説明

換気孔の吸音構造

【課題】換気孔の吸音構造において吸音材の取り外しが容易であって、吸音性や通気性を損なわずに、また、長期的な使用が可能である安価な換気孔の吸音構造を提供する。
【解決手段】
連続気泡を有する可撓性軟質発泡体からなっている換気孔用吸音材であって、筒状の形態であって、たわみ性能を有している換気孔の吸音構造。特に、通気性が5〜150ml/cm/sのポリエーテル系軟質ポリウレタンフォーム材料で作成され、洗浄が可能である吸音材を用いた、換気孔の吸音構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2以上の空間を繋ぐ換気孔と該換気孔内に挿入される換気孔用吸音材からなる換気孔の吸音構造であり、特に建物内の空気を換気するために外壁部分に設置される換気孔の吸音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住居その他の建物内部における空気環境向上のため、必要換気量を確保する建築構造、換気設備が各種提案されている。特に近年、建材、接着剤などに含まれる揮発性成分が人体に影響を与える「シックハウス症候群」が社会問題化し、換気能力向上が要求されており、建物外壁部分に24時間換気可能な換気孔を有する構造が採用されつつある。
【0003】
一方、換気孔の存在は、住宅内の音環境を維持するうえで好ましくない。すなわち、幹線道路や鉄道等から生じる騒音が、換気孔より侵入し、室内での音環境の悪化の要因となっているのである。従来で有れば、換気孔のシャッターを閉じればよいのであるが、24時間常時換気を求められる現在では、シャッターを閉じることはできない。
【0004】
そこで、換気孔に防音性能を付与する方法が種々提案されている。例えば特許文献1には、室外側フードの内面に消音材を有する換気孔の構造が開示されている。また、特許文献2には、特定の構造を有するハウジング内に高周波消音部および低周波消音部を有する消音装置を、換気孔内に挿入する換気孔の吸音構造が開示されている。さらには、特許文献3のような能動消音装置なども開示されている。
【0005】
しかし、室外側フード内面に消音材を設置する方法は、フード内に大きな消音室を形成するので、当然、フードが通常のものよりも大きくなる。従って、壁面に大きなフードを設けることが見栄え上好ましくない場合や、換気孔を設ける壁の幅が小さい場合などは、この消音装置を取付けることができないといった問題点がある。また、特定の構造を有するハウジング内に高周波消音部および低周波消音部を有する消音装置を換気孔内に挿入する方法は、換気孔から侵入する、ほこり、塵等による目詰まりが生じ、性能低下が考えられるうえ、当該性能低下に対するメンテナンスが容易ではなく、消音装置の挿入、取外しも容易ではない。さらに、能動消音装置のようなきわめて複雑な構成の装置は、一般住宅、マンション等には適していない。
【特許文献1】特開2001−289472号
【特許文献2】特開2003−130410号
【特許文献3】実開平5−64897号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、換気孔の吸音構造において、外壁の構造に左右されることなく吸音性能を得ることが可能であり、吸音材の挿入及び取外しが容易であることに加えて、メンテナンス性能にも優れた換気孔の吸音構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の1〜6の発明が提供される。
1.2以上の空間を繋ぐ換気孔と該換気孔内に挿入される換気孔用吸音材からなる換気孔の吸音構造であって、前記換気孔用吸音材は、連続気泡を有する可撓性発泡体からなり、換気孔内に脱着可能に保持されることを特徴とする換気孔の吸音構造。
2.前記換気孔用吸音材が、軟質ポリウレタンフォームであることを特徴とする上記1に記載の換気孔の吸音構造。
3.前記軟質ポリウレタンフォームが、ポリエーテルウレタンフォームであることを特徴とする上記2記載の換気孔の吸音構造
4.前記換気孔用吸音材の通気性が、10〜70ml/cm/sであることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の換気孔の吸音構造。
5.前記換気孔用吸音材が、筒状であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の換気孔の吸音構造。
【発明の効果】
【0008】
本発明の換気孔の吸音構造は、例えば軟質ポリウレタンフォームのような可撓性の連通発泡体を、その弾性力を用いて換気孔に脱着可能に保持させるため、吸音材の挿入及び取外しが容易である。また、軟質ポリウレタンフォーム、特にポリエーテル系軟質ポリウレタンフォームは洗浄が可能であるため、メンテナンスが容易であり、繰返し使用することができ、快適な室内音環境を維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明にかかる換気孔の吸音構造を、図を用いて説明する。図1は、本発明による換気孔の吸音構造を示す断面図である。この図に示すように、連続気泡を有する可撓性発泡体1が、建物の外壁4を貫通する換気孔7内に脱着可能に保持されている。なお、換気孔内側にスリーブがはめ込まれている構造も多く見られるが、換気孔内に当該スリーブ等の他部材を介して可撓性発泡体が脱着保持されている態様であっても、本発明に含まれることとする。なお、図1において、室内側にはレジスター(風量調整装置)8が取付けられており、室外側にはフード9が設置されている。
【0010】
図1における可撓性発泡体1は、その弾性力を利用して換気孔内に脱着可能に保持させるのが好ましい。すなわち、換気孔の内径よりわずかに大孔径の可撓性発泡体を用い、少し撓ませながら換気孔に挿入することにより、可撓性発泡体の有する反発弾性力により、換気孔内に保持されるのである。この反発弾性力を利用することにより極めて容易に換気孔内に取付け又は取外しができることとなるのである。このような装着方法で有れば、レジスターを外し、換気孔に可撓性発泡体を挿入するのみであるため、専門の業者に頼ることはない。
【0011】
換気孔7内に保持された換気孔用吸音材1は長期間使用される。通常の吸音材ならば、使用期間に応じて埃や塵などが付着して通気性が損なわれる。そこで本発明の換気孔用吸音材1は連続気泡を有する軟質発泡体からなっており、前述のとおり弾性力を用いて固定されているので、レジスター4を取外して換気孔用吸音材1を容易に取出すことができ、さらに洗浄が可能である。洗浄することにより付着した埃や塵を除去して再度使用が可能となる。このような態様の場合、長期間による使用で通気性が損なわれたとしても洗浄することによって吸音性に影響することなく失われた通気性を得ることができるのである。しかも、これらメンテナンスに専門的な道具は何ら必要なく、誰でも容易に行うことが可能である。なお、換気孔内全体に吸音材を保持させる必要はなく、換気孔の長さに応じて適宜吸音材の長さを設定すればよい。吸音材の長さは、取付け及び取外しの容易さと吸音性能を鑑みれば、50〜200mm、特に70〜180mmが好ましい。
【0012】
図2は、本発明の換気孔用吸音材の一例を示す斜視図である。可撓性発泡体1は、ポリエーテル系軟質ポリウレタンフォームからなる円筒構造であり、一方の端部に凹凸部1Aを有すると共に中空部1Bを有している。可撓性発泡体1は、図2に示すように中空部を有するような筒状であることが好ましい。本発明では連続気泡からなる可撓性発泡体を用いるが、吸音性能を考えたうえでは、通気性の低い連通発泡体を用いるのが好ましく、それによる通気量低下を防ぐため、中空部1Bを有するような筒状が好ましいのである。なお、軟質ポリウレタンフォームを中空形状に切削加工することは非常に困難であるため、装着時に筒状となればよく、円筒状の一部に中空部を抜くための切削ラインを有していても良い。さらに一方の端部、特に室外側に位置する端部に凹凸部1Aを付与するのが好ましい。凹凸部1Aにより、先端が細くなることにより、スリーブ内への挿入が容易となるためである。なお、凹凸ではなく単なる先端先細り形状としてもよい。
【0013】
換気用吸音材の通気性は、5〜150ml/cm/sであるのが好ましい。通気性が5ml/cm/s未満の場合、通気性が低すぎるため、換気孔に必要な通気量が低下してしまうからであり、100ml/cm/sを越える場合、吸音材としての吸音性能が低下するためである。特に好ましくは、10〜70ml/cm/sである。なお、吸音性は、JIS K 6400−7:2004(B法)を用いて測定される。
【0014】
本発明の換気孔用吸音材は、連続気泡を有する可撓性発泡体が使用され、具体的には軟質ポリウレタンフォーム、メラミンフォーム、セルロース系発泡体等が使用される。
【0015】
換気孔用吸音材として好ましくは、軟質ポリウレタンフォームである。軟質ポリウレタンフォームは、少なくともポリオール成分、ポリイソシアネート成分及び発泡剤、必要により整泡剤、触媒、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤等の添加剤を含有するウレタンフォーム原料組成物を、ワンショット法、モールド法などの公知の製造方法によって反応および発泡させて得ることができる。例えば、ワンショット法では、各成分をミキシングチャンバーに同時に加えると同時に強力な撹拌によって混合し、ポリウレタンフォームを製造する。得られたポリウレタンフォームは、切削加工等により、筒状等の所望の吸音材形状に加工する。
【0016】
軟質ポリウレタンフォームは、例えば、主原料であるポリオール成分の種類により、ポリエステルウレタンフォーム、ポリエーテルウレタンフォームおよびポリエステルエーテルウレタンフォームに大別され、本発明においては、いずれのポリウレタンフォームであってもよい。本発明における換気孔吸音材を洗浄し、繰返し使用することを鑑みれば、ポリエステルエーテルウレタンフォームおよびポリエーテルウレタンフォームが好ましく、特にポリエーテルポリウレタンフォームが好ましい。
【0017】
ポリエーテルウレタンフォームは、ポリエステルタイプと比べ加水分解性能が低く、生産安定性に優れ、幅広いレンジのフォームの製造が安定して可能である。本発明の換気孔用吸音材としては、密度13〜40kg/m程度のものが好ましく採用される。またポリエーテルウレタンフォームのセル数は、コントロール容易性と通気性との観点から、25〜60個のものが好ましく用いられる。硬さは、取付け及び取外しの容易性の観点か80N〜150Nのものが好ましく用いられる。なお、密度はJIS K 7222に記載される方法、セル数はJIS K 6400−1:2004(付属書1)に記載される方法、硬さはJIS K 6400−2:2004(D法)に記載される方法により測定される。
【0018】
ポリエーテルウレタンフォームの製造に使用されるポリエーテルポリオールとしては、1分子中に活性水素原子を2個以上有する化合物を開始剤として、これにアルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。ここに使用する活性水素原子を2個以上有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、蔗糖等を挙げることができる。アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を挙げることができる。
【0019】
ポリエステルエーテルウレタンフォームの製造に使用されるポリエステルエーテルポリオールとしては、前記ポリエーテルポリオールに無水フタル酸等のジカルボン酸無水物を反応させて生じる半エステルを脱水縮合し、かかる半エステルに塩基性触媒等の存在下に、エポキシドを付加して得られるもの等を挙げることができる。
【0020】
なお、上記ポリエステルウレタンフォーム、ポリエーテルウレタンフォームおよびポリエステルエーテルウレタンフォームは市販品として入手可能である。例えば、「クララフォーム」(倉敷紡績社製)等が使用可能である。
【実施例】
【0021】
(実験例1)
本発明の吸音構造について、騒音測定装置を用いて吸音性能の測定を行う。騒音測定装置は、縦と横が400mm、高さ600mmの直方体からなるボックスに、口径100mm、長さ200mmのスリーブを設けている。実験は、ボックス内に設置したスピーカーからホワイトノイズを発生させ、ボックス外にある測定器をスリーブの先端から200mmの位置に設けて、ボックス内から生じる騒音量を測定する。
【0022】
まず、スリーブ内に吸音材を設置することなく空洞状態にて、騒音発生装置内に設置したスピーカーからホワイトノイズを発生させる。このときの騒音量測定値は57dBであった。
【0023】
つづいて、スリーブ内に本発明の換気孔用吸音材を挿入し、騒音量を測定する。使用する吸音材は、ポリエーテルポリウレタンフォームであり、通気量が20ml/cm/s、密度が21kg/m、硬さが105N、セル数が40個である。形状は、直径が103mm、長さ80mm、中空部直径50mmの円筒形である。以上の吸音材をボックス外側からスリーブ内に挿入し、ウレタンフォームの反発力により保持させる。挿入後、騒音発生装置内に設置したスピーカーからホワイトノイズを発生させる。このときの騒音量測定値は47dBであった。騒音量が10dB低下しており、良好な吸音性能を示した。
【0024】
続いて、当該ポリエーテルポリウレタンフォームを、5分間市販の洗濯洗剤を用いて手もみ洗いを行った。洗濯後、充分乾燥させ前記と同様に騒音量を測定した。このときの騒音量は、50dBであった。洗濯後においても、良好な吸音性能であった。
【0025】
(実験例2)
使用する吸音材として、ポリエーテルポリウレタンフォームであり、通気量が10ml/cm/s、密度が30kg/m、硬さが140N、セル数が45個のものを用いた。形状は、直径が103mm、長さ80mm、中空部直径50mmの円筒形であり、ボックス内側に位置する端部に、高さ30mmの凹凸部を付与している。以上の吸音材をボックス外側からスリーブ内に挿入し、ウレタンフォームの反発力により保持させる。挿入後、騒音発生装置内に設置したスピーカーからホワイトノイズを発生させる。このときの騒音量測定値は49dBであった。騒音量が8dB低下しており、良好な吸音性能を示した。
【0026】
続いて、当該ポリエーテルポリウレタンフォームを、5分間市販の洗濯洗剤を用いて手もみ洗いを行った。洗濯後、充分乾燥させ前記と同様に騒音量を測定した。このときの騒音量は、51dBであった。洗濯後においても、良好な吸音性能であった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の換気孔用吸音材及びそれを用いた換気孔の吸音構造は、家屋の外壁など2以上の空間を繋ぐ換気孔に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の吸音材を用いた換気孔の構造を示す概略断面図
【図2】本発明の吸音材を示す概略斜視図
【符号の説明】
【0029】
1 吸音材
2 換気孔
3 外壁
4 レジスター
5 フード
1A 凹凸部
1B 中空部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の空間を繋ぐ換気孔と該換気孔内に挿入される換気孔用吸音材からなる換気孔の吸音構造であって、前記換気孔用吸音材は、連続気泡を有する可撓性発泡体からなり、換気孔内に脱着可能に保持されることを特徴とする換気孔の吸音構造。
【請求項2】
前記連続気泡を有する可撓性発泡体が、軟質ポリウレタンフォームであることを特徴とする請求項1に記載の換気孔の吸音構造。
【請求項3】
前記軟質ポリウレタンフォームが、ポリエーテルウレタンフォームであることを特徴とする請求項2記載の換気孔の吸音構造
【請求項4】
前記換気孔用吸音材の通気性が、10〜70ml/cm/sであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の換気孔の吸音構造。
【請求項5】
前記換気孔用吸音材が、筒状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の換気孔の吸音構造。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−243113(P2009−243113A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89784(P2008−89784)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】