説明

描画装置、描画方法

【課題】従来の描画装置では、画像の品位を向上させることが困難である。
【解決手段】機能液53を吐出する吐出ヘッド33と、ワークWに塗布された機能液53から形成されたパターンに向けて赤外光18を照射する照射装置17と、照射装置17から前記パターンに向けて照射された赤外光18のうち前記パターンを透過した赤外光18の進路に設けられ、前記パターンを透過した赤外光18を、相互に波長域が異なる複数の波長域の光91に分光する分光素子85と、分光された光91の進路に設けられ、複数の波長域の光91のうちの一部の波長域の光92を透過させる光学フィルター87と、光学フィルター87を透過した光92の進路に設けられ、光92を受光し、受光した光量に応じた値の信号を出力する受光素子89と、を有する、ことを特徴とする描画装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置、描画方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紫外光の照射を受けることによって硬化するインクを用いて画像を形成する方法(描画方法)が知られている。このようなインクにおいては、赤外分光光度計を用いてインクの吸光度を測定することによって、インクの硬化の程度を把握することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−306591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載された記録装置(描画装置)では、インクに対する紫外光の照射量が、記録媒体の搬送速度によって異なることがある。記録媒体の搬送速度が速い場合には、搬送速度が遅い場合に比較して、インクが受ける紫外光の照射量が少ない。このため、記録媒体の搬送速度が速い場合には、搬送速度が遅い場合よりも、インクの硬化の程度が低くなることが考えられる。
この他にも、インクの硬化の程度には、画像の解像度や、記録媒体上でのインクの厚みなどによっても、差異が発生することが考えられる。つまり、インクの硬化の程度は、画像形成における種々の条件の違いによって、ばらつくものと考えられる。インクの硬化の程度がばらつくと、形成された画像の品位にばらつきが発生する。
【0005】
このため、画像を形成する過程で、インクの硬化の程度を把握することが望まれる。例えば、画像を形成する過程で、インクの硬化の程度が低いことが把握されれば、紫外光の強度を高めたり、その画像を構成するインクに紫外光を反復して照射したりすることによって、画像の品位を保つことができる。これにより、画像の品位を高めやすくすることができる。
そこで、上記特許文献1に記載された方法を応用することが考えられる。つまり、赤外分光光度計を備えた記録装置で画像を形成することが考えられる。これにより、画像を形成する過程で、インクの硬化の程度を把握することが可能となる。
しかしながら、一般的に、赤外分光光度計を用いた赤外分光スペクトルの解析では、解析にかかる時間が、記録装置で画像を形成するのにかかる時間よりも長くなりやすい。また、赤外分光光度計にかかるコストも高額となる。このため、赤外分光光度計を備えた記録装置で画像を形成することは、実用的ではない。
【0006】
上記のことから、画像を形成する過程で、インクの硬化の程度を把握することは困難である。よって、従来の描画装置では、画像の品位を向上させることが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0008】
[適用例1]ワークに対向し、前記ワークに向けて液状体を吐出する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドに対する前記ワークの相対位置を変位させる変位装置と、前記ワークに塗布された前記液状体から形成されたパターンに向けて光を照射する光照射装置と、前記光照射装置から前記パターンに向けて照射された前記光のうち前記パターンを透過した光の進路に設けられ、前記パターンを透過した光を、相互に波長域が異なる複数の波長域の光に分光する第1光学素子と、分光された前記複数の波長域の光の進路に設けられ、前記複数の波長域の光のうちの一部の波長域の光を透過させる第2光学素子と、前記第2光学素子を透過した前記一部の波長域の光の進路に設けられ、前記一部の波長域の光を受光し、受光した光量に応じた値の信号を出力する受光素子と、を有する、ことを特徴とする描画装置。
【0009】
この適用例の描画装置は、吐出ヘッドと、変位装置と、光照射装置と、第1光学素子と、第2光学素子と、受光素子と、を有する。
吐出ヘッドは、ワークに対向し、ワークに向けて液状体を吐出する。
変位装置は、吐出ヘッドに対するワークの相対位置を変位させる。
光照射装置は、ワークに塗布された液状体から形成されたパターンに向けて光を照射する。
第1光学素子は、光照射装置からパターンに向けて照射された光のうちパターンを透過した光の進路に設けられている。第1光学素子は、パターンを透過した光を、相互に波長域が異なる複数の波長域の光に分光する。
第2光学素子は、分光された複数の波長域の光の進路に設けられている。第2光学素子は、複数の波長域の光のうちの一部の波長域の光を透過させる。
受光素子は、第2光学素子を透過した一部の波長域の光の進路に設けられている。受光素子は、一部の波長域の光を受光し、受光した光量に応じた値の信号を出力する。
上記の構成により、パターンを透過した光に含まれる一部の波長域の光の光量を検出することができる。これにより、例えば、液状体の硬化の程度の差によってパターンを透過する光の光量に差異が発生する波長域の光として、一部の波長域の光を設定することによって、液状体の硬化の程度について合否を判定することができる。
この描画装置では、光照射装置と、第1光学素子と、第2光学素子と、受光素子とが設けられているので、描画の過程で、液状体の硬化の程度について合否を判定することができる。この結果、描画の品位を高めやすくすることができる。
【0010】
[適用例2]上記の描画装置であって、前記液状体は、紫外光の照射を受けることによって硬化する性質を有しており、前記ワークに塗布された前記液状体に向けて、前記紫外光を含む光を照射する紫外光照射装置を有する、ことを特徴とする描画装置。
【0011】
この適用例では、ワークに塗布された液状体を、紫外光の照射によって硬化させることができる。
【0012】
[適用例3]上記の描画装置であって、前記光照射装置は、赤外光を含む光を前記パターンに向けて照射し、前記第1光学素子は、前記パターンを透過した光を、赤外域の波長域を含む前記複数の波長域の光に分光し、前記第2光学素子は、前記一部の波長域の光として、前記赤外域の波長域の光を透過させ、前記受光素子は、前記赤外域の波長域の光を受光し、受光した光量に応じた値の信号を出力する、ことを特徴とする描画装置。
【0013】
この適用例では、パターンを透過した光に含まれる赤外域の波長域の光の光量を検出することができる。
【0014】
[適用例4]上記の描画装置であって、前記変位装置は、前記吐出ヘッドを保持するキャリッジと、前記キャリッジを搬送するキャリッジ搬送装置と、を有し、前記紫外光照射装置は、前記キャリッジに設けられている、ことを特徴とする描画装置。
【0015】
この適用例では、変位装置は、吐出ヘッドを保持するキャリッジと、キャリッジを搬送するキャリッジ搬送装置と、を有する。また、この描画装置では、紫外光照射装置は、キャリッジに設けられている。
上記の構成により、紫外光照射装置を吐出ヘッドの変位に追従させることができる。
【0016】
[適用例5]上記の描画装置であって、前記受光素子から出力された前記信号に基づいて、前記パターンの硬化の程度について合否を判定する制御部を有する、ことを特徴とする描画装置。
【0017】
この適用例では、描画の過程で、液状体の硬化の程度について合否を判定することができる。この結果、描画の品位を高めやすくすることができる。
【0018】
[適用例6]ワークに液状体を塗布することによって、前記ワークに前記液状体でパターンを描画する描画工程と、前記パターンを構成する前記液状体を硬化させる硬化工程と、前記硬化工程の後に、前記パターンに光を照射し、照射した前記光のうち前記パターンを透過した光の量に基づいて、前記パターンの硬化の程度について合否を判定する判定工程と、を有する、ことを特徴とする描画方法。
【0019】
この適用例の描画方法は、描画工程と、硬化工程と、判定工程と、を有する。
描画工程では、ワークに液状体を塗布することによって、ワークに液状体でパターンを描画する。
硬化工程では、パターンを構成する液状体を硬化させる。
硬化工程の後に、判定工程では、パターンに光を照射し、照射した光のうちパターンを透過した光の量に基づいて、パターンの硬化の程度について合否を判定する。
この描画方法では、描画の過程で、液状体の硬化の程度について合否を判定することができる。この結果、描画の品位を高めやすくすることができる。
【0020】
[適用例7]上記の描画方法であって、前記判定工程における判定結果が不合格であったときに、前記判定工程の後に、前記硬化工程を実施する、ことを特徴とする描画方法。
【0021】
この適用例では、判定工程における判定結果が不合格であったときに、判定工程の後に、硬化工程を実施するので、液状体の硬化の程度を合格の水準に高めやすくすることができる。
【0022】
[適用例8]上記の描画方法であって、前記液状体は、紫外光の照射を受けることによって硬化する性質を有しており、前記硬化工程では、前記液状体に前記紫外光を照射する、ことを特徴とする描画方法。
【0023】
この適用例では、硬化工程において、液状体に紫外光を照射することによって、液状体を硬化させることができる。
【0024】
[適用例9]上記の描画方法であって、前記判定工程では、前記パターンを透過した光を、相互に波長域が異なり、且つ赤外域の波長域を含む複数の波長域の光に分光し、分光した前記複数の波長域の光のうち赤外光の光量に基づいて、前記パターンの硬化の程度について合否を判定する、ことを特徴とする描画方法。
【0025】
この適用例では、パターンを透過した光に含まれる赤外光の光量に基づいて、パターンの硬化の程度について合否を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示す斜視図。
【図2】図1中のA−A線における断面図。
【図3】本実施形態における吐出ヘッドの底面図。
【図4】図2中のB−B線における断面図。
【図5】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示すブロック図。
【図6】本実施形態における記録処理の流れを示す図。
【図7】本実施形態における液滴吐出装置の他の構成例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面を参照しながら、描画装置の1つである液滴吐出装置を例に、実施形態について説明する。なお、各図面において、それぞれの構成を認識可能な程度の大きさにするために、構成や部材の縮尺が異なっていることがある。
【0028】
本実施形態における液滴吐出装置1は、概略の構成を示す斜視図である図1に示すように、ワーク搬送装置3と、キャリッジ7と、キャリッジ搬送装置11と、を有している。
キャリッジ7には、ヘッドユニット13と、2個の照射装置15と、が設けられている。
また、液滴吐出装置1は、図1中のA−A線における断面図である図2に示すように、照射装置17と、受光装置19と、を有している。
図1に示す液滴吐出装置1では、ヘッドユニット13と基板などのワークWとの平面視での相対位置を変化させつつ、ヘッドユニット13から液状体を液滴として吐出させることによって、ワークWに液状体で所望のパターンを描画(記録)することができる。なお、図中のY方向はワークWの移動方向を示し、X方向は平面視でY方向とは直交する方向を示している。また、X方向及びY方向によって規定されるXY平面と直交する方向は、Z方向として規定される。
【0029】
このような液滴吐出装置1は、例えば、樹脂フィルムなどのように、液状体が浸透しにくいワークWへの描画(記録)に適用され得る。
また、液滴吐出装置1は、例えば、液晶表示パネル等に用いられるカラーフィルターの製造や、有機EL装置の製造などにも適用され得る。
赤、緑及び青の3色のフィルターエレメントを有するカラーフィルターの場合、液滴吐出装置1は、例えば、基板に赤、緑及び青の各着色層を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット13から各着色層に対応する各液体を、ワークWに液滴として吐出させることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれのフィルターエレメントのパターンが描画される。
また、有機EL装置の製造では、例えば、赤、緑及び青の画素ごとに、各色に対応する機能層(有機層)を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット13から各色の機能層に対応する各液状体を、ワークWに液滴として吐出されることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれの機能層のパターンが描画される。
記録媒体としてのワークWは、上述した基板や樹脂フィルムなどに限定されず、紙、布、金属箔など、種々の記録媒体が採用され得る。
【0030】
ここで、液滴吐出装置1の各構成について、詳細を説明する。
ワーク搬送装置3は、図1に示すように、定盤21と、ガイドレール23aと、ガイドレール23bと、ワークテーブル25と、を有している。
定盤21は、例えば石などの熱膨張係数が小さい材料で構成されており、Y方向に沿って延びるように据えられている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、定盤21の上面21a上に配設されている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、それぞれ、Y方向に沿って延在している。ガイドレール23aとガイドレール23bとは、互いにX方向に隙間をあけた状態で並んでいる。
【0031】
ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bを挟んで定盤21の上面21aに対向した状態で設けられている。ワークテーブル25は、定盤21から浮いた状態でガイドレール23a及びガイドレール23b上に載置されている。ワークテーブル25は、ワークWが載置される面である載置面25aを有している。載置面25aは、定盤21側とは反対側(上側)に向けられている。ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bによってY方向に沿って案内され、定盤21上をY方向に沿って往復移動可能に構成されている。
【0032】
ワークテーブル25は、図示しない移動機構及び動力源によって、Y方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、ワークテーブル25をY方向に沿って移動させるための動力源として、後述するワーク搬送モーターが採用されている。ワーク搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
ワーク搬送モーターからの動力は、移動機構を介してワークテーブル25に伝達される。これにより、ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bに沿って、すなわちY方向に沿って往復移動することができる。つまり、ワーク搬送装置3は、ワークテーブル25の載置面25aに載置されたワークWを、Y方向に沿って往復移動させることができる。
【0033】
ヘッドユニット13は、図2に示すように、ヘッドプレート31と、吐出ヘッド33と、を有している。
吐出ヘッド33は、底面図である図3に示すように、ノズル面35を有している。ノズル面35には、複数のノズル37が形成されている。なお、図3では、ノズル37をわかりやすく示すため、ノズル37が誇張され、且つノズル37の個数が減じられている。
吐出ヘッド33において、複数のノズル37は、Y方向に沿って配列する4本のノズル列39を構成している。4本のノズル列39は、X方向に互いに隙間をあけた状態で並んでいる。各ノズル列39において、複数のノズル37は、Y方向に沿って所定のノズル間隔Pで形成されている。
以下において、4本のノズル列39のそれぞれが識別される場合に、ノズル列39a、ノズル列39b、ノズル列39c及びノズル列39dという表記が用いられる。
吐出ヘッド33において、ノズル列39aとノズル列39bとは、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。ノズル列39c及びノズル列39dも、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。
【0034】
2個の照射装置15は、図2に示すように、それぞれ、X方向にヘッドユニット13を挟んで互いに対峙する位置に設けられている。以下において、2個の照射装置15のそれぞれを識別する場合に、照射装置15a及び照射装置15bという表記が用いられる。
照射装置15a及び照射装置15bは、それぞれ、紫外光41を発する光源43を有している。光源43からの紫外光41は、吐出ヘッド33から吐出された機能液53(液状体)の硬化を促進させる。機能液53は、紫外光41の照射を受けると、硬化が促進する。
光源43としては、例えば、LED、LD、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等の種々の光源43が採用され得る。
なお、本実施形態では、光源43のY方向における長さは、吐出ヘッド33のノズル列39を網羅する長さに設定されている。
なお、照射装置15aの光源43と、照射装置15bの光源43とは、それぞれ、吐出ヘッド33のノズル面35がX方向に沿って描く軌跡に、平面視で重なっている。
【0035】
吐出ヘッド33は、図2中のB−B線における断面図である図4に示すように、ノズルプレート46と、キャビティープレート47と、振動板48と、複数の圧電素子49と、を有している。
ノズルプレート46は、ノズル面35を有している。複数のノズル37は、ノズルプレート46に設けられている。
キャビティープレート47は、ノズルプレート46のノズル面35とは反対側の面に設けられている。キャビティープレート47には、複数のキャビティー51が形成されている。各キャビティー51は、各ノズル37に対応して設けられており、対応する各ノズル37に連通している。各キャビティー51には、図示しないタンクから機能液53が供給される。
【0036】
振動板48は、キャビティープレート47のノズルプレート46側とは反対側の面に設けられている。振動板48は、Z方向に振動(縦振動)することによって、キャビティー51内の容積を拡大したり、縮小したりする。
複数の圧電素子49は、それぞれ、振動板48のキャビティープレート47側とは反対側の面に設けられている。各圧電素子49は、各キャビティー51に対応して設けられており、振動板48を挟んで各キャビティー51に対向している。各圧電素子49は、駆動信号に基づいて、伸長する。これにより、振動板48がキャビティー51内の容積を縮小させる。このとき、キャビティー51内の機能液53に圧力が付与される。その結果、ノズル37から、機能液53が液滴55として吐出される。吐出ヘッド33による液滴55の吐出法は、インクジェット法の1つである。インクジェット法は、塗布法の1つである。
【0037】
上記の構成を有する吐出ヘッド33は、図2に示すように、ノズル面35がヘッドプレート31から突出した状態で、ヘッドプレート31に支持されている。
キャリッジ7は、図2に示すように、ヘッドユニット13を支持している。ここで、ヘッドユニット13は、ノズル面35がZ方向の下方に向けられた状態でキャリッジ7に支持されている。
上記により、ワークWには、吐出ヘッド33から機能液53が塗布され得る。
なお、本実施形態では、縦振動型の圧電素子49が採用されているが、機能液53に圧力を付与するための加圧手段は、これに限定されず、例えば、下電極と圧電体層と上電極とを積層形成した撓み変形型の圧電素子も採用され得る。また、加圧手段としては、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなども採用され得る。さらに、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって機能液に圧力を付与する構成も採用され得る。
【0038】
本実施形態では、機能液53として、光の照射を受けることによって硬化が促進する機能液53が採用されている。本実施形態では、機能液53の硬化を促進させる光として紫外光41が採用されている。
機能液53は、樹脂材料、光重合開始剤及び溶媒を、成分として含んでいる。これらの成分に、顔料や染料等の色素や、親液性や撥液性等の表面改質材料などの機能性材料を添加することによって固有の機能を有する機能液53を生成することができる。顔料や染料等の色素を含有する機能液53は、例えば、ワークWに記録する画像を形成するための機能液53として採用され得る。以下において、ワークWに記録する画像を形成するための機能液53は、画像塗料と呼ばれる。
【0039】
また、機能液53の成分としての樹脂材料に、例えば、アクリル系の樹脂材料などの光透過性を有する樹脂材料を採用することによって、光透過性を有する機能液53を構成することができる。このような光透過性を有する機能液53は、例えば、クリアインクとしての用途が考えられる。以下において、光透過性を有する機能液53は、透光塗料と呼ばれる。
クリアインクの用途としては、例えば、画像を被覆するオーバーコート層としての用途や、画像を形成する前の下地層としての用途などが考えられる。以下において、下地層として適用される機能液53は、下地塗料と呼ばれる。
下地塗料としては、透光塗料だけでなく、透光塗料に種々の顔料を添加した機能液53を採用することもできる。例えば、白色を呈する機能液53や、金属的な光沢(メタリック)を示す機能液53なども、下地塗料として採用され得る。
【0040】
機能液53における樹脂材料は、樹脂膜を形成する材料である。このような樹脂材料としては、常温で液状であり、重合させることによってポリマーとなる材料であれば特に限定されない。樹脂材料としては、粘性が小さいものが好ましく、オリゴマーの形態であるのが好ましい。さらに、樹脂材料としては、モノマーの形態であることが一層好ましい。
光重合開始剤は、ポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させる添加剤である。光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが採用され得る。本実施形態では、光重合開始剤として、ラジカル型の光重合開始剤が採用されている。ラジカル型の光重合開始剤としては、例えば、チバ・ジャパン(株)社製のイルガキュア819などが採用され得る。
溶媒は、樹脂材料の粘度を調整するためのものである。
【0041】
キャリッジ搬送装置11は、図1に示すように、架台61と、ガイドレール63と、を有している。
架台61は、X方向に延在しており、ワーク搬送装置3をX方向にまたいでいる。架台61は、ワークテーブル25の定盤21側とは反対側で、ワーク搬送装置3に対向している。架台61は、一対の支柱65によって支持されている。一対の支柱65は、定盤21を挟んでX方向に互いに対峙する位置に設けられている。
なお、以下においては、一対の支柱65のそれぞれを識別する場合に、支柱65a及び支柱65bという表記が用いられる。支柱65a及び支柱65bは、それぞれ、ワークテーブル25よりもZ方向の上方に突出している。これにより、架台61とワークテーブル25との間には、隙間が保たれている。
【0042】
ガイドレール63は、架台61の定盤21側に設けられている。ガイドレール63は、X方向に沿って延在しており、架台61のX方向における幅にわたって設けられている。
前述したキャリッジ7は、ガイドレール63に支持されている。キャリッジ7がガイドレール63に支持された状態において、吐出ヘッド33のノズル面35は、Z方向においてワークテーブル25側に向いている。キャリッジ7は、ガイドレール63によってX方向に沿って案内され、X方向に往復動可能な状態でガイドレール63に支持されている。なお、平面視で、キャリッジ7がワークテーブル25に重なっている状態において、ノズル面35とワークテーブル25の載置面25aとは、互いに隙間を保った状態で対向する。
【0043】
キャリッジ7は、図示しない移動機構及び動力源によって、X方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、キャリッジ搬送装置11は、キャリッジ7をX方向に沿って移動させるための動力源として、図示しないキャリッジ搬送モーターを有している。キャリッジ搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
キャリッジ搬送モーターからの動力は、移動機構を介してキャリッジ7に伝達される。これにより、キャリッジ7は、ガイドレール63に沿って、すなわちX方向に沿って往復移動することができる。つまり、キャリッジ搬送装置11は、キャリッジ7に支持されたヘッドユニット13を、X方向に沿って往復移動させることができる。
上記の構成を有する液滴吐出装置1では、吐出ヘッド33をワークWに対向させた状態で、吐出ヘッド33とワークWとを相対的に往復移動させながら、吐出ヘッド33から液滴55を吐出させることによって、ワークWへのパターンの記録(描画)が行われる。
【0044】
照射装置17は、図1に示すように、架台61に設けられた支持プレート71に支持されている。照射装置17は、支持プレート71に支持された状態において、定盤21に向けられている。
ここで、ワークWには、製品となるパターンの描画が許可される領域である許可領域73と、許可領域73の外側に設定される余白領域75と、が設定される。許可領域73と余白領域75とは、X方向に並んでいる。本実施形態では、許可領域73と余白領域75とが、X方向に隣り合っている。また、本実施形態では、X方向において、許可領域73が支柱65a側に設定され、余白領域75が支柱65b側に設定されている。
【0045】
本実施形態において、照射装置17は、図2に示すように、ワークWの余白領域75に対面する。
なお、キャリッジ7は、ワークテーブル25をX方向にまたぐ領域にわたって移動することができる。このため、キャリッジ7に設けられている照射装置15aは、余白領域75に対面することができる。このとき、照射装置15aが余白領域75に対面している状態において、照射装置17とキャリッジ7との間には、Z方向に隙間が空いている。これにより、キャリッジ7と照射装置17との接触が避けられる。従って、X方向におけるキャリッジ7の移動領域にわたって、キャリッジ7の移動は、照射装置17に阻害されない。
【0046】
ワークテーブル25には、ワークWの余白領域75が重なる領域に、開口部77が設けられている。なお、余白領域75は、開口部77に重なる領域であるともみなされ得る。また、上述した照射装置17は、開口部77に対面する。
照射装置17は、赤外光18を発する光源78を有している。照射装置17は、開口部77に重なる余白領域75に向けて赤外光18を照射する。なお、赤外光18を発する光源78としては、例えば、赤外ランプなどが挙げられる。
開口部77は、載置面25aと、定盤21に向けられた底面25bとの間を貫通している。開口部77の載置面25a側は、光透過性を有するふた79によって塞がれている。
【0047】
定盤21には、照射装置17が対面する部位に開口部81が設けられている。開口部81は、定盤21のワークテーブル25側に設けられている。開口部81は、定盤21のワークテーブル25側から、ワークテーブル25側とは反対側に向かって掘られている。
開口部81のワークテーブル25側は、光透過性を有するふた82によって塞がれている。
照射装置17とワークテーブル25の開口部77とが互いに対面している状態において、定盤21の開口部81は、平面視でワークテーブル25の開口部77に重なる。このため、照射装置17とワークテーブル25の開口部77とが互いに対面している状態において、照射装置17からの赤外光18は、定盤21の開口部81内に到達し得る。
【0048】
定盤21の開口部81内には、受光装置19が設けられている。
受光装置19は、分光素子85と、光学フィルター87と、受光素子89と、を有している。
分光素子85は、余白領域75に向けて照射された赤外光18のうち、余白領域75、ふた79、開口部77、及びふた82を透過した赤外光18の進路に設けられている。ふた82を透過して開口部81に入射した赤外光18は、分光素子85に照射される。分光素子85は、照射された赤外光18を、相互に波長域が異なる複数の波長域の光91に分光する。分光素子85としては、例えば、プリズムや回折格子などの光学素子が採用され得る。
【0049】
光学フィルター87は、波長域ごとに分光された光91の進路に設けられている。分光素子85によって分光された光91は、光学フィルター87に照射される。
光学フィルター87は、照射された光91のうちの一部の波長域の光92を透過させることができる光学素子である。光学フィルター87としては、照射された光91のうちの一部の波長域の光92を除く光を吸収したり反射したりする光学的なフィルターや、光91を透過させない膜に光92を通過させるピンホールを形成したものなどが採用され得る。
受光素子89は、光92の進路に設けられている。受光素子89は、光92を受光し、受光した光量に応じた値の信号を出力する。受光素子89としては、例えば、フォトダイオードやフォトトランジスターなどが採用され得る。
【0050】
本実施形態では、機能液53を透過する光量が、機能液53の硬化の程度に応じて変化する波長域の光92が光92として採用されている。
これにより、受光素子89から出力された信号に基づいて、機能液53の硬化の程度を把握することができる。
本実施形態では、余白領域75に塗布された機能液53の硬化の程度が把握され得る。まず、余白領域75に塗布された機能液53に向けて赤外光18を照射する。機能液53に照射された赤外光18のうちで機能液53を透過した赤外光18は、ふた79、開口部77、ふた82を経て分光素子85に到達する。分光素子85に到達した赤外光18は、光91に分光される。分光された光91は、光学フィルター87に照射される。光学フィルター87は、光91のうちの光92を透過させる。光学フィルター87を透過した光92は、受光素子89に到達する。受光素子89は、受光した光92の光量に応じた値の信号を出力する。そして、受光素子89から出力された信号の値に基づいて、余白領域75に塗布された機能液53の硬化の程度が把握され得る。
【0051】
液滴吐出装置1は、図5に示すように、上記の各構成の動作を制御する制御部111を有している。制御部111は、CPU(Central Processing Unit)113と、駆動制御部115と、メモリー部117と、を有している。駆動制御部115及びメモリー部117は、バス119を介してCPU113に接続されている。
また、液滴吐出装置1は、キャリッジ搬送モーター121と、ワーク搬送モーター123と、入力装置129と、表示装置131と、を有している。
キャリッジ搬送モーター121及びワーク搬送モーター123は、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。また、入力装置129及び表示装置131も、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0052】
キャリッジ搬送モーター121は、キャリッジ7を駆動するための動力を発生させる。ワーク搬送モーター123は、ワークテーブル25を駆動するための動力を発生させる。
入力装置129は、各種の加工条件を入力する装置である。表示装置131は、加工条件や、作業状況を表示する装置である。液滴吐出装置1を操作するオペレーターは、表示装置131に表示される情報を確認しながら、入力装置129を介して種々の情報を入力することができる。
なお、吐出ヘッド33、照射装置15a及び照射装置15bも、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。また、照射装置17及び受光素子89も、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0053】
CPU113は、プロセッサーとして各種の演算処理を行う。駆動制御部115は、各構成の駆動を制御する。メモリー部117は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read Only Memory)などを含んでいる。メモリー部117には、液滴吐出装置1における動作の制御手順が記述されたプログラムソフト135を記憶する領域や、各種のデータを一時的に展開する領域であるデータ展開部137などが設定されている。データ展開部137に展開されるデータとしては、例えば、記録すべきパターンが示される記録データや、記録処理等のプログラムデータなどが挙げられる。
駆動制御部115は、モーター制御部141と、吐出制御部145と、照射制御部147と、照射制御部149と、表示制御部151と、を有している。
【0054】
モーター制御部141は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ搬送モーター121の駆動と、ワーク搬送モーター123の駆動とを、個別に制御する。
吐出制御部145は、CPU113からの指令に基づいて、吐出ヘッド33の駆動を制御する。
照射制御部147は、CPU113からの指令に基づいて、照射装置15a及び照射装置15bのそれぞれにおける光源43の発光状態を個別に制御する。
照射制御部149は、CPU113からの指令に基づいて、照射装置17の光源78の発光状態を個別に制御する。
表示制御部151は、CPU113からの指令に基づいて、表示装置131の駆動を制御する。
【0055】
液滴吐出装置1における記録処理について説明する。
液滴吐出装置1では、制御部111が入力装置129から入出力インターフェイス133及びバス119を介して記録データを受け取ると、CPU113によって図6に示す記録処理が開始される。
ここで、記録データは、機能液53(液状体)でワークWに記録すべきパターンを指示するものであり、液滴55で形成すべきドットがビットマップ状に表現されている。ワークWに記録されるパターンは、液滴55で形成される複数のドットの集合として表現される。ワークWへのパターンの記録は、吐出ヘッド33をワークWに対向させた状態で、吐出ヘッド33とワークWとを相対的に往復移動させながら、吐出ヘッド33から液滴55を所定周期で吐出させることによって行われる。
【0056】
記録処理では、CPU113は、まず、ステップS1において、キャリッジ搬送指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7を描画エリアの往路開始位置に移動させる。
ここで、液滴吐出装置1では、描画エリアが設定されている。描画エリアは、図1に示すワークテーブル25によってY方向に沿って描かれる軌跡と、吐出ヘッド33によってX方向に沿って描かれる軌跡とが重なり合う領域である。
そして、往路開始位置は、キャリッジ7を往復移動させるときの往路が開始する位置である。本実施形態では、往路開始位置は、平面視で、描画エリアの外側に位置している。本実施形態では、往路開始位置は、平面視で、描画エリアの支柱65a側に位置している。
次いで、ステップS2において、CPU113は、ワーク搬送指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWを描画エリアに移動させる。
【0057】
次いで、ステップS3において、CPU113は、キャリッジ走査指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7の往復移動を開始させる。
ここで、キャリッジ7の往復移動では、キャリッジ7は、上述した往路開始位置と復路開始位置との間を往復移動する。つまり、往路開始位置から復路開始位置で折り返して往路開始位置に戻る経路がキャリッジ7の1往復である。このため、本実施形態では、往路開始位置から復路開始位置に向かう経路がキャリッジ7の往路である。他方で、復路開始位置から往路開始位置に向かう経路がキャリッジ7の復路である。
なお、復路開始位置は、X方向に描画エリアを挟んで往路開始位置に対峙する位置である。復路開始位置は、平面視で、描画エリアの外側に位置している。このため、往路開始位置と復路開始位置とは、平面視で、描画エリアをX方向に挟んで互いに対峙している。本実施形態では、復路開始位置は、平面視で、描画エリアの支柱65b側に位置している。
【0058】
次いで、ステップS4において、CPU113は、照射装置15aに対する照射指令を照射制御部147(図5)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15aの光源43の駆動を制御して、照射装置15aの光源43を点灯させる。
次いで、ステップS5において、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が往路における記録開始位置に到達したか否かを判定する。
ここで、記録開始位置は、描画エリア内で吐出ヘッド33から液滴55の吐出を開始させる位置である。
このとき、吐出ヘッド33の位置が記録開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS6に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置が記録開始位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置が記録開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0059】
次いで、ステップS6において、CPU113は、吐出指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、記録データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、往路での許可領域73に対する記録が開始される。
次いで、ステップS7において、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が許可領域73に対する記録停止位置に到達したか否かを判定する。
ここで、記録停止位置は、許可領域73内で吐出ヘッド33から液滴55の吐出を停止させる位置である。
このとき、吐出ヘッド33の位置が記録停止位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS8に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置が記録停止位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置が記録停止位置に到達するまで処理が待機される。
【0060】
次いで、ステップS8において、CPU113は、吐出停止指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を停止して、各ノズル37からの液滴55の吐出を停止させる。これにより、往路での許可領域73に対する記録が終了する。
次いで、ステップS9において、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が余白領域75におけるテスト記録開始位置に到達したか否かを判定する。
ここで、テスト記録は、余白領域75において、機能液53の硬化の程度を把握するためのテストパターンを記録することである。そして、テスト記録開始位置は、余白領域75内で吐出ヘッド33から液滴55の吐出を開始させる位置である。
ステップS9において、吐出ヘッド33の位置がテスト記録開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS10に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置がテスト記録開始位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置がテスト記録開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0061】
次いで、ステップS10において、CPU113は、吐出指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、テスト記録データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、往路での余白領域75に対するテスト記録が開始される。
なお、テスト記録では、直前の往路での許可領域73に対する記録における条件のうち、機能液53の硬化に対して最も厳しい条件と同等の条件でテストパターンを記録する。機能液53の硬化に対して厳しい条件としては、例えば、ノズル37からの機能液53の吐出量が他に比較して多い場合や、機能液53の塗布密度が高い場合、キャリッジ7の移動速度が速い場合などが挙げられる。キャリッジ7の移動速度が速い場合には、機能液53が受ける紫外光41の光量(積算光量)が少なくなるので、硬化に対する条件が厳しくなる。
【0062】
ステップS10に次いで、ステップS11において、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が余白領域75に対するテスト記録停止位置に到達したか否かを判定する。
ここで、テスト記録停止位置は、余白領域75内で吐出ヘッド33から液滴55の吐出を停止させる位置である。
このとき、吐出ヘッド33の位置がテスト記録停止位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS12に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置がテスト記録停止位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置がテスト記録停止位置に到達するまで処理が待機される。
【0063】
次いで、ステップS12において、CPU113は、吐出停止指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を停止して、各ノズル37からの液滴55の吐出を停止させる。これにより、往路での余白領域75に対するテスト記録が終了する。
次いで、ステップS13において、CPU113は、キャリッジ7の位置が退避位置に到達したか否かを判定する。
ここで、退避位置は、図2に示すように、キャリッジ7が支柱65a側からX方向にワークWをまたいで、ワークWよりも支柱65b側に退避する位置である。この退避位置にキャリッジ7が退避することによって、赤外光18の光路からキャリッジ7を退避させることができる。
【0064】
ステップS13において、キャリッジ7の位置が退避位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS14に移行する。他方で、キャリッジ7の位置が退避位置に到達していない(No)と判定されると、キャリッジ7の位置が退避位置に到達するまで処理が待機される。
次いで、ステップS14において、CPU113は、キャリッジ停止指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7の移動を停止させる。
次いで、ステップS15において、CPU113は、照射装置15aに対する照射停止指令を照射制御部147(図5)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15aの光源43の駆動を制御して、照射装置15aの光源43を消灯させる。
【0065】
次いで、ステップS16において、CPU113は、照射装置17に対する照射指令を照射制御部149(図5)に出力する。このとき、照射制御部149は、照射装置17の光源78の駆動を制御して、照射装置17の光源78を点灯させる。
次いで、ステップS17において、CPU113は、図2に示す受光素子89から出力される信号を受信し、受信した受光素子89からの信号の値を光92の光量データとして取得する。なお、光量データは、受光素子89が受光した光92の量に応じた大きさを示している。
次いで、ステップS18において、CPU113は、取得した光量データの合否判定を行う。ここでは、光量データが合格基準値を下回っているか否かを判定することによって、合否判定が行われる。本実施形態では、光量データが合格基準値を下回っていれば、合格の判定が行われる。他方で、光量データが合格基準値以上であるときには、不合格の判定が行われる。ステップS18では、光量データが合格である(Yes)と判定されると、処理がステップS20に移行する。他方で、光量データが不合格である(No)と判定されると、処理がステップS19に移行する。
【0066】
ステップS19では、CPU113は、照射装置15bに対する照射指令を照射制御部147(図5)に出力してから、処理をステップS20に移行させる。このとき、ステップS19では、照射制御部147は、照射装置15bの光源43の駆動を制御して、照射装置15bの光源43を点灯させる。
ステップS20では、CPU113は、キャリッジ駆動指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7の復路の移動を開始させる。
次いで、ステップS21において、CPU113は、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達したか否かを判定する。このとき、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS22に移行する。他方で、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達していない(No)と判定されると、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0067】
次いで、ステップS22において、CPU113は、キャリッジ停止指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7の移動を停止させる。
次いで、ステップS23において、CPU113は、照射装置15bの光源43が点灯しているか否かを判定する。このとき、照射装置15bの光源43が点灯している(Yes)と判定されると、処理がステップS24に移行する。他方で、照射装置15bの光源43が点灯していない(No)と判定されると、処理がステップS25に移行する。
ステップS24では、CPU113は、照射装置15bに対する照射停止指令を照射制御部147(図5)に出力してから、処理をステップS25に移行させる。このとき、ステップS24では、照射制御部147は、照射装置15bの光源43の駆動を制御して、照射装置15bの光源43を消灯させる。
【0068】
次いで、ステップS25において、CPU113は、記録データが終了したか否かを判定する。このとき、記録データが終了した(Yes)と判定されると、記録処理が終了する。他方で、記録データが終了していない(No)と判定されると、処理がステップS26に移行する。
ステップS26では、CPU113は、改行指令をモーター制御部141(図5)に出力してから、処理をステップS3に移行させる。このとき、ステップS26では、改行指令を受けたモーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWをY方向に移動(改行)させ、ワークWにおいてパターンを記録すべき新たな領域を描画エリアに移動させる。
上記により、ワークWにおける記録が行われ得る。
【0069】
本実施形態において、液滴吐出装置1が描画装置に対応し、キャリッジ搬送装置11が変位装置に対応し、照射装置17が光照射装置に対応し、分光素子85が第1光学素子に対応し、光学フィルター87が第2光学素子に対応し、照射装置15が紫外光照射装置に対応し、テストパターンがパターンに対応している。
また、ステップS6及びステップS10のそれぞれの処理が描画工程に対応している。また、ステップS3及びステップS4の処理、並びに、ステップS19及びステップS20の処理が硬化工程に対応している。また、ステップS16、ステップS17及びステップS18の処理が判定工程に対応している。
【0070】
本実施形態では、余白領域75に記録されたテストパターンを透過した赤外光18に含まれる一部の波長域の光92の光量を検出することができる。これにより、機能液53の硬化の程度を把握することができ、機能液53の硬化の程度について合否を判定することができる。
本実施形態では、液滴吐出装置1に照射装置17と受光装置19とが設けられているので、記録(描画)の過程で、機能液53の硬化の程度について合否を判定することができる。この結果、描画の品位を高めやすくすることができる。
本実施形態では、記録処理のステップS18において、光量データの合否判定が行われる。このステップS18において、光量データが不合格である、すなわち機能液53の硬化の程度が不足していると判定されると、キャリッジ7の復路において、機能液53に紫外光41が照射される。これにより、機能液53の硬化の程度を高めることができるので、描画の品位を高めやすくすることができる。
【0071】
なお、本実施形態では、余白領域75を、X方向においてワークWの片側だけに設けた例が示されているが、ワークWの構成は、これに限定されない。ワークWの構成としては、X方向において、ワークWの両側に余白領域75を設けた構成も採用され得る。そして、これに合わせて、液滴吐出装置1の構成として、照射装置17と受光装置19とを、許可領域73を挟んだ両側に設けた構成が採用され得る。この構成により、キャリッジ7の往路及び復路の双方において、許可領域73に記録を行いやすくすることができるので、記録動作の効率化を図りやすくすることができる。
【0072】
また、本実施形態では、液滴吐出装置1に1組の受光装置19を設けた構成が示されているが、液滴吐出装置1の構成は、これに限定されない。液滴吐出装置1の構成としては、複数組の受光装置19を設けた構成も採用され得る。
複数組の受光装置19を設けた構成としては、例えば、図7に示すように、1つの余白領域75に設定された複数のパターン領域95のパターン領域95ごとに受光装置19を設けた構成が挙げられる。
そして、これら複数組の受光装置19間で、光92の波長域を異ならせることができる。このような構成は、例えば、複数の種類の機能液53をワークWに塗布することができる液滴吐出装置1に好適である。機能液53の硬化の程度に応じて機能液53を透過する光量が変化する波長域が、機能液53の種類によって異なることが考えられる。このため、機能液53の種類ごとに受光装置19を設ける構成が好ましい。
なお、機能液53の種類としては、例えば、機能液53の色などが挙げられる。複数の色の機能液53の色ごとに受光装置19を設けることによって、異なる色の機能液53間で硬化の程度に関する合否を正確に判定しやすくすることができる。
【符号の説明】
【0073】
1…液滴吐出装置、3…ワーク搬送装置、7…キャリッジ、11…キャリッジ搬送装置、15…照射装置、15a…照射装置、15b…照射装置、17…照射装置、18…赤外光、19…受光装置、25…ワークテーブル、33…吐出ヘッド、35…ノズル面、37…ノズル、41…紫外光、43…光源、53…機能液、55…液滴、73…許可領域、75…余白領域、78…光源、85…分光素子、87…光学フィルター、89…受光素子、91…光、92…光、111…制御部、113…CPU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対向し、前記ワークに向けて液状体を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドに対する前記ワークの相対位置を変位させる変位装置と、
前記ワークに塗布された前記液状体から形成されたパターンに向けて光を照射する光照射装置と、
前記光照射装置から前記パターンに向けて照射された前記光のうち前記パターンを透過した光の進路に設けられ、前記パターンを透過した光を、相互に波長域が異なる複数の波長域の光に分光する第1光学素子と、
分光された前記複数の波長域の光の進路に設けられ、前記複数の波長域の光のうちの一部の波長域の光を透過させる第2光学素子と、
前記第2光学素子を透過した前記一部の波長域の光の進路に設けられ、前記一部の波長域の光を受光し、受光した光量に応じた値の信号を出力する受光素子と、を有する、
ことを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記液状体は、紫外光の照射を受けることによって硬化する性質を有しており、
前記ワークに塗布された前記液状体に向けて、前記紫外光を含む光を照射する紫外光照射装置を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記光照射装置は、赤外光を含む光を前記パターンに向けて照射し、
前記第1光学素子は、前記パターンを透過した光を、赤外域の波長域を含む前記複数の波長域の光に分光し、
前記第2光学素子は、前記一部の波長域の光として、前記赤外域の波長域の光を透過させ、
前記受光素子は、前記赤外域の波長域の光を受光し、受光した光量に応じた値の信号を出力する、
ことを特徴とする請求項2に記載の描画装置。
【請求項4】
前記変位装置は、
前記吐出ヘッドを保持するキャリッジと、
前記キャリッジを搬送するキャリッジ搬送装置と、
を有し、
前記紫外光照射装置は、前記キャリッジに設けられている、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の描画装置。
【請求項5】
前記受光素子から出力された前記信号に基づいて、前記パターンの硬化の程度について合否を判定する制御部を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項6】
ワークに液状体を塗布することによって、前記ワークに前記液状体でパターンを描画する描画工程と、
前記パターンを構成する前記液状体を硬化させる硬化工程と、
前記硬化工程の後に、前記パターンに光を照射し、照射した前記光のうち前記パターンを透過した光の量に基づいて、前記パターンの硬化の程度について合否を判定する判定工程と、を有する、
ことを特徴とする描画方法。
【請求項7】
前記判定工程における判定結果が不合格であったときに、前記判定工程の後に、前記硬化工程を実施する、
ことを特徴とする請求項6に記載の描画方法。
【請求項8】
前記液状体は、紫外光の照射を受けることによって硬化する性質を有しており、
前記硬化工程では、前記液状体に前記紫外光を照射する、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の描画方法。
【請求項9】
前記判定工程では、前記パターンを透過した光を、相互に波長域が異なり、且つ赤外域の波長域を含む複数の波長域の光に分光し、分光した前記複数の波長域の光のうち赤外光の光量に基づいて、前記パターンの硬化の程度について合否を判定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−64918(P2013−64918A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204290(P2011−204290)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】