説明

描画方法

【課題】従来の描画装置では、描画にかかる時間を短縮することが困難である。
【解決手段】描画シートWに設定された許可領域73と吐出ヘッド33とを互いに対面させた状態で、X方向に吐出ヘッド33を許可領域73に交差させながら、吐出ヘッド33から機能液53を許可領域73に吐出する工程である交差吐出工程を行い、許可領域73に対する1つの描画が完了するまでキャリッジ9の往復移動を反復させるときに、許可領域73の外側に設けられた余白領域75に吐出ヘッド33から機能液53を吐出することによって、余白領域75にテストパターンを形成する検査パターン形成工程と、キャリッジ9に設けられた撮像装置17でテストパターンを撮像する撮像工程と、を含む検査工程を、キャリッジ9の往復移動の往路または復路の一方において、前記交差吐出工程に並べて実施する、ことを特徴とする描画方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、描画装置の1つである液滴吐出装置において、吐出ヘッドから吐出された液滴によって形成されるドットを画像認識するスキャナーをキャリッジに搭載した構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−172802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された液滴吐出装置では、スキャナーでドットを画像認識した結果に基づいて、吐出ヘッドの吐出性能を検査することができる。このため、この液滴吐出装置では、吐出性能を検査した結果に応じて、吐出性能の低下を回復させるなどの処理を行うことができるので、描画品位の低下を避けやすくすることができる。
このような描画装置では、製品とすべき実際の描画である実描画に先立って吐出性能の検査を実施することが一般的である。そして、吐出性能を検査した結果、吐出性能が正常であるという判定結果が得られてから実描画が開始される。
このように、従来の描画装置では、実描画を開始するまでに吐出性能の検査を実施し、その判定結果を得るまでの時間が必要となり、描画にかかる時間が長くなってしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0006】
[適用例1]ワークに設定された描画許可領域と液状体を吐出する吐出ヘッドとを互いに対面させた状態で、前記ワークの搬送方向と交差する方向において、前記吐出ヘッドを支持するキャリッジを前記ワークに対して相対的に往復移動させることによって、前記吐出ヘッドを前記描画許可領域に交差させながら、前記キャリッジの前記相対的な往復移動の往路または復路の少なくとも一方において前記吐出ヘッドから前記液状体を前記描画許可領域に吐出する工程である交差吐出工程を行い、前記描画許可領域に対する1つの描画が完了するまで前記キャリッジの相対的な往復移動を反復するときに、前記描画許可領域の外側に設けられた検査領域に前記吐出ヘッドから前記液状体を吐出することによって、前記検査領域に検査パターンを形成する検査パターン形成工程と、前記キャリッジに設けられた撮像装置で前記検査パターンを撮像する撮像工程と、を含む検査工程を、最初の前記キャリッジの相対的な往復移動の往路または復路の一方において、前記交差吐出工程に並べて実施する、ことを特徴とする描画方法。
【0007】
この適用例の描画方法は、搬送方向に搬送されるワークに対して、液状体を吐出する吐出ヘッドで液状体を吐出することによって、ワークに液状体で描画を行う方法である。この描画方法は、交差吐出工程と、検査工程と、を含む。
交差吐出工程は、ワークの搬送方向と交差する方向に吐出ヘッドをワークに対して相対的に往復移動させることによって、吐出ヘッドをワークの描画許可領域に交差させながら、吐出ヘッドから液状体を描画許可領域に吐出する工程である。吐出ヘッドはキャリッジに支持されている。交差吐出工程では、キャリッジのワークに対する相対的な往復移動の往路または復路の少なくとも一方において、吐出ヘッドから液状体を描画許可領域に吐出する。この描画方法では、描画許可領域に対する1つの描画が完了するまでキャリッジの相対的な往復移動を反復させる。
検査工程は、検査パターン形成工程と、撮像工程と、を含む。
検査パターン形成工程では、描画許可領域の外側に設けられた検査領域に吐出ヘッドから液状体を吐出することによって、検査領域に検査パターンを形成する。
撮像工程では、キャリッジに設けられた撮像装置で検査パターンを撮像する。撮像装置は、キャリッジにおいて、ワークに対するキャリッジの相対変位の向きで吐出ヘッドに後続する位置に設けられている。
この描画方法では、検査工程を、最初のキャリッジの相対的な往復移動の往路または復路の一方において、交差吐出工程に並べて実施する。この描画方法では、ワークの描画許可領域に対する1つの描画を行う中で検査工程を実施するので、描画を開始するまでの時間を短縮することができる。
【0008】
[適用例2]上記の描画方法であって、前記検査パターンを撮像した結果に基づいて、前記吐出ヘッドにおける前記液状体の吐出にかかる性能の合否を判定する判定工程を有し、前記判定工程における判定結果を待たずに、前記検査パターン形成工程の後に行われる前記交差吐出工程を開始する、ことを特徴とする描画方法。
【0009】
この適用例の描画方法は、判定工程を有する。判定工程では、検査パターンを撮像した結果に基づいて、吐出ヘッドにおける液状体の吐出にかかる性能の合否を判定する。
そして、この描画方法では、判定工程における判定結果を待たずに、検査パターン形成工程の後に行われる交差吐出工程を開始するので、判定結果を待つ時間を省略することができる。これにより、描画にかかる時間を一層短縮することができる。
【0010】
[適用例3]上記の描画方法であって、前記撮像工程における前記キャリッジの前記ワークに対する相対移動の速さを、前記交差吐出工程における前記相対移動の速さよりも遅くする、ことを特徴とする描画方法。
【0011】
この適用例では、撮像工程におけるキャリッジのワークに対する相対移動の速さを、交差吐出工程における相対移動の速さよりも遅くするので、検査パターンを確実に撮像しやすくすることができる。
【0012】
[適用例4]上記の描画方法であって、前記最初の往復移動における往路または復路のうち前記検査工程が実施される方の前記相対移動の速さを、他の前記交差吐出工程における前記相対移動の速さよりも遅くする、ことを特徴とする描画方法。
【0013】
この適用例では、最初の往復移動における往路または復路のうち検査工程が実施される方の相対移動の速さを、他の交差吐出工程における相対移動の速さよりも遅くするので、検査パターンを確実に撮像しやすくすることができる。
【0014】
[適用例5]上記の描画方法であって、前記最初の往復移動における往路において、前記交差吐出工程を実施してから、前記検査工程を実施する、ことを特徴とする描画方法。
【0015】
この適用例では、最初の往復移動における往路において、交差吐出工程を実施してから、検査工程を実施するので、描画を開始するまでの時間を短縮することができる。
【0016】
[適用例6]上記の描画方法であって、前記最初の往復移動における往路において、前記検査工程を実施してから、前記交差吐出工程を実施する、ことを特徴とする描画方法。
【0017】
この適用例では、最初の往復移動における往路において、検査工程を実施してから、交差吐出工程を実施するので、判定工程における判定結果を早期に出しやすくすることができる。
【0018】
[適用例7]上記の描画方法であって、前記最初の往復移動における復路において、前記検査工程を実施してから、前記交差吐出工程を実施する、ことを特徴とする描画方法。
【0019】
[適用例8]上記の描画方法であって、前記検査工程を、前記1つの描画における最後の前記交差吐出工程にも並べて実施する、ことを特徴とする描画方法。
【0020】
この適用例では、検査工程を、1つの描画における最後の交差吐出工程にも並べて実施するので、1つの描画における描画品位を把握することができる。
【0021】
[適用例9]上記の描画方法であって、前記検査工程を、前記交差吐出工程ごとに前記交差吐出工程に並べて実施する、ことを特徴とする描画方法。
【0022】
この適用例では、検査工程を、交差吐出工程ごとに交差吐出工程に並べて実施するので、1つの描画における描画品位を高い精度で把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示す斜視図。
【図2】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示す斜視図。
【図3】図1中のA−A線における断面図。
【図4】本実施形態における吐出ヘッド、照射装置及び撮像装置の底面図。
【図5】図3中のB−B線における断面図。
【図6】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示すブロック図。
【図7】本実施形態における描画処理の流れを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面を参照しながら、描画装置の1つである液滴吐出装置を例に、実施形態について説明する。なお、各図面において、それぞれの構成を認識可能な程度の大きさにするために、構成や部材の縮尺が異なっていることがある。
【0025】
本実施形態における液滴吐出装置1は、図1に示すように、送出装置3と、巻取装置5と、テーブル装置7と、キャリッジ9と、キャリッジ搬送装置11と、を有している。
キャリッジ9には、ヘッドユニット13と、2個の照射装置15と、撮像装置17と、が設けられている。
液滴吐出装置1では、ヘッドユニット13と描画シートWとの平面視での相対位置を変化させつつ、ヘッドユニット13から液状体を液滴として吐出させることによって、描画シートWに液状体で所望の描画パターンを描画することができる。なお、図中のY方向は描画シートWの送り方向を示し、X方向は平面視でY方向とは直交する方向を示している。また、X方向及びY方向によって規定されるXY平面と直交する方向は、Z方向として規定される。
【0026】
描画シートWは、ロール19aとして液滴吐出装置1にセットされる。ロール19aには、描画する前の描画シートWが巻き取られている。描画シートWは、送出装置3によって、ロール19aから巻きほどかれてから、ヘッドユニット13に対向しつつ、Y方向に沿って送り出される。
液状体で描画パターンが描画された描画シートWは、ヘッドユニット13よりもY方向に下流側で、巻取装置5によってロール19bとして巻き取られる。
このように、液滴吐出装置1では、ロールトゥロールの形態で描画シートWに描画を行うことができる。
【0027】
送出装置3は、送出ローラー21と、送出モーター23と、を有している。
また、巻取装置5は、巻取ローラー25と、巻取モーター27と、を有している。
送出ローラー21及び巻取ローラー25は、図2に示すように、それぞれ、X方向に延在している。送出ローラー21及び巻取ローラー25は、Y方向に互いに間隔をあけた状態で並んでいる。送出ローラー21及び巻取ローラー25は、それぞれ、回転可能に構成されている。
上述したロール19aは、送出ローラー21にセットされる。また、描画パターンが描画された描画シートWは、巻取ローラー25によってロール19bとして巻き取られる。描画シートW(図1)は、搬送経路28に沿ってY方向に送られる。
送出モーター23は、送出ローラー21を回転駆動するための動力を発生する。送出モーター23からの動力は、動力伝達機構29aを介して送出ローラー21に伝達される。
巻取モーター27は、巻取ローラー25を回転駆動するための動力を発生する。巻取モーター27からの動力は、動力伝達機構29bを介して巻取ローラー25に伝達される。
【0028】
テーブル装置7は、図2に示すように、平面視で送出ローラー21と巻取ローラー25との間に設けられている。テーブル装置7は、平面視で搬送経路28に重なる位置に設けられている。
テーブル装置7は、搬送経路28のヘッドユニット13側とは反対側(本実施形態では下側)に設けられている。テーブル装置7は、ヘッドユニット13側に向けられた載置面7aを有している。
テーブル装置7は、載置面7aで描画シートWを下側から支えることによって、描画シートWの平坦性を維持させる。
【0029】
ヘッドユニット13は、キャリッジ9を図1中のA視方向に見たときの正面図である図3に示すように、ヘッドプレート31と、吐出ヘッド33と、を有している。
吐出ヘッド33は、底面図である図4に示すように、ノズル面35を有している。ノズル面35には、複数のノズル37が形成されている。なお、図4では、ノズル37をわかりやすく示すため、ノズル37が誇張され、且つノズル37の個数が減じられている。
吐出ヘッド33において、複数のノズル37は、Y方向に沿って配列する6本のノズル列39を構成している。6本のノズル列39は、X方向に互いに隙間をあけた状態で並んでいる。各ノズル列39において、複数のノズル37は、Y方向に沿って所定のノズル間隔Pで形成されている。
以下において、6本のノズル列39のそれぞれが識別される場合に、ノズル列39a、ノズル列39b、ノズル列39c、ノズル列39d、ノズル列39e、及びノズル列39fという表記が用いられる。
【0030】
2個の照射装置15は、図3に示すように、それぞれ、X方向にヘッドユニット13を挟んで互いに対峙する位置に設けられている。以下において、2個の照射装置15のそれぞれを識別する場合に、照射装置15a及び照射装置15bという表記が用いられる。
照射装置15a及び照射装置15bは、それぞれ、紫外光41を発する光源43を有している。光源43からの紫外光41は、吐出ヘッド33から吐出された機能液53(液状体)の硬化を促進させる。機能液53は、紫外光41の照射を受けると、硬化が促進する。
光源43としては、例えば、LED、LD、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等の種々の光源43が採用され得る。
なお、本実施形態では、光源43のY方向における長さは、図4に示すように、吐出ヘッド33のノズル列39を網羅する長さに設定されている。
なお、照射装置15aの光源43と、照射装置15bの光源43とは、それぞれ、吐出ヘッド33のノズル面35がX方向に沿って描く軌跡に、平面視で重なっている。
【0031】
撮像装置17は、図4に示すように、X方向において、照射装置15aの吐出ヘッド33側とは反対側に設けられている。つまり、X方向において、撮像装置17と吐出ヘッド33との間に、照射装置15aが位置している。
撮像装置17は、図示しない複数の撮像素子を有している。撮像素子としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)などが採用され得る。本実施形態では、複数の撮像素子は、撮像領域44にわたって設けられている。
本実施形態では、撮像領域44のY方向における長さは、吐出ヘッド33のノズル列39を網羅する長さに設定されている。なお、撮像装置17の撮像領域44は、吐出ヘッド33のノズル面35がX方向に沿って描く軌跡に、平面視で重なっている。
【0032】
吐出ヘッド33は、図3中のB−B線における断面図である図5に示すように、ノズルプレート46と、キャビティープレート47と、振動板48と、複数の圧電素子49と、を有している。
ノズルプレート46は、ノズル面35を有している。複数のノズル37は、ノズルプレート46に設けられている。
キャビティープレート47は、ノズルプレート46のノズル面35とは反対側の面に設けられている。キャビティープレート47には、複数のキャビティー51が形成されている。各キャビティー51は、各ノズル37に対応して設けられており、対応する各ノズル37に連通している。各キャビティー51には、図示しないタンクから機能液53が供給される。
【0033】
振動板48は、キャビティープレート47のノズルプレート46側とは反対側の面に設けられている。振動板48は、Z方向に振動(縦振動)することによって、キャビティー51内の容積を拡大したり、縮小したりする。
複数の圧電素子49は、それぞれ、振動板48のキャビティープレート47側とは反対側の面に設けられている。各圧電素子49は、各キャビティー51に対応して設けられており、振動板48を挟んで各キャビティー51に対向している。各圧電素子49は、駆動信号に基づいて、伸張する。これにより、振動板48がキャビティー51内の容積を縮小する。このとき、キャビティー51内の機能液53に圧力が付与される。その結果、ノズル37から、機能液53が液滴55として吐出される。吐出ヘッド33による液滴55の吐出法は、インクジェット法の1つである。インクジェット法は、塗布法の1つである。
【0034】
上記の構成を有する吐出ヘッド33は、図3に示すように、ノズル面35がヘッドプレート31から突出した状態で、ヘッドプレート31に支持されている。
キャリッジ9は、図3に示すように、ヘッドユニット13を支持している。ここで、ヘッドユニット13は、ノズル面35がZ方向の下方に向けられた状態でキャリッジ9に支持されている。
なお、本実施形態では、縦振動型の圧電素子49が採用されているが、機能液53に圧力を付与するための加圧手段は、これに限定されず、例えば、下電極と圧電体層と上電極とを積層形成した撓み変形型の圧電素子も採用され得る。また、加圧手段としては、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなども採用され得る。さらに、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって機能液に圧力を付与する構成も採用され得る。
【0035】
本実施形態では、機能液53として、光の照射を受けることによって硬化が促進する機能液53が採用されている。本実施形態では、機能液53の硬化を促進させる光として紫外光41が採用されている。
機能液53は、樹脂材料、光重合開始剤及び溶媒などを、成分として含んでいる。これらの成分に、顔料や染料等の色素や、親液性や撥液性等の表面改質材料などの機能性材料を添加することによって固有の機能を有する機能液53を生成することができる。顔料や染料等の色素を含有する機能液53は、例えば、描画シートWに描画する画像を形成するための機能液53として採用され得る。以下において、描画シートWに描画する画像を形成するための機能液53は、画像塗料と呼ばれる。
【0036】
また、機能液53の成分としての樹脂材料に、例えば、アクリル系の樹脂材料などの光透過性を有する樹脂材料を採用することによって、光透過性を有する機能液53を構成することができる。このような光透過性を有する機能液53は、例えば、クリアインクとしての用途が考えられる。以下において、光透過性を有する機能液53は、透光塗料と呼ばれる。
クリアインクの用途としては、例えば、画像を被覆するオーバーコート層としての用途や、画像を形成する前の下地層としての用途などが考えられる。以下において、下地層として適用される機能液53は、下地塗料と呼ばれる。
下地塗料としては、透光塗料だけでなく、透光塗料に種々の顔料を添加した機能液53を採用することもできる。
機能液53における樹脂材料は、樹脂膜を形成する材料である。このような樹脂材料としては、常温で液状であり、重合させることによってポリマーとなる材料であれば特に限定されない。樹脂材料としては、粘性が小さいものが好ましく、オリゴマーの形態であるのが好ましい。さらに、樹脂材料としては、モノマーの形態であることが一層好ましい。
光重合開始剤は、ポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させる添加剤である。光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが採用され得る。本実施形態では、光重合開始剤として、ラジカル型の光重合開始剤が採用されている。ラジカル型の光重合開始剤としては、例えば、チバ・ジャパン(株)社製のイルガキュア819などが採用され得る。
溶媒は、樹脂材料の粘度を調整するためのものである。
【0037】
本実施形態では、機能液53として、相互に色が異なる5種類の画像塗料と、1種類の透光塗料とが採用されている。5種類の画像塗料において、相互に異なる色は、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)及びホワイト(W)である。
なお、以下において、5種類の機能液53を色ごとに識別する場合に、機能液53Y、機能液53M、機能液53C、機能液53K、及び機能液53Wという表記が用いられる。また、透光塗料に対応する機能液53は、機能液53Tという表記が用いられる。
本実施形態では、異なる5色の画像塗料(機能液53)が採用されているので、画像におけるカラー表示が実現され得る。
吐出ヘッド33において、前述した6本のノズル列39(図4)は、機能液53の色ごとに区分されている。本実施形態では、ノズル列39aに属するノズル37は、機能液53Kを液滴55として吐出する。ノズル列39bに属するノズル37は、機能液53Cを液滴55として吐出する。ノズル列39cに属するノズル37は、機能液53Mを液滴55として吐出する。ノズル列39dに属するノズル37は、機能液53Yを液滴55として吐出する。ノズル列39eに属するノズル37は、機能液53Wを液滴55として吐出する。ノズル列39fに属するノズル37は、機能液53Tを液滴55として吐出する。
【0038】
キャリッジ搬送装置11は、図2に示すように、架台61と、ガイドレール63と、キャリッジ位置検出装置65と、を有している。
架台61は、X方向に延在しており、テーブル装置7及び搬送経路28をX方向にまたいでいる。架台61は、搬送経路28を挟んでテーブル装置7に対峙しており、搬送経路28を挟んで載置面7aに対向している。架台61は、支柱67aと支柱67bとによって支持されている。支柱67a及び支柱67bは、平面視で搬送経路28を挟んでX方向に互いに対峙する位置に設けられている。支柱67a及び支柱67bは、それぞれ、テーブル装置7の載置面7aよりもZ方向の上方に突出している。これにより、架台61とテーブル装置7との間には、隙間が保たれている。
【0039】
ガイドレール63は、架台61のテーブル装置7側に設けられている。ガイドレール63は、X方向に沿って延在しており、架台61のX方向における幅にわたって設けられている。
前述したキャリッジ9は、ガイドレール63に支持されている。キャリッジ9がガイドレール63に支持された状態において、吐出ヘッド33のノズル面35は、Z方向においてテーブル装置7側に向いている。キャリッジ9は、ガイドレール63によってX方向に沿って案内され、X方向に往復動可能な状態でガイドレール63に支持されている。なお、平面視で、キャリッジ9がテーブル装置7に重なっている状態において、ノズル面35とテーブル装置7の載置面7aとは、互いに隙間を保った状態で対向する。
キャリッジ位置検出装置65は、架台61とキャリッジ9との間に設けられており、X方向に延在している。キャリッジ位置検出装置65は、キャリッジ9のX方向における位置を検出する。
【0040】
キャリッジ9は、図示しない移動機構及び動力源によって、X方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、キャリッジ9をX方向に沿って移動させるための動力源として、後述するキャリッジ搬送モーターが採用されている。キャリッジ搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
キャリッジ搬送モーターからの動力は、移動機構を介してキャリッジ9に伝達される。これにより、キャリッジ9は、ガイドレール63に沿って、すなわちX方向に沿って往復移動することができる。つまり、キャリッジ搬送装置11は、キャリッジ9に支持されたヘッドユニット13、2個の照射装置15及び撮像装置17を、X方向に沿って往復移動させることができる。
【0041】
ここで、本実施形態では、図1に示すように、描画シートWに、製品となるパターンの描画が許可される領域である許可領域73と、許可領域73の外側に設定される余白領域75と、が設定される。許可領域73と余白領域75とは、X方向に並んでいる。本実施形態では、許可領域73と余白領域75とが、X方向に隣り合っている。また、本実施形態では、X方向において、許可領域73が支柱67a側に設定され、余白領域75が支柱67b側に設定されている。
キャリッジ9は、テーブル装置7をX方向にまたぐ領域にわたって移動することができる。このため、キャリッジ9に設けられている撮像装置17は、余白領域75に対面することができる。
【0042】
液滴吐出装置1は、図6に示すように、上記の各構成の動作を制御する制御部111を有している。制御部111は、CPU(Central Processing Unit)113と、駆動制御部115と、メモリー部117と、を有している。駆動制御部115及びメモリー部117は、バス119を介してCPU113に接続されている。
また、液滴吐出装置1は、キャリッジ搬送モーター121と、入力装置129と、表示装置131と、を有している。
キャリッジ搬送モーター121、入力装置129、及び表示装置131は、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0043】
キャリッジ搬送モーター121は、キャリッジ9を駆動するための動力を発生させる。
入力装置129は、各種の加工条件を入力する装置である。
表示装置131は、加工条件や、作業状況を表示する装置である。
液滴吐出装置1を操作するオペレーターは、表示装置131に表示される情報を確認しながら、入力装置129を介して種々の情報を入力することができる。
なお、送出モーター23、巻取モーター27、吐出ヘッド33、2個の照射装置15、及び撮像装置17も、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0044】
CPU113は、プロセッサーとして各種の演算処理を行う。駆動制御部115は、各構成の駆動を制御する。メモリー部117は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read-Only Memory)などを含んでいる。メモリー部117には、液滴吐出装置1における動作の制御手順が記述されたプログラムソフト135を記憶する領域や、各種のデータを一時的に展開する領域であるデータ展開部137などが設定されている。データ展開部137に展開されるデータとしては、例えば、描画すべきパターンが示される描画データや、描画処理等のプログラムデータなどが挙げられる。
駆動制御部115は、モーター制御部141と、吐出制御部145と、照射制御部147と、撮像制御部149と、表示制御部153と、を有している。
【0045】
モーター制御部141は、CPU113からの指令に基づいて、送出モーター23の駆動と、巻取モーター27の駆動と、キャリッジ搬送モーター121の駆動とを、個別に制御する。
吐出制御部145は、CPU113からの指令に基づいて、吐出ヘッド33の駆動を制御する。
照射制御部147は、CPU113からの指令に基づいて、照射装置15a及び照射装置15bのそれぞれにおける光源43の発光状態を個別に制御する。
撮像制御部149は、CPU113からの指令に基づいて、撮像装置17の駆動を制御する。
表示制御部153は、CPU113からの指令に基づいて、表示装置131の駆動を制御する。
【0046】
ここで、液滴吐出装置1における描画処理について説明する。
液滴吐出装置1では、制御部111が入力装置129から入出力インターフェイス133及びバス119を介して描画データを受け取ると、CPU113によって図7に示す描画処理が開始される。
ここで、描画データは、機能液53(液状体)で描画シートWに描画すべきパターンを指示するものであり、液滴55で形成すべきドットがビットマップ状に表現されている。描画シートWに描画されるパターンは、液滴55で形成される複数のドットの集合として表現される。描画シートWへのパターンの描画は、吐出ヘッド33を描画シートWに対向させた状態で、吐出ヘッド33を描画シートWに対して相対的に往復移動させながら、吐出ヘッド33から液滴55を所定周期で吐出させることによって行われる。
【0047】
本実施形態では、描画シートWの搬送を停止させた状態でキャリッジ9をX方向に沿って駆動させながら、吐出ヘッド33から液滴55を吐出させることによって、描画シートWへのパターンの描画が行われる。本実施形態では、描画シートWに許可領域73が設定されているので、吐出ヘッド33を許可領域73に対して交差させる過程で、吐出ヘッド33から許可領域73に液滴55を吐出させることによって、許可領域73にパターンの描画が行われる。
以下において、吐出ヘッド33を許可領域73に交差させながら、吐出ヘッド33から許可領域73に液滴55を吐出させる工程は、交差吐出工程と呼ばれる。許可領域73へのパターンの描画は、交差吐出工程を反復して行うことによって完成する。吐出ヘッド33を許可領域73に対して往復移動させるときに、吐出ヘッド33の往路及び復路の双方において、液滴55を吐出させる場合、往路で液滴55を吐出させる工程と、復路で液滴55を吐出させる工程とが、それぞれ交差吐出工程に対応する。この場合、液滴55を吐出させながら吐出ヘッド33を1回だけ往復移動させることは、2回の交差吐出工程を実施することに相当する。また、吐出ヘッド33の往路及び復路のいずれか一方において、液滴55を吐出させる場合、液滴55を吐出させながら吐出ヘッド33を1回だけ往復移動させることは、1回の交差吐出工程を実施することに相当する。
【0048】
描画処理では、CPU113は、まず、ステップS1において、変数nの値をクリアーする。変数nは、上述した交差吐出工程の回数をカウントするための変数である。
次いで、ステップS2において、CPU113は、キャリッジ搬送指令をモーター制御部141(図6)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ9を描画エリアの往路開始位置に移動させる。
ここで、液滴吐出装置1では、描画エリアが設定されている。描画エリアは、平面視で、図2に示すテーブル装置7の載置面7aと、吐出ヘッド33によってX方向に沿って描かれる軌跡とが重なり合う領域である。
そして、往路開始位置は、キャリッジ9を往復移動させるときの往路が開始する位置である。本実施形態では、往路開始位置は、X方向において、テーブル装置7の支柱67a側に位置している。往路開始位置は、平面視で、テーブル装置7の外側に位置している。
次いで、ステップS3において、CPU113は、シート搬送指令をモーター制御部141(図6)に出力する。このとき、モーター制御部141は、巻取モーター27の駆動と、送出モーター23の駆動とを制御して、描画シートWの描画すべき領域を描画エリアに移動させる。このとき、モーター制御部141は、巻取モーター27及び送出モーター23を、それぞれ、描画シートWを送出装置3(図1)から巻取装置5側に向けて搬送する向きに駆動させる。
【0049】
次いで、ステップS4において、CPU113は、送出モーター23に対する静止指令をモーター制御部141(図6)に出力する。このとき、モーター制御部141は、送出モーター23の駆動を制御して、送出モーター23を静止させる。このとき、送出モーター23は、電気的に静止した状態、すなわちブレーキがかかった状態に制御される。他方で、巻取モーター27は、駆動された状態が維持されている。このため、描画シートWは、搬送が停止し、且つY方向に互いに遠ざかる向きに引っ張られる。これにより、描画シートWには、Y方向に沿って張力が付与される。
なお、本実施形態では、テーブル装置7は、描画シートWを載置面7aに吸着させることができる構成を有している。そして、ステップS3において、描画シートWの搬送が停止すると、描画シートWは、テーブル装置7の載置面7aに吸着させられる。
【0050】
次いで、ステップS5において、CPU113は、キャリッジ走査指令をモーター制御部141(図6)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ9の往復移動を開始させる。
ここで、キャリッジ9の往復移動では、キャリッジ9は、上述した往路開始位置と復路開始位置との間を往復移動する。つまり、往路開始位置から復路開始位置で折り返して往路開始位置に戻る経路がキャリッジ9の1往復である。このため、本実施形態では、往路開始位置から復路開始位置に向かう経路がキャリッジ9の往路である。他方で、復路開始位置から往路開始位置に向かう経路がキャリッジ9の復路である。
なお、復路開始位置は、X方向にテーブル装置7(図2)を挟んで往路開始位置に対峙する位置である。復路開始位置は、平面視で、テーブル装置7の外側に位置している。このため、往路開始位置と復路開始位置とは、平面視で、テーブル装置7をX方向に挟んで互いに対峙している。本実施形態では、復路開始位置は、平面視で、描画エリアの支柱67b側に位置している。
次いで、ステップS6において、CPU113は、変数nの値を1つだけ繰り上げる(インクリメント)。
【0051】
次いで、ステップS7において、CPU113は、照射装置15aに対する照射指令を照射制御部147(図6)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15aの光源43の駆動を制御して、照射装置15aの光源43を点灯させる。
次いで、ステップS8において、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が往路における描画開始位置に到達したか否かを判定する。
ここで、描画開始位置は、描画エリア内で吐出ヘッド33から液滴55の吐出を開始させる位置である。
このとき、吐出ヘッド33の位置が描画開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS9に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置が描画開始位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置が描画開始位置に到達するまで処理が待機される。
次いで、ステップS9において、CPU113は、吐出指令を吐出制御部145(図6)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、描画データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、往路での許可領域73に対する描画が開始される。
【0052】
次いで、ステップS10において、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が許可領域73に対する描画停止位置に到達したか否かを判定する。
ここで、描画停止位置は、許可領域73内で吐出ヘッド33から液滴55の吐出を停止させる位置である。
このとき、吐出ヘッド33の位置が描画停止位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS11に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置が描画停止位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置が描画停止位置に到達するまで処理が待機される。
【0053】
次いで、ステップS11において、CPU113は、吐出停止指令を吐出制御部145(図6)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を停止して、各ノズル37からの液滴55の吐出を停止させる。これにより、往路での許可領域73に対する描画が終了する。
次いで、ステップS12において、CPU113は、変数nの値が1であるか否かを判定する。このとき、変数nの値が1である(Yes)と判定されると、処理がステップS13に移行する。他方で、変数nの値が1でない(No)と判定されると、処理がステップS32に移行する。
ここで、変数nの値が1であるか否かを判定することは、1回目の交差吐出工程であるか否かを判定することに相当する。そして、変数nの値が1でない(No)、すなわち1回目の交差吐出工程でないと判定されると、CPU113は、ステップS32において照射装置15aに対する停止指令を照射制御部147(図6)に出力してから、処理をステップS22に移行させる。このとき、停止指令を受けた照射制御部147は、照射装置15aの光源43の駆動を制御して、照射装置15aの光源43を消灯させる。
【0054】
ステップS12で変数nの値が1である(Yes)、すなわち1回目の交差吐出工程であると判定されると、処理がステップS13に移行する。
ステップS13では、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が余白領域75におけるテスト描画開始位置に到達したか否かを判定する。
ここで、テスト描画は、余白領域75において、各ノズル37における液滴55の吐出性能を検査するためのテストパターンを描画することである。そして、テスト描画開始位置は、余白領域75内で吐出ヘッド33から液滴55の吐出を開始させる位置である。
なお、ノズル37における液滴55の吐出性能としては、液滴55の吐出量、液滴55の着弾位置精度、ドット抜けなどが挙げられる。ドット抜けとは、吐出ヘッド33を駆動したにもかかわらず、ノズル37から液滴55が吐出されない現象を指す。このような現象は、例えば、ノズル37が目詰まりしていることによって発生する。
このステップS13において、吐出ヘッド33の位置がテスト描画開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS14に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置がテスト描画開始位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置がテスト描画開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0055】
次いで、ステップS14において、CPU113は、吐出指令を吐出制御部145(図6)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、テスト描画データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、往路での余白領域75に対するテスト描画が開始される。
本実施形態では、テスト描画において、ノズル列39ごとにテストパターンを描画する。このとき、ノズル列39ごとにX方向におけるテストパターンの描画位置をずらすことによって、テストパターン同士の重なりが避けられる。
【0056】
次いで、ステップS15において、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が余白領域75に対するテスト描画停止位置に到達したか否かを判定する。
ここで、テスト描画停止位置は、余白領域75内で吐出ヘッド33から液滴55の吐出を停止させる位置である。
このとき、吐出ヘッド33の位置がテスト描画停止位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS16に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置がテスト描画停止位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置がテスト描画停止位置に到達するまで処理が待機される。
次いで、ステップS16において、CPU113は、吐出停止指令を吐出制御部145(図6)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を停止して、各ノズル37からの液滴55の吐出を停止させる。これにより、往路での余白領域75に対するテスト描画が終了する。
【0057】
次いで、ステップS17において、CPU113は、撮像装置17の位置が余白領域75に到達したか否かを判定する。
このとき、撮像装置17の位置が余白領域75に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS18に移行する。他方で、撮像装置17の位置が余白領域75に到達していない(No)と判定されると、撮像装置17の位置が余白領域75に到達するまで処理が待機される。
次いで、ステップS18において、CPU113は、照射装置15aに対する停止指令を照射制御部147(図6)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15aの光源43の駆動を制御して、照射装置15aの光源43を消灯させる。
次いで、ステップS19において、CPU113は、キャリッジ減速指令をモーター制御部141(図6)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ9の移動速度を減速させる。
【0058】
次いで、ステップS20において、CPU113は、撮像指令を撮像制御部149(図6)に出力する。このとき、撮像制御部149は、撮像装置17の駆動を制御して、ノズル列39ごとのテストパターンを撮像させる。なお、ノズル列39ごとのテストパターンの撮像結果は、制御部111に出力される。そして、ノズル列39ごとのテストパターンの撮像結果が制御部111に入力されると、CPU113は、各ノズル37における液滴55の吐出性能の合否を判定する判定処理を開始する。この判定処理は、描画処理と並行して行われる。
そして、CPU113は、判定処理における合否判定の結果を待たずに、描画処理を継続させる。描画処理を継続しているときに、判定処理における合否判定の結果が不合格となった場合、CPU113は、割り込み処理を行うことによって描画処理を終了させる。他方で、描画処理を継続しているときに、判定処理における合否判定の結果が合格となった場合、CPU113は、描画処理を継続させる。
【0059】
描画処理のステップS20に次いで、ステップS21において、CPU113は、キャリッジ加速指令をモーター制御部141(図6)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ9の移動速度を加速させる。
次いで、ステップS22において、CPU113は、キャリッジ9の位置が復路開始位置に到達したか否かを判定する。このとき、キャリッジ9の位置が復路開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS23に移行する。他方で、キャリッジ9の位置が復路開始位置に到達していない(No)と判定されると、キャリッジ9の位置が復路開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0060】
次いで、ステップS23において、CPU113は、改行指令をモーター制御部141(図6)に出力する。このとき、モーター制御部141は、巻取モーター27の駆動と、送出モーター23の駆動とを制御して、描画シートWの新たに描画すべき領域を描画エリアに移動(改行)させる。このとき、モーター制御部141は、巻取モーター27及び送出モーター23を、それぞれ、描画シートWを送出装置3(図1)から巻取装置5側に向けて搬送する向きに駆動させる。
なお、このステップS23では、テーブル装置7の載置面7aにおける描画シートWの吸着を解除した状態で、描画シートWの改行が行われる。そして、描画シートWを改行した後に、描画シートWは、テーブル装置7の載置面7aに吸着させられる。
【0061】
ステップS23に次いで、ステップS24において、CPU113は、照射装置15bに対する照射指令を照射制御部147(図6)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15bの光源43の駆動を制御して、照射装置15bの光源43を点灯させる。
次いで、ステップS25において、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が復路における描画開始位置に到達したか否かを判定する。このとき、吐出ヘッド33の位置が描画開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS26に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置が描画開始位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置が描画開始位置に到達するまで処理が待機される。
次いで、ステップS26において、CPU113は、吐出指令を吐出制御部145(図6)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、描画データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、復路での許可領域73に対する描画が開始される。
【0062】
次いで、ステップS27において、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が復路における描画停止位置に到達したか否かを判定する。このとき、吐出ヘッド33の位置が描画停止位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS28に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置が描画停止位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置が描画停止位置に到達するまで処理が待機される。
次いで、ステップS28において、CPU113は、吐出停止指令を吐出制御部145(図6)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を停止して、各ノズル37からの液滴55の吐出を停止させる。これにより、復路での許可領域73に対する描画が終了する。
次いで、ステップS29において、CPU113は、照射装置15bに対する照射停止指令を照射制御部147(図6)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15bの光源43の駆動を制御して、照射装置15bの光源43を消灯させる。
【0063】
次いで、ステップS30において、CPU113は、描画データが終了したか否かを判定する。このとき、描画データが終了した(Yes)と判定されると、処理が終了する。他方で、描画データが終了していない(No)と判定されると、処理がステップS31に移行する。
ステップS31では、CPU113は、改行指令をモーター制御部141(図6)に出力してから、処理をステップS6に移行させる。このとき、改行指令を受けたモーター制御部141は、巻取モーター27の駆動と、送出モーター23の駆動とを制御して、描画シートWの新たに描画すべき領域を描画エリアに移動(改行)させる。
上記により、描画シートWにおける描画が行われ得る。
【0064】
本実施形態において、描画シートWがワークに対応し、許可領域73が描画許可領域に対応し、余白領域75が検査領域に対応し、テストパターンが検査パターンに対応している。また、ステップS13からステップS20の処理が検査工程に対応し、ステップS13からステップS16の処理が検査パターン形成工程に対応し、ステップS17からステップS20の処理が撮像工程に対応し、ステップS20の処理が判定工程に対応している。
【0065】
本実施形態では、描画シートWにおいて、許可領域73と余白領域75とがX方向に隣り合っている。そして、描画処理において、余白領域75へのテスト描画とテストパターンの撮像とを、1回目の交差吐出工程に並べて実施する。このため、例えば、ノズル37における吐出性能の合否判定の結果が出てから、許可領域73への描画を行う場合に比較して、描画を開始するまでの時間を短縮することができる。
また、撮像装置17が、キャリッジ9において、1回目の交差吐出工程で吐出ヘッド33に後続する位置に設けられている。そして、描画処理では、検査工程を、X方向に沿って、最初の交差吐出工程に並べて実施するので、描画シートWに対するキャリッジ9の相対変位の向きを検査工程と交差吐出工程とでそろえることができる。これにより、例えば、相対変位の向きを変えずに検査工程と交差吐出工程とを続けて実施することができる。
以上により、描画にかかる時間を短縮することができる。
【0066】
また、本実施形態では、各ノズル37における液滴55の吐出性能の合否を判定する判定処理における判定結果を待たずに、1回目の後の交差吐出工程を開始するので、判定結果を待つ時間を省略することができる。これにより、描画にかかる時間を一層短縮することができる。
また、本実施形態では、ステップS19において、キャリッジ9の移動速度を減速させるので、キャリッジ9を減速させた状態で撮像装置17でテストパターンを撮像することができる。この結果、撮像装置17によるテストパターンの撮像の失敗を避けやすくすることができる。
【0067】
なお、本実施形態では、撮像装置17でテストパターンを撮像するときにキャリッジ9の移動速度を減速させる例が示されている。しかしながら、キャリッジ9の移動速度は、これに限定されない。キャリッジ9の移動速度としては、1回目の交差吐出工程におけるキャリッジ9の移動速度を、撮像装置17でテストパターンを撮像するときのキャリッジ9の移動速度に合わせた速度も採用され得る。これにより、キャリッジ9の移動速度を減速させることなく、撮像装置17でテストパターンを撮像することができる。そして、1回目の後の交差吐出工程でのキャリッジ9の移動速度を、1回目の交差吐出工程におけるキャリッジ9の移動速度よりも速くすれば、描画にかかる時間を短縮することができる。
【0068】
また、本実施形態では、1回目の交差吐出工程の後に検査工程を実施する順序が採用されているが、1回目の交差吐出工程と検査工程との順序は、これに限定されない。1回目の交差吐出工程と検査工程との順序としては、検査工程を実施してから、1回目の交差吐出工程を実施する順序も採用され得る。この順序によれば、各ノズル37における液滴55の吐出性能の合否を判定する判定処理における判定結果を早期に出しやすくすることができる。これにより、例えば、判定結果が不合格であったときには、早期に描画処理を終了させることができる。ここで、判定結果が不合格であったとき、描画処理を開始してからその判定結果が出る前までの描画が不良品の扱いとなることがある。判定結果を早期に出すことができれば、早期に描画処理を終了させることができるので、描画シートWや機能液53の無駄を抑えやすくすることができる。
なお、検査工程を実施してから、1回目の交差吐出工程を実施する順序の場合、描画シートWにおいて、図1に示す許可領域73と余白領域75との並び順を互いに逆にすることによって、検査工程にかかる時間を短縮することができる。
また、1回目の交差吐出工程の前後では検査工程を実施せず、2回目の交差吐出工程の前に検査工程を実施する順序も採用され得る。検査工程は、交差吐出工程の前に実施したほうが制御が容易となるため好ましいが、1回目の交差吐出工程の前に検査工程を実施する場合、スペースの関係上検査工程を実施するのが難しい場合がある。その場合には2回目の交差吐出工程の前に検査工程を実施したほうが良いこともあり得る。
【0069】
また、本実施形態では、検査工程を1回目の交差吐出工程に並べて実施する方法が採用されているが、検査工程の実施頻度は、これに限定されない。
検査工程の実施頻度としては、例えば、1回目の交差吐出工程に並べて実施するのに加えて、描画処理における最後の交差吐出工程に並べて実施する頻度も採用され得る。この頻度によれば、1つの描画処理における描画の合否を高い精度で判定することができる。
さらに、検査工程の実施頻度としては、例えば、交差吐出工程ごとに実施する頻度も採用され得る。この頻度によれば、1つの描画処理における描画の合否を一層高い精度で判定することができる。
【0070】
また、本実施形態では、ロールトゥロールの形態で一連した描画シートWに描画を行う液滴吐出装置1が例示されているが、液滴吐出装置1の形態は、これに限定されない。液滴吐出装置1としては、描画シートWよりも短い長さで分断された短尺状のワークに描画を行う形態も採用され得る。
さらに、ワークとしては、描画シートWに限定されず、基板や用紙、布地などの種々のワークが適用され得る。
【0071】
また、本実施形態では、描画シートWに機能液53を塗布する方法として、塗布法の1つであるインクジェット法が採用されている。しかしながら、塗布法は、インクジェット法に限定されず、ディスペンス法や、印刷法なども採用され得る。しかしながら、インクジェット法を採用することは、描画シートWの任意の箇所に任意の量の機能液53を塗布しやすい点で好ましい。
また、本実施形態では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック及びホワイトの5種類の画像塗料が採用されている。しかしながら、画像塗料の色は、これらの5種類に限定されない。画像塗料の色としては、例えば、これらの5種類にライトシアンやライトマゼンタなどを加えた7種類等、1種類以上の任意の種類の画像塗料が採用され得る。
また本実施形態では、検査工程を描画シートWに設けた余白領域75において実施する形態としたが、検査は描画シートWとは別に設けた検査シートに対して実施するようにしても良い。
【符号の説明】
【0072】
1…液滴吐出装置、9…キャリッジ、11…キャリッジ搬送装置、15,15a,15b…照射装置、17…撮像装置、28…搬送経路、33…吐出ヘッド、35…ノズル面、37…ノズル、39…ノズル列、41…紫外光、43…光源、44…撮像領域、55…液滴、73…許可領域、75…余白領域、W…描画シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに設定された描画許可領域と液状体を吐出する吐出ヘッドとを互いに対面させた状態で、前記ワークの搬送方向と交差する方向において、前記吐出ヘッドを支持するキャリッジを前記ワークに対して相対的に往復移動させることによって、前記吐出ヘッドを前記描画許可領域に交差させながら、前記キャリッジの前記相対的な往復移動の往路または復路の少なくとも一方において前記吐出ヘッドから前記液状体を前記描画許可領域に吐出する工程である交差吐出工程を行い、前記描画許可領域に対する1つの描画が完了するまで前記キャリッジの相対的な往復移動を反復するときに、
前記描画許可領域の外側に設けられた検査領域に前記吐出ヘッドから前記液状体を吐出することによって、前記検査領域に検査パターンを形成する検査パターン形成工程と、
前記キャリッジに設けられた撮像装置で前記検査パターンを撮像する撮像工程と、を含む検査工程を、
最初の前記キャリッジの相対的な往復移動の往路または復路の一方において、前記交差吐出工程に並べて実施する、
ことを特徴とする描画方法。
【請求項2】
前記検査パターンを撮像した結果に基づいて、前記吐出ヘッドにおける前記液状体の吐出にかかる性能の合否を判定する判定工程を有し、
前記判定工程における判定結果を待たずに、前記検査パターン形成工程の後に行われる前記交差吐出工程を開始する、
ことを特徴とする請求項1に記載の描画方法。
【請求項3】
前記撮像工程における前記キャリッジの前記ワークに対する相対移動の速さを、前記交差吐出工程における前記相対移動の速さよりも遅くする、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の描画方法。
【請求項4】
前記最初の往復移動における往路または復路のうち前記検査工程が実施される方の前記相対移動の速さを、他の前記交差吐出工程における前記相対移動の速さよりも遅くする、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の描画方法。
【請求項5】
前記最初の往復移動における往路において、前記交差吐出工程を実施してから、前記検査工程を実施する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の描画方法。
【請求項6】
前記最初の往復移動における往路において、前記検査工程を実施してから、前記交差吐出工程を実施する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の描画方法。
【請求項7】
前記最初の往復移動における復路において、前記検査工程を実施してから、前記交差吐出工程を実施する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の描画方法。
【請求項8】
前記検査工程を、前記1つの描画における最後の前記交差吐出工程にも並べて実施する、
ことを特徴とする請求項1に記載の描画方法。
【請求項9】
前記検査工程を、前記交差吐出工程ごとに前記交差吐出工程に並べて実施する、
ことを特徴とする請求項1に記載の描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−85990(P2013−85990A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226539(P2011−226539)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】