説明

換気機能のついたエアカーテン

【課題】大きな出入用開口部を持つ、車両の整備を行うような整備工場内の、効率の良い空調を可能とする。
【解決手段】本発明の換気機能のあるエアカーテンは、送風装置18から連結され、開口部の天井に一定の距離を置いて吊り下げられた空調用ダクト1で、当該ダクト1の上部には、屋外方向に屋根裏の空気の排気を促すための吹き出し口8と、下部には、略真下に空気を噴出しエアカーテンとする吹き出し口5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人員や車両等が頻繁に出入りするために、常時開口部のある建物の空調に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術としては、屋根裏換気扇に関する特許文献1に記載するものを例示する。この屋根裏換気扇は、吸込用開口部と吐出用開口部を有し、内部に送風機を設けた本体の吸込用開口部と吸込用ダクトを介し屋根裏内部と連通し、本体を吊り下げ手段により屋外ひさし部に吊り下げるように構成したことにより、屋根裏内部に留まった熱気を屋根裏内部に換気扇の本体を設置することなく、効率良く喚起を行うようにしている。
【0003】
次に、排気装置に関する特許文献2に記載するものを例示する。 この排気装置は、下方が開口した略筒状のフードの内部で、旋回気流を形成し、それを吸引して外部に排気する装置で、フードの水平断面を横長の略長方形にし、その略長方形の対抗する長編の中点同士を結ぶ線で、フードの内部を右室と左室とに2分割し、右室と左室それぞれの上部中央に1基づつ吸引手段を配設し、少なくとも、右室と左室との境界に位置するフードの内壁に、両室の内壁に沿った略水平方向に吹き出すエア吹き出し手段を1基配設して、エア吹出手段から吹き出されるエアにより、各室で略水平に旋回する旋回気流を形成させ、その旋回気流を各吸引手段で吸引させて排気するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−83108
【特許文献2】特開2002−31383
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の屋根裏換気扇では、夏季において、建物の屋根裏内部に溜まった熱気を、屋外つまり壁面より外に排出することは可能であるが、壁面の無い、車両の整備工場等の屋根の下に大きな開口部を持つような構造の建物には対応出来ないという課題がある。
【0006】
また、特許文献2の排気装置は、厨房や工場など、側壁を完全に覆われたフードの内部に、複数の安定した旋回気流を作って大きな空間の換気に利用することは可能であるが、大きな開口部を持ったような構造の建物には対応出来ないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために、第1の発明の換気機能の付いたエアカーテンは、開放された建物の開口部に取付け、当該室内の空調を補助するためのエアカーテン装置で、開放された開口部の軒天部に対し一定のスペースを開けて吊り下げられたダクト状の送風パイプで、該送風パイプの上部と下部に吹き出し口が配設されている。
【0008】
第2の発明の換気機能の付いたエアカーテンは、
前記ダクト状の送風パイプが、立ち上げた接合部を内面に持ったスパイラルダクトである態様を例示する。
【0009】
第3の発明の換気機能の付いたエアカーテンは、
前記送風用のスパイラルダクトの上部と下部に配設された吹き出し口に、送風を促すためのフィンが該ダクトの内側に取付けられている態様を例示する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る換気機能の付いたエアカーテンによれば、自動車整備工場等、整備対象の車両や人員が頻繁に出入りする必要があったり、扉やシャッター等で密閉してしまうと排気ガスが充満し、作業環境が汚染されてしまうような危険性があり、出入り口を兼ねた大きな開放空間が設けられているため空調が効き難く、夏季においては屋根裏に籠もった熱気により、冬季には開口部からの冷気により屋外と同様の悪条件に対し、不要な空気を効率良く排出すると伴に、出入りが自由なエアカーテンを構築出来るという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜図15は本発明を具体化した一実施形態の換気機能の付いたエアカーテンのダクト1を示している。以下、本発明をこのエアカーテンに用いるダクト1に具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、本換気機能の付いたエアカーテンに用いるダクト1は、天井11の下側にスペーサー吊り具10を介し、一定の空間を確保した状態に配設されており、当該ダクト1の内部には、上下の2箇所に、一定の間隔で下部送風口8と下部エアカーテン用内部フィン3、上部送風口5と上部エアカーテン用内部フィン6、スパイラル接合部2があり、送風される空気はダクト内部のスパイラル接合部2により、概ねスパイラル状の気流101となってダクト内を流れて行く。
【0013】
このスパイラル状の気流101のうち、上下夫々のエアカーテン用内部フィンにぶつかった気流が下部送風口5及び上部送風口8から、下部エアカーテン用送風パネル4から下降する気流102及び上部エアカーテン用送風パネル7から上昇する気流103となり夫々のパネル方向に排出され、残った気流は更にスパイラル状となり次へ送られるようになっている。
【0014】
図2は本発明の換気機能が付いたエアカーテン装置の端部を示す正面図で、該端部には送風ユニット18取り付けられていて、その内部にはモーター19の駆動により、送風ファン20が回転し、空気吸入口21から吸入された空気は、吸入される空気の方向105を形成し、ダクト1内部のスパイラル形状により、スパイラル状の気流となり、その一部を上下エアカーテン用内部フィンの抵抗性により気流方向を変えられ、上部及び下部エアカーテン用送風パネルにより排出されるようになっている。
【0015】
この上部エアカーテン用内部フィン、上部送風口及びエアカーテン用送風パネル、下部エアカーテン用内部フィン、下部送風口及び下部エアカーテン用送風パネルは、連続したものでなく一定の間隔で配設されたものでも良い。
【0016】
図3は、スパイラルダクト内部のスパイラル状の接合部2、エアカーテン用フィン及び送風パネルを示す(a)は断面斜視図で、(b)はエアカーテン用内部フィンの翼が変形されている態様を示すA−A’断面図で、スパイラル状の気流101が効率良く上下のエアカーテン用フィンによりその一部が方向を変えられ排出されるようになっている。
【0017】
図4は、ダクト1の断面図で、スパイラル状接合部を有する、上部スパイラル状送風パネル12、下部スパイラル状送風パネルにより渦巻き形状の気流を排出するようになっていて、通常のエアカーテン用送風パネルとの併用を行っても良い。
【0018】
図5は、ダクト1の断面図で、下部送風口5、エアカーテン用内部フィン3、エアカーテン用送風パネル4のユニット一式が2対設けられているもので、下部送風口から排出される空気を一定の間隔で送風したり、フィンの大きさや形状により夫々の風量に変化をつけたりすることが可能となる。
【0019】
図6は、本発明のエアカーテン装置を、大きな開口のある自動車整備工場に配置した態様を示す断面斜視図である。工場の床面16は、建物開口部22から車両17が出入りするために略平滑で、3方を建物壁14で囲まれ、建物屋根15の下の天井部分からスペースを開け、奥側と開口部寄りの2箇所にダクト1が配設されている。
【0020】
奥側のダクト1a上部から上向きに排出された空気は、天井部分に滞留した熱気を開口部方向への流れ104へと変化させ、更に開口部側のダクト1bの上部から排出された上昇する気流103に絡まれ、屋外に押し出されるようになる。
【0021】
図7は、本発明のエアカーテン装置を、大きな開口のある自動車整備工場に配置した態様を示す正面図である。工場の床面16は、建物開口部22から車両17が出入りするようになっていて、開口部の両方の床面には送風ユニット18、それらから垂直にダクト1が建物壁14とスペースを開けて延伸し、天井11とスペーサー吊り具10により一定のスペースを開けて天井と11と水平にダクトが曲げられ、ゲート形状に取り付けられている。
【0022】
このような自動車整備工場等は、鉄骨構造の躯体に鋼鈑製の屋根材を用いたような構造であるため、断熱性に乏しく、そのため建物壁や屋根により伝播された熱気は滞留しやすいのであるが、本発明のエアカーテン装置を用いることにより、建物の内壁面や天井部の熱気を容易に外部に排気することが可能となる。
【0023】
図8は、本発明のダクト装置のスパイラルダクトを、略180度回転させた状態を示す断面図である。バンド状のダクト取付け具9の金属製のバンドを緩めることによりダクトの角度を変化させることが可能で、夏場用と冬場用の換気を行うことが可能となる。
【0024】
図9は、夏場用の気流と換気を発生させる態様を図示したもの(a)、冬場用の気流を図示したもの(b)である。
【0025】
図10は、同装置を用いて3方向からの送風の態様と該風向の測定位置を示す正面図で、図14の風向及び風量の検知具を取付け、測定試験を実施した。この検知具は、50、000dtexのポリエステル製の1辺が120mmのハニカム形状のネット29で、夫々の交点には、幅20mm、厚み20ミクロン、長さ80mmのポリエチレン製の吹流し30が結びつけられている。
【0026】
両サイドの送風ユニットで発生させた送風は、壁面及び天井部の換気を行なうと共に、開口部でY字状のエアカーテンを形成している。
【0027】
図11及び図12は開口部の気流の状態を測定した平面図である。
【0028】
図13は、密閉された建物25内に開口部を持つ建物を建て、上部からハロゲンライトを照射し、夏場の熱気及び気流を再現させ、換気機能とエアカーテンの状態を示す断面図である。
【0029】
図15は、図10〜図13で測定した結果を示す表で、図15の(a)は、上部送風口(天井部11、建物壁面14との空間に送風される換気用の風112〜117)を風向Aとし、夫々の吹流しが略水平になるような状態となり、天井部や建物の壁面に滞留する熱気を導き出すように換気が行われ、下部送風口がらのエアカーテンとしての送風106〜111を風向Bとし、上部からの下降する気流23は、概ねV字状に降りて来て、左右の壁面からの気流24の場合は、上部の吹き出しに近いところでは、開口部中心向きに略水平で、中心に近づくにつれ、やや斜め下方向の風向で、床面に近いところでは中心部で衝突した気流が、屋外と屋内に分かれるようになり良好なエアカーテンを形成することを確認することが出来た。
【0030】
このエアカーテンを運転する前の室温は29℃で、運転開始30分後の室温は、27.0℃であった。
【0031】
次に、側面からの気流24を停止し、上部からのエアカーテンが床面まで届かないような状態で測定を行った結果を図15の(b)に表す。
【0032】
通常のエアカーテンのように完全に開口部を塞がなくても、室温が27.5℃であったという結果から、熱気が滞留する部分の空気を上昇気流として排出するような換気を行い、それらが回り込んで影響しない範囲をエアカーテンで塞ぐようにすることが可能となる。
【0033】
以上のように構成された本例の換気機能の付いたエアカーテンによれば、簡単な構造の送風装置を用いることで、換気とエアカーテンという二つの効果を簡単に得ることが可能となる。
【0034】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)本発明のエアカーテンのスパイラルダクトの断面形状が、真円でなく、楕円形や卵型にしたもの。
(2)本発明のエアカーテンのスパイラルダクトが、シームレスの筒状のものの内部にスパイラル形状に賦形したものを接合したもの。
(3)各エアカーテンの吹き出し口から送風される風量及び風向を自由に変化させて利用すること。
(4)本発明のエアカーテンのダクトの吹き出し口から吹き出される風向に対する軒天側、側壁側及び地面に吸気口を設け、そこから吸気された空気を送風ユニットに送付し、循環利用すること。
(5)本発明のエアカーテンを2重、3重と複数配設して利用すること。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る換気機能の付いたエアカーテン装置を示す断面図である。
【図2】同装置の端部を示す正面図である。
【図3】同装置に使用されるスパイラルダクト内部のスパイラル状の接合部、エアカーテン用フィン及び送風パネルを示す(a)は斜視図で、(b)はエアカーテン用内部フィンの翼が変形されている態様を示すA−A’断面図である。
【図4】同装置の送風パネルがスパイラルダクトであることを示す斜視図である。
【図5】同装置の送風パネルが複数取付けている態様を示す断面図である。
【図6】同装置の配置を示す断面斜視図である。
【図7】同装置の配置を示す正面図である。
【図8】同装置のスパイラルダクトを、略180度回転させた状態を示す断面図である。
【図9】同装置のスパイラルダクトを回転させた場合の、送風方向並びに室内の風向を示す断面図で、(a)は夏季、(b)は冬季に利用する態様を示すものである。
【図10】同装置を用い、3方向からの送風の態様と該風向の測定位置を示す正面図である。
【図11】図10のA−A’断面の送風状態を示すもので、天井部からのエアカーテンが両サイドからの送風を挟み込む態様を示すものである。
【図12】図10のA−A’断面の送風状態を示すもので、両サイドからの送風が天井部からのエアカーテンを挟み込む態様を示すものである。
【図13】試験方法を示す断面図である。
【図14】同装置の風向及び風量の検知具を示す斜視図である。
【図15】風速及び風向を測定したデータで、(a)は3方向からのエアカーテンを実施し開口部を遮蔽したもの、(b)は上部からのエアカーテンを床面まで降ろさずに測定したもの。
【符号の説明】
【0036】
1 ダクト
2 スパイラル状接合部
3 下部エアカーテン用内部フィン
4 下部エアカーテン用送風パネル
5 下部送風口
6 上部エアカーテン用内部フィン
7 上部エアカーテン用送風パネル
8 上部送風口
9 ダクト取り付け具
10 スペーサー吊り具
11 天井
12 上部スパイラル状送風パネル
13 下部スパイラル状送風パネル
14 建物壁
15 建物屋根
16 地面
17 車両
18 送風ユニット
19 モーター
20 送風ファン
21 空気取入口
22 建物開口部
23 降下気流
24 壁面からの気流
25 密閉された建物
26 室温測定位置
27 外部からの送風
28 ハロゲンライト
29 ハニカム形状のネット
30 吹流し
101 スパイラル形状の気流
102 下降する気流
103 上昇する気流
104 屋根裏の空気の流れ
105 吸入される空気の方向
106〜111 下部送風口からの気流方向
112〜117 上部送風口からの気流方向
201〜206 風量測定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放された建物の開口部に取付け、当該室内の空調を補助するためのエアカーテン装置で、開放された開口部の軒天部に対し一定のスペースを開けて吊り下げられたダクト状の送風パイプで、該送風パイプの上部と下部に吹き出し口が配設されていることを特徴とする換気機能の付いたエアカーテン。
【請求項2】
前記ダクト状の送風パイプが、立ち上げた接合部を内面に持ったスパイラルダクトであることを特徴とする請求項1記載の換気機能の付いたエアカーテン。
【請求項3】
前記送風用のスパイラルダクトの上部と下部に配設された吹き出し口に、送風を促すためのフィンが該ダクトの内側に取付けられていることを特徴とする請求項1及び2記載の換気機能の付いたエアカーテン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−19660(P2013−19660A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169641(P2011−169641)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(511169380)有限会社ライフプランナーよこみぞ (1)