説明

換気化粧部材及びその施工方法

【課題】化粧板としても換気材としても最適な材料を用いることができ、破損等による交換に際しても交換費用も低減できる換気化粧部材、及びその施工方法を提供する。
【解決手段】略板状の化粧板部分2と、換気口が設けられ、接続手段により化粧板部分2と接続可能な換気材部分4と、を備え、化粧板部分2と換気材部分4とが接続された状態で、化粧板部分2を垂木又は下地材50に固定するとともに、換気材部分4を軒天井材20又は天井材に固定することによって、換気構造を有する軒天井裏又は天井裏を形成する換気化粧部材、及びその施工方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻隠しや破風を始めとする化粧板の機能、及び屋根裏に換気構造を形成する換気材の機能を有する換気化粧部材、並びにその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の屋根裏の劣化等を防止するため、従来から、軒天井裏や天井裏に換気構造が設けられている。このような換気構造としては、例えば、図8に示すように、軒天井部20と壁部30との間に軒元換気材60を取り付ける構造や、軒天井部20と、鼻隠し40が取り付けられる下地材50との間に、軒先換気材70を取り付ける構造等が広く用いられている。
【0003】
しかし、これらの換気材を屋根裏に取り付けるためには、換気材を固定する換気材用の下地材を予め取り付ける必要があり、更に、換気材を下側からこの下地材に取り付ける必要がある。この換気材の取り付け作業は、鼻隠し等の化粧部材の取り付け作業とは別途に行なう必要があり、また、下側からの作業となるので、多くの作業工数を要する。
【0004】
そこで、このような換気材の取り付け作業の工数を削減するため、鼻隠しや破風のような化粧板と、換気材とを一体成形した部材を用いて、化粧板の取り付けと換気材の取り付けを、1つの作業で行なうことが提案されている。例えば、特許文献1には、金属からなる鼻隠しと換気材の一体成形部材が提案され、特許文献2には、窯業系材料等からなる鼻隠し又は破風と換気材の一体成形部材が提案されている。
【0005】
【特許文献1】実開平5−38142号
【特許文献2】特開平7−229256号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、鼻隠しや破風といった化粧板は、装飾的な多様性が求められ、色、模様、形状等において、多くのバリエーションを有することが望まれる。従って、例えば、一体成形部材の材料として金属材料を用いる場合には、装飾的な多様性の要望を満たすことは困難となる。また、換気材は、破損等が生じにくく、換気口の詰まりが生じたときのメンテナンスが容易であるといった、耐久性、メンテナンス性に優れた性能が要求される。従って、例えば、一体成形部材の材料として窯業系材料を用いる場合には、耐久性、メンテナンス性の要求を満たすことは困難となる。
つまり、特許文献1、2に記載された一体成形部材では、全て同一の材料から構成されるので、化粧板と換気材の両方の機能において、最適な材料を適用することはできない。
【0007】
また、施工後ある期間が経過すると、破損や換気口の詰まり等によって、特に、換気材の部分を交換しなければならない事態が生じる場合が多い。この場合、特許文献1、2に記載された一体成形部材では、換気材の部分を交換するためには、まだ使用可能な化粧板の部分を含めて全体を交換する必要があり、交換費用が多くかかる問題が生じる。
【0008】
従って、本発明の目的は上述の問題を解決して、化粧板としても換気材としても最適な材料を用いることができ、破損等による交換に際しても交換費用も低減できる換気化粧部材、及びその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の換気化粧部材の第1の実施態様は、略板状の化粧板部分と、換気口が設けられ、接続手段により前記化粧板部分と接続可能な換気材部分と、を備え、前記化粧板部分と前記換気材部分とが接続された状態で、前記化粧板部分を垂木又は下地材に固定するとともに、前記換気材部分を軒天井材又は天井材に固定することによって、換気構造を有する軒天井裏又は天井裏を形成することを特徴とする。
【0010】
ここで、「化粧板部分」は、屋根の下側に取り付けられる化粧板の機能を有する部材であって、例えば、鼻隠しや破風の機能を果たす部材が含まれる。また、「換気材部分」は、換気口を有して軒天井裏や天井裏に換気構造を形成するための部材であって、例えば、軒先や軒元に取り付けられる軒先/軒元換気材の機能を果たす部材や、天井に取り付けられる天井用換気材の機能を果たす部材が含まれる。
換気材部分に設けられる換気口は、用途に応じて任意の形状、大きさの換気口を、任意の間隔で設けることができる。
【0011】
「接続手段」は、化粧板部分と換気材部分を接続するための部材であればあらゆるものを用いることができ、例えば、釘、ネジ、ボルトナット等の固定部品を用いることも可能であるし、接着剤等を用いることも可能である。また、化粧板部分と換気材部分に凹凸を付けて嵌合させることも可能であるし、その他あらゆる接続方法を用いることができる。また、これらの接続方法を併用することも可能である。
なお、本実施態様において、化粧板部分を垂木又は下地材に「固定する」場合や、換気材部分を軒天井材又は天井材に「固定する」場合には、化粧板部分や換気材部分を、直接、垂木や軒天井材等に固定する場合だけでなく、例えば、防水シ−トやシール部材等を介して固定する場合も含まれる。
【0012】
本実施態様では、別部品である化粧板部分と換気材部分を接続手段を用いて接続して、換気化粧部材を形成し、この換気化粧部材を用いることによって、化粧板部分を垂木又は垂木に固定された下地材に固定するとともに、換気材部分を軒天井材又は天井材に固定することができる。従って、化粧板部分と換気材部分が一体成形された部材を用いる場合と同様に、換気材を取り付ける作業がほぼ不要となるため、施工にかかる時間と費用を低減することができる。
【0013】
また、化粧板部分と換気材部分は別部品なので、各々の部品の用途に応じて、最適な材料を選定することができる。また、化粧板部分と換気材部分の材料の組み合わせも自由に選択、変更することができる。
【0014】
また、化粧板部分又は換気材部分のどちらかを交換する必要が生じた場合でも、一体成形部材と異なり、交換を要するどちらか一方の部品だけを交換すればよいので、交換費用を低減できる。
【0015】
本発明の換気化粧部材のその他の実施態様は、前記接続手段が、前記化粧板部分に設けられた凸部と、前記換気材部分に設けられ前記凸部と嵌合する凹部から構成されることを特徴とする。
【0016】
本実施態様では、製造コストのかからない簡単な構造を用いて、確実に化粧板部分と換気材部分を接続することがきる。また、例えば、換気材部分が金属材料からなる場合には、換気材部分に設けられ凹部の開口寸法を、化粧板部分に設けられた凸部よりも若干小さくすることによって、凹部と凸部の嵌合時にバネ力が生じるようにして、化粧板部分と換気材部分の嵌合を強化することができる。また、例えば、化粧板部分に設けられた凸部に溝を設け、換気材部分に設けられ凹部にこの溝にはまり込む突起を設けて、スナップリング式に化粧板部分と換気材部分とを接続することも考えられる。また、凸部と凹部の嵌合接続に加えて、ネジ等の固定部品や接着剤等を用いて、接続を強化することも考えられる。
【0017】
本発明の換気化粧部材のその他の実施態様は、前記換気材部分が前記化粧板部分の面から側方へ突き出るように接続され、前記化粧板部分と前記換気材部分がなす角度を調整可能であることを特徴とする。
【0018】
本実施態様のように、接続された化粧板部分と換気材部分がなす角度を調整可能にするためには、例えば、化粧板部分に設けられた凸部と、換気材部分設けられた凹部の形状を円弧状にして、両者が相対的に回転できるようにすることが考えられる。化粧板部分と換気材部分がなす角度の調整範囲を適切に選ぶことにより、本実施態様では、化粧板部分を下地材等に当接させて固定するときに、換気材部分が軒天井材又は天井材に係合するように、調整することができる。
【0019】
本発明の換気化粧部材のその他の実施態様は、前記換気材部分に、前記軒天井材又は前記天井材と嵌合する凹部が設けられていることを特徴とする。
本実施態様によれば、製造コストのかからない簡単な構造を用いて、確実に換気材部分と軒天井材又は天井材に取り付けることがきる。また、換気材部分が金属材料からなる場合には、換気材部分に設けられ凹部の開口寸法を、軒天井材又は天井材の厚みよりも若干小さくすることによって、凹部と軒天井材又は天井材の嵌合時にバネ力が生じるようにして、換気材部分と軒天井材又は天井材の嵌合を強化することができる。
【0020】
本発明の換気化粧部材のその他の実施態様は、前記化粧板部分と前記換気材部分とが異なる材質からなることを特徴とする。
本実施態様では、化粧板部分と換気材部分の各々の用途に応じて、最適な材料を選定することができ、また、化粧板部分と換気材部分の材料の組み合わせも自由に選択、変更することができる。
【0021】
本発明の換気化粧部材のその他の実施態様は、前記化粧板部分が窯業系材料又は樹脂材料からなり、前記換気材部分が金属材料からなることを特徴とする。
本実施態様によれば、化粧板部分として望まれる装飾的な多様性を実現し、かつ、換気材部分として望まれる、耐久性、メンテナンスに優れた換気化粧部材を得ることができる。
【0022】
本発明の換気化粧部材のその他の実施態様は、前記化粧板部分又は前記換気材部分の一方だけを、施工後に交換することができることを特徴とする。
本実施態様によれば、仮に、化粧板部分又は換気材部分を交換する事態が生じた場合でも、化粧板部分又は換気材部分の一方のみを交換することができるので、交換費用を低減することができる。
【0023】
本発明の換気化粧部材のその他の実施態様は、前記化粧板部分を前記垂木又は前記下地材に取り付けたまま、前記換気材部分を交換することができることを特徴とする。
換気化粧部材の取り付け後、ある期間が経過すると、破損や換気口の詰まり等により、換気材部分を交換しなければならない事態が生じる場合が多いが、本実施態様によれば、化粧板部分を取り付けたまま換気材部分を交換することができるので、交換費用を低減することができる。
【0024】
本発明の換気化粧部材のその他の実施態様は、前記化粧板部分が、鼻隠し又は破風の機能を果たすことを特徴とする。
【0025】
本発明の換気化粧部材の施工方法の第1の実施態様は、略板状の化粧板部分と換気口が設けられた換気材部分とを接続手段を用いて接続し、換気化粧部材を形成する工程1と、前記化粧板部分が垂木又は下地材に当接し、前記換気材部分が軒天井材又は天井材に係合するように、形成された前記換気化粧部材を移動させる工程2と、前記化粧板部分を前記垂木又は前記下地材に固定することにより、換気構造を有する軒天井裏又は天井裏を形成する工程3と、を含むことを特徴とする。
【0026】
本実施態様における「当接」とは、化粧板部分と垂木又は垂木に固定された下地材とが直接的に接する場合に限らず、例えば、防水シ−ト等を介して間接的に接するような場合も含まれる。同様に、本実施態様における「係合」とは、換気材部分と軒天井材又は天井材とが直接係合する場合に限らず、例えば、シール材等を介して係合する場合も含まれる。
本実施形態では、換気材部分と軒天井材又は天井材との係合によって、両者が固定された状態となる場合も考えられるし、更に別途の固定手段を用いて両者を固定する場合も考えられる。
【0027】
本実施態様によれば、換気材の取り付け作業がほぼ不要となるので、換気材の取り付け時間と費用を削減することができる。また、化粧板部分と換気材部分に関して、各々の機能において最適な材料を用いることができ、その組み合わせも自由に選択、変更することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の換気化粧部材では、化粧板部分と換気材部分とを接続させて換気化粧部材を形成し、その状態で屋根裏へ取り付けることによって、換気材を取り付ける作業がほぼ不要となるため、施工にかかる時間と費用を低減することができる。
【0029】
また、化粧板部分と換気材部分は別部品なので、各々の部品の用途に応じて、最適な材料を選定することができ、材料の組み合わせも自由に選択、変更することができる。
【0030】
また、化粧板部分又は換気材部分のどちらかを交換する必要が生じた場合でも、交換を要するどちらか一方の部品だけを交換すればよいので、交換費用を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の換気化粧部材及びその施工方法の実施形態について、以下に図面を用いながら詳細に説明する。
【0032】
(換気化粧部材の構造の説明)
始めに、図1を用いて、本発明の換気化粧部材の一実施形態の構造を説明する。図1は、本発明の換気化粧部材の一実施形態の全体構造を示す斜視図である。図1(a)は、化粧板部分2と換気材部分4とが分離した状態を示し、図1(b)は、化粧板部分2と換気材部分4とが接続された状態を示す。
【0033】
図1(a)に示すように、本実施形態の換気化粧部材1は、別部品である化粧板部分2と換気材部分4とを有し、換気材部分4には換気口4aが設けられている。また、図1(b)に示すように、化粧板部分2に設けられた凸部6aと、換気材部分4に設けられた凹部6bが嵌合して、化粧板部分2と換気材部分4が接続され、換気化粧部材1を形成する。なお、化粧板部分2と換気材部分4とを接続する凸部6aと凹部6bを、接続手段と称する。
【0034】
ここで、図2(a)〜(c)に示すように、化粧板部分2と換気材部分4とは、通常、施工現場で接続されて換気化粧部材1を形成し、換気材部分4が接続された状態で、化粧板部分2を、屋根の下側の垂木に固定された下地材50に当接させることによって、換気材部分4の先端部に設けられた軒天係合用凹部4bと軒天井材20を嵌合させることができる。そして、化粧板部分2を下地材50に固定することによって、換気構造を有する軒天井裏を形成することができる。換気化粧部材1の施工(取り付け、取り外し)方法については、図2を用いて後述する。
なお、本実施形態では、化粧板部分2は珪酸カルシウムのような窯業系材料又は樹脂材料からなり、換気材部分4は、ステンレス鋼やアルミニウムのような金属材料からなる。
【0035】
<化粧板部分の説明>
次に、化粧板部分2について更に詳細な説明を行なうと、化粧板部分2は、略板状の形状をしており、下地材に取り付けられる鼻隠しの機能を果たす。図1(a)において、紙面右側の面が下地材に当接する取付面であり、紙面左側の面が施工後に人目に触れる外面となる。化粧板部分2の長手方向の長さLは、取り付け箇所の寸法に応じて所望の長さに設定することができる。
【0036】
化粧板部分2の取付面の下部には、換気材部分4と接続するための凸部6aが設けられ、この凸部6aの断面形状は略矩形である。なお、化粧板部分2の取付面において、凸部2aの上側に設けられた凹部は、化粧板部分2を軽量化するための肉抜きである。また、化粧板部分2の外面に設けられた段差は、主に装飾を目的にしたものである。
【0037】
<換気材部分の説明>
次に、換気材部分4について更に詳細な説明を行なうと、紙面左端に、略コの字型の凹部6bが設けられ、紙面中央の中央面部4cに換気口4aが設けられ、紙面右端に、上辺が下辺より長い略コの字型の軒天係合用凹部4bが設けられている。換気材部分4の長手方向の長さは、化粧板部分2と同じ長さLとなる。
【0038】
ここで、左端の凹部6bは、凸部6aの略矩形の断面形状に対応するように成形されているが、コの字型の開口部の先端がやや狭まるようになっている。従って、凸部6aと嵌合するときに、凹部6bの先端部が開かれる状態になるので、金属材料の弾性によるバネ力が生じ、このバネ力により凸部6aと凹部6bの嵌合を強化することができる。
なお、凸部6aと凹部6bの嵌合を更に強固にするため、ネジ等の固定部品や接着剤を用いることもできる。
【0039】
次に、中央面部4cに設けられた換気口4aについて説明すると、換気口4aの大きさ、形状、設置間隔は、従来の軒先換気材に設けられる換気口と同様に設定することができる。また、中央面部4cには、換気のための空気の流れをガイドするガイド板4dも設けられている。
【0040】
また、右端の軒天係合用凹部4bは、化粧板部分2と下地材50が当接したときに、軒天井材20と嵌合する位置に設けられている。この軒天係合用凹部4bの開口部は、軒天井材20の厚みに対応する寸法に成形されているが、図1(c)の拡大図に示すように、軒天係合用凹部4bの開口部の途中では、軒天井材20の厚みよりも若干狭くなっており、軒天井材20と嵌合するときに間隔が広げられ、それによって生じるバネ力によって、凹部6bと軒天井材20の嵌合を強化することができる。ただし、軒天係合用凹部4bの先端部は、軒天井材20の厚みよりも若干広くなっており、化粧板部分2を下地材に当接させたときに、軒天井材20が凹部6bにスムーズに挿入されるようになっている。
【0041】
以上のように、化粧板部分2と換気材部分4が充分な強度を持って接続されて換気化粧部材1を形成し、その状態で化粧板部分2を下地材50に当接させることによって、換気材部分4の先端にある軒天係合用凹部4bと軒天井材20を嵌合させる。この嵌合により軒天係合用凹部4bと軒天井材20とが固定され、化粧板部分2を下地材に固定することによって、換気構造を有する軒天井裏を形成することができる。なお、換気材部分4の軒天係合用凹部4bと軒天井材20の嵌合を更に強固にするため、ネジ等の固定部品や接着剤等を用いることもできる。
【0042】
本実施形態では、化粧板部分2は窯業系材料又は樹脂材料からなるので、装飾性の高い多彩な色彩、模様、形状を有することができ、また、施工現場で部材を削って調整をすることも容易に行なうことができる。また、換気材部分4は金属材料からなるので、長期間使用しても破損が少なく、換気口が詰まってもメンテナンスが容易であり、更に、バネ力による強い嵌合を実現することができる。
なお、化粧板部分2や換気材部分4の材料としては、本実施形態に限られるものではなく、用途に応じて、あらゆる材料を適用することができる。
【0043】
(換気化粧部材の施工(取り付け、取り外し)方法の説明)
次に、図2を用いて、本発明の換気化粧部材の施工(取り付け、取り外し)方法の一実施形態の説明を行なう。なお、図2は、図1(a)の矢印Aから見た側面断面図である。
まず、図2(a)に示すように、化粧板部分2の凸部6aと、換気材部分4の凹部6bとを嵌合させて、化粧板部分2と換気材部分4を接続し、換気化粧部材1を形成する。
【0044】
この化粧板部分2と換気材部分4の接続作業は、通常、施工現場の地上で行なわれ、次に、化粧板部分2と換気材部分4が接続された換気化粧部材1を、屋根裏の位置まで運ぶ。そして、図2(b)に示すように、まず、化粧板部分2が下地材50と対向する位置まで換気化粧部材1を持ち上げ、次に、化粧板部分2が下地材50に当接するように、換気化粧部材1を水平方向に紙面左側から右側へ移動させる。この移動により、化粧板部分2に接続された換気材部分4の先端の軒天係合用凹部4bに、軒天井部20が挿入される。
【0045】
そして、図2(c)に示すように、軒天係合用凹部4bと軒天井材20とが嵌合により固定されているので、スクリュー釘12を用いて化粧板部分2を下地材50に固定することによって、換気構造を有する軒天井裏を形成することができる。なお、化粧板部分2の凸部6aと換気材部分4の凹部6bとの嵌合部分や、軒天係合用凹部4bと軒天井部20の嵌合部分については、ネジ等の固定部品や接着剤等を用いて補強することもできる。
【0046】
形成された軒天井裏は、図2(c)の矢印に示すように、外気が、換気材部分4の換気口4aから上方へ流れ、ガイド板4dに沿って横方向に流れた後、再び上方へ流れて軒天井裏へ流入する。換気口4aの設置位置とガイド板4dにより、雨滴や異物が軒天井裏へ流入する恐れなく、換気を行なうことができる。また、同様に、同じルートを通って、軒天井内の空気を外部へ流出させることもできる。以上により、十分な軒天井裏の換気を行なって、軒天井裏の劣化を防ぐことができる。
【0047】
また、換気化粧部材1の施工後、化粧板部分2や換気材部分4を交換する必要があるときには、上記の手順の逆を行なうことによって、換気化粧部材1を屋根裏から取り外すことができる。
つまり、スクリュー釘12を抜いて(更に、軒天係合用凹部4bと軒天井部20との嵌合部分が固定されている場合にはその固定をはずして)、換気化粧部材1を紙面水平方向左側に移動させることによって、化粧板部分2を下地材50から取り外し、同時に、軒天係合用凹部4bと軒天井部20との嵌合を外すことができるので、換気化粧部材1を容易に屋根裏から取り外すことができる。
【0048】
そして、必要に応じて、化粧板部分2や換気材部分4を取り替えて、再び、上記の取り付け手順を行なうことによって、不具合の生じた部分を交換することができる。
本実施形態では、化粧板部分2と換気材部分4が一体成形されていないので、不具合の生じた部分のみを交換することができ、交換に要する費用を低減することができる。
【0049】
(接続手段のその他の実施形態の説明)
次に、化粧板部分2と換気材部分4を接続する接続手段のその他の実施形態について、図3、4を用いて説明する。なお、図3、4は、図1(a)の矢印Aから見た側面図である。
【0050】
<図3に示す接続手段の実施形態の説明>
図3に示す実施形態では、化粧板部分2に設けられた凸部6aの付け根部分に溝6cが形成され、換気材部分4に設けられた凹部6bの先端に突起6dが設けられている。本実施形態では、化粧板部分2は、窯業系材料又は樹脂材料からなり、換気材部分4は金属材料からなる。
凸部6aと凹部6bが嵌合するときには、凹部6bの先端の突起6dが凸部6aの根元の溝6cにはまり込んで固定され、スナップリング式の固定機構を構成する。このスナップリング式の固定機構によって、がたつくことなく、化粧板部分2と換気材部分4とを接続することができる。また、化粧板部分2と換気材部分4とを分離するときには、凹部6bを若干広げることによって、両部品を容易に分離することができる。
【0051】
<図4に示す接続手段の実施形態の説明>
図4に示す実施形態では、化粧板部分2に設けられた凸部6aの断面形状が略円弧形状をしており、換気材部分4に設けられた凹部6bも、凸部6aの断面形状に対応して、略円弧形状の形状を有している。よって、図4の矢印に示すように、換気材部分4を化粧板部分2に対して回転させることができ、化粧板部分2と換気材部分4のなす角度を調整することができる。従って、換気材部分4が化粧板部分2に接続された状態で、化粧板部分2を下地材50に当接させるときに、換気材部分4の先端の軒天係合用凹部4bが、軒天井材20と係合するように、その位置の調整を行なうことができる。
【0052】
換気材部分4を回転させる範囲は、凸部6aと凹部6bが嵌合したときの、凹部6bの先端と化粧板部分2の面部との間の間隔によって、所望の範囲を設定することができる。また、凹部6bの内径を凸部6aの外径よりも若干小さくすることにより、凸部6aと凹部6bが嵌合したときに生じるバネ力により、凸部6aと凹部6bとの嵌合を強化することができる。
【0053】
(換気化粧部材のその他の実施形態の説明)
次に、図5を用いて、換気化粧部材1のその他の実施形態を説明する。なお、図5は、図1(a)の矢印Aから見た側面図である。
この実施形態では、化粧板部分2には、上方が開いた凹部6a’が設けられ、換気材部分4には、下方に突き出た凸部6b’が設けられている。図面から明らかなとおり、凹部6a’と凸部6b’が嵌合することによって、化粧板部分2と換気材部分4を接続して、換気化粧部材1を形成するようになっている。また、換気材部分4の紙面右側には、ネジ部品10によってブラケット8が取り付けられており、軒天係合用凹部4bが形成されている。なお、ブラケット8は、換気材部分4の長手方向の全領域に存在する必要はなく、必要とされる固定強度に応じて、所定の間隔を置いて設置すればよい。
【0054】
本実施形態では、換気材部分4を化粧板部分2に対して上方へ移動させることにより、凹部6a’と凸部6b’の嵌合をはずして、化粧板部分2と換気材部分4を分離することができる。この特徴を生かして、本実施形態では、化粧板部分2と換気材部分4が接続された化粧部材1を、屋根裏に取り付けた後、化粧板部分2を取り付けたまま、換気材部分4だけを交換することができる。以下に、本実施形態の換気化粧部材1の施工(取り付け、取り外し)方法について説明する
【0055】
<図5に示す換気化粧部材の施工(取り付け、取り外し)方法の説明>
図6、7を用いて、図5に示す換気化粧部材の施工(取り付け、取り外し)方法の説明を行なう。なお、図6、7も、図1(a)の矢印Aから見た側面断面図である。
始めに、図6を用いて、図5に示す換気化粧部材1の取り付け方法について説明する。まず、図6(a)に示すように、化粧板部分2の凹部6a’と、換気材部分4の凸部6b’を嵌合させて、化粧板部分2と換気材部分4とを接続し、換気化粧部材1を形成する。このとき、換気材部分4には、予め、ネジ部品10によってブラケット8が取り付けられている。
この化粧板部分2と換気材部分4の接続作業は、通常、施工現場の地上で行なわれ、化粧板部分2と換気材部分4が接続された換気化粧部材1を、屋根裏の位置まで運ぶ。そして、図6(b)に示すように、まず、化粧板部分2が下地材50と対向する位置まで換気化粧部材1を持ち上げ、次に、化粧板部分2が下地材50に当接するように、換気化粧部材1を水平方向に紙面左側から右側へ移動させる。この移動により、化粧板部分2に接続された換気材部分4の先端の軒天係合用凹部4bの開口部に、軒天井部20が挿入される。
【0056】
そして、図6(c)に示すように、軒天係合用凹部4bと軒天井材20とが嵌合により固定されているので、スクリュー釘12を用いて化粧板部分2を下地材50に固定することによって、換気構造を有する軒天井裏を形成することができる。なお、軒天係合用凹部4bと軒天井部20の嵌合部分については、ネジ等の固定部品を用いて補強することもできる。
【0057】
化粧板部分2と換気材部分4が接続された換気化粧部材1を屋根裏に取り付けた後、ある期間が経過すると、破損や換気口4aの詰まり等により、換気材部分4を交換しなければならない事態が生じる場合が多い。この場合、図5に示す換気化粧部材1では、化粧板部分2を下地材50に取り付けたまま、換気材部分4だけを交換することができる。
【0058】
次に、この換気材部分4の交換の方法を、図7を用いて説明する。まず、図7(a)に示すように、ネジ部品10を取り外し、ブラケット8を換気材部分4から取り外す。次に、図7(b)に示すように、換気材部分4を上方へ持ち上げて、凹部6a’と凸部6b’の嵌合をはずし、更に、換気材部分4を垂直に立てながら、紙面斜め右上方へ持ち上げる。
【0059】
換気材部分4を持ち上げる方法としては、下方から持ち上げることも可能であるし、軒天井内に吊り上げ治具を設置できる場合には、その吊り上げ治具を用いて、上方から換気材部分4を吊り上げることもできる。そして、図7(c)に示すように、換気材部分4をほぼ垂直に立てて、下地材50と軒天井材20との間のスペースを通過させて、地上へ下ろすことができる。
【0060】
そして、新たな換気材部分4を、上記の図7(a)〜(c)の手順の逆を行なうことによって、元の位置に取り付けることができる。つまり、ブラケット8の取り付けられていない換気材部分4を、ほぼ垂直な状態で持ち上げて、下地材50と軒天井材20との間のスペースを通過させて、軒天井裏へ入れる。そして、換気材部分4を水平にしながら紙面斜め左下方へ移動させ、換気材部分4の凸部6b’を、化粧板部分2の凹部6a’の中へ落とし込んで嵌合させる。そして、ネジ部品10を用いて、ブラケット8を換気材部分4を取り付けることにより、換気材部分4が軒天井材20に固定され、元の換気構造を有する軒天井裏を形成することができる。以上の施工方法によって、換気材部分4の交換に要する費用を低減させることができる。
【0061】
(その他の実施形態)
上記においては、鼻隠しの機能を有する化粧板部分2と、軒先換気材の機能を有する換気材部分4を用いた実施形態について説明したが、本発明の換気化粧部材は、この実施形態に限られるものではなく、例えば、破風の機能を有する化粧板部分2や、天井用換気材の機能を有する換気材部分4を用いることも可能であり、上記と全く同様の施工方法を用いることが可能であり、換気構造を有する(軒)天井裏を形成することができる。
【0062】
更に、本発明の換気化粧部材及びその施工方法は、上記の実施形態には限られるものではなく、その他の様々な実施形態が本発明が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の換気化粧部材の一実施形態の全体構造を示す斜視図であり、(a)は、化粧板部分2と換気材部分4が分離した状態を示し、(b)は、化粧板部分2と換気材部分4が組み立てられた状態を示す。
【図2】本発明の換気化粧部材の施工(取り付け、取り外し)方法の一実施形態を示す側面断面図である。
【図3】本発明の接続手段のその他の実施形態を示す側面図である。
【図4】本発明の接続手段のその他の実施形態を示す側面図である。
【図5】本発明の換気化粧部材のその他の実施形態を示す側面図である。
【図6】図5に示す換気化粧部材の施工(取り付け)方法を示す側面断面図である。
【図7】図5に示す換気材部分の施工(取り付け、取り外し)方法を示す側面断面図である。
【図8】従来の換気構造を有する軒天井裏の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 換気化粧部材
2 化粧板部分
4 換気材部分
4a 換気口
4b 軒天係合用凹部
4c 中央面部
4d ガイド板
6 接続手段6
6a 凸部
6a’ 凹部
6b 凹部
6b’ 凸部
6c 溝
6d 突起
8 ブラケット
10 ネジ部品
12 スクリュー釘
20 軒天井材
30 壁部
40 鼻隠し
50 下地材50
60 軒元換気材
70 軒先換気材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略板状の化粧板部分と、
換気口が設けられ、接続手段により前記化粧板部分と接続可能な換気材部分と、
を備え、
前記化粧板部分と前記換気材部分とが接続された状態で、前記化粧板部分を垂木又は下地材に固定するとともに、前記換気材部分を軒天井材又は天井材に固定することによって、換気構造を有する軒天井裏又は天井裏を形成することを特徴とする換気化粧部材。
【請求項2】
前記接続手段が、前記化粧板部分に設けられた凸部と、前記換気材部分に設けられ前記凸部と嵌合する凹部から構成されることを特徴とする請求項1に記載の換気化粧部材。
【請求項3】
前記換気材部分が前記化粧板部分の面から側方へ突き出るように接続され、前記化粧板部分と前記換気材部分がなす角度を調整可能であることを特徴とする請求項2に記載の換気化粧部材。
【請求項4】
前記換気材部分に、前記軒天井材又は前記天井材と嵌合する凹部が設けられていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の換気化粧部材。
【請求項5】
前記化粧板部分と前記換気材部分とが異なる材質からなることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の組立式換気化粧部材。
【請求項6】
前記化粧板部分が窯業系材料又は樹脂材料からなり、前記換気材部分が金属材料からなることを特徴とする請求項5に記載の換気化粧部材。
【請求項7】
略板状の化粧板部分と換気口が設けられた換気材部分とを接続手段を用いて接続し、換気化粧部材を形成する工程1と、
前記化粧板部分が垂木又は下地材に当接し、前記換気材部分が軒天井材又は天井材に係合するように、形成された前記換気化粧部材を移動させる工程2と、
前記化粧板部分を前記垂木又は前記下地材に固定することにより、換気構造を有する軒天井裏又は天井裏を形成する工程3と、
を含むことを特徴とする換気化粧部材の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−92303(P2007−92303A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279796(P2005−279796)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)