説明

描画装置、及び描画プログラム

【課題】面白み及び独創性のある絵画像を作成することが可能な描画装置及び描画プログラムを提供する。
【解決手段】原画像を取込む画像取込手段25と、描画対象の文字列を入力する文字列入力手段35と、グレースケール手段28と、画素毎に原画像の明度を認識する明度認識手段29と、原画像を明度に基づいて複数の領域に分割する領域分割手段30と、各領域の面積を算出する面積算出手段31と、表示パターンが互いに異なるように設定された複数枚のレイヤーと、入力された文字列を表示パターンに基づいてそれぞれのレイヤーに表示する文字表示手段37と、明度及び面積に基づいて、各領域に対応するレイヤーを決定するレイヤー決定手段32と、各領域と重なり合う部分を選択範囲とし、その選択範囲以外の部分が非表示状態となるようにマスキングするマスキング手段33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置及び描画プログラムに関し、特に、コンピュータを用いてディスプレイの表示画面に、原画像を模した絵画像を表示させることが可能な描画装置、及びそのコンピュータで使用される描画プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、お祝いのメッセージカードとして、写真画像や絵画調の画像(以下、「絵画像」という)を貼付けたものが知られている。特に、絵画像は、機械的に撮影された写真画像よりも、見た目が柔らかく、また手書きのような印象を与えるため、送り主の気持ちを伝える手段として好適に用いられている。
【0003】
しかし、上記の絵画像は、一般に汎用のグラフィックソフトを用いて作られることから、多くの手間や時間を要し、ひいては作成することを諦めたり、写真画像を代用したりする場合も多かった。ところで、チラシや雑誌にのせる絵画像を簡単に作成する手段として、写真等の原画像を絵画像に変換するプログラムが提案されている(例えば特許文献1)。具体的には、原画像と、所定の濃淡パターンで作成されたフィルタ画像とを合成するものであり、手間や時間を多くかけることなく、絵画像を作成することが可能になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のプログラムでは、単に、所定の濃淡パターンのフィルタ画像を原画像に合成するものであるため、作成される絵画像が単調となりやすく、面白みに欠けるとともに、独創性のある作品を作ることが困難となっていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、面白み及び独創性のある絵画像を作成することが可能な描画装置及び描画プログラムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる描画装置は、
「コンピュータを有しディスプレイの表示画面に絵画像を表示する描画装置であって、
前記コンピュータは、
原画像を取込む画像取込手段と、
描画対象の文字列を入力するための文字列入力手段と、
該文字列入力手段によって入力された前記文字列を前記ディスプレイの前記表示画面に多数表示することで、前記原画像を模した前記絵画像を作成する絵画像作成手段と
を具備する」
ことを特徴とするものである。
【0007】
ここで、「原画像」としては、デジタルカメラで撮影された写真画像、またはコンピュータグラフィックスによって作成された図形を例示することができる。なお、写真画像の中に背景が含まれている場合には、被写体のみを切取り、切取った部分を原画像としてもよい。「文字列入力手段」は、コンピュータのキーボードを用いて文字列を入力するようにしてもよく、選択可能な文字列をディスプレイの表示画面に表示しておき、マウス、ジョイスティック、トラックボールなどの外部入力手段を使用して文字列を選択するようにしてもよい。また、「文字列入力手段」によって入力される描画対象に、文字以外の記号を含めることも可能である。また、「文字列入力手段」では、文字列の入力ととともに、その文字列のフォント及び文字列の色を設定できるようにしてもよい。さらに、「文字列入力手段」によって入力される文字列の数は、一つでも複数でもよい。
【0008】
本発明の描画装置によれば、まず、コンピュータに原画像(例えば写真画像)が取込まれる。その後、所望の文字列が入力されると、コンピュータは、入力された文字列をディスプレイの表示画面に多数表示する。これにより、原画像を模した絵画像が所望の文字列の集まりによって作成される。
【0009】
したがって、絵画像の面白みを高めるとともに、人の心を惹付け細部まで注目させることが可能になる。また、原画像に対応する文字列(例えば原画像における被写体がペットの場合には、そのペットの名前)を入力することにより、独創性を生じさせ、絵画像に描かれた対象物(被写体)への関心を高めることができる。
【0010】
本発明の描画装置において、
「前記コンピュータは、前記画像取込手段によって取込まれた前記原画像の、明度または色相を画素毎に認識する原画像情報認識手段をさらに備え、
前記絵画像作成手段は、前記原画像情報認識手段によって認識された前記明度または前記色相に基づいて、前記文字列の表示形態を決定する」
構成とすることができる。
【0011】
ここで、「原画像情報認識手段」は、原画像がモノクロの場合には明度を認識し、原画像がカラーの場合には色相を認識する。
【0012】
これによれば、原画像が取込まれると、コンピュータは、原画像の明度または色相を画素毎に認識し、入力された文字列の表示形態(表示位置または表示色)を、明度または色相に基づいて決定する。例えば、原画像がモノクロの場合には、原画像における各画素の明暗(グレースケール)に合せて、暗い部分では、複数の文字列がぎっしりと詰まるように(すなわち隙間がなくなるように)表示位置を決定し、明るい部分では、複数の文字列が疎らとなるように(すなわち隙間が大きくなるように)表示位置を決定する。また、原画像がカラーの場合には、原画像における各画素の色相(カラースケール)に合せて、表示する文字列の色を変化させる。このように、原画像における画素毎の明度または色相に基づいて文字列の表示形態を決定することにより、原画像に類似した絵画像を容易に作成することが可能になる。
【0013】
また、上記の描画装置においては、
「前記原画像情報認識手段は、
前記画像取込手段によって取込まれた前記原画像をグレースケール化するグレースケール手段と、
グレースケール化された前記原画像に対し、画素毎に前記明度を認識する明度認識手段とを備え、
前記絵画像作成手段は、
互いに隣接し且つ前記明度が略一致する複数の前記画素同士が同じ領域となるように、前記原画像を前記明度に基づいて複数の領域に分割する領域分割手段と、
分割されたそれぞれの前記領域の面積を算出する面積算出手段と、
前記文字列を多数配列させる表示パターンが予め設定されるとともに、表示される前記文字列の大きさ及び前記文字列同士の間隔が互いに異なるように設定された複数枚のレイヤーと、
前記文字列入力手段によって入力された前記文字列を、前記表示パターンに基づいてそれぞれの前記レイヤーに表示する文字表示手段と、
前記領域の面積及び前記明度と、使用すべきレイヤーとの対応関係が予め記憶された記憶手段と、
該記憶手段に記憶された前記対応関係を用い、前記明度認識手段によって認識された前記明度、及び前記面積算出手段によって算出された前記面積に基づいて、それぞれの前記領域に対応する前記レイヤーを決定するレイヤー決定手段と、
それぞれの前記領域に対応する前記レイヤーを前記原画像に重ね合わせると仮定した際に、前記レイヤーの中で、前記領域と重なり合う部分を選択範囲とし、該選択範囲以外の部分が非表示状態となるようにマスキングするマスキング手段とを備える」
構成とすることが好ましい。なお、この描画装置は、コンピュータを機能させる描画プログラムとして構成することも可能である(請求項5の発明)。
【0014】
ここで、「面積算出手段」は、それぞれの領域における概略の大きさを認識することが可能な手段であればよく、例えば計算によって領域の面積を算出してもよいが、領域に含まれる画素の数、または原画像全体の画素数に対する領域に含まれる画素数の割合に基づいて、各領域の面積を推定してもよい。
【0015】
これによれば、コンピュータに取込まれた原画像は、グレースケール化され、白から黒までの明暗(灰色の濃度)だけで表現される。その後、コンピュータは、グレースケール化された原画像について、画素毎に明度を認識し、それぞれの画素の明度に基づいて原画像を複数の領域に分割する。つまり、互いに隣接し且つ明度が略一致する複数の画素同士が同じ領域となるように、複数の領域に分割する。そして、分割した各領域の面積をそれぞれ算出する。
【0016】
一方、ディスプレイの表示画面には、互いに重ね合わされる複数のレイヤーが設けられており、複数のレイヤーによって一つの絵画像が表示されるようになっている。それぞれのレイヤーでは、文字列を多数配列させる表示パターンが予め設定されており、表示される文字列の大きさ及び文字列同士の間隔が互いに異なるように設定されている。例えば、所定のレイヤーでは、比較的大きな複数の文字列がぎっしりと詰まるように表示パターンが設定され、別のレイヤーでは、極めて小さな複数の文字列が疎らに配置されるように表示パターンが設定されている。そして、文字列が入力されると、コンピュータは、入力された文字列を、それぞれのレイヤー毎に、予め設定された表示パターンに従って表示する。
【0017】
また、コンピュータの記憶手段には、領域の面積及び明度と、使用(表示)すべきレイヤーとの対応関係が記憶されており、各領域の明度が認識され、各領域の面積が算出されると、記憶手段に記憶された対応関係に基づいて、それぞれの領域に対応するレイヤーを決定する。例えば、面積が比較的小さく且つ明度が高い(明るい)領域に対しては、文字列の大きさが極めて小さく、文字列同士の間隔が大きなレイヤーを選択し、面積が比較的大きく明度が低い(暗い)領域に対しては、文字列の大きさが比較的大きく文字列同士の間隔が極めて小さな(または文字列同士が重なりあった)レイヤーを選択する。
【0018】
その後、それぞれの領域に対応するレイヤーを原画像に重ね合わせると仮定した際に、レイヤーの中で、領域と重なり合う部分を選択範囲とし、その選択範囲の外部をマスキングする。つまり、それぞれの領域と対応するレイヤーには全体に亘って文字列が描画されているが、選択範囲外の部分については非表示状態となり、描画されていないものとして処理される。このため、それぞれの領域に対してレイヤーが一つずつ視認可能となる。すなわち、全てのレイヤーを重ね合せることで、全ての領域に対するレイヤーの表示がパズルのように組合わされ、一つの絵画像が作成される。
【0019】
このように、表示パターンが互いに異なる複数枚のレイヤーを設け、それぞれの領域に対するレイヤーの中で、領域と重なる部分のみを表示させるため、作成される絵画像において、領域毎に明度を異ならせることが可能となる。特に、それぞれの領域の面積及び明度に応じて適切な表示パターンのレイヤーが選択されるため、例えば領域の面積が小さな場合には、文字列を小さく表示することで文字列全体を領域内に収める(文字列全体を視認可能とする)ことができ、また領域の面積が大きな場合には、文字列を大きく表示することで、文字列を見やすくするとともに、効果的に明度を抑えることが可能になる。また、複数のレイヤーに予め設定された表示パターンで文字列を表示するだけでよいため、シンプルな制御となり、コンピュータの負担を軽減することが可能となる。
【0020】
また、本発明の描画装置において、
「前記コンピュータは、
前記画像取込手段によって取込まれた前記原画像を貼付けて画像レイヤーを生成する画像レイヤー生成手段と、
前記画像レイヤーの前面に重ね合わされ、前記文字列を多数配列させるとともに該文字列部分が透過設定される表示パターンが予め設定された文字レイヤーとをさらに備え、
前記絵画像作成手段は、前記文字列入力手段によって入力された前記文字列を、前記表示パターンに基づいて前記文字レイヤーに表示することで、前記原画像を模した前記絵画像を作成する」
構成とすることができる。
【0021】
これによれば、コンピュータは、取込まれた原画像をそのまま貼付けて画像レイヤーを生成する。また、画像レイヤーの前面には、予め表示パターンが設定された文字レイヤーが重ね合わされており、コンピュータは、文字列入力手段によって所望の文字列が入力されると、表示パターンに基づいて文字レイヤーに多数の文字列を表示する。この際、文字レイヤーでは、文字列部分が透過設定されている(切り抜いた状態となっている)ため、その文字列部分を通して画像レイヤーが視認可能となる。これにより、文字列の部分が、それと重ね合わされる画像の色(モノクロの場合は灰色の濃度)と同じ色で表示されているように見せることが可能となる。
【0022】
したがって、これによれば、原画像における画素毎の明度または色相を認識したり、複数の領域に分割したりする処理を省くことができ、絵画像を作成するための制御を一層シンプルなものとすることができる。また、原画像と同じ色調でカラーの絵画像を作成することが可能となり、絵画像に描かれた対象物の実感を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
このように、本発明によれば、面白みがあり人の心を惹付ける絵画像を容易に作成することができる。また、原画像に対応する名前を文字列として入力することにより、独創性を生じさせ、絵画像に描かれた対象物への関心を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の描画装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図2】描画装置に記憶された対応関係テーブル及び表示パターンテーブルの一例を示す説明図である。
【図3】各レイヤーの文字列配置パターンの一例を示す説明図である。
【図4】描画装置のディスプレイに表示される表示画面の一例を示す説明図である。
【図5】(a)は原画像の一例であり、(b)はその原画像に基づいて作成された絵画像の一例である。
【図6】コンピュータにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】他の実施形態の機能的構成を示すブロック図である。
【図8】他の実施形態のレイヤー構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態である描画装置について、図1乃至図6に基づき説明する。図1に示すように、本例の描画装置1はコンピュータ2を有している。コンピュータ2は、ハード構成として、演算装置及び制御装置等を有する中央処理装置(図示しない)と、キーボード5やマウス6等の入力装置と、コンピュータ2の中で処理された情報を出力するディスプレイ3及びプリンタ(図示しない)等の出力装置と、ハードディスク等から構成された記憶装置7とを備えて構成されている。また、コンピュータ2は、USB端子(図示しない)を備えており、デジタルカメラ4等を接続することが可能になっている。
【0026】
記憶装置7には、データベースとして、対応関係テーブル8及び表示パターンテーブル9が記憶されている。対応関係テーブル8は、図2(a)に示すように、原画像における各領域(詳細は後述する)の面積、及びその領域の明度と、使用すべきレイヤーL(詳細は後述するが、この場合レイヤーL1〜レイヤーL66)との対応関係の一例を示すものである。例えば、領域の面積が0.5よりも小さく、明度のレベルが「3」の場合には、レイヤーL3が選択され、また、領域の面積が15〜20の間であり、明度のレベルが「1」の場合には、レイヤーL61が選択されるようになっている。なお、図2(a)では、表示スタイル(詳細は後述する)が「バラつき」(図3(a)参照)の場合の対応関係のみを示しているが、表示スタイルが「水平」(図3(b)参照)の場合の対応関係、及び表示スタイルが「垂直」(図3(c)参照)の場合の対応関係もそれぞれ記憶されている。ここで、対応関係テーブル8が本発明の記憶手段に相当する。
【0027】
一方、表示パターンテーブル9は、図2(b)に示すように、入力された文字列(詳細は後述する)をそれぞれのレイヤーLに表示させる際の表示パターンを示すものであり、具体的には、レイヤーLの左上から順に採番された配置番号に対し、文字列を表示する位置(X座標,Y座標)、文字列の角度(傾き)、及び文字列が表示される枠20(図3参照)の大きさが予め設定されている。なお、図2(b)に示す枠20の大きさは、基準の枠の大きさ(例えば縦3mm,横25mm)に対する比率を示している。なお、図2(b)では、レイヤーL3における表示パターンのみを一例として示しているが、表示パターンテーブル9には、対応関係テーブル8によって決定される全てのレイヤーLの表示パターンがそれぞれ設定されている。また、表示スタイルが「バラつき」の場合に使用されるレイヤーLa(図3(a)参照)では、図2(b)に示すように角度が順次変化しているのに対し、表示スタイルが「水平」の場合に使用されるレイヤーLb(図3(b)参照)では角度が全て0度となり、表示スタイルが「垂直」の場合に使用されるレイヤーLc(図3(c)参照)では角度が全て90度となっている。
【0028】
また、それぞれのレイヤーLの表示パターンは、文字列を表示した際の濃淡が互いに異なるように設定されており、明度が高いほど(白に近いほど)、文字列同士の間隔が広くなり、明度が低いほど(黒に近いほど)、文字列同士の間隔が狭くなって(または文字列同士が重なりあって)いる。また、領域の面積が小さな場合には枠20の大きさ(文字列の大きさ)が小さく、領域の面積が大きな場合には枠20の大きさが比較的大きくなっている。
【0029】
ところで、コンピュータ2には、描画プログラムが記憶されており、このプログラムを実行させることにより、以下に示す機能的構成を有するものになる。
【0030】
図1に示すように、コンピュータ2は、デジタルカメラ4によって撮影されたデジタル画像を原画像として取込む画像取込手段25と、取込まれた原画像を表示制御手段27に出力してディスプレイ3に表示させる原画像出力手段26とを備えている。また、コンピュータ2は、取り込まれた原画像をグレースケール化(白から黒までの明暗だけで表現)するグレースケール手段28と、グレースケール化された原画像に対し、画素毎に明度を認識する(具体的には明度をレベル1〜レベル10の10段階に振分ける)明度認識手段29と、互いに隣接し且つ明度が同レベルである画素が同じ領域となるように、原画像を明度に基づいて複数の領域に分割する領域分割手段30と、分割されたそれぞれの領域の面積を算出する面積算出手段31とを備えている。なお、本例の面積算出手段31は、それぞれの領域に含まれる画素数をカウントし、原画像全体の画素数に対する割合を求めることにより、それぞれの領域の面積を推測している。ここで、グレースケール手段28及び明度認識手段29を組合わせたものが本発明の原画像情報認識手段に相当する。
【0031】
また、コンピュータ2は、記憶装置7に記憶された対応関係テーブル8(図2(a)参照)を用い、明度認識手段29によって認識された明度、及び面積算出手段31によって算出された面積(画素数の割合)に基づいて、それぞれの領域に対応するレイヤーLを決定するレイヤー決定手段32と、それぞれの領域に対応するレイヤーLを原画像に重ね合わせると仮定した際に、レイヤーLの中で、それぞれの領域と重なり合う部分を選択範囲とし、その選択範囲以外の部分が非表示状態となるようにマスキングするマスキング手段33とを備えている。
【0032】
また、コンピュータ2は、キーボード5及びマウス6を用いて描画対象の文字列を入力するための文字列入力手段35と、文字列を設定する設定画面及び入力された文字列をディスプレイ3に表示する設定画面出力手段36と、レイヤー決定手段32によって決定されたそれぞれのレイヤーLにおいて、入力された文字列を、表示パターンテーブル9(図2(b)参照)の表示パターンに基づいて表示する文字表示手段37とを備える。さらに、コンピュータ2は、全てのレイヤーLを重ね合せるとともに、不要な部分をマスキング手段33によって非表示状態とすることで絵画像を作成する絵画像出力手段38を備えている。なお、絵画像出力手段38で作成された絵画像は表示制御手段27に出力され、ディスプレイ3に表示される。ここで、領域分割手段30、面積算出手段31、レイヤー決定手段32、マスキング手段33、文字表示手段37、及び絵画像出力手段38を組合わせたものが本発明の絵画像作成手段に相当する。
【0033】
次に、描画装置1の動作、特に、コンピュータ2における処理の流れについて、図4乃至図6に基づき説明する。まず、図4(a)に示すように、ディスプレイ3に初期画面40を表示し、原画像の入力(取込み)を促す。初期画面40において指示ボタン41がクリックされると、コンピュータ2の記憶手段に記憶されているデジタル画像、またはデジタルカメラ4に格納されているデジタル画像を選択することが可能となり、選択したものが原画像として取込まれる。そして、図6に示すように、原画像が入力されると(ステップS1においてYES)、原画像43(図5(a)参照)が添付された原画像表示画面42(図4(b)参照)を表示する(ステップS2)。その後、原画像表示画面42において、指示ボタン44がクリックされると(ステップS3においてYES)、図4(c)に示す設定画面45を表示する(ステップS4)。
【0034】
この設定画面45では、キーボード5及びマウス6を用いて、描画対象となる文字列を入力することが可能であり、複数の文字列入力部46と、それぞれの文字列に対してフォントを選択するフォント選択部47と、それぞれの文字列の色を選択する文字色選択部48と、これらの選択によって作成される文字列のサンプルが表示されるサンプル表示部49とが設けられている。また、設定画面45には、スタイル選択部51及び輪郭形状選択部52も設けられており、作成される絵画像の形態を任意に選択することが可能になっている。具体的には、スタイル選択部51では、文字列の表示スタイルを、「バラつき」、「水平」、「垂直」の中から選択することが可能となっており、「バラつき」を選択した場合には、図3(a)に示すように文字列の角度が順次変化する表示パターンが用いられ、「水平」を選択した場合には、図3(b)に示すように文字列が全て水平方向に並ぶ表示パターンが用いられ、「垂直」を選択した場合には、図3(c)に示すように文字列が全て垂直方向に並ぶ表示パターンが用いられる。なお、文字列の表示スタイルはこれらに限定されるものではなく、例えば全ての文字列が一定の角度に傾いて配置されるパターンや、全体として所定の模様を描くパターンであってもよい。また、輪郭形状選択部52では、絵画像の輪郭についてエッジを際立たせる(エッジあり)か否(エッジなし)かを任意に選択することが可能になっている。
【0035】
設定画面45において上記の項目が全て入力または選択され、その後指示ボタン53がクリックされると(ステップS5においてYES)、入力された原画像をグレースケール化し(ステップS6)、グレースケール化された原画像43の明度を画素毎に検出する(ステップS7)。なお、原画像43に被写体及び背景が写っているが、作成される絵画像に背景を含めたくない場合には、原画像43の中から被写体のみを切取る切取り処理が、ステップS6の前に実行される。なお、ここで、被写体を切取る処理、原画像をグレースケール化する処理、及び明度を認識する処理は、フォトショップ(商標)等汎用のグラフィックソフトで行われている周知の処理であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0036】
その後、輪郭形状選択部52において「エッジあり」が選択されたか否かを判断し、選択された場合には(ステップS8おいてYES)、ステップS9を経由してステップS10に移行し、一方、選択されていない場合(すなわち「エッジなし」が選択された場合)には(ステップS8おいてNO)、ステップS9を経由することなくステップS10に移行する。ステップS9では、明度のレベルが7以上の画素(比較的明るい画素)に対して文字列を表示させないように、明度の認識を無効とする。これにより、明るい部分と暗い部分との境界が明瞭となり、エッジを際立たせることが可能になる。
【0037】
その後、明度が同じレベルで互いに隣接する画素同士が同じ領域となるように、各画素の明度を基に原画像43を複数の領域に分割する(ステップS10)。また、それぞれの領域の面積を、その領域に含まれる画素数の割合に基づいて算出する(ステップS11)。さらに、表示パターンテーブル9を用い、それぞれの領域の面積及び明度に対応するレイヤーLをそれぞれ決定する(ステップS12)。つまり、領域毎に、対応するレイヤーLを決定する。
【0038】
その後、ステップS12で決定された全てのレイヤーLに対し、ステップS5において入力または選択された文字列(フォントや文字色を含む)を、それぞれのレイヤーLの表示パターンに基づいて表示する(ステップS13)。ここで、設定画面45の文字列入力部46に入力された文字列が複数個ある場合には、表示パターンテーブル9における配置番号の小さい方から順番に、複数の文字列を割付ける処理を行い、最後の文字列まで割付けた後は最初の文字列に戻って割付けを繰り返す。例えば、入力された文字列の個数が三個の場合には、配置番号の(3n+1)(nは自然数)に1番目の文字列を割付け、配置番号の(3n+2)に2番目の文字列を割付け、配置番号の(3n+3)に3番目の文字列を割付ける。また、一つの文字列に含まれる文字数が、表示パターンテーブル9で設定された枠20の大きさよりも小さな場合、すなわち、枠20に対し左側につめて文字列を表示した際に文字列の右側にスペースが生じる場合には、そのスペースがなくなるまで、同じ文字列を枠20内で繰り返し表示する。これにより、文字列入力部46において入力された文字列の文字数が不定であっても、それらの文字列によって生成されるレイヤーLの濃度を略一定とすることができる。
【0039】
次に、それぞれの領域に対応するレイヤーLを原画像43に重ね合わせると仮定した際に、そのレイヤーLの中で領域と重なり合う部分を選択範囲とし、その選択範囲以外の部分が非表示状態となるようにマスキングする(ステップS14)。つまり、夫々の領域を表現するのに適した個々のレイヤーLにおいて、その領域に対応する個所のみを表示可能状態とする。そして、絵画像表示画面55(図4(d)参照)を表示し、全てのレイヤーLを重ね合わせて表示する(ステップS15)。これにより、図5(b)に示すように、原画像43を模した絵画像56が、入力した文字列10によって作成される。
【0040】
なお、絵画像表示画面55には、背景色選択部57が設けられており、背景色が選択されると(ステップS16においてYES)、絵画像の背景を選択された背景色で塗りつぶす(ステップS17)。また、絵画像表示画面55には、訂正指示部58も設けられており、文字訂正指示ボタン59がクリックされると(ステップS18においてYES)、ステップS4に移行する。すなわち設定画面45を表示し、ステップS4乃至ステップS17の処理を繰り返す。また、手直し指示ボタン60がクリックされると(ステップS19においてYES)、手直し処理モード(ステップS20)に移行する。この手直し処理モードでは、作成した絵画像に対し、手動で文字列を部分的に追加したり文字列の配置を変更したり、あるいは部分的に削除したりすることが可能であり、これにより濃度やコントラストを変化させることが可能になっている。また、絵画像と一緒にお祝いのメッセージなどを表示させたり、絵画像を複写して貼付けたりすることも可能である。
【0041】
また、絵画像表示画面55には、印刷指示ボタン61及び保存指示ボタン62も設けられており、印刷指示ボタン61がクリックされると(ステップS21においてYES)、作成した絵画像を印刷するようにプリンタ(図示しない)に出力し(ステップS22)、一方、保存指示ボタン62がクリックされると(ステップS23においてYES)、作成した絵画像を所定の画像ファイルとして保存する(ステップS24)。そして、終了指示が入力された場合には(ステップS25においてYES)、全ての処理を終了する。
【0042】
このように、上記実施形態の描画装置1によれば、原画像43を模した絵画像56が所望の文字列10の集まりによって作成されるため、絵画像56の面白みを高めるとともに、細部まで注目させることができる。また、原画像43に対応する文字列10(例えば犬の名前)を入力することにより、独創性を生じさせ、絵画像56に描かれた対象物(犬)への関心を高めることができる。
【0043】
また、上記実施形態の描画装置1によれば、表示パターンが互いに異なる複数のレイヤーLを設け、それぞれの領域に対するレイヤーLの中で、領域と重なる部分のみを表示させるため、作成される絵画像56において、コントラストを確実に生じさせることができる。特に、それぞれの領域の面積及び明度に応じて適切な表示パターンのレイヤーLが選択されるため、小さな領域であっても文字列10全体を視認させることができ、また、大きな領域の場合には、文字列10を大きく表示することで文字列10の見易さを高めることができる。また、複数のレイヤーLに予め設定された表示パターンで文字列10を表示するだけでよいことから、シンプルな制御で処理することができ、コンピュータ2の負担を軽減することができる。
【0044】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0045】
すなわち、上記実施形態では、取込んだ原画像43をグレースケール化し、その明度を画素毎に認識するとともに、認識された明度に基づいて、原画像43を複数の領域に分割するものを示したが、グレースケール化することなく画素毎に色相を認識し、色相(カラースケール)に基づいて複数の領域に分割するようにしてもよい。この場合、それぞれの領域と対応するレイヤーには、領域の色相と同一の色の文字が表示される。これによれば、複数枚のレイヤーを重ねて表示することで、原画像の形状及び色相を模した絵画像が作成される。
【0046】
また、上記実施形態では、それぞれの領域に対応する複数枚のレイヤーLを重ね合わせて一つの絵画像56を作成するものを示したが、原画像全体に対応する一枚のレイヤーを原画像に重ね合わせて一つの絵画像を作成するようにしてもよい。具体的には、図7に示すように、この描画装置68のコンピュータ69は、文字レイヤーM(図8参照)の表示パターンを示す表示パターンテーブル71が記憶された記憶装置70を有している。ここで、文字レイヤーMは、文字列80が表示されるとその部分が透過するように設定されている。つまり、文字列80が表示されると、その部分がくり貫かれた状態となり、文字列80を通して後側のレイヤーが視認可能となるように構成されている。なお、この文字レイヤーMは、設定画面45(図4(c)参照)のスタイル選択部51によって選択可能な表示スタイルに対応するように、表示スタイルの数だけ設けられている。
【0047】
また、コンピュータ69は、機能的構成として、画像取込手段25によって取込まれた原画像を貼付けて画像レイヤーG(図8参照)を生成する画像レイヤー生成手段73と、文字列入力手段35によって入力された文字列80を表示パターンテーブル71に基づいて文字レイヤーMに表示する文字表示手段75と、文字列80が表示された文字レイヤーMを画像レイヤーGの前面に重ね合わせることで絵画像を作成する絵画像出力手段76とを備えている。
【0048】
これによれば、文字列80の部分が、それと重ね合わされる画像レイヤーGの色と同じ色で表示されているように見せることが可能となる。そして、この処理によれば、上記実施形態のような原画像における画素毎の明度を認識したり、複数の領域に分割したりする処理を省くことができ、絵画像を作成するための制御を一層シンプルなものとすることができる。また、原画像と同じ色調でカラーの絵画像を作成することが可能となり、絵画像に描かれた対象物の実感を高めることができる。
【符号の説明】
【0049】
1,68 描画装置
2,69 コンピュータ
3 ディスプレイ
8 対応関係テーブル(記憶手段)
10,80 文字列
25 画像取込手段
28 グレースケール手段(原画像情報認識手段)
29 明度認識手段(原画像情報認識手段)
30 領域分割手段(絵画像作成手段)
31 面積算出手段(絵画像作成手段)
32 レイヤー決定手段(絵画像作成手段)
33 マスキング手段(絵画像作成手段)
35 文字列入力手段
37,75 文字表示手段(絵画像作成手段)
38,76 絵画像出力手段(絵画像作成手段)
43 原画像
55 絵画像表示画面(表示画面)
56 絵画像
73 画像レイヤー生成手段
G 画像レイヤー
L レイヤー
M 文字レイヤー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2002−298136

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを有しディスプレイの表示画面に絵画像を表示する描画装置であって、
前記コンピュータは、
原画像を取込む画像取込手段と、
描画対象の文字列を入力するための文字列入力手段と、
該文字列入力手段によって入力された前記文字列を前記ディスプレイの前記表示画面に多数表示することで、前記原画像を模した前記絵画像を作成する絵画像作成手段と
を具備することを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記コンピュータは、前記画像取込手段によって取込まれた前記原画像の、明度または色相を画素毎に認識する原画像情報認識手段をさらに備え、
前記絵画像作成手段は、前記原画像情報認識手段によって認識された前記明度または前記色相に基づいて、前記文字列の表示形態を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記原画像情報認識手段は、
前記画像取込手段によって取込まれた前記原画像をグレースケール化するグレースケール手段と、
グレースケール化された前記原画像に対し、画素毎に前記明度を認識する明度認識手段とを備え、
前記絵画像作成手段は、
互いに隣接し且つ前記明度が略一致する複数の前記画素同士が同じ領域となるように、前記原画像を前記明度に基づいて複数の領域に分割する領域分割手段と、
分割されたそれぞれの前記領域の面積を算出する面積算出手段と、
前記文字列を多数配列させる表示パターンが予め設定されるとともに、表示される前記文字列の大きさ及び前記文字列同士の間隔が互いに異なるように設定された複数枚のレイヤーと、
前記文字列入力手段によって入力された前記文字列を、前記表示パターンに基づいてそれぞれの前記レイヤーに表示する文字表示手段と、
前記領域の面積及び前記明度と、使用すべきレイヤーとの対応関係が予め記憶された記憶手段と、
該記憶手段に記憶された前記対応関係を用い、前記明度認識手段によって認識された前記明度、及び前記面積算出手段によって算出された前記面積に基づいて、それぞれの前記領域に対応する前記レイヤーを決定するレイヤー決定手段と、
それぞれの前記領域に対応する前記レイヤーを前記原画像に重ね合わせると仮定した際に、前記レイヤーの中で、前記領域と重なり合う部分を選択範囲とし、該選択範囲以外の部分が非表示状態となるようにマスキングするマスキング手段とを備える
ことを特徴とする請求項2に記載の描画装置。
【請求項4】
前記コンピュータは、
前記画像取込手段によって取込まれた前記原画像を貼付けて画像レイヤーを生成する画像レイヤー生成手段と、
前記画像レイヤーの前面に重ね合わされ、前記文字列を多数配列させるとともに該文字列部分が透過設定される表示パターンが予め設定された文字レイヤーとをさらに備え、
前記絵画像作成手段は、前記文字列入力手段によって入力された前記文字列を、前記表示パターンに基づいて前記文字レイヤーに表示することで、前記原画像を模した前記絵画像を作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項5】
ディスプレイの表示画面に絵画像を表示することが可能なコンピュータで使用される描画プログラムであって、
原画像を取込む画像取込手段と、
描画対象の文字列を入力するための文字列入力手段と、
前記画像取込手段によって取込まれた前記原画像をグレースケール化するグレースケール手段と、
グレースケール化された前記原画像に対し、画素毎に明度を認識する明度認識手段と、
互いに隣接し且つ前記明度が略一致する複数の前記画素同士が同じ領域となるように、前記原画像を前記明度に基づいて複数の領域に分割する領域分割手段と、
分割されたそれぞれの前記領域の面積を算出する面積算出手段と、
前記文字列を多数配列させる表示パターンが予め設定されるとともに、表示される前記文字列の大きさ及び前記文字列同士の間隔が互いに異なるように設定された複数枚のレイヤーと、
前記文字列入力手段によって入力された前記文字列を、前記表示パターンに基づいてそれぞれの前記レイヤーに表示する文字表示手段と、
前記領域の面積及び前記明度と、使用すべきレイヤーとの対応関係が予め記憶された記憶手段と、
該記憶手段に記憶された前記対応関係を用い、前記明度認識手段によって認識された前記明度、及び前記面積算出手段によって算出された前記面積に基づいて、それぞれの前記領域に対応する前記レイヤーを決定するレイヤー決定手段と、
それぞれの前記領域に対応する前記レイヤーを前記原画像に重ね合わせると仮定した際に、前記レイヤーの中で、前記領域と重なり合う部分を選択範囲とし、該選択範囲以外の部分が非表示状態となるようにマスキングするマスキング手段
として、前記コンピュータを機能させることを特徴とする描画プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−88964(P2013−88964A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227782(P2011−227782)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(311012491)
【Fターム(参考)】