換気制御装置
患者の気道に呼吸用気体流を供給する状態依存型気道陽圧装置(50)を設ける。状態依存型気道陽圧装置は、呼吸用気体の加圧流を発生させる加圧流モジュールと、加圧流モジュールに連結されかつ患者の気道に呼吸用気体流を伝達する患者回路(56)とを備える。状態依存型気道陽圧装置は、患者の呼吸パターン特性を監視するセンサ(61,62)と、センサに接続される制御装置とを備え、制御装置は、呼吸パターン特性が上限閾値を超えるとき、吸気中の二酸化炭素割合を増加し、呼吸パターン特性が下限閾値未満のとき、自動制御換気を実施する。監視する患者の呼吸パターン特性に基づき、上限閾値と下限閾値を変更する。
【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)の規定に基づいて、2006年3月20日に出願された米国仮特許出願第60/784,127号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、様々な種類の睡眠呼吸障害の治療、詳細には、睡眠時呼吸障害の治療に適する状態依存型気道陽圧装置に関連する。
【背景技術】
【0003】
睡眠時呼吸障害(SDB)は、患者(被験者又は使用者)に対する重要な臨床結果を有する共通の状態である。医者及び他の医療専門家は、睡眠時呼吸障害が純粋な中枢性無呼吸(無呼吸動作により生じる)と、純粋な閉塞性無呼吸(上気道構造に起因する)との間に発症する連続的症状であることを示唆した。閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)は、解剖学的な構造不全により睡眠時に上気道が弾性復元せず、睡眠時に上気道が反復して圧潰する症状として特徴付けられる。これにより、呼吸空気流の減少、低酸素血症(血液中酸素レベル減少)、高炭酸血症(二酸化炭素CO2循環量増加)及び睡眠からの覚醒等の症状が生じ、覚醒すれば、患者は、呼吸可能な安定気道に回復する。しかしながら、睡眠時呼吸障害の病態生理(病気の発生過程)が上気道の圧潰のみに限らないことを示す新たなデータも存在する。
【0004】
横隔膜及び/又は胸の筋収縮の活動により、酸素O2が豊富でかつ二酸化炭素CO2が不足する空気が肺に供給されて、肺に戻る脱酸素化した二酸化炭素CO2の豊富な血液中の二酸化炭素CO2は、その濃度勾配により血液から肺胞中に受動的に拡散すると共に、その濃度勾配により酸素O2が肺胞から血液中に拡散する呼吸動作が行われる。血液中に含まれる二酸化炭素量の酸素交換負担量に応じて呼吸動作を行うネガティブフィードバックにより、呼吸が調整される。ネガティブフィードバック生体代謝系により制御される主可変数は、炭酸ガス分圧PCO2として測定される血流中の二酸化炭素CO2値である。化学的環境内の変化によって活性化され、神経インパルスを生じさせる細胞である中枢性化学受容体と、末梢性化学受容体の炭酸ガス分圧PCO2が増加すると、血液の換気代償作用が増加(即ち、換気により体内から二酸化炭素CO2が除去される)され、前記化学受容体の炭酸ガス分圧PCO2が減少すると、血液の換気代償作用が減少される。このように、血液内の換気を制御して、前記化学受容体の炭酸ガス分圧PCO2が生理的範囲内に維持される。ネガティブフィードバック生体代謝系が危殆に瀕すると、その後、所与の換気妨害(例えば、増加換気による睡眠からの覚醒)が存在すると、生じる換気行為は、減衰されず増幅されることがある。これにより、(上部気道の虚脱を殆ど治療する必要のない睡眠時呼吸障害の一種である)中枢性無呼吸による過呼吸症を生じることがある。
【0005】
脈管構造により相互に連結されるコンパートメント(脳コンパートメント、肺コンパートメント等)の生体系として呼吸動作生体系をモデル化できる。前記コンパートメント間の血流を通じて、炭酸ガスが流動する。設備コンパートメントは、換気と肺内の炭酸ガス分圧PCO2との間の入力-出力特性を示し、肺と、人体組織との2つの副コンパートメントからなる。非線形一次微分方程式体系として設備を示すことができるが、プラント利得(plant gain:肺毛細血管内での炭酸ガス分圧変化)の概念を使用して、設備を単純化することができ、プラント利得は、換気変化に対する肺胞内の炭酸ガス分圧PACO2の変化(ΔPACO2/Δ換気)を示す。室内空気の状態では、プラント利得は、所定の換気増加に対する炭酸ガス分圧PACO2の減少量(これによる血液と肺胞との間の二酸化炭素CO2の濃度勾配の増加量)を決定する。このように、肺胞内の二酸化炭素CO2濃度を増加することにより、換気による炭酸ガス分圧PACO2の減少を制限(即ち、二酸化炭素CO2濃度勾配を低減)して、プラントコンパートメントの利得を低下させる。換気制御の全利得は、全コンパートメント利得の積であるから、プラント利得を低下させると、システム全体のループ利得(loop gain:計算式=プラント利得×コントローラ利得[化学受容体での炭酸ガス分圧変化]×ミキシング利得[肺毛細血管から化学受容体で検知するまでの混合変化]で示され、ループ利得が上昇すると、換気制御特性が悪化する)が減少して、所与の疾患に対する反応が低下する。
【0006】
適切な圧力に滴定されるとき、マスク等の患者界面体を通じて供給される気道陽圧により、閉塞性睡眠時無呼吸症を効果的に治療でき、多くの場合、睡眠体系が改善されることが多数の研究により、証明された。また、閉塞性睡眠時無呼吸症を治療する有効な臨床的利点を示すデータもある。しかしながら、治療法を殆ど厳守せず(即ち、供給される持続気道陽圧[CPAP]下での睡眠継続時間が目標値未満)、治療間に著しく残留する睡眠時呼吸障害は、負の臨床結果となろう。
【0007】
チェーンストークス呼吸症(CSR)は、化学的な呼吸刺激物質の感度が過敏な患者に見られる睡眠時呼吸障害の他の症例である。チェーンストークス呼吸症は、通常心不全を伴うが、ある神経病学的状態の共存症の可能性もある。図1は、典型的なチェーンストークス呼吸症(CSR)の呼吸気体流量パターン30のグラフを示し、このグラフは、高呼吸動作(過呼吸)36と、低呼吸動作(呼吸低下又は無呼吸)38とが定期的に反復される期間を含み、呼吸が周期的に漸増する期間32と、呼吸が周期的に漸減する期間34とが並存する点に特徴がある。全体を符号40で図1に示す典型的なチェーンストークス周期は、約1分間持続し、患者のピーク(最大)呼吸流量が数回の呼吸周期にわたり増加する逓増変化領域(矢印A)と、患者のピーク呼吸流量が数回の呼吸周期にわたり低下するピーク流量の逓減変化領域(矢印B)とにより特徴付けられる。睡眠障害は、動脈中の酸素(PO2)が周期的に不飽和となるのみならず、心臓血管系、特に心臓にストレスを与える。過呼吸は、覚醒を生じて、十分な睡眠が得られないことが多い。
【0008】
中枢性無呼吸の検出時に、非侵襲性機械換気を供給しかつ瞬間ピーク空気流量が適合閾値未満に低下したときに、換気を補助できる適応アルゴリズムを使用して、低呼吸動作状態間に換気量を増加することにより、チェーンストークス呼吸症を大幅に低減し又は更に除去できることを示す新たなデータもある。
【0009】
二酸化炭素CO2の再吸入を促進する(即ち、プラント利得を減少する診療法)実験室内又は二酸化炭素CO2の再呼吸を推進する増設されたデッドスペース内でチェーンストークス呼吸症を大幅に減少しかつ更には除去できる別の研究が他の研究者から発表された。図2は、ロレンジ・フィルホ・ジー、ランキン・エフ、ビエス・アイ、ブラッドリー・ティー・ディー著、米国雑誌「呼吸と臨界治療医療薬(1999年)」159:1490〜1498頁に記載される「心不全を患うチェーンストークス呼吸症患者が吸入する二酸化炭素と酸素の効果」からの引用であり、参照することによりそれらの全内容を本明細書の一部とするが、この雑誌は、空気呼吸(試料A)と比較して、二酸化炭素CO2の吸入(試料B)によるチェーンストークス呼吸症と、中枢性無呼吸との解消を示す。図2に示すように、脳波図(EEG)、顎下筋電図(EMG)、周期換気量(VT[安静又は通常の呼吸状態での吸気と呼気の量])、酸素飽和度(SaO2)、周期二酸化炭素終末割合(FETCO2)及び経皮性二酸化炭素分圧(PtcCO2)を含む二酸化炭素CO2と、酸素O2との吸入効果を表す様々な測定値が研究から得られた。
【0010】
二酸化炭素CO2の再呼吸を促進する低流量持続気道陽圧による治療目的の実験は、少数の外来患者には成功であった。ルマースら名義の下記特許文献1は、CO2の再呼吸を促進して中枢性無呼吸を治療する改良型持続気道陽圧(CPAP)装置を開示し、参照することにより特許文献1の全内容を本明細書の一部とする。また、換気制御を改善する利点は、チェーンストークス呼吸症又は中枢性無呼吸の治療装置以外にも普及する可能性がある。持続気道陽圧急性中枢性無呼吸を示す閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)の患者は、上部気道の虚脱及び換気制御の両方に難点があると思われる。このように、過呼吸(呼吸亢進)症状間に肺胞のCO2濃度を増加することにより、気道陽圧で上気道を安定させかつプラント利得が低下するので、前記患者の陽圧治療効果を改善することができる。上気道の安定する患者は、気道陽圧を使用せずに、プラント利得を低下する診療法が適当である。
【0011】
下記特許文献2(米国特許出願第10/716,360号)は、気道陽圧を併用して正確な濃度の二酸化炭素CO2及び酸素O2を患者に供給することにより、睡眠時呼吸障害を治療する装置及び方法を開示し、参照することにより特許文献2の全内容を本明細書の一部とする。二酸化炭素CO2の補充供給源を設けて、患者に供給する前に、供給される酸素O2が二酸化炭素CO2に混合される。このように、気道陽圧流量を維持するこの形態は、呼吸の異常な制御(例えば、チェーンストークス呼吸症)のみならず、上部気道閉塞に伴う睡眠時呼吸障害に対応するものである。
【0012】
2段階(バイレベル)気道陽圧治療法は、睡眠時無呼吸、他の呼吸障害及び心臓障害の治療法で進歩した気道陽圧治療法の一種である。2段階圧力治療法では、比較的高いレベルの圧力と比較的低いレベルの圧力とを患者の気道に交互に与えて、大振幅力と小振幅力の治療圧力が交互に気道に供給される。患者の吸気周期と呼気周期にそれぞれ同期する高振幅と低振幅の適用陽圧レベルは、吸気気道陽圧(IPAP)及び呼気気道陽圧(EPAP)として公知である。
【0013】
可変気道陽圧(VarPAP)として公知の適応可能な2段階圧力治療法は、ヒル名義の下記特許文献3に開示され、参照することにより特許文献3の全内容を本明細書の一部とする。吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は両方を調整するアルゴリズムを実行する可変気道陽圧装置は、気道陽圧補助装置の多くの標準機能を実行して、チェーンストークス呼吸症パターンを抑止することができる。流量センサを利用して、呼吸周期間の患者ピーク流量を測定し、制御装置によりピーク流量を監視して、患者がチェーンストークス呼吸症又は他の睡眠時呼吸障害を体験しているか否かが決定される。各々異なる時間間隔を生ずる3層処理を実行するアルゴリズムを使用して、患者の要求に適合しかつあらゆる睡眠障害の発生を検出するように、供給される気体圧力が連続的に適応される。前記中枢性無呼吸として公知の呼吸低下期間又は無呼吸期間の場合に、開示される可変気道陽圧装置は、患者の呼吸を活性化する「装置呼吸」を供給できる可変気道陽圧を生ずる。
【特許文献1】米国特許第6,752,150号公報
【特許文献2】米国公開第2004/0144383号公報
【特許文献3】米国特許第6,752,151号公報
【特許文献4】米国出願第11/235,520号
【特許文献5】米国特許出願第11/234,351号
【特許文献6】米国仮特許出願第60/697,130号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
瞬間平均吸気流量と最大平均吸気流量の媒介変数に基づき、患者が睡眠時呼吸障害を体験しているか否かを判定することを目的とする出願係属中の上記特許文献4は、特許文献3を改良するもので、参照することにより特許文献3及び4の全内容を本明細書の一部とする。前記平均化媒介変数は、特許文献3に使用される未処理の瞬間媒介変数を平滑化し又は濾波する作用があるので、より洗練された結果が得られる。内部呼吸流量の監視と改良型障害検出に関する更なる改善も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施の形態では、患者の気道に呼吸用気体流を供給する圧力補助装置が設けられる。圧力補助装置は、呼吸用気体の加圧流を発生する加圧流モジュールと、加圧流モジュールに連結されかつ患者の気道に呼吸用気体流を供給する通路となる患者回路とを備える。圧力補助装置は、患者の呼吸パターン特性(呼吸パターン特徴又は呼吸パターン指標)を監視するセンサと、センサに接続される制御装置とを備え、制御装置は、呼吸パターン特性が上限閾値を超えるとき、二酸化炭素吸気割合を増加し、呼吸パターン特性が下限閾値未満のとき、自動制御換気(サーボ換気)を行う。監視される患者の呼吸パターン特性に基づき、上限閾値と下限閾値が変更される。
【0016】
本発明の別の実施の形態では、患者の気道に呼吸用気体流を供給する圧力補助装置は、呼吸用気体流を発生する加圧流モジュールと、加圧流モジュールに連結されかつ患者の気道に呼吸用気体流を送出する通路となる患者回路とを備える。圧力補助装置は、患者の呼吸パターン特性を監視するセンサと、患者回路に取り付けられる二酸化炭素補充装置とを更に備える。加圧流モジュールと二酸化炭素補充装置とに制御装置が作動接続される。センサに接続される制御装置は、呼吸パターン特性が上限閾値を超えるとき、患者回路内の患者が吸気する二酸化炭素量を増加し、呼吸パターン特性が下限閾値未満のとき、気体流発生モジュールを制御して、患者の気道に供給される呼気圧に対する吸気圧の比率を増大する。
【0017】
本発明の別の実施の形態は、呼吸療法を受ける患者の換気状態を決定する判定法を提供する。この判定法では、患者回路を通じて呼吸用気体の供給源から患者の気道に気体流が供給され、患者の呼吸パターン特性が監視される。一定期間を通じて呼吸パターン特性の平均値に基づき、呼吸パターン特性の下限閾値が設定され、呼吸パターン特性の初期値を増加し又は減少することにより、呼吸パターン特性の上限閾値が設定される。呼吸パターン特性の平均値変化が予め決められた範囲を超えるとき、上限閾値が低下され、患者に施される特定の治療法の回数が予め決められた回数を超えるとき、上限閾値が増加される。
【0018】
本発明の別の実施の形態は、患者回路を通じて呼吸用気体の供給源から患者の気道に気体流が供給されて患者の呼吸パターン特性を監視する患者の治療法を提供する。予め決められた期間にわたる呼吸パターン特性の変化が正値でありかつ予め決められた範囲を超えるとき、高呼吸状態が想定(予測)され、一定期間にわたる特性の変化が、予め決められた範囲を超える絶対値を含む負値であるとき、低呼吸状態が想定される。想定される状態に基づき、適切な治療法が患者に施される。
【0019】
本発明の別の実施の形態は、患者の気道に加圧呼吸用気体を供給する方法を提供する。患者回路を通じて呼吸用気体の供給源から患者の気道に気体流が供給され、患者の呼吸パターン特性が監視される。患者の呼吸パターン特性に基づき、呼吸パターン特性の上限閾値と下限閾値とが決定され、呼吸パターン特性値が上限閾値を超えるとき、二酸化炭素吸気割合が増加される。
【0020】
本発明の別の実施の形態は、患者を治療する理想的な治療窓(治療効果が得られる数値範囲[therapeutic window])を決定する方法を提供する。想定される又は現実の呼吸状態に基づき、適切な投与量の治療が患者に適用され、適用される投与量に応じて、患者の不安定性指数が測定される。一連の投与量の各応答に対する不安定性指数を示す一連のデータ点が記録され、適用される投与量に相当する治療窓は、測定される不安定性指数が許容値を超えるデータ点未満でかつ測定される不安定性指数が許容値未満のデータ点を超える不安定性指数に適合される。
【0021】
本発明の別の実施の形態は、想定され又は現実の呼吸状態に基づき適切な治療の投与量を患者に与える理想的な治療窓の範囲で患者を治療する方法を提供する。所与の投与量に対応する患者の不安定性指数が、測定され、一連の投与量の各応答に対する不安定性指数を示す一連のデータ点が記録される。所与の投与量に相当する治療窓は、測定される不安定性指数が許容値を超えるときのデータ点未満でかつ測定される不安定性指数が許容値未満のときのデータ点を超える不安定性指数に適合される。治療窓内で次の治療投与量が患者に与えられる。
【0022】
参照符号により各図の対応する部分を示す添付図面に関する以下の説明、特許請求の範囲及び本明細書の全構成部分により、本発明の前記目的及び他の目的、特徴及び特性、構造の関連要素の操作法及び機能、部品の組み合わせ並びに製造経済性は、明らかとなろう。しかしながら、図面は、図示及び説明の目的に過ぎず、発明の範囲を制限しないものであることは、明確に理解できよう。別途明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用する用語「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」の単数形は、複数の対象を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
中枢性睡眠時無呼吸症、チェーンストークス呼吸症、持続気道陽圧急性中枢性無呼吸症又はその他不安定な呼吸動作のある患者は、所与の換気刺激に対する換気反応を示す高ループ利得を有すると思われる。高ループ利得の主要因は、中枢性化学受容体により、二酸化炭素(CO2)に対する感度が増加するためと思われる(高コントローラ利得)。本発明は、高呼吸動作状態間に換気プラント利得を低下させかつ低呼吸動作状態間に換気を増加させて、この高いループ利得を緩和又は相殺する方法を示す。
【0024】
本発明の実施に使用する装置の機能要素は、特許文献3に開示される機能要素と同様でもよい。図3に示すように、状態依存型気道陽圧補助装置50は、従来の持続気道陽圧装置又は2段階装置に使用される送風機(ブロワ)等の気体流発生装置52を備え、何らかの適切な供給源から搬送される呼吸用気体を受ける矢印Cで全体を示す気体流発生装置52は、加圧される酸素又は空気のタンク、周囲大気又はそれらの組み合わせ等である。気体流発生装置52は、周囲大気圧を超える比較的高い圧力と、周囲大気圧にほぼ等しい低い圧力とで、患者54の気道に供給される空気、酸素又はそれらの混合気体等の呼吸用気体流を発生する。患者に酸素を供給することにより、低呼吸動作状態による換気低下により生じる酸化血色素不飽和化を防止しかつ/又は酸化血色素飽和状態から独立して呼吸動作を安定させることができる。
【0025】
矢印Dで全体を示す呼吸用気体の加圧流は、配給導管56を通じて、気体流発生装置52から公知構造を有する何らかの呼吸マスク又は患者界面体58に供給され、呼吸マスク又は患者界面体58は、通常患者54に着用され又は取り付けられて、患者の気道に呼吸用気体流を搬送する。配給導管56と患者界面体58を患者回路と総称する。空気を排出する矢印Eで示す排気口57は、患者界面体58、導管56又は他の何れかの適切な位置に設けられる。一実施の形態では、患者回路内の圧力値を調整できる制御弁を排気口57に設けて、捕捉されかつ再呼吸される吐出気体(特に二酸化炭素CO2)の圧力を制御弁で増加し又は減少することができる。後記連動手段若しくは通信媒体65を通じて制御装置64により自動制御し又は手動で制御弁を調整することができる。特許文献3について説明したように、本発明による装置は、単一アーム装置若しくは2アーム装置又は2以上のアームを有する装置を使用できる。
【0026】
一実施の形態では、呼吸用気体(呼吸に適する気体)が通過する導管が内部に形成される可撓性管、剛性管又は他の部材により、導管56の様々な部分又は全てを形成することができる。患者界面体58は、患者の気道に呼吸用気体を搬送するのに適する鼻マスク、鼻/口マスク、全面型面体(フルフェースマスク)、鼻カニューレ、気管内挿入管又は気管内チューブ等の侵襲性又は無侵襲性の何らかの顔面装着器具である。顔面装着器具を患者の頭部に取り付けるヘッドギアが患者界面体58に設けられる。また、患者治療装置の少なくとも1つの動作モードを制御する制御部が患者界面体58に取り付けられる。図示の実施の形態では、患者界面体58及び/又は導管56から周囲大気に気体を排出する排気口57が患者界面体58及び/又は導管56に設けられる。排出気体の流量を制限することにより、患者界面体58内の気体の圧力を制御する固定常開式の排気口57を設けてもよい。別法として、排出流量を制御する別形態の可変式の排気口57を設けてもよい。連動手段若しくは通信媒体65を通じて、制御装置64に排気口57の開閉手段を連絡し、患者治療装置により、自動的にかつ/又は積極的に排気口57の開閉を制御してもよい。適切な排気口は、米国特許第6,851,425号及び第6,615,830号に例示され、参照することにより、米国特許の内容を本明細書の一部とする。
【0027】
図示の実施の形態では、状態依存型気道陽圧補助装置50は、配給導管56に設けられる圧力制御装置として制御弁60を備える。制御弁60は、気体流発生装置52から患者に供給される呼吸用気体流の圧力を制御する。この目的に対し、患者に供給される気体の圧力及び/又は流量を協力して制御する気体流発生装置52と制御弁60とを併せて加圧流モジュールと総称する。
【0028】
本発明の一実施の形態では、図3に示す加圧流モジュールは、気体流発生装置52及び制御弁60を含む。図3に示す実施の形態では、呼吸用気体を受けて患者の気道に供給する呼吸用気体の圧力を増加する気体流発生装置52が加圧流モジュールに設けられる。患者に供給される呼吸用気体を受ける気体流発生装置52は、呼吸用気体の圧力を上昇するポンプ、送風機(ブロワ)、ピストン又は送風器(ベローズ)等の何らかの装置である。上記のように、本発明は、患者に呼吸用気体を供給する気道陽圧補助装置50に周囲大気以外の気体を導入することも企図する。前記実施の形態では、空気、酸素、二酸化炭素又は他の呼吸に適する混合気体を収容する気体の加圧容器又は加圧タンクから気体流発生装置52に気体を吸入できる。加圧流モジュールの他の実施の形態では、気体流発生装置52を必ずしも設ける必要はなく、その代わりに、圧力調整器で制御されて患者に供給される圧力に加え、加圧気体の容器又はタンク自体の圧力により、呼吸用気体を加圧することができる。一実施の形態では、気体流発生装置52に使用される送風機は、圧力補助治療間にほぼ一定の速度で駆動されて、ほぼ一定の高圧力及び/又はほぼ一定の高流量の気体を気道陽圧補助装置50内に供給する。
【0029】
図3に示す実施の形態では、気体流発生装置52から制御弁60に加圧流モジュール内の呼吸用気体が供給される。下記のように、制御弁60及び/又は圧力発生装置52は、下流に設けられる管路内を流れる気体の圧力及び/又は流量を制御する加圧流モジュールとなる。管路内圧力及び管路内流量を制御する方法として、制御弁60の例は、管路56から気体を排出するスリーブ弁又はポペット弁等の少なくとも1つの弁を含む。ヘテら名義の米国特許第5,694,923号は、大気に気体を排出しかつ気体流発生装置52から患者に供給される気体流を制限する制御弁60としての使用に適する二重ポペット弁装置を開示し、参照することにより、前記米国特許の内容を本明細書の一部とする。
【0030】
単一の速度のみで作動する送風機の気体流発生装置52の実施の形態では、制御弁60の単数又は複数の制御設定値を調整した後に、管路内の呼吸用気体の圧力と流量を制御することができる。しかしながら、送風機の速度等の気体流発生装置52の作動に関する単一又は複数の制御設定値を、制御弁60の制御設定値と組み合わせて又は単独で調整し、患者に供給される呼吸用気体の管路内圧力及び管路内流量を制御する実施の形態も、本発明は、企図する。例えば、気体流発生装置52を適切な作動速度に調整(マクロ制御)して、所望の管路内圧力及び管路内流量に近い管路内圧力と管路内流量を達成できる。更に、制御弁60に関する単数又は複数の制御設定値を調整することにより、管路内圧力及び管路内流量の微調整(ミクロ制御)を行い、気体流発生装置52と制御弁60の2作動を組み合わせて、加圧流モジュールの下流に設けられる管路内の呼吸用気体の最終回路圧力を決定することができる。
【0031】
送風機単独で又は圧力制御弁60と組み合わせて送風機の速度を変更する等、患者に供給される圧力を加圧流モジュールにより制御する他の技術も本発明が企図することは、明白である。このように、制御弁60は、患者に供給される呼吸用気体流の圧力制御に使用される技術に依存して任意に取り付けられる装置である。制御弁60を省略すれば、加圧流モジュールは、気体流発生装置52のみとなり、例えば、気体流発生装置52のモータ速度を制御することにより、患者回路内の気体圧力を制御することができる。圧力を制御する他の技術は、可変制御弁又は固定制御弁を使用して、気体流を大気中に放出し又は管路内の他の分岐管路に流出させるものである。
【0032】
配給導管56内で呼吸用気体流を測定する流量センサ62が状態依存型気道陽圧補助装置50に更に設けられる。流量センサ62は、肺活量計、呼気気流計、可変オリフィス変換器、差圧変換器又は他の従来の流量変換器等、これらの媒介変数の測定に適する何らかの装置である。図3に示す現在好適な実施の形態では、配給導管56と直列(同一線上)にかつ制御弁60の下流に流量センサ62を配置するのが最も好ましい。制御装置64に送出される流量信号を発生する流量センサ62を使用して、患者に与える気体流量が決定される。
【0033】
患者で直接流量を測定する技術、配給導管56に沿う他の位置で流量を直接測定する技術、圧力発生装置の作動に基づき患者流量を測定する技術、及び圧力発生装置の上流で流量センサを使用して患者流量を測定する技術等、患者の呼吸流量を測定する他の技術も、本発明は、勿論企図する。例えば、患者界面体に配置される定流量部材を開示するスターら名義の米国特許第6,017,315号の内容を参照することにより、本明細書の一部とする。圧力、温度、二酸化炭素CO2濃度等を含む気道陽圧補助装置50内で測定される他の間接的な媒介変数から流量を算出することもできる。
【0034】
図3に示す回路にセンサブロック61が更に設けられる。(本流又は側流で)二酸化炭素CO2、酸素O2又は何らかの他の適切な測定値を検出する単一のセンサ又は複数の追加センサを表わすセンサブロック61は、患者から排出又は送出される気体の特性に関連する情報を捕集する。配給装置に沿う同一の位置に各種のセンサを配置する必要は必ずしもなく、センサブロック61は、配給装置に沿って分散して配置できる複数のセンサの単なる代表に過ぎない。このように、患者界面体58内、導管56内又はユニット内の他のどこの場所で二酸化炭素CO2を測定してもよく、圧力供給回路(気道陽圧補助装置)50内での限定を意図せず、同様に患者回路内で二酸化炭素CO2を測定できる。二酸化炭素CO2の測定値をアルゴリズムに使用して、貯蔵部又はデッドスペース(死腔)の二酸化炭素CO2量を決定することができる。測定値を更に使用して、二酸化炭素CO2の捕捉量又は除去量を決定して、臨床上回避すべき呼吸動作状態の発生を予測できる。この予測情報を使用して、治療の意思決定を行うことができる。吸気間又は呼気間の時間経過に伴う流量を乗算し、センサを通過して測定された二酸化炭素CO2レベルを積分することにより、センサは、二酸化炭素CO2の除去量又は捕捉量を算出する。直接又は間接的に測定値を得ることができる。
【0035】
気道陽圧補助装置50に更に加湿器63を設けてもよい。患者回路内に配置される加湿器63を図3に示すが、気道陽圧回路50内等、気体供給装置内のどこでも加湿器63を配置できることは、理解されよう。加湿器63から供給気体に水分を付与して、患者の快適性を更に向上できる。加湿器63は、加湿量を増加するのみならず、導管56の気体から水分を除去して、呼気する湿潤空気を再呼吸することができる。このように、加湿器63は、湿気を制御(加湿又は除湿)する通過型又は加熱型の加湿器又はサブシステムである。本発明での使用に適する加湿装置を開示する出願係属中の特許文献5の全内容を参照することにより本明細書の一部とする。また、前記換気装置回路内の水分レベルを制御する加湿装置を開示する出願係属中の特許文献6の全内容を参照することにより本明細書の一部とする。
【0036】
状態依存型気道陽圧補助装置50に使用する様々な媒介変数を設定する入力/出力装置66を使用して、臨床医又は介護者等の使用者に情報及びデータを表示しかつ出力することができる。状態依存型気道陽圧補助装置50が捕集する動作情報と動作データを遠隔操作により監視しかつ制御する入力/出力端子を設けることも、本発明が企図することは、理解されよう。連動手段若しくは通信媒体を通じて、情報及び/又は命令を制御装置64に送出しかつ人間の知覚可能な形式により、患者又は他の使用者に情報を与える如何なる装置でも入力/出力装置66として使用できる。適切な入力/出力装置の例は、キーパッド、キーボード、タッチパッド、マウス、可視ディスプレイ(例えば、液晶表示装置[LCD]又は発光ダイオード[LED]画面)、マイクロホン、スピーカ、スイッチ、ボタン、目盛板、ランプ又は使用者が換気装置に情報を入力しかつ換気装置からの情報を受信できる他の如何なる装置を含んでもよい。
【0037】
患者の呼吸パターン特性を監視して、下記の通り、監視結果に基づいて呼吸用気体の流量を制御する所定の手順を実行できるマイクロプロセッサを制御装置64として使用することが好ましい。制御装置64は、加圧流量モジュール(流量発生装置52及び制御弁60)に作動連結される。例えば、図3の実施の形態では、センサブロック61,流量センサ62の出力が付与される制御装置64は、患者に供給される気体の瞬間容量(V)、気体の瞬間流量(V')又はその両方を決定する処理装置を備える。例えば、センサ62が測定する流量を積分すると、瞬間容量を決定できる。患者界面体58から比較的遠くに流量センサ62を配置する実施の形態では、制御装置64は、推定流量としてセンサ62からの出力を受信して、患者に供給される実際の気体流量又は負流量と考えられる患者から排出される作動気体流量を決定する。制御装置64は、例えば、推定漏洩流量を実行して、推定流量情報を処理し、当業者に公知のように、患者の気道での実際の流量を決定する。
【0038】
呼気中の二酸化炭素CO2を収容しかつ患者に再配給する再呼吸回路46を図4に例示する。図3に示す回路に再呼吸回路46を組み込んでもよい。図4に示すように、圧力源41から加圧気体を収容する再呼吸回路46は、流量計42を有する加圧流量モジュールである。制御装置64、また、持続気道陽圧装置又は2段階装置自体により再呼吸回路46に設けられる3口2位置弁43を制御することができる(即ち、気体流量により制御される)。2つの弁状態の一方に弁43を切り換えることができる。吸気間に、弁43は、第1の位置(図4の左側に示す位置I)にあり、再呼吸回路46は、従来の持続気道陽圧装置又は2段階圧力補助装置に非常に類似する。しかしながら、再呼吸回路46に直列に流量計42が接続され、流量計42により、空気流量の実時間値又は(空気流量を積分して)吸気容積を検出することができる。呼気間に、弁43は、第2の位置(図4の右側に示す位置E/R)に切り換えられ、呼気気体を捕集する例えば500mlの貯蔵部44を有する管状回路に呼気が導入される。吸気間に、吸気容積又は吸気流量が、予め設定されたレベルを超えれば、E/R位置に弁43を移動して、管状回路内に収容される呼気を加圧して、患者にこの呼気気体が供給される。適切なアルゴリズムにより、呼気の始期と吸気の始期に起動信号が送出される。また、基準吸気容積閾値を決定するアルゴリズムを実行できれば、吸気容積を予め設定し又は吸気容積を予め決める必要はない。患者の要求に適するアルゴリズムを設定することができる。
【0039】
変動する適応可能な2つの定量的範囲:上限閾値及び下限閾値により、本発明で設定される3つの呼吸状態を詳細に説明する。上限閾値と下限閾値は、呼吸動作の表示に適するピーク空気流量、平均ピーク流量又は周期的換気量等の呼吸動作を表示する特性に関連する。患者の兆候特性が上限閾値と下限閾値との間にあると、患者が正常な換気をしていると判断される。患者の示す兆候特性が上限閾値を超えると、患者が高呼吸動作状態であると判断される。患者の兆候特性が下限閾値未満に低下すると、患者が低呼吸動作状態であると判断される。低呼吸動作状態は、中枢性無呼吸換気低下又は他の睡眠時呼吸障害を示すことがある。低呼吸動作に続く高呼吸動作の期間は、チェーンストークス呼吸症を示すことがある。本発明の状態依存型気道陽圧装置(気道陽圧装置)は、患者が現在動作している特定の呼吸状態に基づいて、患者への治療法又は診療法を変更し、苦痛の状態(即ち、患者の呼吸が理想的な呼吸から乖離する度合)により、適応可能な範囲の強度レベルで治療又は診療を更に行う。
【0040】
閾値が変動する(患者の状態により変化する)ので、正常呼吸の窓(範囲)を縮小し又は全体に省略するように閾値を特定状態に集中させることは、当業者に理解されよう。正常呼吸の窓が極めて小さくなり又は存在しなくなるとき、本発明の状態依存型気道陽圧装置は、目標値からの偏差量に比例して(即ち、併用する閾値からの偏差量で決定される呼吸の苦痛状態に比例して)、適切な診療法(例えば、後述する二酸化炭素CO2又は酸素O2の投与量の増加又は適応可能な自動制御換気)を効果的かつ継続的に変更する。本明細書では、3つの別個状態を特定している装置を主に示すが、全症例の閾値を特定の状態に集中させて、単一値からの兆候特性の偏差量に基づく適切な強度の適切な診療法を効果的に与える装置が得られることは、理解されよう。
【0041】
通常の換気状態間、即ち、患者の兆候特性が上限閾値と下限閾値との間にあるとき、上部気道閉塞の兆候を除去するように、睡眠検査間に設定される持続気道陽圧設定値若しくは2段階圧力補助設定値又は自動化アルゴリズムにより、実施する陽圧治療法が決定される。時間の経過に伴う患者空気流量を表す通常の換気状態を図5に示す。周期的換気量又は他の呼吸パターン特性を本発明に指標として使用できることを当業者は認識しよう。ピーク流量上限閾値12及びピーク流量下限閾値14が(後述のように)決定され、図示の標準状態では、患者の実際の空気流10は、2つの閾値間で最大になる。
【0042】
図5に示すように、吸気気道陽圧16(IPAP)と呼気気道陽圧18(EPAP)とを含む2段階圧力治療は、標準状態間に一定に保持される。2段階圧力治療の代わりに持続気道陽圧治療(図示せず)を利用する装置では、患者に供給される連続的圧力レベルもまた一定である。例えば、呼気呼吸の開始時に呼気圧力を低減するシーフレックス(C-Flex)装置又はバイフレックス(Bi-Flex)装置により提供される公知の呼気圧力軽減法を併用して、患者快適性を向上することができる。バイフレックス装置は、気道陽圧装置により監視する気体流量に基づき、吸気圧が制御される。
【0043】
図6に示すように、患者が中枢性無呼吸22を発生するとき、患者から空気流10を検出できないので、ピーク空気流は、下限閾値14未満に低下する。制御装置64は、流量センサ62及び/又は他のセンサ61から流量情報を受信し、受信した流量情報を現在の閾値媒介変数と比較して、患者が低呼吸動作状態であるか否かを決定する。呼吸活動を検出できない一定期間経過後に又は呼吸パターン履歴に基づき、患者が低呼吸動作状態であるか否かを判定してもよい。
【0044】
低呼吸動作状態では、気道陽圧装置50が実施する治療法は、標準状態間に与えられる持続気道陽圧又は2段階圧力の最小限治療から変更される。説明の目的で、用語「持続気道陽圧治療」又は「2段階圧力治療」を使用するが、患者の呼吸圧力に基づく流量を供給する比例補助換気(PAV)等の無呼吸治療を対象とする閉塞性要素の他の治療モード又は治療法も、本発明が企図す点に留意されたい。設定される持続気道陽圧治療又は2段階圧力治療に加え、気道陽圧装置50は、自動制御換気又は可変気道陽圧(VarPAP)を患者に配給して、呼吸を発生させることができる。直近の呼吸パターン履歴に基づき患者に可変気道陽圧を供給する適応可能な装置は、特許文献3に開示され、参照することにより特許文献3の全内容を本明細書の一部とする。時間平均媒介変数を使用する可変気道陽圧装置は、特許文献4に開示され、参照することにより引用文献4の全内容を本明細書の一部とする。
【0045】
自動制御換気を患者に付与するとき、流量発生装置52及び/又は制御弁60に接続される制御装置64は、呼気気道陽圧に対する吸気気道陽圧の圧力比を増加し、気道陽圧装置は、患者による自発呼吸(即ち、「同期モード」として公知である患者自身の換気)の維持を補助するが、自発呼吸のない中枢性無呼吸の患者の症例では、「機械呼吸」を適用して、自発呼吸を開始させる。患者の動作から独立して制御される時間間隔により、一連の機械呼吸を適用する態様を「時間モード」と称し、自動制御換気の一態様とも判断される。「併用モード」は、同期モードの自発呼吸の間に患者の呼吸を補助しかつ患者が制御を必要とするとき機械呼吸又は時限式呼吸制御を与えるように、自動制御換気を配給するものである。苦痛状態が減少するほど、これに応じて呼気気道陽圧に対する吸気気道陽圧の圧力比を低下することができる。公知のように、吸気気道陽圧の増加/低下、呼気気道陽圧の低下/増加又はそれらの両方により、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧との間の圧力を変更することができる。例えば、呼気気道陽圧に対する吸気気道陽圧の圧力比を増大させて、吸気気道陽圧の増加、呼気気道陽圧の低下又はそれらの両方を達成することができる。予め決められた又は適応可能な波形ににより一呼吸の範囲内で多様に変化しながら呼吸全体を通じて吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を変化させることができる。
【0046】
図6に示すように、一定時間(予めプログラム制御される時間又は最適に設定される時間)経過後に中枢性無呼吸22が検出され、中枢性無呼吸22に対する反応17が誘発される。図6に示す反応17は、吸気気道陽圧(IPAP)の増加又は患者の自発呼吸を刺激する「機械呼吸」であろう。患者の状態履歴及び/又は現状に基づき必要と決定される強度レベル及び時間間隔により、次の機械呼吸が患者に配給される。
【0047】
低呼吸動作状態では、肺胞内二酸化炭素CO2(PCO2)又は吸気中二酸化炭素CO2(FiCO2)の割合を増加して、換気量を増加させることが更に望ましい。二酸化炭素CO2を増加する様々な方法、例えば可変漏洩弁により再呼吸を制御する方法、動的に死腔を増加させる方法、吐出された二酸化炭素CO2の貯蔵部を設ける方法又は二酸化炭素CO2の補充供給源を設ける方法が公知である。本明細書に引用する特許文献1は、可変漏洩弁、動的な死腔、吐出された二酸化炭素CO2の貯蔵部及び調整可能なマスク排気弁を含むこれらの装置の一部を開示し、特許文献1の全内容を参照することにより本明細書の一部とする。特許文献2は、酸素O2を混合した二酸化炭素CO2の補充供給源を開示し、同様に、特許文献2の全内容を参照することにより本明細書の一部とする。化学的生成、低温冷却、分子吸着及び大気中の気体又は患者からの吐出気体の濾過等、大気中の二酸化炭素CO2よりも高レベルの二酸化炭素CO2を形成する他の方法も本発明は、企図する。
【0048】
図7は、小換気量の検出を除き、図6に示す検出グラフと同様の低呼吸動作状態の検出グラフを示す。この場合、ピーク呼吸空気流量13が下限閾値14未満に低下するので、制御装置64は、低呼吸状態と判断する。上記の通り、制御装置64は、追加の自動制御換気(VarPAP)による治療を与えて、患者の呼吸動作を増進させる。図7では、特許文献3に記載されるように、検出した呼吸低下に応答して、自発呼吸間に吸気気道陽圧16が最適に増加17する。吸気中の二酸化炭素FiCO2又は肺胞中の二酸化炭素CO2を増加させる方法は、上記(即ち、動的な死腔、二酸化炭素CO2の貯蔵部、可変漏洩弁、その他)のように実行され、吸入する二酸化炭素FiCO2の制御気体流量20の増加21で示すように、患者の呼吸動作が高められる。
【0049】
図8に示すように、患者が上限閾値12を超える兆候特性10を示す場合、制御装置64は、患者が高呼吸動作状態にあると判定する。図8に示すように、ピーク流量は、最大15でピーク流量の上限閾値12を超える。この状態間に、二酸化炭素CO2を収容する貯蔵部を使用して又は再呼吸を実行して変動するデッドスペース(死腔)を保持する等の前記方法を使用して、吸気中の二酸化炭素FiCO2を増加させて、プラント利得を減少する治療が実行され、呼気終期に周期的な二酸化炭素CO2を捕捉する。肺胞中に適切な量の二酸化炭素CO2量を保持することにより、過呼吸期間に続いてしばしば発生する中枢性無呼吸又は呼吸低下を抑制することができる(図1に示す典型的なチェーンストークス呼吸症周期の過呼吸36に続く特性無呼吸38を参照)。
【0050】
図8は、高換気状態間に一定に保持される呼気気道陽圧18を示すが、呼気間に呼気気道陽圧18を減少して、前記特定の再呼吸法で呼気される二酸化炭素CO2を再吸気して回路性能を改善することも、本発明は、企図する。患者の状態履歴に最適に基づき、衝動的に又は前記方法の何れかの組合せに基づき、予め決められた又は適応可能な波形により、予め決められた一定レベルだけ呼気気道陽圧18を減少することができる。
【0051】
図3に関して再呼吸を増加させる装置の他の例は、呼気気体を導管56に帰還させるように排気弁57を能動的に制御する装置である。連動手段若しくは通信媒体65を通じて制御装置64により、弁57の開弁度を制御し、呼気気体の漏出を防止して、次の呼吸時に吸気中の二酸化炭素CO2割合を増加することができる。更に別の実施の形態では、患者界面体58に近接して気道陽圧装置50に取り付けられる二酸化炭素CO2の貯蔵部(図示せず)を利用して捕捉した呼気気体を患者の気道に再配給するものである。制御装置64により可変制御される弁を通じて、患者界面体58又は導管56に貯蔵部を連絡することができる。
【0052】
3つの呼吸状態及び各状態で実行する診療法及び治療を説明したが、更に、上限閾値と下限閾値の決定、正常呼吸の動的窓、即ち、上限閾値と下限閾値との間の範囲の設定を説明する。本発明による気道陽圧装置を実施して、何れか又は全ての呼吸状態間に自動滴定治療を行えることは、理解すべきである。自動滴定(タイトレーション)は、患者の上気道を保持して、閉塞性睡眠時無呼吸症、鼾又は呼吸低下等の発生に関連する気道の閉塞を防止するのに供給される最小レベルの気道陽圧を使用する。
【0053】
変動する上限閾値(DUT)を決定するために、気道陽圧装置は、まず既定値(デフォルト)又は初期値に設定される。従来の患者の状態履歴に基づき又は臨床医により、既定値が選択される。別法として、例えば、一定時間の経過に伴う平均ピーク空気流量又は平均周期的換気量等の測定した媒介変数に基づき、初期値を得ることができる。一方のアルゴリズムにより変動上限閾値を低下させ、他方のアルゴリズムが変動上限閾値を上昇させる2つの個別のアルゴリズムを並行に作動させて、変動上限閾値を決定することができる。各アルゴリズムは、交互に実行される。
【0054】
気道陽圧装置50が不安定な呼吸に応答していないとき、変動上限閾値は、低下する。このアルゴリズムは、呼吸測定値の平均値又は示される兆候特性(例えば、ピーク流量、周期的換気量等)の変化(例えば、適合線又は接続線の勾配)を算出し、呼吸パターン特性の変化が予め決められた値を超えるとき、その変化に比例する量だけ変動上限閾値を低下させる。時間経過に伴う平均呼吸測定値の変化が小さく又は変化せず、呼吸が安定するとき、変動上限閾値を変更する必要がない。時間経過に伴い平均呼吸測定値が変化して、呼吸が不安定なとき、変動上限閾値を低下して、高呼吸動作状態を検出する気道陽圧装置50の感度を上昇させる必要がある。
【0055】
図9は、変動上限閾値を低下させるアルゴリズムを略示する。ステップ100では、ピーク流量、周期的換気量又は他の測定値等、一定時間K1の経過に伴う平均呼吸測定値が決定される。ステップ102では、一定時間の経過に伴う平均呼吸測定値の変化ΔRmが決定される。ステップ104では、制御装置64は、平均呼吸測定値の変化ΔRmの絶対値(|ΔRm|)が、臨床医等の使用者が予めプログラム制御できる予め決められた閾値(T1)より大きいか否かを決定する。
【0056】
平均呼吸測定値の変化ΔRmの絶対値|ΔRm|が、閾値T1を超えるとき、制御装置64は、ステップ106で絶対値|ΔRm|に比例する分量だけ変動上限閾値を低下させる。ステップ106の値「c」は、使用者がプログラムできる低下係数である。低下係数cは、副作用又は急激な作用を患者に与えずに変動上限閾値を徐々に低下させる値にできる。
【0057】
絶対値|ΔRm|が、閾値T1を超えないとき、ステップ108に示すように、変動上限閾値を変更しない。この結果は、患者の呼吸パターンが安定していることを示すので、気道陽圧装置50の感度を増加する必要がない。
【0058】
図10は、変動上限閾値を上昇させるアルゴリズムを略示する。変動上限閾値を上昇させるべきか否かを決定するとき、問題は、気道陽圧装置50が基本的に高感度過ぎるか否かである。従って、複数の呼吸を補助する多くの二酸化炭素CO2により、装置感度を測定し、測定値を使用して、変動上限閾値を上昇させるべきか否かが決定される。
【0059】
ステップ200では、呼吸を補助する再呼吸用の二酸化炭素CO2の百分率CO2Suppが決定される。次に、この百分率は、ステップ202で予めプログラム制御される閾値T2と比較される。呼吸を補助する二酸化炭素CO2の百分率CO2Suppが、閾値T2以上のとき、ステップ204に示すように、百分率に比例する量だけ変動上限閾値が増加される。使用者が予めプログラムできる上昇係数cは、変動上限閾値を低下するアルゴリズムに使用する前記低下係数と同一でも同一でなくてもよい。
【0060】
呼吸を補助する二酸化炭素CO2の百分率CO2Suppが、閾値T2未満のとき、ステップ206に示すように、変動上限閾値は変更されない。この結果は、高呼吸動作状態で診療法の実行時に、気道陽圧装置50が過剰反応しないことを示すので、変動上限閾値を上昇させる必要がない。
【0061】
特許文献3及び特許文献4に利用される同様の方法にで、変動下限閾値(DLT)が決定され、参照することにより特許文献3と4の全内容を本明細書の一部とする。要するに、2分、5分又は他のある一定時間等、時間経過に伴い、平均呼吸測定値又は兆候特性(例えば、ピーク空気流、周期的換気量、その他)を測定し、移動平均値未満の予め決められた係数で動的(変動可能)に、変動下限閾値が、設定又は調整される。このように、調整される移動平均値未満に瞬間呼吸測定値が低下するとき、制御装置64は、低呼吸動作状態を認識しかつ対応する(単数又は複数の)診療法を開始する。時間経過に伴う平均測定値は、本質的に増加し減少するので、変動下限閾値を上昇しかつ低下させる別々のアルゴリズムは、当然必要ない。
【0062】
本発明の別の実施の形態では、気道陽圧装置は、患者の呼吸パターンを監視しかつ傾向又は変化を特定して、不安定な又は臨床上有害な呼吸動作状態を予測する。呼吸動作状態の変化を予測するとき、気道陽圧装置は、適切な治療診療法(例えば、自動制御換気、肺胞の二酸化炭素CO2の増加等)を作動又は中断して、有害な状態に至る呼吸動作状態を防止する。これは、有害な状態の発生前に、気道陽圧装置が有害な状態を予測して、その状態を治療する方法を実施する有利な特徴である。実際に患者に実施される治療診療法の有効性に基づき、気道陽圧装置が適切な治療窓を「学習する」機能を気道陽圧装置に付与することができる。前記気道陽圧装置と併用して又は独立型装置として、この学習機能を使用することができる。
【0063】
図11は、ピーク流量の増加傾向に基づく高呼吸状態を予測するグラフを示す。図示のように、最初の3つのピーク流量10は、通常の呼吸窓の範囲内にある(即ち、ピーク流量10は、上限閾値12より低くかつ下限閾値14より高い)が、上限閾値12を超える傾向にある。傾向を予測できかつ状態変化を推考できる方法で、呼吸測定値(本例では、ピーク流量)の傾き、勾配又は傾斜24が最初に決定される。傾き24が予め決められた最大限界値を超えるとき、実際の状態変化について説明したように、制御装置64は、二酸化炭素CO2の再呼吸又は動的な死腔等の適切な診療法を時点26で作動又は中断させる。この早期の診療法により、予測される呼吸状態変化を減少し又は防止することができる。傾向予測を使用せずに気道陽圧装置が診療治療法を実行(又は中断)すると、時点28に至る。このように、有害な換気状態の発生を待たずに、厳密な状態依存法より極めて早く、傾向予測法により患者の呼吸パターンを正常化できる。
【0064】
図12は、周期的換気量を呼吸測定値10とする点を除き、図11と同様の高呼吸動作傾向を示すグラフである。前記の通り、3呼吸周期後に傾向を予測し、予め決められた限界値を超える傾き24が決定される。実際の状態変化が発生する前の時点26で、実施又は中断の何れか適切な診療治療が行われ、状態変化の有害な効果を全体的に減少又は除去することができる。
【0065】
図13と図14は、ピーク流量と周期的換気量とをそれぞれ呼吸測定値とする低呼吸状態の予測グラフを示す。高呼吸状態の予測と同様に、連続的な3呼吸周期の傾き24に基づき傾向が予測される。傾き24が予め決められた限界値を超えるとき、それに応じて適切な診療治療法が実行又は中断される。3つ以上の多数の呼吸周期を使用して傾向を予測し、適切な治療法を決定することができることは、当業者に理解されよう。
【0066】
本発明の気道陽圧装置を患者の現在の状態に更に適応させて、理想的な治療窓を決定することができる。診療間に患者に配給して呼吸を安定化させる二酸化炭素CO2又は酸素O2の「投与量」の有効範囲を治療窓と指称する。図15は、気道陽圧装置に使用して理想的な治療窓を決定するため患者から採取される多数の試料のグラフを示す。縦軸は、高呼吸動作間に二酸化炭素CO2を捕捉するため、供給される二酸化炭素CO2の投与量を示す。デッドスペース(死腔)の容積により、二酸化炭素CO2の投与量を決定することもできる。横軸に沿う不安定性指数は、呼吸動作の変化による苦痛の測定値又は不安定呼吸の割合であり、下記媒介変数から導き出すことができる:a)ピーク流量又は周期的換気量等の測定値の最小値と最大値との比率、b)ピーク流量又は周期的換気量等の移動窓平均(又は中央)測定値に適合する接続線の傾き(勾配又は傾斜)、又はc)呼吸制御装置のループ利得の測定値又は予測値。
【0067】
図15の治療窓308は、特定の治療に使用される吸気二酸化炭素CO2の投与量割合又はデッドスペース(死腔)容積の適切な範囲を示す。データ点302は、安定事象の発生を示すが、データ点300は、不安定事象の発生を示す。測定した(単数又は複数の)不安定性媒介変数に基づき、安定事象302は、許容可能な治療窓308内にあると判断される。二酸化炭素CO2 304の投与量が治療窓308を超えると、過呼吸を生じ、治療窓308未満の投与量306は、十分に安定な呼吸が得られない。このように、一日毎に多数の試料データを蓄積しかつ古いデータを削除することにより、患者の現在の状態に気道陽圧装置を常時適合させることができ、測定した患者不安定性データに基づき、気道陽圧装置を治療線に適合させかつ治療線を調節することができる。即ち、測定した単数又は複数の前記不安定性媒介変数により、投与量を決定するように、診療に使用する投与量が不安定であるとき、制御装置は、治療窓308を超え又は治療窓308未満の投与量に連動して、これに応じて治療窓308を変更する。
【0068】
前記方法を適応できるとき、気道陽圧装置は、個々の患者に何の治療法が有効であるかを学習する。気道陽圧装置にプログラム入力されかつ患者の治療で得られる経験として更新される初期条件が適応可能な気道陽圧装置に必要である。文献によく記載される多数の適応可能な制御統計技術単数又はいくつかを利用して、より確実な気道陽圧装置を作成して、気道陽圧装置を患者に効果的に適応させ、外部データ及び/又は質の悪いデータ等を取り扱ってもよい。
【0069】
この実施例は、予測され又は現存する過呼吸の診療法を説明するが、呼吸低下又は中枢性無呼吸に対して同様のグラフと統計学的分析を利用することができる。その場合、二酸化炭素CO2及び/又は自動制御換気を利用して予測され又は現存する状態を治療するグラフを示す。患者から二酸化炭素CO2を更に除去するには、二酸化炭素CO2が少量過ぎて、中枢性無呼吸が悪化する。二酸化炭素CO2が多量過ぎると、過呼吸になる。
【0070】
また、気道陽圧装置は、アルゴリズムに入力する生理学的な媒介変数の数だけ一時的データ等、一次元以上の治療最適化データ分析を必要とすることがある。例えば、気道陽圧装置に履歴(ヒステリシス)機能を与えて、現状に導く複数の呼吸状態の配列により、正しい治療を患者に与えるのことを認識する必要があろう。
【0071】
現在最も実用的かつ好適と思われる実施の形態を図示して詳記したが、前記記載は単に説明の便宜に過ぎず、本発明を開示した実施の形態に限定されず、本発明は、特許請求の範囲内に該当すると共に、特許請求の範囲と同趣旨の変更態様並びに同等の装置を包含すること企図する。例えば、何れかの実施の形態の単一又は複数の特徴を他の何れかの実施の形態の単一又は複数の特徴に可能な範囲内で組み合わせられることも、本発明が企図することを理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】漸増期間と漸減期間を含む典型的なチェーンストークス呼吸症パターンを示す患者流量波形図
【図2】チェーンストークス呼吸症の患者への二酸化炭素吸気割合を増加する効果を示す波形図
【図3】本発明の実施の形態による気道陽圧補助装置の略示ブロック図
【図4】本発明の実施の形態による再呼吸回路の略示ブロック図
【図5】本発明の実施の形態による標準呼吸状態の呼吸気体流量を示すグラフ
【図6】本発明の実施の形態による低呼吸動作状態の呼吸気体流量を示すグラフ
【図7】本発明の他の実施の形態による低呼吸動作状態の呼吸気体流量を示すグラフ
【図8】本発明の実施の形態による高呼吸動作状態の呼吸気体流量を示すグラフ
【図9】本発明の実施の形態による変動する上限閾値を低下させるアルゴリズムを略示するフローチャート
【図10】本発明の実施の形態による変動する上限閾値を上昇させるアルゴリズムを略示するフローチャート
【図11】呼吸測定値がピーク流量を示す高呼吸状態を予測する本発明の実施の形態による傾向基準予測法を示すグラフ
【図12】呼吸測定値が周期的換気量を示す高呼吸状態を予測する本発明の実施の形態による傾向基準予測法を示すグラフ
【図13】呼吸測定値がピーク流量を示す低呼吸状態を予測する本発明の実施の形態による傾向基準予測法を示すグラフ
【図14】呼吸測定値が周期的換気量を示す低呼吸状態を予測する本発明の実施の形態による傾向基準予測法を示すグラフ
【図15】理想的な治療窓を決定する本発明の実施の形態による統計分析法を示すグラフ
【符号の説明】
【0073】
(10,50)・・患者の気道に呼吸用気体流を供給する装置、 (46)・・二酸化炭素補充装置、 (56)・・患者回路、 (61,62)・・センサ、 (64)・・制御装置、
【優先権主張】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)の規定に基づいて、2006年3月20日に出願された米国仮特許出願第60/784,127号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、様々な種類の睡眠呼吸障害の治療、詳細には、睡眠時呼吸障害の治療に適する状態依存型気道陽圧装置に関連する。
【背景技術】
【0003】
睡眠時呼吸障害(SDB)は、患者(被験者又は使用者)に対する重要な臨床結果を有する共通の状態である。医者及び他の医療専門家は、睡眠時呼吸障害が純粋な中枢性無呼吸(無呼吸動作により生じる)と、純粋な閉塞性無呼吸(上気道構造に起因する)との間に発症する連続的症状であることを示唆した。閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)は、解剖学的な構造不全により睡眠時に上気道が弾性復元せず、睡眠時に上気道が反復して圧潰する症状として特徴付けられる。これにより、呼吸空気流の減少、低酸素血症(血液中酸素レベル減少)、高炭酸血症(二酸化炭素CO2循環量増加)及び睡眠からの覚醒等の症状が生じ、覚醒すれば、患者は、呼吸可能な安定気道に回復する。しかしながら、睡眠時呼吸障害の病態生理(病気の発生過程)が上気道の圧潰のみに限らないことを示す新たなデータも存在する。
【0004】
横隔膜及び/又は胸の筋収縮の活動により、酸素O2が豊富でかつ二酸化炭素CO2が不足する空気が肺に供給されて、肺に戻る脱酸素化した二酸化炭素CO2の豊富な血液中の二酸化炭素CO2は、その濃度勾配により血液から肺胞中に受動的に拡散すると共に、その濃度勾配により酸素O2が肺胞から血液中に拡散する呼吸動作が行われる。血液中に含まれる二酸化炭素量の酸素交換負担量に応じて呼吸動作を行うネガティブフィードバックにより、呼吸が調整される。ネガティブフィードバック生体代謝系により制御される主可変数は、炭酸ガス分圧PCO2として測定される血流中の二酸化炭素CO2値である。化学的環境内の変化によって活性化され、神経インパルスを生じさせる細胞である中枢性化学受容体と、末梢性化学受容体の炭酸ガス分圧PCO2が増加すると、血液の換気代償作用が増加(即ち、換気により体内から二酸化炭素CO2が除去される)され、前記化学受容体の炭酸ガス分圧PCO2が減少すると、血液の換気代償作用が減少される。このように、血液内の換気を制御して、前記化学受容体の炭酸ガス分圧PCO2が生理的範囲内に維持される。ネガティブフィードバック生体代謝系が危殆に瀕すると、その後、所与の換気妨害(例えば、増加換気による睡眠からの覚醒)が存在すると、生じる換気行為は、減衰されず増幅されることがある。これにより、(上部気道の虚脱を殆ど治療する必要のない睡眠時呼吸障害の一種である)中枢性無呼吸による過呼吸症を生じることがある。
【0005】
脈管構造により相互に連結されるコンパートメント(脳コンパートメント、肺コンパートメント等)の生体系として呼吸動作生体系をモデル化できる。前記コンパートメント間の血流を通じて、炭酸ガスが流動する。設備コンパートメントは、換気と肺内の炭酸ガス分圧PCO2との間の入力-出力特性を示し、肺と、人体組織との2つの副コンパートメントからなる。非線形一次微分方程式体系として設備を示すことができるが、プラント利得(plant gain:肺毛細血管内での炭酸ガス分圧変化)の概念を使用して、設備を単純化することができ、プラント利得は、換気変化に対する肺胞内の炭酸ガス分圧PACO2の変化(ΔPACO2/Δ換気)を示す。室内空気の状態では、プラント利得は、所定の換気増加に対する炭酸ガス分圧PACO2の減少量(これによる血液と肺胞との間の二酸化炭素CO2の濃度勾配の増加量)を決定する。このように、肺胞内の二酸化炭素CO2濃度を増加することにより、換気による炭酸ガス分圧PACO2の減少を制限(即ち、二酸化炭素CO2濃度勾配を低減)して、プラントコンパートメントの利得を低下させる。換気制御の全利得は、全コンパートメント利得の積であるから、プラント利得を低下させると、システム全体のループ利得(loop gain:計算式=プラント利得×コントローラ利得[化学受容体での炭酸ガス分圧変化]×ミキシング利得[肺毛細血管から化学受容体で検知するまでの混合変化]で示され、ループ利得が上昇すると、換気制御特性が悪化する)が減少して、所与の疾患に対する反応が低下する。
【0006】
適切な圧力に滴定されるとき、マスク等の患者界面体を通じて供給される気道陽圧により、閉塞性睡眠時無呼吸症を効果的に治療でき、多くの場合、睡眠体系が改善されることが多数の研究により、証明された。また、閉塞性睡眠時無呼吸症を治療する有効な臨床的利点を示すデータもある。しかしながら、治療法を殆ど厳守せず(即ち、供給される持続気道陽圧[CPAP]下での睡眠継続時間が目標値未満)、治療間に著しく残留する睡眠時呼吸障害は、負の臨床結果となろう。
【0007】
チェーンストークス呼吸症(CSR)は、化学的な呼吸刺激物質の感度が過敏な患者に見られる睡眠時呼吸障害の他の症例である。チェーンストークス呼吸症は、通常心不全を伴うが、ある神経病学的状態の共存症の可能性もある。図1は、典型的なチェーンストークス呼吸症(CSR)の呼吸気体流量パターン30のグラフを示し、このグラフは、高呼吸動作(過呼吸)36と、低呼吸動作(呼吸低下又は無呼吸)38とが定期的に反復される期間を含み、呼吸が周期的に漸増する期間32と、呼吸が周期的に漸減する期間34とが並存する点に特徴がある。全体を符号40で図1に示す典型的なチェーンストークス周期は、約1分間持続し、患者のピーク(最大)呼吸流量が数回の呼吸周期にわたり増加する逓増変化領域(矢印A)と、患者のピーク呼吸流量が数回の呼吸周期にわたり低下するピーク流量の逓減変化領域(矢印B)とにより特徴付けられる。睡眠障害は、動脈中の酸素(PO2)が周期的に不飽和となるのみならず、心臓血管系、特に心臓にストレスを与える。過呼吸は、覚醒を生じて、十分な睡眠が得られないことが多い。
【0008】
中枢性無呼吸の検出時に、非侵襲性機械換気を供給しかつ瞬間ピーク空気流量が適合閾値未満に低下したときに、換気を補助できる適応アルゴリズムを使用して、低呼吸動作状態間に換気量を増加することにより、チェーンストークス呼吸症を大幅に低減し又は更に除去できることを示す新たなデータもある。
【0009】
二酸化炭素CO2の再吸入を促進する(即ち、プラント利得を減少する診療法)実験室内又は二酸化炭素CO2の再呼吸を推進する増設されたデッドスペース内でチェーンストークス呼吸症を大幅に減少しかつ更には除去できる別の研究が他の研究者から発表された。図2は、ロレンジ・フィルホ・ジー、ランキン・エフ、ビエス・アイ、ブラッドリー・ティー・ディー著、米国雑誌「呼吸と臨界治療医療薬(1999年)」159:1490〜1498頁に記載される「心不全を患うチェーンストークス呼吸症患者が吸入する二酸化炭素と酸素の効果」からの引用であり、参照することによりそれらの全内容を本明細書の一部とするが、この雑誌は、空気呼吸(試料A)と比較して、二酸化炭素CO2の吸入(試料B)によるチェーンストークス呼吸症と、中枢性無呼吸との解消を示す。図2に示すように、脳波図(EEG)、顎下筋電図(EMG)、周期換気量(VT[安静又は通常の呼吸状態での吸気と呼気の量])、酸素飽和度(SaO2)、周期二酸化炭素終末割合(FETCO2)及び経皮性二酸化炭素分圧(PtcCO2)を含む二酸化炭素CO2と、酸素O2との吸入効果を表す様々な測定値が研究から得られた。
【0010】
二酸化炭素CO2の再呼吸を促進する低流量持続気道陽圧による治療目的の実験は、少数の外来患者には成功であった。ルマースら名義の下記特許文献1は、CO2の再呼吸を促進して中枢性無呼吸を治療する改良型持続気道陽圧(CPAP)装置を開示し、参照することにより特許文献1の全内容を本明細書の一部とする。また、換気制御を改善する利点は、チェーンストークス呼吸症又は中枢性無呼吸の治療装置以外にも普及する可能性がある。持続気道陽圧急性中枢性無呼吸を示す閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)の患者は、上部気道の虚脱及び換気制御の両方に難点があると思われる。このように、過呼吸(呼吸亢進)症状間に肺胞のCO2濃度を増加することにより、気道陽圧で上気道を安定させかつプラント利得が低下するので、前記患者の陽圧治療効果を改善することができる。上気道の安定する患者は、気道陽圧を使用せずに、プラント利得を低下する診療法が適当である。
【0011】
下記特許文献2(米国特許出願第10/716,360号)は、気道陽圧を併用して正確な濃度の二酸化炭素CO2及び酸素O2を患者に供給することにより、睡眠時呼吸障害を治療する装置及び方法を開示し、参照することにより特許文献2の全内容を本明細書の一部とする。二酸化炭素CO2の補充供給源を設けて、患者に供給する前に、供給される酸素O2が二酸化炭素CO2に混合される。このように、気道陽圧流量を維持するこの形態は、呼吸の異常な制御(例えば、チェーンストークス呼吸症)のみならず、上部気道閉塞に伴う睡眠時呼吸障害に対応するものである。
【0012】
2段階(バイレベル)気道陽圧治療法は、睡眠時無呼吸、他の呼吸障害及び心臓障害の治療法で進歩した気道陽圧治療法の一種である。2段階圧力治療法では、比較的高いレベルの圧力と比較的低いレベルの圧力とを患者の気道に交互に与えて、大振幅力と小振幅力の治療圧力が交互に気道に供給される。患者の吸気周期と呼気周期にそれぞれ同期する高振幅と低振幅の適用陽圧レベルは、吸気気道陽圧(IPAP)及び呼気気道陽圧(EPAP)として公知である。
【0013】
可変気道陽圧(VarPAP)として公知の適応可能な2段階圧力治療法は、ヒル名義の下記特許文献3に開示され、参照することにより特許文献3の全内容を本明細書の一部とする。吸気気道陽圧、呼気気道陽圧又は両方を調整するアルゴリズムを実行する可変気道陽圧装置は、気道陽圧補助装置の多くの標準機能を実行して、チェーンストークス呼吸症パターンを抑止することができる。流量センサを利用して、呼吸周期間の患者ピーク流量を測定し、制御装置によりピーク流量を監視して、患者がチェーンストークス呼吸症又は他の睡眠時呼吸障害を体験しているか否かが決定される。各々異なる時間間隔を生ずる3層処理を実行するアルゴリズムを使用して、患者の要求に適合しかつあらゆる睡眠障害の発生を検出するように、供給される気体圧力が連続的に適応される。前記中枢性無呼吸として公知の呼吸低下期間又は無呼吸期間の場合に、開示される可変気道陽圧装置は、患者の呼吸を活性化する「装置呼吸」を供給できる可変気道陽圧を生ずる。
【特許文献1】米国特許第6,752,150号公報
【特許文献2】米国公開第2004/0144383号公報
【特許文献3】米国特許第6,752,151号公報
【特許文献4】米国出願第11/235,520号
【特許文献5】米国特許出願第11/234,351号
【特許文献6】米国仮特許出願第60/697,130号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
瞬間平均吸気流量と最大平均吸気流量の媒介変数に基づき、患者が睡眠時呼吸障害を体験しているか否かを判定することを目的とする出願係属中の上記特許文献4は、特許文献3を改良するもので、参照することにより特許文献3及び4の全内容を本明細書の一部とする。前記平均化媒介変数は、特許文献3に使用される未処理の瞬間媒介変数を平滑化し又は濾波する作用があるので、より洗練された結果が得られる。内部呼吸流量の監視と改良型障害検出に関する更なる改善も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施の形態では、患者の気道に呼吸用気体流を供給する圧力補助装置が設けられる。圧力補助装置は、呼吸用気体の加圧流を発生する加圧流モジュールと、加圧流モジュールに連結されかつ患者の気道に呼吸用気体流を供給する通路となる患者回路とを備える。圧力補助装置は、患者の呼吸パターン特性(呼吸パターン特徴又は呼吸パターン指標)を監視するセンサと、センサに接続される制御装置とを備え、制御装置は、呼吸パターン特性が上限閾値を超えるとき、二酸化炭素吸気割合を増加し、呼吸パターン特性が下限閾値未満のとき、自動制御換気(サーボ換気)を行う。監視される患者の呼吸パターン特性に基づき、上限閾値と下限閾値が変更される。
【0016】
本発明の別の実施の形態では、患者の気道に呼吸用気体流を供給する圧力補助装置は、呼吸用気体流を発生する加圧流モジュールと、加圧流モジュールに連結されかつ患者の気道に呼吸用気体流を送出する通路となる患者回路とを備える。圧力補助装置は、患者の呼吸パターン特性を監視するセンサと、患者回路に取り付けられる二酸化炭素補充装置とを更に備える。加圧流モジュールと二酸化炭素補充装置とに制御装置が作動接続される。センサに接続される制御装置は、呼吸パターン特性が上限閾値を超えるとき、患者回路内の患者が吸気する二酸化炭素量を増加し、呼吸パターン特性が下限閾値未満のとき、気体流発生モジュールを制御して、患者の気道に供給される呼気圧に対する吸気圧の比率を増大する。
【0017】
本発明の別の実施の形態は、呼吸療法を受ける患者の換気状態を決定する判定法を提供する。この判定法では、患者回路を通じて呼吸用気体の供給源から患者の気道に気体流が供給され、患者の呼吸パターン特性が監視される。一定期間を通じて呼吸パターン特性の平均値に基づき、呼吸パターン特性の下限閾値が設定され、呼吸パターン特性の初期値を増加し又は減少することにより、呼吸パターン特性の上限閾値が設定される。呼吸パターン特性の平均値変化が予め決められた範囲を超えるとき、上限閾値が低下され、患者に施される特定の治療法の回数が予め決められた回数を超えるとき、上限閾値が増加される。
【0018】
本発明の別の実施の形態は、患者回路を通じて呼吸用気体の供給源から患者の気道に気体流が供給されて患者の呼吸パターン特性を監視する患者の治療法を提供する。予め決められた期間にわたる呼吸パターン特性の変化が正値でありかつ予め決められた範囲を超えるとき、高呼吸状態が想定(予測)され、一定期間にわたる特性の変化が、予め決められた範囲を超える絶対値を含む負値であるとき、低呼吸状態が想定される。想定される状態に基づき、適切な治療法が患者に施される。
【0019】
本発明の別の実施の形態は、患者の気道に加圧呼吸用気体を供給する方法を提供する。患者回路を通じて呼吸用気体の供給源から患者の気道に気体流が供給され、患者の呼吸パターン特性が監視される。患者の呼吸パターン特性に基づき、呼吸パターン特性の上限閾値と下限閾値とが決定され、呼吸パターン特性値が上限閾値を超えるとき、二酸化炭素吸気割合が増加される。
【0020】
本発明の別の実施の形態は、患者を治療する理想的な治療窓(治療効果が得られる数値範囲[therapeutic window])を決定する方法を提供する。想定される又は現実の呼吸状態に基づき、適切な投与量の治療が患者に適用され、適用される投与量に応じて、患者の不安定性指数が測定される。一連の投与量の各応答に対する不安定性指数を示す一連のデータ点が記録され、適用される投与量に相当する治療窓は、測定される不安定性指数が許容値を超えるデータ点未満でかつ測定される不安定性指数が許容値未満のデータ点を超える不安定性指数に適合される。
【0021】
本発明の別の実施の形態は、想定され又は現実の呼吸状態に基づき適切な治療の投与量を患者に与える理想的な治療窓の範囲で患者を治療する方法を提供する。所与の投与量に対応する患者の不安定性指数が、測定され、一連の投与量の各応答に対する不安定性指数を示す一連のデータ点が記録される。所与の投与量に相当する治療窓は、測定される不安定性指数が許容値を超えるときのデータ点未満でかつ測定される不安定性指数が許容値未満のときのデータ点を超える不安定性指数に適合される。治療窓内で次の治療投与量が患者に与えられる。
【0022】
参照符号により各図の対応する部分を示す添付図面に関する以下の説明、特許請求の範囲及び本明細書の全構成部分により、本発明の前記目的及び他の目的、特徴及び特性、構造の関連要素の操作法及び機能、部品の組み合わせ並びに製造経済性は、明らかとなろう。しかしながら、図面は、図示及び説明の目的に過ぎず、発明の範囲を制限しないものであることは、明確に理解できよう。別途明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用する用語「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」の単数形は、複数の対象を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
中枢性睡眠時無呼吸症、チェーンストークス呼吸症、持続気道陽圧急性中枢性無呼吸症又はその他不安定な呼吸動作のある患者は、所与の換気刺激に対する換気反応を示す高ループ利得を有すると思われる。高ループ利得の主要因は、中枢性化学受容体により、二酸化炭素(CO2)に対する感度が増加するためと思われる(高コントローラ利得)。本発明は、高呼吸動作状態間に換気プラント利得を低下させかつ低呼吸動作状態間に換気を増加させて、この高いループ利得を緩和又は相殺する方法を示す。
【0024】
本発明の実施に使用する装置の機能要素は、特許文献3に開示される機能要素と同様でもよい。図3に示すように、状態依存型気道陽圧補助装置50は、従来の持続気道陽圧装置又は2段階装置に使用される送風機(ブロワ)等の気体流発生装置52を備え、何らかの適切な供給源から搬送される呼吸用気体を受ける矢印Cで全体を示す気体流発生装置52は、加圧される酸素又は空気のタンク、周囲大気又はそれらの組み合わせ等である。気体流発生装置52は、周囲大気圧を超える比較的高い圧力と、周囲大気圧にほぼ等しい低い圧力とで、患者54の気道に供給される空気、酸素又はそれらの混合気体等の呼吸用気体流を発生する。患者に酸素を供給することにより、低呼吸動作状態による換気低下により生じる酸化血色素不飽和化を防止しかつ/又は酸化血色素飽和状態から独立して呼吸動作を安定させることができる。
【0025】
矢印Dで全体を示す呼吸用気体の加圧流は、配給導管56を通じて、気体流発生装置52から公知構造を有する何らかの呼吸マスク又は患者界面体58に供給され、呼吸マスク又は患者界面体58は、通常患者54に着用され又は取り付けられて、患者の気道に呼吸用気体流を搬送する。配給導管56と患者界面体58を患者回路と総称する。空気を排出する矢印Eで示す排気口57は、患者界面体58、導管56又は他の何れかの適切な位置に設けられる。一実施の形態では、患者回路内の圧力値を調整できる制御弁を排気口57に設けて、捕捉されかつ再呼吸される吐出気体(特に二酸化炭素CO2)の圧力を制御弁で増加し又は減少することができる。後記連動手段若しくは通信媒体65を通じて制御装置64により自動制御し又は手動で制御弁を調整することができる。特許文献3について説明したように、本発明による装置は、単一アーム装置若しくは2アーム装置又は2以上のアームを有する装置を使用できる。
【0026】
一実施の形態では、呼吸用気体(呼吸に適する気体)が通過する導管が内部に形成される可撓性管、剛性管又は他の部材により、導管56の様々な部分又は全てを形成することができる。患者界面体58は、患者の気道に呼吸用気体を搬送するのに適する鼻マスク、鼻/口マスク、全面型面体(フルフェースマスク)、鼻カニューレ、気管内挿入管又は気管内チューブ等の侵襲性又は無侵襲性の何らかの顔面装着器具である。顔面装着器具を患者の頭部に取り付けるヘッドギアが患者界面体58に設けられる。また、患者治療装置の少なくとも1つの動作モードを制御する制御部が患者界面体58に取り付けられる。図示の実施の形態では、患者界面体58及び/又は導管56から周囲大気に気体を排出する排気口57が患者界面体58及び/又は導管56に設けられる。排出気体の流量を制限することにより、患者界面体58内の気体の圧力を制御する固定常開式の排気口57を設けてもよい。別法として、排出流量を制御する別形態の可変式の排気口57を設けてもよい。連動手段若しくは通信媒体65を通じて、制御装置64に排気口57の開閉手段を連絡し、患者治療装置により、自動的にかつ/又は積極的に排気口57の開閉を制御してもよい。適切な排気口は、米国特許第6,851,425号及び第6,615,830号に例示され、参照することにより、米国特許の内容を本明細書の一部とする。
【0027】
図示の実施の形態では、状態依存型気道陽圧補助装置50は、配給導管56に設けられる圧力制御装置として制御弁60を備える。制御弁60は、気体流発生装置52から患者に供給される呼吸用気体流の圧力を制御する。この目的に対し、患者に供給される気体の圧力及び/又は流量を協力して制御する気体流発生装置52と制御弁60とを併せて加圧流モジュールと総称する。
【0028】
本発明の一実施の形態では、図3に示す加圧流モジュールは、気体流発生装置52及び制御弁60を含む。図3に示す実施の形態では、呼吸用気体を受けて患者の気道に供給する呼吸用気体の圧力を増加する気体流発生装置52が加圧流モジュールに設けられる。患者に供給される呼吸用気体を受ける気体流発生装置52は、呼吸用気体の圧力を上昇するポンプ、送風機(ブロワ)、ピストン又は送風器(ベローズ)等の何らかの装置である。上記のように、本発明は、患者に呼吸用気体を供給する気道陽圧補助装置50に周囲大気以外の気体を導入することも企図する。前記実施の形態では、空気、酸素、二酸化炭素又は他の呼吸に適する混合気体を収容する気体の加圧容器又は加圧タンクから気体流発生装置52に気体を吸入できる。加圧流モジュールの他の実施の形態では、気体流発生装置52を必ずしも設ける必要はなく、その代わりに、圧力調整器で制御されて患者に供給される圧力に加え、加圧気体の容器又はタンク自体の圧力により、呼吸用気体を加圧することができる。一実施の形態では、気体流発生装置52に使用される送風機は、圧力補助治療間にほぼ一定の速度で駆動されて、ほぼ一定の高圧力及び/又はほぼ一定の高流量の気体を気道陽圧補助装置50内に供給する。
【0029】
図3に示す実施の形態では、気体流発生装置52から制御弁60に加圧流モジュール内の呼吸用気体が供給される。下記のように、制御弁60及び/又は圧力発生装置52は、下流に設けられる管路内を流れる気体の圧力及び/又は流量を制御する加圧流モジュールとなる。管路内圧力及び管路内流量を制御する方法として、制御弁60の例は、管路56から気体を排出するスリーブ弁又はポペット弁等の少なくとも1つの弁を含む。ヘテら名義の米国特許第5,694,923号は、大気に気体を排出しかつ気体流発生装置52から患者に供給される気体流を制限する制御弁60としての使用に適する二重ポペット弁装置を開示し、参照することにより、前記米国特許の内容を本明細書の一部とする。
【0030】
単一の速度のみで作動する送風機の気体流発生装置52の実施の形態では、制御弁60の単数又は複数の制御設定値を調整した後に、管路内の呼吸用気体の圧力と流量を制御することができる。しかしながら、送風機の速度等の気体流発生装置52の作動に関する単一又は複数の制御設定値を、制御弁60の制御設定値と組み合わせて又は単独で調整し、患者に供給される呼吸用気体の管路内圧力及び管路内流量を制御する実施の形態も、本発明は、企図する。例えば、気体流発生装置52を適切な作動速度に調整(マクロ制御)して、所望の管路内圧力及び管路内流量に近い管路内圧力と管路内流量を達成できる。更に、制御弁60に関する単数又は複数の制御設定値を調整することにより、管路内圧力及び管路内流量の微調整(ミクロ制御)を行い、気体流発生装置52と制御弁60の2作動を組み合わせて、加圧流モジュールの下流に設けられる管路内の呼吸用気体の最終回路圧力を決定することができる。
【0031】
送風機単独で又は圧力制御弁60と組み合わせて送風機の速度を変更する等、患者に供給される圧力を加圧流モジュールにより制御する他の技術も本発明が企図することは、明白である。このように、制御弁60は、患者に供給される呼吸用気体流の圧力制御に使用される技術に依存して任意に取り付けられる装置である。制御弁60を省略すれば、加圧流モジュールは、気体流発生装置52のみとなり、例えば、気体流発生装置52のモータ速度を制御することにより、患者回路内の気体圧力を制御することができる。圧力を制御する他の技術は、可変制御弁又は固定制御弁を使用して、気体流を大気中に放出し又は管路内の他の分岐管路に流出させるものである。
【0032】
配給導管56内で呼吸用気体流を測定する流量センサ62が状態依存型気道陽圧補助装置50に更に設けられる。流量センサ62は、肺活量計、呼気気流計、可変オリフィス変換器、差圧変換器又は他の従来の流量変換器等、これらの媒介変数の測定に適する何らかの装置である。図3に示す現在好適な実施の形態では、配給導管56と直列(同一線上)にかつ制御弁60の下流に流量センサ62を配置するのが最も好ましい。制御装置64に送出される流量信号を発生する流量センサ62を使用して、患者に与える気体流量が決定される。
【0033】
患者で直接流量を測定する技術、配給導管56に沿う他の位置で流量を直接測定する技術、圧力発生装置の作動に基づき患者流量を測定する技術、及び圧力発生装置の上流で流量センサを使用して患者流量を測定する技術等、患者の呼吸流量を測定する他の技術も、本発明は、勿論企図する。例えば、患者界面体に配置される定流量部材を開示するスターら名義の米国特許第6,017,315号の内容を参照することにより、本明細書の一部とする。圧力、温度、二酸化炭素CO2濃度等を含む気道陽圧補助装置50内で測定される他の間接的な媒介変数から流量を算出することもできる。
【0034】
図3に示す回路にセンサブロック61が更に設けられる。(本流又は側流で)二酸化炭素CO2、酸素O2又は何らかの他の適切な測定値を検出する単一のセンサ又は複数の追加センサを表わすセンサブロック61は、患者から排出又は送出される気体の特性に関連する情報を捕集する。配給装置に沿う同一の位置に各種のセンサを配置する必要は必ずしもなく、センサブロック61は、配給装置に沿って分散して配置できる複数のセンサの単なる代表に過ぎない。このように、患者界面体58内、導管56内又はユニット内の他のどこの場所で二酸化炭素CO2を測定してもよく、圧力供給回路(気道陽圧補助装置)50内での限定を意図せず、同様に患者回路内で二酸化炭素CO2を測定できる。二酸化炭素CO2の測定値をアルゴリズムに使用して、貯蔵部又はデッドスペース(死腔)の二酸化炭素CO2量を決定することができる。測定値を更に使用して、二酸化炭素CO2の捕捉量又は除去量を決定して、臨床上回避すべき呼吸動作状態の発生を予測できる。この予測情報を使用して、治療の意思決定を行うことができる。吸気間又は呼気間の時間経過に伴う流量を乗算し、センサを通過して測定された二酸化炭素CO2レベルを積分することにより、センサは、二酸化炭素CO2の除去量又は捕捉量を算出する。直接又は間接的に測定値を得ることができる。
【0035】
気道陽圧補助装置50に更に加湿器63を設けてもよい。患者回路内に配置される加湿器63を図3に示すが、気道陽圧回路50内等、気体供給装置内のどこでも加湿器63を配置できることは、理解されよう。加湿器63から供給気体に水分を付与して、患者の快適性を更に向上できる。加湿器63は、加湿量を増加するのみならず、導管56の気体から水分を除去して、呼気する湿潤空気を再呼吸することができる。このように、加湿器63は、湿気を制御(加湿又は除湿)する通過型又は加熱型の加湿器又はサブシステムである。本発明での使用に適する加湿装置を開示する出願係属中の特許文献5の全内容を参照することにより本明細書の一部とする。また、前記換気装置回路内の水分レベルを制御する加湿装置を開示する出願係属中の特許文献6の全内容を参照することにより本明細書の一部とする。
【0036】
状態依存型気道陽圧補助装置50に使用する様々な媒介変数を設定する入力/出力装置66を使用して、臨床医又は介護者等の使用者に情報及びデータを表示しかつ出力することができる。状態依存型気道陽圧補助装置50が捕集する動作情報と動作データを遠隔操作により監視しかつ制御する入力/出力端子を設けることも、本発明が企図することは、理解されよう。連動手段若しくは通信媒体を通じて、情報及び/又は命令を制御装置64に送出しかつ人間の知覚可能な形式により、患者又は他の使用者に情報を与える如何なる装置でも入力/出力装置66として使用できる。適切な入力/出力装置の例は、キーパッド、キーボード、タッチパッド、マウス、可視ディスプレイ(例えば、液晶表示装置[LCD]又は発光ダイオード[LED]画面)、マイクロホン、スピーカ、スイッチ、ボタン、目盛板、ランプ又は使用者が換気装置に情報を入力しかつ換気装置からの情報を受信できる他の如何なる装置を含んでもよい。
【0037】
患者の呼吸パターン特性を監視して、下記の通り、監視結果に基づいて呼吸用気体の流量を制御する所定の手順を実行できるマイクロプロセッサを制御装置64として使用することが好ましい。制御装置64は、加圧流量モジュール(流量発生装置52及び制御弁60)に作動連結される。例えば、図3の実施の形態では、センサブロック61,流量センサ62の出力が付与される制御装置64は、患者に供給される気体の瞬間容量(V)、気体の瞬間流量(V')又はその両方を決定する処理装置を備える。例えば、センサ62が測定する流量を積分すると、瞬間容量を決定できる。患者界面体58から比較的遠くに流量センサ62を配置する実施の形態では、制御装置64は、推定流量としてセンサ62からの出力を受信して、患者に供給される実際の気体流量又は負流量と考えられる患者から排出される作動気体流量を決定する。制御装置64は、例えば、推定漏洩流量を実行して、推定流量情報を処理し、当業者に公知のように、患者の気道での実際の流量を決定する。
【0038】
呼気中の二酸化炭素CO2を収容しかつ患者に再配給する再呼吸回路46を図4に例示する。図3に示す回路に再呼吸回路46を組み込んでもよい。図4に示すように、圧力源41から加圧気体を収容する再呼吸回路46は、流量計42を有する加圧流量モジュールである。制御装置64、また、持続気道陽圧装置又は2段階装置自体により再呼吸回路46に設けられる3口2位置弁43を制御することができる(即ち、気体流量により制御される)。2つの弁状態の一方に弁43を切り換えることができる。吸気間に、弁43は、第1の位置(図4の左側に示す位置I)にあり、再呼吸回路46は、従来の持続気道陽圧装置又は2段階圧力補助装置に非常に類似する。しかしながら、再呼吸回路46に直列に流量計42が接続され、流量計42により、空気流量の実時間値又は(空気流量を積分して)吸気容積を検出することができる。呼気間に、弁43は、第2の位置(図4の右側に示す位置E/R)に切り換えられ、呼気気体を捕集する例えば500mlの貯蔵部44を有する管状回路に呼気が導入される。吸気間に、吸気容積又は吸気流量が、予め設定されたレベルを超えれば、E/R位置に弁43を移動して、管状回路内に収容される呼気を加圧して、患者にこの呼気気体が供給される。適切なアルゴリズムにより、呼気の始期と吸気の始期に起動信号が送出される。また、基準吸気容積閾値を決定するアルゴリズムを実行できれば、吸気容積を予め設定し又は吸気容積を予め決める必要はない。患者の要求に適するアルゴリズムを設定することができる。
【0039】
変動する適応可能な2つの定量的範囲:上限閾値及び下限閾値により、本発明で設定される3つの呼吸状態を詳細に説明する。上限閾値と下限閾値は、呼吸動作の表示に適するピーク空気流量、平均ピーク流量又は周期的換気量等の呼吸動作を表示する特性に関連する。患者の兆候特性が上限閾値と下限閾値との間にあると、患者が正常な換気をしていると判断される。患者の示す兆候特性が上限閾値を超えると、患者が高呼吸動作状態であると判断される。患者の兆候特性が下限閾値未満に低下すると、患者が低呼吸動作状態であると判断される。低呼吸動作状態は、中枢性無呼吸換気低下又は他の睡眠時呼吸障害を示すことがある。低呼吸動作に続く高呼吸動作の期間は、チェーンストークス呼吸症を示すことがある。本発明の状態依存型気道陽圧装置(気道陽圧装置)は、患者が現在動作している特定の呼吸状態に基づいて、患者への治療法又は診療法を変更し、苦痛の状態(即ち、患者の呼吸が理想的な呼吸から乖離する度合)により、適応可能な範囲の強度レベルで治療又は診療を更に行う。
【0040】
閾値が変動する(患者の状態により変化する)ので、正常呼吸の窓(範囲)を縮小し又は全体に省略するように閾値を特定状態に集中させることは、当業者に理解されよう。正常呼吸の窓が極めて小さくなり又は存在しなくなるとき、本発明の状態依存型気道陽圧装置は、目標値からの偏差量に比例して(即ち、併用する閾値からの偏差量で決定される呼吸の苦痛状態に比例して)、適切な診療法(例えば、後述する二酸化炭素CO2又は酸素O2の投与量の増加又は適応可能な自動制御換気)を効果的かつ継続的に変更する。本明細書では、3つの別個状態を特定している装置を主に示すが、全症例の閾値を特定の状態に集中させて、単一値からの兆候特性の偏差量に基づく適切な強度の適切な診療法を効果的に与える装置が得られることは、理解されよう。
【0041】
通常の換気状態間、即ち、患者の兆候特性が上限閾値と下限閾値との間にあるとき、上部気道閉塞の兆候を除去するように、睡眠検査間に設定される持続気道陽圧設定値若しくは2段階圧力補助設定値又は自動化アルゴリズムにより、実施する陽圧治療法が決定される。時間の経過に伴う患者空気流量を表す通常の換気状態を図5に示す。周期的換気量又は他の呼吸パターン特性を本発明に指標として使用できることを当業者は認識しよう。ピーク流量上限閾値12及びピーク流量下限閾値14が(後述のように)決定され、図示の標準状態では、患者の実際の空気流10は、2つの閾値間で最大になる。
【0042】
図5に示すように、吸気気道陽圧16(IPAP)と呼気気道陽圧18(EPAP)とを含む2段階圧力治療は、標準状態間に一定に保持される。2段階圧力治療の代わりに持続気道陽圧治療(図示せず)を利用する装置では、患者に供給される連続的圧力レベルもまた一定である。例えば、呼気呼吸の開始時に呼気圧力を低減するシーフレックス(C-Flex)装置又はバイフレックス(Bi-Flex)装置により提供される公知の呼気圧力軽減法を併用して、患者快適性を向上することができる。バイフレックス装置は、気道陽圧装置により監視する気体流量に基づき、吸気圧が制御される。
【0043】
図6に示すように、患者が中枢性無呼吸22を発生するとき、患者から空気流10を検出できないので、ピーク空気流は、下限閾値14未満に低下する。制御装置64は、流量センサ62及び/又は他のセンサ61から流量情報を受信し、受信した流量情報を現在の閾値媒介変数と比較して、患者が低呼吸動作状態であるか否かを決定する。呼吸活動を検出できない一定期間経過後に又は呼吸パターン履歴に基づき、患者が低呼吸動作状態であるか否かを判定してもよい。
【0044】
低呼吸動作状態では、気道陽圧装置50が実施する治療法は、標準状態間に与えられる持続気道陽圧又は2段階圧力の最小限治療から変更される。説明の目的で、用語「持続気道陽圧治療」又は「2段階圧力治療」を使用するが、患者の呼吸圧力に基づく流量を供給する比例補助換気(PAV)等の無呼吸治療を対象とする閉塞性要素の他の治療モード又は治療法も、本発明が企図す点に留意されたい。設定される持続気道陽圧治療又は2段階圧力治療に加え、気道陽圧装置50は、自動制御換気又は可変気道陽圧(VarPAP)を患者に配給して、呼吸を発生させることができる。直近の呼吸パターン履歴に基づき患者に可変気道陽圧を供給する適応可能な装置は、特許文献3に開示され、参照することにより特許文献3の全内容を本明細書の一部とする。時間平均媒介変数を使用する可変気道陽圧装置は、特許文献4に開示され、参照することにより引用文献4の全内容を本明細書の一部とする。
【0045】
自動制御換気を患者に付与するとき、流量発生装置52及び/又は制御弁60に接続される制御装置64は、呼気気道陽圧に対する吸気気道陽圧の圧力比を増加し、気道陽圧装置は、患者による自発呼吸(即ち、「同期モード」として公知である患者自身の換気)の維持を補助するが、自発呼吸のない中枢性無呼吸の患者の症例では、「機械呼吸」を適用して、自発呼吸を開始させる。患者の動作から独立して制御される時間間隔により、一連の機械呼吸を適用する態様を「時間モード」と称し、自動制御換気の一態様とも判断される。「併用モード」は、同期モードの自発呼吸の間に患者の呼吸を補助しかつ患者が制御を必要とするとき機械呼吸又は時限式呼吸制御を与えるように、自動制御換気を配給するものである。苦痛状態が減少するほど、これに応じて呼気気道陽圧に対する吸気気道陽圧の圧力比を低下することができる。公知のように、吸気気道陽圧の増加/低下、呼気気道陽圧の低下/増加又はそれらの両方により、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧との間の圧力を変更することができる。例えば、呼気気道陽圧に対する吸気気道陽圧の圧力比を増大させて、吸気気道陽圧の増加、呼気気道陽圧の低下又はそれらの両方を達成することができる。予め決められた又は適応可能な波形ににより一呼吸の範囲内で多様に変化しながら呼吸全体を通じて吸気気道陽圧及び呼気気道陽圧を変化させることができる。
【0046】
図6に示すように、一定時間(予めプログラム制御される時間又は最適に設定される時間)経過後に中枢性無呼吸22が検出され、中枢性無呼吸22に対する反応17が誘発される。図6に示す反応17は、吸気気道陽圧(IPAP)の増加又は患者の自発呼吸を刺激する「機械呼吸」であろう。患者の状態履歴及び/又は現状に基づき必要と決定される強度レベル及び時間間隔により、次の機械呼吸が患者に配給される。
【0047】
低呼吸動作状態では、肺胞内二酸化炭素CO2(PCO2)又は吸気中二酸化炭素CO2(FiCO2)の割合を増加して、換気量を増加させることが更に望ましい。二酸化炭素CO2を増加する様々な方法、例えば可変漏洩弁により再呼吸を制御する方法、動的に死腔を増加させる方法、吐出された二酸化炭素CO2の貯蔵部を設ける方法又は二酸化炭素CO2の補充供給源を設ける方法が公知である。本明細書に引用する特許文献1は、可変漏洩弁、動的な死腔、吐出された二酸化炭素CO2の貯蔵部及び調整可能なマスク排気弁を含むこれらの装置の一部を開示し、特許文献1の全内容を参照することにより本明細書の一部とする。特許文献2は、酸素O2を混合した二酸化炭素CO2の補充供給源を開示し、同様に、特許文献2の全内容を参照することにより本明細書の一部とする。化学的生成、低温冷却、分子吸着及び大気中の気体又は患者からの吐出気体の濾過等、大気中の二酸化炭素CO2よりも高レベルの二酸化炭素CO2を形成する他の方法も本発明は、企図する。
【0048】
図7は、小換気量の検出を除き、図6に示す検出グラフと同様の低呼吸動作状態の検出グラフを示す。この場合、ピーク呼吸空気流量13が下限閾値14未満に低下するので、制御装置64は、低呼吸状態と判断する。上記の通り、制御装置64は、追加の自動制御換気(VarPAP)による治療を与えて、患者の呼吸動作を増進させる。図7では、特許文献3に記載されるように、検出した呼吸低下に応答して、自発呼吸間に吸気気道陽圧16が最適に増加17する。吸気中の二酸化炭素FiCO2又は肺胞中の二酸化炭素CO2を増加させる方法は、上記(即ち、動的な死腔、二酸化炭素CO2の貯蔵部、可変漏洩弁、その他)のように実行され、吸入する二酸化炭素FiCO2の制御気体流量20の増加21で示すように、患者の呼吸動作が高められる。
【0049】
図8に示すように、患者が上限閾値12を超える兆候特性10を示す場合、制御装置64は、患者が高呼吸動作状態にあると判定する。図8に示すように、ピーク流量は、最大15でピーク流量の上限閾値12を超える。この状態間に、二酸化炭素CO2を収容する貯蔵部を使用して又は再呼吸を実行して変動するデッドスペース(死腔)を保持する等の前記方法を使用して、吸気中の二酸化炭素FiCO2を増加させて、プラント利得を減少する治療が実行され、呼気終期に周期的な二酸化炭素CO2を捕捉する。肺胞中に適切な量の二酸化炭素CO2量を保持することにより、過呼吸期間に続いてしばしば発生する中枢性無呼吸又は呼吸低下を抑制することができる(図1に示す典型的なチェーンストークス呼吸症周期の過呼吸36に続く特性無呼吸38を参照)。
【0050】
図8は、高換気状態間に一定に保持される呼気気道陽圧18を示すが、呼気間に呼気気道陽圧18を減少して、前記特定の再呼吸法で呼気される二酸化炭素CO2を再吸気して回路性能を改善することも、本発明は、企図する。患者の状態履歴に最適に基づき、衝動的に又は前記方法の何れかの組合せに基づき、予め決められた又は適応可能な波形により、予め決められた一定レベルだけ呼気気道陽圧18を減少することができる。
【0051】
図3に関して再呼吸を増加させる装置の他の例は、呼気気体を導管56に帰還させるように排気弁57を能動的に制御する装置である。連動手段若しくは通信媒体65を通じて制御装置64により、弁57の開弁度を制御し、呼気気体の漏出を防止して、次の呼吸時に吸気中の二酸化炭素CO2割合を増加することができる。更に別の実施の形態では、患者界面体58に近接して気道陽圧装置50に取り付けられる二酸化炭素CO2の貯蔵部(図示せず)を利用して捕捉した呼気気体を患者の気道に再配給するものである。制御装置64により可変制御される弁を通じて、患者界面体58又は導管56に貯蔵部を連絡することができる。
【0052】
3つの呼吸状態及び各状態で実行する診療法及び治療を説明したが、更に、上限閾値と下限閾値の決定、正常呼吸の動的窓、即ち、上限閾値と下限閾値との間の範囲の設定を説明する。本発明による気道陽圧装置を実施して、何れか又は全ての呼吸状態間に自動滴定治療を行えることは、理解すべきである。自動滴定(タイトレーション)は、患者の上気道を保持して、閉塞性睡眠時無呼吸症、鼾又は呼吸低下等の発生に関連する気道の閉塞を防止するのに供給される最小レベルの気道陽圧を使用する。
【0053】
変動する上限閾値(DUT)を決定するために、気道陽圧装置は、まず既定値(デフォルト)又は初期値に設定される。従来の患者の状態履歴に基づき又は臨床医により、既定値が選択される。別法として、例えば、一定時間の経過に伴う平均ピーク空気流量又は平均周期的換気量等の測定した媒介変数に基づき、初期値を得ることができる。一方のアルゴリズムにより変動上限閾値を低下させ、他方のアルゴリズムが変動上限閾値を上昇させる2つの個別のアルゴリズムを並行に作動させて、変動上限閾値を決定することができる。各アルゴリズムは、交互に実行される。
【0054】
気道陽圧装置50が不安定な呼吸に応答していないとき、変動上限閾値は、低下する。このアルゴリズムは、呼吸測定値の平均値又は示される兆候特性(例えば、ピーク流量、周期的換気量等)の変化(例えば、適合線又は接続線の勾配)を算出し、呼吸パターン特性の変化が予め決められた値を超えるとき、その変化に比例する量だけ変動上限閾値を低下させる。時間経過に伴う平均呼吸測定値の変化が小さく又は変化せず、呼吸が安定するとき、変動上限閾値を変更する必要がない。時間経過に伴い平均呼吸測定値が変化して、呼吸が不安定なとき、変動上限閾値を低下して、高呼吸動作状態を検出する気道陽圧装置50の感度を上昇させる必要がある。
【0055】
図9は、変動上限閾値を低下させるアルゴリズムを略示する。ステップ100では、ピーク流量、周期的換気量又は他の測定値等、一定時間K1の経過に伴う平均呼吸測定値が決定される。ステップ102では、一定時間の経過に伴う平均呼吸測定値の変化ΔRmが決定される。ステップ104では、制御装置64は、平均呼吸測定値の変化ΔRmの絶対値(|ΔRm|)が、臨床医等の使用者が予めプログラム制御できる予め決められた閾値(T1)より大きいか否かを決定する。
【0056】
平均呼吸測定値の変化ΔRmの絶対値|ΔRm|が、閾値T1を超えるとき、制御装置64は、ステップ106で絶対値|ΔRm|に比例する分量だけ変動上限閾値を低下させる。ステップ106の値「c」は、使用者がプログラムできる低下係数である。低下係数cは、副作用又は急激な作用を患者に与えずに変動上限閾値を徐々に低下させる値にできる。
【0057】
絶対値|ΔRm|が、閾値T1を超えないとき、ステップ108に示すように、変動上限閾値を変更しない。この結果は、患者の呼吸パターンが安定していることを示すので、気道陽圧装置50の感度を増加する必要がない。
【0058】
図10は、変動上限閾値を上昇させるアルゴリズムを略示する。変動上限閾値を上昇させるべきか否かを決定するとき、問題は、気道陽圧装置50が基本的に高感度過ぎるか否かである。従って、複数の呼吸を補助する多くの二酸化炭素CO2により、装置感度を測定し、測定値を使用して、変動上限閾値を上昇させるべきか否かが決定される。
【0059】
ステップ200では、呼吸を補助する再呼吸用の二酸化炭素CO2の百分率CO2Suppが決定される。次に、この百分率は、ステップ202で予めプログラム制御される閾値T2と比較される。呼吸を補助する二酸化炭素CO2の百分率CO2Suppが、閾値T2以上のとき、ステップ204に示すように、百分率に比例する量だけ変動上限閾値が増加される。使用者が予めプログラムできる上昇係数cは、変動上限閾値を低下するアルゴリズムに使用する前記低下係数と同一でも同一でなくてもよい。
【0060】
呼吸を補助する二酸化炭素CO2の百分率CO2Suppが、閾値T2未満のとき、ステップ206に示すように、変動上限閾値は変更されない。この結果は、高呼吸動作状態で診療法の実行時に、気道陽圧装置50が過剰反応しないことを示すので、変動上限閾値を上昇させる必要がない。
【0061】
特許文献3及び特許文献4に利用される同様の方法にで、変動下限閾値(DLT)が決定され、参照することにより特許文献3と4の全内容を本明細書の一部とする。要するに、2分、5分又は他のある一定時間等、時間経過に伴い、平均呼吸測定値又は兆候特性(例えば、ピーク空気流、周期的換気量、その他)を測定し、移動平均値未満の予め決められた係数で動的(変動可能)に、変動下限閾値が、設定又は調整される。このように、調整される移動平均値未満に瞬間呼吸測定値が低下するとき、制御装置64は、低呼吸動作状態を認識しかつ対応する(単数又は複数の)診療法を開始する。時間経過に伴う平均測定値は、本質的に増加し減少するので、変動下限閾値を上昇しかつ低下させる別々のアルゴリズムは、当然必要ない。
【0062】
本発明の別の実施の形態では、気道陽圧装置は、患者の呼吸パターンを監視しかつ傾向又は変化を特定して、不安定な又は臨床上有害な呼吸動作状態を予測する。呼吸動作状態の変化を予測するとき、気道陽圧装置は、適切な治療診療法(例えば、自動制御換気、肺胞の二酸化炭素CO2の増加等)を作動又は中断して、有害な状態に至る呼吸動作状態を防止する。これは、有害な状態の発生前に、気道陽圧装置が有害な状態を予測して、その状態を治療する方法を実施する有利な特徴である。実際に患者に実施される治療診療法の有効性に基づき、気道陽圧装置が適切な治療窓を「学習する」機能を気道陽圧装置に付与することができる。前記気道陽圧装置と併用して又は独立型装置として、この学習機能を使用することができる。
【0063】
図11は、ピーク流量の増加傾向に基づく高呼吸状態を予測するグラフを示す。図示のように、最初の3つのピーク流量10は、通常の呼吸窓の範囲内にある(即ち、ピーク流量10は、上限閾値12より低くかつ下限閾値14より高い)が、上限閾値12を超える傾向にある。傾向を予測できかつ状態変化を推考できる方法で、呼吸測定値(本例では、ピーク流量)の傾き、勾配又は傾斜24が最初に決定される。傾き24が予め決められた最大限界値を超えるとき、実際の状態変化について説明したように、制御装置64は、二酸化炭素CO2の再呼吸又は動的な死腔等の適切な診療法を時点26で作動又は中断させる。この早期の診療法により、予測される呼吸状態変化を減少し又は防止することができる。傾向予測を使用せずに気道陽圧装置が診療治療法を実行(又は中断)すると、時点28に至る。このように、有害な換気状態の発生を待たずに、厳密な状態依存法より極めて早く、傾向予測法により患者の呼吸パターンを正常化できる。
【0064】
図12は、周期的換気量を呼吸測定値10とする点を除き、図11と同様の高呼吸動作傾向を示すグラフである。前記の通り、3呼吸周期後に傾向を予測し、予め決められた限界値を超える傾き24が決定される。実際の状態変化が発生する前の時点26で、実施又は中断の何れか適切な診療治療が行われ、状態変化の有害な効果を全体的に減少又は除去することができる。
【0065】
図13と図14は、ピーク流量と周期的換気量とをそれぞれ呼吸測定値とする低呼吸状態の予測グラフを示す。高呼吸状態の予測と同様に、連続的な3呼吸周期の傾き24に基づき傾向が予測される。傾き24が予め決められた限界値を超えるとき、それに応じて適切な診療治療法が実行又は中断される。3つ以上の多数の呼吸周期を使用して傾向を予測し、適切な治療法を決定することができることは、当業者に理解されよう。
【0066】
本発明の気道陽圧装置を患者の現在の状態に更に適応させて、理想的な治療窓を決定することができる。診療間に患者に配給して呼吸を安定化させる二酸化炭素CO2又は酸素O2の「投与量」の有効範囲を治療窓と指称する。図15は、気道陽圧装置に使用して理想的な治療窓を決定するため患者から採取される多数の試料のグラフを示す。縦軸は、高呼吸動作間に二酸化炭素CO2を捕捉するため、供給される二酸化炭素CO2の投与量を示す。デッドスペース(死腔)の容積により、二酸化炭素CO2の投与量を決定することもできる。横軸に沿う不安定性指数は、呼吸動作の変化による苦痛の測定値又は不安定呼吸の割合であり、下記媒介変数から導き出すことができる:a)ピーク流量又は周期的換気量等の測定値の最小値と最大値との比率、b)ピーク流量又は周期的換気量等の移動窓平均(又は中央)測定値に適合する接続線の傾き(勾配又は傾斜)、又はc)呼吸制御装置のループ利得の測定値又は予測値。
【0067】
図15の治療窓308は、特定の治療に使用される吸気二酸化炭素CO2の投与量割合又はデッドスペース(死腔)容積の適切な範囲を示す。データ点302は、安定事象の発生を示すが、データ点300は、不安定事象の発生を示す。測定した(単数又は複数の)不安定性媒介変数に基づき、安定事象302は、許容可能な治療窓308内にあると判断される。二酸化炭素CO2 304の投与量が治療窓308を超えると、過呼吸を生じ、治療窓308未満の投与量306は、十分に安定な呼吸が得られない。このように、一日毎に多数の試料データを蓄積しかつ古いデータを削除することにより、患者の現在の状態に気道陽圧装置を常時適合させることができ、測定した患者不安定性データに基づき、気道陽圧装置を治療線に適合させかつ治療線を調節することができる。即ち、測定した単数又は複数の前記不安定性媒介変数により、投与量を決定するように、診療に使用する投与量が不安定であるとき、制御装置は、治療窓308を超え又は治療窓308未満の投与量に連動して、これに応じて治療窓308を変更する。
【0068】
前記方法を適応できるとき、気道陽圧装置は、個々の患者に何の治療法が有効であるかを学習する。気道陽圧装置にプログラム入力されかつ患者の治療で得られる経験として更新される初期条件が適応可能な気道陽圧装置に必要である。文献によく記載される多数の適応可能な制御統計技術単数又はいくつかを利用して、より確実な気道陽圧装置を作成して、気道陽圧装置を患者に効果的に適応させ、外部データ及び/又は質の悪いデータ等を取り扱ってもよい。
【0069】
この実施例は、予測され又は現存する過呼吸の診療法を説明するが、呼吸低下又は中枢性無呼吸に対して同様のグラフと統計学的分析を利用することができる。その場合、二酸化炭素CO2及び/又は自動制御換気を利用して予測され又は現存する状態を治療するグラフを示す。患者から二酸化炭素CO2を更に除去するには、二酸化炭素CO2が少量過ぎて、中枢性無呼吸が悪化する。二酸化炭素CO2が多量過ぎると、過呼吸になる。
【0070】
また、気道陽圧装置は、アルゴリズムに入力する生理学的な媒介変数の数だけ一時的データ等、一次元以上の治療最適化データ分析を必要とすることがある。例えば、気道陽圧装置に履歴(ヒステリシス)機能を与えて、現状に導く複数の呼吸状態の配列により、正しい治療を患者に与えるのことを認識する必要があろう。
【0071】
現在最も実用的かつ好適と思われる実施の形態を図示して詳記したが、前記記載は単に説明の便宜に過ぎず、本発明を開示した実施の形態に限定されず、本発明は、特許請求の範囲内に該当すると共に、特許請求の範囲と同趣旨の変更態様並びに同等の装置を包含すること企図する。例えば、何れかの実施の形態の単一又は複数の特徴を他の何れかの実施の形態の単一又は複数の特徴に可能な範囲内で組み合わせられることも、本発明が企図することを理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】漸増期間と漸減期間を含む典型的なチェーンストークス呼吸症パターンを示す患者流量波形図
【図2】チェーンストークス呼吸症の患者への二酸化炭素吸気割合を増加する効果を示す波形図
【図3】本発明の実施の形態による気道陽圧補助装置の略示ブロック図
【図4】本発明の実施の形態による再呼吸回路の略示ブロック図
【図5】本発明の実施の形態による標準呼吸状態の呼吸気体流量を示すグラフ
【図6】本発明の実施の形態による低呼吸動作状態の呼吸気体流量を示すグラフ
【図7】本発明の他の実施の形態による低呼吸動作状態の呼吸気体流量を示すグラフ
【図8】本発明の実施の形態による高呼吸動作状態の呼吸気体流量を示すグラフ
【図9】本発明の実施の形態による変動する上限閾値を低下させるアルゴリズムを略示するフローチャート
【図10】本発明の実施の形態による変動する上限閾値を上昇させるアルゴリズムを略示するフローチャート
【図11】呼吸測定値がピーク流量を示す高呼吸状態を予測する本発明の実施の形態による傾向基準予測法を示すグラフ
【図12】呼吸測定値が周期的換気量を示す高呼吸状態を予測する本発明の実施の形態による傾向基準予測法を示すグラフ
【図13】呼吸測定値がピーク流量を示す低呼吸状態を予測する本発明の実施の形態による傾向基準予測法を示すグラフ
【図14】呼吸測定値が周期的換気量を示す低呼吸状態を予測する本発明の実施の形態による傾向基準予測法を示すグラフ
【図15】理想的な治療窓を決定する本発明の実施の形態による統計分析法を示すグラフ
【符号の説明】
【0073】
(10,50)・・患者の気道に呼吸用気体流を供給する装置、 (46)・・二酸化炭素補充装置、 (56)・・患者回路、 (61,62)・・センサ、 (64)・・制御装置、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸用気体の加圧流を発生する加圧流モジュールと、
加圧流モジュールに連結されかつ患者の気道に呼吸用気体流を伝達する患者回路(56)と、
患者の呼吸パターン特性を監視するセンサ(61,62)と、
センサに接続される制御装置(64)とを備え、
制御装置(64)は、呼吸パターン特性が上限閾値を超えるとき、吸気中の二酸化炭素割合を増加し、呼吸パターン特性が下限閾値未満のとき、自動制御換気を実施し、監視される患者の呼吸パターン特性に基づき、上限閾値と下限閾値とを変更することを特徴とする患者の気道に呼吸用気体流を供給する装置(50)。
【請求項2】
制御装置は、呼吸パターン特性が下限閾値未満のとき、自動制御換気の実施に加えて、吸気中の二酸化炭素割合を増加させる請求項1に記載の装置。
【請求項3】
(a)再呼吸を実現する、(b)二酸化炭素の補充供給源を設ける、(c)吐出された呼吸用気体を取り込む貯蔵部から二酸化炭素を供給する、(d)(a)〜(c)の何れかの組み合わせにより、制御装置は、吸気中の二酸化炭素割合を増加させる請求項1に記載の装置。
【請求項4】
送風機(52)、弁(60)又はその両方を加圧流モジュールに設けた請求項1に記載の装置。
【請求項5】
上限閾値と下限閾値は、同一の単一値である請求項1に記載の装置。
【請求項6】
呼吸パターン特性は、患者のピーク流量又は患者の周期的換気量である請求項1に記載の装置。
【請求項7】
制御装置は、呼気圧力に対する吸気圧力の増加比率を供給して、自動制御換気を実施する請求項1に記載の装置。
【請求項8】
呼吸用気体流を発生する加圧流モジュールと、
加圧流モジュールに連結されかつ患者の気道に呼吸用気体流を搬送する搬送通路となる患者回路(56)と、
患者の呼吸パターン特性を監視するセンサ(61,62)と、
患者回路に接続される二酸化炭素補充装置(46)と、
加圧流モジュールと二酸化炭素補充装置とに作動接続される制御装置(64)とを備え、
制御装置は、センサに接続され、呼吸パターン特性が上限閾値を超えるとき、患者回路内の患者吸気中の二酸化炭素量を増加し、
制御装置は、呼吸パターン特性が下限閾値未満のとき、気体流発生モジュールを制御して、患者の気道に供給される呼気圧力に対する吸気圧力の比率を増加させることを特徴とする患者の気道に呼吸用気体流を供給する装置(10)。
【請求項9】
送風機(52)、弁(60)又はその両方を加圧流モジュールに設けた請求項8に記載の装置。
【請求項10】
(a)呼気中の二酸化炭素を再呼吸する患者に帰還させる弁(43)、(b)患者回路に連絡される外部の二酸化炭素供給源、(c)呼気される呼吸用気体を捕捉する二酸化炭素貯蔵部(44)又は(d)(a)〜(c)の何れかの組み合わせを二酸化炭素補充装置に設けた請求項8に記載の装置。
【請求項11】
上限閾値と下限閾値は、同一の単一値である請求項8に記載の装置。
【請求項12】
特性は、患者のピーク流量又は患者の周期的換気量である請求項8に記載の装置。
【請求項13】
呼吸パターン特性が下限閾値未満に低下すると、呼気圧力に対する吸気圧力の比率を増大させる請求項8に記載の装置。
【請求項14】
患者回路(56)を通じて呼吸用気体の供給源から患者の気道に気体流を供給する過程と、
患者の呼吸パターン特性を監視する過程と、
一定時間の経過に伴う呼吸パターン特性の平均値に基づき、呼吸パターン特性の下限閾値を設定する過程と、
呼吸パターン特性の初期値を増加又は減少して、呼吸パターン特性の上限閾値を設定し、呼吸パターン特性の平均値の変化が所定の限界値を超えるとき、上限閾値を低下させ、患者に適用する特定の治療の回数が所定回数を超えるとき、上限閾値を上昇させる過程とを含むことを特徴とする呼吸療法を受ける患者の換気状態を決定する方法。
【請求項15】
患者に適用される特定の治療は、二酸化炭素の再呼吸である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
呼吸パターン特性の時間経過に伴う平均値を所定の係数だけ減少して、下限閾値を得る請求項14に記載の方法。
【請求項17】
患者回路を通じて呼吸用気体の供給源から患者の気道に気体流を供給する過程と、
患者の呼吸パターン特性を監視する過程と、
一定時間の経過に伴う呼吸パターン特性の変化が正値でありかつ所定の限界値を超えるとき、高呼吸状態を予測する過程と、
一定時間の経過に伴う呼吸パターン特性の変化が負値でありかつ所定の限界値を超える絶対値を有するとき、低呼吸状態を予測する過程と、
予測された状態に基づき、患者に適切な治療を適用する過程とを含むことを特徴とする患者を治療する方法。
【請求項18】
呼吸パターン特性は、ピーク流量又は周期的換気量である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
一定期間は、多数の呼吸周期に依存する請求項17に記載の方法。
【請求項20】
患者回路を通じて呼吸用気体の供給源から患者の気道に気体流を供給する過程と、
患者の呼吸パターン特性を監視する過程と、
患者の呼吸パターンに基づき、呼吸パターン特性の上限閾値を決定する過程と、
患者の呼吸パターンに基づき、呼吸パターン特性の下限閾値を決定する過程と、
呼吸パターン特性値が上限閾値を超えるとき、吸気中の二酸化炭素割合を増加する過程とを含むことを特徴とする患者の気道に加圧呼吸用気体を供給する方法。
【請求項21】
呼吸の予測状態又は現行状態に基づき、患者に適切な投与量の治療を施す過程と、
所与の投与量に応じて、患者の不安定性指数を測定する過程と、
一連の投与量の各々に対する不安定性指数を示す一連の測定点を記録する過程と、
測定した不安定性指数が許容値を超えるとき、測定点未満の不安定性指数に所与の投与量を適合させ、測定した不安定性指数が許容値未満であるとき、測定点を超える不安定性指数に所与の投与量を適合させる治療窓を設定する過程とを含むことを特徴とする患者の治療の理想的な治療窓を決定する方法。
【請求項22】
(a)最小ピーク流量と最大ピーク流量との比率、(b)最小周期的換気量と最大周期的換気量との比率、(c)移動窓平均ピーク流量又は移動窓中央ピーク流量に適合する接続線の傾斜、(d)移動窓平均周期的換気量若しくは移動窓中央周期的換気量に適合する接続線の傾斜又は(e)患者の呼吸動作系のループ利得の測定値又は予測値を不安定性指数とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
呼吸の予測状態又は現行状態に基づき、患者に適切な投与量の治療を施す過程と、
所与の投与量に応じて患者の不安定性指数を測定する過程と、
一連の投与量の各々に対する不安定性指数を示す一連の測定点を記録する過程と、
測定した不安定性指数が許容値を超えるとき、測定点未満の不安定性指数に所与の投与量を適合させ、測定した不安定性指数が許容値未満のとき、測定点を超える不安定性指数に所与の投与量を適合させる治療窓を設定する過程と、
治療窓の範囲内で治療の次の投与量を与える過程とを含むことを特徴とする理想的な治療窓の範囲内で患者を治療する方法。
【請求項24】
(a)最小ピーク流量と最大ピーク流量との比率、(b)最小周期的換気量と最大周期的換気量との比率、(c)移動窓平均ピーク流量又は移動窓中央ピーク流量に適合する接続線の勾配、(d)移動窓平均周期的換気量又は移動窓中央周期的換気量に適合する接続線の勾配又は(e)患者の呼吸動作系のループ利得の測定値又は予測値を不安定性指数とする請求項23に記載の方法。
【請求項1】
呼吸用気体の加圧流を発生する加圧流モジュールと、
加圧流モジュールに連結されかつ患者の気道に呼吸用気体流を伝達する患者回路(56)と、
患者の呼吸パターン特性を監視するセンサ(61,62)と、
センサに接続される制御装置(64)とを備え、
制御装置(64)は、呼吸パターン特性が上限閾値を超えるとき、吸気中の二酸化炭素割合を増加し、呼吸パターン特性が下限閾値未満のとき、自動制御換気を実施し、監視される患者の呼吸パターン特性に基づき、上限閾値と下限閾値とを変更することを特徴とする患者の気道に呼吸用気体流を供給する装置(50)。
【請求項2】
制御装置は、呼吸パターン特性が下限閾値未満のとき、自動制御換気の実施に加えて、吸気中の二酸化炭素割合を増加させる請求項1に記載の装置。
【請求項3】
(a)再呼吸を実現する、(b)二酸化炭素の補充供給源を設ける、(c)吐出された呼吸用気体を取り込む貯蔵部から二酸化炭素を供給する、(d)(a)〜(c)の何れかの組み合わせにより、制御装置は、吸気中の二酸化炭素割合を増加させる請求項1に記載の装置。
【請求項4】
送風機(52)、弁(60)又はその両方を加圧流モジュールに設けた請求項1に記載の装置。
【請求項5】
上限閾値と下限閾値は、同一の単一値である請求項1に記載の装置。
【請求項6】
呼吸パターン特性は、患者のピーク流量又は患者の周期的換気量である請求項1に記載の装置。
【請求項7】
制御装置は、呼気圧力に対する吸気圧力の増加比率を供給して、自動制御換気を実施する請求項1に記載の装置。
【請求項8】
呼吸用気体流を発生する加圧流モジュールと、
加圧流モジュールに連結されかつ患者の気道に呼吸用気体流を搬送する搬送通路となる患者回路(56)と、
患者の呼吸パターン特性を監視するセンサ(61,62)と、
患者回路に接続される二酸化炭素補充装置(46)と、
加圧流モジュールと二酸化炭素補充装置とに作動接続される制御装置(64)とを備え、
制御装置は、センサに接続され、呼吸パターン特性が上限閾値を超えるとき、患者回路内の患者吸気中の二酸化炭素量を増加し、
制御装置は、呼吸パターン特性が下限閾値未満のとき、気体流発生モジュールを制御して、患者の気道に供給される呼気圧力に対する吸気圧力の比率を増加させることを特徴とする患者の気道に呼吸用気体流を供給する装置(10)。
【請求項9】
送風機(52)、弁(60)又はその両方を加圧流モジュールに設けた請求項8に記載の装置。
【請求項10】
(a)呼気中の二酸化炭素を再呼吸する患者に帰還させる弁(43)、(b)患者回路に連絡される外部の二酸化炭素供給源、(c)呼気される呼吸用気体を捕捉する二酸化炭素貯蔵部(44)又は(d)(a)〜(c)の何れかの組み合わせを二酸化炭素補充装置に設けた請求項8に記載の装置。
【請求項11】
上限閾値と下限閾値は、同一の単一値である請求項8に記載の装置。
【請求項12】
特性は、患者のピーク流量又は患者の周期的換気量である請求項8に記載の装置。
【請求項13】
呼吸パターン特性が下限閾値未満に低下すると、呼気圧力に対する吸気圧力の比率を増大させる請求項8に記載の装置。
【請求項14】
患者回路(56)を通じて呼吸用気体の供給源から患者の気道に気体流を供給する過程と、
患者の呼吸パターン特性を監視する過程と、
一定時間の経過に伴う呼吸パターン特性の平均値に基づき、呼吸パターン特性の下限閾値を設定する過程と、
呼吸パターン特性の初期値を増加又は減少して、呼吸パターン特性の上限閾値を設定し、呼吸パターン特性の平均値の変化が所定の限界値を超えるとき、上限閾値を低下させ、患者に適用する特定の治療の回数が所定回数を超えるとき、上限閾値を上昇させる過程とを含むことを特徴とする呼吸療法を受ける患者の換気状態を決定する方法。
【請求項15】
患者に適用される特定の治療は、二酸化炭素の再呼吸である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
呼吸パターン特性の時間経過に伴う平均値を所定の係数だけ減少して、下限閾値を得る請求項14に記載の方法。
【請求項17】
患者回路を通じて呼吸用気体の供給源から患者の気道に気体流を供給する過程と、
患者の呼吸パターン特性を監視する過程と、
一定時間の経過に伴う呼吸パターン特性の変化が正値でありかつ所定の限界値を超えるとき、高呼吸状態を予測する過程と、
一定時間の経過に伴う呼吸パターン特性の変化が負値でありかつ所定の限界値を超える絶対値を有するとき、低呼吸状態を予測する過程と、
予測された状態に基づき、患者に適切な治療を適用する過程とを含むことを特徴とする患者を治療する方法。
【請求項18】
呼吸パターン特性は、ピーク流量又は周期的換気量である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
一定期間は、多数の呼吸周期に依存する請求項17に記載の方法。
【請求項20】
患者回路を通じて呼吸用気体の供給源から患者の気道に気体流を供給する過程と、
患者の呼吸パターン特性を監視する過程と、
患者の呼吸パターンに基づき、呼吸パターン特性の上限閾値を決定する過程と、
患者の呼吸パターンに基づき、呼吸パターン特性の下限閾値を決定する過程と、
呼吸パターン特性値が上限閾値を超えるとき、吸気中の二酸化炭素割合を増加する過程とを含むことを特徴とする患者の気道に加圧呼吸用気体を供給する方法。
【請求項21】
呼吸の予測状態又は現行状態に基づき、患者に適切な投与量の治療を施す過程と、
所与の投与量に応じて、患者の不安定性指数を測定する過程と、
一連の投与量の各々に対する不安定性指数を示す一連の測定点を記録する過程と、
測定した不安定性指数が許容値を超えるとき、測定点未満の不安定性指数に所与の投与量を適合させ、測定した不安定性指数が許容値未満であるとき、測定点を超える不安定性指数に所与の投与量を適合させる治療窓を設定する過程とを含むことを特徴とする患者の治療の理想的な治療窓を決定する方法。
【請求項22】
(a)最小ピーク流量と最大ピーク流量との比率、(b)最小周期的換気量と最大周期的換気量との比率、(c)移動窓平均ピーク流量又は移動窓中央ピーク流量に適合する接続線の傾斜、(d)移動窓平均周期的換気量若しくは移動窓中央周期的換気量に適合する接続線の傾斜又は(e)患者の呼吸動作系のループ利得の測定値又は予測値を不安定性指数とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
呼吸の予測状態又は現行状態に基づき、患者に適切な投与量の治療を施す過程と、
所与の投与量に応じて患者の不安定性指数を測定する過程と、
一連の投与量の各々に対する不安定性指数を示す一連の測定点を記録する過程と、
測定した不安定性指数が許容値を超えるとき、測定点未満の不安定性指数に所与の投与量を適合させ、測定した不安定性指数が許容値未満のとき、測定点を超える不安定性指数に所与の投与量を適合させる治療窓を設定する過程と、
治療窓の範囲内で治療の次の投与量を与える過程とを含むことを特徴とする理想的な治療窓の範囲内で患者を治療する方法。
【請求項24】
(a)最小ピーク流量と最大ピーク流量との比率、(b)最小周期的換気量と最大周期的換気量との比率、(c)移動窓平均ピーク流量又は移動窓中央ピーク流量に適合する接続線の勾配、(d)移動窓平均周期的換気量又は移動窓中央周期的換気量に適合する接続線の勾配又は(e)患者の呼吸動作系のループ利得の測定値又は予測値を不安定性指数とする請求項23に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2009−530054(P2009−530054A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501637(P2009−501637)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/063737
【国際公開番号】WO2007/109443
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(505338497)アールアイシー・インベストメンツ・エルエルシー (81)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/063737
【国際公開番号】WO2007/109443
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(505338497)アールアイシー・インベストメンツ・エルエルシー (81)
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