に亘って描画する。
【0061】
次いで、制御部8は、基材10の2回転目において、露光パターンPにおける各露光領域A1の最外周部よりも内周側の部位を描画する(「基材の回転中心に接近する方向」に描画位置を変更する描画方法の一例)。なお、内周領域Apiから露光パターンPの描画を開始した場合には、基材10の2回転目において、露光パターンPにおける各露光領域A1の最内周部よりも外周側の部位を描画する(「基材の回転中心から離間する方向」に描画位置を変更する描画方法の一例)。この際に、制御部8は、描画手順データDPに従ってビーム偏向器7を制御して、電子ビームEBの照射位置(「部分描画処理」の描画位置)を基材10の1回転目における照射位置よりも内周側に移動させる(「描画位置変更処理」の一例)。これにより、露光パターンPにおける最外周部よりも内周側の一部(半径方向の他の一部)が基材10の1回転に亘って描画される。この後、制御部8は、基材10の3回転目以降においても、上記の2回転目の描画処理と同様にして露光パターンPの各露光領域A1における半径方向の一部を描画する処理を繰り返して実行する。これにより、各露光領域A1を描画すべき領域の外周側から内周側までの全域に対する電子ビームEBの照射が完了し、露光パターンPが描画される。
【0062】
この場合、両パターンPS5a,PS5bのうちの一方の露光領域A1における回転方向と交差する辺の半径方向に対する交差角度θ2と、両パターンPS5a,PS5bのうちの他方の露光領域A1における回転方向と交差する辺の半径方向に対する交差角度θ2との同一の半径位置における角度差が最大となる半径位置を含む領域内において、1つのサーボトラックSTにおける「第1の長さ」の範囲内への電子ビームEBの総照射量を「第1の長さ」で除した「第1の値」が、同一の半径位置において、両パターンPS5a,PS5bのうちのサーボトラックST内の交差角度θ2が小さいパターンよりも、両パターンPS5a,PS5bのうちのサーボトラックST内の交差角度θ2が大きいパターンの方が大きくなるとの条件を満たすには、一例として、次の各描画方法のうちのいずれか、または、複数の描画方法を組み合わせて露光パターンP(サーボパターンPS)を描画すればよい。
【0063】
第1の描画方法では、「交差角度θ2の角度差が最大となる半径位置」を含む領域内において、1つのサーボトラックSTにおける「第1の長さ」の範囲内に電子ビームEBを照射するビーム照射距離の合計長を「第1の長さ」で除した「第2の値」が、同一の半径位置において、交差角度θ2が小さいパターンよりも、交差角度θ2が大きいパターンの方が大きくなるように「部分描画処理」および「描画位置変更処理」を実行するとの描画方法の一例として、「交差角度θ2の角度差が最大となる半径位置」を含む領域内において、1つのサーボトラックSTにおける「第1の長さ」の範囲内に電子ビームEBを照射するビーム照射距離の1描画パス当りの合計長を「第1の長さ」で除した「第3の値」が、同一の半径位置において、交差角度θ2が小さいパターンよりも、交差角度θ2が大きいパターンの方が大きくなるように「部分描画処理」および「描画位置変更処理」を実行する。
【0064】
具体的には、パターンPS5aやパターンPS5b内の1つの露光領域A1を描画するための「部分描画処理」に際して、基材10(樹脂層10b)に対して電子ビームEBを1回照射する描画方法(1回の「部分描画処理」に対応させて、電子ビームEBの照射を開始すべき開始位置、および電子ビームEBの照射を停止すべき停止位置をそれぞれ1箇所ずつ規定している描画方法:1回の「部分描画処理」において電子ビームEBを連続的に照射する描画方法)では、同一半径位置の両パターンPS5a,PS5bにおける露光領域A1の交差角度θ2の角度差が最大となる半径位置(外周領域Apoの最外周部や、内周領域Apiの最内周部の半径位置)を含む領域内において、同一半径位置の両パターンPS5a,PS5bのうちの交差角度θ2が大きい一方の描画時における回転方向に沿った電子ビームEBの照射距離の方が、交差角度θ2が小さい一方の描画時における回転方向に沿った電子ビームEBの照射距離よりも長くなるように電子ビームEBの照射開始位置や照射停止位置をそれぞれ規定して基材10(樹脂層10b)に電子ビームEBを照射する。
【0065】
この第1の描画方法の一例を図11,12を参照してさらに具体的に説明する。この場合、両図は、位相サーボパターンPS5において両パターンPS5a,PS5bの交差角度θ2の角度差が最大となる外周領域Apoにおける同一半径位置のパターンPS5a,PS5bを描画する際の手順を例示したものであり、図11は、パターンPS5aの露光領域A1(交差角度θ2が小さい露光領域A1の一例)の描画手順を示し、図12は、パターンPS5bの露光領域A1(交差角度θ2が大きい露光領域A1の一例)の描画手順を示している。図11に示すように、交差角度θ2が小さいパターンPS5aを構成する露光領域A1の描画については、開始位置P1Sa〜P4Saから停止位置P1Ea〜P4Eaまで原盤の回転方向に沿って長さLaだけ電子ビームEBを照射する。また、図12に示すように、交差角度θ2が大きいパターンPS5bを構成する露光領域A1の描画については、開始位置P1Sb〜P4Sbから停止位置P1Eb〜P4Ebまで原盤の回転方向に沿って上記の長さLaよりも長い長さLbだけ電子ビームEBを照射する。これにより、交差角度θ2が大きいパターンPS5bの露光領域A1の回転方向に沿った長さが、交差角度θ2が小さいパターンPS5aの露光領域A1の回転方向に沿った長さと同様にして、半径位置毎の回転方向に沿った基準の長さに対して比例する本来的な長さL1となる。なお、本例では、パターンPS5a,PS5bの両露光領域A1の回転方向に沿った長さが互いに等しい長さL1となる。
【0066】
この場合、図14,15は、この第1の描画方法に従って位相サーボパターンPS5を描画する際の具体的な描画手順の一例を表す図である。なお、図14〜18では、各半径領域の代表の半径位置を最左部に示している。例えば、図14におけるパターンPS5a(エリアA)の「半径位置26.5mm(26.5〜27.0mm)」についての描画手順を示す行は、「スキュー角」、「半径方向に対する交差角度」、「※3:一組の露光領域および非露光領域の回転方向に沿った合計長」、「1描画パス当りの照射時間」、「1描画パス当りの照射距離」、「1サーボトラック当りの照射量」および「※9:交差角度の差の絶対値」が、「半径位置26.5mm」の半径位置に固有の値で、その他の値については、「半径位置26.5〜27.0mm」の範囲において共通していることを示している。
【0067】
また、例えば、図14,15に示す描画方法の例においては、半径位置=27.0mmが、パターンPS5a,PS5bの露光領域A1の交差角度θ2の角度差が最大の半径位置となっており、この例では、この半径位置=27.0mmを含む半径位置=21.8〜27.0mmの範囲(交差角度θ2の角度差がある程度大きな領域)が「角度差が最大の半径位置を含む領域」に相当する。この場合、上記の半径位置=21.8〜27.0mmの範囲においては、パターンPS5aが「交差角度が小さいパターン」に相当し、パターンPS5bが「交差角度が大きいパターン」に相当する。
【0068】
また、図14,15の例では、半径位置=15.5mmも、パターンPS5a,PS5bの露光領域A1の交差角度θ2の角度差が、上記の半径位置=27.0mmにおける交差角度θ2の角度差と同程度となっている。したがって、図14の例では、半径位置=15.5mmを含む半径位置=15.5〜19.0mmの範囲(交差角度θ2の角度差がある程度大きな領域)も「角度差が最大の半径位置を含む領域」と同様に位相サーボパターンPS5が描画される。この場合、上記の半径位置=15.5〜19.0mmの範囲においては、パターンPS5bが「交差角度が小さいパターン」であり、パターンPS5aが「交差角度が大きいパターン」である。なお、後に説明する図16,18の例においても、「角度差が最大の半径位置を含む領域」、「交差角度が小さいパターン」および「交差角度が大きいパターン」は、図14の例における位相サーボパターンPS5と同様となっている。
【0069】
この場合、図14,15の例では、1つのサーボトラックSTにおける「第1の長さ(「※3」の長さ:図5,8に示す長さL3oや、図7,10に示す長さL3i等)」の範囲内に電子ビームEBを照射するビーム照射距離の合計長を「第1の長さ」で除した「第2の値(「※6」の4倍(4パス分)の値)」に関し、交差角度θ2が小さいパターン(外周領域ApoにおいてはパターンPS5aで、内周領域ApiにおいてはパターンPS5b)よりも、交差角度θ2が大きいパターン(外周領域ApoにおいてはパターンPS5bで、内周領域ApiにおいてはパターンPS5a)の方が大きくなるように描画条件が規定されている。
【0070】
また、両図の例では、1つのサーボトラックSTにおける上記の「第1の長さ」の範囲内に電子ビームEBを照射するビーム照射距離の1描画パス当りの合計長を「第1の長さ」で除した「第3の値(同図に示す「※6」の値)」に関し、交差角度θ2が小さいパターン(外周領域ApoにおいてはパターンPS5aで、内周領域ApiにおいてはパターンPS5b)よりも、交差角度θ2が大きいパターン(外周領域ApoにおいてはパターンPS5bで、内周領域ApiにおいてはパターンPS5a)の方が大きくなるように描画条件が規定されている。
【0071】
これにより、これらの例では、上記の「交差角度θ2の角度差が最大となる半径位置を含む領域」内において、1つのサーボトラックSTにおける「第1の長さ」の範囲内への電子ビームEBの総照射量を「第1の長さ」で除した「第1の値(「※7」の値)」が、交差角度θ2が小さいパターン(外周領域ApoにおいてはパターンPS5aで、内周領域ApiにおいてはパターンPS5b)よりも、交差角度θ2が大きいパターン(外周領域ApoにおいてはパターンPS5bで、内周領域ApiにおいてはパターンPS5a)の方が大きくなっている。この結果、図13に示すように、この例では、パターンPS5a,PS5bにおける上記の「第1の値」の差の絶対値(「※8」の値)が、交差角度θ2の角度差の絶対値(「※9」の値)の大きさに応じて多段階に相違している。なお、図13は、図14に示す例についての値を図示している。
【0072】
また、パターンPS5aやパターンPS5b内の1つの露光領域A1を描画するための「部分描画処理」に際して、基材10(樹脂層10b)に対して電子ビームEBを複数回照射する描画方法(1回の「部分描画処理」に対応させて開始位置および停止位置をそれぞれ2箇所以上の複数箇所規定している描画方法:1回の「部分描画処理」において電子ビームEBを基材10の回転方向に沿って断続的に照射する描画方法)では、同一半径位置の両パターンPS5a,PS5bにおける露光領域A1の交差角度θ2の角度差が最大となる半径位置(外周領域Apoの最外周部や、内周領域Apiの最内周部の半径位置)を含む領域内において、同一半径位置の両パターンPS5a,PS5bのうちの交差角度θ2が大きい一方の描画時における回転方向に沿った電子ビームEBの照射距離の合計長の方が、交差角度θ2が小さい一方の描画時における回転方向に沿った電子ビームEBの照射距離の合計長よりも長くなるように電子ビームEBの照射開始位置や照射停止位置をそれぞれ規定して基材10(樹脂層10b)に電子ビームEBを照射する。
【0073】
この場合、図16は、この第1の描画方法に従って位相サーボパターンPS5を描画する際の具体的な描画手順の一例を表す図である。この例においても、上記の例と同様にして、交差角度θ2が小さいパターンPS5aを構成する各露光領域A1の描画時における「第2の値」や「第3の値」よりも、交差角度θ2が大きいパターンPS5bを構成する各露光領域A1の描画時における「第2の値」や「第3の値」の方が大きくなるように描画条件が規定され、これにより、前述した条件が満たされている。
【0074】
一方、第2の描画方法では、「交差角度θ2の角度差が最大となる半径位置」を含む領域内において、1つのサーボトラックSTにおける「第1の長さ」の範囲内に電子ビームEBを照射するビーム照射距離の合計長を「第1の長さ」で除した「第2の値」が、同一の半径位置において、交差角度θ2が小さいパターンよりも、交差角度θ2が大きいパターンの方が大きくなるように「部分描画処理」および「描画位置変更処理」を実行するとの描画方法の他の一例として、「交差角度θ2の角度差が最大となる半径位置」を含む領域内において、1つのサーボトラックSTにおける「第1の長さ」の範囲内への電子ビームEBの描画パス数が、同一の半径位置において、交差角度θ2が小さいパターンよりも、交差角度θ2が大きいパターンの方が大きくなるように「部分描画処理」および「描画位置変更処理」を実行する。
【0075】
具体的には、この第2の描画方法では、一例として、同一半径位置の両パターンPS5a,PS5bにおける露光領域A1の交差角度θ2の角度差が最大となる半径位置(外周領域Apoの最外周部や、内周領域Apiの最内周部の半径位置)を含む領域内において、同一半径位置の両パターンPS5a,PS5bのうちの交差角度θ2が小さい一方の露光領域A1における1つのサーボトラックSTの範囲を描画パス数=N回で描画するときに、交差角度θ2が大きい一方の露光領域A1における1つのサーボトラックSTの範囲を描画パス数=N回よりも多数回で描画する。
【0076】
この場合、図17は、この第2の描画方法に従って位相サーボパターンPS5を描画する際の具体的な描画手順の一例を表す図である。この例では、半径位置=27.0mmが、パターンPS5a,PS5bの露光領域A1の交差角度θ2の角度差が最大の半径位置となっており、この半径位置=27.0mmを含む半径位置=25.5〜27.0mmの範囲が「角度差が最大の半径位置を含む領域」に相当する。また、上記の半径位置=25.5〜27.0mmの範囲においては、パターンPS5aが「交差角度が小さいパターン」に相当し、パターンPS5bが「交差角度が大きいパターン」に相当する。また、この例では、半径位置=15.5mmもパターンPS5a,PS5bの露光領域A1の交差角度θ2の角度差が、上記の半径位置=27.0mmにおける交差角度θ2の角度差と同程度となっており、この半径位置=15.5mmを含む半径位置=15.5〜18.3mmの範囲も「角度差が最大の半径位置を含む領域」と同様に位相サーボパターンPS5が描画される。この場合、上記の半径位置=15.5〜18.3mmの範囲においては、パターンPS5bが「交差角度が小さいパターン」であり、パターンPS5aが「交差角度が大きいパターン」である。
【0077】
この例では、上記の半径位置=25.5〜27.0mmの範囲においては、交差角度θ2が小さいパターンPS5aの露光領域A1における1つのサーボトラックST分の範囲を描画パス=4.5回で描画しているのに対して、交差角度θ2が大きいパターンPS5bの露光領域A1における1つのサーボトラックST分の範囲を描画パス=5回で描画するように描画条件が規定されている。また、上記の半径位置=15.5〜18.3mmの範囲においては、交差角度θ2が小さいパターンPS5bの露光領域A1における1つのサーボトラックST分の範囲を描画パス=4回で描画しているのに対して、交差角度θ2が大きいパターンPS5aの露光領域A1における1つのサーボトラックST分の範囲を描画パス=4.5回で描画するように描画条件が規定されている。この例では、パターンPS5bを構成する各露光領域A1の1つのサーボトラックST分の範囲を描画する際の描画パス数を各半径位置毎に同図に示すように多段階に規定することで、前述した条件を満たしている。
【0078】
これにより、この例においても、上記の「交差角度θ2の角度差が最大となる半径位置を含む領域」内において、1つのサーボトラックSTにおける「第1の長さ」の範囲内への電子ビームEBの総照射量を「第1の長さ」で除した「第1の値(「※7」の値)」が、交差角度θ2が小さいパターン(外周領域ApoにおいてはパターンPS5aで、内周領域ApiにおいてはパターンPS5b)よりも、交差角度θ2が大きいパターン(外周領域ApoにおいてはパターンPS5bで、内周領域ApiにおいてはパターンPS5a)の方が大きくなっている。
【0079】
また、第3の描画方法では、「交差角度θ2の角度差が最大となる半径位置」を含む領域内において、1つのサーボトラックSTにおける「第1の長さ」の範囲内への電子ビームEBの照射時における回転方向の下流側に向かっての電子ビームEBの偏向速度が、同一の半径位置において、交差角度θ2が小さいパターンよりも、交差角度θ2が大きいパターンの方が大きくなるように「部分描画処理」および「描画位置変更処理」を実行する。具体的には、この第3の描画方法では、交差角度θ2が大きな露光領域A1の描画時における「部分描画処理」に際して、基材10の回転に合わせて樹脂層10bを追い掛けるようにして電子ビームEBを基材10の回転方向に沿って偏向しつつ照射することで、基材10(樹脂層10b)の単位長さ当りに対する電子ビームEBの照射時間を長くして、その単位長さ当りの樹脂層10bへの電子ビームEBの照射量を多くする。
【0080】
より具体的には、交差角度θ2が大きな露光領域A1の描画時における「部分描画処理」に際しては、一例として、ビーム偏向器7によって電子ビームEBを回転方向における上流側に向けて偏向した状態で基材10(樹脂層10b)に対する電子ビームEBの照射を開始する。次いで、基材10の回転に伴って樹脂層10bが回転方向における下流側に向かって移動するのに合わせて電子ビームEBを基材10の回転方向における下流側に向かって偏向し、規定された時間が経過したときに照射を停止する。このような描画方法を採用することで、例えば、電子ビームEBを照射している基材10上の距離が、交差角度θ2が小さい露光領域A1の描画時における「部分描画処理」の際の電子ビームEBの照射距離と同じであっても、交差角度θ2が大きい露光領域A1を描画すべき領域に多くの電子ビームEBが照射されることとなる。
【0081】
この場合、図18は、この第3の描画方法に従って位相サーボパターンPS5を描画する際の具体的な描画手順の一例を表す図である。この例では、パターンPS5aを構成する各露光領域A1の1つのサーボトラックST分の範囲を描画する際の「回転方向の下流側への電子ビームEBの偏向速度(mm/sec):「※1」の値」や、パターンPS5bを構成する各露光領域A1の1つのサーボトラックST分の範囲を描画する際の「回転方向の下流側への電子ビームEBの偏向速度(mm/sec):「※1」の値」を同図に示すように多段階に規定することで、前述した条件を満たしている。
【0082】
具体的には、この例では、例えば、交差角度θ2の角度差が最大の半径位置=27.0mmを含む半径位置=26.5〜27.0mmの範囲において、交差角度θ2が小さいパターンPS5aの露光領域A1の描画時には、電子ビームEBを回転方向の下流側に向けて20mm/secで偏向しつつ照射するのに対し、交差角度θ2が大きいパターンPS5bの露光領域A1の描画時には、電子ビームEBを回転方向の下流側に向けて270mm/secで偏向しつつ照射するように描画条件が規定されている。また、交差角度θ2の角度差が上記の半径位置=27.0mmと同様に大きい半径位置=15.5mmを含む半径位置=15.5〜16.5mmの範囲において、交差角度θ2が小さいパターンPS5bの露光領域A1の描画時には、電子ビームEBを回転方向に沿って偏向させずに照射するのに対し、交差角度θ2が大きいパターンPS5aの露光領域A1の描画時には、電子ビームEBを回転方向の下流側に向けて70mm/secで偏向しつつ照射するように描画条件が規定されている。
【0083】
これにより、この例においても、上記の「交差角度θ2の角度差が最大となる半径位置を含む領域」内において、1つのサーボトラックSTにおける「第1の長さ」の範囲内への電子ビームEBの総照射量を「第1の長さ」で除した「第1の値(「※7」の値)」が、交差角度θ2が小さいパターン(外周領域ApoにおいてはパターンPS5aで、内周領域ApiにおいてはパターンPS5b)よりも、交差角度θ2が大きいパターン(外周領域ApoにおいてはパターンPS5bで、内周領域ApiにおいてはパターンPS5a)の方が大きくなっている。
【0084】
このような「第1の描画方法」から「第3の描画方法」のうちのいずれか、または、複数を任意に組み合わせて実行することで、第1の値が互いに等しくなるように照射量を規定して描画したときに、交差角度θ2が大きな露光領域A1についても、交差角度θ2が小さな露光領域A1と同様にして、回転方向の長さが、半径位置毎の回転方向に沿った基準の長さに対して比例する本来的な長さとなることが確認された。
【0085】
具体的には、一例として、図19に示すように、上記の図14の描画方法の例における27.0mmの半径位置において、パターンPS5bの露光領域A1に対してパターンPS5aの場合と同じ照射距離に亘って電子ビームEBを照射した場合には(比較例1)、パターンPS5aの露光領域A1の回転方向に沿った長さは、設計値=173nmに対して、実測値=174nmとなるのに対し、パターンPS5bの露光領域A1の回転方向に沿った長さは、設計値=173nmに対して実測値=122nmとなった。これに対して、同図に示すように、上記の図14の描画方法の例に従ってパターンPS5bの27.0mmの半径位置において描画条件を規定した場合には(実施例1)、パターンPS5bの露光領域A1の回転方向に沿った長さの双方が、設計値=173nmに対して実測値=174nmとなった。
【0086】
なお、同図に示す実施例1、および比較例1では、Siウエハの表面に、日本ゼオン製の「ZEP520A」を厚み50nmとなるように塗布して樹脂層を形成した基材をそれぞれ使用すると共に、現像液として日本ゼオン製の「ZED−N50」を使用して、現像温度:20℃、現像時間:60秒の条件で現像処理を実施した。また、同図では、露光パターンの描画が完了した基材(樹脂層)に対する現像処理によって樹脂層に形成される凹部の回転方向に沿った長さの実測値を露光領域の「実測値」として記載している。
【0087】
この場合、図14,16〜18に示すパターンPS5a,PS5bの描画方法の例では、交差角度θ2の差の絶対値が大きくなるにつれて(小さくなるにつれて)、「第1の値の差の絶対値(各図に示す「※8」の値)」が段階的に大きくなるように(小さくなるように)、1つのサーボトラックSTにおける「第1の長さ」の範囲内への電子ビームEBの総照射量を変化させてパターンPS5a,PS5bを描画している。つまり、これらの描画方法の例では、描画すべきパターンPS5a,PS5bについて、外周側から内周側までの全域を、「第1の値の差の絶対値」が実質的に等しい複数の半径領域(1サーボトラック以上の幅の領域)に分けて、各領域毎の露光領域A1の半径方向に対する交差角度θ2の差の絶対値の大きさに応じて「第1の値の差の絶対値」を段階的に変化させて規定する方法が採用されている。これにより、描画すべきパターンPS5a,PS5bの露光領域A1について、外周側から内周側までの全域において、それぞれ半径位置毎の回転方向に沿った基準の長さに対して比例する本来的な長さ(本例では、同一半径位置において互いに等しい長さ、または、ほぼ等しい長さ)とすることができる。
【0088】
また、図15に示すパターンPS5a,PS5bの描画方法の例においても、19.0〜21.8mmの半径位置の領域を除き、図14の例と同様にして、交差角度θ2の差の絶対値が大きくなるにつれて(小さくなるにつれて)、「第1の値の差の絶対値(各図に示す「※8」の値)」が段階的に大きくなるように(小さくなるように)、1つのサーボトラックSTにおける「第1の長さ」の範囲内への電子ビームEBの総照射量を変化させてパターンPS5a,PS5bを描画している。この場合、この図15に示す例における上記の19.0〜21.8mmの半径位置の領域は、交差角度θ2の差が比較的小さいため、「第1の値の差の絶対値」が交差角度θ2の差の絶対値に応じて段階的に大きくなるように描画しなくても、パターンPS5a,PS5bの露光領域A1の回転方向に沿った長さを、それぞれ半径位置毎の回転方向に沿った基準の長さに対して比例する本来的な長さ(本例では、同一半径位置において互いに等しい長さ、または、ほぼ等しい長さ)とすることができるのが確認されている。
【0089】
このように、この描画装置1による露光パターンPの描画方法では、露光パターンPのうちの位相サーボパターンPS5における回転方向で並んだ一対の位相サーボ部のパターンPS5a,PS5bをそれぞれ描画する際に、両パターンPS5a,PS5bを構成する複数の露光領域A1および複数の非露光領域A2のうちの回転方向で並ぶ一組の露光領域A1および非露光領域A2の各半径位置毎の回転方向に沿った合計長をそれぞれ「第1の長さ」としたときに、両パターンPS5a,PS5bのうちの一方の露光領域A1における回転方向と交差する辺の半径方向に対する交差角度θ2と、両パターンPS5a,PS5bのうちの他方の露光領域A1における回転方向と交差する辺の半径方向に対する交差角度θ2との同一の半径位置における角度差が最大となる半径位置を含む領域内において、1つのサーボトラックSTにおける「第1の長さ」の範囲内への電子ビームEBの総照射量を「第1の長さ」で除した「第1の値」が、同一の半径位置において、両パターンPS5a,PS5bのうちのサーボトラックST内の交差角度θ2が小さいパターンよりも、両パターンPS5a,PS5bのうちのサーボトラックST内の交差角度θ2が大きいパターンの方が大きくなるように「部分描画処理」および「描画位置変更処理」を実行する。具体的には、上記の「第1の描画方法」、「第2の描画方法」および「第3の描画方法」のいずれか、または、これらの描画方法を任意に組み合わせて露光パターンPを描画する。
【0090】
したがって、この描画装置1による露光パターンPの描画方法によれば、回転方向で並んだ一対の位相サーボ部のパターンPS5a,PS5bを構成する露光領域A1の半径方向に対する交差角度θ2の同一半径位置における角度差が最大となる半径位置を含む領域内において、半径方向に対する交差角度θ2が大きい露光領域A1で構成される一方を描画すべき部位に対して、半径方向に対する交差角度θ2が小さい露光領域A1で構成される一方を描画すべき部位と同様に十分な量の電子ビームEBを照射することができる。これにより、この描画装置1による露光パターンPの描画方法によれば、上記の角度差が最大となる半径位置を含む領域内において、両位相サーボ部のパターンPS5a,PS5bのうちの半径方向に対する交差角度θ2が大きい一方における露光領域A1の回転方向に沿った長さが、半径方向に対する交差角度θ2が小さい一方における露光領域A1の回転方向に沿った長さと同様にして、各半径位置毎の基準の長さに対して比例する本来的な長さとなっている露光パターンPを描画することができるため、描画した露光パターンPに対応して原盤11に形成される凹凸パターン21において上記の両パターンPS5a,PS5bに対応する部位の凹部や凸部の回転方向に沿った長さを、それぞれ各半径位置毎の本来的な長さとすることができる。
【0091】
次いで、描画装置1による露光パターンPの描画が完了した基材10を用いて、スタンパー12,32を製造するための原盤11を製造する方法、および、製造した原盤11を用いてスタンパー12,32を製造する方法について、図面を参照して説明する。
【0092】
まず、露光パターンPの描画が完了した基材10を現像処理することにより(「所定の処理」の一例)、図20に示すように、樹脂層10bにおける各露光領域A1を除去して凹凸パターン21を形成する。これにより、スタンパー12,32を製造するための原盤11が完成する(「情報記録媒体製造用原盤の製造方法」の一例の完了)。この場合、完成した原盤11には、描画装置1によって基材10(樹脂層10b)に描画した露光パターンPと平面形状が同様の凹凸パターン21が形成されている。したがって、凹凸パターン21において露光パターンPにおけるサーボパターンPSの位相サーボパターンPS5(パターンPS5a,PS5b)に対応する各パターンでは、一対の位相サーボ部のパターンのうちの半径方向に対する交差角度θ2が大きい一方を構成する凹部の回転方向に沿った長さが、半径方向に対する交差角度θ2が小さい一方を構成する凹部の回転方向に沿った長さと同様にして、各半径位置毎の基準の長さに対して比例する本来的な長さとなっている。
【0093】
次に、原盤11を使用してスタンパー12を製造する際には、図21に示すように、原盤11における凹凸パターン21を覆うようにしてスパッタ法等によって成膜層12aを形成し、この成膜層12aを電極として用いてめっき処理することにより、電解ニッケル層12bを形成する(「所定の処理」の他の一例)。これにより、原盤11の凹凸パターン21が転写された凹凸パターン22を有するスタンパー12が原盤11の上に形成される。次いで、基材10(Siウエハ10a)からスタンパー12を剥離すると共に、必要に応じて溶剤等を用いてスタンパー12を洗浄すると共に、その裏面(凹凸パターン22の形成面とは反対側の面)を研磨処理する。これにより、図22に示すように、スタンパー12が完成する(「情報記録媒体製造用原盤の製造方法」の他の一例)。
【0094】
この場合、インプリント用のスタンパーの製造方法は、上記のスタンパー12の製造方法に限定されず、スタンパー12の凹凸パターン22をスタンパー形成用材料に1回または複数回に亘って転写して、凹凸パターン22における凸部に対応する凹部および凹凸パターン22における凹部に対応する凸部を有する凹凸パターンが形成されたスタンパー(図示せず)や、凹凸パターン22における凸部に対応する凸部および凹凸パターン22における凹部に対応する凹部を有する凹凸パターンが形成されたスタンパー(図示せず)を製造する方法を採用することもできる。具体的には、一例として、上記のスタンパー12を電極として用いてめっき処理を実行することにより、凹凸パターン22を覆う電解ニッケル層を形成する。これにより、原盤11の凹凸パターン21と凹凸位置関係が一致するスタンパー(図示せず)が製造される(「所定の処理」の他の一例における一工程)。次いで、製造したスタンパーを射出成形機にセットして射出成形処理を実行する(「所定の処理」の他の一例における一工程)。これにより、原盤11の凹凸パターン21と凹凸位置関係が反転した凹凸パターンが樹脂材料に形成されて、スタンパー12の凹凸パターン22と凹凸位置関係が一致する樹脂スタンパー(図示せず)が完成する(「情報記録媒体製造用原盤の製造方法」のさらに他の一例)。
【0095】
また、スタンパー32を製造する際には、一例として、上記のスタンパー12の製造手順、或いは、スタンパー12の凹凸パターン22と凹凸位置関係が一致する樹脂スタンパーの製造手順と同様の手順に従ってスタンパー32における基体32a(図25参照)を製作する。次いで、基体32aの凹凸パターンを覆うようにして、スパッタリング法等により、下地膜32bおよび強磁性膜32cを順次成膜する(「所定の処理」の他の一例における一工程)。これにより、図25に示すように、凹凸パターン42を有するスタンパー32が完成する(「情報記録媒体製造用原盤の製造方法」のさらに他の一例)。
【0096】
一方、完成したスタンパー12,32には、描画装置1によって基材10(樹脂層10b)に描画した露光パターンPを用いて形成した凹凸パターン21と平面形状が同様の凹凸パターン22,42が形成されている。したがって、凹凸パターン22,42において原盤11における凹凸パターン21の各パターン(この例では、露光パターンPにおけるサーボパターンPSに対応して形成されたパターン)に対応する各パターンでは、一対の位相サーボ部のパターンのうちの半径方向に対する交差角度θ2が大きい一方を構成する凸部(または、凹部)の回転方向に沿った長さが、半径方向に対する交差角度θ2が小さい一方を構成する凸部(または、凹部)の回転方向に沿った長さと同様にして、各半径位置毎の基準の長さに対して比例する本来的な長さとなっている。
【0097】
このように、この原盤11の製造方法によれば、前述した描画方法に従って樹脂層10bに露光パターンPを描画した後に樹脂層10bを現像処理することで凹凸パターン21を形成したことにより、露光パターンPに対応して原盤11に形成される凹凸パターン21において、位相サーボパターンPS5のパターンPS5a,PS5bに対応して形成される一対の位相サーボ部のパターンのうちの交差角度θ2が大きいパターンを構成する凹部(または、凸部)の回転方向に沿った長さを、交差角度θ2が小さいパターン構成する凹部(または、凸部)の回転方向に沿った長さと同様にして、各半径位置毎の基準の長さに対して比例する本来的な長さとすることができる。これにより、原盤11を使用して製造されるスタンパー12,32の凹凸パターン22,42において、上記の両パターンに対応する一対の位相サーボ部のパターンのうちの交差角度θ2が大きいパターンにおける凸部(または、凹部)の回転方向に沿った長さを、交差角度θ2が小さいパターンにおける凸部(または、凹部)の回転方向に沿った長さと同様にして、各半径位置毎の基準の長さに対して比例する本来的な長さとすることができる。
【0098】
また、このスタンパー12,32の製造方法によれば、前述した描画方法に従って樹脂層10bに露光パターンPを描画した樹脂層10bを現像処理することで凹凸パターン21を形成した原盤11を使用して凹凸パターン22,42を形成したことにより、原盤11を使用して製造されるスタンパー12,32の凹凸パターン22,42において、位相サーボパターンPS5のパターンPS5a,PS5bに対応して形成される一対の位相サーボ部のパターンのうちの交差角度θ2が大きいパターンを構成する凹部(または、凸部)の回転方向に沿った長さを、交差角度θ2が小さいパターン構成する凹部(または、凸部)の回転方向に沿った長さと同様にして、各半径位置毎の基準の長さに対して比例する本来的な長さとすることができる。これにより、このスタンパー12,32を使用して製造される磁気ディスク15,35のサーボパターンにおいて、上記の両パターンに対応する一対の位相サーボ部のパターンのうちの交差角度θ2が大きいパターンにおける凹部(または、凸部)の回転方向に沿った長さを、交差角度θ2が小さいパターンにおける凹部(または、凸部)の回転方向に沿った長さと同様にして、各半径位置毎の基準の長さに対して比例する本来的な長さとすることができる。
【0099】
続いて、スタンパー12を使用して磁気ディスク15を製造する方法(情報記録媒体の製造方法)について、図面を参照して説明する。
【0100】
まず、インプリント法によってスタンパー12の凹凸パターン22を中間体15mに転写する。具体的には、図22に示すように、スタンパー12における凹凸パターン22の形成面を中間体15mの樹脂層15cに押し付けた後に、中間体15mからスタンパー12を剥離する。これにより、図23に示すように、スタンパー12の凹凸パターン22が樹脂層15cに転写されて中間体15m上に凹凸パターン23が形成される。この場合、中間体15mは、磁気ディスク15を製造するための中間体であって、円板状の基材15aの表面に記録層15bが形成されて構成されている。なお、中間体15mは、実際には、下地層、軟磁性層、配向層および記録層(記録層15b)等が基材15aの上に積層されて構成されているが、製造方法についての理解を容易とするために、中間体15mの詳細な層構造についての説明および図示を省略する。
【0101】
次に、凹凸パターン23をマスクとして用いて中間体15mをエッチングする。この際には、凹凸パターン23の凹部の底面から記録層15bが露出し、さらにエッチング処理を実行することにより、図24に示すように、記録層15bに凹凸パターン24が形成される。この後、必要に応じて、凹凸パターン24の凹部に非磁性材料を充填した後に例えば研磨処理によって記録層15b(凹凸パターン24の凸部の先端)を非磁性材料から露出させ、記録層15bの表面に保護膜を形成する。これにより、磁気ディスク15が完成する。
【0102】
この場合、凹凸パターン24は、露光パターンPに対応して凹凸パターン22が形成されたスタンパー12を使用したインプリント処理によって形成した凹凸パターン23をマスクとして用いてエッチング処理することによって形成されている。したがって、凹凸パターン24において露光パターンPにおけるサーボパターンPSの位相サーボパターンPS5(パターンPS5a,PS5b)に対応する各パターンでは、一対の位相サーボ部のパターンのうちの半径方向に対する交差角度θ2が大きい一方を構成する凹部の回転方向に沿った長さが、半径方向に対する交差角度θ2が小さい一方を構成する凹部の回転方向に沿った長さと同様にして、各半径位置毎の基準の長さに対して比例する本来的な長さとなっている。
【0103】
このように、この磁気ディスク15の製造方法によれば、上記の製造方法によって製造したスタンパー12に形成されている凹凸パターン22を使用して製造することにより、スタンパー12を使用して製造される磁気ディスク15のサーボパターンにおいて、上記の両パターンのうちの交差角度が大きいパターンにおける凹部(または、凸部)の回転方向に沿った長さを、交差角度が小さいパターンにおける凹部(または、凸部)の回転方向に沿った長さと同様にして、各半径位置毎の基準の長さに対して比例する本来的な長さすることができる結果、正確なトラッキングサーボを実現することができる。
【0104】
次いで、スタンパー32を使用して磁気ディスク35を製造する方法(情報記録媒体の製造方法)について、図面を参照して説明する。
【0105】
磁気ディスク35の製造に際しては、まず、軟磁性層35b、配向層35cおよび記録層35dが基材35aの両面にこの順でそれぞれ形成された中間体35m(図25参照)と、上記の製造方法に従って製造した一対のスタンパー32,32とを用意する。なお、中間体35mの製作方法については公知のため、説明を省略する。次いで、スタンパー32,32を用いて中間体35mにサーボパターンを磁気的に転写する磁気転写処理を実行する。
【0106】
まず、中間体35mに対して、十分に大きい直流外部磁場を厚み方向で印加することにより、中間体35mを初期化する。次いで、図25に示すように、中間体35mの一方の面に対して、一方のスタンパー32の凹凸パターン42における凸部の突端面を接触させ、中間体35mの他方の面に対して、他方のスタンパー32の凹凸パターン42における凸部の突端面を接触させる。この状態において、同図に矢印Mで示すように、中間体35mに対して上記の初期化に際して印加した直流外部磁場の向きと逆の向きの直流外部磁場を印加する。この際には、両スタンパー32,32の凹凸パターン42における凸部を介して中間体35mに直流外部磁場が印加され、中間体35mの両記録層35dにおいてスタンパー32の凹凸パターン42における各凸部に接している部分が、印加された直流外部磁場の方向に磁化される。これにより、中間体35mの両記録層35dにサーボパターンが磁気的に転写されて、磁気ディスク35が完成する。
【0107】
この場合、両記録層35dに磁気的に転写されたサーボパターン(磁化パターン)は、露光パターンPに対応して凹凸パターン42が形成されたスタンパー32を使用した磁気転写処理によって形成されている。したがって、両記録層35dに磁気的に転写されたサーボパターンにおいて露光パターンPにおけるサーボパターンPSの位相サーボパターンPS5(パターンPS5a,PS5b)に対応する各パターンでは、一対の位相サーボ部のパターンのうちの半径方向に対する交差角度θ2が大きい一方を構成する各磁化領域の回転方向に沿った長さが、半径方向に対する交差角度θ2が小さい一方を構成する各磁化領域の回転方向に沿った長さと同様にして、各半径位置毎の基準の長さに対して比例する本来的な長さとなっている。
【0108】
このように、この磁気ディスク35の製造方法によれば、上記の製造方法によって製造したスタンパー32に形成されている凹凸パターン42を使用して製造することにより、スタンパー32を使用して製造される磁気ディスク35のサーボパターン(磁化パターン)において、上記の両パターンのうちの交差角度が大きいパターンにおける磁化領域の回転方向に沿った長さを、交差角度が小さいパターンにおける磁化領域の回転方向に沿った長さと同様にして、各半径位置毎の基準の長さに対して比例する本来的な長さとすることができる結果、正確なトラッキングサーボを実現することができる。
【0109】
なお、スタンパー12の凹凸パターン22を樹脂層15cに転写して形成した凹凸パターン23をマスクとして用いて記録層15bをエッチング処理する例について説明したが、情報記録媒体の製造方法は、これに限定されない。具体的には、例えば、樹脂層15cと記録層15bとの間に1層または複数層のマスク形成層を設け、樹脂層15cに形成した凹凸パターン23をマスクとして用いてその下層のマスク層を順次エッチングすることで樹脂層15cをエッチングするためのマスク層を形成する製造方法を採用することもできる。
【0110】
さらに、パターンド型の磁気ディスク15としては、ディスクリートトラック媒体やビットパターンド媒体などが挙げられる。また、磁気ディスク15と同様にしてサーボパターンが凹凸パターン24によって形成されると共に、連続記録層型磁気ディスクのようにデータ記録領域が連続する磁性層で構成された(データ記録領域に凹凸パターンが存在しない)情報記録媒体を製造するためのスタンパー(情報記録媒体製造用原盤:図示せず)用の露光パターンを描画することもできる。さらに、上記の描画装置1(描画方法)では、電子ビームEBを照射して露光パターンP等を描画する例について説明したが、描画用ビームは電子ビームEBに限定されずに任意のエネルギー線を用いることができる。加えて、ポジ型レジストで形成した樹脂層10bに露光パターンP等を描画する例について説明したが、樹脂層の形成材料としては、ポジ型レジストに限定されず、ネガ型レジストなどの各種樹脂材料を使用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 電子ビーム描画装置
10 基材
10b 樹脂層
11 原盤
12,32 スタンパー
15,35 磁気ディスク
15m,35m 中間体
21〜24,42 凹凸パターン
A1 露光領域
A2 非露光領域
Ac,Apc 中周領域
Ai,Api 内周領域
Ao,Apo 外周領域
As サーボ領域
At データ記録領域
DP 描画手順データ
EB 電子ビーム
L1,L1o〜L3o,L1c〜L3c,L1i〜L3i,La,Lb 長さ
P 露光パターン
P1E〜P4E 停止位置
P1S〜P4S 開始位置
PS サーボパターン
PS5 位相サーボパターン
PS5a,PS5b 位相サーボ部のパターン
PT データトラックパターン
ST サーボトラック
θ1 スキュー角
θ2 交差角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報記録媒体製造用の凹凸パターンを形成するための樹脂層に描画用ビームを照射して、当該凹凸パターンを形成するための露光領域および非露光領域で構成された露光パターンを当該樹脂層に描画する際に、当該樹脂層が形成された基材を回転させつつ、当該基材の回転方向に沿って前記描画用ビームを前記樹脂層に照射することで前記露光領域における当該基材の半径方向の一部を描画する部分描画処理と、前記部分描画処理による描画位置を前記基材の回転中心に接近する方向および当該回転中心から離間する方向のいずれかに変更する描画位置変更処理とを複数回実行する描画方法であって、
前記露光パターンのうちの位相サーボパターンにおける前記回転方向で並んだ一対の位相サーボ部のパターンをそれぞれ描画する際に、
当該両パターンを構成する複数の当該露光領域および複数の当該非露光領域のうちの当該回転方向で並ぶ一組の当該露光領域および当該非露光領域の各半径位置毎の当該回転方向に沿った合計長をそれぞれ第1の長さとしたときに、
前記両パターンのうちの一方の前記露光領域における前記回転方向と交差する辺の前記半径方向に対する交差角度と、前記両パターンのうちの他方の前記露光領域における前記回転方向と交差する辺の前記半径方向に対する交差角度との同一の半径位置における角度差が最大となる半径位置を含む領域内において、1つのサーボトラックにおける前記第1の長さの範囲内への前記描画用ビームの総照射量を当該第1の長さで除した第1の値が、同一の半径位置において、前記両パターンのうちの前記サーボトラック内の前記交差角度が小さいパターンよりも、当該両パターンのうちの当該サーボトラック内の前記交差角度が大きいパターンの方が大きくなるように前記部分描画処理および前記描画位置変更処理を実行する描画方法。
【請求項2】
前記角度差が最大となる半径位置を含む前記領域内において、1つのサーボトラックにおける前記第1の長さの範囲内に前記描画用ビームを照射するビーム照射距離の合計長を当該第1の長さで除した第2の値が、同一の半径位置において、前記交差角度が小さい前記パターンよりも、前記交差角度が大きい前記パターンの方が大きくなるように前記部分描画処理および前記描画位置変更処理を実行する請求項1記載の描画方法。
【請求項3】
前記角度差が最大となる半径位置を含む前記領域内において、1つのサーボトラックにおける前記第1の長さの範囲内に前記描画用ビームを照射するビーム照射距離の1描画パス当りの合計長を当該第1の長さで除した第3の値が、同一の半径位置において、前記交差角度が小さいパターンよりも、前記交差角度が大きいパターンの方が大きくなるように前記部分描画処理および前記描画位置変更処理を実行する請求項2記載の描画方法。
【請求項4】
前記角度差が最大となる半径位置を含む前記領域内において、1つのサーボトラックにおける前記第1の長さの範囲内への前記描画用ビームの描画パス数が、同一の半径位置において、前記交差角度が小さい前記パターンよりも、前記交差角度が大きい前記パターンの方が大きくなるように前記部分描画処理および前記描画位置変更処理を実行する請求項2または3記載の描画方法。
【請求項5】
前記角度差が最大となる半径位置を含む前記領域内において、1つのサーボトラックにおける前記第1の長さの範囲内への前記描画用ビームの照射時における前記回転方向の下流側に向かっての当該描画用ビームの偏向速度が、同一の半径位置において、前記交差角度が小さい前記パターンよりも、前記交差角度が大きい前記パターンの方が大きくなるように前記部分描画処理および前記描画位置変更処理を実行する請求項1から4のいずれかに記載の描画方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の描画方法に従って前記樹脂層に前記露光パターンを描画した後に当該樹脂層に対して所定の処理を実行して前記凹凸パターンを形成して情報記録媒体製造用原盤を製造する情報記録媒体製造用原盤の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の情報記録媒体製造用原盤の製造方法によって製造した情報記録媒体製造用原盤に形成されている凹凸パターンを使用して情報記録媒体を製造する情報記録媒体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2012−198963(P2012−198963A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62886(P2011−62886)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】