説明

描画装置

【課題】インクタンク内のインクの量に関わりなく、インクの対流を充分に発生させて、インクの成分が沈降することに起因する不具合を抑制することができる、描画装置及び液状体供給装置を提供する。
【解決手段】描画装置は、液状体を吐出する吐出ヘッドと、液状体を貯留する貯留タンクと、貯留タンクにおける液状体の一部の温度を調整する第一の温度調整部と、第一の温度調整部とは異なる位置に配設されており、貯留タンクにおける液状体の一部の温度を調整する第二の温度調整部と、第一の温度調整部及び第二の温度調整部を制御する温度調整部制御部と、を備え、第一の温度調整部が調整する液状体の一部の温度と第二の温度調整部が調整する液状体の一部の温度は異なっており、温度調整部制御部は、第一の温度調整部が調整する液状体の一部の温度と第二の温度調整部が調整する液状体の一部の温度との温度差を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体を吐出する吐出装置に液状体を供給する液状体供給装置、及び液状体を吐出する吐出装置を備え、吐出装置から被描画媒体に向けて液状体を吐出し、被描画媒体上に液状体を配置して描画する描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液状体を吐出する吐出ヘッドを備え、吐出した液滴を被描画媒体の任意の位置に着弾させることによって、被描画媒体上に任意の画像などを描画する描画装置が知られている。例えばインクジェット方式の吐出ヘッドを備える描画装置は、所定の量のインクを所定の位置に精度よく配置することができる。配置したインクを硬化させることによって、精密な形状を有する機能膜や、微細な画像などを形成することができる。さらに高画質の画像を形成するために、顔料インクを用いて描画する装置がある。しかし、顔料インクは、顔料が沈降し易いという課題があった。インクタンク内で顔料の沈降が発生すると、インクに顔料の濃度分布(濃度むら)が発生する。当該インクを用いて描画すると、濃度むらに起因して、必ずしも高画質の画像が得られない可能性があった。
【0003】
特許文献1には、インクタンク内のインクに重力方向の温度差を発生させ、インクに対流を発生させることによって、顔料インクにおける顔料の沈降を防止可能なインクタンク、およびインクジェット式記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−260803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された装置では、インクタンク内のインクの量が少なくなると、インクタンク内のインクにおける重力方向の厚さ(深さ)が小さくなり、対流が生じ難くなるという課題があった。すなわち、インクタンク内のインクの量によっては、必ずしも十分な対流を発生させることができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる描画装置は、液状体を吐出する吐出ヘッドと、前記液状体を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクにおける前記液状体の一部の温度を調整する第一の温度調整部と、前記第一の温度調整部とは異なる位置に配設され、前記貯留タンクにおける前記液状体の一部の温度を調整する第二の温度調整部と、前記第一の温度調整部及び前記第二の温度調整部を制御する温度調整部制御部と、を備え、前記第一の温度調整部が調整する前記液状体の一部の温度と前記第二の温度調整部が調整する前記液状体の一部の温度は異なっており、前記温度調整部制御部は、前記第一の温度調整部が調整する前記液状体の一部の温度と前記第二の温度調整部が調整する前記液状体の一部の温度との温度差を調整することを特徴とする。
【0008】
本適用例にかかる描画装置によれば、貯留タンク内の液状体の一部の温度を調整する第一の温度調整部と、第二の温度調整部とを備えている。第一の温度調整部と第二の温度調整部とは、調整した液状体の一部の温度が異なっている。すなわち、貯留タンク内の液状体の温度を、部分的に異ならせることができる。液状体の温度を部分的に異ならせることによって、液状体の比重を部分的に異ならせて、液状体を対流させることができる。例えば、第一の温度調整部が調整する液状体の一部の温度と第二の温度調整部が調整する液状体の一部の温度との間に温度差を設けることで対流を起こし、温度差を大きくすることで対流しやすくさせることが出来る。つまり、温度調整端子間の温度差を調整することで、液状体を安定して対流させることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる描画装置は、前記第一の温度調整部と前記第二の温度調整部とは、水平方向において、異なる位置に配設されていることが好ましい。
【0010】
この描画装置によれば、第一の温度調整部と第二の温度調整部とは、水平方向において、異なる位置に配設されているため、比重が異なる液状体が水平方向の異なる位置に分布する状態を形成することができる。比重が大きい液状体は比重が小さい液状体の下に潜りこむため、対流が発生する。液状体の量が変動しても、温度調整端子の水平方向の位置関係はかわらないため、比重が異なる液状体が水平方向の異なる位置に分布する状態を、安定して形成することができる。すなわち、液状体を安定して対流させることができる。また、異なる比重によって対流が起こらない場合においても異なる液状体の温度による液状体表面での表面張力に差が生じることで対流が生じる場合もある。これは温度が高い部分の表面張力が低下し温度が低い部分の表面張力が相対的に高くなることを利用した原理であり、表面張力が高い部分が低い部分を引っ張ることで対流が生じる。そして、液状体の表面で起こる対流によって液状体内部の対流も生じる。よって、水平方向の異なる位置に液状体の温度を異ならしめる調整部が備わることで、比重差による対流又は表面張力差による対流のように複数の対流発生原因を構築することが可能になる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる描画装置は、前記温度調整部制御部が、前記第一の温度調整部が調整する前記液状体の一部の温度と前記第二の温度調整部が調整する前記液状体の一部の温度との高低関係を、時間とともに変動させることが好ましい。
【0012】
この描画装置によれば、第一の温度調整部が調整する液状体の一部の温度と第二の温度調整部が調整する液状体の一部の温度との高低関係が、時間とともに変動する。したがって、第一の温度調整部と第二の温度調整部との一方の温度調整部の温度が、他の温度調整部の温度と比べて、高くなったり低くなったりする。すなわち、ひとつの温度調整部と熱を授受する液状体の一部分の温度が、他の温度調整部と熱を授受する液状体の一部分の温度と比べて、高くなったり低くなったりする。これにより、他の部分にくらべて温度が低く、比重が大きい液状体が存在する位置が変動する。すなわち、発生する対流の流れる方向が変動する。対流の方向を変えることで、より効果的に液状体を攪拌することができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる描画装置は、前記第一の温度調整部と前記第二の温度調整部とにおいて、少なくともひとつは前記液状体を加熱し、少なくともひとつは前記液状体を冷却することが好ましい。
【0014】
この描画装置によれば、液状体を加熱する温度調整部と、液状体を冷却する温度調整部とが存在する。液状体を加熱する温度調整部又は液状体を冷却する温度調整部の一方のみが存在する場合、液状体の温度は、上昇又は低下を続けて、液状体の全体がほぼ均一な温度に収束する可能性が高い。液状体全体がほぼ均一な温度の場合には、温度が部分的に異なることが起因する液状体の対流は発生し難い。液状体を加熱する温度調整部と、液状体を冷却する温度調整部とが存在することで、液状体の温度が収束することを抑制して、液状体を継続的に対流させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】液滴吐出装置全体の概略構成を示す外観斜視図。
【図2】インク供給部の構成を示す模式図。
【図3】インクタンクに貯留されたインクにおいて形成される対流を示す説明図。
【図4】インク供給部のインクタンクまわりの構成を示す模式図。
【図5】インク供給部のインクタンクまわりの構成を示す模式図。
【図6】インク供給部の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、描画装置について、図面を参照して説明する。本実施形態は、描画装置としての液滴吐出装置、及び液滴吐出装置が備えるインク供給部を例にして説明する。当該液滴吐出装置は、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドを備える装置である。なお、以下の説明において参照する図面では、図示の便宜上、部材又は部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0017】
<液滴吐出装置>
最初に、液滴吐出装置1の全体構成について、図1を参照して説明する。図1は、液滴吐出装置全体の概略構成を示す外観斜視図である。
【0018】
図1に示すように、液滴吐出装置1は、ヘッド機構部2と、ワーク機構部3と、インク供給部4と、保守装置部5と、吐出装置制御部7と、支持脚8と、定盤9とを備えている。ヘッド機構部2は、インク40(図2参照)を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド20を有している。ワーク機構部3は、液滴吐出ヘッド20から吐出された液滴の吐出対象であるワークWを載置するワーク載置台33を有している。
インク供給部4は、インクタンク41や、供給管62などを有し、当該供給管62などを介して、インク40がインクタンク41から液滴吐出ヘッド20に供給される。保守装置部5は、液滴吐出ヘッド20の検査又は保守を実施する各装置を備えている。吐出装置制御部7は、これら各機構部などを総括的に制御する。複数の支持脚8が床上に設置されており、複数の支持脚8の上に定盤9が設置されている。ヘッド機構部2やワーク機構部3は、定盤9の上に配設されている。液滴吐出ヘッド20が、吐出ヘッドに相当する。
【0019】
ヘッド機構部2は、液滴吐出ヘッド20を有するヘッドユニット21と、ヘッドユニット21を支持するヘッドキャリッジ22とを有し、ヘッドキャリッジ22をY軸方向に移動させることで、液滴吐出ヘッド20をY軸方向に自在に移動させる。また、移動した位置に保持する。ワーク機構部3は、ワーク載置台33をX軸方向に移動させることで、ワーク載置台33に載置されたワークWをX軸方向に自在に移動させる。また、移動した位置に保持する。
【0020】
液滴吐出ヘッド20を、Y軸方向の吐出位置まで移動させて停止させ、下方にあるワークWのX軸方向の移動に同調させて、インク40を液滴として吐出させる。X軸方向に移動させるワークWと、Y軸方向に移動させる液滴吐出ヘッド20とを相対的に制御することにより、ワークW上の任意の位置に液滴を着弾させることで、所望する描画などを行うことが可能である。
【0021】
インク供給部4は、インクタンク41や、温調装置51(図2参照)や、供給管62や、脱気ユニット71や、ポンプ73や、バルブ保持枠44や、キャリッジタンク42などを有している。キャリッジタンク枠42Aは、ヘッド機構部2のヘッドキャリッジ22に固定されている。キャリッジタンク42は、キャリッジタンク枠42Aに保持されることで、キャリッジタンク枠42Aを介してヘッドキャリッジ22に固定されている。ヘッドキャリッジ22に固定されたキャリッジタンク42は、液滴吐出ヘッド20のY軸方向の移動と一緒に、Y軸方向に移動する。
【0022】
<インク供給部>
次に、インク供給部4の構成について、図2を参照して詳細に説明する。図2は、インク供給部の構成を示す模式図である。
図2に示すように、インク供給部4は、インクタンク41と、キャリッジタンク42と、脱気ユニット71と、圧力調整弁77と、配管接続部材67と、を備えている。また、これらのタンクなどの間及び液滴吐出ヘッド20を連通しており、インク40をインクタンク41から液滴吐出ヘッド20へ供給するための流路を構成する供給管61、供給管62、供給管63、及び配液管66を備えている。
インク供給部4は、また、温調装置51、温調装置52、液位計56、及びポンプ73を備えている。ポンプ73は、インク40をインクタンク41から液滴吐出ヘッド20へ送る圧力をインク40に付与する。液位計56は、インクタンク41内のインク40の液位を検出する。温調装置51及び温調装置52は、それぞれ、インクタンク41内のインク40の一部分の温度を調整する。
脱気ユニット71と、ポンプ73と、温調装置51と、温調装置52と、液位計56とは、図2に破線で示したように吐出装置制御部7と電気的に接続されており、吐出装置制御部7によって制御される。液滴吐出ヘッド20も、吐出装置制御部7と電気的に接続されており、吐出装置制御部7によって制御される。
【0023】
インクタンク41と脱気ユニット71とは、供給管61を介して連通している。ポンプ73が供給管61の途中に配設されている。インク40は、ポンプ73によって、供給管61を経由してインクタンク41から脱気ユニット71に送出される。インクタンク41は、液滴吐出ヘッド20に送出するインクを貯留するためのタンクである。
上述したように、キャリッジタンク枠42Aは、ヘッド機構部2のヘッドキャリッジ22に固定されている。キャリッジタンク42は、キャリッジタンク枠42Aに保持されることで、キャリッジタンク枠42Aを介してヘッドキャリッジ22に固定されている。ヘッドキャリッジ22に固定されたキャリッジタンク42は、液滴吐出ヘッド20のY軸方向の移動と一緒に、Y軸方向に移動する。
【0024】
脱気ユニット71とキャリッジタンク42とは、供給管62を介して連通している。したがって、インクタンク41とキャリッジタンク42とは、供給管61、脱気ユニット71、及び供給管62を介して連通している。インク40は、ポンプ73によって、供給管61、脱気ユニット71、及び供給管62を経由して、インクタンク41からキャリッジタンク42に送出される。
キャリッジタンク42には、液滴吐出ヘッド20の方にインクを送出する経路である供給管63が接続されている。キャリッジタンク42に供給されたインク40は液滴吐出ヘッド20に供給される。インクタンク41からキャリッジタンク42に供給されるインク40は、途中の脱気ユニット71を通過する際に、脱気される。このため、液滴吐出ヘッド20に供給されるインク40は、溶存気体が脱気されたものである。
【0025】
インクタンク41には、温調装置51、温調装置52、及び液位計56が配設されている。
液位計56は、センサー部56aと、液位計体56bとを有している。センサー部56aは、インクタンク41に貯留されたインク40に浸漬される状態に配設されており、インク40の液位を検出する。液位計体56bには、制御装置やアンプなどが配設されている。制御装置は、吐出装置制御部7に接続されており、検出されたインク40の液位の情報が、吐出装置制御部7に送信される。
【0026】
温調装置51は、温調端子51aと、温調本体部51bと、接続体51cと、を有している。温調端子51aは、熱伝導率が高い材質で形成されており、熱伝導媒体が循環する流路が形成されている。温調本体部51bには、熱交換器や制御装置が配設されており、液体状の熱伝導媒体の温度を任意の温度に調整して、送出する。温調端子51aと温調本体部51bとは、熱伝導媒体の流路が形成された接続体51cを介して接続されている。温調本体部51bから送出された熱伝導媒体は、接続体51cの流路(往路流路)を通って、温調端子51aの流路を流動し、再び接続体51cの流路(復路流路)を通って、温調本体部51bに戻される。
【0027】
温調端子51aは、一面が開口した箱形状を有している。インクタンク41の下側が、当該開口から温調端子51aに差し込まれ、温調端子51aは、インクタンク41に、下部を覆う状態で外嵌している。少なくとも、インクタンク41の外側面と、温調端子51aの当該外側面を覆う部分とは略密着しており、熱が伝導される。伝導された熱は、インクタンク41に貯留されたインク40における、当該外側面を形成するインクタンク41の壁の内面に接触している部分に伝導される。
温調装置51が、第一の温度調整部又は第二の温度調整部に相当する。
【0028】
温調装置52は、温調端子52aと、温調本体部52bと、接続体52cと、を有している。温調端子52aは、熱伝導率が高い材質で形成されており、熱伝導媒体が循環する流路が形成されている。温調本体部52bには、熱交換器や制御装置が配設されており、液体状の熱伝導媒体の温度を任意の温度に調整して、送出する。温調端子52aと温調本体部52bとは、熱伝導媒体の流路が形成された接続体52cを介して接続されている。温調本体部52bから送出された熱伝導媒体は、接続体52cの流路(往路流路)を通って、温調端子52aの流路を流動し、再び接続体52cの流路(復路流路)を通って、温調本体部52bに戻される。
【0029】
温調端子52aは、棒状の形状を有しており、棒形状の一端の近くに、接続体52cが接続されている。温調端子52aは、接続体52cが接続されている端の反対側の端からインクタンク41の内部に差し込まれた状態で、インクタンク41に固定されている。温調端子52aは、インクタンク41に形成された空間の、水平方向における略中央に位置しており、インクタンク41に貯留されたインク40の、水平方向における略中央に浸漬される。
温調装置52が、第一の温度調整部又は第二の温度調整部に相当する。
温調装置51及び温調装置52と電気的に接続されており、温調装置51及び温調装置52を制御する吐出装置制御部7が、温度調整部制御部に相当する。
【0030】
キャリッジタンク42と圧力調整弁77とは、供給管63を介して連通している。
圧力調整弁77は調整弁支持枠77aに固定されて支持されている。調整弁支持枠77aは、ヘッドユニット21を構成するユニットプレート23に固定されている。したがって、圧力調整弁77は、調整弁支持枠77aを介して、ユニットプレート23に固定されている。圧力調整弁77は、例えば大気圧を利用して、流入したインク40の液圧を一定の液圧に調整して出力する。圧力調整弁77によって、液滴吐出ヘッド20に供給されるインク40の液圧が一定の液圧に調整される。
圧力調整弁77と液滴吐出ヘッド20とは、配液管66を介して連通している。配液管66の液滴吐出ヘッド20側は、2本に分岐しており、分岐した先端には、それぞれ配管接続部材67が固定されている。配管接続部材67が液滴吐出ヘッド20の接続針26と嵌合して、接続針26に形成された導入孔を介して、液滴吐出ヘッド20の内部と配液管66の流路とが連通されている。
【0031】
液滴吐出ヘッド20からインク40が吐出される場合には、インクタンク41に貯留されたインク40が、供給管61、供給管62、供給管63及び配液管66を介して、液滴吐出ヘッド20に、供給される。インク40は、供給管61と供給管62との間に配設された脱気ユニット71によって溶存気体が脱気され、圧力調整弁77によって適切な圧力に調整されて、液滴吐出ヘッド20に供給される。インクタンク41が、貯留タンクに相当する。
【0032】
<対流の形成>
次に、インクタンク41に貯留されたインク40において形成される対流について、図3を参照して説明する。図3は、インクタンクに貯留されたインクにおいて形成される対流を示す説明図である。
上述したように、温調端子51aは、インクタンク41に、下部を覆う状態で外嵌している。温調端子52aは、インクタンク41に貯留されたインク40の、水平方向における略中央に配設されている。
インクタンク41に貯留されたインク40の温度を、温度t0と表記する。温調端子51aからの熱によって、温度が温度t1となったインク40をインク401と表記する。温調端子52aからの熱によって、温度が温度t2となったインク40をインク402と表記する。インク40とインク401との境界を、境界面L1と表記する。インク40とインク402との境界を、境界面L2と表記する。温度が異なる液体が明確な境界を形成して存在することはないが、説明を簡単にするために、境界面L1や境界面L2は、図3に破線で示した位置に存在すると仮定する。温度t1と温度t2とは、異なる温度である。
温調装置51は、例えば加熱装置であり、温度t1は、温度t0より高い温度である。温調装置52は、例えば冷却装置であり、温度t2は、温度t0より低い温度である。
【0033】
温度t1は、温度t0より高い温度であるため、インク401の比重はインク40の比重より小さい。これにより、インク401がインク40の上にのりあげようとする(インク40がインク401の下に潜りこもうとする)ため、図3に二点鎖線の矢印a1又は矢印a2で示したような対流が発生する。
温度t2は、温度t0より低い温度であるため、インク402の比重はインク40の比重より大きい。これにより、インク402がインク40の下に潜りこもうとする(インク40がインク402の上にのりあげようとする)ため、図3に二点鎖線の矢印b1又は矢印b2で示したような対流が発生する。
【0034】
温度t1と、温度t0と、温度t2との温度差、すなわち温度t1と、温度t2とは、インクタンク41におけるインク40の量に対応した温度差を設定して、予め吐出装置制御部7に記憶させた温度に調整する。温度t0は、インク40の特性と、インク供給部4が設置された環境の温度によって定まる温度である。吐出装置制御部7は、液位計56の検出結果に対応して、温調装置51及び温調装置52の温度を、予め記憶させられた温度に設定する。
インクタンク41に貯留されたインク40の量が減少すると、上にのりあげたインク401と、下に潜りこんだインク402との間で熱平衡状態になるように温度差が小さくなる。すなわち、インク401とインク402との比重の差が小さくなるため、対流が生じ難くなる。インク40の量に応じて温度t1と、温度t2とを設定することで、インクタンク41に貯留されたインク40の量が減少することに起因して対流が生じ難くなることを抑制することができる。
【0035】
<他のインク供給部例1>
次に、インク供給部4とは一部が異なる構成を有するインク供給部104の構成について、図4を参照して説明する。図4は、インク供給部のインクタンクまわりの構成を示す模式図である。図4において、インク供給部104の構成要素におけるインク供給部4の構成要素と略同等の構成要素には、同じ符号を付してある。インク供給部104は、液滴吐出装置1と同様の装置におけるインク供給装置である。
【0036】
図4では図示省略したが、インク供給部104は、キャリッジタンク42と、脱気ユニット71と、圧力調整弁77と、配管接続部材67と、供給管61、供給管62、供給管63、及び配液管66と、ポンプ73と、を備えている。これらの各構成要素は、インク供給部4におけるこれらの各構成要素と同様の構成を有し、相互間の構成も、インク供給部4と同様である。
【0037】
図4に示すように、インク供給部104は、インクタンク141と、温調装置151と、温調装置52と、を備えている。インクタンク141は、インク供給部4のインクタンク41と同様に、インク40を貯留する。温調装置151及び温調装置52は、インクタンク141内のインク40の一部分の温度を調整する。
脱気ユニット71と、ポンプ73と、温調装置151と、温調装置52とは、吐出装置制御部7と電気的に接続されており、吐出装置制御部7によって制御される。
インクタンク141が、貯留タンクに相当する。
【0038】
インクタンク141には、温調装置151、及び温調装置52が配設されている。
温調装置52は、インク供給部4が備える温調装置52と同様の構成を有しており、温調端子52aと、温調本体部52bと、接続体52cと、を有している。
温調端子52aは、棒状の形状を有しており、棒形状の一端の近くに、接続体52cが接続されている。温調端子52aは、接続体52cが接続されている端の反対側の端からインクタンク141の内部に差し込まれた状態で、インクタンク141に固定されている。温調端子52aは、インクタンク141に形成された、インク40などを貯留する空間の、水平方向における略中央に位置しており、インクタンク141に貯留されたインク40の、水平方向における略中央に浸漬される。
温調装置52が、第一の温度調整部又は第二の温度調整部に相当する。
【0039】
温調装置151は、温調端子151aと、温調本体部151bと、接続体151cと、を有している。温調端子151aは、熱伝導率が高い材質で形成されており、熱伝導媒体が循環する流路が形成されている。温調本体部151bには、熱交換器や制御装置が配設されており、液体状の熱伝導媒体の温度を任意の温度に調整して、送出する。温調端子151aと温調本体部151bとは、熱伝導媒体の流路が形成された接続体151cを介して接続されている。温調本体部151bから送出された熱伝導媒体は、接続体151cの流路(往路流路)を通って、温調端子151aの流路を流動し、再び接続体151cの流路(復路流路)を通って、温調本体部151bに戻される。
【0040】
温調端子151aは、筒形状を有している。インクタンク141の下側が、筒の内側に差し込まれ、温調端子151aは、インクタンク141に、側面の下部を覆う状態で外嵌している。インクタンク141の外側面と、温調端子151aの筒形状の内壁面とは略密着しており、熱が伝導される。伝導された熱は、インクタンク141に貯留されたインク40における、当該外側面を形成するインクタンク141の壁の内面に接触している部分に伝導される。温調端子151aは、水平方向において、温調端子52aとは異なる位置に配設されている。
温調装置151が、第一の温度調整部又は第二の温度調整部に相当する。
【0041】
インクタンク141に貯留されたインク40の温度を、温度t0と表記する。温調端子151aからの熱によって、温度が温度t3となったインク40をインク403と表記する。温調端子52aからの熱によって、温度が温度t4となったインク40をインク404と表記する。温度t3と温度t4とは、異なる温度である。
温調装置151で加熱する場合、温度t3は、温度t0より高い温度である。温調装置52で冷却する場合、温度t4は、温度t0より低い温度である。
【0042】
温度t3は、温度t0より高い温度であるため、インク403の比重はインク40の比重より小さい。これにより、インク403がインク40の上にのりあげようとする(インク40がインク403の下に潜りこもうとする)ため、図4に二点鎖線の矢印a3又は矢印a4で示したような対流が発生する。当該対流は、温調端子151aが接触しているインクタンク141の壁の壁面近くで発生する。すなわち、インクタンク141に貯留されたインク40の外周近くで発生する。
温度t4は、温度t0より低い温度であるため、インク404の比重はインク40の比重より大きい。これにより、インク404がインク40の下に潜りこもうとする(インク40がインク404の上にのりあげようとする)ため、図4に二点鎖線の矢印b3又は矢印b4で示したような対流が発生する。当該対流は、温調端子52aが配設されているインクタンク141の中央付近で発生する。すなわち、インクタンク141に貯留されたインク40の中央付近で発生する。
インクタンク141に貯留されたインク40において形成される対流は、周辺側で上昇し、中央側で下降する対流となる。
【0043】
温調装置151で冷却する場合、温度t3は、温度t0より低い温度である。温調装置52で加熱する場合、温度t4は、温度t0より高い温度である。
この場合、インクタンク141の壁の壁面近くでは、図4に二点鎖線の矢印a3又は矢印a4で示した方向と反対方向の対流が発生する。インクタンク141に貯留されたインク40の中央付近では、図4に二点鎖線の矢印b3又は矢印b4で示した方向と反対方向の対流が発生する。
この場合にインクタンク141に貯留されたインク40において形成される対流は、周辺側で下降し、中央側で上昇する対流となる。
【0044】
温度t3を、温度t0より高い温度にし、温度t4を、温度t0より低い温度にする状態と、温度t3を、温度t0より低い温度にし、温度t4を、温度t0より高い温度にする状態とを、交互に実現してもよい。二つの状態を交互に実現することで、対流の方向を時間とともに変動させることができる。
【0045】
<他のインク供給部例2>
次に、インク供給部4及びインク供給部104とは一部が異なる構成を有するインク供給部204の構成について、図5を参照して説明する。図5は、インク供給部のインクタンクまわりの構成を示す模式図である。図5において、インク供給部204の構成要素におけるインク供給部4の構成要素と略同等の構成要素には、同じ符号を付してある。インク供給部204は、液滴吐出装置1と同様の装置におけるインク供給装置である。
【0046】
図5では図示省略したが、インク供給部204は、キャリッジタンク42と、脱気ユニット71と、圧力調整弁77と、配管接続部材67と、供給管61、供給管62、供給管63、及び配液管66と、ポンプ73と、を備えている。これらの各構成要素は、インク供給部4におけるこれらの各構成要素と同様の構成を有し、相互間の構成も、インク供給部4と同様である。
【0047】
図5に示すように、インク供給部204は、インクタンク241と、温調装置152と、温調装置52と、を備えている。インクタンク241は、インク供給部4のインクタンク41と同様に、インク40を貯留する。温調装置152及び温調装置52は、インクタンク241内のインク40の一部分の温度を調整する。
脱気ユニット71と、ポンプ73と、温調装置152と、温調装置52とは、吐出装置制御部7と電気的に接続されており、吐出装置制御部7によって制御される。
インクタンク241が、貯留タンクに相当する。
【0048】
インクタンク241には、温調装置152、及び温調装置52が配設されている。
温調装置52は、インク供給部4が備える温調装置52と同様の構成を有しており、温調端子52aと、温調本体部52bと、接続体52cと、を有している。
温調端子52aは、端からインクタンク241の内部に差し込まれた状態で、インクタンク241に固定されている。温調端子52aは、インクタンク241に形成された、インク40などを貯留する空間を水平方向において略2等分した、一方の空間の水平方向における略中央に位置している。したがって、温調端子52aは、インクタンク241に貯留されたインク40を水平方向において略2等分した、一方のインク40の、水平方向における略中央に浸漬される。
温調装置52が、第一の温度調整部又は第二の温度調整部に相当する。
【0049】
温調装置152は、温調端子152aと、温調本体部152bと、接続体152cと、を有している。温調装置152は、温調装置52と同様の装置であり、温調端子152a、温調本体部152b、及び接続体152cは、温調端子52a、温調本体部52b、又は接続体52cと、同様の構成である。
温調端子152aは、インクタンク241に形成された、インク40などを貯留する空間を水平方向において略2等分した、温調端子52aが配設された空間とは異なる一方の空間の水平方向における略中央に位置している。したがって、温調端子152aは、インクタンク241に貯留されたインク40を水平方向において略2等分した、温調端子52aが浸漬された一方のインク40とは異なる一方のインク40の、水平方向における略中央に浸漬される。温調端子152aは、水平方向において、温調端子52aとは異なる位置に配設されている。
温調装置152が、第一の温度調整部又は第二の温度調整部に相当する。
【0050】
インクタンク241に貯留されたインク40の温度を、温度t0と表記する。温調端子152aからの熱によって、温度が温度t5となったインク40をインク405と表記する。温調端子52aからの熱によって、温度が温度t6となったインク40をインク406と表記する。温度t5と温度t6とは、異なる温度である。
温調装置152で加熱する場合、温度t5は、温度t0より高い温度である。温調装置52で冷却する場合、温度t6は、温度t0より低い温度である。
【0051】
温度t5は、温度t0より高い温度であるため、インク405の比重はインク40の比重より小さい。これにより、インク405がインク40の上にのりあげようとする(インク40がインク405の下に潜りこもうとする)ため、温調端子152aの周囲では、インク405が、図5に矢印a5で示したように、上昇する。
温度t6は、温度t0より低い温度であるため、インク406の比重はインク40の比重より大きい。これにより、インク406がインク40の下に潜りこもうとする(インク40がインク406の上にのりあげようとする)ため、温調端子52aの周囲では、インク406が、図5に矢印b5で示したように、下降する。
インクタンク241に貯留されたインク40において形成される対流は、温調端子152aの側で上昇し、図5に矢印a6で示したように、温調端子52aの側に移動し、温調端子52aの側で下降し、図5に矢印b6で示したように、温調端子152aの側に移動する対流となる。
【0052】
温調装置152で冷却する場合、温度t5は、温度t0より低い温度である。温調装置52で加熱する場合、温度t6は、温度t0より高い温度である。
この場合、インクタンク241に貯留されたインク40において形成される対流は、温調端子152aの側で下降し、温調端子52aの側で上昇する対流となる。
【0053】
温度t5を、温度t0より高い温度にし、温度t6を、温度t0より低い温度にする状態と、温度t5を、温度t0より低い温度にし、温度t6を、温度t0より高い温度にする状態とを、交互に実現してもよい。二つの状態を交互に実現することで、対流の方向を時間とともに変動させることができる。
【0054】
<他のインク供給部例3>
次に、インク供給部4、インク供給部104、及びインク供給部204とは一部が異なる構成を有するインク供給部304の構成について、図6を参照して説明する。図6は、インク供給部の構成を示す模式図である。図6において、インク供給部304の構成要素におけるインク供給部4の構成要素と略同等の構成要素には、同じ符号を付してある。インク供給部304は、液滴吐出装置1と同様の装置におけるインク供給装置である。
【0055】
図6に示すように、インク供給部304は、インクタンク341と、切替バルブ43と、脱気ユニット71と、圧力調整弁77と、配管接続部材67と、を備えている。また、これらのタンクなどの間及び液滴吐出ヘッド20を連通しており、インク40をインクタンク341から液滴吐出ヘッド20へ供給するための流路を構成する供給管61、供給管62、供給管63、循環管64、及び配液管66を備えている。
インク供給部304は、また、温調装置251、温調装置52、及びポンプ73を備えている。ポンプ73は、インク40をインクタンク41から液滴吐出ヘッド20へ送る圧力をインク40に付与する。温調装置51及び温調装置52は、それぞれ、インクタンク341内のインク40の一部分の温度を調整する。
脱気ユニット71と、ポンプ73と、温調装置51と、温調装置52と、切替バルブ43とは、図6に破線で示したように吐出装置制御部7と電気的に接続されており、吐出装置制御部7によって制御される。液滴吐出ヘッド20も、吐出装置制御部7と電気的に接続されており、吐出装置制御部7によって制御される。
【0056】
インクタンク341と脱気ユニット71とは、供給管61を介して連通している。ポンプ73が供給管61の途中に配設されている。インク40は、ポンプ73によって、供給管61を経由してインクタンク341から脱気ユニット71に送出される。インクタンク341は、液滴吐出ヘッド20に送出するインクを貯留するためのタンクである。
バルブ保持枠44は、液滴吐出装置1と同様の装置において、ヘッド機構部2のヘッドキャリッジ22に固定されている。切替バルブ43は、バルブ保持枠44に保持されることで、バルブ保持枠44を介してヘッドキャリッジ22に固定されている。ヘッドキャリッジ22に固定された切替バルブ43は、液滴吐出ヘッド20のY軸方向の移動と一緒に、Y軸方向に移動する。
【0057】
脱気ユニット71と切替バルブ43とは、供給管62を介して連通している。したがって、インクタンク341と切替バルブ43とは、供給管61、脱気ユニット71、及び供給管62を介して連通している。インクタンク341と切替バルブ43とは、また、循環管64を介しても連通している。インク40は、ポンプ73によって、供給管61、脱気ユニット71、及び供給管62を経由して、インクタンク341から切替バルブ43に送出される。
切替バルブ43には、液滴吐出ヘッド20の方にインクを送出する経路である供給管63も接続されている。切替バルブ43は、供給管62に連通する流路を、循環管64又は供給管63に切替える。
【0058】
切替バルブ43によって、供給管62に連通する流路が、供給管63に接続されている状態では、切替バルブ43に供給されたインク40は液滴吐出ヘッド20に供給される。インクタンク341から切替バルブ43に供給されるインク40は、途中の脱気ユニット71を通過する際に、脱気される。このため、液滴吐出ヘッド20に供給されるインク40は、溶存気体が脱気されたものである。
【0059】
切替バルブ43によって、供給管62に連通する流路が、循環管64に接続されている状態では、切替バルブ43に供給されたインク40は、循環管64を経由して、インクタンク341に戻される。インクタンク341と、供給管61と、脱気ユニット71と、供給管62と、切替バルブ43と、循環管64とを備える、循環路が形成されており、当該循環路において、インク40を循環させることができる。循環路において、インク40を循環させることにより、インク40に含まれる顔料などが沈降することを抑制することができる。
【0060】
インク40を液滴吐出ヘッド20に供給することを必要としていない場合は、流路を循環管64側に切り替えて、インク40を循環させることができる。インク40を液滴吐出ヘッド20に供給することを必要としている場合は、液滴吐出ヘッド20からインク40を吐出している場合や、液滴吐出ヘッド20からインク40が吸引されている場合などである。その他の場合には、インク40を循環させることができる。例えば、休止期間や、立ち上げ時にも、インク40を循環させてもよい。
【0061】
インクタンク341には、温調装置251、及び温調装置52が配設されている。
温調装置52は、インク供給部4が備える温調装置52と同様の構成を有しており、温調端子52aと、温調本体部52bと、接続体52cと、を有している。
温調端子52aは、棒形状の一端からインクタンク341の内部に差し込まれた状態で、インクタンク341に固定されている。温調端子52aは、インクタンク341に形成された、インク40などを貯留する空間の、水平方向における略中央に位置しており、インクタンク341に貯留されたインク40の、水平方向における略中央に浸漬される。
温調装置52が、第一の温度調整部又は第二の温度調整部に相当する。
【0062】
温調装置251は、温調端子251aと、温調本体部251bと、接続体251cと、を有している。温調端子251a、温調本体部251b、及び接続体251cは、上述した温調装置151の、温調端子151a、温調本体部151b、又は接続体151cと同様の構成を備えている。
温調端子251aは、温調端子151aと同様の、筒形状を有している。インクタンク341の下側が、筒の内側に差し込まれ、温調端子251aは、インクタンク341に、側面の下部を覆う状態で外嵌している。インクタンク341の外側面と、温調端子251aの筒形状の内壁面とは略密着しており、熱が伝導される。伝導された熱は、インクタンク341に貯留されたインク40における、当該外側面を形成するインクタンク341の壁の内面に接触している部分に伝導される。温調端子251aは、水平方向において、温調端子52aとは異なる位置に配設されている。
温調装置251が、第一の温度調整部又は第二の温度調整部に相当する。
温調装置251及び温調装置52と電気的に接続されており、温調装置251及び温調装置52を制御する吐出装置制御部7が、温度調整部制御部に相当する。
【0063】
インクタンク341においては、上述したインクタンク141と同様にして、インクタンク141におけるインク40の対流と同様の対流を発生させることができる。インクタンク341においても、対流の方向を時間とともに変動させることもできる。
【0064】
切替バルブ43と圧力調整弁77とは、供給管63を介して連通している。
インク供給部304において、圧力調整弁77から液滴吐出ヘッド20に至る各構成要素の構成は、上述したインク供給部4における圧力調整弁77から液滴吐出ヘッド20に至る各構成要素の構成と同様である。各構成要素の相互間の構成も、インク供給部4と同様である。インクタンク341が、貯留タンクに相当する。
【0065】
<インク>
インク40は、例えば、紫外線硬化型インクである。本実施形態におけるインク(以下、「インク組成物」ともいう。)の組成は、特に限定されない。インクが紫外線硬化型インクである場合、重合性化合物及び光重合開始剤を少なくとも含む。さらに、上記インクがクリアインク以外の有色インクである場合には、色材も含む。以下、インク組成物に含まれるか又は含まれ得る各成分を説明する。
【0066】
(重合性化合物)
重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により紫外線の照射時に重合し、固化する化合物であれば、特に制限はない。例えば、単官能基、2官能基、及び3官能基以上の多官能基を有する種々のモノマー及びオリゴマーが使用可能である。
【0067】
ここで、本明細書における「モノマー」とは、重量平均分子量が100〜3,000の分子を意味する。本明細書における「オリゴマー」とは、重量平均分子量が500〜20,000の分子を意味する。
【0068】
上記モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。
他の単官能モノマーや多官能モノマーとして、N−ビニル化合物を含んでいてもよい。N−ビニル化合物としては、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、及びそれらの誘導体等が挙げられる。
【0069】
また、上記オリゴマーとしては、例えば、直鎖オリゴマーや多分岐オリゴマー等の上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0070】
上記で列挙したものの中でも(メタ)アクリル酸のエステル、即ち(メタ)アクリレートが好ましい。重合性化合物として(メタ)アクリレートを使用した場合、インクの硬化性、及び硬化膜の被着体への密着性を良好にすることができる。
なお、本明細書における「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びそれに対応するメタクリルを意味する。
【0071】
上記(メタ)アクリレートのうち、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0072】
上記(メタ)アクリレートのうち、2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0073】
上記(メタ)アクリレートのうち、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0074】
これらの中でも、硬化時の塗膜(塗布層)の伸び性が高く、且つ低粘度であるため、インクジェット記録時の射出安定性が得られやすいという観点から、重合性化合物として、単官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。さらに塗布層の硬さが増すという観点から、単官能(メタ)アクリレートと2官能(メタ)アクリレートとを併用することがより好ましい。
【0075】
上記で列挙した(メタ)アクリレートの中でも、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び1,6−ヘキサンジオールアクリレートからなる群より選択される一種以上が好ましく、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのうち少なくとも一方がより好ましい。この場合、粘度、硬化性、及び皮膚刺激性のバランスに優れるため、吐出の際に粘度の影響を受けやすいインクジェット用インクに有効であり、かつ皮膚刺激性も少なくなる。
また、光重合性化合物は、(メタ)アクリレートモノマーに加えて従来公知の(メタ)アクリレートオリゴマーをさらに含んでもよい。
上記の重合性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
(光重合開始剤)
重合開始剤は、紫外線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば特に制限されない。ラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤を使用することができ、中でもラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。ラジカル重合開始剤を使用することにより、カチオン重合の場合のような湿度による重合阻害を受けないため、印字環境を選ばないという有利な効果が得られる。また、ラジカル重合開始剤は、酸素阻害があり、インク中の溶存酸素により反応性が変化する。
なお、カチオン重合開始剤として、特に限定されないが、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメ−ジング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ、技術情報協会、「光硬化技術」、2001年に紹介されている光酸発生剤)。本実施形態に好適な化合物例として、まず、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム等の芳香族オニウム化合物のB(C6F5)4−,PF6−,AsF6−,SbF6−,CF3SO3−塩を挙げることができる。対アニオンとしてボレート化合物を持つものが、酸発生能力が高いため、好ましい。また、スルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、及び鉄アレン錯体も好適に挙げられる。カチオン重合開始剤の市販品として、例えばUV1−6992(トリフェニルスルフォニウム塩、ダウケミカル社(The Dow Chemical Company)製)等が挙げられる。
【0077】
上記のラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
【0078】
ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドが挙げられる。
【0079】
ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸)、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、チバ・ジャパン社(Ciba Japan K.K.)製)、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)などが挙げられる。
上記光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
(色材)
本実施形態におけるインク組成物は、色材をさらに含んでもよい。上記色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方である。これらの中でも、撹拌しながら超音波脱気を行うことを特徴とするインクジェット記録方法及びこれに使用するインクジェット記録装置を適用する効果が非常に大きいため、液体の一例であるインク(インクジェット記録用インク)は顔料を含有する液体組成物であることが好ましく、金属酸化物を含有する液体組成物であることがより好ましく、顔料系のホワイトインクであることがさらに好ましい。
【0081】
(1.顔料)
本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
【0082】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。これらの中でも、上述したように、顔料系インクがホワイトインクの場合、白色度を良好に維持する観点から、酸化チタンを使用することが好ましい。
【0083】
また、有機顔料として、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0084】
上記顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水に不溶であればいずれも使用できる。
【0085】
(2.染料)
本実施形態において、色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料及び塩基性染料が使用可能である。上記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。
【0086】
また、上記のインク組成物は、色材を含まないクリアインクにも適用可能である。つまり、顔料を含まないクリアインクにおいても、超音波脱気を行う超音波脱気工程を有するシステムにより、優れた印字安定性を達成できる。これに加えて攪拌機構も備えることによりこの脱気工程をさらに有効に活用できるが、この場合、この脱気工程は粘度の高いインクにおいて一層顕著にその有効性を得ることができる。
また、上記顔料は、後述する分散剤又は界面活性剤中に分散させて用いることができる。
【0087】
(その他の成分)
本実施形態におけるインク組成物は、上記に挙げた成分以外の成分を含んでもよい。当該成分として、特に限定されないが、例えば分散剤が挙げられる。
【0088】
上記の分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、味の素ファインテクノ(株)製のアジスパーシリーズ、アビシア(株)製のソルスパーズシリーズ、BYKChemie社製のディスパービックシリーズ、楠本化成(株)製のディスパロンシリーズ等が挙げられる。上記高分子分散剤として、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、並びにエポキシ樹脂等のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。
【0089】
上記の界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(ビックケミー・ジャパン社(BYK Japan KK)製)を挙げることができる。
【0090】
さらに、インク組成物は、重合促進剤、スリップ剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、防黴剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤を含んでもよい。
【0091】
以下、実施形態による効果を記載する。本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)インク供給部4、インク供給部104、インク供給部204、及びインク供給部304は、それぞれ温調装置51などの温調装置を備え、インクタンク41などのインクタンク内のインク40の一部分の温度を調整することができる。インクタンク内のインク40の一部分の温度を調整することで、当該部分の温度を、他の部分の温度と異ならせることができる。すなわち、インクの温度を部分的に異ならせることができる。インクの温度を部分的に異ならせることによって、インクの比重を部分的に異ならせて、インクを対流させることができる。
【0092】
(2)インク供給部4、インク供給部104、インク供給部204、及びインク供給部304は、温調装置51などの温調装置をそれぞれ2個備え、温調装置が備える温調端子51aなどの温調端子が、インクタンクに配設されている。それぞれの温調端子において温度を設定できるため、2個の温調端子間で、確実に温度を異ならせることができる。また、2個の温調端子間の温度差を設定し易くすることができる。
【0093】
(3)インク供給部4においては、液位計56の検出結果に対応して、温調装置51及び温調装置52の温度を、予め記憶させられた温度に設定する。インクタンク41に貯留されたインク40の量が減少すると、上にのりあげたインク401と、下に潜りこんだインク402との間で熱平衡状態になるように温度差が小さくなる。すなわち、インク401とインク402との比重の差が小さくなるため、対流が生じ難くなる。インクタンク41に貯留されたインク40の量が減少することに起因して対流が生じ難くなることを、インク40の量に応じて温度t1と、温度t2とを設定することによって、抑制することができる。
【0094】
(4)インク供給部104、インク供給部204、及びインク供給部304は、それぞれ2個の温調装置を備え、それぞれの温調装置が備える温調端子が、水平方向において異なる位置に配設されている。これにより、一方の温調端子の近傍のインク40が、他の温調端子の温度による影響を受け難くすることができる。水平方向の位置関係は、インクタンク内のインク40の量に関わりなく一定であるため、インクタンク内のインク40の量が減少しても、それぞれの温調端子の周囲のインク40を所定の温度に近い温度に調整することができる。
【0095】
(5)インク供給部4、インク供給部104、インク供給部204、及びインク供給部304は、それぞれ2個の温調装置を備え、一方がインク40を加熱し、もう一方がインク40を冷却していた。温調装置が過熱装置又は冷却装置のみである場合、インクタンク内のインク40の温度が上昇又は低下して、インクタンク内のインク40全体の温度が一定の温度に収束する可能性がある。インクタンク内のインク40の温度が一定の温度に収束することを、冷却装置と加熱装置の両方を備えることによって、抑制することができる。
【0096】
(6)インク供給部104、インク供給部204、及びインク供給部304は、それぞれ2個の温調装置を備え、それぞれの温調装置が調整する液状体の一部の温度の高低関係を変えることによって、対流の方向を変えることができる。対流の方向を時間とともに変動させることによって、より確実にインク40を攪拌することができる。
【0097】
(7)インク供給部4、インク供給部104、インク供給部204、及びインク供給部304は、脱気ユニット71を備えている。脱気ユニット71によって、インク40を脱気して、液滴吐出ヘッド20に供給するインク40の溶存気体濃度を減少させることができる。
【0098】
(8)インク供給部4、インク供給部104、インク供給部204、及びインク供給部304は、圧力調整弁77を備えている。圧力調整弁77によって、インク供給路におけるインク40の液圧に関わりなく、液滴吐出ヘッド20に供給するインク40の液圧を一定の液圧に調整することができる。
【0099】
(9)圧力調整弁77は、インク40が液滴吐出ヘッド20に供給される供給路において、脱気ユニット71の下流に配設されている。これによって、圧力調整弁77によって調整されたインク40の液圧が、脱気ユニット71によって影響を受けることを実質的になくすることができる。
【0100】
(10)インク供給部304においては、インクタンク41と、供給管61と、脱気ユニット71と、供給管62と、切替バルブ43と、循環管64とを備える、循環路が形成されており、当該循環路において、インク40を循環させることができる。これにより、インク40が静止した状態で貯留される場合にくらべて、インク40が静止した状態で維持されることによって固化しやすくなることを抑制することができる。
【0101】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0102】
(変形例1)前記実施形態においては、インク供給部4、インク供給部104、インク供給部204、及びインク供給部304は、それぞれ2個の温調装置を備えていたが、液状体供給装置が備える温度調整部が2個であることは必須ではない。液状体供給装置が備える温度調整部は、3個以上であってもよい。
【0103】
(変形例2)前記実施形態においては、インク供給部4、インク供給部104、インク供給部204、及びインク供給部304は、それぞれ2個の温調装置を備え、一方の温調装置がインク40を加熱し、もう一方の温調装置がインク40を冷却していた。しかし、液状体供給装置が備える複数の温度調整部が、加熱装置と冷却装置との両方を含むことは必須ではない。液状体供給装置が備える複数の温度調整部が、設定温度が異なる加熱装置である構成や、設定温度が異なる冷却装置である構成であってもよい。
【0104】
(変形例3)前記実施形態においては、温調装置51が、温調端子51aと、温調本体部51bと、接続体51cと、を有しているように、温調装置は、分離された温度調整端子を備えていた。しかし、温度調整部は、一体の装置であってもよい。
【0105】
(変形例4)前記実施形態においては、インク40は紫外線硬化型インクであったが、液状体が紫外線硬化型インクであることは必須ではない。液状体は、例えば、他の波長の光によって硬化が進行するインクや、熱硬化型のインクなどであってもよい。例えば顔料を含むインクのように、含有する成分が沈殿する可能性があるような液状体を扱う液状体供給装置又は描画装置であれば、上記実施形態で説明したインク供給部4、インク供給部104、インク供給部204、又はインク供給部304のような構成を好適に適用して、液状体の成分が装置内で沈殿することを抑制することができる。
【0106】
(変形例5)前記実施形態においては、インク供給部4、インク供給部104、インク供給部204、及びインク供給部304は、圧力調整弁77を備えていたが、吐出ヘッドに供給する液状体の液圧を一定の液圧に調整する装置が圧力調整弁77のような装置であることは必須ではない。例えば、液状体の供給経路の途中に液溜りを設け、当該液溜りに供給された液状体の液位と、吐出ヘッドにおける液状体の液位との水頭差を一定に維持することによって、吐出ヘッドに供給する液状体の液圧を一定の液圧に調整する装置であってもよい。
【0107】
(変形例6)前記実施形態においては、インク供給部4、インク供給部104、インク供給部204、及びインク供給部304は、脱気ユニット71を備えていた。しかし、描画装置が、吐出ヘッドに供給する液状体の溶存気体を脱気する装置を備えることは必須ではない。描画装置は、吐出ヘッドに供給する液状体を脱気して液状体の溶存気体を調整する構成を備えない装置であってもよい。
【0108】
(変形例7)前記実施形態においては、液滴吐出装置1は、ヘッドユニット21を1個備えていた。しかし、描画装置が備えるヘッドユニットが1個であることは必須ではない。描画装置が備えるヘッドユニットは、いくつであってもよい。描画装置が複数のヘッドユニットを備える場合、ヘッドユニットごとに、吐出させる液状体の種類を異ならせてもよい。
【0109】
(変形例8)前記実施形態においては、X軸走査機構によってワーク載置台33をX軸方向に移動させることでワークWをX軸方向に移動し、Y軸走査機構によって、液滴吐出ヘッド20(ヘッドユニット21)をY軸方向に移動することで、ワークWと液滴吐出ヘッド20とを平面方向において相対移動させていた。ワークWのような被描画媒体と液滴吐出ヘッド20のような吐出ヘッドとを相対移動させるために被描画媒体と吐出ヘッドとの両方を移動させることは必須ではない。被描画媒体と吐出ヘッドのいずれか一方を平面方向に移動させることで、被描画媒体と吐出ヘッドとを相対移動させる構成であってもよい。
【0110】
(変形例9)前記実施形態においては、液滴吐出装置1に吐出させるインクの種類については特に記載しなかったが、色が異なるなど種類の異なるインク(液状体)を吐出してもよい。色が異なる複数種類のインクを吐出させることでカラー描画も可能である。インクの種類は、例えば、液滴吐出ヘッド(吐出ヘッド)ごとに異ならせる。インクを吐出する吐出口である吐出ノズルごとにインクを個別に供給できる液滴吐出ヘッドを用いて、吐出ノズルごとに異なるインクを吐出してもよい。
種類の異なるインクを使用する描画装置においては、インク供給部304が備えるような循環路を、描画装置が備える液状体供給装置のすべてに、設けてもよいし、一部の液状体供給装置にのみ設けてもよい。循環路を設けた液状体供給装置からは、循環路を設けることが特に有効なインクを供給することが好ましい。循環路を設けることが特に有効なインクとしては、白インク、メタリックインクなど、含有している顔料が大きいものなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0111】
1…液滴吐出装置、2…ヘッド機構部、3…ワーク機構部、4…インク供給部、7…吐出装置制御部、20…液滴吐出ヘッド、40…インク、41…インクタンク、43…切替バルブ、51…温調装置、51a…温調端子、51b…温調本体部、51c…接続体、52…温調装置、52a…温調端子、52b…温調本体部、52c…接続体、56…液位計、56a…センサー部、56b…液位計体、61,62,63…供給管、64…循環管、71…脱気ユニット、73…ポンプ、104…インク供給部、141…インクタンク、151…温調装置、151a…温調端子、151b…温調本体部、151c…接続体、152…温調装置、152a…温調端子、152b…温調本体部、152c…接続体、204…インク供給部、241…インクタンク、251…温調装置、251a…温調端子、251b…温調本体部、251c…接続体、304…インク供給部、341…インクタンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状体を吐出する吐出ヘッドと、
前記液状体を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクにおける前記液状体の一部の温度を調整する第一の温度調整部と、
前記第一の温度調整部とは異なる位置に配設され、前記貯留タンクにおける前記液状体の一部の温度を調整する第二の温度調整部と、
前記第一の温度調整部及び前記第二の温度調整部を制御する温度調整部制御部と、を備え、
前記第一の温度調整部が調整する前記液状体の一部の温度と前記第二の温度調整部が調整する前記液状体の一部の温度は異なっており、
前記温度調整部制御部は、前記第一の温度調整部が調整する前記液状体の一部の温度と前記第二の温度調整部が調整する前記液状体の一部の温度との温度差を調整することを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記第一の温度調整部と前記第二の温度調整部とは、水平方向において、異なる位置に配設されていることを特徴とする、請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記温度調整部制御部は、前記第一の温度調整部が調整する前記液状体の一部の温度と前記第二の温度調整部が調整する前記液状体の一部の温度との高低関係を、時間とともに変動させることを特徴とする、請求項2に記載の描画装置。
【請求項4】
前記第一の温度調整部と前記第二の温度調整部とにおいて、少なくともひとつは前記液状体を加熱し、少なくともひとつは前記液状体を冷却することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−22780(P2013−22780A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157589(P2011−157589)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】