説明

揚重装置

【課題】組み立て精度の低い足場であっても、その精度の低さを許容し、組み立て作業や使用時のビームの移動に支障を生じさせない揚重装置を提供する。
【解決手段】ビーム30の両端部を支持するレール用ガーター60は、レール20にスライド可能に取り付けられるガーター本体61と、ビーム30を支持するビーム支持部62と、を備えている。このようなビーム支持部62の回動に伴って、レール20とビーム30の角度が変化する。従って、対向するレール20同士の離間距離が狭くなっている部分があったとしても、ビーム支持部62が回動してレール用ガーター60の位置がずれることで、レール20とビーム30の角度が変化して傾き、ビーム30が傾いた状態にて進行方向への移動を続行することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の周囲に仮設された足場に付加され、建築工事中の部材の移動に使用される仮設的な揚重装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅等の中低層の鉄骨造建物の躯体建方工事では、柱、梁、床パネル、壁パネル等の重量のある部材を所定位置まで移動させる際には、移動(自走)式クレーンを用いるのが一般的である。しかし、建築現場によっては移動式クレーンの使用が困難なことがあり、その際に使用するクレーンとして、例えば特許文献1に記載のような、建物の周囲に仮設された足場で支持させる形式の天井型クレーンの提案がなされてる。このような天井型クレーンを用いることで、厳しい施工条件の下でも手間をかけずに効率よく施工することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61―211297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、足場は高い組み立て精度が求められるものではなく、足場支柱の列の蛇行などによって、対向する足場支柱の間隔が一定ではない場合が往々にしてある。また組み立てた当初は精度が保たれていたとしても、あくまで仮設物である為、その後に外力が加わるなどして精度が低下することもある。従って、足場支柱に取り付けられたブラケットに固定されるレールの間隔も一定とならないことが多く、ビームのボルト穴とサドルボックスから突出したボルトとの位置が合わず固定が困難となることや、仮に組立てができたとしてもビームの移動が困難となることがある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するものであり、組み立て精度の低い足場であっても、その精度の低さを許容し、組み立て作業や使用時のビームの移動に支障を生じさせない揚重装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る揚重装置は、対向する二面の足場のそれぞれに対して取り付けられて互いに対向する一対のレールと、該一対のレールのそれぞれに対しスライド可能に取り付けられた一対のレール用ガーターと、該一対のレール用ガーターに両端部が支持されたビームと、該ビームに対しスライド可能に取り付けられたウィンチと、を備える建物の建築工事中に仮設される揚重装置であって、レール用ガーターは、レールにスライド可能に取り付けられるガーター本体と、ビームを支持するビーム支持部と、を備え、ビーム支持部は、ガーター本体に対して回動可能に取り付けられることを特徴とする。
【0007】
ビームの両端部を支持するレール用ガーターは、レールにスライド可能に取り付けられるガーター本体と、ビームを支持するビーム支持部と、を備えている。また、ビーム支持部は、ガーター本体に対して回動可能に取り付けられている。このようにビーム支持部がガーター本体に対して回動できるため、取付時においてビーム支持部をビームの向きに合わせやすく、レール用ガーターの厳密な位置合わせを不要とし、ビームの設置作業を容易に行うことができる。また、ビーム支持部は、ガーター本体に対して回動可能に取り付けられている。このようなビーム支持部の回動に伴って、レールとビームの角度が変化する。従って、対向するレール同士の離間距離が狭くなっている部分があったとしても、ビーム支持部が回動してレール用ガーターの位置がずれることで、レールとビームの角度が変化して傾き、ビームが傾いた状態にて進行方向への移動を続行することができる。すなわち、組み立て精度が低く、レール同士の離間距離が一定に保たれていない状態であっても、レールの位置や、レール用ガーターに対するビームの固定位置を調整すること無しに、ビームの移動が阻害されることを防止できる。また、仮に、足場のがたつき等により、対向するレールの離間距離が変動して所定の値より大きくなることによって、組み立て後にビームがスムーズに移動しなくなったとしても、足場やレールを組み直すことなく、ビームとレール用ガーターの固定位置の調整を行うだけで、離間距離が大きくなったレールに容易に対応させることができる。以上によって、組み立て精度の低い足場であっても、その精度の低さを許容し、組み立て作業や使用時のビームの移動に支障が生じることを防止できる。
【0008】
また、本発明に係る揚重装置において、一対のレール同士の離間距離が最も大きくなる位置で、ビームの進行方向に対して当該ビームが垂直をなすように、ビーム支持部がビームを支持することが好ましい。少なくとも、レールの離間距離が最も大きくなる位置で、ビームが進行方向に対して垂直をなす状態としておくことにより、他の離間距離が小さい位置では、ビーム支持部が回動してレール用ガーターの位置がずれることにより、ビームがレールに阻害されることなく移動することができる。これによって、ビームは、レールの全領域にわたってスムーズに移動することができる。
【0009】
また、本発明に係る揚重装置において、ビーム支持部は、ガーター本体の上面に回動可能に取り付けられる底板と、底板から互いに平行をなすように起立した一対の起立板と、を備え、ビームは、一対の起立板で側面を挟み込まれて支持されることが好ましい。このような構成により、ビームをビーム支持部に取り付ける際には、起立板でビームの側面を挟み込むようにするだけでよい。更に、レール用ガーターに対するビームの固定位置の調整を行うときも、ビームを起立板で挟みこんだ状態でスライドさせながら調整できるため、ビームの位置調整作業を容易に行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る揚重装置において、ビームは、複数のビーム構成部材の組み合せにより構成されることが好ましい。これによって、少品種(長さのバリエーション)のビーム構成部材にて、多様なレールの離間距離に対応することができ、合理的で運搬性もよい。
【0011】
また、本発明に係る揚重装置において、建物が、所定の平面モジュールを有し所定の部材規格に基づいて建築される規格化建物群に属するものであり、ビーム構成部材が、平面モジュールに基づく長さを有することが好ましい。一対のレールの離間距離のバリエーションのピッチが一定(平面モジュールに等しい値)となるので、保有すべきビーム構成部材も更に少品種に絞り込んだ上で、同一の規格化建物群に属する他の建物に幅広く適用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、組み立て精度の低い足場であっても、その精度の低さを許容し、組み立て作業や使用時のビームの移動に支障が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る揚重装置及びその揚重装置を備えた足場の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る揚重装置の要部を拡大した斜視図である。
【図3】レール用ガーターを下方から見た図である。
【図4】揚重装置をモデル化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る揚重装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る揚重装置1及びその揚重装置1を備えた足場Fの斜視図である。ただし、図1では、足場Fの構成部材は一部省略されている。足場Fは、抱き足場と呼ばれる狭隘な空間に仮設される足場である。足場Fは、鉛直材100及び水平材200を組み合わせることによって構成されており、建物の周りを取り囲むように隣地境界線に沿って三面に渡って仮設されている。足場Fは、互いに対向する二面を構成する第1足場FA及び第2足場FBと、第1足場FAと第2足場FBを連結する第3足場FCを備えている。具体的には、足場Fは、建地、作業床、手摺などによって構成されている。建地は、単管からなる鉛直材100によって構成され、所定間隔で一直線上に配列することによって構成されている。作業床は、例えば、単管からなる水平材200を、所定の高さにおいて、鉛直材100の内側及び外側の二方向からクランプによって抱き合わせるように掛け渡すことによって複数層構成される。手摺は、建地の所定高さ(例えば、作業床から約1.2mの高さ)にクランプを用いて水平材200を掛け渡すことによって構成される。また、足場Fには、その他、剛性を確保する為の斜材(筋交や火打ち)や頭つなぎ材が適宜付加されている。なお、本発明に係る揚重装置が適用される足場は抱き足場には限定されない。枠組足場や楔緊結式足場など、所定のピッチで配列された複数の建地(縦材)を備えた足場全般に適用可能である。
【0016】
揚重装置1は、足場Fに対して取り付けられ、建築工事中に仮設され、建築現場での重量物を持ち上げて移動させる装置である。図2は、本実施形態に係る揚重装置1の要部を拡大した斜視図である。図2では、レール用ガーター60のビーム支持部62が回動した様子を示している。図1及び図2に示すように、揚重装置1は、ブラケット10、レール20、ビーム30、ウィンチ用ガーター40、ウィンチ50、レール用ガーター60を備えている。なお、図1及び図2に示すAの方向を奥行方向Aとし、Bに示す方向を間口方向Bとする。
【0017】
ブラケット10は、足場Fにおける互いに対向する第1足場FA及び第2足場FBの各々に対して固定され、レール20を支持する部材である。ブラケット10は、少なくとも、単管足場に一般的に用いられる足場板支持用ブラケット11に、レール20を載置して固定するための水平板12を取り付けることによって構成されている。足場板支持用ブラケット11は、建地100に沿って延びる縦材13、縦材13の上端から内側に水平に延びる水平材14、縦材13と水平材14とを接続する頬杖状の斜材16、縦材13を建地100に緊結するためのクランプ17、及び水平材14の先端に取り付けられたクランプ18によって構成されている。また、水平板12には、ボルトを挿通するための、レール20の長手方向と直交する方向(図における間口方向B)に延びる一対の長孔12aが形成されている。水平板12は、第1足場FA及び第2足場FBにおける各建地の屋根面より高い位置に、内側に向かって取り付けられている。
【0018】
なお、ブラケット10は、足場板支持用ブラケット11及び水平板12による上部ブラケットのみによって構成されていてもよいが、このような上部ブラケットを補強するための下部ブラケット、及び当該下部ブラケットと上部ブラケットとを連結するブラケット連結材19を更に備えてもよい。具体的に、下部ブラケットは、上部ブラケットにおける足場板支持用ブラケット11と同様な構成を有する足場板支持用ブラケットを、上部ブラケットから所定寸法下の位置に取り付けることによって構成される。また、ブラケット連結材19は、上部ブラケットの先端におけるクランプ18及び、下部ブラケットの先端におけるクランプによって、上端と下端が固定されることによって、上部ブラケットと下部ブラケットとを連結する。
【0019】
レール20は、対向する第1足場FA及び第2足場FBの各々に対して取り付けられて互いに対向し、ビーム30の奥行方向Aの移動をガイドするための一対の部材である。このレール20は、複数のレール20A,20Bを奥行方向Aに沿って連結し、一直線状となるように構成されている。具体的に、レール20は、建地間隔(互いに隣接する二つのブラケット10の間隔)に対応した長さを有する一般部用レール20Aと、前面道路側の端部に配置され、最も前面道路寄りの建地100よりも延伸するように構成された建地端部用レール20Bと、を備えている。各レール20A,20Bは、断面矩形の鋼管からなるレール本体21と、レール本体21をブラケット10の水平板12に固定するための固定片22と、を備えている。固定片22は、レール本体21の軸方向と直交する方向(ここでは間口方向B)に延びており、当該固定片22の底面とレール本体21の底面とが同一平面を形成する。固定片22は、建地端部用レール20Bにおける前面道路側部分に配置されるもの以外は、レール本体21の端部に配置される。なお、図2においては、固定片22は、内側に延びているが、外側に延びていてもよく、あるいは内側と外側の両方に延びていてもよい。レール20A,20Bをブラケット10に取り付ける際は、レール本体21の端部及び固定片22を水平板12の上面に載せ、第1足場FAと第2足場FBにおけるレール20が互いに平行となるように位置調整がなされた後、固定片22の貫通孔と水平板12の長孔12aにボルトを通して締結する。このように、間口方向Bに延びる長孔12aを有する水平板12を用いて固定を行うため、足場Fの精度に影響を受けることなくレール20の固定を行うことができる。なお、本実施形態に係る揚重装置1の作用・効果により(詳細は後述)、一対のレール20同士の離間距離が厳密に一定となるように配置されていなくとも(すなわち、一対のレール20同士が厳密に平行になっていなくとも)ビーム30を移動させることができ、レール20同士の離間距離のばらつきは許容される。なお、本実施形態において、レール20同士の離間距離とは、ビーム30の進行方向に垂直な方向(ここでは、奥行方向Aに垂直な間口方向Bに該当する)における、第1足場FA側のレール20と、第2足場FB側のレール20との間の距離である。
【0020】
ビーム30は、一対のレール用ガーター60に両端部を支持されてレール20に沿って奥行方向Aに移動すると共に、ウィンチ50をウィンチ用ガーター40を介して支持する部材である。ビーム30は、縦長の矩形状の断面を有する鋼管からなる複数のビーム構成部材30A,30Bが連結されることによって構成されている。ビーム30は、少なくとも二つの端部用ビーム構成部材30Aに中間部用ビーム構成部材30Bが適宜付加されて構成されている。建物が、所定の平面モジュールを有し所定の部材規格に基づいて建築される規格化建物群に属するものである場合、ビーム構成部材30A,30Bの長さは、平面モジュール及び通り芯からの外壁面の出寸法に基づいて定められている。具体的には、中間部用ビーム構成部材30Bの長さは平面モジュールの整数倍となっている。また、端部用ビーム構成部材30Aの長さは、平面モジュールの整数倍に対して、建物の外通りの通り芯からブラケット10(レール20)までの離間寸法に応じた寸法を加えた値となっている。隣接する2つのビーム構成部材30A,30Bは、2つのビーム構成部材30A,30Bに跨るように、且つその内面に内接するように装着された連結材にて連結されている。ビーム30の両端側(すなわち、端部用ビーム構成部材30Aの建地100側)の側面30a,30bには、レール用ガーター60との固定用のボルト31を捻じ込むためのタップ孔77が形成されている。
【0021】
ウィンチ用ガーター40は、ウィンチ50を垂下させると共にビーム30に沿って間口方向Bに移動させる部材である。ウィンチ用ガーター40は、ビーム30を取り囲むような断面ロ字状(角筒状)の鋼材である。ウィンチ用ガーター40の内部の三面には、ビーム30の上面と両側面に当接し回転するローラーが各面四個ずつ取り付けられている。ウィンチ50は、部材を吊った状態で昇降させる装置である。ウィンチ50は、一般に流通しているものを適用することができ、吊り上げる部材の重量等に応じて適宜選択されている。
【0022】
レール用ガーター60は、一対のレール20に対してスライド可能に各々取り付けられ、ビーム30を支持して奥行方向Aに移動させる部材である。図2及び図3に示すように、レール用ガーター60は、レール20にスライド可能に取り付けられるガーター本体61と、ビーム30を支持するビーム支持部62と、を備えている。ビーム支持部62は、ガーター本体61に対して回動可能に取り付けられている。従って、ビーム支持部62に両端部が支持されているビーム30は、ガーター本体61(すなわちレール20)に対して回動することが可能である。
【0023】
ガーター本体61は、本体部63と、本体部63の内面に取り付けられたローラー64と、ビーム支持部62の先端側の部分を支持する水平板66と、ウィンチ50の駆動用モータに接続されるケーブル(不図示)を支持するケーブル支持部67と、を備えている。
【0024】
本体部63は、レール20に沿って延びる略断面コ字状の鋼材であり、当該レール20の上面及び両側面を取り囲むように上面板63A、側面板63B、側面板63Cを備えている。ローラー64は、本体部63の内部の三面に対してそれぞれ四個ずつ取り付けられている。具体的には、本体部63の内部には、レール20の上面と当接して回転するローラー64A、レール20における足場Fの内側に位置する側面と当接して回転するローラー64B、レール20における足場Fの外側に位置する側面と当接して回転するローラー64Cがそれぞれ四個ずつ配置されている。
【0025】
水平板66は、上面66aが本体部63の上面板63Aの上面63aと同一平面を形成するように、側面板63Bの上端より足場Fの内側へ向かって延びている。水平板66は、ビーム支持部62がガーター本体61に対して垂直に配置された状態で、ビーム支持部62の先端部分と一致するような形状及び配置とされている。水平板66の下面側は、側面板63Bに設けられた補強部材68によって補強されている。ケーブル支持部67は、本体部63の上面63aにおける長手方向の一端側から上方に延びる鋼材によって構成されている。ケーブル支持部67の上端部分には、ケーブルを挿通させて支持するための貫通孔67aが形成されている。
【0026】
ビーム支持部62は、ガーター本体61の上面63aに回動可能に取り付けられる底板71と、底板71から互いに平行をなすように起立した一対の起立板72,73と、を備える断面コ字状の鋼材である。底板71は、回動軸74を介してガーター本体61の本体部63に回動可能に連結され、足場Fの内側へ向かって延びる長方形状の板部材である。起立板72,73は、底板71の幅方向における両縁部から上方へ向かって延びる板部材である。
【0027】
回動軸74は、本体部63の上面板63Aにおける長手方向及び幅方向の中央位置において上下方向に延びている丸棒状の部材である。回動軸74は、上端部が底板71に固定されており、下端部が本体部63の上面板63Aに回動可能に支持されていてもよく、あるいは、上端部が底板71に回動可能に支持されており、下端部が本体部63の上面板63Aに固定されていてもよい。これによって、底板71すなわちビーム支持部62は、底板71の底面がガーター本体61の上面63a及び水平板66の上面66aと当接した状態にて、回動軸74を中心として回動する。底板71の底面と当接する上面63a(回動軸74付近の領域)及び上面66aには、ビーム支持部62の回動を滑らかにするため、グリースなどの潤滑材が塗布されることが好ましい。
【0028】
ビーム支持部62は、起立板72,73でビーム30の両側面30a,30bを挟み込むようにして支持することができる。また、起立板72,73には、ビーム30を締結するボルト31を挿通させるための、水平方向に延びる長孔76が形成されている。この長孔76は、互いに平行になるように上下方向に一対形成されている。また、ビーム30の側面30a,30bには、起立板72,73の長孔76のそれぞれの高さ位置に一致するように、タップ孔77が複数形成されている。ビーム30をビーム支持部62に取り付ける際は、ビーム30の側面30a,30bをビーム支持部62の起立板72,73で挟み込み、タップ孔77と起立板72,73の長孔76の位置をあわた上でタップ孔77にボルト31を螺入させることによって、ビーム30がレール用ガーター60に緊結される。また、ボルト31を若干緩めることで一対のレール20同士の離間距離に応じて、ビーム30とレール用ガーター60との位置関係の調整が可能である。以上のような構成により、ビーム30は、ビーム支持部62の回動に伴って、ガーター本体61(すなわちレール20)に対して回動することが可能となる。従って、対向するレール20の離間距離が狭まっている部分があったとしても、いずれかのレール用ガーター60のビーム支持部62が回動してビーム30とレール20のなす角度が変化することで、対向するレール20の離間距離を矯正することなくビーム30が移動することができる(例えば、図4の(a)に示すBM2の状態)。また、作業中に足場Fががたつくことでレール20同士の離間距離が大きくなることでビーム30の移動が阻害される場合も、ボルト31を緩めてビーム30とレール用ガーター60の固定位置を調整するだけで、容易にレール20同士の離間距離に対応させることができる。
【0029】
ビーム支持部62は、一対のレール20同士の離間距離が最も大きくなる位置で、ビーム30の進行方向(ここでは、奥行方向A)に対して当該ビーム30が垂直をなすように、ビーム30を支持する(例えば、図4の(a)において実線で示されるビーム30の状態)。これは、レール20同士の離間距離の最大値と、一対のレール用ガーター60同士の離間距離が同じとなった状態である。これによって、レール20における全領域において、ビーム30は停止することなく進行方向に移動することができる。なお、一対のレール20同士の離間距離が最も大きくなる位置において、ビーム30がレール20に対して傾くように支持してもよい。これは、レール20同士の離間距離の最大値よりも、一対のレール用ガーター60同士の離間距離の方が大きい状態である。このような場合も全領域においてビーム30は停止することなく移動することができる。なお、ここでのレール用ガーター60同士の離間距離とは、ビーム30及びレール用ガーター60をレール20から外して、ビーム30を進行方向と垂直になるように(ビーム30が間口方向Bと平行になるように)並べたと仮定したときにおける、第1足場FA側のレール用ガーター60と、第2足場FB側のレール用ガーター60との間の距離であるものとする。
【0030】
揚重装置1におけるビーム30の奥行方向Aへの移動とウィンチ用ガーター40の間口方向Bへの移動は、作業者の手動によって行うことができる。例えば、荷物がウィンチ50の紐に吊られているときは、荷物を直接引くことによって、また、荷物が吊られていないときは、ウィンチ50の紐を引くことによって、ビーム30とウィンチ用ガーター40を移動させることができる。なお、ビーム30の奥行方向Aへの移動とウィンチ用ガーター40の間口方向Bへの移動のうち、何れか一方、あるいは両方をモーター駆動による移動としてもよい。
【0031】
次に、本実施形態に係る揚重装置1の組み立て方法の一例について説明する。
【0032】
まず、建て方工事に先行して足場を仮設する先行足場工法にて、前面道路側の面以外の三面について、通常通り足場Fを組み立てる。ブラケット10における上部ブラケットと下部ブラケットを、前面道路に直交する第1足場FA及び第2足場FBにおいて配列された建地100の所定の高さ(建物と干渉しない高さ)にブラケット10を取り付ける。このとき、ブラケット10の突出方向が足場Fの内側となるように、且つ建地100の配列方向と直交するように取り付ける。上部ブラケットと下部ブラケットとを、ブラケット連結材19にて連結する。第1足場FAと第2足場FBのいずれか一方側について、互いに隣接するブラケット10間にレール20A,20Bを架け渡し、水糸を用いて一直線状となるように位置調整をした後に、固定片22と水平板12とをボルトにて締結し、レール20を固定する。他方側については、互いに隣接するブラケット10間にレール20A,20Bを架け渡し、既に固定された一方側のレール20との間で所定の離間距離(このとき、厳密な寸法調整は必要なく、おおよその調整でもよい)となるように位置調整をした後に、固定片22と水平板12とをボルトにて締結し、レール20を固定する。
【0033】
ブラケット10に固定した一対のレール20のそれぞれに対し、レール用ガーター60を載置する。また、別途、所定の長さとなるように複数のビーム構成部材30A,30Bを連結しビーム30を組み立て、ビーム30にウィンチ用ガーター40を装着しておく。
【0034】
次に、ビーム30とレール用ガーター60の位置調整を行う。具体的には、ビーム30の長手方向とレール20の長手方向とが直交するようにレール用ガーター60の位置を調整する(対向する建地100の位置を目安にする)。その状態で、ビーム30をチェーンブロック等を用いて吊り上げて、レール用ガーター60のビーム支持部62に嵌め込み、ボルト31にて両者を締結する。なお、ビーム30に合わせてビーム支持部62を回動させて微調整することで、ビーム30の嵌め込み作業を容易に行うことができる。ビーム30を嵌め込んで締結する際、(両方のビーム支持部62において、あるいは一方のビーム支持部62において)ボルト31を緩く締めて仮締結とすることで、レール用ガーター60とビーム30との位置を調整可能としておく。その状態でビーム30を奥行方向に移動させる。このとき、対向するレール20同士の離間距離が一定の箇所においてはそのまま移動し、離間距離が小さくなってゆく箇所においては、ガーター本体61に対してビーム支持部62が回動することによって、ビーム30のレール20に対する角度が変化した状態で、奥行方向Aへ移動する。一方、離間距離が大きくなってゆく箇所においては、レール用ガーター60がレール20に引っ掛かり、ビーム30の移動が停止する。ビーム30が停止したときは、レール20の広がりに合わせてレール用ガーター60のビーム支持部62とビーム30との締結位置を調整し、再度移動を行い、再びビーム30が停止したときは再度調整を行う。このような作業をレール20の全領域にわたって行うことで、ビーム支持部62とビーム30との締結位置は、一対のレール20同士の離間距離が最も大きくなる位置に対応した配置となる。具体的には、一対のレール20同士の離間距離が最も大きくなる位置で、ビーム30の進行方向(本実施形態では奥行方向A)に対して当該ビーム30が垂直をなすように、ビーム支持部62がビーム30を支持するような配置となる。この状態で、ボルト31を本締結することによって、レール用ガーター60とビーム30とを固定する。
【0035】
このようなビーム30とレール用ガーター60の位置調整について、図4(a)に示す例に沿って説明する。なお、図4は、本実施形態に係る揚重装置1をモデル化したものであり、理解のため、レール20の離間距離のばらつきやビーム30の傾きは実際のものよりも誇張されて示されている。図4(a)に示すように、ビーム30の移動開始においては一対のレール20A同士の離間距離に合わせてビーム30とビーム支持部62とを仮締結し、図中Aに示す方向へビーム30を移動させる。レール20Aに係る領域では、レール20同士の離間距離が大きくなるため、レール20Aとレール20Aの接続部分付近でビーム30が停止する。この時点で、レール20Aの広がりに合わせてビーム支持部62とビーム30との締結位置の調整を行う。例えば、次のレールの接続部分、すなわちレール20Aとレール20Aの接続部分におけるレール20の離間距離に合わせて、ビーム支持部62とビーム30との締結位置の調整を行う(図4(a)において実線で示されるビーム30の状態とする)。調整後、再びビーム30を移動させる。レール20Aに係る領域では、レール20同士の離間距離が小さくなるため、仮締結部分の位置は移動することなく、ビーム30が図中BM2に示すような状態となり、レール20に対して傾いた状態で移動する。ビーム30の移動が終了したら、仮締結部分を本締結し、ビーム30とビーム支持部62とを固定する。このような方法によれば、ビーム30とビーム支持部62との締結位置の調整を数回行うだけで調整作業か完了する。
【0036】
あるいは、次のような位置調整を行ってもよい。ビーム30の移動開始の時点で、レール20同士の離間距離が大きくなることを見越して、ビーム30がレール20に対して傾いた状態にてビーム30とビーム支持部62とを本締結し、固定しておく。この状態にてビーム30を移動させた場合、見越していた離間距離よりもレール20の離間距離が小さい領域では、ビーム支持部62が回動することによって、ビーム30は停止することなく移動することができる。一方、見越していた離間距離よりもレール20の離間距離が大きくなる位置では、ビーム30の移動が停止する。例えば、図4(a)においてBM1に示すような状態にて、ビーム30の移動が停止する。ビーム30が停止したら、ビーム30とビーム支持部62との締結を緩めて、レール20Aとレール20Aとの接続位置まで移動させ、当該位置に合わせてビーム30とビーム支持部62とを本締結して固定する。再びビーム30を移動させ、再度ビーム30が停止した場合は、再び位置調整をする。このような方法によれば、移動中にビーム30が一度も停止しなければ、仮締結の状態を経ることなく、初めにビーム30とビーム支持部62とを本締結しておくだけで作業が完了する。また、移動中にビーム30が数回停止したとしても、数回程度のボルトの締めなおしのみで調整作業か完了する。
【0037】
また、調整作業開始時におけるビーム支持部62とビーム30とを緩く仮締結し、レール20の離間距離が大きくなるに伴って、仮締結の位置が外側へ移動する状態としておく場合は、次のような調整を行うことも可能である。具体的には、ビーム支持部62とビーム30とを仮締結しておき、ビーム30を奥行方向に移動させる。このとき、対向するレール20の離間距離が大きくなっていく箇所においては、レール用ガーター60との仮締結部分が外側へ移動して一対のレール用ガーター60同士の間の距離が大きくなる。一方、対向するレール20の離間距離が小さくなってゆく箇所においては、ガーター本体61に対してビーム支持部62が回動することによって、仮締結部分の位置は移動することなく、ビーム30のレール20に対する角度が変化して、奥行方向Aへ移動する。このような移動をレール20の全領域にわたって行うことで、最終的な仮締結部分の位置は、一対のレール20同士の離間距離が最も大きくなる位置に対応した配置となる。具体的には、一対のレール20同士の離間距離が最も大きくなる位置で、ビーム30の進行方向(本実施形態では奥行方向A)に対して当該ビーム30が垂直をなすように、ビーム支持部62がビーム30を支持するような配置となる。この状態で、ボルト31を本締結することによって、レール用ガーター60とビーム30とを固定する。
【0038】
このような位置調整を図4(a)に示す例に沿って説明すると以下のようになる。図4(a)に示すように、ビーム30の移動開始においては一対のレール20Aでの離間距離に合わせてビーム30とビーム支持部62とを仮締結し、図中Aに示す方向へビーム30を移動させる。レール20Aに係る領域では、レール20同士の離間距離が大きくなるため、図中BM1で示すような状態となり、仮締結部分の位置が徐々に外側へ移動する。その結果、レール20の離間距離が最も大きくなるレール20Aとレール20Aとの接続位置における離間距離に合わせて、仮締結部分の位置が移動する。次に、レール20Aに係る領域では、レール20同士の離間距離が小さくなるため、仮締結部分の位置は移動することなく、ビーム30が図中BM2に示すような状態となり、レール20に対して傾いた状態で移動する。ビーム30の移動が終了したら、仮締結部分を本締結し、ビーム30とビーム支持部62とを固定する。このような方法によれば、ビーム30とビーム支持部62とを仮締結した後は、移動完了後に一回だけ本締結を行えばよい。
【0039】
ビーム30とレール用ガーター60との位置調整及び固定が完了した後、ウィンチ50をウィンチ用ガーター40に装着する。ウィンチ用の電源コードを適宜ワイヤー、ワイヤークリップ等を用いて、配線する。以上によって、揚重装置1の組み立てが完了する。
【0040】
ここで、比較のために、従来の揚重装置の組み立て方法について述べる。従来の揚重装置においては、ビーム支持部がガーター本体に固定され、回動することができない。また、ブラケットは、本実施形態に係る水平板12のような長孔12aを有する水平板を有していない。従って、従来の揚重装置の組み立て時においては、レールをブラケットに固定するときに、レール同士の離間距離が全領域にわたって一定に保たれるように(すなわち、レール同士を全領域にわたって平行に保つ)位置調整を行う必要がある。その後、ビームをレールに沿って移動させることで平行度の確認作業を行う。このとき、ビームが停止した部分で、再びレールの位置合わせを行う。しかしながら、ブラケットを取り付ける足場自体が仮設物であるため、位置精度が低く、レールを平行にすることが困難である。また、ビームが停止するたびに、再度レールの位置合わせ作業をやり直す必要がある。このように、従来の揚重装置にあっては、組み立て作業の作業負担が大きくなっていた。更に、組み立て後、作業中に足場ががたついてレールの位置がずれたときは、再度調整し直す必要もある。
【0041】
また、従来の揚重装置に対して、本実施形態における長孔12aを有する水平板12を備えたブラケット10を適用した場合、組み立て方法は次のような手順となる。まず、レールをブラケットに固定する際は、一対のレールのうち、一方のレールのみについて本締結によってブラケットに固定しておき、他方のレールは仮締結としておき、レールがブラケットに対してスライド可能な状態としておく。この状態で、ビームを奥行方向に移動させる。この作業により、対向するレールの離間距離が所定の値より大きくなっている部分については、仮締結している側のレールが内側に移動して離間距離が矯正される。また、対向するレールの離間距離が所定の値より小さくなっている部分については、仮締結している側のレールが外側に移動することで離間距離が矯正される。レールの離間距離が矯正された後、仮締結されていた部分を本締結し、ビームとレール用ガーターとを固定する。しかしながら、このような手順では、他方側のレールについて、複数のブラケットの全てに対して一度仮締結とし、ビームを移動させた後、更に全てのブラケットに対して本締結を行う必要がある。更に、組み立て後、作業中に足場ががたついてレールの位置がずれたときは、再度調整し直す必要もある。これに対して、本実施形態に係る揚重装置1の組み立て方法においては、おおよその配置でレール20をブラケット10に固定しておくことができ、位置調整の作業も、ビーム30とビーム支持部62との仮締結及び本締結を一回、または数回行うだけでよく、更には本締結のみを一回行うだけで完了とできる場合もある。このように、本実施形態に係る揚重装置1では、組み立て作業の作業負担を大幅に低減することができる。
【0042】
次に、本実施形態に係る揚重装置1の作用・効果について説明する。
【0043】
本実施形態に係る揚重装置1において、ビーム30の両端部を支持するレール用ガーター60は、レール20にスライド可能に取り付けられるガーター本体61と、ビーム30を支持するビーム支持部62と、を備えている。また、ビーム支持部62は、ガーター本体61に対して回動可能に取り付けられている。このようにビーム支持部62がガーター本体61に対して回動できるため、取付時においてビーム支持部62をビーム30の向きに合わせやすく、レール用ガーター60の厳密な位置合わせを不要とし、ビームの設置作業を容易に行うことができる。また、ビーム支持部62は、ガーター本体61に対して回動可能に取り付けられている。このようなビーム支持部62の回動に伴って、レール20とビーム30の角度が変化する。従って、対向するレール20同士の離間距離が狭くなっている部分があったとしても、ビーム支持部62が回動してレール用ガーター60の位置がずれることで、レール20とビーム30の角度が変化して傾き、ビーム30が傾いた状態にて進行方向への移動を続行することができる。すなわち、組み立て精度が低く、レール20同士の離間距離が一定に保たれていない状態であっても、レール20の位置や、レール用ガーター60に対するビーム30の固定位置を調整すること無しに、ビーム30の移動が阻害されることを防止できる。更に、上述のように、組み立て作業の負担も、従来に比べて大幅に軽減することができる。また、仮に、足場Fのがたつき等により、対向するレール20の離間距離が変動して所定の値より大きくなることによって、組み立て後にビーム30がスムーズに移動しなくなったとしても、足場Fを組み直すことなく、ビーム30とレール用ガーター60の締結部分を緩めて位置調整を行うことで、離間距離が大きくなったレール20に容易に対応させることができる。以上によって、組み立て精度の低い足場Fであっても、その精度の低さを許容し、組み立て作業や使用時のビームの移動に支障が生じることを防止できる。
【0044】
また、本実施形態に係る揚重装置1において、一対のレール20同士の離間距離が最も大きくなる位置で、ビーム30の進行方向に対して当該ビーム30が垂直をなすように、ビーム支持部62がビーム30を支持している。少なくとも、レール20の離間距離が最も大きくなる位置で、ビーム30が進行方向に対して垂直をなす状態としておくことにより、他の離間距離が小さい位置では、ビーム支持部62が回動してレール用ガーター60の位置がずれることにより、ビーム30がレール20に阻害されることなく移動することができる。これによって、ビーム30は、レール20の全領域にわたってスムーズに移動することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る揚重装置1において、ビーム支持部62は、ガーター本体61の上面に回動可能に取り付けられる底板71と、底板71から互いに平行をなすように起立した一対の起立板72,73と、を備え、ビーム30は、一対の起立板72,73で側面30a,30bを挟み込まれて支持されている。このような構成により、ビーム30をビーム支持部62に取り付ける際には、起立板72,73でビーム30の側面30a,30bを挟み込むようにするだけでよい。更に、レール用ガーター60に対するビーム30の締結位置の調整を行うときも、ビーム30を起立板72,73で挟みこんだ状態でスライドさせながら調整できるため、ビーム30の位置調整作業を容易に行うことができる。
【0046】
また、本実施形態に係る揚重装置1において、ビーム30は、複数のビーム構成部材30A,30Bの組み合せにより構成されている。これによって、少品種(長さのバリエーション)のビーム構成部材にて、多様なレールの離間距離に対応することができ、合理的で運搬性もよい。
【0047】
また、本実施形態に係る揚重装置1において、建物が、所定の平面モジュールを有し所定の部材規格に基づいて建築される規格化建物群に属するものであり、ビーム構成部材30A,30Bが、平面モジュールに基づく長さを有している。一対のレール20の離間距離のバリエーションのピッチが一定(平面モジュールに等しい値)となるので、保有すべきビーム構成部材も更に少品種に絞り込んだ上で、同一の規格化建物群に属する他の建物に幅広く適用することができる。
【0048】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。例えば、上述で説明した足場Fは一例に過ぎず、大きさや形状は建物に合わせて適宜変更可能である。また、それに合わせて揚荷装置の大きさ(例えば、レール20Aやビーム30Bの本数)も変更可能である。また、レール20やビーム30が一本の部材から構成されていてもよい。
【0049】
また、図4(b)に示すように、レール用ガーター60のビーム支持部62は、ガーター本体61に対して回動可能であることのみならず、スライド可能としてもよい。例えば、回動軸74が、ビーム30の長手方向に延びるスライド溝80に沿ってスライド可能な構成としてもよい。ただし、スライド可能な構成とした場合、ビーム30が停止しているときに、ビーム30の一端側の位置が一箇所に定まっていても、他端側においてはビーム支持部62がスライド可能であるため、図4(b)において実線で示すビーム30の位置やBM3で示す位置やBM4に示す位置へも移動可能な状態となる。このように、ビーム30の停止状態においても、ビーム30がふらつく可能性がある。一方、ビーム支持部62が回動のみ可能であり、スライド移動はしない構成とした場合は、例えば、図4(a)に示すように、ビーム30一端側の位置が定まっていれば、他端側の位置も一箇所に定まり、ビーム30に外力をかけない限り移動しない。従って、ビーム30の停止時におけるふらつきを防止できる。
【符号の説明】
【0050】
1…揚重装置、20…レール、30…ビーム、30A,30B…ビーム構成部材、50…ウィンチ、60…レール用ガーター、61…ガーター本体、62…ビーム支持部、71…底板、72,73…起立板、F…足場。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する二面の足場のそれぞれに対して取り付けられて互いに対向する一対のレールと、該一対のレールのそれぞれに対しスライド可能に取り付けられた一対のレール用ガーターと、該一対のレール用ガーターに両端部が支持されたビームと、該ビームに対しスライド可能に取り付けられたウィンチと、を備える、建物の建築工事中に仮設される揚重装置であって、
前記レール用ガーターは、
前記レールにスライド可能に取り付けられるガーター本体と、
前記ビームを支持するビーム支持部と、を備え、
前記ビーム支持部は、前記ガーター本体に対して回動可能に取り付けられることを特徴とする揚重装置。
【請求項2】
前記一対のレール同士の離間距離が最も大きくなる位置で、前記ビームの進行方向に対して当該ビームが垂直をなすように、前記ビーム支持部が前記ビームを支持することを特徴とする請求項1記載の揚重装置。
【請求項3】
前記ビーム支持部は、
前記ガーター本体の上面に回動可能に取り付けられる底板と、
前記底板から互いに平行をなすように起立した一対の起立板と、を備え、
前記ビームは、前記一対の起立板で側面を挟み込まれて支持されることを特徴とする請求項1または2記載の揚重装置。
【請求項4】
前記ビームは、複数のビーム構成部材の組み合せにより構成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の揚重装置。
【請求項5】
前記建物が、所定の平面モジュールを有し所定の部材規格に基づいて建築される規格化建物群に属するものであり、
前記ビーム構成部材が、前記平面モジュールに基づく長さを有することを特徴とする請求項4記載の揚重装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−92537(P2012−92537A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239412(P2010−239412)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】