説明

提案構造解析処理の実行可能性を判断する方法

【課題】電子ビームを用いて1つ又はそれよりも多くの処理条件下で多層構造からX線を励起する提案構造解析処理の自動最適化の方法を提供する。
【解決手段】提案構造解析処理の実行可能性を判断する方法。この処理は、多層構造からのX線の電子ビーム励起を伴っている。本方法は、1つ又はそれよりも多くの組の処理条件に従って多層構造のX線励起応答を表す予測X線データを発生させる段階を含む。X線データは、層の構造及び組成を定める構造データを用いて発生される。多層構造に対して提案構造解析処理を行う実行可能性を判断するために、構造データの変更がX線データに与える影響が、次に、1つ又はそれよりも多くの所定の実行可能性基準に従って解析される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビームを用いて1つ又はそれよりも多くの処理条件下で多層構造からX線を励起する提案構造解析処理の自動最適化の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上の複数の薄膜層を解析する1つの重要な方法は、電子のビームに試料を露出して放出X線スペクトルを測定することを伴っている。電子ビームが層を通過して基板に到達するのに十分なエネルギを有するとすれば、特徴的なX線が、基板及び様々な層の両方の元素から発生し、これらは、X線検出器により見られる全X線スペクトルの一因になる。図1は、10keVの電子ビームが基板上で異なる厚みの3層を有する層状サンプルに入射する一般的な状況を示している。多くの電子軌道が示されており、X線は、原子イオン化の結果として電子軌道に沿ってあらゆる点で発生すると考えられる。X線は、全方向に放出され、X線検出器をサンプルよりも上方に位置決めした場合には、検出器に向けて放出されたX線は、電子ビームにより励起された領域内に存在する元素を表す信号を提供することになる。図1の構成においては、X線は、全ての3層及び基板から出現することになる。図2では、同じサンプルは、より低いエネルギの電子ビームに露出される。この場合、電子は、上部2層に貫通するだけであり、従って、最下位層及び基板からの信号はないことになる。一般的に、一連のX線スペクトルを異なる入射電子ビームエネルギで、典型的には2keVと20keVの間で取得する場合、対応するスペクトルは、様々な層と勿論基板との厚み及び組成によって変動する特徴的なX線ピークを示すことになる。特定の電子ビームエネルギが与えられると、多層サンプル中の特定の元素の特徴的な強度は、「k−比率」として表すことができる。
【0003】
「k−比率」は、構造からの特定元素に対して受け止めたX線強度(K、L、又はMのような特徴的なX線放出系列から記録されたカウント/秒)と、同一実験条件下の純元素の均一なバルク試料から取得したものとの比率である。この比率を取ると、エネルギの関数としてのX線検出器の集光効率を知らなくても済む。一連のk−比率を測定することにより、多層試料の様々な層の厚み及び組成を導出することが可能である場合がある。
【0004】
全部でNE個の元素が層の1つ又はそれよりも多く又は基板に発生し、厚みT1、T2...TNLを有するNL個の層があり、層Lが濃度CLjの元素jを収容し、基板が濃度CSjの元素jを収容する場合、入射電子ビームエネルギE0での元素iの予測k−比率は、以下のように書くことができる。
ki = fi ( E0, T1, T2,...TNL, C11, C12,...C1NE, C21, C22...C2 NE,...CNL 1, CNL 2,...CNL NE, CS1, CS2,....CS NE ) 方程式1
ここで、fiは、層厚と層及び基板の組成との非線形関数である。この形式のいくつかの方程式は、この1つのビームエネルギE0での測定元素強度に対応するものである。測定がこの元素に対して1つよりも多い放出系列(例えば、K又はL又はMの放出)に関して行われた場合、特定の要素に対して1つよりも多い方程式があると考えられる。測定は、ビームエネルギの更に別の値でも行うことができ、一般的に、k−比率に対してM個のこれらの非線形方程式があることになる。方程式1の関数は、一般的に積分及び非線形関数を伴い、一般的に、方程式の組を「反転」して、1組の測定k−比率に関していずれか1つの層の厚み又は組成を表す式を書くことは不可能である。従って、1組のX線測定値から1組の厚み及び組成(層変数)を判断するために、測定k−比率の最良適合である1組のkiを見つけるためにモデルのパラメータを調節するモデル化手法を使用することは公知である(例えば、W.H.Press他著「C言語による数値計算レシピ」、第2版、ケンブリッジ大学出版局1999年、第15章を参照されたい)。
【0005】
すなわち、コンピュータプログラムを用いて、層の厚み及び組成で反復的推測を行ってX線スペクトルから測定したk−比率とよく適合する組を見つける(例えば、J.L.Pouchou著「層状試料のX線微量解析」、「Analytica Chimica Acta」、283(1993年)、81〜97頁を参照されたい。この手順は、フランス国のSAMxによるソフトウエア製品「Strategem」で市販されている。)。このコンピュータプログラムは、各反復時に試験を行って推測値が反復の間で大幅に変わっていないかを確かめ、大幅に変わっていなければ、「収束」が達成されたことになる。
【0006】
残念ながら、一部の場合には、測定k−比率は、X線強度に対する個々の寄与の源を分解するのに十分な強度の差異を示さないので、厚み及び組成の最良適合の組を見つけることは不可能である。この場合、コンピュータプログラムによる反復では、固有の解に収束しないことになる。このような問題は、異なるX線放出系列、異なるビームエネルギを選択することにより、又は予め既知である場合に厚み又は組成の一部に関する情報を提供することによって可能な解の範囲を制限することにより、時には解決することができる。ビームエネルギ及びX線系列の選択には多少の指針があるが(例えば、J.L.Pouchou著「薄膜及びコーティングのX線微量解析」、「Microchim.Acta 138」、133〜152頁(2002年)を参照されたい)、一般的に、専門家の手のよる広範囲な実験を除き、この技術により所定の形式のサンプルを常に失敗せずに解析することができることを証明することは困難である。既存のソフトウエアプログラムは(「Stratagem」など)、専門家が解析の最良条件を選択する一助になるように、k−比率対層厚、又はk−比率対ビームエネルギの曲線プロットのような診断ツールを提供する。しかし、これらのツールは、特に複雑な多層試料に対しては、解析のためのいかなる推奨ツールも提供せず、関連の物理を十分に理解していない者には不適切である。
【0007】
コンピュータプログラムの反復手順は、適合パラメータ(すなわち、「未知数」)の1組の開始値から始まり、開始「推測値」の選択は、反復が所定の組の入力データの最良の解に収束することになるか否かに影響を与える可能性がある。従って、適切な条件を測定に向けて定めることができ、かつ一部の事前知識が利用可能である時でさえも、適合パラメータの開始推測値が適切ではなかった場合には、この反復手順は、依然として失敗する可能性がある。
【0008】
エネルギ分散分光計を使用してX線スペクトルを取得した時には、デジタル化スペクトルは、実質的に、小さな範囲のエネルギの計数を各々が記録するいくつかの独立したチャンネルから成る。ピーク強度を取得するために、スペクトルを数学的に処理して背景を除去し、かつピーク重複があれば補正する。元のスペクトルの各チャンネル計数は、ポアソン計数統計に従い、それによって導出ピーク面積の変動が発生することになる。
【0009】
層状試料のX線発生の物理的理論によれば、いずれか1つの組成又は厚み値の変化は、一般的に観測X線強度のいくつかに影響を及ぼすことになる。逆に、1つの測定元素強度の変化は、適合パラメータのいくつかに影響を及ぼす可能性がある。状況によっては、適合パラメータに対する特定の組の開始推測値と共に、測定強度の何らかのランダムな摂動が原因でプログラムが成功することもあれば、解に収束しない可能性もある。繰返し測定を行って厚み及び/又組成が同意公差内であることを保証する品質管理用途においては、このような失敗が希であることを保証することが極めて重要である。
【0010】
例え収束が常に達成されるとしても、統計上の変動のために、同じ試料に対する各新しい組の測定によって厚み及び組成に対して異なる組の結果が生じることになる。X線測定時間を延長すれば、一般的に測定k−比率の変動が小さくなることになり、それによって反復によって得られる厚み及び組成推測値の変動が小さくなることになる。しかし、問題の複雑かつ数学的非線形性のために、方程式を作って測定厚み又は組成においてどのような精度を達成することができるかを予想することは不可能である。
【0011】
このような非線形の問題に対して再現性の推測値を取得する標準な方法は、モンテカルロシミュレーションを用いることである(W.H.Press他著「C言語による数値計算レシピ」、第2版、ケンブリッジ大学出版局1999年、689頁を参照されたい)。この方法においては、最初に1組の結果を1組の入力データから取得する。適切な統計分布を表す1組の乱数を入力データへの摂動として追加して結果を反復解により求める。これらの結果は、摂動なしの結果と若干異なることになり、差異を記録する。この処理を新しい組の乱数で何回も繰り返し、変化する出力結果を用いて、入力データに影響を与える計数統計の結果として各結果値に対する標準偏差を計算することができる。例えば、この感度解析手法は、X線管からのX線を用いて試料からのX線スペクトルを励起するX線蛍光分光解析の専用の分野に使用されている(米国特許第6、118、844号)。米国特許第6、118、844号においては、未補正X線データの個々のチャンネル計数に計数統計摂動を行って、ピーク重複の補正後に、蛍光法による計算層厚の不確実性に及ぼす影響を予測する。
【0012】
検査する新しい種類の薄膜サンプルを呈示される材料分析者の実際的な状況においては、通常は、類似であるが既知のサンプルから実験的なスペクトルを取得して、様々な元素から観測X線強度を見つけなければならない。次に、通常は、測定条件、測定される元素系列、固定及び可変パラメータ、及び開始値の最良の組を判断するために更に別の実験が必要である。すなわち、電子ビーム解析手法の実行可能性を確立する手順は、極めて時間を消費すると共に高価である可能性があることが認められるであろう。更に、オペレータ側にかなりの知識が必要である。従って、電子ビームX線解析を行う実行可能性を判断するこれらの公知の方法を改善する要望が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6、118、844号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】W.H.Press他著「C言語による数値計算レシピ」、第2版、ケンブリッジ大学出版局1999年、第15章
【非特許文献2】J.L.Pouchou著「層状試料のX線微量解析」、「Analytica Chimica Acta」、283(1993年)、81〜97頁
【非特許文献3】J.L.Pouchou著「薄膜及びコーティングのX線微量解析」、「Microchim.Acta 138」、133〜152頁(2002年)
【非特許文献4】W.H.Press他著「C言語による数値計算レシピ」、第2版、ケンブリッジ大学出版局1999年、689頁
【非特許文献5】P.J.Statham著「特徴的な線強度をX線スペクトルから抽出時の精度に対する制限」、J.Res.Natl.Inst.Stand.Technol.107、531〜546頁(2002年)
【非特許文献6】P.J.Statham著「スペクトルのプレフィルタリングによる最小自乗当て嵌めによる逆畳み込み及び背景除去」、Anal.Chem.49、2149〜2154頁、1977年)
【非特許文献7】Peter Duncumb、Ian R.Barkshire、Peter J.Statham共著「電子微小解析の改良型X線スペクトルシミュレーション」、Microsc.Microanal.7、341〜355頁、2001年
【非特許文献8】Pouchou、J.L.及びPichoir、F共著「モデル「PAP」を適用する均質又は層状微容量の定量解析」(1991年)、Heinrich、K.F.J.及びNewbury、D.E.編「電子プローブ定量化」、「Plenum Press」、ニューヨーク、31〜75頁
【非特許文献9】C.Fournier、P.F.Staub、C.Merlet、O.Dugne共著「WDSのX線スペクトルシミュレーション:電子ミクロプローブ自動化への用途」、Microsc.Microanal.7(補遺2)、674頁(2001年)
【非特許文献10】P.Karduck及びW.Rehbach共著「電子プローブ微量解析のφ(rho−z)決定におけるトレーサ実験の使用及びモンテカルロ計算」(1991年)、Heinrich、K.F.J.及びNewbury、D.E.編「電子プローブ定量化」、「Plenum Press」、ニューヨーク、191〜217頁
【非特許文献11】R.Gauvin及びE.Lifshin(2002年)共著「真のEDSX線スペクトルのシミュレーションに関して」、顕微鏡法と微量解析、第8巻、補遺2、430〜431頁、2002年
【非特許文献12】A.K.Bandyopadhyay他、Int.J.Numer.Model、2005年、18、413〜427頁
【発明の概要】
【0015】
本発明により、多層構造からのX線の電子ビーム励起を含む提案構造解析処理の実行可能性を判断する方法を提供し、本方法は、i)層の構造及び組成を定める構造データを用いて、1つ又はそれよりも多くの組の処理条件に従って多層構造のX線励起応答を表す予測X線データを発生させる段階と、ii)多層構造に提案構造解析処理を行う実行可能性を判断するために、1つ又はそれよりも多くの所定の実行可能性基準に従ってX線データに対する構造データの変更の影響を解析する段階とを含む。
【0016】
従って、本発明は、X線の電子ビーム励起に基づく解析技術を用いて、かつその解析のために最良条件を見つけることにより、所定の多層構造が「解法可能」か否か(例えば、各層の組成及び/又は厚みを判断するということに関して)を判断するシミュレーションツールを提供すると考えることができる。一般的に、このような多層構造は、基板上に位置する少なくとも1つの薄い層を含む。原則的には、基板は必要ではないが、これは、通常は存在することになる。従って、本発明は、解析処理の実行及び/又は本方法により推定される「適合」パラメータの実現可能な精度又は再現性の判断に対する条件を最適化する際に利用することができる。
【0017】
一部の層変数は、既知で固定されることになるが、一部は、未知であり、求めることになる。一般的に、方程式1の反復解があらゆる試料に対して及び未知変数の開始値のあらゆる選択に対して可能であることを保証することは不可能である。しかし、典型的な値を未知数に与えた場合、これは、解析されるものに典型的である仮想的試料構造を定めるのに十分な情報を提供する。そこで、未知変数に関する良好な開始推測値で確実に問題を解くことができるか否かを判断することが可能である。良好な開始推測値でさえ問題を解くことができない場合、それは、一般的に解くことができないので、新しい組の処理条件を選択すべきである。
【0018】
典型的には、X線データは、多層構造の各層の元素組成及び層厚の関数として予測モデルを使用して発生される。すなわち、予測モデルを使用して、多層構造内の特定の元素に対する固有X線強度応答を表すX線データを発生させることができる。従って、全体的な構造に対するX線データは、各元素に対して固有X線強度応答を計算することによりこのようにして蓄積することができる。従って、予測モデル(薄膜モデル)は、厚み及び濃度(層変数)が全ての層に対して定められていれば、方程式1で示すように「順」方向でk−比率を常に予測することができる。
【0019】
1つの方法においては、段階(i)において、構造データを各層の組成及び層厚に関して名目構造データとして定め、名目構造データは、対応する名目X線データを発生させ、段階(ii)においては、X線データを修正し、かつX線データを多層構造の各層の組成及び厚みを反復的に変更し、予測X線データに対する影響を見て入力X線データに適合する値を見つけ、従って、入力X線データと合致する出力構造データを発生させるようになった構造ソルバーに名目構造データと共に入力する。以下で認められるように、本明細書で説明する方法の各々においては、構造ソルバーは、解を見つけるために方程式1に適用することが好ましい。
【0020】
次に、実行可能性基準に従って出力構造データを名目構造データと比較することにより、X線データの修正の影響を解析することが好ましい。例えば、入力X線データの修正毎に、構造ソルバーが名目X線データと実質的に同一である対応するX線データを有する固有の組の出力構造データを発生させる場合、実行可能性基準は満たされる。本方法の更に別の説明として、k−比率としてのX線データを反復手順への入力として供給し、かつ未知数の開始値を仮想的試料に対応する値に設定した場合に、方程式1により、開始値と同一のk−比率が予測され、反復は、瞬時に収束することになる。k−比率のうちの1つだけ(Kj)を少量(例えば1%)増分させ、かつ他のk−比率が不変である場合、反復解を求めようとした時に、k−比率は、Kjを除いて方程式1と一致することになる。Kjの変化が十分に大きければ、収束の試験は、失敗することになり、反復手順は、反復を行って未知の値を調節すべきである。それによってk−比率の予測が変わり、更に別の反復をもたらす場合がある。反復が収束しなかった場合、問題は、明らかに不安定なものである。しかし、それらが解に収束した場合は、j番目のk−比率における既知の変化デルタ−Kjに対する各未知の層変数Tiに対する理想的な開始値からの変化デルタ−TiをdTi/dKjとして記録する。この手順を異なるKjに対して繰り返す。全てのKjに対して収束が達成された場合、これは、本方法を組み込むコンピュータプログラムがこの問題を処理することができることを示唆している。
【0021】
測定Kjにおける標準偏差σiの推測値が利用可能であり、かつ全てのKjの統計上の変動が独立したものである場合、計算層変数Tjにおける分散Vjは、全てのjに対して((dTi/dKj2・σi2)の和として推定することができる。更に、系統的誤差が、測定Kj内で発生する可能性がある。例えば、ビーム電流がX線スペクトル取得中に増大した場合、このスペクトルから導出した全てのKjは、同じ割合で増大することになる。測定Kj内の系統的誤差eiの推測値が利用可能である場合、計算変数Tiの誤差は、全てのjに対して((dTi/dKj・ej)として推定することができる。性能指数は、各誤差源に対して計算することができる。例えば、統計誤差の場合、(Vi/Ti2)の平方根であるTiの最大相対標準偏差は、「最悪の場合」の相対誤差を与え、性能指数に対して低い値が望ましいであろう。代替的に、全てのTiに対する平均相対誤差又は特定の層変数に対する相対誤差を性能指数に対して選択することができる。同様の性能指数をビーム電流変動のような系統的原因による誤差に対して計算することができる。
【0022】
従って、典型的な試料構造を定義することができる場合、1組の実験条件、特にビームエネルギに対して問題を解く可能性を試験することができ、かつ1つ又はそれよりも多くの性能指数を計算して結果に及ぼす様々な潜在的誤差源の影響を測定することができる。この手順をいくつかの候補の実験条件で繰り返した場合、1つ又はそれよりも多くの誤差源の影響を最小にする最良の組の条件を見つけることができる。1つの誤差源が優勢でありそうな場合は、その誤差源の性能指数を最小にする条件が適切である。代替的に、σi及びeiの現実的な値が利用可能である場合、最適である実験条件を見つけるために、両方の性能指数の最大値のような関連性能指数の何らかの組合せを用いて最適である実験条件を見つけることができる。
【0023】
代替手法では、構造ソルバーに入力される構造データの修正を行って、実行可能性を判断することができる。この場合、段階(i)において、構造データを各層の組成及び層厚を含む名目構造データとして定め、名目構造データは、対応する名目X線データを発生させ、段階(ii)においては、構造データは修正され、かつ構造データは、開始推測値として、名目X線データと共に、これらの開始推測値を用いて出力構造データとして多層構造の各層の組成及び厚みを反復的に計算するようになった構造ソルバーに入力される。従って、構造ソルバーは、修正構造データに対するX線データを計算して、修正X線データを名目X線データと比較することができる。構造データへの修正の影響は、構造データの修正に向けて発生されたX線データを名目X線データと比較し、かつ比較の結果を実行可能性基準と比較することにより解析することが好ましい。名目X線データと実質的に同一であり、かつ構造データに適用された修正から実質的に独立している対応する予測X線データを発生させる固有の組の出力構造データが見つかった場合に、実行可能性基準は満たされると見なすことができる。
【0024】
別の代替方法においては、モンテカルロ法が用いられ、名目構造データから発生された名目X線データの変化が、名目X線データに統計分布を適用することによって生成され、実験的にX線励起を行うことから予想されるものと同等の集合的な統計分布を有する複数の組のX線データを発生させる。従って、段階(ii)において、出力構造データを発生させるために反復的構造ソルバーに名目構造データと共に各組のX線データを入力することができる。この場合、この処理は、X線データへの修正毎に、構造ソルバーが名目X線データと実質的に同一である対応するX線データを有する固有の組の出力構造データを発生させる場合に実現可能と見なすことができる。従って、個々に各Kjの小さな変化の影響を個々に考慮するのではなく、予想標準偏差σiを用いて、反復手順の入力としてその後に用いるランダム化した組のKjを発生させる「モンテカルロ」手法を用いることが可能である。反復手順が解に収束する場合、それは、方程式1で用いる典型的な値と僅かに異なることになる未知の層変数に対する値を見出すことになる。新しい組の乱数で何回もこの反復手順を繰り返すことにより、反復手順が何回も試験されることになり、求めた層変数における標準偏差は、多くの実際の実験を実質的に模擬する多くの組の結果から計算することができる。
【0025】
この手順においては、dTi/dKjを計算することは必要でないが、求めた層変数の変動の推測値を取得するには、遥かに多くの計算が必要であることは確かである。別の乱数を用いて特定のスペクトルから取得した全てのk−比率に適用する倍率を計算することにより、ビーム電流のような変動源を組み込むことができる。時期を問わず、反復手順が収束しなかった場合、その特定の組の条件(例えばビームエネルギ)が解析に不適切であることは明らかであり、新しい組の条件を直ちに調査すべきである。
【0026】
本発明を実行する別の代替方法は、段階(i)において、1つ又はそれよりも多くの組の予測スペクトルデータを発生させる段階を含み、各組は、上述の処理条件のそれぞれの1つに従って構造のX線励起応答を表し、X線データは、予測スペクトルデータから導出され、段階(ii)は、各発生した組のスペクトルデータ及び名目構造データから導出したX線データを用いて各組の処理条件の出力構造データを計算する段階を含む。本方法は、好ましくは、予測モデルを用いて、構造ソルバーによる解析のための多くの組のスペクトルデータを発生させる。
【0027】
実際には、測定k−比率の標準偏差は、処理条件に依存することになり、考慮中の典型的な試料構造の物理的理論から計算することができる。k−比率をスペクトルデータから判断する場合、スペクトルデータは、1組の処理条件に従って予測することができる。電子ビームエネルギの他に、このような処理条件としては、使用する物理装置の種類に関するデータ、及び例えばスペクトルデータを取得するのに使用する取得時間のような使用実験条件を含むことができる。スペクトルデータを予測するために用いる情報の例としては、入射ビームkeV、ビーム電流、X線収集のための立体角、出現X線の発射角度、試料表面の傾き、及び分光計調節可能パラメータ(解像度及び取得時間など)がある。この場合、スペクトルデータを発生すべき特定の元素及び線系列を指定することも必要である。
【0028】
スペクトルデータが取る形態は、スペクトルデータを発生させるために用いる技術にも依存する。典型的には、それは、計算に向けて入力として必要とされるフォーマットに依存することになる。従って、スペクトルデータは、例えば、上述のようなk−比率の形態で予測X線強度データを含む場合がある。このようなk−比率を発生させるために、本方法は、純元素に対する元素スペクトルデータを発生させる段階、及びX線データの発生において元素スペクトルデータを使用する段階を更に含むことが好ましい。典型的には、これは、「構造」X線データ値を元素X線データ値で割ることを伴っている。
【0029】
構造解析処理の実行可能性は、解析処理が適合パラメータに到達することが全く可能か否かを意味するように制限されるだけでなく、適合パラメータが、再現性又は精度の十分なレベルを有することに到着するか否かという意味でも制限される。従って、実行可能性を判断するには、多層構造からのX線放出を十分なレベルの精度までモデル化することが重要である。現実のX線励起は、計数統計の確率的影響を伴っている。従って、好ましくは、データセット毎に(選択した条件に従って)、本方法は、スペクトルデータに乱数を追加することにより各データセット内でポアソン計数統計の影響を模擬するために数回この反復解法手順を実行する段階を更に含む。これは、実質的に実際的な解析実験を数回行う効果を模擬する。
【0030】
計数統計を考慮に入れるために用いることができる別の技術は、ポアソン計数統計によるX線ピーク面積の統計分布を予測するために計算を行い、次に、統計分布をスペクトルデータに適用することである。例えば、計数統計で多くのスペクトルを模擬して各スペクトルを処理してピーク面積を取得するのではなく、各k−比率に対して有効σiを計算し、上述のモンテカルロ手法に使用することができる。
【0031】
実際的な電子ビーム発生装置により発生される電子ビーム強度の変動があることが多いので、この点は、電子ビーム強度変動を表す異なる組の処理条件で本方法を実行することにより考慮に入れることができる。これは、例えば、模擬した各スペクトルに対して確率的分布を名目電子ビームに適用することによって達成することができる。これは、計数統計による相対分散と共に積分にビーム電流変動による相対分散を追加することによっても達成することができる(後述するように)。
【0032】
一部の場合には、実際的な装置から取得したスペクトルデータの処理内に系統的誤差があることも認識することができる。本発明を用いて、このような系統的誤差をスペクトルデータ内にモデル化することにより、このような誤差の影響をモニタすることもできる。この反復解法手順は、適合パラメータに及ぼすスペクトル処理スペクトルにおけるこれらの系統的誤差の影響を調査する際に数回繰り返すことができる。これは、計数統計による相対分散と共に積分にスペクトル処理誤差による潜在的な相対分散を追加することによっても達成することができる。
【0033】
反復解法手順の結果は、一般的に各適合パラメータの値である。このような値は、通常は数値であるが、データ群からの特定データの選択とすることもできるであろう。例えば、このようなデータは、多層構造の種類に関する更に別の情報を表すことがありえる。一般的に、各適合パラメータは、組成(特定元素の量など)又は層厚である。複数の適合パラメータが試料に対して判断されることになる時には、それらは、組成パラメータと厚みパラメータの混合のような異なる「種類」のパラメータを含むことができる。
【0034】
様々なパラメータは、処理条件及び電子ビームエネルギなどのようなスペクトルデータの発生において修正することができるが、反復解法手順を実行するプログラムは、一般的に、選択することができることによって解析処理を実行する実行可能性に影響を及ぼすいくつかのパラメータも含むことが認められるであろう。例えば、判断されることになる「適合」パラメータは、一部の計算モデルにおいては未定義値として始めることができる。しかし、一例として反復モデルのようなある一定の種類のモデルにおいては、一般的に、開始値を「適合」パラメータに供給し、各適合パラメータに対して単一の解に収束するように計算が進む時にこれらを修正する。用いる構造パラメータも同様に修正することができる。一般的に、構造パラメータは、ある一定の層に関して既知である情報、例えば、層の数、特定の層の厚み、及び特定の層の部分的又は全体的な組成などを含む多層構造のある一定の態様を定めるものである。従って、この反復解法手順は、計算に用いる構造パラメータを変えながら各組に対して数回繰り返すことができる。
【0035】
解析は、一般的に、出力適合パラメータの統計分布を計算する段階を更に含む。この解析は、各組内のデータに対して(例えば、多くのスペクトルが計数統計により生成される場合)、異なる開始パラメータによる結果に対して、又は組に対して(各組に対して選択した異なる実験条件のために)、又は勿論これらの1つ又はそれよりも多くの組合せに対して行うことができる。
一般的に、本方法は、解析処理に対する実現可能な精度の尺度として各推定適合パラメータに対する標準偏差を計算する段階を更に含む。これは、実際の実施例における本方法の1つの目標が、所定の総測定時間にわたって所定のレベルの精度を達成することであるから有利である。
【0036】
本発明は、電子ビームを用いたX線励起に限定されるが、本発明は、勿論、エネルギ分散装置(EDS)及び波長分散装置(WDS)による提案構造解析処理を含む。これらの各々は、スペクトルデータと考えることができる。
本発明の目的は、提案解析処理の実行可能性を判断することであるので、計算が、適合パラメータに対して意味がある結果を出すことはできない場合には、提案処理は、使用には実行不可能になる。これは、本方法が適合パラメータに対して単一の解を出すことはできない場合に当て嵌まることになる。このような失敗を引き起こすデータ(パラメータ及び条件データなど)は、一般的に、その後の解析のために記録される。単一解の生成の失敗がある場合、本方法は、新しい条件を選択する段階と、新しい条件に従って発生されたスペクトルデータを使用して本方法を繰り返す段階とを更に含むことが好ましい。従って、本方法は、適合パラメータに対して意味がある結果を生成することができる他の条件を利用する。
【0037】
従って、本発明は、高価で長い実際的な調査の必要なく、提案構造解析処理の実行可能性を調査することを可能にする。これは、商業レベルの構造解析処理において、例えば、多層構造を含む製品を製造し、品質管理の目的で自動電子ビームX線励起解析装置を設置する場合に極めて有用である。従って、本発明は、解析される製品(多層構造)の全てのありそうな変動に対してある一定の関連の条件及びパラメータを有する特定の処理の実行可能性を調査することを可能にする。関連の組の条件及びパラメータを有するある一定の提案解析処理が解に収束することができないと見なされた場合、本方法による条件及び/又はパラメータの修正は、異なる提案解析処理を選択することを可能にすることができる。望ましい精度をいかなる条件下でも達成することができない場合、これは、無駄時間を節約し、代替の特徴付け方法を探すことを可能にすることになる。
【0038】
本出願人は、未知パラメータの固有値を見つけることが数学的に可能であるか否かを考えることによって本発明の方法を実行することができることを更に認めた。例え理論的には可能であるとしても、本方法を実施するのに使用する特定の反復解法手順は、成功しない場合もあるにせよ、これは、反復解法手順を改善する動機を確かに与えるものである。
上述のように、段階(ii)は、構造データ内の層厚及び/又は組成の小さな変化に対する予測モデルの応答を解析する段階を含むことができる。予測モデルの挙動は、名目値からの変化の近似級数展開として解析することができる。例えば、予測モデルの挙動は、行列方程式として表すことができ、予測モデルからのX線データ出力は、M個の値のベクトルとして表し、未知の層厚及び/又は組成は、N個の変数のベクトルとして表し、出力を層厚又は組成と関連付ける偏導関数は、MxN次元のヤコビ行列として表す。従って、名目X線データに対する変化の任意の組を生成することができる未知の層厚及び濃度の小さな変化の固有の組合せが常にあるかを見つける解析を行うことができる。1つの特定の手法は、特異値分解(SVD)の手法である。このような技術を用いると、本方法は、層厚又は組成に対する行列方程式の解法可能性の程度を表す条件数を計算する段階を更に含むことができる。この条件数は、実行可能性基準を含むようにある一定の閾値と比較することができる。
【0039】
更に別の説明として、連立非線形方程式の解を見つける多くの方法及び反復解法手順の多くの変形がある。例え方程式1のような同一方程式を使用してX線強度を予測するとしても、失敗なく収束することができるアルゴリズムもあれば、失敗する場合があるアルゴリズムもある。全てのこれらのアルゴリズムのうちの最良のアルゴリズムは、測定k−比率と判断される層変数との間に適切な関係がある場合に限り、固有の解を見つけることができることになる。最良の反復アルゴリズムを使用し、かつ方程式1が正しい試料説明と共に正確な強度を与える場合、次に、反復解が確かに成功しそうである場合、反復手順は、未知の層変数Tiの現在の推測値が真の値T0iに非常に近い時に依然として有効でなければならない。この近傍で、方程式1は、小さな差異を考慮することにより線形化することができ、すなわち、1次テイラー級数展開を用いて、差異(ki−k0i)は、小さな違い(Ti−T0i)の線形結合であり、ここで、k0iは、正しい層変数T0iに対応する測定k−比率であり、kiは、方程式1からのTiに対する予測k−比率である。従って、反復手順は、測定K0iを与えるためにkiからの変化を生成するのにTiの変化のどの組合せが必要かを解決すべきである。小さな変化の影響は、方程式1を用いる反復的前進計算により判断することができる。全ての層変数を最初に正しい値に設定した場合、k0iを計算することができる。層変数のうちの1つを少量変えた場合、再び前進計算を行えば、計算k−比率の各々においてどのような小さな変化、デルタ−kiが生成されるかを示すことになる(すなわち、デルタ−ki=k−k0i)。k−比率のいずれも実質的に変化しない場合、明らかに、特定の層変数をk−比率に及ぼすその影響によって判断する機会はない。k−比率の少なくとも一部が変化した場合、層変数の変化は、各k−比率に対して変化デルタ−kiの「指紋」を生成する。この指紋が偶然他の層変数の1つの指紋と一致した場合、1つの変数の正の変化により生成されたk−比率の変化は、他の変数の適切な負の変化により相殺することができるであろう。その場合、観測されたk−比率を説明することができると考えられるこれらの2つの変数に対する値の無数の組合せがあり、従って、これらの変数に対する正しい値を決める方法はないと考えられる。2つの「指紋」が類似である場合は、簡単な例である。一般的に、指紋の2つ又はそれよりも多い線形結合を合計してゼロ結果を生成することができる場合、対応する層変数値は、一意的に判断することができない。従って、前進計算を用いて理想的な解の小さな近傍を探ることにより、逆問題の解の可能性が全くないかを判断することができる。
【0040】
問題が解法可能な場合、正しい解の近傍では、観測デルタ−kiに適合する各層変数に対して指紋の組合せを見つけることができる。例えば、これは、最小自乗法による当て嵌めにより達成することができると考えられ、その場合、層変数を正しい値にするのに必要な層変数の変化は、デルタ−kiの線形和として計算することができる。実際の実験では、測定kiは、いくつかの測定誤差を受けることになり、これらの線形和を用いて、判断した層変数に及ぼすこれらの誤差の影響を判断することができる。例えば、統計変動のようなkiにランダム誤差がある場合、標準的な「誤差の伝播」において用いる積分和を用いることができ、一方、例えばビーム電流の変化により発生されるような系統的な変化がある場合、直接的な線形結合を用いて、判断された層変数に及ぼす影響を予測することができる。
ビーム電圧のような多くの解析条件に対してこの種類の解析を繰り返した場合、問題が解法不能である全ての条件を見出すこと、及び問題が解法可能である条件に対して、測定k−比率の誤差がどの程度未知の層変数に対する決定値の精度及び再現性に影響を及ぼすかを確立することが可能である。
【0041】
問題が「数学的に」解法可能である条件が見つからなかった場合、いかなる反復解法手順によっても一意的な解を見つけることができないことになる。数学的解法が実現可能であると判明し、かつ1組の最適条件が見つかる時には、最初に、正しい試料構造に対して方程式1からのk−比率を模擬し、次に、これらのk−比率を入力として用いて、手順がT0iと全て異なる開始推測値を用いて正しいT0iに収束することを検査することにより、これらの最適条件に対して真の反復手順を試験することができる。収束が達成されない場合、これは、手順が現在の解析的問題を実質的に対処することができるように反復解法手順を改善する余地があることを示している。
【0042】
従って、提案構造解析処理の実行可能性を評価するのに用いることができるいくつかの異なる技術があり、例えば、級数展開に関して説明したような数学的技術を初期実行可能性検査として用いることができ、その後、他の技術の1つに従ったより詳細な説明手順を用いることができることも認められるであろう。
殆どの場合、本方法の段階(適切なモデルを使用する)は、コンピュータソフトウエア内に組み込まれた(コンピュータ実現型)方法によりコンピュータ上で実行されることになることが想定されている。一部のこのようなモデルでは、十分な速度で結果を生成するために、強力なコンピュータ、特にモンテカルロ技術を必要とすることになる。本方法は、X線解析システムのコンピュータのような単一コンピュータ上で実行することができるが、本方法の異なる部分は、互いに独立しているか又はより好ましくは「インターネット」のようなネットワーク上で連結した異なるコンピュータ上で実行することができると考えられることは認められるであろう。
ここで、添付図面を参照して、本発明による方法の一部の例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】多層サンプル内への電子ビームの貫入を示す図である。
【図2】図1より低いビームエネルギを有する電子ビームの貫通を示す図である。
【図3】提案構造解析処理を実行するための装置の概略図である。
【図4】本発明による第1の例示的な方法を例示する流れ図である。
【図5】本発明による第2の例示的な方法を例示する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
最初に、特定の解析問題を解決する薄膜ソフトウエアの機能を探究する模擬した実験的な環境をいかにして本発明が有利に達成することができるかに関して一実施形態に従って全体的な概要を示す。ソフトウエアモデルを使用して、提案するX線サンプルのスペクトルデータを発生して、ある一定の「未知」パラメータを適合させることによりソフトウエアがサンプルの構造を導出することができるか否かを判断するために「薄膜解析」ソフトウエアによりデータを解析する。
【0045】
最初に、提案するサンプルを定め、これは、基板に堆積した薄膜の形態の多層構造を有する。大体の元素組成、すなわち、解析対象サンプルの特徴を示す組成に関してサンプルの仕様を示す。これは、一般的に、最終的に本格的に解析することができる未知数のうちの1つとほぼ同じものになる。基板及び層及びこれらの層の厚みに関しても提案するサンプルを定める。ビーム電流、X線検出器パラメータ、及び取得時間と共に、電子ビームエネルギのような第1の組の条件を選択する。次に、X線検出器の特性を考慮し、かつX線計数統計の影響を模擬する適切な乱数追加を含めて、このようなサンプルから得られると思われる一般的なX線スペクトルを理論から計算する。他の条件に対して、すなわち、必要であると予想される各入射ビーム電圧及び測定条件に対して、更に別のX線スペクトルを合成する。次に、真のスペクトル上で用いると思われるのと同じアルゴリズムを用いて、合成X線スペクトルを数学的に処理する。一般的に、これらのアルゴリズムを用いて、阻止X線背景を差し引き、スペクトルピーク重複の影響を処理してカウンタと数単位での1組のピーク面積、従って、カウント/秒単位でピーク強度を取得する。更に、各ピーク強度の予想統計標準偏差を計算することができる。次に、ピーク強度を薄膜解析ソフトウエアプログラムへの入力に適切なデータに変換する。これは、一般的に、同じ励起条件下で純元素の半無限の平坦なサンプルから得られると思われる値で強度を割る段階を伴っている。純元素強度もスペクトル合成によって判断し、かつこの比率は、一般的に、その元素線の「k−比率」と呼ばれる。このようにして、実際の実験でサンプルにより発生されると思われるものを表す「スペクトルデータ」を生成する。
【0046】
次に、どの元素線を使用すべきか、実際の問題のどのパラメータが未知であるのか(すなわち、厚み及び/又は組成値)、どのパラメータが既知なのかを選択することにより、計算を実行する薄膜解析ソフトウエアを構成し、適合させるべき未知パラメータに対して一般的な開始「推測値」を用いる。次に、1組の条件の理論的なk−比率を薄膜解析ソフトウエアへの入力データとして供給し、次に、入力k−比率と合致する解を反復により判断するために薄膜解析ソフトウエアを実行する。収束が達成されなかった場合、異なる組の条件を試行して、スペクトルを合成して機能する構成を判断する。収束が達成された時、推定厚み及び組成値に関する結果を記録する。
【0047】
次に、新しい組の理論的k−比率を取得する。これは、X線計数統計の影響をもたらすために異なる組の乱数を使用して、各条件に対してスペクトル合成手順全体を繰り返すことにより達成することができる。代替的に、導出したピーク強度の計算標準偏差を用いると、対応するピーク強度の予想標準偏差と合致するランダム量だけ各k−比率を摂動させるために用いる適切なガウス分布を有する乱数を生成することができる。ここでもまた、その組のk−比率を薄膜解析ソフトウエアの入力データとして用いて、各推定厚み及び組成の結果を記録する。本方法は、事実上、サンプルの第2の実験と似たものであり、結果は、一般的に、第1の実験と異なるものになる。何回も(一般的に100回以上)本方法を繰り返すことにより、各実験の記録結果は、類似した条件を用いた時に実際に予想されると思われる結果の変動を示している。次に、同じパラメータに関する結果の平均及び標準偏差を計算すると、特定の組のビーム電圧及び取得条件を用いて達成することができる精度の推測値を得ることができる。
【0048】
多くのシミュレーションを実行することにより、品質管理手順が時折失敗する可能性があるか否かを調べることができる。失敗する可能性がある場合、収束が保証されるまで構成を修正する。高速コンピュータを用いて、計器での生の実験を行うことによるよりも簡単かつ速く構成の試行錯誤による修正が達成される。更に、条件は、所定の総解析時間で達成することができる結果に関して最良の精度が得られる組を判断するように最適化することができる。
【0049】
潜在的な測定の不正確さをシミュレーションにおいて考慮に入れることができる。例えば、X線計数統計による変動の他に、入射電子ビーム電流の変動のために、ピーク強度は、実験間で変動する場合がある。ビーム電流の起こりそうな百分率での変動を計数統計による変動に積分で追加して、これらのランダム偏位を現実的に表すことができる。
系統的な不正確さは、スペクトル処理から予測することができる(例えば、P.J.Statham著「特徴的な線強度をX線スペクトルから抽出時の精度に対する制限」、J.Res.Natl.Inst.Stand.Technol.107、531〜546頁(2002年)を参照されたい)。X線分光器は、これらの不正確さを最小にするように較正することができることが多く、所定の分光計及び解析問題に対しては、スペクトル処理により推定した所定のピーク面積に生成する可能性がある最悪の場合の系統的誤差を推定することができることが多い。この誤差値を上述の手順で推定した統計標準偏差の代わりに用いて入力k−比率をランダムに摂動させた場合、結果の広がりにより、スペクトル処理で誤差から生じる可能性がある判断した厚み及び濃度における不正確さの推測値が得られる。
【0050】
従って、本発明は、実際のサンプルに用いる実現可能な1組の条件を判断する探求の試験台になり、本発明により、計数統計により引き起こされる結果及びビーム電流のような変動の起こりそうな原因の精度又は再現性を推定する方法が得られる。更に、試験台は、スペクトル処理に関わる不正確さの起こりそうな結果を推定する方法になる。薄膜解析ソフトウエアの範囲の理論的な計算の不正確さにより、依然として、推定した厚み及び濃度で系統的誤差が発生する場合がある。これらの系統的誤差は、通常、既知のパラメータを有する標準体を用いて相対的な測定を行うことにより最小にすることができる。
【0051】
多層サンプル(薄膜など)の従来技術の構造解析処理を実行する物理的システム1の概要を図3に示している。このシステムは、X線解析システム3を有する走査電子顕微鏡(SEM)2を含み、これは、「INCA Energy」X線解析システム(「Oxford Instruments Analytical Limited」により製造)である。SEMは、傾かせることができる試料保持具5を含むチャンバ4を有する。入射電子ビームは、電子銃6により放出され、これは、試料保持具内に保持した試料10に集束する。電子ビーム結果として放出される特徴的なX線は、X線解析システム3の一部を成す検出器11により検出される。SEM2は、システム1の作動を制御するようにソフトウエアが実行される制御コンピュータ15を含む。このコンピュータは、電子銃6から電子を加速し、従って、試料に衝突する集束電子ビームのエネルギを変えるために使用するkVを制御することができる。試料10を解析するために、電子ビームエネルギ及びビーム電流を選択して、選択した取得時間でX線スペクトルを取得する。元素ピーク強度は、適切な方法(例えば、本明細書において引用により組み込まれている、P.J.Statham著「スペクトルのプレフィルタリングによる最小自乗当て嵌めによる逆畳み込み及び背景除去」、Anal.Chem.49、2149〜2154頁、1977年)を用いてスペクトルから取得する。実験条件は安定したものであるが、試料10により占有された同じ位置にビーム下で既知の標準体を移動させて、基準X線スペクトルを標準体から取得する。標準的な測定からのスペクトルを用いて、解析すべき試料中の元素の各々に対してバルク純元素の平坦なサンプルから得られるピーク強度を取得する。一連の純元素又は化合物標準を使用することができ、又は単一の標準体を使用することができ、かつ対応する強度は、計算計数逓減率を適切な標準的な測定結果に適用することにより求めることができる(例えば、フランス国のSAMxにより販売されている薄膜プログラム「Stratagem」の取扱説明書を参照されたい)。必要に応じて、試料及び標準的な測定をより大きな入射ビームエネルギで繰り返す。
【0052】
次に、薄膜解析プログラム(例えば、フランス国のSAMxにより販売されている「Stratagem」)を使用して様々な層の厚み及び組成を計算する。これを行うために、層数を定めるべきであり、かつ基板組成及び様々な層の組成に関するあらゆる利用可能な情報が提供される。あらゆる未知の厚み及び組成は、1つ又はそれよりも多くのビームエネルギで関わる元素の測定k−比率を用いるプログラムにより判断する。各測定元素のk−比率を計算し、入力として薄い膜プログラムに供給し、次に、プログラムは、反復により、そのモデルに最も適合するパラメータを見つけようとする。薄膜プログラムが収束しなかった場合、誤差警告が出される。そうでなければ、プログラムにより、サンプル中の全ての未知の厚み及び組成の1組の推測値が得られる。
上述の解析処理は、特に、特定の組の処理条件及びパラメータが全ての予想状況下で使用するのに実行可能であるか否かを判断するのに費やす時間に関して高価であるかなりの実験手順を伴うことが認められるであろう。
【0053】
ここで本発明の例示的な方法を説明する。本発明においては、SEMは必要ではなく、本方法を用いて、実際の試料と共にSEM上でその後に用いることができる解析のための好ましい提案する方法を見出して確認する。
ここで図4を参照すると、本方法は、段階100で始まり、多層サンプルの構造をX線励起モデルで用いるパラメータに関して定める。一般的なパラメータとしては、層数、各層の厚み及び密度、各層中の各元素の濃度及び基板中での濃度がある。
次に、各X線スペクトル取得の更なる詳細を段階105で定め、これらは、実験条件に関連するものである。例えば、これらには、電子の入射ビームエネルギ(SEMkV)、ビーム電流、サンプルの幾何学的形状(特に検出X線の発射角度)、総取得時間、及びX線収集のための検出器立体角がある。これらのパラメータを用いて、異なる条件の1つ又はそれよりも多くを合計NC個まで指定する。
【0054】
次に、薄膜プログラム(未知の適合パラメータを計算するモデル)(これは、この例においては、「Stratagem」である)は、利用可能な事前知識に従って初期化される(段階110)。存在する各元素に対して、測定にどの放出系列を使用すべきか(K、L、又はM)を選択する。要素濃度又は厚み及び密度が既知の場合、それらは、反復解法において変化しないように固定することができる。一部の要素を他の要素と一定の割合で組み合わせることができ、これらの関係を用いてプログラムが解を見つける一助である条件を実施することができる。X線を記録する各条件に対しては、k−比率を判断するためにどの元素系列を測定すべきかを選択する。最後に、推定する(適合させる)べきである未知の厚み及び濃度の開始パラメータとして「推測値」を割り当てる。実際の試料に何が起こるかに関する現実的な試験であるために、これらの開始パラメータは、正確に模擬する一般的な試料の場合と同一ものではなく、一般的な選択パラメータであるべきである。
【0055】
適切な1組の条件の選択及び薄膜プログラムの初期化は、オペレータの技能に任せることができることに注意されたい。代替的に、コンピュータアルゴリズムを使用して、電子ビーム散在及びX線発生の物理的現象及びサンプルの構造及び判断される未知の個数を考慮して、適切な選択を行うことができる。
段階115では、適切な予測モデルを用いて、NCの指定条件に対して純元素の平坦な均質なバルク試料から取得する予測X線スペクトルデータを計算する。均質なバルク試料の電子ビーム励起に対しては、正確な理論モデルが準備されている(Peter Duncumb、Ian R.Barkshire、Peter J.Statham共著「電子微小解析の改良型X線スペクトルシミュレーション」、Microsc.Microanal.7、341〜355頁、2001年を参照されたい)。上述の文献(本明細書において引用により組み込まれている)に説明されている方法をこの例において適用する。このモデルでは、放出スペクトル強度を計算して、スペクトルを記録するのに使用する検知システムの効率を考慮する。このようにして、指定条件での純粋なバルク元素の選択放出系列の強度を判断する。実際には、純元素強度は、多層試料中の同じ元素よりも大きく、かつ試料の測定を行う者に対して純元素測定値に及ぼすあらゆる統計上の影響をごく僅かなものとすることができるように、より基準的な純元素データにはより長い取得時間を用いることができる。
【0056】
段階120では、モデルを用いて、NCの指定条件に対して多層試料から取得される予測X線スペクトルデータを計算する。バルク試料の予測に使用するモデルは、既存のモデルと組み合わせて基板上の多層に対して強度を予測することができる(例えば、Pouchou、J.L.及びPichoir、F共著「モデル「PAP」を適用する均質又は層状微容量の定量解析」(1991年)、Heinrich、K.F.J.及びNewbury、D.E.編「電子プローブ定量化」、「Plenum Press」、ニューヨーク、31〜75頁、本明細書において引用により組み込まれている)。
【0057】
この例においては、バルク試料の上述の理論的なモデル(「Oxford Instruments Analytical Limited」の「INCA Energy」製品において実施)を用いて、仮想的バルク試料スペクトルを合成する。合成されたスペクトルのピーク面積により、指定ビーム電流で取った純元素スペクトルに対して薄膜プログラム「Stratagem」により予測されるのと同じk−比率が得られるまで、この仮想的スペクトルの元素濃度及びビーム電流を反復的に調節する。特定の元素に対しては、阻止X線背景強度及びピーク強度の両方は、元素濃度及び膜厚みとほぼ比例しているので、現実のスペクトルと同じピーク面積を有する模擬したバルクスペクトルも、多層試料から現実のスペクトルで達成されるものと類似のものである阻止X線背景を示している。この類似性により、背景除去処理の精度に及ぼす統計計数が適切にモデル化される。段階120で全てのNCの条件に対してこのようにスペクトルを合成する。
【0058】
現実のX線スペクトルの各チャンネルの計数は、ポアソン計数統計に従う。この例においては、このようなポアソン計数統計は、コンピュータ発生乱数を用いてモデル化する。従って、相関していない数列を生成すると、NCのスペクトルの各々における全てのチャンネルに追加される(段階125)。
次に、段階130で、背景を除去してピーク重複を補正するように各スペクトルを処理し(適切な方法は、本明細書において引用により組み込まれている、P.J.Statham著「スペクトルのプレフィルタリングによる最小自乗当て嵌めによる逆畳み込み及び背景除去」、Anal.Chem.49、2149〜2154頁、1977年に説明されている)、所要の元素線系列に対してピーク面積を見つける。
【0059】
k−比率は、「Stratagem」薄膜プログラムの入力に必要である。k−比率は、計算された強度を純元素の強度に対して比率で表すことにより計算する(段階135)。
次に、入力k−比率を用いて薄膜プログラム実行し、NCの条件の各々の全ての未知パラメータに対して反復により解を見つけることができるか否かを確かめる(段階140)。プログラムが収束しなかった場合、警告が出され、かつオペレータは、薄膜に対して新しい組の条件及び初期化を選択することができる(段階105に戻る)。
反復が収束した場合、結果を保存し(段階145)、新しい組の乱数を追加してNCの条件の各々に対して新しい組の入力データが得られるようにすることにより、新しい「インスタンス」を作成する。この「インスタンス」は、別の現実の実験を表し、十分なインスタンスを模擬した時、解析段階150で、全てのインスタンスの計算結果に関する全体的な標準偏差を判断することができる。
【0060】
第2の例示的な方法に従って統計変動を模擬する代替手法を図5に示している。符号付きの参照番号は、図4に類似した段階を示している。これは、図4のものと殆ど同一段階を伴うが、2つの大きな違いがある。第1に、段階125’では、P.J.Statham著「スペクトルのプレフィルタリングによる最小自乗当て嵌めによる逆畳み込み及び背景除去」、Anal.Chem.49、2149〜2154頁、1977年(本明細書において引用により組み込まれている)に説明されている方法を用いて、スペクトル処理により判断するピーク面積の標準偏差を予測する。第2に、これらの標準偏差を用いて、予想相対標準偏差でk−比率に対してガウス分布を有する値を生成するように乱数発生器を調節する(段階135’)。図5の手法により、多くのインスタンスで全体的計算量が低減され、かつ計算速度が上がるが、導出したピーク面積に及ぼすスペクトル処理の影響を予測するには、1組の複雑な計算が必要ではある。起こりそうな百分率でのビーム電流の変動を計数統計による変動に積分で追加して、この系統的誤差源を表すことができる。更に、スペクトル処理から予想される系統的不正確さを推定することができる(例えば、P.J.Statham著「特徴的な線強度をX線スペクトルから抽出時の精度に対する制限」、J.Res.Natl.Inst.Stand.Technol.107、531〜546頁(2002年)を参照されたい)。これらをランダム摂動としてk−比率に追加して、薄膜解析プログラムによって得られる結果に及ぼすスペクトル処理誤差の影響を探究することができる。
【0061】
図4又は5のいずれかの方法において、反復が収束しない場合、これは、構造からのk−比率の予測を「逆転する」ことにより問題が解決することはできないことを意味する。異なる組の測定値及び条件で、問題を解決することができる可能性があり、何らかの経験を有するオペレータは、構成を修正して別の組のインスタンスが成功するか否かを確かめることができる。計算は、対話型の「試行錯誤」手法を可能にするのに十分に速いことが重要である。代替的に、コンピュータアルゴリズムを使用して、自動的に連続した変化を行ってどの組の条件が収束を保証するのかを見出すことができる。
問題を解決する実行可能性が明らかにされた状態で、条件、測定回数、X線スペクトルの取得時間、及び薄膜プログラムの初期化を調節して、特定の総測定時間で実現可能な精度を最適化することができる。
【0062】
本発明の実施をエネルギ分散検出(EDS)システムで取得するX線スペクトルを使用して説明したが、これは、ブラッグ結晶モノクロメータ及び比例計数器検出器を使用して特定の元素輝線から強度を測定する波長分散検出(WDS)システムで取得する測定値に対しても等しく良好に達成することができる。重要な要件は、バルク試料から現実の実験条件下で達成されるものを模擬する方法であって、これは、WDSに対して実証済みである(例えば、本明細書において引用により組み込まれている、C.Fournier、P.F.Staub、C.Merlet、O.Dugne共著「WDSのX線スペクトルシミュレーション:電子ミクロプローブ自動化への用途」、Microsc.Microanal.7(補遺2)、674頁(2001年))。WDS強度がバルク試料上の特定の元素輝線に対して予測することができる場合、EDSに使用するのと同じ技術を用いて、薄膜プログラムにより予測される強度及び対応するk−比率が得られると思われるバルク試料に対して仮想的組成及びビーム現在の設定値を確立することができる。WDSの場合の方が、エネルギ分解能が高いほどピーク重複の可能性が少なくなり、背景補正がごく僅かであることが多いので、統計計算はかなり簡単である。従って、測定k−比率の相対標準偏差は、図5に類似した手法で使用することができる。
【0063】
薄膜プログラム「Stratagem」は、様々な層からの放出強度の高速計算を可能にするために、X線発生の深度分布に対する近似を使用する。コンピュータの速度が増大する時に、電子散乱及びイオン化のモンテカルロシミュレーションのようなX線発生のより明示的なモデルを用いることが可能になる(例えば、本明細書において引用により組み込まれている、P.Karduck及びW.Rehbach共著「電子プローブ微量解析のφ(rho−z)決定におけるトレーサ実験の使用及びモンテカルロ計算」(1991年)、Heinrich、K.F.J.及びNewbury、D.E.編「電子プローブ定量化」、「Plenum Press」、ニューヨーク、191〜217頁を参照されたい)。このような明示的な計算方法で、固有及び制動放射線に適切な断面を使用することにより多層試料に対して強度を直接予測することができる(例えば、本明細書において引用により組み込まれている、R.Gauvin及びE.Lifshin(2002年)共著「真のEDSX線スペクトルのシミュレーションに関して」、顕微鏡法と微量解析、第8巻、補遺2、430〜431頁、2002年を参照されたい)。この場合、EDS又はWDSの分光計効率を用いて、特定のビーム電流の計算放出量を測定X線強度に変換する。第1のインスタンスにおいては、モンテカルロシミュレーションを実行して、一般的なサンプルに対して強度を計算してk−比率を判断する。統計変動を表す適切な摂動の追加後、入力k−比率と合致する未知に対して1組の厚み及び濃度を見つけようとする。モンテカルロシミュレーション処理は、「Stratagem」で用いる解析的深度分布モデリングと全く異なるが、未知に対して「推測値」を反復的に修正する方法は、「Stratagem」で用いるものと同一とすることができる。各新しい推測値で、モンテカルロシミュレーションを実行し、強度を予測して入力k−比率との良好な適合に収束するか否かを確かめる。
【0064】
上述の実施形態では、モデルを用いてX線スペクトルデータを発生し、次に構造ソルバーに挿入する技術を説明した。明らかにしたように、測定k−比率を小さなランダムな量だけ摂動させて解法を反復により試みた場合、解に収束する機能及び判断した結果に関する標準偏差の両方をシミュレーションの繰返しにより確立することができる。この手法には、精度を判断するためにスペクトルを模擬する機能及び複数のシミュレーション適用が必要である。
薄膜モデルは、厚み及び濃度(層変数)を全ての層に対して定めた場合、常に、方程式1で示すように「順」方向でk−比率を予測することができる。これらのk−比率を入力として構造ソルバーに供給し、かつ未知数の開始値を仮想的試料に対応する値に設定した場合、方程式1により、開始値と同一のk−比率が予測され、反復は瞬時に収束する。k−比率のうちの1つだけ(Kj)を少量(例えば1%)増分させて、他のk−比率が不変である場合、反復解を試行した時、k−比率は、Kjを除いて方程式1と一致する。Kjの変化が十分に大きければ、収束の試験は失敗し、反復手順で反復を行って未知の値を調節すべきである。それによってk−比率の予測が変わり、更に別の反復が引き起こされる場合がある。反復が収束しなかった場合、問題は、明らかに不安定なものである。しかし、確かに解に収束した場合、j番目のk−比率の既知の変化デルタ−Kjの各未知層変数Tiの理想的な開始値からの変化デルタ−TiをdTi/dKjとして記録する。この手順を異なるKjに対して繰り返す。全てのKjに対して収束が達成された場合、これは、本方法を組み込むコンピュータプログラムがこの問題を処理することができることを示唆している。測定Kjにおける標準偏差の推測値σiが利用可能であり、かつ全てのKjの統計上の変動が独立したものである場合、計算層変数Tjにおける分散Vjは、全てのjに対して((dTi/dKj2.σi2)の和と推定することができる。更に、系統的誤差が、測定Kj内で発生する可能性がある。例えば、ビーム電流がX線スペクトル取得中に増大した場合、このスペクトルから導出した全てのKjは、同じ割合で増大する。測定Kj内の系統的誤差eiの推測値が利用可能である場合、計算変数Tiの誤差は、全てのjに対して((dTi/dKj).ej)と推定することができる。性能指数は、各誤差源に対して計算することができる。例えば、統計誤差の場合、(Vi/Ti2)の平方根であるTiの最大相対標準偏差により、「最悪の場合」の相対誤差が得られ、性能指数の低い値であれば望ましいであろう。代替的に、全てのTiの平均相対誤差又はある一定の層変数の相対誤差を性能指数に対して選択することができる。同様の性能指数をビーム電流変動のような系統的原因による誤差に対して計算することができる。
【0065】
すなわち、典型的な試料構造を定めることができる場合、1組の実験条件、特にビームエネルギに対しては、問題を解く可能性を試験することができ、かつ1つ又はそれよりも多くの性能指数を計算して結果に及ぼす様々な潜在的誤差源の影響を測定することができる。この手順をいくつかの候補の実験条件で繰り返した場合、1つ又はそれよりも多くの誤差源の影響を最小にする最良の組の条件を判断することができる。誤差源が優位を占めそうである場合、その誤差源の性能指数を最小にする条件は、適切なものである。代替的に、σi及びeiの現実的な値が利用可能である場合、最適である実験条件を判断するために、両方の性能指数の最大値のような関連性能指数の何らかの組合せを用いて最適である実験条件を判断することができる。
【0066】
構造ソルバーにより収束を達成する実行可能性だけが必要である場合、更に別の方法を用いることができる。最初に、真の試料構造を用いて、全てのNCの条件に対して、方程式1から1組のk−比率を予測する。次に、真の値と全てが僅かに異なる未知の層変数T0jに対して、1組の開始推測値と共に構造ソルバーへの入力としてこれらのk−比率を用いる。例えば、これらの開始推測値は、全て、真の値を1%超えるとすることができ、又は依然として数%以内までの最大相対差異を保ちながら乱数を用いて差異を選択することができる。次に、反復性構造ソルバーを起動すると、方程式1でNCの異なる条件に対して入力として供給されるk−比率が予測されるように未知の層変数を調節しようとする。収束を達成することができないか又は未知の層変数のいずれかの出力値が真の値と実質的に異なる場合、これは、構造解析処理にこの特定の組のNC条件を用いることが実行可能ではないので、異なる組の条件を試す必要があることを示している。
【0067】
全ての上述の手法では、反復手順に制限を有するか又は不適切なアルゴリズムを使用するので、反復により解法を判断するために使用するプログラムは、失敗する場合がある。反復が失敗した場合、結果をもたらすために何を変える必要があるかを判断することはユーザには容易なことではない。更に、実行可能性を確立するためには、毎回の反復で完全な組のk−比率を方程式1により計算すべきである多くの反復を備えた構造ソルバールーチンを実行することが必要である。
【0068】
実行可能性を確立するより効率的な方法は、方程式1の数学的な挙動を検査することを伴っている。層変数jに対してまず第1のTj、次に(Tj+デルタ−Tj)を用いた方程式1を用いて2つの計算を行うことにより、k−比率kjの変化デルタ−kjを用いて偏導関数(∂Kj/∂Tj)≒デルタ−kj/デルタ−Tjを推定することができる。(未知変数のみを判断する場合、ビーム電圧E0及び既知の層変数は、方程式1で固定されたままであることになる。)M個のk−比率及びN個の未知数層変数に対しては、偏導関数のMxN個の行列は、層変数空間内の点においてN個の未知数層変数に対して方程式1のモデル関数の「関数行列式」である。従って、この点の小さな近傍では、1次テイラー級数展開は、以下の行列方程式により説明される。
J × ( T - T0 ) = K - K0 方程式2
ここで、K0は、ある一定の層変数値T0により説明される特定の点層変数空間内の特定の点に対して方程式1により予測されたk−比率のベクトルであり、Jは、T0で評価するMxN個の関数行列式であり、Tは、N個の層変数のベクトルであり、Kは、層変数Tに対して方程式1により予測されるM個のk−比率のベクトルである。方程式1を解く反復手順の各段階で、T0は、未知層変数の推測値であり、かつK0は、方程式1からこの推測値に対して予測したk−比率であることになる。反復手順により測定k−比率Kmに近いK0を得ることができた場合、Tの最良の推測値は、以下のような行列形式で示す方程式の解によって得られることになる。
J × ( T - T0 ) = Km - K0 方程式3
M>Nの場合、未知数よりも多い方程式があり、一般的に固有解がない。しかし、残差ベクトルの長さを最小にする「最良適合」解:
| J × ( T - T0 ) - ( Km - K0 ) |
は、特異値分解SVDを用いて見つけることができ(「数値計算レシピ」を参照されたい)、SVDを用いて、MxN行列Jを因数分解すると、
J = U W VT
のようになり、次に、Tの最良適合解が、以下によって得られる。
T - T0 = [V W-1 UT ] ( Km - K0 ) 方程式4
又は、
T - T0 = P × ( Km - K0 ) 方程式5
ここで、Pは、Jの「疑似逆行列」ということがある。この手順は、関数行列式内に少なくともN個の独立した列がある場合に機能する。線形関係が1つ又はそれよりも多くの列間にある場合、それによって独立した列の数が低減される。N個未満の独立列に対しては、1つの固有の最良適合解を見つけることは、もはや不可能であり、従って、問題は解法不能になる。従って、列間の線形関係により、行列Jは「悪い状態」になる(数値計算レシピ)。対角行列Wの要素を降順で取った場合、第N番目に大きい要素と最大要素の比は、「逆条件数」(ICN)、すなわち、「条件数」の逆数になる。ICN=0の場合、関数行列は、「非正則」であり、解法は不可能であり、一方、ICN=1の時、この行列は、完全な状態である。問題が悪い状態である場合、結果は、計算又はk−比率内の小さな誤差の影響を受けることになる。ICNが何らかの閾値、例えば0.1を超える場合、反復は確実に収束する可能性がある。反復が正しい解に近い時に方程式4を解くことはできない場合、一般的に、方程式1を解く方法はない。従って、ビーム電圧の異なる値に対してICNを評価することにより、k−比率を用いたX線解析により問題を解くことができるいずれかのビーム電圧があるか否かを見つけることが可能である。
【0069】
同じ原則は、1つよりも多いビームエネルギでk−比率の測定を行う場合に適用することができる。各E0に対して、方程式1で適切なE0を使用して測定k−比率の偏導関数を評価し、追加の行としてJ行列に加える。次に、ビームエネルギの各組合せにおいてICNを評価し、問題が解法可能である組合せを判断する。多次元検索により、ビームエネルギのどの組合せで問題が解法可能かを見つけることになる。
【0070】
方程式4が解法可能である条件がない場合、問題を解決する唯一の方法は、Jが悪い状態である原因となっている列間の線形関係を除去することである。関連する層変数は、SVD結果を用いて特定することができる(例えば、A.K.Bandyopadhyay他、Int.J.Numer.Model、2005年、18、413〜427頁を参照されたい)。特定された状態で、未知変数の1つ又はそれよりも多くを未決定のままにするのではなく、固定することは可能であろう。問題は、こうして数学的に解法可能になると考えられるが、解は、ここで、この時点で固定である変数に対して選択された値に依存することになる。
【0071】
方程式4が解法可能である条件に対しては、次に、Kmの変動があれば、方程式4で判断されるようなTの変動をもたらすことになる。各Kmjの変動が標準偏差σ1による独立した通常のランダムな偏差である時、Tの各層変数Tiの標準偏差は、j=1からMに対して(Pij2.σj2)の合計の平方根であり、ここで、Pijは、NxM行列P内の行列要素である。これは、測定k−比率内の計数統計による誤差の影響を判断する適切な方法である。例えば、ビーム電流が測定値中に変動する時のように、各Kmjの変動が相関している時には、Tiの誤差は、j=1からMに対してPijの線形和であり、ここで、djは、ビーム電流の変化により発生されたKmの変化である。類似の計算を行ってスペクトル処理内の系統的誤差の影響を推定することができる。この場合、djは、X線スペクトル内のピークの面積の推定に関わるKmの誤差である。性能指数は、各誤差源について計算することができ、例えば、これは、Tjの最大相対誤差又はTjの平均平方誤差とすることができる。ビーム電圧の各値で、又は1つよりも多い条件を用いるビーム電圧の各々の組合せでこの性能指数をプロットすることにより、どの条件又はNCの条件の組で最良の性能指数を生成するかを判断することができる。これは、実質的に、未熟なユーザがX線解析を行って適用上の問題を解決し、かつ最良の解析条件を見つけることができるか否かを確立する一助になる専門システムを提供する。
本発明は、例えば、半導体処理(金属層及び誘電体層)、磁気薄膜、及び触媒化学作用で発生するような厚みが1と100nmの間の層に対する電子ビーム励起X線解析に特殊な用途を見出すものである。
【符号の説明】
【0072】
1、2 上部の2層
3 最下位層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造からのX線の電子ビーム励起を含む提案構造解析処理の実行可能性を判断する方法であって、
i)層の構造及び組成を定める構造データを用いて、1つ又はそれよりも多くの組の処理条件に従って多層構造のX線励起応答を表す予測X線データを発生させる段階と、
ii)前記多層構造に対して提案構造解析処理を行う実行可能性を判断するために、1つ又はそれよりも多くの所定の実行可能性基準に従って前記X線データに対する前記構造データの変更の影響を解析する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記X線データは、前記多層構造における各層の元素組成及び層厚の関数として予測モデルを使用して発生されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
予測モデルを使用して、前記多層構造内の特定の元素に対する固有X線強度応答を表すX線データを発生させることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
段階(ii)は、前記構造データ内の前記層厚及び/又は組成の小さな変化に対する前記予測モデルの応答を解析する段階を含むことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記予測モデルは、近似級数展開として解析されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記予測モデルの挙動が、行列方程式として表され、
前記予測モデルからのX線データ出力が、M個の値のベクトルとして表され、
未知の層厚及び/又は組成が、N個の変数のベクトルとして表され、
前記出力を前記層厚又は組成と関連付ける偏導関数が、MxN次元ヤコビ行列として表される、
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記解析は、得られる残差ベクトルを最小にするために反復技法を使用して行われることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記層厚又は組成に対する前記行列方程式の解法可能性の程度を表す条件数を計算する段階を更に含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記条件数は、実行可能性基準を含む閾値と比較されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
段階(i)において、前記構造データは、各層に対する組成及び層厚を含む名目構造データとして定められ、該名目構造データは、対応する名目X線データを生成し、
段階(ii)において、前記構造データは、修正され、かつ入力X線データ及び構造データを用いて出力構造データとして前記多層構造の各層の前記組成及び厚みを反復的に計算するようになった構造ソルバーの中に前記名目X線データと共に入力される、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
作動中に、前記構造ソルバーは、前記修正された構造データに対するX線データを計算し、該修正X線データを前記名目X線データと比較することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記構造データの修正の前記影響は、該構造データの該修正のために発生された前記X線データを前記名目X線データと比較し、該比較の結果を実行可能性基準と比較することによって解析されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記実行可能性基準は、前記名目X線データと実質的に同一であって前記構造データに適用された前記修正から実質的に独立している対応する予測X線データを生成する出力構造データの固有の組が見出された場合に満たされることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
段階(i)において、前記構造データは、各層に対する組成及び層厚に関する名目構造データとして定められ、該名目構造データは、対応する名目X線データを生成し、
段階(ii)において、前記X線データは、修正され、かつ入力X線データ及び構造データを用いて前記多層構造の各層の前記組成及び厚みを反復的に計算して、出力構造データを生成するようになった構造ソルバーの中に前記名目構造データと共に入力される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記X線データの修正の前記影響は、実行可能性基準に従って前記出力構造データを前記名目構造データと比較することによって解析されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記実行可能性基準は、前記構造ソルバーが、前記入力X線データの修正毎に前記名目X線データと実質的に同一である対応するX線データを有する出力構造データの固有の組を生成する場合に満たされることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
名目構造データから発生された名目X線データの変更は、モンテカルロ法を用いて、前記X線励起を実験的に行うことから予想されるものと同等の集合的な統計分布を有する複数の組のX線データを生成するために該名目X線データに統計分布を適用することによって生成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
段階(ii)において、各組のX線データは、出力構造データを発生させるための反復的構造ソルバーの中に前記名目構造データと共に入力されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記処理は、前記構造ソルバーが、前記X線データの修正毎に前記名目X線データと実質的に同一である対応するX線データを有する出力構造データの固有の組を生成する場合に実行可能と見なされることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
段階(i)は、1つ又はそれよりも多くの組の予測スペクトルデータを発生させる段階を含み、各組は、前記処理条件のそれぞれのものに従って前記構造の前記X線励起応答を表し、
段階(ii)は、発生された各組のスペクトルデータ及び名目構造データを用いて各組の処理条件に対して出力構造データを計算する段階を含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
各スペクトルデータセット内で該スペクトルデータに乱数を追加することによってポアソン計数統計の影響を模擬するために、処理条件の各組に対して段階(i)を数回繰り返す段階を更に含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
段階(i)は、ポアソン計数統計によるX線ピーク面積の統計分布を予測する段階、及び前記スペクトルデータに該統計分布を適用する段階を更に含むことを特徴とする請求項20又は請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記解析内の誤差源を特定する段階、及び各誤差源に対する前記解析処理の感度に性能指数を割り当てる段階を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
いくつかの異なる処理条件の各々に対して方法を繰り返す段階、及び前記性能指数が最小にされるか又は所定の閾値未満である1組の処理条件を選択する段階を更に含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項25】
各処理条件は、異なる電子ビームエネルギ及び/又は異なる検出器幾何学形状を含むことを特徴とする請求項1から請求項24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
X線データの組が、前記電子ビームの電流の変動を表す異なる処理条件に対して発生されることを特徴とする請求項1から請求項25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記処理条件は、前記電子ビーム励起を行うための所定の装置の使用に関連した処理変動を表すことを特徴とする請求項1から請求項26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記X線データは、k−比率の形式であることを特徴とする請求項1から請求項27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記構造データにおける前記層の前記組成及び構造に対する初期値が、既知の値又はユーザ入力値に基づいて選択されることを特徴とする請求項1から請求項28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記層の前記組成及び/又は構造に対するいくつかの値が、方法の間は定数として固定されることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
達成可能な精度の尺度として前記出力構造データの1つ又はそれよりも多くの値に対する標準偏差を計算する段階を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
X線データが、エネルギ分散(EDS)又は波長分散(WDS)システムによって生成されたデータを表すために発生されることを特徴とする請求項1から請求項31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
段階(i)は、物理的電子ビームX線解析システムのコンピュータソフトウエアモデルを使用して行われることを特徴とする請求項1から請求項32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
コンピュータ上で実行された時に請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の方法を行うようになったコンピュータプログラムコード手段、
を含むことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項35】
コンピュータ可読媒体上に組み込まれることを特徴とする請求項34に記載のコンピュータプログラム製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2009−537811(P2009−537811A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510541(P2009−510541)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001803
【国際公開番号】WO2007/132243
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(508340042)オックスフォード インストルメンツ アナリティカル リミテッド (2)
【Fターム(参考)】