説明

換気特性判定装置

【課題】被験者の換気特性を判定可能な装置を提供する。
【解決手段】生体測定装置1は、身体の特定部位の生体電気インピーダンスを測定する生体電気インピーダンス測定部200と、CPU170とを備える。CPU170は、被験者の肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaと、肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbとを測定するように生体電気インピーダンス測定部200を制御する。そして、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの測定値と第2生体電気インピーダンスZbの測定値とに基づいて、被験者の換気機能の特性を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の換気機能の特性を判定可能な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体電気インピーダンスを測定し、測定結果に基づいて、生体の状態を推定する各種の装置が従来から知られている。そのような装置の一つとして、特許文献1には、体幹生体電気インピーダンスに基づいて、肺活量を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−50127号公報(段落0020参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、肺活量の値は、被験者の体格(身長、体重)や年齢などに応じて異なる値を示すので、肺活量の値が低いからといって、被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位(例えば胸部骨格筋、肺胞組織、胸部骨格筋および肺胞組織の両方を含む)の機能が正常であるとは限らない。すなわち、特許文献1に開示された技術では、被験者の肺活量を推定することはできても、被験者の換気機能の特性までを判定することはできない。
そこで、本発明は、被験者の換気機能の特性を判定可能な装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明に係る換気特性判定装置は、被験者の肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンスと、被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンスとを測定する生体電気インピーダンス測定部(170、200)と、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の換気機能の特性を判定する判定部(170)とを備えることを特徴とする。好適な態様として、判定部は、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が正常であるか否かを判定する。
【0006】
例えば被験者が胸部に病歴を有しており、胸部のうち呼吸に寄与する部位(例えば胸部骨格筋、肺胞組織、胸部骨格筋および肺胞組織の両方を含む)の機能が低下していた場合は、呼吸に伴う胸部骨格筋の変化が健常者に比べて小さいので、換気量を確保するために、横隔膜の変動量(上昇量および下降量)が大きくなる。また、加齢などにより、胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が低下していた場合も同様である。ここで、肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンスの変化は、肺に出入りする空気量と連動している一方、肺の中下部および腹部を含む第2生体電気インピーダンスの変化は、横隔膜の動きと連動しており、横隔膜の変動量が大きいほど第2生体電気インピーダンスの変化も大きくなる。したがって、例えば胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が低下していた被験者と健常者との間で、1呼吸において肺に出入りする空気の量(換気量)が同じであり、当該1呼吸における第1生体電気インピーダンスの変化が同じであっても、胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が低下していた被験者は、健常者に比べて横隔膜の変動量が大きいので、当該1呼吸における第2生体電気インピーダンスの変化が大きくなる。上述の本発明の態様では、被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が低下している場合は、第2生体電気インピーダンスの変化が大きくなる点に着目し、第2生体電気インピーダンスの測定値と第1生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が正常であるか否かを判定している。これにより、被験者の換気機能の特性(胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が低下している等)を判定できる。
【0007】
ここで、胸式で胸郭を広げる呼吸法(胸式呼吸)では、内外肋間筋などの呼吸筋の伸縮変化と肺の伸縮(膨張収縮)変化が同じ方向に作用するので、肺の生体電気インピーダンスが増加すれば胸部骨格筋の生体電気インピーダンスも増加し、肺の生体電気インピーダンスが減少すれば胸部骨格筋の生体電気インピーダンスも減少する。一方、腹式呼吸は胸郭の変化がほとんど見られない呼吸法なので、胸部骨格筋の生体電気インピーダンスはほとんど変化せず、肺の生体電気インピーダンスが呼吸に伴って大きく変化する。被験者の呼吸が、胸式呼吸および腹式呼吸の何れの場合であっても、肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンスは、吸気では増加方向に変化する一方、呼気では減少方向に変化するという具合である。
【0008】
一方、腹式呼吸の特徴は、腹部骨格筋の伸縮により内臓組織と伴に横隔膜を上下させる点にある。より具体的には、腹式呼吸の呼気時のみ、腹筋を緊張させて内臓組織と伴に横隔膜を押し上げ上昇させることで、内臓組織と腹部骨格筋との並列部の生体電気インピーダンスが上昇する。このとき、肺組織の生体電気インピーダンスは減少する。このため、横隔膜から上部の生体電気インピーダンスの減少を横隔膜から下部の生体電気インピーダンスの増加が打ち消すように作用する。胸式呼吸では、そのようなことはない。
【0009】
腹式呼吸の呼気における第2生体電気インピーダンスの変化は、第1生体電気インピーダンスの変化とは異なる(変化を示す波形が異なる)のに対して、吸気における第2生体電気インピーダンスの変化は、胸式呼吸および腹式呼吸の何れの場合であっても、第1生体電気インピーダンスの変化と同じである(変化を示す波形が同じである)。すなわち、第2生体電気インピーダンスの経時的変化を示す波形には、呼気時の腹式呼吸に起因した波形歪みが含まれるので、吸気における第1生体電気インピーダンスの変化と第2生体電気インピーダンスの変化とに基づいて、被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が正常であるか否かを判定することが好ましい。
【0010】
この好適な態様として、第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値、および、第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値を生成するセンタリング値生成部(170)と、第1生体電気インピーダンスの測定値の第1センタリング値に対する相対値である第1相対値を求める第1相対値算出部(170)と、第2生体電気インピーダンスの測定値の第2センタリング値に対する相対値である第2相対値を求める第2相対値算出部(170)と、をさらに備え、判定部は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸の吸気における第1相対値と第2相対値との比に基づいて、被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が正常であるか否かを判定する。第1センタリング値とは、呼吸に伴う第1生体電気インピーダンスの経時的変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルである。また、第2センタリング値とは、呼吸に伴う第2生体電気インピーダンスの経時的変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルである。上述の態様では、呼吸に起因した情報を示す第1相対値および第2相対値に基づいた判定処理を行うことで、被験者の換気機能の特性をより正確に判定できるという利点がある。
【0011】
より具体的な態様として、判定部は、第1相対値のピーク値に対する第2相対値のピーク値の割合が所定の閾値以上である場合は、被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能は正常ではないと判定する一方、閾値を下回る場合は、被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能は正常であると判定する。これにより、被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が正常であるか否かが正確に判定されるという具合である。
【0012】
本発明に係る換気特性判定装置の態様として、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第1センタリング値とが等しくなるゼロクロスタイミングを抽出するゼロクロスタイミング抽出部(170)をさらに備え、生体電気インピーダンス測定部は、所定の周期でサンプリングタイミングに到達するたびに、第1生体電気インピーダンスおよび第2生体電気インピーダンスを測定し、センタリング値生成部は、所定数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値に基づいて第1センタリング値を生成する一方、ゼロクロスタイミング抽出部で抽出されたゼロクロスタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値に基づいて第2センタリング値を生成する。
【0013】
被験者の呼吸が胸式呼吸であっても腹式呼吸であっても、第1生体電気インピーダンスの変化を示す波形は略正弦波状となる。体動などによる影響で、第1生体電気インピーダンスの変化を示す波形が乱れても、それに応じた第1センタリング値(第1生体電気インピーダンスの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベル)が得られるように、センタリング値生成部は、所定数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値に基づいて第1センタリング値を生成する。より具体的には、センタリング値生成部は、サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングよりも所定の時間長だけ前の時点を始点とし、当該サンプリングタイミングを終点とするセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理を行い、その結果に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける第1センタリング値を求める。これにより、体動などによる影響で、第1生体電気インピーダンスの変化を示す波形が乱れても、それに応じた第1センタリング値を精度良く生成できる。上記センタリング期間の時間長は、当該サンプリングタイミングにおける被験者の呼吸速度に応じて可変に設定される。なお、ここでの「移動平均処理」には、重み付けのない平均処理だけでなく、重み付けのある平均処理も含まれる。例えば各サンプリングタイミングにおける周波数の相違に応じた重み付けがされたうえで、平均処理が行われる態様であってもよい。
【0014】
一方、腹式呼吸に伴う第2生体電気インピーダンスの変化は、第1生体電気インピーダンスの変化とは異なる態様(非正弦波状)となるので、第1センタリング値を求める場合と同様に、所定数のサンプリングタイミングの各々における第2生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理を行っても、これらの振幅基準レベル、すなわち、第2生体電気インピーダンスの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを精度良く求めることは困難である。
【0015】
そこで、上記態様では、センタリング値生成部は、ゼロクロスタイミング抽出部で抽出されたゼロクロスタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける第2センタリング値を生成する。具体的には、センタリング値生成部は、サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるか否かを判定し、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングである場合は、当該サンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける第2センタリング値を生成する一方、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングでない場合は、当該サンプリングタイミングの直前のサンプリングタイミングで生成した第2センタリング値を、当該サンプリングタイミングにおける第2センタリング値として採用する。これにより、第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを精度良く求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る実施形態の生体測定装置の電気的構成について示すブロック図である。
【図2】生体測定装置の外観例を示す斜視図である。
【図3】生体測定装置の電極配置を示す説明図である。
【図4】電流電極の選択と電圧電極の選択とを説明するための説明図である。
【図5】生体測定装置の動作内容を示すフローチャートである。
【図6】体幹を構成する組織の概略を示す模式図である。
【図7】体幹の生体電気インピーダンスの等価回路を示す回路図である。
【図8】呼吸と生体電気インピーダンスの変化の関係を説明する説明図である。
【図9】腹式呼吸における生体電気インピーダンスの変化を示す図である。
【図10】胸式呼吸における生体電気インピーダンスの変化を示す図である。
【図11】腹式呼吸に伴う胸部および腹部の周囲径変化を示す図である。
【図12】胸式呼吸に伴う胸部および腹部の周囲径変化を示す図である。
【図13】胸部の周囲径変化と腹部の周囲径変化との比と、第1相対値および第2相対値との関係を示す相関図である。
【図14】呼吸解析処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図15】第1センタリング処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図16】呼吸タイミング抽出処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図17】呼吸タイミング抽出処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図18】呼吸スピード判別フラッグ設定処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図19】第1センタリング値抽出処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図20】第2センタリング値の生成方法を概念的に説明するための模式図である。
【図21】第2相対値算出処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図22】腹式呼吸における第1相対値と第2相対値との経時的変化を示す図である。
【図23】ΔRib/ΔAb推定演算処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図24】ΔRib/ΔAb推定演算処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図25】ΔRib/ΔAb推定演算処理の演算結果を示す図である。
【図26】呼吸レベル抽出処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図27】表示部での表示態様を示す図である。
【図28】呼吸レベル表示処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図29】呼吸レベルと1回換気量との間の関係を示す相関図である。
【図30】換気特性判定/表示処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図31】胸部に病歴が無い被験者の呼吸に伴う第1相対値および第2相対値の経時的変化を示す図である。
【図32】胸部に病歴を有する被験者の呼吸に伴う第1相対値および第2相対値の経時的変化を示す図である。
【図33】換気能バランスの表示態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<1.実施形態>
<1−1:生体測定装置の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る生体測定装置1の構成を示すブロック図である。この生体測定装置1は、生体の状態を測定するものであるが、その機能の一部は、被験者の換気機能の特性を判定する換気特性判定装置としての役割を担う。
生体測定装置1は、体重を測定するとともに装置全体の動作を管理する管理部100と、被験者の各部位の生体電気インピーダンスを測定する生体電気インピーダンス測定部200とを備える。管理部100は、体重計110、第1記憶部120、第2記憶部130、音声処理部140、スピーカ145、入力部150、並びに表示部160を備える。これらの構成要素は、バスを介してCPU(Central Processing Unit)170と接続されている。CPU170は、装置全体を制御する制御中枢として機能する。なお、CPU170は図示せぬクロック信号発生回路からクロック信号の供給を受けて動作する。また、各構成要素には図示せぬ電源スイッチがオン状態になると、電源回路から電源が供給される。
【0018】
体重計110は、被験者の体重を測定し、その測定した体重データを、バスを介してCPU170に出力する。第1記憶部120は、不揮発性のメモリであって、例えばROM(Read Only Memory)で構成される。第1記憶部120には、装置全体を制御する制御プログラムが記憶されている。CPU170は、制御プログラムにしたがって所定の演算を実行する。
【0019】
第2記憶部130は、揮発性のメモリであり、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等によって構成される。第2記憶部130はCPU170の作業領域として機能し、CPU170が所定の演算を実行する際にデータを記憶する。また、音声処理部140は、CPU170の制御の下、音声データをDA変換して得た音声信号を増幅してスピーカ145に出力する。スピーカ145は増幅した音声信号を振動に変換して放音する。これによって、呼吸方法の指導などのアドバイス情報を音によって被験者に報知することができる。
【0020】
入力部150は、各種のスイッチから構成され、被験者がスイッチを操作すると、身長、年齢、及び性別といった情報が入力される。表示部160は、体重や呼吸の種別といった測定結果や、腹式呼吸に導くための呼気と吸気のリズムやパターンなどのアドバイス情報を知らせる機能、あるいは被験者に各種の情報の入力を促すメッセージを表示する機能を有する。表示部160は、例えば、液晶表示装置などで構成される。
【0021】
次に、生体電気インピーダンス測定部200は、被験者(人体)の生体電気インピーダンスを測定する。生体電気インピーダンス測定部200は、交流電流出力回路210、基準電流検出回路220、電位差検出回路230、A/D変換器240、電極切換回路251及び252を備える。
交流電流出力回路210は基準電流Irefを生成する手段である。交流電流出力回路210は、基準電流Irefの実効値が予め定められた値となるように、当該基準電流Irefを生成する。基準電流検出回路220は、被測定対象に流れる基準電流Irefの大きさを検出して電流データDiとしてCPU170に出力するとともに、被験者に基準電流Irefを通電する。この場合、電極切換回路252は、電流電極X1〜X4の中から2つを選択して電流を供給する。
さらに、電位差検出回路230は、電圧電極Y1〜Y4の中から選択された2つの電圧電極の間の電位差を検出して電位差信号ΔVを生成する。A/D変換器240は電位差信号ΔVをアナログ信号からデジタル信号に変換し電圧データDvとしてCPU170に出力する。CPU170は電圧データDvと電流データDiとに基づいて生体電気インピーダンスZ(=Dv/Di)を計算する。
【0022】
第1記憶部120は、各種データを予め記憶することができる。たとえば、各部位の生体電気インピーダンスを変数として体脂脂肪率や筋肉量を算出するための相関式又は相関テーブルが記憶されている。
CPU170は、体重、被験者の各種の部位の生体電気インピーダンス(例えば、上肢生体電気インピーダンス、下肢生体電気インピーダンス、体幹生体電気インピーダンス)、を演算し、かつ、各種の入出力、測定、演算等について制御する。なお、生体電気インピーダンスなどに基づいて、内臓脂肪/皮下脂肪、内臓脂肪量、皮下脂肪率、皮下脂肪量、全身の脂肪率、身体の各部位の脂肪率(上肢脂肪率、下肢脂肪率、体幹脂肪率など)を演算することもできる。
【0023】
図2に、生体測定装置1の外観例を示す。生体測定装置1は、L字型の形状をしており、台座部20の上に柱状の筐体部30を備える。台座部20には、左足用の電流電極X1及び電圧電極Y1と、右足用の電流電極X2及び電圧電極Y2が設けられている。また、筐体部30の上部には、表示部160が設けられている。この表示部160は、タッチパネルで構成されており、入力部150としても機能する。さらに、筐体部30の左右の側面には、左手用の電極部30Lと右手用の電極部30Rが設けられている。
【0024】
図3は筐体部30の上部を拡大した拡大図である。この図に示すように、左手用の電極部30Lは電流電極X3及び電圧電極Y3を備え、右手用の電極部30Rは電流電極X4及び電圧電極Y4を備える。被験者は、台座30の上に立ち、左右の手を下げた状態で電極部30L及び電極部30Rを握ることによって、測定を行う。
【0025】
電極切換回路251及び252は、CPU170の制御の下、両手及び両足に装着される8個の電極を選択する。この8個の電極を適宜選択することによって、人体の所定の部位における生体電気インピーダンスZを計測することが可能となる。例えば、図4(A)に示すように基準電流Irefを左足用の電流電極X1と左手用の電流電極X3との間に供給し、左足用の電圧電極Y1と左手用の電圧電極Y3との間で電位差を計測すれば、全身の生体電気インピーダンスを計測することができる。なお、基準電流Irefを電流電極X2及びX4の間に流し、電圧電極Y2及びY4の間の電位差を計測しても全身の生体電気インピーダンスを計測することができる。さらに、図4(K)に示すように両掌を短絡させ、両足を短絡させ、両掌から両足までの生体電気インピーダンスを全身の生体電気インピーダンスとして測定してもよい。
【0026】
また、図4(B)に示すように基準電流Irefを右足用の電流電極X2と右手用の電流電極X4との間に供給し、右足用の電圧電極Y2と左足用の電圧電極Y1との間で電位差を計測すれば、右下肢の生体電気インピーダンスZを計測することができる。また、図4(C)に示すように基準電流Irefを左足用の電流電極X1と左手用の電流電極X3との間に供給し、左足用の電圧電極Y1と右足用の電圧電極Y2との間で電位差を計測すれば、左下肢の生体電気インピーダンスZを計測することができる。
【0027】
また、図4(D)に示すように基準電流Irefを右手用の電流電極X4と右足用の電流電極X2との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と左手用の電圧電極Y3との間の電位差を計測すれば、右上肢(体幹上部)の生体電気インピーダンスZを計測することができる。ただし、これに限らず、基準電流Irefを左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と右足用の電圧電極Y2との間の電位差を計測することでも、右上肢(体幹上部)の生体電気インピーダンスZを計測することができる。
【0028】
また、図4(E)に示すように基準電流Irefを左手用の電流電極X3と左足用の電流電極X1との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と左手用の電圧電極Y3との間で電位差を計測すれば、左上肢(体幹上部)の生体電気インピーダンスZを計測することができる。ただし、これに限らず、基準電流Irefを左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4との間に供給し、左手用の電圧電極Y3と左足用の電圧電極Y1との間の電位差を計測することでも、左上肢(体幹上部)の生体電気インピーダンスZを計測することができる。
【0029】
また、図4(F)に示すように基準電流Irefを右手用の電流電極X4と左手用の電流電極X3との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と左手用の電圧電極Y3との間で電位差を計測すれば、両掌間の生体電気インピーダンスZを計測することができる。ここで、体幹を体幹上部と体幹中部に分けた場合、左上肢、右上肢、及び掌間の生体電気インピーダンスは、いずれも体幹上部が含まれる。このため、左上肢、右上肢、及び掌間の生体電気インピーダンスを体幹上部の生体電気インピーダンスとして取り扱うことも可能である。
【0030】
さらに、図4(G)に示すように基準電流Irefを左手用の電流電極X3と左足用の電流電極X1との間に供給し、右手用の電圧電極X4と右足用の電圧電極Y2との間で電位差を計測すれば、体幹中部の生体電気インピーダンスを計測することができる。また、図4(H)に示すように基準電流Irefを右手用の電流電極X4と右足用の電流電極X2との間に供給し、左手用の電圧電極Y3と左足用の電圧電極Y1との間で電位差を計測すれば、体幹中部の生体電気インピーダンスを計測することができる。また、図4(I)に示すように基準電流Irefを右手用の電流電極X4と左足用の電流電極X1との間に供給し、左手用の電圧電極Y3と右足用の電圧電極Y2との間で電位差を計測すれば、体幹中部を斜めに横切る生体電気インピーダンスを計測することができる。図4(J)に示すように基準電流Irefを右足用の電流電極X2と左手用の電流電極X3との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と左足用の電圧電極Y1との間で電位差を計測すれば、体幹中部を斜めに横切る生体電気インピーダンスを計測することができる。
【0031】
なお、体幹部の生体電気インピーダンスZxの測定方法は、上述した方法に限定されるものではなく、両手両足の電極のうち、基準電流Irefを供給する電極と電位差を検出する電極とを適宜選択することによって、手、足、あるいは全身といった人体の各部位の生体電気インピーダンスZを各々測定し、測定結果を加減算して体幹中部の生体電気インピーダンスZを算出すればよい。さらに、四肢以外に頭部の耳たぶなどに四肢のいずれかの代用として使用しても、体幹部の生体電気インピーダンスZxの測定は可能である。くわえて、体幹に接触電極を設ける場合には言うに及ばない。
【0032】
<1−2:生体測定装置の動作>
図5は、生体測定装置1の動作を示すフローチャートである。まず、入力部150における電源スイッチ(図示省略)がオンされると、図示せぬ電力供給部から電気系統各部に電力を供給し、表示部160により身長を含む身体特定情報(身長、性別、年齢など)を入力するための画面を表示する(ステップS1)。
続いて、入力部150から身長、性別、年齢等が入力されると、体重計110により体重が測定され、CPU170は体重を取得する(ステップS2)。
【0033】
ステップS2の後、CPU170は、呼吸解析処理を実行する(ステップS3)。この処理では、CPU170は、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める。ステップS3の後、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを表示する呼吸レベル表示処理を実行する(ステップS4)。また、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における被験者の換気機能の特性(換気特性)を判定するとともに、その判定結果を表示する換気特性判定/表示処理を実行する(ステップS5)。これらの詳細な内容については後述する。
【0034】
<1−3:呼吸解析の原理>
次に、呼吸解析の原理について説明する。図6は、体幹部の組織の概略を示す模式図である。図6に示すように、体幹部の組織は、横隔膜によって上下に分けられている。上部には、肺と、内外肋間筋などの胸部骨格筋とが形成されている。一方、下部には、内臓組織と、内外腹斜筋・腹横筋や腹直筋などからなる腹部骨格筋とが形成されている。
腹式呼吸および胸式呼吸のいずれの場合であっても、呼気時に横隔膜は上昇して肺が圧縮され、吸気時に横隔膜は下降して肺は伸長拡大する。胸式呼吸に無い腹式呼吸の特徴は、腹直筋や内外腹斜筋・腹横筋などの腹部呼吸筋の伸縮により内臓組織と供に横隔膜を上下させる点にある。
【0035】
ここで、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaと体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbとは、図7に示す等価回路で表すことができる。図7に示すように、第1生体電気インピーダンスZaは、胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1、および、肺の生体電気インピーダンスZ2の並列インピーダンスと、上肢骨格筋の生体電気インピーダンスZ3とが直列に接続されたものとなる。ここで、Z1およびZ2の並列インピーダンスは、肺の上葉部の生体インピーダンスに相当する。つまり、第1生体電気インピーダンスZaは、肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部の生体電気インピーダンスである。
【0036】
また、図7に示すように、第2生体電気インピーダンスZbは、胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ4、および、肺の生体電気インピーダンスZ5の並列インピーダンスと、腹部骨格筋の生体インピーダンスZ6、および、内臓組織の生体インピーダンスZ7の並列インピーダンスとが直列に接続されたものとなる。ここで、Z4およびZ5の並列インピーダンスは、肺の中下葉部の生体インピーダンスに相当する。また、横隔膜の生体電気インピーダンスは、内臓組織に代表される生体電気インピーダンスZ7に含ませて考えることができる。つまり、第2生体電気インピーダンスZbは、肺の中下部および腹部を含む体幹中部の生体電気インピーダンスである。
【0037】
次に、図8を参照して、呼吸と生体電気インピーダンスの変化との関係を説明する。呼吸に連動した第1生体電気インピーダンスZaの変化は、肺に絶縁性の高い空気が出入りすることによる電気的特質(電気導電性、1/体積抵抗率)の変化が主な原因であると考えられる。つまり、呼気(呼息)では肺組織中に含まれる空気量が減るため肺の生体電気インピーダンスZ2は減少方向に変化する(ΔZlu<0)。一方、吸気(吸息)では空気量が増加するため、肺の生体電気インピーダンスZ2は増加方向に変化する(ΔZlu>0)。
【0038】
胸式で胸郭を広げる呼吸法(胸式呼吸)では、内外肋間筋などの呼吸骨格筋の伸縮変化と肺の伸縮変化が同じ方向に作用するので、肺の生体電気インピーダンスZ2が増加すれば胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1も増加し、肺の生体電気インピーダンスZ2が減少すれば胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1も減少する。一方、腹式呼吸は胸郭の変化がほとんど見られない呼吸法なので、胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1はほとんど変化せず、肺の生体電気インピーダンスZ2が呼吸に伴って大きく変化する。なお、第1生体電気インピーダンスZaには、上肢骨格筋の生体電気インピーダンスZ3が含まれているが、上肢骨格筋は、呼吸に直接的に寄与する筋肉ではない。本実施形態では、被験者は、図2に示す測定装置の台座部20の上に立ち、左右の腕を下げた状態で30L及び30Rを握り計測を行うので、計測中に上肢骨格筋(Z3)が動くことは殆ど無い。図9および図10に示すように、被験者の呼吸が、胸式呼吸および腹式呼吸の何れの場合であっても、吸気では第1生体電気インピーダンスZaは増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaは減少方向に変化するという具合である。
【0039】
一方、呼吸に連動した第2生体電気インピーダンスZbの変化は、横隔膜の動きと連動している。上述したように、横隔膜は呼気時上昇し、吸気時下降するが、腹式呼吸の呼気時のみ、腹筋が緊張して内臓組織と伴に横隔膜が押し上げられ(横隔膜上昇)、内臓組織と腹部骨格筋との並列部の生体電気インピーダンスが上昇する(ΔZst>0)。このとき、肺組織の生体電気インピーダンスは減少する(ΔZlu<0)。このため、横隔膜から上部の生体電気インピーダンスの減少を横隔膜から下部の生体電気インピーダンスの増加が打ち消すように作用する。このように、胸式呼吸と腹式呼吸とでは、横隔膜から下部にある腹部骨格筋と内臓組織の動きが異なる。
【0040】
図9に示すように、被験者の呼吸が腹式呼吸の場合、吸気では第2生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する一方、呼気では、横隔膜から上部の生体電気インピーダンスの減少を横隔膜から下部の生体電気インピーダンスの増加が打ち消すように作用するので、第2生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する。また、図10に示すように、被験者の呼吸が胸式呼吸の場合は、上述した第1生体電気インピーダンスZaの変化と同様に、吸気では第2生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する一方、呼気では第2生体電気インピーダンスZbは減少方向に変化するという具合である。
【0041】
次に、図11および図12を参照して、被験者の呼吸と、被験者の胸部の周囲径Ribおよび腹部の周囲径Abとの関係について説明する。まず、被験者の呼吸が腹式呼吸である場合を想定する。図11は、レスピトレース(米国A.M.I社製)で、被験者の腹式呼吸に連動した胸部および腹部の各々の周囲径変化を時系列的に捕捉した結果を示す図である。図11からも理解されるように、被験者の呼吸が腹式呼吸の場合は、その呼吸に応じて腹部の周囲径Abが変化する一方、胸部の周囲径Ribは殆ど変化しない。したがって、腹式呼吸の場合は、被験者の胸部の周囲径Ribの変化(Ribの測定値の基準レベルを示すRib基準値に対するRib(測定値)の相対値)ΔRibと、被験者の腹部の周囲径Abの変化(Abの測定値の基準レベルを示すAb基準値に対するAb(測定値)の相対値)ΔAbとの比を示すΔRib/ΔAbは、「1」を下回るという具合である。なお、レスピトレースの情報は、測定値の基準値に対する相対値のピーク値またはボトム値の絶対値(0-P)、および、ピーク値とボトム値との絶対値の和(P-P)のうちの何れかで検出される。ここでは、被験者の1呼吸ごとに、呼吸の種別の判定が行われるので、レスピトレースの情報は、P-Pの形で検出される。
【0042】
次に、被験者の呼吸が胸式呼吸である場合を想定する。図12は、レスピトレース(米国A.M.I社製)で、被験者の胸式呼吸に連動した胸部および腹部の各々の周囲径変化を時系列的に捕捉した結果を示す図である。被験者の呼吸が胸式呼吸の場合は、その呼吸に応じた胸部の周囲径Ribの変化は、腹部の周囲径Abの変化よりも大きいので、上述のΔRib/ΔAbは、「1」を上回るという具合である。ここでは、ΔRib/ΔAbは、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報であると捉えることができる。
【0043】
本実施形態では、被験者の胸部の周囲径の変化ΔRibと腹部の周囲径の変化ΔAbとの比(=ΔRib/ΔAb)と、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の第1センタリング値Za0に対する相対値である第1相対値ΔZa、および、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の第2センタリング値Zb0に対する第2相対値ΔZbとの間には相関関係があることを見出し、その相関関係を表す式を用いて、第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbに対応するΔRib/ΔAbの値を求める。そして、その求めたΔRib/ΔAbの値から、被験者の呼吸の種別(胸式呼吸なのか腹式呼吸なのか)を推定できるという具合である。この詳細な内容は後述するが、「第1センタリング値Za0」とは、第1生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを示すものである。また、「第2センタリング値Zb0」とは、第2生体電気インピーダンスZbの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを示すものである。
【0044】
図13は、複数の被験者の測定データから得られた、ΔRib/ΔAbと、ΔZb/ΔZaとの関係を示す相関図である。図13からも理解されるように、ΔRib/ΔAbと、ΔZb/ΔZaとの間には相関係数R=0.651,P<0.01という高い相関が得られ、以下の回帰式(1)が成立する。
正の相関がみられ、以下の回帰式(1)が成立する。
ΔRib/ΔAb=a0×ΔZb/ΔZa+b0 ・・・(1)
a0:回帰係数,b0:定数。
【0045】
また、上記回帰式(1)は以下のように変形できる。
ΔRib/ΔAb=(a0×ΔZb−ΔZa)/ΔZa+b1 ・・・(2)
b1:定数(=b0+1)。
【0046】
ここで、呼吸に伴う第1生体電気インピーダンスZaの変化は、肺の上葉部の生体電気インピーダンス(Z1およびZ2の並列インピーダンス)の変化であると捉えることができる。一方、第2生体電気インピーダンスZbの変化は、肺の中下葉部の生体電気インピーダンス(Z4およびZ5の並列インピーダンス)の変化と、腹部の生体電気インピーダンス(Z6およびZ7の並列インピーダンス)の変化との和であると捉えることができる。肺の上葉部の生体電気インピーダンスの変化、および、肺の中下葉部の生体電気インピーダンスの変化は、同じ部位(胸部)の生体電気インピーダンスの変化であるとみなせば、第2生体電気インピーダンスZbの変化と第1生体電気インピーダンスZaの変化との差分は、腹部の生体電気インピーダンスの変化に相当する。そうすると、上記式(2)は、腹部の生体電気インピーダンスの変化と胸部の生体電気インピーダンスの変化との比と、ΔRib/ΔAbとの関係を表す式であると捉えることもできる。上記式(2)のa0は、肺の上葉部と中下葉部との測定感度の相違を補正するための補正係数であるとみなすことができる。
【0047】
<1−4:呼吸解析処理>
次に、CPU170が実行する呼吸解析処理について説明する。図14は、呼吸解析処理の具体的な内容を説明するためのフローチャートである。本実施形態では、通常の1呼吸(=1回の吸気+1回の呼気)につき、10回の呼吸解析処理を実行するように設定される。ここでは、通常の1呼吸に要する時間を4秒とみなし、CPU170は、0.4秒ごとに、呼吸解析処理を実行するという具合である。以下では、呼吸解析処理を実行するタイミング(0.4秒ごとのタイミング)をサンプリングタイミングと呼ぶ。なお、これは一例であり、呼吸解析処理を実行するタイミングは任意に設定可能である。
【0048】
図14に示すように、まず、CPU170は、サンプリングタイミングに到達したか否かを判定し(ステップS10)、ステップS10の結果が肯定である場合はステップS20に進む。ここでは、第n番目(n≧1)のサンプリングタイミングに到達した場合を想定して、ステップS20以下の各ステップの具体的な内容を説明する。ステップS20以下の各ステップの具体的な説明に先立ち、まずは、各ステップの内容の概略を簡単に説明する。ステップS10の後のステップS20において、CPU170は、肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaを測定する。ステップS20の後のステップS30において、CPU170は、肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbを測定する。ステップS30の後のステップS40において、CPU170は、ステップS20で測定した第1生体電気インピーダンスZaおよびステップS30で測定した第2生体電気インピーダンスZbの各々について、スムージング処理を実行する。ステップS40の後のステップS50において、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値Za0を生成する。ステップS50の後のステップS60において、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の第1センタリング値Za0に対する相対値である第1相対値ΔZaを算出する。ステップS60の後のステップS70において、CPU170は、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値Zb0を生成し、その生成した第2センタリング値Zb0を用いて、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の第2センタリング値Zb0に対する相対値である第2相対値ΔZbを算出する。ステップS70の後のステップS80において、CPU170は、上記回帰式(2)にしたがって演算処理を実行することで、第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbに対応するΔRib/ΔAbの値を求める。ステップS80の後のステップS90において、CPU170は、被験者の呼吸の深さを示す呼吸レベルを抽出する呼吸レベル抽出処理を実行する。以下、各ステップの具体的な内容を順番に説明していく。
【0049】
図14に示すように、ステップS20において、CPU170は、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaを測定する。より具体的には、CPU170は、左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4とを選択するように電極切換回路252を制御するとともに、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4とを選択するように電極切替回路251を制御する。CPU170は、右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4との間の電位差を示す電圧データDvとから、右上肢(体幹上部)の第1生体電気インピーダンスZaを測定する。ここでは、第n番目(n≧1)のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの実測値をZa(n)’と表記する。
【0050】
ステップS20の後、CPU170は、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbを測定する(ステップS30)。より具体的には、CPU170は、左足用の電流電極X1と右手用の電流電極X4とを選択するように電極切換回路252を制御するとともに、左手用の電圧電極Y3と右足用の電圧電極Y2とを選択するように電極切換回路251を制御する。CPU170は、左足と右手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、左手用の電圧電極Y3と右足用の電圧電極Y2との間の電位差を示す電圧データDvとから、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbを測定する。ここでは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの実測値をZb(n)’と表記する。
【0051】
ステップS30の後、CPU170は、ステップS20で測定した第1生体電気インピーダンスZa(n)’およびステップ30で測定した第2生体電気インピーダンスZb(n)’の各々について、スムージング処理を実行する(ステップS40)。まず、第1生体電気インピーダンスZa(n)’のスムージング処理について具体的に説明する。CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの実測値Za(n−2)’と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの実測値Za(n−1)’と、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの実測値Za(n)’とを用いた移動平均処理を行う。そして、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの測定値として採用する(スムージング処理)。ここでは、スムージング処理が行われた後の、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの測定値を、Za(n)と表記する。
【0052】
次に、第2生体電気インピーダンスZb(n)’のスムージング処理について具体的に説明する。CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの実測値Zb(n−2)’と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの実測値Zb(n−1)’と、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの実測値Zb(n)’とを用いた移動平均処理を行う。そして、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値として採用する(スムージング処理)。ここでは、スムージング処理が行われた後の、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値を、Zb(n)と表記する。
【0053】
ステップS40の後、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値Za0を生成する第1センタリング処理を実行する(ステップS50)。ここでは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値をZa0(n)と表記する。本実施形態では、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングよりも所定の時間長だけ前の時点を始点とし、第n番目のサンプリングタイミングを終点とするセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)を生成する。センタリング期間の時間長は、第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸の速度に応じて可変に設定される。以下、その具体的な内容について詳細に説明する。
【0054】
図15は、第1センタリング処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図15に示すように、まず、CPU170は、10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルを示すMA10を抽出するMA10抽出処理を実行する(ステップS51)。より具体的には、CPU170は、第n−9番目〜第n番目の10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値(Za(n−9)〜Za(n))を用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMA10(n)として抽出する([Za(n−9)+Za(n−8)+・・・+Za(n)]/10→MA10(n))。
【0055】
ステップS51の後、CPU170は、20個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルを示すMA20を抽出するMA20抽出処理を実行する(ステップS52)。より具体的には、CPU170は、第n−19番目〜第n番目の20個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値(Za(n−19)〜Za(n))を用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMA20(n)として抽出する([Za(n−19)+Za(n−18)+・・・+Za(n)]/20→MA20(n))。
【0056】
ステップS52の後、CPU170は、10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値のうち最大の値をMAX10として抽出するMAX10抽出処理を実行する(ステップS53)。より具体的には、CPU170は、第n−9番目〜第n番目の10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値のうち最大の値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMAX10(n)として抽出するという具合である。
【0057】
ステップS53の後、CPU170は、10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値のうち最小の値をMIN10として抽出するMIN10抽出処理を実行する(ステップS54)。より具体的には、CPU170は、第n−9番目〜第n番目の10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値のうち最小の値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMIN10(n)として抽出するという具合である。
【0058】
ステップS54の後、CPU170は、20個のサンプリングタイミングの各々におけるMAX10とMIN10との平均値(第n番目のサンプリングタイミングにおける平均値をAV10(n)と表記)について移動平均処理を行い、その処理結果を、中央値として算出する中央値算出処理を実行する(ステップS55)。より具体的には、CPU170は、第n−19番目〜第n番目の20個のサンプリングタイミングの各々における平均値(AV10(n−19)〜AV10(n))について移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける中央値CNT20(n)として抽出する([AV10(n−19)+AV10(n−18)+・・・+AV10(n)]/20→CNT20(n))。ここでは、説明を省略するが、中央値CNT20(n)は、体動などに起因するアーチファクト(データ波形の歪み)等による処理に適さない異常波形の抽出に用いられる。
【0059】
ステップS55の後、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸のタイミングを抽出する呼吸タイミング抽出処理を実行する(ステップS56)。以下では、図16および図17を参照しながら、呼吸タイミング抽出処理の具体的な内容を説明する。図16および図17は、呼吸タイミング抽出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図16に示すように、まずCPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスZaの微分係数dZa(n)を抽出する微分係数抽出処理を実行する(ステップS201)。より具体的には、CPU170は、以下の式(3)にしたがって演算処理を実行することで、微分係数dZa(n)を抽出する。
[Za(n)−Za(n−2)]/0.8=dZa(n) ・・・(3)
【0060】
次に、CPU170は、ステップS201で抽出した微分係数dZa(n)の絶対値が0.1より小さいか否かを判定する(ステップS202)。ステップS202の結果が肯定である場合、CPU170は、微分係数dZa(n)の極性判別フラッグF0(n)を「0」に設定してステップS204に進む。極性判別フラッグF0(n)が「0」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおいて、第1生体電気インピーダンスZaの値は極大値(ピーク値)または極小値(ボトム値)であることを意味する。
【0061】
一方、ステップS202の結果が否定である場合、CPU170は、微分係数dZa(n)の値が0より大きいか否かを判定する(ステップS203)。ステップS203の結果が肯定である場合、CPU170は、極性判別フラッグF0(n)を「+1」に設定してステップS204へ進む。極性判別フラッグF0(n)が「+1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおいて、第1生体電気インピーダンスZaの変化の方向は正側であることを意味する。ステップS203の結果が否定である場合、CPU170は、極性判別フラッグF0(n)を「-1」に設定してステップS204へ進む。極性判別フラッグF0(n)が「-1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおいて、第1生体電気インピーダンスZaの変化の方向は負側であることを意味する。
【0062】
ステップS204において、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける極性判別フラッグF0(n)の絶対値と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける極性判別フラッグF0(n−1)の絶対値とが等しく、かつ、F0(n−1)の値とF0(n)の値とが等しくないか否かを判定する。ステップS204の結果が肯定である場合、CPU170は、F0(n)を「0」に設定して、次のステップS206(図17参照)へ進む。ステップS204の結果が否定である場合、CPU170は、ステップS204の直前で設定したF0(n)の値を維持したまま、次のステップS206へ進む。
【0063】
図17を参照しながら、呼吸タイミング抽出処理の具体的な内容の説明を続ける。CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける極性判別フラッグF0(n)が「0」であるか否かを判定する(ステップS206)。ステップS206の結果が否定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「0」に設定して、ステップS209へ進む。ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「0」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電位インピーダンスの測定値Za(n)は、ピーク値またはボトム値ではないことを意味する。
一方、ステップS206の結果が肯定である場合、CPU170は、3個のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグF0の和が「+1」よりも大きいか否かを判定する(ステップS207)。より具体的には、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミング〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグ(F0(n−2)〜F0(n))の和が「+1」よりも大きいか否かを判定する。
【0064】
ステップS207の結果が肯定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「+1」に設定して、ステップS209へ進む。ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「+1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの測定値Za(n)はピーク値(最大値)であることを意味する。
【0065】
ステップS207の結果が否定である場合、CPU170は、3個のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグF0の和が「-1」よりも小さいか否かを判定する(ステップS208)。より具体的には、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミング〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグ(F0(n−2)〜F0(n))の和が「-1」よりも小さいか否かを判定する。
【0066】
ステップS208の結果が肯定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「-1」に設定して、ステップS209へ進む。ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「-1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの測定値Za(n)はボトム値(最小値)であることを意味する。一方、ステップS208の結果が否定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「0」に設定して、ステップS209へ進むという具合である。
【0067】
ステップS209において、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「+1」であるか否かを判定する。ステップS209の結果が否定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値N(n−1)に1を加算する一方(ステップS210)、ステップS209の結果が肯定である場合、CPU170は、サンプリングカウンタ値Nを初期化する(ステップS211)。ここで、図9および図10からも理解されるように、被験者の呼吸が胸式呼吸および腹式呼吸の何れの場合であっても、呼吸に伴う第1生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形は略正弦波状であるところ、サンプリングカウンタ値Nは、第1生体電気インピーダンスZaの測定値がピーク値に到達するたびに初期化(サンプリングカウンタ値=0)され、次のピーク値に到達するまでのサンプリングタイミングの回数が順次にカウントされていくという具合である。以上で、図15のステップS56における呼吸タイミング抽出処理が終了する。
【0068】
再び図15に戻って説明を続ける。上述の呼吸タイミング抽出処理が終了すると、CPU170は、被験者の呼吸が速めの呼吸なのか遅めの呼吸なのかを判別する呼吸スピード判別フラッグを設定する(ステップS57)。以下、図18を参照しながら、ステップS57でCPU170が実行する呼吸スピード判別フラッグ設定処理の具体的な内容を説明する。図18は、呼吸スピード判別フラッグ設定処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図18に示すように、まずCPU170は、極性判別フラッグF0(n)が「0」であるか否かを判定する(ステップS301)。ステップS301の結果が否定である場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n)は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n−1)に等しいとみなして処理を終了する。
【0069】
ステップS301の結果が肯定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「+1」であるか否かを判定する(ステップS302)。ステップS302の結果が肯定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値N(n−1)が「10」よりも大きいか否かを判定する(ステップS303)。ここで、被験者の呼吸のスピードが遅ければ、第1生体電気インピーダンスZaの測定値がピーク値に到達してから、次のピーク値に到達するまでの時間長は長くなり、次のピーク値に到達する直前のサンプリングカウンタ値Nも大きくなる。本実施形態では、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおいて第1生体電気インピーダンスZaの測定値がピーク値に到達したと判断した場合は、その直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値が「10」よりも大きいか否かを判定し、当該サンプリングカウンタ値が「10」よりも大きいと判定した場合は、被験者の呼吸は遅めの呼吸であると判断する。具体的には、ステップS303の結果が肯定である場合、CPU170は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「20」に設定して処理を終了する。呼吸スピード判別フラッグFma(n)が「20」であるとは、被験者の呼吸が遅めの呼吸であることを意味する。また、ステップS303の結果が否定である場合、CPU170は、被験者の呼吸は速めの呼吸であると判断して呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「10」に設定して処理を終了する。呼吸スピード判別フラッグFma(n)が「10」であるとは、被験者の呼吸が速めの呼吸であることを意味する。
【0070】
一方、ステップS302の結果が否定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「-1」であるか否かを判定する(ステップS304)。ステップS304の結果が否定である場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n)は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n−1)に等しいとみなして処理を終了する。ステップS304の結果が肯定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値N(n−1)が「5」よりも大きいか否かを判定する(ステップS305)。本実施形態では、CPU170は、ボトム値に到達する直前のサンプリングカウンタ値N(n−1)が「5」よりも大きい場合は、被験者の呼吸は遅めの呼吸であると判断する一方、ボトム値に到達する直前のサンプリングカウンタ値N(n−1)が「5」よりも小さい場合は、被験者の呼吸は速めの呼吸であると判断する。具体的には、CPU170は、ステップS305の結果が肯定である場合は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「20」に設定して処理を終了する一方、ステップS305の結果が否定である場合は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「10」に設定して処理を終了するという具合である。以上で、図15のステップS57における呼吸スピード判別フラッグ設定処理が終了する。
【0071】
再び図15に戻って説明を続ける。上述の呼吸スピード判別フラッグ設定処理が終了すると、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)を抽出する(ステップS58)。以下、図19を参照しながら、ステップS58でCPU170が実行する第1センタリング値抽出処理の具体的な内容を説明する。図19は、第1センタリング値抽出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図19に示すように、まずCPU170は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)が「10」であるか否かを判定する(ステップS401)。言い換えれば、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸が速めの呼吸であるか否かを判定するという具合である。
【0072】
本実施形態では、被験者の呼吸速度に応じて可変に設定されるセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)が生成される。上記ステップS401の結果が肯定である場合、つまりは第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸が速めの呼吸である場合は、その速めの1呼吸に要する時間長(ここでは約4.0秒)がセンタリング期間として設定される。すなわち、被験者の呼吸が速めの呼吸である場合は、第n−9番目のサンプリングを始点とし、第n番目のサンプリングタイミングを終点とする期間がセンタリング期間として設定され、第n−9番目〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理の結果に基づいて第1センタリング値Za0(n)が生成される。より具体的には、ステップS401の結果が肯定である場合、CPU170は、図15のステップS51で求めたMA10(n)に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)を生成する(ステップS402)。さらに詳述すると、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n−2)と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n−1)と、MA10(n)とを用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)として採用する([Za0(n−2)+Za0(n−1)+MA10(n)]/3→Za0(n))。
【0073】
一方、上記ステップS401の結果が否定である場合、つまりは第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸が遅めの呼吸である場合は、その遅めの1呼吸に要する時間長(ここでは約8.0秒)がセンタリング期間として設定される。すなわち、被験者の呼吸が遅めの呼吸である場合は、第n−19番目のサンプリングを始点とし、第n番目のサンプリングタイミングを終点とする期間がセンタリング期間として設定され、第n−19番目〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理の結果に基づいて第1センタリング値Za0(n)が生成される。より具体的には、ステップS401の結果が否定である場合、CPU170は、図15のステップS52で求めたMA20(n)に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)を生成する(ステップS403)。さらに詳述すると、CPU170は、Za0(n−2)と、Za0(n−1)と、MA20(n)とを用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)として採用する([Za0(n−2)+Za0(n−1)+MA20(n)]/3→Za0(n))。以上で、図14のステップS50における第1センタリング処理が終了する。
【0074】
前述したように、被験者の呼吸が胸式呼吸であっても腹式呼吸であっても、第1生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形は略正弦波状となる。CPU170は、体動などによる影響で、第1生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形が乱れても、それに応じた第1センタリング値Za0が得られるように、所定数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値に基づいて第1センタリング値Za0を生成する。より具体的には、CPU170は、サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングよりも所定の時間長だけ前の時点を始点とし、当該サンプリングタイミングを終点とするセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理を行い、その結果に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0を求めるので、体動などによる影響で、第1生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形が乱れても、それに応じた第1センタリング値Za0を精度良く生成できる。そして、各サンプリングタイミングに対応するセンタリング期間の時間長は、当該サンプリングタイミングにおける被験者の呼吸速度に応じて可変に設定されるという具合である。
【0075】
図14に戻って説明を続ける。図14に示すように、ステップS50の第1センタリング処理が終了すると、CPU170は、第1生体電気インピーダンスの測定値Za(n)の第1センタリング値Za0(n)に対する相対値である第1相対値ΔZa(n)を算出する第1相対値算出処理を実行する(ステップS60)。より具体的には、CPU170は、ステップS40で求めた第1生体電気インピーダンスの測定値Za(n)と、ステップS50で求めた第1センタリング値Za0(n)との差分を求め、その求めた差分値を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZa(n)として採用するという具合である。
【0076】
ステップS60の後、CPU170は、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値Zb0を生成し、その生成した第2センタリング値Zb0を用いて、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の第2センタリング値Zb0に対する相対値である第2相対値ΔZbを算出する(ステップS70)。
【0077】
ここで、前述したように、腹式呼吸の呼気における第2生体電気インピーダンスZbの変化は、第1生体電気インピーダンスZaの変化とは異なる態様を示すので、第1センタリング値Za0を求める場合と同様に、所定数のサンプリングタイミングの各々における第2生体電気インピーダンスZbの測定値を用いた移動平均処理を行っても、これらの振幅基準レベル、すなわち、第2生体電気インピーダンスZbの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベル(第2センタリング値Zb0)を精度良く求めることは困難である。
【0078】
そこで、本実施形態では、図20に示すように、第1生体電気インピーダンスZaの測定値と、第1センタリング値Za0とが等しくなるゼロクロスタイミングを抽出し、当該ゼロクロスタイミングにおける第2生体電気インピーダンスZbの測定値に基づいて第2センタリング値Zb0を生成している。これにより、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の振幅基準レベルを精度良く抽出できる。図20は、第2センタリング値Zb0の生成方法を概念的に説明するための図である。以下では、図21を参照しながら、ステップS70でCPU170が実行する第2相対値算出処理の具体的な内容を説明する。
【0079】
図21は、第2相対値算出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図21に示すように、CPU170は、5個のサンプリングタイミングの各々における第1相対値ΔZaのうち最小の値を抽出する(ステップS71)。より具体的には、CPU170は、第n−4番目〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における第1相対値ΔZaの絶対値|ΔZa|(|ΔZa(n−4)|〜|ΔZa(n)|)のうち最小の値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定値ΔMIN5(n)として抽出するという具合である。
【0080】
ステップS71の後、CPU170は、直前のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定値と、ステップS71で抽出したクロスポイント判定値とが等しく、且つ、直前のサンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるか否かを判定する(ステップS72)。より具体的には、CPU170は、第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定値ΔMIN5(n−1)とΔMIN5(n)とが等しく、且つ、第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定フラッグF2(n−1)が「+1」に設定されているか否かを判定する。クロスポイント判定フラッグF2(n−1)が「+1」に設定されている場合は、第n−1番目のサンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるとみなされる。なお、クロスポイント判定フラッグF2の初期値(デフォルト値)、つまりは第1番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定フラッグF2(1)の値は「0」に設定されている。
【0081】
ステップS72の結果が肯定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングはゼロクロスタイミングではないと判定し、クロスポイント判定フラッグF2(n)を「0」に設定してステップS74へ進む。ステップS72の結果が否定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZa(n)の絶対値が0.3以下であるか否かを判定する(ステップS73)。ステップS73の結果が否定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングはゼロクロスタイミングではないと判定し、クロスポイント判定フラッグF2(n)を「0」に設定してステップS74へ進む。ステップS73の結果が肯定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングはゼロクロスタイミングであると判定し、クロスポイント判定フラッグF2(n)を「+1」に設定してステップS74へ進む。
【0082】
次に、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定フラッグF2(n)が「+1」であるか否かを判定する(ステップS74)。ステップS74の結果が肯定の場合、CPU170は、第2センタリング値Zb0を抽出する(ステップS75)。より具体的には、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値Zb(n)を、第2センタリング値Zb0(n)として抽出する。そして、その抽出した第2センタリング値Zb0(n)と、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第2センタリング値Zb0(n−2)と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第2センタリング値Zb0(n−1)とを用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、正規の第2センタリング値Zb0(n)として生成する([Zb0(n−2)+Zb0(n−1)+Zb0(n)]/3→Zb0(n))。一方、ステップS74の結果が否定の場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第2センタリング値Zb0(n−1)を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2センタリング値Zb0(n)として採用する(Zb0(n−1)→Zb0(n))。
【0083】
そして、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2相対値ΔZb(n)を算出する(ステップS76)。より具体的には、CPU170は、第2生体電気インピーダンスの測定値Zb(n)と、第2センタリング値Zb0(n)との差分を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2相対値ΔZb(n)として採用するという具合である。以上で、図14のステップS70における第2相対値算出処理が終了する。
【0084】
例えば被験者の呼吸が腹式呼吸であって、第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbが図9のように変化する場合、第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbの経時的変化を示す波形は、図22のようになる。第1相対値ΔZaの経時的変化を示す波形は、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルである第1センタリング値Za0をゼロ基準とするものであり、第2相対値ΔZbの経時的変化を示す波形は、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の振幅基準レベルである第2センタリング値Zb0をゼロ基準とするものである。両波形を重ねることで、吸気における第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbの各々の波形と、呼気における第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbの各々の波形とを判別することができる。本実施形態では、CPU170は、第1相対値ΔZaの値に基づいて、被験者の呼吸が吸気であるか呼気であるかを判定する。より具体的には、CPU170は、第1相対値ΔZaが正の値である場合は吸気であると判定し、負の値である場合は呼気であると判定するという具合である。また、吸気における第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbの各々の波形の振幅および積分値の違いに基づいて、前述の回帰式(2)の係数を補正してもよい。これにより、測定精度の向上が図られる。
【0085】
再び図14に戻って説明を続ける。図14に示すように、ステップ70の第2相対値算出処理が終了すると、CPU170は、第1相対値ΔZa(n)および第2相対値ΔZb(n)に対応するΔRib/ΔAbを推定するΔRib/ΔAb推定演算処理を実行する(ステップS80)。以下、図23および図24を参照しながら、ステップS80でCPU170が実行するΔRib/ΔAb推定演算処理の具体的な内容を説明する。図23および図24は、ΔRib/ΔAb推定演算処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図23に示すように、まずCPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZa(n)の値が「0」以上であるか否かを判定する(ステップS81)。
【0086】
ステップS81の結果が否定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が呼気であると判断し、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)の推定演算を行う(ステップS82)。より具体的には、CPU170は、上述の回帰式(2)にしたがって演算処理を実行することで、第1相対値ΔZa(n)および第2相対値ΔZb(n)に対応するΔRib/ΔAb(n)を求める。一方、ステップS81の結果が肯定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が吸気であると判断し、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)の値を初期値に設定する。本実施形態では、ステップS81の結果が肯定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)の値を、初期値である「1.0」に設定する。
【0087】
次に、CPU170は、ΔRib/ΔAb(n)の値が、−2.5以上であり、且つ4.5以下であるか否かを判定する(ステップS83)。ステップS83の結果が否定の場合、CPU170は、ΔRib/ΔAbの値を、初期値である「1.0」に設定してステップS84へ進む。ステップS83の結果が肯定の場合、CPU170は、そのままステップS84へ進む。
【0088】
ステップS84において、CPU170は、ΔRib/ΔAb(n)の絶対値と、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n−1)の絶対値との差分(|ΔRib/ΔAb(n)|−|ΔRib/ΔAb(n−1)|)が0.3よりも大きいか否かを判定する。ステップS84の結果が否定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n−1)と、ΔRib/ΔAbとの平均を求め、その求めた平均値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)として採用([ΔRib/ΔAb(n−1)+ΔRib/ΔAb(n)]/2→ΔRib/ΔAb(n))して次のステップS85(図24参照)へ進む。一方、ステップS84の結果が肯定である場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)の値を、初期値である「1.0」に設定して次のステップS85へ進む。
【0089】
図24を参照しながら、ΔRib/ΔAb推定演算処理の具体的な内容の説明を続ける。図24に示すように、ステップS85において、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZa(n)が「0」よりも小さいか否かを判定する。ステップS85の結果が肯定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が呼気であると判断し、直前の積分回数のカウント値Niに1を加算する。より具体的には、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n−1)に1を加算した値を、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)として採用する。
【0090】
一方、ステップS85の結果が否定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が吸気であると判断し、積分回数のカウント値Niの値を「0」に初期化する。すなわち、この場合、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)は「0」に設定されるという具合である。
【0091】
続いて、図24に示すように、CPU170は、第1相対値ΔZa(n)が「0」よりも小さいか否かを再び判定する(ステップS86)。ステップS86の結果が肯定の場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの積分値(ΣΔRib/ΔAb(n−1))と、ΔRib/ΔAb(n)との和を求めることで、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの積分値(ΣΔRib/ΔAb(n))を求めて次のステップS87へ進む。一方、ステップS86の結果が否定の場合、つまりは、被験者の呼吸状態が吸気であると判断した場合は、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「+1」に設定して次のステップS87へ進む。
【0092】
次に、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)がゼロであるか否かを判定する(ステップS87)。ステップS87の結果が否定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの積分値[ΣΔRib/ΔAb(n)]を、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)で割ることで、ΔRib/ΔAbの平均値を求める。一方、ステップS87の結果が肯定の場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの平均値([ΣΔRib/ΔAb(n−1)]/Ni(n−1))を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの平均値として採用する。以上で、図14のステップS80におけるΔRib/ΔAb推定演算処理が終了する。
【0093】
例えば被験者の呼吸が腹式呼吸であって、第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbが図22のように変化する場合、上述のΔRib/ΔAbの平均値([ΣΔRib/ΔAb]/Ni)は、図25のように変化する。図25において、呼気におけるΔRib/ΔAbの値(平均値)が1.0よりも小さい場合は、被験者の呼吸は腹式呼吸であると推定される一方、1.0を上回る場合は、被験者の呼吸は胸式呼吸であると推定されるという具合である。
【0094】
再び図14に戻って説明を続ける。図14に示すように、ステップS80のΔRib/ΔAb推定演算処理が終了すると、CPU170は、被験者の呼吸の深さを示す呼吸レベルを抽出する呼吸レベル抽出処理を実行する(ステップS90)。以下、図26を参照しながら、ステップS90でCPU170が実行する呼吸レベル抽出処理の具体的な内容を説明する。図26は、呼吸レベル抽出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図26に示すように、まずCPU170は、サンプリングタイミングに到達したか否かを判定し(ステップS501)、ステップS501の結果が肯定である場合は次のステップS502へ進む。ステップS502において、CPU170は、被験者の呼吸が吸気であるか否かを判定する。具体的には、CPU170は、当該サンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZaの値が正の値である場合には吸気であると判定する一方、負の値である場合には呼気であると判定するという具合である。CPU170は、吸気であると判定した場合は、吸気判別フラッグF3を「1」に設定する一方、呼気であると判定した場合は、吸気判別フラッグF3を「0」に設定する。なお、初期状態においては、吸気判別フラッグF3は「1」に設定される(つまりはF3のデフォルト値は1に設定される)。
【0095】
ステップS502の結果が肯定の場合、CPU170は、ピークホールド処理を実行する(ステップS503)。より具体的には、CPU170は、吸気での複数のサンプリングタイミングの各々における第1相対値ΔZaのうち最大の値をピーク値ΔZa(MAX)として保持する。一方、ステップS502の結果が否定の場合、CPU170は、ボトムホールド処理を実行する(ステップS504)。より具体的には、CPU170は、呼気での複数のサンプリングタイミングの各々における第1相対値ΔZaのうち最小の値をボトム値ΔZa(MIN)として保持する。
【0096】
次に、CPU170は、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるか否かを判定する(ステップS505)。より具体的には、CPU170は、当該サンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定フラッグF2が「+1」であるか否かを判定することで、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるか否かを判定するという具合である。ステップS505の結果が否定の場合、当該サンプリングタイミングにおける呼吸レベル抽出処理は終了する。一方、ステップS505の結果が肯定の場合、CPU170は、当該サンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスZaの微分係数dZaが正極性(>0)であるか否かを判定する(ステップS506)。言い換えれば、CPU170は、当該サンプリングタイミングが、呼気から吸気へと変化するタイミングであるか否かを判定する。
【0097】
ステップS506の結果が肯定の場合、CPU170は、当該サンプリングタイミングが、呼気から吸気へと変化するタイミングであると判断して、そのときホールドされているピーク値ΔZa(MAX)とボトム値ΔZa(MIN)との絶対値の和を、直前の1呼吸における呼吸レベルΔZap−pとして抽出する(ステップS507)。その後、CPU170は、吸気フラッグ設定処理を実行する(ステップS508)。より具体的には、CPU170は、吸気判別フラッグF3を「1」に設定する。そして、CPU170は、ピークホールド処理を初期化する(ステップS509)。より具体的には、CPU170は、ステップS503で保持していたピーク値ΔZa(MAX)を、「0」に設定(初期化)して、当該サンプリングタイミングにおける呼吸レベル抽出処理を終了する。
【0098】
一方、ステップS506の結果が否定の場合、CPU170は、当該サンプリングタイミングが、吸気から呼気へと変化するタイミングであると判断して、呼気フラッグ設定処理を実行する(ステップS510)。より具体的には、CPU170は、吸気判別フラッグF3を「0」に設定する。そして、CPU170は、ボトムホールド処理を初期化する(ステップS511)。より具体的には、CPU170は、ステップS504で保持していたボトム値ΔZa(MIN)を、「0」に設定(初期化)して、当該サンプリングタイミングにおける呼吸レベル抽出処理を終了する。以上で、呼吸レベル抽出処理が終了し、第n番目のサンプリングタイミングにおける呼吸解析処理が終了する。
【0099】
以上に説明したように、CPU170が呼吸解析処理を実行することで、サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbに対応するΔRib/ΔAbが求められるので、被験者の呼吸の種別(腹式呼吸なのか胸式呼吸なのか)をリアルタイムで正確に判別できる。
【0100】
<1−5:呼吸レベル表示処理>
次に、CPU170が実行する呼吸レベル表示処理について説明する。本実施形態では、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを表示(報知)する呼吸レベル表示処理を実行する。より具体的には、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における呼吸の深さを示す呼吸レベルと、当該1呼吸における呼吸解析処理の結果とから、当該1呼吸における胸式呼吸および腹式呼吸の各々の大きさと余裕度とを表示部160に表示するように制御する。図27に示すように、本実施形態では、1呼吸における胸式呼吸および腹式呼吸の各々の大きさと余裕度のほか、当該1呼吸に占める腹式呼吸の割合を示す腹式レベルを表示部160に表示するように制御する。図27に示す第1バーグラフBG1は、胸式呼吸および腹式呼吸の各々の大きさと余裕度とを表示するためのものである。一方、図27に示す第2バーグラフBG2は、被験者の腹式レベルを表示するためのものである。これらの詳細な内容については後述する。
【0101】
図28を参照しながら、CPU170が実行する呼吸レベル表示処理の具体的な内容を説明する。図28は、呼吸レベル表示処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図28に示すように、CPU170は、直前の1呼吸における呼吸レベルを正規化する(ステップS601)。ここで、「呼吸レベルを正規化する」とは、前述の呼吸レベル抽出処理で抽出された直前の1呼吸における呼吸レベルの値を、被験者間における体格等の個人差の影響を取り除いた値に補正することを意味する。具体的には、ステップS601において、CPU170は、直前の1呼吸における呼吸レベルΔZap−pを、当該1呼吸における第2センタリング値Zb0(詳述すれば、当該1呼吸における複数のサンプリングタイミングの各々における第2センタリング値Zb0の平均値)で割った後に100を乗じて求めた値を、呼吸レベルの正規化値%ΔZa(=(ΔZap−p/Zb0)×100)として採用する。
【0102】
次に、CPU170は、ステップS601で求めた呼吸レベルの正規化値%ΔZaの値に応じて、着色表示すべき第1バーグラフBG1の段階数(以下、「第1表示段階数」と呼ぶ)を決定する(ステップS602)。より具体的には、CPU170は、ステップS601で求めた呼吸レベルの正規化値%ΔZaに対応する1回換気量の正規化値%ΔTVを求め、その求めた%ΔTVの値に応じて、第1表示段階数を決定する。ここで、「1回換気量」とは、被験者の1呼吸で肺に出入りする空気量を示すものであり、ΔTVと表記する。また、「1回換気量を正規化する」とは、スパイロなどで計測された1回換気量ΔTVの値(実測値)を、被験者間における体格等の個人差の影響を取り除いた値に補正することを意味する。本実施形態では、1回換気量ΔTVの正規化を行う際には、スパイロなどで計測された被験者の肺活量の値(実測値)VCを、標準肺活量を示す標準VCで割り算した形で表される係数%VC(=実測VC/標準VC)が用いられる。具体的には、計測された1回換気量ΔTVの値(実測値)を上述の係数%VCで割ることで、1回換気量の正規化値%ΔTV(=ΔTV/%VC)が求められる。なお、例えば男性の標準肺活量VCmale(ml)は、(27.63−0.112×年齢)×身長(cm)で表され、女性の標準肺活量VCfemale(ml)は、(21.78−0.101×年齢)×身長(cm)で表される。
【0103】
図29は、男女合わせて20人で、各々の1回換気量ΔTVを3回ずつ(小程度の換気、中程度の換気、大程度の換気を各1回)測定したときの、1回換気量の正規化値%ΔTVと呼吸レベルの正規化値%ΔZaとの関係を示す相関図である。図29に示すように、1回換気量の正規化値%ΔTVと呼吸レベルの正規化値%ΔZaとは相関係数r=0.75,P<0.01という高い相関が得られ、以下の回帰式(4)が成立する。
%ΔZa=c0×%ΔTV ・・・(4)
C0:回帰係数。
【0104】
CPU170は、上述の回帰式(4)にしたがって演算処理を実行することで、ステップS601で求めた呼吸レベルの正規化値%ΔZaに対応する1回換気量の正規化値%ΔTVを求める。そして、CPU170は、その求めた1回換気量の正規化値%ΔTVに応じて、第1表示段階数を決定する。本実施形態では、第1表示段階数の最大値は、胸式5段階と腹式5段階とを合わせた「10」に設定されている(図27参照)。
【0105】
図29に示すように、本実施形態では、1回換気量の正規化値%ΔTVの値が第1所定値α1以上である場合は、被験者の呼吸レベルは「最大」とみなされる。この場合、CPU170は、第1表示段階数を最大値である「10」に決定する。また、1回換気量の正規化値%ΔTVの値が第2所定値α2(<α1)以上であって、かつ第1所定値α1を下回る場合は、被験者の呼吸レベルは、「大程度」とみなされる(図29参照)。この場合、CPU170は、第1表示段階数を「8」に決定する。さらに、1回換気量の正規化値%ΔTVが第3所定値α3(<α2)以上であって、かつ第2所定値α2を下回る場合は、被験者の呼吸レベルは「中程度」とみなされる(図29参照)。この場合、CPU170は、第1表示段階数を「6」に決定する。また、1回換気量の正規化値%ΔTVの値が第4所定値α4(<α3)以上であって、かつ第3所定値α3を下回る場合は、被験者の呼吸レベルは「小程度」とみなされる(図29参照)。この場合、CPU170は、第1表示段階数を「4」に決定する。また、1回換気量の正規化値%ΔTVの値が第4所定値α4を下回る場合は、被験者の呼吸レベルは、安静時における必須レベル程度とみなされる(図29参照)。この場合、CPU170は、第1表示段階数を「2」に決定するという具合である。
【0106】
再び図28に戻って説明を続ける。図28に示すように、ステップS602の段階数決定処理が終了すると、CPU170は、直前の1呼吸における腹式レベルを決定する(ステップS603)。具体的には、CPU170は、直前の1呼吸におけるΔRib/ΔAbの値(平均値)に応じて、腹式レベルの数値を決定する。腹式レベルの数値は0〜100までの値で表され、その値が0に近いほど腹式呼吸の程度は小さく(被験者の呼吸に占める腹式呼吸の割合は小さく)、100に近いほど腹式呼吸の程度は大きい(被験者の呼吸に占める腹式呼吸の割合は大きい)。
【0107】
図28に示すように、ステップS603の後、CPU170は、ステップS602で決定した第1表示段階数を、腹式と胸式とに分割する段階数分割処理を実行する(ステップS604)。より具体的には、CPU170は、ステップS602で決定した第1表示段階数と、ステップS603で決定した腹式レベルとに基づいて、段階数分割処理を実行する。ここでは、全体の呼吸レベルを示す第1表示段階数が「6」である一方、腹式レベルは「70」である場合を想定して説明を続ける。腹式レベルが「70」であるとは、腹式呼吸と胸式呼吸との割合は、7:3であるとみなされるので、第1表示段階数「6」は、胸式で2段階、腹式で4段階に分割される。つまり、図27のように、胸式呼吸の大きさを示す第1バーグラフのBG1の表示段階数は「2」、腹式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数は「4」になるように設定される。
【0108】
図28に示すように、ステップS604の後、CPU170は、被験者の呼吸速度に応じたマージンレベルを決定する(ステップS605)。いま、直前の1呼吸が安静呼吸であって、当該1呼吸に要する時間長が4秒以上であった場合を想定する。本実施形態では、被験者の呼吸速度に応じた必須の呼吸レベルに対応する第1バーグラフBG1の段階数が予め定められており、安静呼吸時の呼吸速度に応じた必須の呼吸レベルに対応する第1バーグラフBG1の段階数は「2」に設定されている。CPU170は、その段階数「2」を、胸式と腹式に1段階ずつ割り振る。上述のステップS604で説明したように、ここでは、胸式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数は「2」、腹式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数は「4」となるように設定されているので、胸式呼吸については1段階分の余裕があり、腹式呼吸については3段階分の余裕があるという具合である。
【0109】
この場合は、腹式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数が「1」以上であれば、被験者の腹式呼吸の大きさは必須レベルを満たしていることを意味し、その表示段階数が「2」であれば、被験者の腹式呼吸の大きさは必須レベルを上回る「小程度」のレベルを満たしていることを意味し、その表示段階数が「3」であれば、さらに上の「中程度」のレベルを満たしていることを意味し、その表示段階数が「4」であれば、さらに上の「大程度」のレベルを満たしていることを意味し、その表示段階数が「5」であれば、被験者の腹式呼吸の大きさは「最大」レベルを満たしていることを意味するという具合である。前述したように、ここでは、腹式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数数は「4」に設定されているので、被験者の腹式呼吸の大きさは「大程度」のレベルを満たしており、必須レベル(表示段階数「1」)に対して十分な余裕があることが分かる。胸式呼吸についても同様であり、ここでは、胸式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数数は「2」に設定されているので、被験者の胸式呼吸の大きさは「小程度」のレベルを満たしており、必須レベル(表示段階数「1」)を上回っていることが分かる。
【0110】
なお、被験者の呼吸速度が速いほど、当該呼吸速度に応じた必須の呼吸レベルに対応する第1バーグラフBG1の段階数は増加するので、結果として、胸式呼吸および腹式呼吸の必須レベルに対応する段階数も増加する。例えば1呼吸に要する時間長が3秒以上であって、かつ4秒未満である場合は、必須の呼吸レベルに対応する第1バーグラフBG1の段階数は「4」に設定され、その段階数「4」は、胸式と腹式に2段階ずつ割り振られる。これに応じて、胸式呼吸および腹式呼吸の各々のマージンレベルが変化するという具合である。
【0111】
ステップS605の後、CPU170は、被験者の胸式呼吸および腹式呼吸の各々の大きさと余裕度とを第1バーグラフBG1で表示する一方、被験者の腹式レベルを第2バーグラフBG2で表示する(ステップS606)。図26に示すように、CPU170は、着色表示すべき第1バーグラフBG1の段階数(胸式2段階、腹式4段階)のうち腹式呼吸および胸式呼吸の各々の必須レベルに対応する段階数と、マージン分に対応する段階数とを異なる色で表示するので、被験者は、自分の腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを容易に把握することができる。
【0112】
また、図27に示すように、第2バーグラフBG2で表示される腹式レベルの段階数は「5」に設定され、上述のステップS603で求められた腹式レベルの数値に応じて、5つの段階のうちの何れかが選択的に着色表示される。具体的には、CPU170は、腹式レベルの数値が0〜20の場合は1段階目のみを着色表示するように制御し、腹式レベルの数値が21〜40の場合は2段階目のみを着色表示するように制御し、腹式レベルの数値が41〜60の場合は3段階目のみを着色表示するように制御し、腹式レベルの数値が61〜80の場合は4段階目のみを着色表示するように制御し、腹式レベルの数値が81〜100の場合は5段階目のみを着色表示するように制御する。前述したように、ここでは、腹式レベルは「70」である場合を想定しているので、図27に示すように、CPU170は、第2バーグラフBG2の4段階目のみを着色表示するように制御するという具合である。
【0113】
以上に説明したように、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の大きさと余裕度とを表示部160に表示するように制御するので、被験者は、自分の胸部呼吸筋および腹部呼吸筋の活用の強みと弱みとを認識できる。これにより、被験者に対して、自分の強みを自覚させつつも、自分の弱みを活性化させるための腹式呼吸等の呼吸筋トレーニングへのモチベーションを確保させることができる。また、本実施形態によれば、スパイロなどのように、被験者が最大の呼吸を行わなくとも、当該被験者の呼吸能力の余裕を把握できるので、被験者の安全を確保するという観点からも好ましいという利点がある。
【0114】
<1−6:換気特性判定/表示処理>
次に、CPU170が実行する換気特性判定/表示処理について説明する。本実施形態では、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における換気機能の特性(換気特性)を判定するとともに、その判定結果を表示(報知)する換気特性判定/表示処理を実行する。以下、図30を参照しながら、CPU170が実行する換気特性判定/表示処理の具体的な内容を説明する。図30は、換気特性判定/表示処理の具体的な内容を示すフローチャートである。
【0115】
図30に示すように、まずCPU170は、直前の1呼吸における被験者の呼吸レベルが、安静時必須レベル以上であるか否かを判断する(ステップS700)。より具体的には、前述の呼吸レベル表示処理で説明した内容(図28のステップS601、ステップS602)と同様に、CPU170は、直前の1呼吸における呼吸レベルの正規化値%ΔZaの値に対応する1回換気量の正規化値%ΔTVを求める。そして、その求めた1回換気量の正規化値%ΔTVに基づいて、被験者の呼吸レベルが、安静時必須レベルを上回っているか否かを判断する。CPU170は、1回換気量の正規化値%ΔTVの値が第4所定値α4以上である場合は、被験者の呼吸レベルは、安静時における必須レベル以上であると判断するという具合である(図29参照)。
【0116】
ステップS700の結果が否定である場合、CPU170は、被験者の呼吸レベルが安静時必須レベル以上となるように、指導情報を報知する(ステップS701)。呼吸を指導するためのメッセージが表示部160に表示される態様であってもよいし、音声による報知が行われる態様であってもよい。また、両者を組み合わせてもよい。
【0117】
一方、ステップS700の結果が肯定である場合、あるいは上述のステップS701の後、CPU170は、直前の1呼吸における被験者の換気機能の特性を判定する(ステップS702)。より具体的には、CPU170は、当該1呼吸における第1生体電気インピーダンスZaの測定値および第2生体電気インピーダンスZbの測定値に基づいて、当該1呼吸における被験者の換気機能の特性を判定するという具合である。以下、具体的な内容について説明する。
【0118】
例えば被験者が胸部に病歴を有しており、胸部のうち呼吸に寄与する部位(例えば胸部骨格筋、肺胞組織、胸部骨格筋および肺胞組織の両方)の機能が低下していた場合は、呼吸に伴う胸部骨格筋の変化が健常者に比べて小さい、または不足するので、換気量を確保するために、横隔膜の変動量(上昇量および下降量)が大きくなる。また、加齢などにより、胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が低下していた場合も同様である。ここで、肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaの変化は、肺に出入りする空気量と連動している一方、肺の中下部および腹部を含む第2生体電気インピーダンスZbの変化は、横隔膜の動きと連動しており、横隔膜の変動量が大きいほど第2生体電気インピーダンスZbの変化も大きくなる。したがって、例えば胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が低下していた被験者と健常者との間で、1呼吸において肺に出入りする空気の量(換気量)が同じであり、当該1呼吸における第1生体電気インピーダンスZaの変化が同じであっても、胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が低下していた被験者は、健常者に比べて横隔膜の変動量が大きいので、当該1呼吸における第2生体電気インピーダンスZbの変化が大きくなる。
【0119】
図31は、被験者の呼吸に伴う第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbの経時的変化を示す図であって、この場合の被験者は、胸部に病歴の無い男性(健常者)である。一方、図32は、被験者の呼吸に伴う第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbの経時的変化を示す図であって、この場合の被験者は、胸部に病歴を有する男性である。図31および図32からも理解されるように、被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が低下している場合は、第2相対値ΔZbの振幅値は大きくなることが分かる。
【0120】
本実施形態では、被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が低下している場合は、肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbの変化が大きくなる点に着目し、第2生体電気インピーダンスZbの測定値と第1生体電気インピーダンスZaの測定値とに基づいて、被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が正常であるか否かを判定している(換気機能の特性を判定している)。ここで、前述したように、腹式呼吸の呼気における第2生体電気インピーダンスZbの変化は、第1生体電気インピーダンスZaの変化とは異なる(変化を示す波形が異なる)のに対して、吸気における第2生体電気インピーダンスZbの変化は、胸式呼吸および腹式呼吸の何れの場合であっても、第1生体電気インピーダンスZaの変化と同じである(変化を示す波形が同じである)。すなわち、被験者の呼吸に伴う第2生体電気インピーダンスZbの経時的変化を示す波形には、呼気時の腹式呼吸に起因した波形歪みが含まれるので、吸気における第1生体電気インピーダンスZaの変化と第2生体電気インピーダンスZbの変化とに基づいて、被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が正常であるか否かを判定することが好ましい。
【0121】
そこで、本実施形態では、吸気における第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbに基づいて、被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が正常であるか否かを判定している。より具体的には以下のとおりである。ステップS703において、CPU170は、被験者の直前の1呼吸の吸気における第1相対値ΔZaのピーク値ΔZa(MAX)、および、第2相対値ΔZbのピーク値ΔZb(MAX)を抽出する。そして、CPU170は、第1相対値ΔZaのピーク値ΔZa(MAX)に対する第2相対値ΔZbのピーク値ΔZb(MAX)の割合(=ΔZb(MAX)/ΔZa(MAX))を、被験者の換気機能の特性を示す換気能バランスBPとして算出する。CPU170は、その算出した換気能バランスBPの値が所定の閾値以上である場合は、被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能は正常ではないと判定し、所定の閾値を下回る場合は、被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能は正常であると判定するという具合である。
【0122】
また、女性は胸式優位の呼吸を行い、男性は腹式優位の呼吸を行うのが一般的である。すなわち、換気量が同じであっても、呼吸に伴う横隔膜の変動量は男性の方が大きいので、上述の換気能バランスBPの値は、男性の方が高い値を示す。また、内臓脂肪の蓄積量が多い被験者においては、腹部骨格筋の活動が制限される。女性は、妊娠などによって腹部骨格筋の活動が制限されても、それを補って換気能力を確保するための代償能力を有しているが、男性は、そのような代償能力を有していないので、内臓脂肪の蓄積量が多い場合はクロージングボリュームが低下し、上述の換気能バランスBPの値は高い値を示す。このように、上述の換気能バランスBPから、被験者の換気機能の特性を判定できるという具合である。
【0123】
図30に示すように、ステップS702の後、CPU170は判定結果を表示部160に表示するように制御する(ステップS703)。本実施形態では、図33に示すように、ステップS702の判定結果は第3バーグラフBG3で表示される。図33に示すように、第3バーグラフBG3で表示される換気能バランスBPの段階数は「5」に設定され、ステップS702で得られた換気能バランスBPの値に応じて、5つの段階のうちの何れかが選択的に着色表示される。具体的には、CPU170は、換気能バランスBPの値が0〜0.4の場合は1段階目のみを着色表示するように制御し、換気能バランスBPの値が0.4〜0.8の場合は2段階目のみを着色表示するように制御し、換気能バランスBPの値が0.8〜1.2の場合は3段階目のみを着色表示するように制御し、換気能バランスBPの値が1.2〜1.6の場合は4段階目のみを着色表示するように制御し、換気能バランスBPの値が1.6を超える場合は5段階目のみを着色表示するように制御する。例えば換気能バランスBPの値が0.5の場合は、図33に示すように、CPU170は、第3バーグラフBG3の2段階目のみを着色表示するように制御する。
【0124】
例えば、被験者の呼吸が胸式優位(典型的な女性の呼吸)である場合は、第3バーグラフBG3の1段階目が着色表示され、被験者の呼吸が腹式優位(典型的な男性の呼吸)である場合は、第3バーグラフBG3の2段階目が着色表示され、被験者の換気機能が低下している場合(胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が正常でない場合、内蔵脂肪蓄積量が過大な場合等)は、第3バーグラフBG3の3段階目以降が着色表示されるという具合である。被験者は、第3バーグラフBG3を見ることで、自分の換気機能の特性(例えば胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が低下している等)を正確かつ容易に認識できるという具合である。以上より、本実施形態によれば、被験者の換気機能の特性を正確かつ容易に判定できる。
【0125】
<2.変形例>
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の変形が可能である。また、以下に示す変形例のうちの2以上の変形例を組み合わせることもできる。
【0126】
(1)変形例1
上述の実施形態では、被験者の肺全体の換気機能の特性を示すバランス指標BPを求めて表示しているが、これに限らず、例えば右肺の換気機能の特性を示す指標(右換気能バランスBPR)と左肺の換気機能の特性を示す指標(左換気能バランスBPL)とを独立に求めて表示する態様であってもよい。
【0127】
右換気能バランスBPRは、右肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部右側の第3生体電気インピーダンスZaRの測定値と、右肺の中下部および腹部を含む体幹中部右側の第4生体電気インピーダンスZbRの測定値とに基づいて求められる。より具体的には以下のとおりである。
第3生体電気インピーダンスZaRは、右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4との間の電位差を示す電圧データDvとから求められる。なお、被験者の呼吸に伴う第3生体電気インピーダンスZaRの変化の仕方は、第1生体電気インピーダンスZaの変化の仕方と同様である。
第4生体電気インピーダンスZbRは、右手と右足との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、左手と左足との間の電位差を示す電圧データDvとから求められる。なお、呼吸に伴う第4生体電気インピーダンスZbRの変化の仕方は、第2生体電気インピーダンスZbの変化の仕方と同様である。
また、第3生体電気インピーダンスZaRの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを第3センタリング値ZaR0と呼ぶ。第3センタリング値ZaR0の生成方法は、上述の第1センタリング値Za0の生成方法と同様である。また、第4生体電気インピーダンスZbRの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを第4センタリング値ZbR0と呼ぶ。第4センタリング値ZbR0の生成方法は、上述の第2センタリング値Zb0の生成方法と同様である。
さらに、第3生体電気インピーダンスZaRの測定値の第3センタリング値ZaR0に対する相対値を第3相対値ΔZaR、第4生体電気インピーダンスZbRの第4センタリング値ZbR0に対する相対値を第4相対値ΔZbRとする。CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸の吸気における第3相対値のピーク値ΔZaR(MAX)に対する第4相対値のピーク値ΔZbR(MAX)の割合(=ΔZbR(MAX)/ΔZaR(MAX))を右換気能バランスBPRとして算出し、その算出結果を表示するように表示部160を制御するという具合である。
【0128】
一方、左換気能バランスBPLは、左肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部左側の第5生体電気インピーダンスZaLの測定値と、左肺の中下部および腹部を含む体幹中部左側の第6生体電気インピーダンスZbLの測定値とに基づいて求められる。より具体的には以下のとおりである。
第5生体電気インピーダンスZaLは、右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、左足用の電圧電極Y1と左手用の電圧電極Y3との間の電位差を示す電圧データDvとから求められる。なお、被験者の呼吸に伴う第5生体電気インピーダンスZaLの変化の仕方は、第1生体電気インピーダンスZaの変化の仕方と同様である。
第6生体電気インピーダンスZbLは、左手と左足との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、右手と右足との間の電位差を示す電圧データDvとから求められる。なお、呼吸に伴う第6生体電気インピーダンスZbLの変化の仕方は、第2生体電気インピーダンスZbの変化の仕方と同様である。
また、第5生体電気インピーダンスZaLの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを第5センタリング値ZaL0と呼ぶ。第5センタリング値ZaL0の生成方法は、上述の第1センタリング値Za0の生成方法と同様である。また、第6生体電気インピーダンスZbLの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを第6センタリング値ZbL0と呼ぶ。第6センタリング値ZbL0の生成方法は、上述の第2センタリング値Zb0の生成方法と同様である。
さらに、第5生体電気インピーダンスZaLの測定値の第5センタリング値ZaL0に対する相対値を第5相対値ΔZaL、第6生体電気インピーダンスZbLの測定値の第6センタリング値ZbL0に対する相対値を第6相対値ΔZbLとする。CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸の吸気における第5相対値のピーク値ΔZaL(MAX)に対する第6相対値のピーク値ΔZbL(MAX)の割合(=ΔZbL(MAX)/ΔZaL(MAX))を左換気能バランスBPLとして算出し、その算出結果を表示するように表示部160を制御するという具合である。以上の態様によれば、右肺の換気特性と左肺の換気特性とを別々に判定できる。
【0129】
(2)変形例2
上述の実施形態では、被験者の1呼吸の吸気における第1相対値のピーク値ΔZa(MAX)に対する第2相対値ΔZb(MAX)の割合(=ΔZb(MAX)/ΔZa(MAX))を、当該1呼吸における被験者の換気機能の特性を示す換気能バランスBPとして採用しているが、これに限らず、例えば第2相対値のピーク値ΔZb(MAX)に対する第1相対値のピーク値ΔZa(MAX)の割合(=ΔZa(MAX)/ΔZb(MAX))を換気能バランスBPとして採用することもできる。また、例えば被験者の1呼吸の吸気における第1相対値ΔZaの積分値に対する第2相対値ΔZbの積分値の割合(=第2相対値ΔZbの積分値/第1相対値ΔZaの積分値)を換気能バランスBPとして採用することもできるし、1呼吸の吸気における第2相対値ΔZbの積分値に対する第1相対値ΔZaの積分値の割合(=第1相対値ΔZaの積分値/第2相対値ΔZbの積分値)を換気能バランスBPとして採用することもできる。要するに、1呼吸の吸気における第1相対値ΔZaと第2相対値ΔZbとの比を換気能バランスBPとして採用することができる。
【0130】
(3)変形例3
上述の実施形態では、肺の上部の換気機能を示す指標(ΔZa(MAX))と肺の中下部の換気機能を示す指標(ΔZb(MAX))との比を換気能バランスBPとして採用しているが、これに限らず、例えば肺の上部と中下部とを合わせた肺全体の換気機能を示す指標(ΔZa(MAX)+ΔZb(MAX))と肺の上部の換気機能を示す指標(ΔZa(MAX))との比、あるいは、肺全体の換気機能を示す指標(ΔZa(MAX)+ΔZb(MAX))と肺の中下部の換気機能を示す指標(ΔZb(MAX))との比を換気能バランスBPとして採用することもできる。
【0131】
(4)変形例4
上述の実施形態において、電流電極および電圧電極の一例として、両手両足を電極の接点とする四肢誘導八電極法を一例として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、耳電極との四肢誘導法とを組み合わせて、体幹上部の生体電気インピーダンスを測定してもよい。
この場合には、耳電極を用いることによって、体幹上部の生体電気インピーダンスの測定について両腕計測ではなく片腕計測が可能となる。なお、耳電極を用いる場合には、イヤホンやヘッドホンに耳電極を組み込むことによって、音声等の音報知・音刺激との組み合わせが効果的である。
【0132】
また、上述した実施形態では、立位での計測であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、便座での生体電気インピーダンスを計測するようにしてもよい。この場合には、便座や手摺に電極確保することができる。さらに、ポケッタブルやウェアラブルでのリラクゼーション姿勢(椅子座位等)で生体電気インピーダンスを計測するようにしてもよい。この場合には、マッサージチェアー等の手摺と足置き等に電極確保することができる。
【0133】
さらに、入浴中の呼吸計測も可能である。この場合には、浴槽手摺部と浴槽底の御尻や足裏接触側面部に電極を設ける。浴槽内のお湯よりも、体幹の方が、生理食塩水でできているので電流通電が支配的になる。よって、入浴中にリラックスした状態で呼吸法のトレーニングを行うことができる。
くわえて、上述した実施形態の生体測定装置1に、血圧計の腕帯と手で握る等で接触させる血圧計を付加し、血圧計に電極配置して呼吸変化や腕の筋の緊張具合を血圧測定時の補正情報として活用してもよい。
【0134】
(5)変形例5
上述の実施形態では、CPU170は、右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4との間の電位差を示す電圧データDvとから、右上肢の生体電気インピーダンスを測定しているが、これに限らず、肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaの測定方法は任意である。例えば右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、左足用の電圧電極Y1と左手用の電圧電極Y3との間の電位差を示す電圧データDvとから、左上肢の生体電気インピーダンスを測定し、それを第1生体電気インピーダンスZaとして採用してもよい。
【0135】
また、上述の実施形態では、CPU170は、左足と右手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、左手用の電圧電極Y3と右足用の電圧電極Y2との間の電位差を示す電圧データDvとから、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbを測定しているが、これに限らず、肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbの測定方法は任意である。例えば右足と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、右手用の電圧電極Y4と左足用の電圧電極Y1との間で電位差を示す電圧データDvとから、体幹中部を斜めに横切る生体電気インピーダンスを測定し、それを第2生体電気インピーダンスZbとして採用してもよい。
【符号の説明】
【0136】
1 生体測定装置
120 第1記憶部
150 入力部
170 CPU
200 生体電気インピーダンス測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンスと、前記被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンスとを測定する生体電気インピーダンス測定部と、
前記第1生体電気インピーダンスの測定値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、前記被験者の換気機能の特性を判定する判定部と、を備える、
ことを特徴とする換気特性判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記第1生体電気インピーダンスの測定値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、前記被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が正常であるか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の換気特性判定装置。
【請求項3】
前記第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値、および、前記第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値を生成するセンタリング値生成部と、
前記第1生体電気インピーダンスの測定値の前記第1センタリング値に対する相対値である第1相対値を求める第1相対値算出部と、
前記第2生体電気インピーダンスの測定値の前記第2センタリング値に対する相対値である第2相対値を求める第2相対値算出部と、をさらに備え、
前記判定部は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸の吸気における前記第1相対値と前記第2相対値との比に基づいて、前記被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能が正常であるか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の換気特性判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記第1相対値のピーク値に対する前記第2相対値のピーク値の割合が所定の閾値以上である場合は、前記被験者の胸部のうち呼吸に寄与する部位の機能は正常ではないと判定する一方、前記閾値を下回る場合は、当該部位の機能は正常であると判定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の換気特性判定装置。
【請求項5】
前記第1生体電気インピーダンスの測定値と、前記第1センタリング値とが等しくなるゼロクロスタイミングを抽出するゼロクロスタイミング抽出部をさらに備え、
前記生体電気インピーダンス測定部は、
所定の周期でサンプリングタイミングに到達するたびに、前記第1生体電気インピーダンスおよび前記第2生体電気インピーダンスを測定し、
前記センタリング値生成部は、
所定数の前記サンプリングタイミングの各々における前記第1生体電気インピーダンスの測定値に基づいて前記第1センタリング値を生成する一方、前記ゼロクロスタイミング抽出部で抽出された前記ゼロクロスタイミングにおける前記第2生体電気インピーダンスの測定値に基づいて前記第2センタリング値を生成する、
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の換気特性判定装置。
【請求項6】
前記センタリング値生成部は、
前記サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングよりも所定の時間長だけ前の時点を始点とし、当該サンプリングタイミングを終点とするセンタリング期間内の複数の前記サンプリングタイミングの各々における前記第1生体電気インピーダンスの測定値を用いて移動平均処理を行い、その結果に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける前記第1センタリング値を生成する、
ことを特徴とする請求項5に記載の換気特性判定装置。
【請求項7】
前記センタリング期間の時間長は、被験者の呼吸速度に応じて可変に設定される、
ことを特徴とする請求項6に記載の換気特性判定装置。
【請求項8】
前記センタリング値生成部は、
前記サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングが前記ゼロクロスタイミングであるか否かを判定し、当該サンプリングタイミングが前記ゼロクロスタイミングである場合は、当該サンプリングタイミングにおける前記第2生体電気インピーダンスの測定値に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける前記第2センタリング値を生成する一方、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングでない場合は、当該サンプリングタイミングの直前の前記サンプリングタイミングで生成した前記第2センタリング値を、当該サンプリングタイミングにおける前記第2センタリング値として採用する、
ことを特徴とする請求項5から請求項7の何れかに記載の換気特性判定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2012−24413(P2012−24413A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167481(P2010−167481)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】