説明

描画装置

【課題】 三次元的曲面に文字、図形等を描くことができる描画装置を提供する。
【解決手段】 ワーク支持台20の上面には、取付部21を設ける。この取付部21には、ワークたる芯材1を位置決めした状態で取り付ける。ワーク支持台20の近傍には、装着部36を有するロボット30を設置する。ロボット30は、装着部36を三次元空間的に移動させることができる。装着部36には、インクジェットヘッド40を取り付ける。装着部36を芯材1の上面に沿って所定の経路上を移動させながらインクジェットヘッド40からインクを噴射させることにより、芯材1の上面に文字、図形、線等を描かせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワークの三次元曲面を有する表面上に線、文字、記号等を描くのに好適な描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用天井内装品の芯材には、当該芯材を車体の天井部分に取り付けるためのフックやその他の各種の部品が取り付けられる。このような各種の部品を芯材に位置精度よく取り付けるために、芯材の表面には、部品の取付位置を示す罫書き線や部品の向きを示す矢印等が予め描かれている。そして、罫書き線及び矢印によって部品の位置及び向きを決定した後、各部品を芯材に固定するようにしている。
【0003】
従来、芯材の表面に罫書き線や矢印を描く方法としては、次の二つの方法のいずれかが採用されていた。第1の方法は、芯材を成形する金型の表面に罫書き線や矢印に対応する凹部又は凸部を形成しておき、芯材の成形と同時にその表面に罫書き線等を描くというものである。第2の方法は、芯材を支持台上に固定し、その上にテンプレートをセットする。その後、テンプレートの基準面に鉛筆やボールペンを接触させつつ移動させることによって芯材の表面に罫書き線等を描くというものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1の方法においては、罫書き線等を位置精度よく描くことができるが、罫書き線や矢印が凹凸でしか現されておらず、罫書き線等の色が芯材の地色と同一であるため、罫書き線を識別し難いという問題があった。一方、第2の方法においては、罫書き線等が芯材に対してその地色と異なる色で描かれるので、識別し易いという利点があるものの、テンプレートを正確に位置合わせすることが難しく、そのため罫書き線等の位置誤差が比較的大きくなってしまうという問題があった。また、テンプレートを用いる場合には、罫書きを人手によって行わなければならず、作業者の疲労が大きいという問題があった。
【0005】
そこで、この出願人は、ロボットを用いて芯材に罫書き線等を描かせることを考えた。すなわち、ロボットにボールペンを持たせるとともに、ロボットを数値制御して芯材に罫書き線等を描かせるというものである。ところが、芯材の表面は、三次元曲面になっている上、各芯材毎に製作誤差がある。このため、ロボットを正確に制御したとしても、ボールペンが芯材の表面から離れてしまうことが避けられず、罫書き線等をうまく描くことができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の問題を一挙に解決するためになされたものであり、三次元曲面なす表面を有するワークがその表面を外側に向けた状態で取り付けられるワーク支持部と、装着部を有し、この装着部を三次元的に移動させることができるロボットと、上記装着部に取り付けられるインクジェットヘッドと、このインクジェットヘッドのインク噴射ノズルが上記ワークの三次元曲面をなす表面と対向した状態で上記インクジェットヘッドが上記三次元曲面に沿って所定の経路上を移動するように、上記ロボットを制御するロボット制御部と、上記インクジェットヘッドが所定の経路上を移動しているときに、上記インクジェットヘッドからインクを噴射させるインクジェット噴射制御手段とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、ワークの表面に線や文字その他の記号をインクによって描くので、インクの色をワークの表面の地色と異なるものを採用することにより、識別し易い記号等を描くことができる。また、ワーク支持台に位置決め固定したワークに対してロボットを制御するものであるから、テンプレートを用いる必要がなく、記号等を位置精度よく描くことができるとともに、作業者の労力を軽減することができる。さらに、インクジェットヘッドは、ワークの表面に接触することなく離れているから、三次元曲面をなす表面に形状的な誤差があったとしても、ワークの表面に記号等を問題なく描くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
まず、この発明に係る描画装置によって線又は記号等が描かれる描画対象について説明すると、図2には車両用天井内張り材の芯材(ワーク)1が示されている。この芯材1は、平面視長方形状の板体によって構成されている。芯材1の一方の面には、四角形のフォーム(図示せず)の4隅部の位置を定める第1罫書き線1aが中央部に描かれ、四角形の他のフォーム(図示せず)の4隅部および中央の逃げ部の位置を定める第2罫書き線1bが一端部に描かれ、芯材1を車両の天井に固定するためのフック2(図3参照)の位置決めをする第3罫書き線1cが第2罫書き線1bによって囲まれる部分の外側に描かれ、フック2と異なる他のフック(図示せず)を位置決めするための第4罫書き線1dが芯材1の他端部に描かれ、さらに第2罫書き線の近傍にフック2の向きを決定する矢印1eが描かれている。罫書き線1a〜1dは、破線で描かれているが、連続した実線で描いてもよい。
【0009】
次に、芯材1に第1〜第4罫書き線1a〜1d及び矢印1eを描くための描画装置10について図1に基づいて説明すると、描画装置10は基台11を有している。この基台11の上面の一端部には、ワーク支持台(ワーク支持部)20が設けられている。このワーク支持台20の上面には、取付部21が形成されている。この取付部21には、芯材1が位置決めした状態で固定される。勿論、芯材1は、第1〜第4罫書き線1a〜1d及び矢印1eが描かれるべき表面を上方(外側)に向けた状態で取付部21に固定される。
【0010】
基台11の上面の他端部には、ロボット30が設けられている。このロボット30は、基台11に鉛直な軸線L1を中心として回動可能に設けられた基部31と、この基部31の上端部に下端部が水平な軸線L2を中心として回動可能に設けられた脚部32と、この脚部32の上端部に一端部が水平な軸線L3を中心として回動可能に設けられた胴部33と、この胴部33の他端部に水平な軸線L4を中心として回動可能に設けられた腕部34と、この腕部34の先端部に、軸線を軸線L2〜L4と直交する方向に延びる軸線L5と一致させた状態で、軸線L5を中心として回動可能に設けられた支持軸35と、この支持軸35の先端部に軸線L5と直交する水平な軸線L6を中心として回動可能に設けられた装着部36とを有している。装着部36は、ロボット30の各部31〜36が軸線L1〜L6を中心として回動することにより、三次元空間的に移動可能である。装着部36の移動は、数値制御手段等のロボット制御手段(図示せず)によって制御されている。なお、ロボット30は、装着部36を三次元空間的に移動させることができるものであれば、他のものであってもよい。
【0011】
装着部36の下部には、インクジェットヘッド40の上端部が着脱可能に取り付けられている。インクジェットヘッド40は、周知のものであり、装着部36から下方に突出した下部の下端面には、インク噴射ノズル(図示せず)が設けられている。そして、装着部36の移動(インクジェットヘッド40の移動)に合わせてインク噴射ノズルからインクを噴射することにより、所望の記号、文字、図形等を描くことができるようになっている。インク噴射ノズルからのインクの噴射は、インクジェット噴射制御手段(図示せず)によって制御されている。
【0012】
装着部36の上部には、チューブ37が連結されている。このチューブ37内には、ロボット30とロボット制御手段とを電気的に接続する接続線、インクジェットヘッド40とインクジェット噴射制御手段とを電気的に接続する接続線及びインクジェットヘッド40にインクを供給する供給管等が設けられている。
【0013】
上記構成の描画装置10を用いて第1〜第4罫書き線1a〜1d及び矢印1eを描く場合には、まずワーク支持台20の取付部21に芯材1を位置固定する。次に、ロボット制御手段に描画開始指令を入力する。すると、ロボット30が第1〜第4罫書き線1a〜1d及び矢印1eを所定の順序で順次描く。すなわち、ロボット30は、装着部36を適宜に移動させ、インクジェットヘッド40のノズルが形成された下面を芯材1に正対させるとともに、インクジェットヘッド40を罫書き線1a〜1d及び矢印1eに合わせて移動させる。この場合、ロボット30は、インクジェットヘッド40を罫書き線1a〜1d及び矢印1eに沿って移動させるのみならず、芯材1の罫書き線1a〜1d及び矢印1eが描かれる上面が三次元的曲面になっているので、インクジェットヘッド50の下面が芯材1の上面と常時ほぼ一定の距離を維持するよう、インクジェットヘッド40を三次元空間的に移動させる。インクジェット制御手段は、インクジェットヘッド40が罫書き線1a〜1d又は矢印1eを描くべき所定の経路に沿って移動するときに、インクジェットヘッド40のインク噴射ノズルからインクを噴射させて芯材1に罫書き線1a〜1d及び矢印1eを順次描かせる。
【0014】
上記の描画装置10を用いて芯材1に罫書き線1a〜1d及び矢印1eを描いた場合には、芯材1を取付部21に正しく位置合わせして取り付けるだけでよく、テンプレート等を全く必要としない。したがって、罫書き線1a〜1d及び矢印1eを位置精度よく描くことができる。しかも、罫書き線1a〜1d及び矢印1eを描く際には、人手を全く必要としないので作業者の労力を軽減することができるのは勿論のこと、省力化を図ることができる。また、インクジェットヘッド40は、芯材1に対して接触することなく、芯材1から離れている。したがって、芯材1の厚さ、形状等に若干の製造誤差があったとしても、罫書き線1a〜1d及び矢印1eを何等問題なく描くことができる。
【0015】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態では、芯材1が描画装置10の描画対象になっているが、描画装置10は他のものにも描くことができる。また、罫書き線1a〜1d及び矢印1e以外の、他の各種の記号、文字、図形等を描くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係る描画装置の一実施の形態の概略構成を示す正面図である。
【図2】この発明に係る描画装置の描画対象の一例である芯材を示す平面図である。
【図3】同芯材の要部を拡大して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
1 芯材(ワーク)
10 描画装置
20 ワーク支持台(ワーク支持部)
30 ロボット
40 インクジェットヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元曲面なす表面を有するワークがその表面を外側に向けた状態で取り付けられるワーク支持部と、装着部を有し、この装着部を三次元的に移動させることができるロボットと、上記装着部に取り付けられるインクジェットヘッドと、このインクジェットヘッドのインク噴射ノズルが上記ワークの三次元曲面をなす表面と対向した状態で上記インクジェットヘッドが上記三次元曲面に沿って所定の経路上を移動するように、上記ロボットを制御するロボット制御部と、上記インクジェットヘッドが所定の経路上を移動しているときに、上記インクジェットヘッドからインクを噴射させるインクジェット噴射制御手段とを備えたことを特徴とする描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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