説明

描画方法

【課題】画像の記録動作中に、インク循環路などにおいて、インクが滞留することに起因して沈降が発生することを抑制する描画方法を提供する。
【解決手段】描画方法は、吐出ヘッドと被描画媒体とを相対移動させると共に、吐出ヘッドから液状体の液滴を吐出する吐出走査工程と、吐出ヘッドからの液滴の吐出を停止した状態で、吐出ヘッドと被描画媒体とを相対移動させる相対移動工程と、吐出ヘッドに液状体を供給するための液状体供給部において液状体を循環させる循環工程と、を有し、循環工程を、相対移動工程が実施されている間に実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体を吐出する吐出装置、及び吐出装置に液状体を供給する液状体供給装置を備える描画装置を用いて、吐出装置から被描画媒体に向けて液状体を吐出し、被描画媒体上に液状体を配置して描画する描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液状体を吐出する吐出ヘッドを備え、吐出した液滴を被描画媒体の任意の位置に着弾させることによって、被描画媒体上に任意の画像などを描画する描画装置が知られている。例えばインクジェット方式の吐出ヘッドを備える描画装置は、所定の量のインクを所定の位置に精度よく配置することができる。このような描画装置を用いて配置したインクを硬化させることによって、精密な形状を有する機能膜や、微細な画像などを形成することができる。さらに高画質の画像を形成するために、顔料インクを用いて描画する装置がある。しかし、顔料インクは、顔料が沈降し易いという課題があった。インクタンク内で顔料の沈降が発生すると、インクに顔料の濃度むらが発生する。当該インクを用いて描画すると、濃度むらに起因して、必ずしも高画質の画像が得られない可能性があった。
【0003】
特許文献1には、インク貯留部と、インクを一時的に貯留するサブタンクと、サブタンクを一定の圧力に減圧するための減圧管路と、インク貯留部とサブタンクとを連結するインク圧送経路と、インク圧送経路に配設された第1開閉弁と、サブタンクとインクジェットヘッドとを連結する連通路と、連通路とインク貯留部とを連結するインク循環経路と、インク循環経路に配設された第2開閉弁とを備え、簡易な構成でインクを循環させて沈降の発生を防止することが可能な画像記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−29022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された画像記録装置では、画像の記録を行っていないときに、一定の時間間隔ごとにインクの循環を実施している。したがって、画像の記録動作中は、インクの循環が実施されない。しかし、描画装置が画像の記録動作中であっても、吐出ヘッド(インクジェットヘッド)が常に稼働しているとは限らない。吐出ヘッドが稼働していない場合、インク循環路などにおいて、インクが滞留する。インクが滞留することで、沈降が発生する可能性がある。したがって、画像の記録動作中に、インク循環路などにおいて、沈降が発生する可能性がある。これにより、必ずしも、沈降を抑制することによる画像の品位の向上ができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる描画方法は、吐出ヘッドと被描画媒体とを相対移動させると共に、前記吐出ヘッドから液状体の液滴を吐出する吐出走査工程と、前記吐出ヘッドからの前記液滴の吐出を停止した状態で、前記吐出ヘッドと前記被描画媒体とを相対移動させる相対移動工程と、前記吐出ヘッドに前記液状体を供給するための液状体供給部において前記液状体を循環させる循環工程と、を有し、前記循環工程を、前記相対移動工程が実施されている間に実施することを特徴とする。
【0008】
本適用例にかかる描画方法によれば、相対移動工程が実施されている間に、循環工程が実施される。相対移動工程は描画を実施するために実施する工程のひとつであり、描画を実施する描画装置としては稼働している。しかし、吐出ヘッドからの吐出は停止しているため、液状体供給部においては、吐出ヘッドに液状体を供給するための液状体の流動は停止している。循環工程を実施することで、液状体供給部において液状体を循環させる、すなわち液状体を流動させることができる。これにより、液状体供給部において液状体が停止していることに起因して含有物などが沈降することを抑制することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる描画方法において、前記相対移動工程が、前記吐出ヘッドが対向可能な描画可能領域に前記被描画媒体を供給する媒体供給工程、及び前記描画可能領域から前記被描画媒体を取り除く媒体除去工程の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0010】
この描画方法によれば、媒体供給工程、及び媒体除去工程の少なくとも一方が相対移動工程に含まれる。したがって、媒体供給工程や媒体除去工程が実施される間に、循環工程が実施される。これにより、媒体供給工程や媒体除去工程の間に、液状体供給部において液状体を循環させて、媒体供給工程や媒体除去工程の間に液状体供給部において液状体が停止していることに起因して含有物などが沈降することを抑制することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる描画方法において、前記液状体供給部は、前記液状体を循環させるための循環路を備え、前記循環工程では、前記循環路において前記液状体を循環させることが好ましい。
【0012】
この描画方法によれば、液状体供給部が液状体を循環させるための循環路を備える。循環路において液状体を循環させることで、容易に液状体を循環させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は、液滴吐出装置の概略構成を示す模式平面図。(b)は、液滴吐出装置の概略構成を示す模式側面図。
【図2】(a)は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す外観斜視図。(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す斜視断面図。(c)は、液滴吐出ヘッドの吐出ノズルの部分の構造を示す断面図。
【図3】ヘッドユニットの概略構成を示す平面図。
【図4】機能液供給部の構成を示す模式図。
【図5】描画工程を示すフローチャート。
【図6】(a)は、フィルムにおける被描画区画と、吐出走査における描画行との位置関係を示す説明図。(b)は、フィルム送りが実施された状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る描画方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドを備え、被描画媒体に画像などを描画する液滴吐出装置を例に、当該液滴吐出装置を用いて描画する描画方法について説明する。液滴吐出装置は、液滴吐出ヘッドと被描画媒体とを相対移動させると共に、液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから機能液の液滴を吐出して、被描画媒体上の所定の位置に着弾させることによって、所定の画像を形成する装置である。本実施形態における被描画媒体は、帯状のフィルムである。機能液は、例えば紫外線を照射されることによって硬化する紫外線硬化型の機能液を用いる。なお、以下の説明において参照する図面では、図示の便宜上、部材又は部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0015】
<液滴吐出法>
最初に、液状体を液滴として吐出する液滴吐出法について説明する。液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換方式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。
帯電制御方式は、液状体に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で液状体の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、液状体に30kg/cm2程度の超高圧を印加して吐出ノズル先端側に液状体を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には液状体が直進して吐出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると液状体間に静電的な反発が起こり、液状体が飛散して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって液状体を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から液状体を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。
【0016】
また、電気熱変換方式は、液状体を貯留した空間内に設けたヒーターにより、液状体を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の液状体を吐出させるものである。静電吸引方式は、液状体を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに液状体のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから液状体を引き出すものである。この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。
【0017】
液滴吐出法は、液状体の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の液状体を的確に配置できるという利点を有する。このうち、ピエゾ素子を用いるピエゾ方式は、液状体に熱を加えないため、液状体の組成などに影響を与えないなどの利点を有する。本実施形態では、液状体選択の自由度の高さ、及び液滴の制御性の良さの点から上記ピエゾ方式を用いる。
【0018】
<液滴吐出装置>
次に、フィルム10に描画する描画装置である液滴吐出装置1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、液滴吐出装置の概略構成を示す模式図である。図1(a)は、液滴吐出装置の概略構成を示す模式平面図であり、図1(b)は、液滴吐出装置の概略構成を示す模式側面図である。
【0019】
図1に示すように、液滴吐出装置1は、液滴吐出ヘッド20を有するヘッド機構部2と、供給排出機構部3と、機能液供給部4(図4参照)と、メンテナンス装置部5と、を備えている。
ヘッド機構部2が備える液滴吐出ヘッド20は、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドであり、紫外線硬化性を有する機能液40(図4参照)を液滴として、描画対象物に向けて吐出する。供給排出機構部3は、液滴吐出ヘッド20から吐出された液滴を着弾させる描画対象物であるフィルム10の被描画領域101(図6参照)を描画位置などに供給し、当該位置から排出する。機能液供給部4は、液滴吐出ヘッド20への機能液40の供給を行う。メンテナンス装置部5は、液滴吐出ヘッド20の保守を行う。
液滴吐出装置1は、また、これら各機構部などを総括的に制御する吐出装置制御部7(図4参照)を備えている。
液滴吐出ヘッド20が、吐出ヘッドに相当する。機能液40が液状体に相当する。フィルム10が、被描画媒体に相当する。
【0020】
供給排出機構部3は、供給リール31と、巻取りリール32と、吸着テーブル33と、供給ローラー34と、従動ローラー34aと、媒体送りローラー36と、従動ローラー36aと、アイドラローラー37と、アイドラローラー38とを備えている。各リール、及び各ローラーは、それぞれ回動軸まわりに回動可能であり、それぞれの回動軸は互いに略平行である。
供給リール31と、アイドラローラー37と、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと、アイドラローラー38と、巻取りリール32とは、この順で配置されており、吸着テーブル33は、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとの間に配設されている。
【0021】
供給リール31には、帯状のフィルム10が巻かれており、供給モーターによって供給リール31が回動させられることによって、フィルム10が繰り出される。
従動ローラー34aは、外周が供給ローラー34の外周に接しており、付勢装置によって供給ローラー34に押し付けられている。供給ローラー34は供給モーターによって回動させられ、供給ローラー34に当接している従動ローラー34aは、供給ローラー34に従って回動する。供給リール31から供給されたフィルム10は、供給ローラー34と従動ローラー34aとの間に挟まれて、従動ローラー34aによって供給ローラー34に押し付けられており、供給ローラー34の回動による外周の回動長さに略同等の長さが供給される。
【0022】
アイドラローラー37は、回動軸が軸方向に交差する方向に揺動可能であり、揺動方向の一方に付勢されている。フィルム10における、供給リール31と、供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分に、アイドラローラー37が付勢された状態で当接することで、供給リール31とアイドラローラー37との間、及びアイドラローラー37と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分が、略弛みなく張られている。
【0023】
従動ローラー36aは、外周が媒体送りローラー36の外周に接しており、付勢装置によって媒体送りローラー36に押し付けられている。媒体送りローラー36は媒体送りモーターによって回動させられ、媒体送りローラー36に当接している従動ローラー36aは、媒体送りローラー36に従って回動する。供給ローラー34の回動によって供給されたフィルム10は、媒体送りローラー36と従動ローラー36aとの間に挟まれて、従動ローラー36aによって媒体送りローラー36に押し付けられており、媒体送りローラー36の回動による外周の回動長さに略同等の長さが供給される。
【0024】
媒体送りローラー36による送り量は、供給ローラー34による送り量より多く設定されている。媒体送りモーターから媒体送りローラー36への動力伝達機構にはトルク制御機構が組み込まれている。媒体送りローラー36において供給ローラー34より早く送ることができるフィルム10は、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間の部分が、トルク制御機構によって制御されたトルクに応じた張力で張られる。当該張られた部分には、吸着テーブル33の吸着面が臨んでいる。
吸着テーブル33は、吸着面にフィルム10を吸着する。吸着面は平坦な面であり、フィルム10における吸着面に吸着された部分は平坦な状態に維持される。吸着方法としては、大気吸引装置を設けて負圧によって吸着する方法や、帯電及び除電装置を設けて静電気によって吸着する方法などを用いることができる。
【0025】
巻取りリール32は、巻取りモーターによって回動させられる。媒体送りローラー36から送り出されたフィルム10は、回動する巻取りリール32に巻き取られる。
アイドラローラー38は、回動軸が軸方向に交差する方向に揺動可能であり、揺動方向の一方に付勢されている。フィルム10における、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと、巻取りリール32との間の部分に、アイドラローラー38が付勢された状態で当接することで、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとアイドラローラー38との間、及びアイドラローラー38と巻取りリール32との間の部分が、略弛みなく張られている。
【0026】
このような状態で、フィルム10は、供給リール31から巻取りリール32まで送られ、途中の吸着テーブル33に吸着された部分に描画が実施される。フィルム10が送られる方向は、互いに略平行である各リール、及び各ローラーの回動軸の軸方向に略直交する方向である。各リール、及び各ローラーの回動軸の軸方向に平行な方向をX軸方向と表記し、フィルム10の送り方向をY軸方向と表記する。
【0027】
ヘッド機構部2は、ヘッドキャリッジ22と、X軸走査機構11と、Y軸走査機構12とを備えている。
Y軸走査機構12は、Y軸ガイドレール12aとY軸スライダー12bとを、それぞれ1対備えている。Y軸ガイドレール12aは、吸着テーブル33を挟んでX軸方向の両側にそれぞれ1個ずつ配設されており、Y軸方向に延在している。一方のY軸ガイドレール12aと吸着テーブル33との間には、メンテナンス装置部5が配設されている。Y軸スライダー12bは、Y軸駆動モーターを介して、Y軸ガイドレール12aに、Y軸方向に摺動自在であって、任意の位置に保持可能に支持されている。
【0028】
X軸走査機構11は、X軸ガイドレール11aとX軸スライダー11bとを、それぞれ1対備えており、さらにガイドレール支持柱11cを4本備えている。2本のガイドレール支持柱11cが、1個のY軸スライダー12bの上に、Y軸スライダー12bのY軸方向の両端において、それぞれ1本ずつ立設されている。1個のX軸ガイドレール11aは、Y軸スライダー12bの供給リール31の側の端にそれぞれ立設されたガイドレール支持柱11cに差渡されて、吸着テーブル33の上方で、X軸方向に延在している。もう1個のX軸ガイドレール11aは、Y軸スライダー12bの巻取りリール32の側の端にそれぞれ立設されたガイドレール支持柱11cに差渡されて、吸着テーブル33の上方で、X軸方向に延在している。
2個のY軸スライダー12bは、X軸ガイドレール11a及びガイドレール支持柱11cを介して互いに固定されており、一体にY軸方向に移動する。
X軸スライダー11bは、X軸駆動モーターを介して、X軸ガイドレール11aに、X軸方向に摺動自在であって、任意の位置に保持可能に支持されている。2個のX軸ガイドレール11aのそれぞれに支持されたX軸スライダー11bには、ヘッドキャリッジ22のブリッジプレート27の一端がそれぞれ固定されている。両端がそれぞれX軸スライダー11bに固定されたブリッジプレート27は、X軸スライダー11bに支持されて、2個のX軸ガイドレール11aの間に差渡されている。ブリッジプレート27は、X軸駆動モーターによって、X軸ガイドレール11aに沿って、X軸方向に摺動自在であって、任意の位置に保持可能である。
【0029】
ヘッドキャリッジ22は、ブリッジプレート27と、サブキャリッジ28と、ヘッドユニット21とを備えている。サブキャリッジ28は、ブリッジプレート27の略中央に懸吊されている。ヘッドユニット21は、サブキャリッジ28の下に固定されている。ヘッドユニット21が備える液滴吐出ヘッド20は、吐出ノズル24(図2参照)が形成されたノズル基板25(図2参照)が吸着テーブル33の吸着面が臨む状態で保持されている。
【0030】
Y軸走査機構12によってX軸走査機構11をY軸方向に移動させることによって、X軸走査機構11に支持されたヘッドキャリッジ22が備えるヘッドユニット21の液滴吐出ヘッド20を、Y軸方向に走査させることができる。X軸走査機構11によってブリッジプレート27をX軸方向に移動させることによって、ブリッジプレート27に懸吊されたサブキャリッジ28に固定されたヘッドユニット21の液滴吐出ヘッド20を、X軸方向に走査させることができる。X軸走査機構11及びY軸走査機構12によって、ヘッドユニット21の液滴吐出ヘッド20を、X軸方向及びY軸方向に走査させることで、吸着テーブル33の吸着面の全面に対して液滴吐出ヘッド20の吐出ノズル24を臨ませることができる。
ヘッドユニット21を、Y軸方向の吐出位置まで移動させて停止させ、X軸方向の移動に同調させて、描画用の機能液40を液滴として吐出させる。X軸方向に移動させる主走査と、Y軸方向に移動させる改行とを制御することにより、吸着テーブル33の吸着面に吸着されたフィルム10上の任意の位置に機能液40の液滴を着弾させることで、所望する描画などを行うことが可能である。ヘッドユニット21を移動させて吐出ノズル24を臨ませることができる範囲が、描画可能領域に相当する。
【0031】
<液滴吐出ヘッド>
次に、液滴吐出ヘッド20について、図2を参照して説明する。図2は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す図である。図2(a)は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す外観斜視図であり、図2(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す斜視断面図であり、図2(c)は、液滴吐出ヘッドの吐出ノズルの部分の構造を示す断面図である。
【0032】
図2(a)に示したように、液滴吐出ヘッド20は、ノズル基板25を備えている。ノズル基板25には、多数の吐出ノズル24が略一直線状に並んだノズル列24Aが2列形成されている。吐出ノズル24から液状体を液滴として吐出し、対向する位置にある描画対象物などに着弾させることで、当該位置に液状体を配置する。ノズル列24Aは、液滴吐出ヘッド20が液滴吐出装置1に装着された状態で、図1に示したY軸方向に延在している。ノズル列24Aにおいて吐出ノズル24は等間隔のノズルピッチで並んでおり、2列のノズル列24A間で、吐出ノズル24の位置がY軸方向に半ノズルピッチずれている。したがって、液滴吐出ヘッド20としては、Y軸方向に半ノズルピッチ間隔で液状体の液滴を配置することができる。
【0033】
図2(b)及び(c)に示すように、液滴吐出ヘッド20は、ノズル基板25に圧力室プレート51が積層されており、圧力室プレート51に振動板52が積層されている。
圧力室プレート51には、液滴吐出ヘッド20に供給される液状体が常に充填される液たまり55が形成されている。液たまり55は、振動板52と、ノズル基板25と、圧力室プレート51の壁とに囲まれた空間である。液状体は、振動板52の液供給孔53を経由して液たまり55に供給される。また、圧力室プレート51には、複数のヘッド隔壁57によって区切られた圧力室58が形成されている。振動板52と、ノズル基板25と、2個のヘッド隔壁57とによって囲まれた空間が圧力室58である。
【0034】
圧力室58は吐出ノズル24のそれぞれに対応して設けられており、圧力室58の数と吐出ノズル24の数とは同じである。圧力室58には、2個のヘッド隔壁57の間に位置する供給口56を介して、液たまり55から液状体が供給される。ヘッド隔壁57と圧力室58と吐出ノズル24と供給口56との組は、液たまり55に沿って1列に並んでおり、1列に並んだ吐出ノズル24がノズル列24Aを形成している。図2(b)では図示省略したが、図示した吐出ノズル24を含むノズル列24Aに対して液たまり55に関して略対称位置に、1列に並んで配設された吐出ノズル24がもう1列のノズル列24Aを形成している。当該ノズル列24Aに対応するヘッド隔壁57と圧力室58と供給口56との組が、1列に並んでいる。
【0035】
振動板52の圧力室58を構成する部分には、それぞれ圧電素子59の一端が固定されている。圧電素子59の他端は、固定板(図示省略)を介して液滴吐出ヘッド20全体を支持する基台(図示省略)に固定されている。
圧電素子59は電極層と圧電材料とを積層した活性部を有し、電極層に駆動電圧を印加することで、活性部が長手方向(図2(b)又は(c)における振動板52の厚さ方向)に縮む。活性部が縮むことで、圧電素子59の一端が固定された振動板52が圧力室58と反対側に引張られる力を受ける。振動板52が圧力室58と反対側に引張られることで、振動板52が圧力室58の反対側に撓む。これにより、圧力室58の容積が増加することから、液状体が液たまり55から供給口56を経て圧力室58に供給される。次に、電極層に印加されていた駆動電圧が解除されると、活性部が元の長さに戻ることで、圧電素子59が振動板52を押圧する。振動板52が押圧されることで、圧力室58側に戻る。これにより、圧力室58の容積が急激に元に戻る、すなわち増加していた容積が減少することから、圧力室58内に充填されていた液状体に圧力が加わり、当該圧力室58に連通して形成された吐出ノズル24から液状体が液滴となって吐出される。
【0036】
<ヘッドユニット>
次に、ヘッド機構部2が備えるヘッドユニット21の概略構成について、図3を参照して説明する。図3は、ヘッドユニットの概略構成を示す平面図である。図3に示したX軸方向及びY軸方向は、ヘッドユニット21が液滴吐出装置1に取り付けられた状態において、図1に示したX軸方向又はY軸方向と一致している。
【0037】
図3に示したように、ヘッドユニット21は、ユニットプレート23と、ユニットプレート23に搭載された9個の液滴吐出ヘッド20と、を有している。液滴吐出ヘッド20は、図示省略したヘッド保持部材を介してユニットプレート23に固定されている。固定された液滴吐出ヘッド20は、ヘッド本体がユニットプレート23に形成された孔(図示省略)に遊嵌して、ノズル基板25が、ユニットプレート23の面より突出した位置に位置している。図3は、ノズル基板25の側から見た図である。9個の液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向に分かれて、それぞれ3個ずつの液滴吐出ヘッド20を有するヘッド組42を3群、形成している。それぞれの液滴吐出ヘッド20のノズル列24Aは、ヘッドユニット21が液滴吐出装置1に取り付けられた状態において、Y軸方向に延在している。
【0038】
一つのヘッド組42が有する3個の液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向において、互いに隣り合う液滴吐出ヘッド20の、一方の液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24に対して、もう一方の液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24が半ノズルピッチずれて位置する位置に、配設されている。ヘッド組42が有する3個の液滴吐出ヘッド20において、全ての吐出ノズル24のX軸方向の位置を同じにすると、吐出ノズル24は、Y軸方向に半ノズルピッチの等間隔で並ぶ。すなわち、X軸方向の同じ位置において、それぞれの液滴吐出ヘッド20が有するそれぞれのノズル列24Aを構成する吐出ノズル24から吐出された液滴は、設計上では、Y軸方向に等間隔に並んで一直線上に着弾する。
液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向において互いに重なるため、X軸方向に階段状に並んでヘッド組42を構成している。
【0039】
ノズル列24Aは、例えば180個の吐出ノズル24を有しており、液滴吐出ヘッド20は、360個の吐出ノズル24を有している。9個の液滴吐出ヘッド20を有するヘッドユニット21は、3240個の吐出ノズル24を有している。一つのヘッドユニット21が備える9個の液滴吐出ヘッド20が有する18列のノズル列24Aは、1本のノズル列として扱うこともできる。当該ノズル列を「ユニットノズル列240A」と表記する。ユニットノズル列240Aは、3240個の吐出ノズル24を有している。ユニットノズル列240Aのそれぞれの吐出ノズル24から一滴ずつ吐出させて、X軸方向が同じ位置になるように着弾させると、3240個の点が半ノズルピッチのピッチ間隔で連なる直線が形成される。
【0040】
<機能液供給部>
次に、機能液供給部4の構成について、図4を参照して詳細に説明する。図4は、機能液供給部の構成を示す模式図である。
図4に示すように、機能液供給部4は、機能液タンク41と、切替バルブ43と、圧力調整弁77と、配管接続部材67と、を備えている。また、これらのタンクなどの間及び液滴吐出ヘッド20を連通しており、機能液40を機能液タンク41から液滴吐出ヘッド20へ供給するための流路を構成する供給管61、供給管62、供給管63、及び循環管64を備えている。機能液供給部4は、また、ポンプ73を備えている。ポンプ73は、機能液40を機能液タンク41から液滴吐出ヘッド20へ送る圧力を機能液40に付与する。
ポンプ73と、切替バルブ43とは、図4に破線で示したように吐出装置制御部7と電気的に接続されており、吐出装置制御部7によって制御される。液滴吐出ヘッド20も、吐出装置制御部7と電気的に接続されており、吐出装置制御部7によって制御される。
機能液供給部4が、液状体供給部に相当する。
【0041】
ポンプ73が供給管61と供給管62の間に配設されている。機能液40は、ポンプ73によって、供給管61及び供給管62を経由して機能液タンク41から切替バルブ43に送出される。機能液タンク41は、液滴吐出ヘッド20に送出する機能液40を貯留するためのタンクである。
バルブ保持枠44は、ヘッド機構部2のヘッドキャリッジ22のブリッジプレート27に固定されている。切替バルブ43は、バルブ保持枠44に保持されることで、バルブ保持枠44を介してブリッジプレート27(ヘッドキャリッジ22)に固定されている。ブリッジプレート27に固定された切替バルブ43は、液滴吐出ヘッド20のX軸方向の移動と一緒に、X軸方向に移動する。
【0042】
機能液タンク41と切替バルブ43とは、供給管61、ポンプ73、及び供給管62を介して連通している。機能液タンク41と切替バルブ43とは、また、循環管64を介しても連通している。機能液40は、ポンプ73によって、供給管61、ポンプ73、及び供給管62を経由して、機能液タンク41から切替バルブ43に送出される。
切替バルブ43には、液滴吐出ヘッド20の方に機能液40を送出する経路である供給管63も接続されている。切替バルブ43は、供給管62に連通する流路を、循環管64又は供給管63に切替える。
【0043】
切替バルブ43によって、供給管62に連通する流路が、供給管63に接続されている状態では、切替バルブ43に供給された機能液40は液滴吐出ヘッド20に供給される。
切替バルブ43によって、供給管62に連通する流路が、循環管64に接続されている状態では、切替バルブ43に供給された機能液40は、循環管64を経由して、機能液タンク41に戻される。機能液タンク41と、供給管61と、ポンプ73と、供給管62と、切替バルブ43と、循環管64とを備える、循環路が形成されており、当該循環路において、機能液40を循環させることができる。循環路において、機能液40を循環させることにより、機能液40に含まれる顔料などが沈降することを抑制することができる。
機能液タンク41と、供給管61と、ポンプ73と、供給管62と、切替バルブ43と、循環管64とから成る循環路が、液状体供給部が備える循環路に相当する。
【0044】
切替バルブ43と圧力調整弁77とは、供給管63を介して連通している。
圧力調整弁77は調整弁支持枠77aに固定されて支持されている。調整弁支持枠77aは、ヘッドユニット21を構成するユニットプレート23に固定されている。したがって、圧力調整弁77は、調整弁支持枠77aを介して、ユニットプレート23に固定されている。圧力調整弁77は、例えば大気圧を利用して、流入した機能液40の液圧を一定の液圧に調整して出力する。圧力調整弁77によって、液滴吐出ヘッド20に供給される機能液40の液圧が一定の液圧に調整される。
圧力調整弁77と液滴吐出ヘッド20とは、配液管66を介して連通している。配液管66の液滴吐出ヘッド20側は、2本に分岐しており、分岐した先端には、それぞれ配管接続部材67が固定されている。配管接続部材67が液滴吐出ヘッド20の接続針26と嵌合して、接続針26に形成された導入孔を介して、液滴吐出ヘッド20の内部と配液管66の流路とが連通されている。
【0045】
上述したように、機能液40は、ポンプ73によって、送出される。機能液40は、機能液タンク41から供給管61を介してポンプ73に至り、ポンプ73から供給管62を介して切替バルブ43に至る。機能液供給部4では、内部に保持している機能液40を、機能液タンク41と、供給管61と、ポンプ73と、供給管62と、切替バルブ43と、循環管64とを備える循環路を循環させながら、保持することができる。
【0046】
液滴吐出ヘッド20から機能液40が吐出される場合には、切替バルブ43は、供給管62に連通する流路を、循環管64から、供給管63に切替える。循環路を循環していた機能液40は、供給管63及び配液管66を介して、切替バルブ43から液滴吐出ヘッド20に、供給される。機能液40は、圧力調整弁77によって適切な圧力に調整されて、液滴吐出ヘッド20に供給される。
【0047】
<描画工程>
次に、液滴吐出装置1によってフィルム10に描画する描画工程について、図5、及び図6を参照して説明する。図5は、描画工程を示すフローチャートである。図6は、描画工程における、吸着テーブルの位置に対するフィルムの被描画領域の位置及びヘッドユニットの位置を示す説明図である。図6(a)は、フィルムにおける被描画区画と、吐出走査における描画行との位置関係を示す説明図であり、図6(b)は、フィルム送りが実施された状態を示す説明図である。図6に示したX軸方向及びY軸方向は、図1に示したX軸方向又はY軸方向と一致している。矢印aの方向が、フィルム10が移動する方向である。
【0048】
図5のステップS1では、フィルム送りを実施する。並行して、機能液供給部4において、機能液40を循環させる。
フィルム送りは、上述した供給ローラー34を回動させて、フィルム10の所定の長さを吸着テーブル33の吸着面上に送出する。上述したように、吸着テーブル33に対して供給ローラー34の反対側には媒体送りローラー36が配設されている。供給ローラー34から送出されたフィルム10は、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間の部分が、媒体送りローラー36のトルク制御機構によって制御されたトルクに応じた張力で張られる。
フィルム10をY軸方向に移動させて、図6(a)に示したように、フィルム10の被描画領域101を、吸着テーブル33の吸着面に臨む位置に位置させる。被描画領域101は、フィルム10において、フィルム10が吸着テーブル33に吸着された状態を解除することなく描画を実施することが可能な範囲の領域である。
【0049】
図4を参照して説明したように、機能液供給部4においては、切替バルブ43によって、供給管62に循環管64を接続する。機能液タンク41から切替バルブ43に供給された機能液40は、循環管64を経由して、機能液タンク41に戻される。機能液40は、機能液タンク41と、供給管61と、ポンプ73と、供給管62と、切替バルブ43と、循環管64とを備える循環路において、循環する。循環路において、機能液40を循環させることにより、機能液40に含まれる顔料などが沈降することを抑制することができる。
ステップS1におけるフィルム送りを実施する工程が、相対移動工程に相当する。ステップS1におけるフィルム送りを実施する工程は、媒体供給工程及び媒体除去工程にも相当する。ステップS1における、機能液供給部4において機能液40を循環させる工程が、循環工程に相当する。
【0050】
次に、図5のステップS2では、吸着テーブル33によってフィルム10を吸着する。図6(a)に示した、フィルム10における吸着テーブル33と重なる部分の略全面が、吸着テーブル33に吸着される。
被描画領域101の全面に描画するため、吸着テーブル33は、被描画領域101より広い範囲を吸着して平坦に維持することが好ましい。ヘッドユニット21のユニットノズル列240Aは、被描画領域101を包含する範囲に機能液40の液滴を着弾させることができる位置に位置することが可能であることが必要である。
【0051】
次に、図5のステップS3では、X軸走査機構11及びY軸走査機構12を稼働させて、ヘッドユニット21を描画開始位置に移動させる。描画開始位置は、例えば、被描画領域101における、フィルム10の進行方向の最も下流側(巻取りリール32側)に描画できる位置である。図6(a)に示したヘッドユニット21aは、当該描画開始位置に位置したヘッドユニット21である。
【0052】
次に、図5のステップS4では、描画走査を実施する。図6(a)に示したヘッドユニット21aの位置に位置したヘッドユニット21をX軸方向(主走査方向)に走査させると共に、吐出ノズル24から描画形状に対応した位置に向けて液滴を吐出することで、第一描画行121に描画する。第一描画行121は、被描画領域101における、フィルム10の進行方向の最も下流側の、Y軸方向の幅がユニット描画幅WUの領域である。ユニット描画幅WUは、ヘッドユニット21のユニットノズル列240Aによって描画可能な幅である。ステップS4の描画走査を実施する工程が、吐出走査工程に相当する。
【0053】
次に、図5のステップS5では、フィルム10の現在描画を実施している被描画領域101への描画が完了したか否かを判定する。被描画領域101への描画が完了していなかった(ステップS5でNO)場合には、ステップS6に進む。被描画領域101への描画が完了していた(ステップS5でYES)場合には、ステップS7に進む。
【0054】
ステップS5の次に、ステップS6では、改行(副走査)を実施する。改行は、描画走査を実施してヘッドユニット21bの位置に位置したヘッドユニット21を、Y軸方向におけるフィルム10の進行方向の上流側に移動させることで実施する。改行における移動距離(改行量)は、描画走査で描画したY軸方向の幅であるユニット描画幅WUである。幅がユニット描画幅WUの領域に描画し、改行量がユニット描画幅WUの改行を実施し、当該改行位置で描画走査を実施することで、フィルム10上に隙間なく描画することができる。
ステップS6の改行(副走査)が実施されて、ヘッドユニット21は、図6(a)に示したヘッドユニット21cの位置に位置する。
【0055】
ステップS6の次には、ステップS4に進み、ステップS4及びステップS5を繰り返す。ステップS6の改行を実施して、ヘッドユニット21が図6(a)に示したヘッドユニット21cの位置に位置した次に実施するステップS4では、ヘッドユニット21cの位置に位置したヘッドユニット21を、X軸走査機構11によってX軸方向に走査させて、第二描画行122に描画する描画走査を実施する。
ステップS4、ステップS5、及びステップS6を繰り返して実施することで、第一描画行121及び第二描画行122に続けて、第三描画行123に描画して、図6(a)に示したように、被描画領域101の全面への描画が完了する。
なお、液滴吐出装置1の動作を判りやすく説明するために工程を分けて説明したが、ステップS3からステップS6の各工程は、ひとつの工程として実施してもよい。例えば、描画する画像をビットマップに展開し、当該ビットマップにしたがって描画する工程であってもよい。この場合、ビットマップは、画像を、機能液40の液滴を着弾させる位置情報、及び当該機能液40を吐出させる吐出ノズルの情報で規定したマップである。
【0056】
ステップS5の次に、ステップS7では、フィルム10の描画対象領域への描画が完了したか否かを判定する。フィルム10の描画対象領域への描画が完了していなかった(ステップS7でNO)場合には、ステップS1に戻り、ステップS1からステップS7を繰り返す。
ステップS1からステップS6を実施して1個所の被描画領域101に対する描画を完了した次も、ステップS1から各ステップを実施する。ステップS7の次に実施するステップS1では、図6(a)に示した描画が完了した被描画領域101に隣接する被描画領域101である被描画領域101aを、図6(b)に示した被描画領域101aのように、吸着テーブル33に臨む位置に移動させる。
【0057】
次に、図5のステップS7において、フィルム10の描画対象領域への描画が完了していた(ステップS7でYES)場合には、液滴吐出装置1によってフィルム10に描画する描画工程を終了する。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0059】
(変形例1)前記実施形態においては、ステップS1において、フィルム送り工程に並行して、機能液40の循環を実施していた。機能液40の循環は、他の工程が実施されている間にも実施してもよい。例えば、ステップS2のフィルム吸着工程や、ステップS3のヘッドユニット21を描画開始位置に移動する工程などの工程が実施されている間においても、機能液40の循環を実施してもよい。ステップS6の改行(副走査)を実施する工程においても、工程の実施に要する時間が一定時間を超えるような場合には、並行して機能液40の循環を実施してもよい。
【0060】
(変形例2)前記実施形態においては、被描画媒体は、長尺のフィルムであるフィルム10であった。しかし、被描画媒体は、フィルム状の媒体や、長尺の媒体に限らない。被描画媒体の材質は、紙や金属や樹脂など、液滴吐出装置を用いて描画できる材質であれば、どのような材質であってもよい。被描画媒体の形態は、いわゆる単票紙など、液滴吐出装置を用いて描画できる形態であれば、どのような形態であってもよい。
被描画媒体の形態が単票紙などの場合、当該単票紙などを描画装置に供給する給材工程が媒体供給工程に相当し、当該単票紙などを描画装置から除材する工程が媒体除去工程に相当する。
【0061】
(変形例3)前記実施形態においては、機能液40は紫外線硬化型の機能液であったが、液状体が紫外線硬化型の機能液であることは必須ではない。液状体は、例えば、他の波長の光によって硬化が進行する機能液や、熱硬化型の機能液などであってもよい。例えば顔料を含む機能液のように、含有する成分が沈降する可能性があるような液状体を扱う描画装置であれば、上記実施形態で説明した描画方法を好適に適用して、液状体の成分が装置内で沈降することを抑制することができる。
【0062】
(変形例4)前記実施形態においては、ステップS4の描画走査においては、X軸走査機構11によってヘッドユニット21をX軸方向に移動させることによって、液滴吐出ヘッド20とフィルム10とを相対移動させていた。しかし、吐出走査工程において、吐出ヘッドを移動させることによって吐出ヘッドと被描画媒体とを相対移動させることは必須ではない。被描画媒体側を移動させることによって、吐出ヘッドと被描画媒体とを相対移動させる構成であってもよい。
【0063】
(変形例5)前記実施形態においては、ステップS4の描画走査においては、X軸走査機構11によってヘッドユニット21をX軸方向に移動させることによって、液滴吐出ヘッド20とフィルム10とを相対移動させており、フィルム10の供給方向はY軸方向であった。しかし、吐出走査工程における吐出ヘッドと被描画媒体との相対移動方向と、被描画媒体を供給したり取り除いたりする際の被描画媒体の移動方向とが異なることは必須ではない。吐出走査工程における吐出ヘッドと被描画媒体との相対移動方向と、被描画媒体を供給したり取り除いたりする際の被描画媒体の移動方向とが略同じ方向であってもよい。
【0064】
(変形例6)前記実施形態においては、機能液供給部4には、機能液タンク41と、供給管61と、ポンプ73と、供給管62と、切替バルブ43と、循環管64とからなる循環路が形成されており、機能液40は、循環路を循環させられていた。しかし、液状体供給部に液状体を循環させるための循環路を形成することは必須ではない。機能液タンク41のような、液状体を貯留する液状体貯留部において、攪拌装置を設けて、当該攪拌装置を用いて、液状体貯留部に貯留されている液状体を攪拌することで、液状体貯留部の内部において、液状体の対流(循環)を発生させる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…液滴吐出装置、2…ヘッド機構部、3…供給排出機構部、4…機能液供給部、7…吐出装置制御部、10…フィルム、11…X軸走査機構、12…Y軸走査機構、20…液滴吐出ヘッド、21…ヘッドユニット、21a,21b,21c…ヘッドユニット、24…吐出ノズル、24A…ノズル列、27…ブリッジプレート、31…供給リール、32…巻取りリール、33…吸着テーブル、34…供給ローラー、34a…従動ローラー、36…媒体送りローラー、36a…従動ローラー、40…機能液、41…機能液タンク、43…切替バルブ、61,62,63…供給管、64…循環管、66…配液管、73…ポンプ、101…被描画領域、101a…被描画領域、121…第一描画行、122…第二描画行、123…第三描画行、240A…ユニットノズル列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出ヘッドと被描画媒体とを相対移動させると共に、前記吐出ヘッドから液状体の液滴を吐出する吐出走査工程と、
前記吐出ヘッドからの前記液滴の吐出を停止した状態で、前記吐出ヘッドと前記被描画媒体とを相対移動させる相対移動工程と、
前記吐出ヘッドに前記液状体を供給するための液状体供給部において前記液状体を循環させる循環工程と、を有し、
前記循環工程を、前記相対移動工程が実施されている間に実施することを特徴とする描画方法。
【請求項2】
前記相対移動工程が、前記吐出ヘッドが対向可能な描画可能領域に前記被描画媒体を供給する媒体供給工程、及び前記描画可能領域から前記被描画媒体を取り除く媒体除去工程の少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項1に記載の描画方法。
【請求項3】
前記液状体供給部は、前記液状体を循環させるための循環路を備え、
前記循環工程では、前記循環路において前記液状体を循環させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−43354(P2013−43354A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182246(P2011−182246)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】