説明

換気用防虫ネットおよびビニールハウスの換気方法

【課題】換気扇の既存、新設を問わず、容易に防虫用のネットを設けることによって、農事用のビニールハウスなどに設けられた換気扇を経由してハウス内に害虫が侵入することを防ぐ。
【解決手段】略正方形の据付枠1に、コの字状の骨組2を立脚して、枠組3を構成する。この枠組3に箱型に縫製されたネット4を被覆して換気用防虫ネットを構成する。枠組3は、レール状の部材によって構成し、ネット4の裾には、レール部材に固定できるように係止部11を設ける。このネット4は、枠組3を被覆した後、その裾の係止部11を据付枠1のレール部材5のレール部分にバネ部材4で挟み込んで固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用のビニールハウス等に設けられた換気扇などの部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食の安全意識が高まり、農薬の使用削減や、無農薬栽培が盛んになってきている。農薬を使用しない、あるいは、少量の使用では、病害虫対策が必要である。ビニールハウスなどを用いた農産物の栽培では、出入口、側窓、天窓などの害虫侵入可能経路に防虫ネットを張る対策が行われており、同様に、ビニールハウスに設けられた換気扇に対しても防虫対策が必要となってきている。
【0003】
このような背景の中、図7に記載のような防虫ネットを備えた換気扇が開発されている。(特許文献1参照)以降、従来の防虫ネット付き換気扇について図7を用いて説明する。
【0004】
図7に示すように、防虫ネット付き換気扇は、本体101と、ガード102と、ネット103で構成される。ガード102には取付用の脚104を設け、本体101の枠体に設けられた固定手段(図示せず)に差し込むことによって固定される。一方、ネット103は、換気扇の本体101またはハウスに設けられた係止部材(図示せず)に圧着して取り付けられる。
【特許文献1】特開2006−296216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の防虫ネット付換気扇においては、換気扇あるいはハウスに設けられた係止部材にネットを固定するため、現場でネットの貼り付け作業を行う必要がある。また、既存の換気扇にネットを設ける場合には、係止部材をハウスあるいは換気扇本体に予め取り付けておかなければならないという課題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、換気扇の吸込口あるいは吹出口などにとりつけるものであって、ネットを設ける対象の換気扇が新設あるいは既存に関わらず、作業性がよく、害虫の侵入する隙間ができにくい防虫ネットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の換気用防虫ネットの第一の手段は、断面凹型のレール状の部材を用いて、略正方形の据付枠とこの据付枠に立脚する骨組とを形成し、前記据付枠と前記骨組によって略箱型の枠組を構成し、この枠組に箱型に縫製されたネットを被覆し、レール状の部材の溝に嵌合する固定部材によって前記ネットの裾を据付枠に挟み込んで固定することを特徴とするものである。
【0008】
また、他の手段は、断面凹型のレール状の部材は、断面でみた角部を円弧状に加工したことを特徴とするものである。
【0009】
また、他の手段は、ネットの目合いは0.3〜0.4mmであることを特徴とするものである。
【0010】
また、他の手段は、固定部材は、針金状のばね部材を波型に成型したものである。
【0011】
また、他の手段は、骨組は、略コの字状で、角は円弧状に湾曲させたことを特徴とするものである。
【0012】
また、他の手段は、据付枠に「く」の字状の屈曲部を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
また、他の手段は、据付枠は、L字型の平板をレールの溝に挿入して各辺の部材を接合したものである。
【0014】
また、他の手段は、前記L字型の平板、または据付枠のレール状部材に複数のねじ穴またはひとつの長穴を設け、L字型の平板と据付枠のレール状部材との螺子止め位置を変えることにより据付枠のサイズを変更することを特徴とするものである。
【0015】
また、他の手段は、ビニールハウスに設けられた排気用の換気扇の吸込口を覆うように換気用防虫ネットを据えつけたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、既存、新設を問わず、換気扇に容易に防虫用のネットを設け、ビニールハウス等の内部に害虫の侵入を防ぐことが可能となる。また、害虫の侵入だけでなく、ハウス内部の農産物の受粉の手助けとなるマルハナバチが外部に逃げ出すことも防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の請求項1に記載の発明は、断面凹型のレール状の部材を用いて、略正方形の据付枠とこの据付枠に立脚する骨組とを形成し、前記据付枠と前記骨組によって略箱型の枠組を構成し、この枠組に箱型に縫製されたネットを被覆し、レール状の部材の溝に嵌合する固定部材によって前記ネットの裾を据付枠に挟み込んで固定するものであり、ネットと枠組を一体にして換気扇吸込口(あるいは吹出口)に取り付けることができるため、取付作業が容易である。
【0018】
また、請求項2記載の発明は、断面凹型のレール状の部材は、断面でみた角部を円弧状に加工したものであり、枠組に被覆させるネットが引っ掛らず、ネットの破れ防止という効果がある。
【0019】
また、請求項3記載の発明は、ネットの目合いは0.3〜0.4mmであることを特徴とするものである。
【0020】
また、請求項4記載の発明は、固定部材は、針金状のばね部材を波型に成型したものであり、レール状の部材に簡単に着脱でき、かつ、ネットの破損を防ぐ効果がある。
【0021】
また、請求項5記載の発明は、骨組は、略コの字状で、角は円弧状に湾曲させたものであり、ネット上に塵埃が堆積し難いという効果がある。
【0022】
また、請求項6記載の発明は、据付枠に「く」の字状の屈曲部を設けたことを特徴とするものであり、据付枠の取付面に突起、電源配線などの障害物があっても、容易にすえつけることが可能となる。
【0023】
また、請求項7記載の発明は、据付枠は、L字型の平板をレールの溝に挿入して各辺の部材を接合したものであり、簡単な構成で精度の良い据付枠を形成することができる。
【0024】
また、請求項8記載の発明は、前記L字型の平板、または据付枠のレール状部材に複数のねじ穴またはひとつの長穴を設け、L字型の平板と据付枠のレール状部材との螺子止め位置を変えることにより据付枠のサイズを変更することを特徴とするものである。
【0025】
また、請求項9記載の発明は、ビニールハウスに設けられた排気用の換気扇の吸込口を覆うように換気用防虫ネットを据えつけたものであり、屋外の落ち葉などのゴミによりネットの目詰まりを防ぎ、かつ、害虫の侵入防止の効果がある。
【0026】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態について、図1〜6を参照しながら説明する。
【0027】
図1に示すように、略正方形の据付枠1に、コの字状の骨組2を立脚して、枠組3を構成する。この枠組3に箱型に縫製されたネット4を被覆して換気扇の吸込口あるいは吹出口などに取り付ける防虫ネットを構成する。
【0028】
図2に示すように、枠組3に用いる部材は、断面凹型で、実公平7−6759号公報で示されるようなレール状のものである。以降このレール状の部材をレール部材5とする。ここで、レール部材5の正面のレール部分は挟持面6、背面は設置面7となっており、レール部分に波形に成型した針金状のバネ部材8を固定部材として挿入してシート状の固定対象物を挟み込んで固定する。また、このレール部材5の断面は角が無いようにしておくとネット4を被覆したときの「引っ掛り」がなく、ネット4に損傷を与え難い。
【0029】
レール部材5を用いた据付枠1の組み立て方について図3を用いて説明する。レール部材5の挟持面6を正面にして略正方形に配置する。正方形の角となる部分には、L字型の平板9を正方形の角を挟んだ両辺のレール部材5に差し込んで固定して据付枠1とする。L字型の平板9とレール部材との固定はねじ止めなどを行うと確実である。なお、L字型の平板9とレール部材との差し込み深度を変更することによって、据付枠1のサイズの微調整ができる。このサイズ微調整は、既存の換気扇等に取り付ける際などに、ハウス側の据付面に障害物がある場合等が考えられるが、据付枠1のサイズ調整により、現場の取付位置の状態に簡単に対応するためである。この場合、L字型の平板9の両辺に、複数の固定用ねじ穴15または長穴(図示せず)を設ける、あるいは、レール部材の端部に複数のねじ穴または長穴(図示せず)を設けて、L字型の平板9とレール部材とのねじ固定位置を変更するとよい。
【0030】
次に、骨組2は、レール部材5を湾曲加工して略コの字状の形状にする。角となる部分は円弧状にしておくことによって、ネット4を被覆したときの「引っ掛り」がなく、また、防虫ネットを設置したときにネット4の上にゴミ・塵等が堆積し難いなどの効果がある。図4に示すように、この骨組2は、据付枠1に設けられた骨組固定具10によって固定する。骨組固定具10は、据付枠1に用いたL字型の平板9と同様に、レール状部材5のレール部分に差し込んで固定すると作業性がよい。なお、本実施の形態において、骨組2は断面凹型のレール部材5を用いたが、これに限ることなく、丸型のパイプ等適度な強度を持つ部材を湾曲加工したものを用いてもよい。
【0031】
ネット4について説明する。ネット4は、枠組3を被覆するように略箱型に縫製する。ネット4の裾には、レール部材5に固定できるように係止部11を設ける。このネット4は、枠組3を被覆した後、その裾の係止部11を据付枠1のレール部材5のレール部分にバネ部材8で挟み込んで固定する。なお、農事用の害虫として、薬剤に対する感受性が低い「シルバーリーフコナジラミ」が問題になっているが、ネット4の目合いを0.3〜0.4mmとすることによってシルバーリーフコナジラミの侵入を防ぐことが可能となる。また、枠組3を形成することで、ネット表面積を大きくとり、且つネット4の上にゴミ・塵等が堆積し難い効果があるため、換気扇の圧力損失を低く抑えることが可能となる。なお、ネット4は、骨組2の形状に合わせて、かまぼこ状に縫製するとネット4を弛ませずに被覆することができる。また、係止部11はレール部材5に固定する部分となるため、強度の高いシート状の材料で構成するとよい。
【0032】
上記のように組み立てられた換気用防虫ネットは、箱型(あるいはかまぼこ型)に縫製されたネット4によって枠組3を隙間無く覆って害虫の侵入を防ぐことができる。枠組3には、レール状に加工された部材を用いることによって、強度の確保ができる。また、組立が簡単なため、据付現場で組立作業が可能であり、組立後に取り付ける構成をとっているために、簡単に取付が可能である。さらに、ハウス側の据付面に窪み等があり防虫ネットとの間に隙間ができても、据付枠1と据付面の隙間はパテ埋めなどにより簡単に埋めることが可能である。
【0033】
なお、据付枠1に図5に示すように、「く」の字型の屈曲部を設けることにより、電源配線16などの障害物がハウス側の設置面にあっても、「く」の字の部分に電源配線16を通すことで、電源配線16を切断するなどの障害物除去を行わずに、本防虫ネットを容易に取り付けることができる。
【0034】
また、本実施の形態では、換気扇の形状に合致するよう、略正方形の据付枠1としたが、長方形であってもその効果に変わりはない。
【0035】
さらに、本実施の形態は、換気扇を覆うように防虫ネットを付設することとしたが、換気扇だけでなく空気取り入れ口などハウスの他の開口部に用いてもよい。
【0036】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態1で記載されたような換気用の防虫ネット12を農事用のハウス13に取り付けた状態である。図6では、換気扇14は、ハウスの内部の空気を排気するように取り付けられている。防虫ネット12は、換気扇の吸込口側に、その吸込口を覆うように設置されている。すなわち、防虫ネット12は、ハウスの内部に設けられている。
【0037】
このような換気システムによれば、防虫ネット12は、ハウス13内部に設けられているため、ネット上部にゴミ・塵などが堆積し難い。また、防虫ネット12は通過する空気中の塵埃を捕捉して換気性能を低下させてしまうが、本実施の形態によれば、ハウス13内に存在する塵埃は防虫ネット12の外側に捕集されるので清掃などのメンテがしやすいというメリットがある。
【産業上の利用可能性】
【0038】
ビニールハウスだけでなく、閉鎖型の畜舎の換気用防虫ネットにも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す概略図
【図2】同第1の実施の形態で用いたレール部材を表す図
【図3】同第1の実施の形態の据付枠の結合状態を示した図
【図4】同第1の実施の形態の枠組の結合状態を示した図
【図5】同第1の実施の形態の据付枠の「く」の字型の屈曲部を示した図
【図6】同第2の実施の形態の概略図
【図7】従来の防虫ネット付換気扇を表す図
【符号の説明】
【0040】
1 据付枠
2 骨組
3 枠組
4 ネット
5 レール部材
8 バネ部材
9 L字型の平板
12 防虫ネット
13 ハウス
14 換気扇

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面凹型のレール状の部材を用いて、略正方形の据付枠とこの据付枠に立脚する骨組とを形成し、前記据付枠と前記骨組によって略箱型の枠組を構成し、この枠組に箱型に縫製されたネットを被覆し、レール状の部材の溝に嵌合する固定部材によって前記ネットの裾を据付枠に挟み込んで固定することを特徴とする換気用防虫ネット。
【請求項2】
断面凹型のレール状の部材は、断面でみた角部を円弧状に加工したことを特徴とする請求項1記載の換気用防虫ネット。
【請求項3】
前記ネットの目合いは0.3〜0.4mmであることを特徴とする請求項1または2記載の換気用防虫ネット。
【請求項4】
前記固定部材は、針金状のばね部材を波型に成型したものである請求項1〜3いずれかに記載の換気用防虫ネット。
【請求項5】
前記骨組は、略コの字状で、角は円弧状に湾曲させたことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の換気用防虫ネット。
【請求項6】
前記据付枠に「く」の字状の屈曲部を設けたことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の換気用防虫ネット。
【請求項7】
前記据付枠は、L字型の平板をレールの溝に挿入して各辺の部材を接合してなる請求項1〜6いずれかに記載の換気用防虫ネット。
【請求項8】
前記L字型の平板、または据付枠のレール状部材に複数のねじ穴またはひとつの長穴を設け、L字型の平板と据付枠のレール状部材との螺子止め位置を変えることにより据付枠のサイズを変更することを特徴とする請求項7記載の換気用防虫ネット。
【請求項9】
請求項1〜8いずれかに記載の換気用防虫ネットを、ビニールハウスに設けられた排気用の換気扇の吸込口を覆うように据えつけたことを特徴とするビニールハウスの換気方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−157549(P2008−157549A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347150(P2006−347150)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】