説明

換気装置及び換気システム

【課題】時期を問わず換気動力、空調負荷、消費電力をさらに低減することのできる換気装置及び換気システムを得る。
【解決手段】ダンパー開閉調節手段6により調節される通気断面積に応じて風量が変化する循環風RA2を循環空気取入口16から本体ケース10内に取り入れ、当該循環風RA2と室外空気取入口11からの室外空気OAとを混合した給気流SAを給気口12から室内61へ給気する循環併用運転において、排気送風機制御手段35は、給気風量検出手段33により検出された室外空気取入量と略同量の排気流が得られるよう排気送風機3を駆動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外空気を室内へ供給し、室内空気を室外へ排出しながら、住宅全体を換気する換気装置及び換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の高気密、高断熱化により住宅からの排気と住宅内への給気を適切に行う全般換気設備が必須となっている。全般換気の目的は、建物内の室内環境を適切に維持するため、絶えず必要な換気量を確保し、室内で発生する揮発性有機化合物の濃度を適正な水準以下に維持することにある。
【0003】
このような全般換気に関し、換気回数として毎時0.5回以上の換気(住宅からの排気と住宅内への給気)を、常時(24時間)機械力で機能させることが建築基準法に定められている。また一方で、全般換気を行う換気装置は24時間常時機能するため、換気に伴うエネルギーの省エネルギー化の推進も求められている。
【0004】
全般換気の省エネルギーには、排気経路と給気経路を明確に設備した上で、住宅の隙間からの漏気を抑制して必要最小限の換気量で運転することが換気動力の低減に有効である。また、排気と給気との間で熱交換させれば空調負荷を軽減することができる。
【0005】
また、冬期においては室内外温度差により住宅の隙間を通じて自然換気量が増加するため、自然換気増加分を見越して、全般換気量を例えば、0.5回/時から0.3回/時に低減する処置も法に適合する上で認められている。また、室内の揮発性有機化合物を吸着又は除去して室内濃度を低下させて所定量の全般換気量を低減させる処置も法に適合する上で認められている。これらの処置によれば、法的に定められた0.5回/時の機械換気設備による全般換気量を低減することができ、全般換気に伴う動力、空調負荷を低減して省エネを推進することができる。
【0006】
従来の換気装置として、「混合室で混合した内気と外気を給気送風機によって攪拌して室内吹出口から室内へ吹出すように構成するとともに、室内吸込口から給気送風機に至る風路には、当該風路を流れる気流から揮発性有機化合物を吸着又は除去するフィルターを設ける手段を採用」したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、冬期における給気に関し、「冬季においては室内外の温度差が発生するため自然換気量が増え、そのぶん給気風量を低減できる。そこで冬季においては、開閉シャッタ29を半開状態の位置まで移動させていくと、室外吸込口6の開口面積と室内吸込口9の開口面積は略同等になる。この状態では例えば、室外吸込口6から50%、室内吸込口9から50%程度の空気を吸込んで、この空気を混合し、攪拌して室内吹出口8から室内へ吹出すことになる。」という記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−71205号公報(第3頁〜第5頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には冬期に給気量を低減する構成の記述はあるが、時期を問わず適正な給気量を確保するための技術については開示されていなかった。また、省エネルギー化への要請から、時期を問わず換気動力、空調負荷、消費電力をさらに低減することのできる換気装置及び換気システムが望まれていた。
【0009】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、換気動力、空調負荷、消費電力を低減することのできる換気装置及び換気システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る換気装置は、室内に供給する給気流を形成する給気送風機と、室外への排気流を形成する排気送風機と、前記給気送風機と連通する室外空気取入口、給気口、及び循環空気取入口、並びに前記排気送風機と連通する室内空気取入口、及び排気口が形成され、前記給気送風機及び前記排気送風機を収容する本体ケースと、前記循環空気取入口に設けられた室内空気清浄フィルターと、前記循環空気取入口から前記給気送風機に吸引される循環風の通気断面積を調節する通気断面積調節手段と、前記室外空気取入口から前記本体ケース内に取り入れられる室外空気取入量を少なくとも検出する風量検出手段と、前記排気送風機を駆動制御する排気送風機制御手段とを備え、前記通気断面積調節手段により調節される前記通気断面積に応じて風量が変化する前記循環風を前記循環空気取入口から前記本体ケース内に取り入れ、当該循環風と前記室外空気取入口からの室外空気とを混合した給気流を前記給気口から室内へ給気する循環併用運転において、前記排気送風機制御手段は、前記風量検出手段により検出された前記室外空気取入量と略同量の前記排気流が得られるよう前記排気送風機を駆動制御するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、全般換気における循環併用運転において、室外空気取入量が低減され、建物からの漏気も抑制される。このため、換気動力と空調負荷を低減することができ、省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係る換気システムの設置概要図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る換気装置の概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る換気装置の主要部のブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る換気装置の制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態に係る換気装置及び換気システムを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る換気システムの設置概要図である。図1では、本実施の形態1に係る換気システムSを住宅などの建物に設置した状態を断面模式図で示している。図1に例示する建物は、一階と二階にそれぞれ居室を有する二階建ての住戸であり、便宜上、建物の内部を室内61と称し、建物の外部を室外62と称する。
【0015】
本実施の形態1に係る換気装置1を備えた換気システムSは、室外空気を室内へ供給し、室内空気を室外へ排出する換気を行う。本実施の形態1に係る換気装置1は、室内の空気から汚染物質を除いて循環させながら新鮮な外気を取り入れる循環併用運転を行い、建物内の適切な室内環境を維持する。また、本実施の形態1に係る換気装置1は、室内へ供給する給気流と室外へ排出する排気流との間で熱交換する熱交換換気を行う。
【0016】
換気装置1は、建物の天井裏空間等に設置されており、複数のダクト50a、50b、50c、50d、50e、50f(以下、ダクト50と総称する場合がある)が接続される。ダクト50は、室内61又は室外62と連通するようにして建物内に設置されている。換気装置1は、室内61内の空気をダクト50を介して取り込み(図1に室内空気をRA1、RA3で示す)、取り込んだ空気を排気として室外62へ排出する(図1に排気をEAで示す)。また、換気装置1は、室外62の空気を取り込み(図1に室外空気をOAで示す)、取り込んだ空気をダクト50を介して室内61内へ給気流として供給する(図1に給気をSAで示す)。なお、図1に示す換気装置1への空気の取入口及び給気口の数は一例であり、設置される建物の間取りに応じて、ダクト50を適宜分岐させて室内空気RA1、RA3の取入口や室内61への給気SAの給気口を設けてもよい。また、換気装置1は、室内61内の空気を循環風としてダクト50を介して取り込み(図1に循環風をRA2で表す)、室外空気OAと混合して給気SAとして室内61に供給する循環併用運転も行う。
【0017】
図2は、実施の形態1に係る換気装置の概略構成図である。
換気装置1は、ほぼ箱状の本体ケース10の内部に、給気送風機2と、排気送風機3と、熱交換器4とを備えている。本体ケース10には、室外空気取入口11と、給気口12と、室内空気取入口13と、室内空気取入口14と、排気口15と、循環空気取入口16とが形成されている。室外空気取入口11、給気口12、室内空気取入口13、室内空気取入口14、排気口15、及び循環空気取入口16には、それぞれ、ダクト50と各開口部とを接続するための所定長さの管路である接続部11a、12a、13a、14a、15a、16aが設けられている。
【0018】
本体ケース10の内部には、複数の通風路が形成されている。
一系統めの通風路は、室外空気取入口11から給気口12に至る通風路であり(通風路R1と称する)、この通風路R1内に、給気送風機2が配置されている。給気送風機2が動作すると、図2に空気流F1として示すように、室外62の空気が室外空気取入口11から本体ケース10内に取り入れられ、取り入れられた空気は給気口12から室内61へと給気流として供給される。
【0019】
二系統めの通風路は、室内空気取入口13から排気口15に至る通風路であり(熱交換経路R2と称する)、この熱交換経路R2内に、排気送風機3が配置されている。排気送風機3が動作すると、図2に空気流F2として示すように、室内61の空気が、室内空気取入口13から本体ケース10内に取り入れられ、取り入れられた空気は排気口15から室外62へと排気される。
【0020】
この通風路R1、R2の一部は、熱交換器4において空気対空気での熱交換が可能に構成されている。すなわち、熱交換器4において、室内へ給気される空気流F1と室外へ排気される空気流F2との間で、熱交換が行われる。
【0021】
三系統めの通風路は、室内空気取入口14から排気送風機3へ至る通風路であり(バイパス経路R3と称する)、このバイパス経路R3は、熱交換器4を迂回する構成となっている。バイパス経路R3は熱交換器4を通らない経路であり、熱交換経路R2に対して圧力損失が低位となるよう構成されている。
【0022】
本体ケース10には、室内空気取入口13と室内空気取入口14のうち、一方を閉塞し他方を開放するように動作するバイパス切替手段5が設けられている。バイパス切替手段5は、例えばダンパー装置であり、室内空気取入口13と室内空気取入口14のうちいずれか一方を開放することにより、その開放された取入口に連なる通風路(熱交換経路R2又はバイパス経路R3)を、空気が通過することとなる。熱交換経路R2用の室内空気取入口である室内空気取入口13が開放されている場合には、室内空気取入口13から室内空気RA1が本体ケース10内に取り込まれ、通風路R1を通る空気流F1と熱交換経路R2を通る空気流F2(室内空気RA1)とが熱交換器4にて熱交換を行う熱交換モードでの運転が行われる。一方、バイパス経路R3用の室内空気取入口である室内空気取入口14が開放されている場合には、室内空気取入口14から室内空気RA3が本体ケース10内に取り込まれ、通風路R1を通る空気流F1とバイパス経路R3を通る空気流F3(室内空気RA3)とが熱交換器4にて熱交換を行わず、バイパスモードでの運転が行われる。
【0023】
循環空気取入口16は、給気送風機2の吸込口2aと連通する位置に開口している。この循環空気取入口16には、一端が室内上層部空間61aに開口したダクト50fが接続されており、循環空気取入口16はダクト50fを介して室内上層部空間61aと連通している。循環空気取入口16には、通気断面積を調節するダンパー開閉調節手段6を備えている。ダンパー開閉調節手段6は、開度を複数段階に調節可能なダンパー装置であり、循環空気取入口16を全閉状態から全開状態の範囲で遮蔽あるいは開放することにより、通気断面積を調節する。ダンパー開閉調節手段6によって調節される通気断面積により、循環空気取入口16から吸込口2aに吸い込まれる空気の量が調節される。なお、本実施の形態1に係るダンパー開閉調節手段6は、本発明に係る通気断面積調節手段の一例である。通気断面積調節手段としては、本実施の形態1に示したもののほか、給気送風機2の吸込口2aに吸い込まれる循環風RA2の通気断面積を調節可能なものであれば任意の構成を採用することができる。
【0024】
また、循環空気取入口16に流入する空気の通風路上(又は、循環空気取入口16から給気送風機2の吸込口2aに至る通風路上)には、揮発性有機化合物を吸着又は除去する室内空気清浄フィルター7が備えられている。室内空気清浄フィルター7は、例えば、セルロースに活性炭を混抄した混抄紙に人工酵素を添着した濾材を、圧損の少ない230メッシュ/平方インチ程のコルゲートハニカム構造に成形したもので、幅91mm、高さ91mm、厚さ15mm程度にカットしたものが用いられている。この室内空気清浄フィルター7は、使い捨てでありカセット式に交換することが可能である。
【0025】
この他にも、室内空気清浄フィルター7としては、吸湿機能を持つ吸湿性材料に常温活性触媒を複合化した基材をハニカム状や、コルゲート状に成形したものでもよい。吸湿性材料としては、シリカゲル又はゼオライトをベースとした吸湿性セラミックスが用いられる。吸湿性材料に複合化する常温活性触媒としては、貴金属と金属酸化物を複合した触媒が用いられる。貴金属としては、金、白金、イリジウム、ロジウム又はルテニウムが、金属酸化物としては、酸化錫、酸化マンガン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化セリウム等がそれぞれ用いられる。吸湿性セラミックスは、常温活性触媒との複合化が容易であり、長寿命化を図ることができ、枠に組み込むことで補強することができる。前者は、使い捨てであるが、この室内空気清浄フィルター7は、吸湿性材料が室温程度の温度下でも空気中の水蒸気を表面に吸着・凝縮し、水膜を形成し、この水膜に空気中の水溶性の臭気ガス等の有害ガスを溶解することで臭気除去機能を果たす。吸湿性材料の水膜に溶解され保持された有害ガスは、常温活性触媒により徐々に酸化分解され、室内空気清浄フィルター7は自己再生する。つまり、メンテナンスフリーで永年使用することができる。
【0026】
室内空気清浄フィルター7の上流と下流には、それぞれ、室内空気汚染物質の濃度を検出するフィルター上流濃度検出手段8aとフィルター下流濃度検出手段8bを備えている。フィルター上流濃度検出手段8a、フィルター下流濃度検出手段8bとしては、空気中に含まれる室内空気汚染物質の濃度を検出可能なものであれば、任意の検出装置を用いることができる。
【0027】
また、換気装置1には、室外62の空気温度を検出するための室外温度センサー21と、室内61の空気温度を検出するための室内温度センサー22とを備えている。本実施の形態1では、室外温度センサー21は、室外空気取入口11近傍の室外空気経路内に設けられており、室外空気取入口11から取り入れられる空気の温度を検出する。なお、室外温度センサー21の設置位置をこれに限定するものではなく、例えばダクト50a内など室外62の空気温度を検出可能な任意の場所に設置することができる。
【0028】
室内温度センサー22は、本実施の形態1では、室内空気取入口13及び室内空気取入口14の空気流れ上流側であって、バイパス切替手段5により熱交換経路R2とバイパス経路R3のいずれが通風可能となっている場合であっても空気が流れる領域に配置されている。より具体的には、図2に示すように、本体ケース10の外側には、室内空気取入口13及び室内空気取入口14の双方に連通するように接続された室内空気取入風路17が接続されており、この室内空気取入風路17内に、バイパス切替手段5が設けられている。接続部13aと接続部14aは、室内空気取入風路17を介して、それぞれ室内空気取入口13と室内空気取入口14に接続されている。室内空気取入風路17の内部には、室内空気取入口13側と室内空気取入口14側とを仕切る隔壁が設けられているが、この隔壁には、バイパス切替手段5が室内空気取入口13と室内空気取入口14のいずれを開放している場合であっても空気の流通が可能な温度センサー開口部18が設けられている。そして、この温度センサー開口部18の近傍領域(共通部19と称する)に、室内温度センサー22が設置されている。このため、バイパス切替手段5により熱交換経路R2とバイパス経路R3のいずれが通風可能となっている場合であっても、室内温度センサー22の近傍に室内空気が流れるように構成されている。なお、室内温度センサー22の設置位置をこれに限定するものではなく、熱交換経路R2とバイパス経路R3のいずれが通風可能となっている場合であっても室内の空気温度を検出可能な任意の場所に設置することができる。
【0029】
図3は、実施の形態1に係る換気装置の主要部のブロック図である。
換気装置1は、換気装置1を構成する各部の全体的な制御を行う換気装置制御手段30を備えている。換気装置制御手段30には、室外温度センサー21、室内温度センサー22、及び後述する汚染物質捕集効率算定手段38からの情報と、換気量設定手段41により設定される換気量が入力され、換気装置制御手段30は、これらの情報に基づいて所定の換気量が得られるように各部を制御する。換気量設定手段41は、具体的には例えば居室の壁面等に設置される換気装置1の制御パネルに設けられたスイッチであり、例えば「大風量換気」/「小風量換気」のように換気量の設定が可能である。使用者は、換気量設定手段41のスイッチを操作することにより、換気量を設定する。
【0030】
換気装置制御手段30には、ダンパー開閉調節手段6の開度に関する情報が入力される。ダンパー開閉調節手段6は、循環併用設定手段42により循環併用運転の開始の設定がなされると、全閉状態から開側へと作動する。また、循環併用設定手段42により循環併用運転の停止の設定がなされると、ダンパー開閉調節手段6は全閉状態となる。循環併用運転中においては、ダンパー開閉調節手段6は、換気装置制御手段30によって開度が制御される。循環併用設定手段42は、具体的には居室の壁面等に設置される換気装置1の制御パネルに設けられたスイッチである。使用者は、このスイッチを操作することにより、循環併用運転の開始と停止とを切り替える。
【0031】
また、換気装置制御手段30は、バイパス換気設定手段37を介して、バイパス切替手段5の動作を制御する。バイパス換気設定手段37は、換気装置制御手段30からの制御信号に基づいて、室内空気取入口13と室内空気取入口14のうちいずれか一方を開放するようバイパス切替手段5を動作させる。
【0032】
また、換気装置制御手段30は、給気風量設定手段31に対して、目標となる換気量(換気量設定値)に関する情報を出力する。給気風量設定手段31は、入力された換気量設定値を得るために必要な給気風量を算出して設定する。給気送風機制御手段32は、給気風量設定手段31により設定された給気風量が得られるよう、給気送風機2の送風能力(回転速度)を制御する。換気装置1には、給気風量を検出するための圧力センサー等を備えた給気風量検出手段33が設けられており、給気送風機制御手段32は、給気風量検出手段33により検出される給気風量に基づいて、給気送風機2の運転を制御する。なお、給気風量検出手段33による風量検出処理については後述する。
【0033】
また、換気装置制御手段30は、排気風量設定手段34に対して、目標となる換気量(換気量設定値)に関する情報を出力する。排気風量設定手段34は、入力された換気量設定値を得るために必要な排気風量を算出して設定する。排気送風機制御手段35は、排気風量設定手段34により設定された排気風量が得られるよう、排気送風機3の送風能力(回転速度)を制御する。換気装置1には、排気風量を検出するための圧力センサー等の排気風量検出手段36が設けられており、排気送風機制御手段35は、排気風量検出手段36により検出される排気風量に基づいて、排気送風機3の運転を制御する。
【0034】
また、換気装置1には、汚染物質捕集効率算定手段38が設けられている。汚染物質捕集効率算定手段38には、室内空気清浄フィルター7の上流と下流にそれぞれ設けられたフィルター上流濃度検出手段8a、フィルター下流濃度検出手段8bが検出した値が入力される。汚染物質捕集効率算定手段38は、フィルター上流濃度検出手段8a、フィルター下流濃度検出手段8bの検出値に基づき、室内空気清浄フィルター7による汚染物質の捕集効率を算定する。具体的には、汚染物質捕集効率は、以下の式で算出する。
汚染物質捕集効率=(室内空気清浄フィルター7の上流の濃度C−室内空気清浄フィルター7の下流の濃度Cp)÷室内空気清浄フィルター7の上流の濃度C
【0035】
換気装置制御手段30には、汚染物質捕集効率算定手段38が算出した汚染物質捕集効率が入力される。換気装置制御手段30は、汚染物質捕集効率に基づいて、換気量低減運転を行う。
【0036】
なお、換気装置制御手段30、給気風量検出手段33、排気風量検出手段36、給気風量設定手段31、排気風量設定手段34、バイパス換気設定手段37、及び汚染物質捕集効率算定手段38等は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、マイコンやCPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成することもできる。また、図3に示したこれらの構成は、機能を概念的に記載したものであり、必ずしも物理的に図3に記載のように構成されていることを要しない。すなわち、これらの構成の機能を実現できるものであれば、具体的な装置の分散・統合に関する具体的形態は図示のものに限定されない。
【0037】
次に、本実施の形態1に係る換気装置1の循環併用運転について説明する。循環併用運転においては、室内空気清浄フィルター7による汚染物質の捕集度合いに基づき、換気量(室外空気OAの量)を低減するための運転を行う。
【0038】
まず、使用者が循環併用設定手段42を操作して循環併用運転の開始が設定されたものとする。
そうすると、ダンパー開閉調節手段6が全閉状態から開側へ作動し、循環空気取入口16から換気装置1への循環風の取り入れが開始される。循環併用運転が開始されると、給気送風機2の動作により、室外空気取入口11から取り入れられた室外62の空気に加え、循環空気取入口16から取り入れられた循環風が、給気口12から室内61へと供給されることとなる。
【0039】
このとき、ダンパー開閉調節手段6の開度によって、給気送風機2により給気される室外空気取入量と循環風量の割合とが変化する。すなわち、ダンパー開閉調節手段6により循環風の通気断面積が小さく設定されると、給気風量に占める室外空気の取入量は相対的に多くなり、また、循環風の通気断面積が大きく設定されると、給気風量に占める室外空気の取入量は相対的に少なくなる。
【0040】
給気風量検出手段33は、少なくとも、ダンパー開閉調節手段6により通気断面積が調節される通風路の風量変化を検知可能な圧力センサー等のセンサーを備えている。給気風量検出手段33は、このセンサーの検出値に基づいて、ダンパー開閉調節手段6が全閉状態から開側へ動作したことによって給気風量が大きくなる変化を捉えると、ダンパー開閉調節手段6の動作後の給気風量に占める室外空気と室内空気(循環風)の各々の風量を算定する。具体的には、室外空気取入口11からの経路の圧力損失と、並列経路として加わった循環空気取入口16からの経路の圧力損失との合成圧力損失を検出し、予め入力されている給気送風機2の風量−静圧特性データに基づいて、給気風量に占める室外空気取入量Vと循環風量Qrとを算定する。
【0041】
そして、換気装置制御手段30は、給気風量検出手段33が検出した室外空気取入量V、循環風量Qrの算定値、並びに汚染物質捕集効率算定値の各々の算定値から、下式により有効換気換算量Vqを算出する。
有効換気換算量Vq=循環風量Qr×汚染物質捕集効率+室外空気取入量V
なお、汚染物質捕集効率を算出する式については上述の通りである。
【0042】
この有効換気換算量Vqは、室内空気清浄フィルター7より汚染物質が捕集されて換気装置1に取り込まれる循環風RA2を、室外空気導入とみなして計算しているものであり、換気装置1としては、有効換気換算量Vqが換気装置制御手段30により設定された換気量以上であることが必要となる。
【0043】
そこで、換気装置制御手段30は、ダンパー開閉調節手段6を制御して循環風RA2の通気断面積を調節する。そして、ダンパー開閉調節手段6により通気断面積が調節される都度、給気風量検出手段33は、ダンパー開閉調節手段6の動作による風量の変化から、給気に占める室外空気OAと室内空気(循環風RA2)の各々の風量を算定し、また、前記のように汚染物質捕集効率を算定する。これらから算定される有効換気換算量Vqが、換気装置制御手段30によって設定された換気量設定値を上回るよう、ダンパー開閉調節手段6により循環風RA2の通気断面積を調節する。
【0044】
また、ダンパー開閉調節手段6の開度を最大としたとき(循環風RA2の通気断面積を最大としたとき)に、換気装置制御手段30の換気量設定値に対し有効換気換算量Vqが所定値以上超えている場合(すなわち、換気量設定値に対して有効換気換算量Vqが大きすぎる場合)には、給気風量設定手段31は、換気量設定値に対して有効換気換算量Vqが所定範囲内となるよう給気風量を調整する。具体的には、給気風量設定手段31は、給気風量を段階的に下方修正して設定し、給気送風機制御手段32は、給気風量検出手段33による検出値が設定された給気風量となるように、給気送風機2の送風能力を調整する。そして、その都度、換気装置制御手段30が有効換気換算量Vqを算出し、換気量設定値に対して有効換気換算量Vqが所定範囲内となっているかを判断する。このような制御動作を、換気量設定値に対して有効換気換算量Vqが所定範囲内となるまで繰り返す。このように、給気送風機2の送風能力を制御して給気風量を調整することで、有効換気換算量Vqを所定範囲内に収める。
【0045】
上記のようにして給気風量が調整された後、排気風量設定手段34は、給気風量と排気風量とが同量に近づくよう、排気風量検出手段36、排気送風機制御手段35を用いて排気送風機3の送風能力を調整する。
【0046】
前述のように、室外空気取入口11及び排気口15は、室外空間と連通し、循環空気取入口16は、建物の室内上層部空間61aと連通している。したがって、当該換気装置1及び換気システムSは、建物の上層部の室内空気を吸い込んで室内空気清浄フィルター7で室内汚染の基となる揮発性有機化合物を吸着又は除去した後、揮発性有機化合物が除かれた循環風RA2と室外空気OAとを給気送風機2により混合して、給気口12から室内61に給気SAとして供給する。そして、前記の通り、このときの室外空気給気量と室内空気排気量は、略同量となるように制御されるため、住宅の各部位に存在する建物隙間からの空気の漏入、漏出は抑制される。
【0047】
以上説明した構成において、換気装置1の動作を説明する。
図4は、実施の形態1に係る換気装置の制御フローチャートである。
【0048】
ステップS1において、換気装置制御手段30は、換気量設定手段41の設定に基づいて住宅気積における0.5回/時という全般換気回数に見合う換気量Qを設定し、この換気量Qが得られるよう熱交換モードで運転を開始する。
【0049】
このとき、図4には記載していないが、前述のように、換気装置制御手段30が設定した換気量Q(換気量設定値)に基づき、給気風量設定手段31が給気風量を設定するとともに排気風量設定手段34が排気風量を設定する。そして、給気送風機2は、給気風量設定手段31により設定された給気風量に基づいて、0.5回/時の換気量に見合う所定の風量で運転する。また、排気送風機3は、排気風量設定手段34により設定された排気風量に基づいて、0.5回/時に見合う所定の風量で運転する。
【0050】
ステップS2において、室外温度センサー21の検出温度(図4中、OAと記載。以下同様。)が16℃以下か否かを判定し、16℃以下であれば(S2;Yes)、ステップS3において室内温度センサー22の検出温度(図4中、RAと記載。以下同様。)が室外温度センサー21の検出温度より4℃以上高いか否かを判定し、4℃以上高ければ(S3;Yes)、冬期の環境条件であると判断する。そして、ステップS4において、換気装置制御手段30は、換気量Qを、0.5回/時の換気量から0.3回/時に見合う換気量へと設定の変更を行う。
【0051】
また、ステップS2において、室外温度センサー21の検出温度が16℃を超えていると判定すると(S2;No)、ステップS5において、室外温度センサー21の検出温度が24℃以下か否かを判定し、24℃以下であれば(S5;Yes)、ステップS6において、室内温度センサー22の検出温度と室外温度センサー21の検出温度の温度差が2℃以下か否かを判定し、温度差が2℃以下であれば(S6;Yes)、中間期で空調負荷が小さい温熱環境条件であると判断する。そして、ステップS7において、換気量は変えず0.5回/時のまま、バイパスモードでの換気運転に運転モードを変更する。
【0052】
また、ステップS6において、室内温度センサー22の検出温度と室外温度センサー21の検出温度との温度差が2℃を超えていると判定した場合は(S6;No)、ステップS8において、ステップS1と同じ0.5回/時の換気量で熱交換モードの設定のまま換気運転を続ける。
【0053】
また、ステップS5において、室外温度センサー21の検出温度が24℃を超えていると判定したときは(S5;No)、ステップS9において、室外温度センサー21の検出温度が28℃以下か否かを判定し、28℃以下であれば(S9;Yes)、夏期で空調負荷が小さい温熱環境条件と判断する。そして、ステップS7において、換気量は変えず0.5回/時のまま、バイパスモードでの換気運転に運転モードを変更する。
【0054】
また、前記ステップS9において、室外温度センサー21の検出温度が28℃を超えていると判定したときは(S9;No)、ステップS10において、室内温度センサー22の検出温度が室外温度センサー21の検出温度以上の高温か否かを判定し、高温であれば(S10;Yes)、夏期の排熱を要する温熱環境条件と判断する。そして、ステップS11に移行して、換気量を1.0回/時に変更してバイパスモードでの換気運転に運転モードを変更する。
【0055】
また、ステップS3において室内温度センサー22の検出温度が室外温度センサー21の検出温度より4℃以上高いか否かを判定し、温度差が4℃未満のときは(S3;No)、冬期の自然換気が期待できない温熱環境条件と判断する。そして、ステップS8に移行して、ステップS1と同様に0.5回/時の換気量で熱交換モードの設定のままとする。
【0056】
また、ステップS10において、室内温度センサー22の検出温度が室外温度センサー21の検出温度以上の高温か否かを判定し、高温でなければ(S10;No)、夏期の冷房負荷が生じている温熱環境条件であると判断する。そして、ステップS8に移行して、ステップS1と同様に0.5回/時の換気量で熱交換モードの設定のままとする。
【0057】
前記ステップS4、ステップS7及びステップS8の後、ステップS12に移行する。ステップS12では、ステップS1で設定された運転条件が変更されたか否かを判断する。具体的には、運転モードが熱交換モードからバイパスモードへ変更された場合、換気量が0.5回/時から変更された場合、のいずれかに該当するか否かを判断する。
運転条件が変更されていないときには(S12;No)、ステップS26に進み、その運転状態を所定時間(図4の例では1時間)継続する。
運転条件が変更されたときは(S12;Yes)、ステップS13において、前述のように換気装置制御手段30により設定された換気量Qに基づいて、給気風量設定手段31が給気風量Qsを設定する。そして、この給気風量Qsが得られるように、給気風量検出手段33の検出値に基づいて給気送風機制御手段32が給気送風機2の運転を制御する。ステップS13にて設定される給気風量Qsは、室外から取り込まれる室外空気取入量である。
【0058】
続けて、ステップS14において、排気風量設定手段34は、ステップS13にて設定・調整された給気風量Qsと同量となるように排気風量Qeを設定する。そして、この排気風量Qeが得られるように、排気風量検出手段36の検出値に基づいて排気送風機制御手段35が排気送風機3の運転を制御する。
【0059】
このように、換気システムSが設置された建物の環境条件が、冬期の環境条件であると判断した場合や、中間期で空調負荷が小さい温熱環境条件であると判断した場合には、換気量Qに応じた給気風量Qsが得られるよう給気送風機2を先行して動作させる(ステップS13参照)。そして、この給気送風機2の給気量(室外空気取入量)と同量の排気風量Qeが得られるように、排気送風機3を動作させるようにしている(ステップS14参照)。このように、給気送風機2を先行して動作させる給気先行運転によって、新鮮な室外空気を室内61により確実に供給することができる。
【0060】
続けて、ステップS15において、循環併用設定手段42により循環併用運転が選択されたか否かを判定する。
循環併用運転が選択されていない場合には(S15;No)、ステップS26に進み、その運転状態を所定時間(図4の例では1時間)継続する。
循環併用運転が選択されている場合は(S15;Yes)、循環併用運転を開始する。まず、ステップS16において、ダンパー開閉調節手段6を全開状態として、循環風RA2の通気断面積を最大の面積とする。
【0061】
続けて、ステップS17において、給気風量検出手段33は、ダンパー開閉調節手段6により通気断面積が調節される通風路の、ダンパー開閉調節手段6が全開状態となったことに伴う風量変化を検出し、給気側の圧力損失Poa、及び循環側の圧力損失Prsを推算する。次に、ステップS18において、給気風量検出手段33は、ステップS17で推算した給気側圧力損失Poa及び循環側圧力損失Prsに基づいて、前述のようにして室外空気取入量V及び循環風量Qrを算出する。
【0062】
次に、ステップS19において、フィルター上流濃度検出手段8aにより汚染物質濃度(フィルター上流濃度C)を検出するとともに、フィルター下流濃度検出手段8bにより汚染物質濃度(フィルター下流濃度Cp)を検出し、これらの値から、前述のようにして室内空気清浄フィルター7による汚染物質捕集効率を算定する。
【0063】
次に、ステップS20において、換気装置制御手段30は、ステップS18及びステップS19で算出した、室外空気取入量V及び循環風量Qr並びに汚染物質捕集効率に基づいて、前述のようにして有効換気換算量Vqを算出する。
【0064】
次に、ステップS21において、有効換気換算量VqがステップS13で設定された給気風量Qs(換気装置制御手段30により設定された換気量Qに等しい)に対し、許容範囲内であるかを判定する。図4に示す例では、「給気風量Qs≦有効換気換算量Vq≦給気風量Qs*1.1」を有効換気換算量Vqの許容範囲値としているが、この数値は一例である。そして、有効換気換算量Vqが、許容範囲内の水準であれば(S21;Yes)、ステップS22において、ステップS18で算出された室外空気取入量Vと同量になるように、排気風量設定手段34が排気風量Qeを設定する。そして、排気風量設定手段34により設定された排気風量Qeが得られるよう、排気風量検出手段36、排気送風機制御手段35により、排気送風機3を所定の風量で運転する。
【0065】
また、ステップS21において有効換気換算量VqがステップS13で設定された給気風量Qsに対して許容範囲外である場合には(S21;No)、ステップS23において、ステップS20で算出した有効換気換算量Vqと、ステップS13で設定された給気風量Qs(換気装置制御手段30により設定された換気量Qに等しい)との大小関係を判定する。そして、有効換気換算量Vqよりも給気風量Qsが大であれば(S23;Yes)、ステップS24において、ダンパー開閉調節手段6により循環風RA2の通気断面積を1段階小さくし、ステップS17に移行する。
【0066】
ここで、ステップS17においては、前記同様にダンパー開閉調節手段6により通気断面積が調節される通風路の上流側と下流側の風量変化を検出し、給気側の圧力損失Poa、及び循環側の圧力損失Prsを推算する。すなわち、ステップS24にてダンパー開閉調節手段6により通気断面積が1段階小さくなった状態で、再び給気側の圧力損失Poa、及び循環側の圧力損失Prsを推算するのである。ステップS18以降の動作は、前述の通りである。
【0067】
また、ステップS23において、ステップS20で算出した有効換気換算量VqがS14で設定された給気風量Qs以上である場合には(S23;No)、ステップS25において、給気送風機制御手段32により、給気送風機2の速度ノッチを1段階下げて、室外空気取入量V及び循環風量Qrをその割合を変えずに減少させ、ステップS18に移行する。
【0068】
ステップS25に続いて実行するステップS18においては、給気送風機2の速度ノッチが1段階下げられたことに伴う室外空気取入量V及び循環風量Qrを算出することとなる。ステップS19以降の動作は、前述の通りである。
【0069】
そして、ステップS26においては、これ以前のステップでの運転状態を所定時間(図4の例では1時間)継続した後、前記ステップS2に移行して、以上で説明したステップを繰り返し実行する。所定時間おきにステップS2に戻って環境条件の判断を行うことで、時々刻々と変化しうる建物の環境に応じた換気運転が可能となる。
【0070】
また、ステップS27においては、1.0回/時の換気量に対応する排気風量Qeを排気風量設定手段34が設定し、当該排気風量Qeが得られるように排気風量検出手段36、排気送風機制御手段35により排気送風機3を運転する。このとき、バイパス切替手段5によってバイパス経路R3が選択され、バイパス経路R3にて排気が行われる。
さらに、このステップS27において、給気風量設定手段31は、排気風量Qeと同量の給気風量Qsを設定し、当該給気風量Qsが得られるように、給気風量検出手段33、給気送風機制御手段32により給気送風機2を運転する。その後は、前述のステップS26に移行する。
【0071】
このように、換気システムSが設置された建物の環境条件が、夏期の排熱を要する温熱環境条件であると判断した場合には、バイパスモードで運転するとともに、換気量Qに応じた排気風量Qeが得られるよう排気送風機3を先行して動作させる(ステップS27参照)。そして、この排気送風機3の排気量と同量の給気風量Qs(室外空気取入量)が得られるように、給気送風機2を動作させるようにしている(ステップS27参照)。このように、排気送風機3を先行して動作させる排気先行運転により、排気を優先した換気運転が実現され、効率的に排熱を行うことができる。また、バイパスモードにおいて排気経路となるバイパス経路R3は、熱交換経路R2に対して圧力損失が低いため、従来であれば給気風量と排気風量のアンバランスにより建物の隙間からの漏気が生じて換気効率が低下するおそれがあった。しかし、本実施の形態1においては、排気風量Qeに応じて給気風量Qsを調節するようにしているので、排気風量と給気風量のバランスが適正に保たれ、建物の隙間からの漏気を抑制することができる。このため、建物の排熱効果を高めることができる。なお、バイパス経路R3への空気の取入口である室内空気取入口14を、建物の室内上層部空間61aに連通させるようダクト50を接続してもよい。このようにすることで、夏期において建物の室内上層部空間61aにこもりやすい熱気をバイパス経路R3から室外62へと排出することができるので、建物内の熱気を効率よく排出することができる。
【0072】
なお、ステップS26の継続運転中に、換気量設定手段41、循環併用設定手段42により換気風量、運転モードが変更された場合は、割り込み処理により、適宜所定のステップからフローチャートを再スタートさせる。
【0073】
また、図4で示した数値はあくまでも一例であり、この換気装置1及び換気システムSが設置される環境(寒冷地、温暖地など)や、建物の用途等の条件に応じて適宜数値を変更することが可能である。
【0074】
以上説明したように、本実施の形態に係る換気装置1では、揮発性有機化合物を吸着又は除去する室内空気清浄フィルター7を備えた循環空気取入口16と給気送風機2の吸込口2aとを連通する通気断面積を調節するダンパー開閉調節手段6を備えた。そして、循環併用運転においては、室外空気取入口11から取り入れる室外空気OAと、循環空気取入口16から取り入れる循環風RA2を混合して、室内61への供給する給気SAとしている。このため、室外空気OAの取入量を低減することができるので、換気動力と換気に伴う空調負荷とを低減することができ、省エネルギー効果がある。また、給気SAに混合される循環風RA2は、室内空気清浄フィルター7により揮発性有機化合物が除かれているため、室内空気環境を適正に保つことができる。
【0075】
また、循環併用運転においては、ダンパー開閉調節手段6が循環風RA2の通気断面積を調節することにより、給気SAに含まれる室外空気取入量(室外空気OA)と循環風量(循環風RA2)の割合が変化するが、この室外空気取入量と循環風量を給気風量検出手段33により検出するようにした。そして、この室外空気取入量と、室内から排気される室内空気排気量(排気EA)とが略同量になるよう、給気送風機2と排気送風機3を制御するようにした。室外62から室内61へ入る空気量と室内61から室外62へ出る空気量が略同量となるので、建物の隙間からの漏気を抑制することができ、必要最小限の換気量で換気を行うことができる。したがって、換気動力や換気に要する消費電力を軽減することができ、また、換気に伴う空調負荷を軽減することができるので、省エネルギー効果を得ることができる。また、住宅の各部位に存在する建物隙間からの空気の漏入、漏出が抑制されるので、住宅の断熱効果が高まる。
【0076】
また、循環併用運転においては、熱交換器4を流通する室外空気取入量(室外空気OA)及び室内空気排気量(排気EA)を、循環併用運転を行わない場合よりも低減することができる。このため、熱交換効率は、高位側にシフトして、省エネルギー効果が高まる。
【0077】
また、循環空気取入口16は、建物の室内上層部空間61aと連通しており、循環併用運転においては、建物の上層部の室内空気を循環風RA2として換気装置1に吸い込んで、室外空気OAと混合して、各居室に供給するようにした。このため、冬期においては、暖房され建物の上層部に滞留している空気(循環風RA2)を各居室に供給することができるため、住宅全体の空気の温熱環境条件、空気質の均質化に効果がある。また、建物の上層部空間に滞留している空気に含まれる揮発性汚染物質を、循環空気取入口16に設けた室内空気清浄フィルター7により除去することができるので、建物の空気を浄化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上のように、本発明に係る換気装置は、住宅からの排気と住宅内への給気を常時(24時間)機能させる全般換気の省エネの手段としての室内空気と室外空気との間で熱交換させながら換気を行う熱交換換気において、空調負荷などを軽減する手法や必要換気量を過不足なく制御して換気による消費電力、空調負荷を低減する換気装置、換気システムに有用である。
【符号の説明】
【0079】
1 換気装置、2 給気送風機、2a 吸込口、3 排気送風機、4 熱交換器、5 バイパス切替手段、6 ダンパー開閉調節手段、7 室内空気清浄フィルター、8a フィルター上流濃度検出手段、8b フィルター下流濃度検出手段、10 本体ケース、11 室外空気取入口、12 給気口、13 室内空気取入口、14 室内空気取入口、15 排気口、16 循環空気取入口、17 室内空気取入風路、18 温度センサー開口部、19 共通部、21 室外温度センサー、22 室内温度センサー、30 換気装置制御手段、31 給気風量設定手段、32 給気送風機制御手段、33 給気風量検出手段、34 排気風量設定手段、35 排気送風機制御手段、36 排気風量検出手段、37 バイパス換気設定手段、38 汚染物質捕集効率算定手段、41 換気量設定手段、42 循環併用設定手段、50 ダクト、61 室内、61a 室内上層部空間、62 室外、EA 排気、OA 室外空気、RA1 室内空気、RA2 循環風、RA3 室内空気、SA 給気、R1 通風路、R2 熱交換経路、R3 バイパス経路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に供給する給気流を形成する給気送風機と、
室外への排気流を形成する排気送風機と、
前記給気送風機と連通する室外空気取入口、給気口、及び循環空気取入口、並びに前記排気送風機と連通する室内空気取入口、及び排気口が形成され、前記給気送風機及び前記排気送風機を収容する本体ケースと、
前記循環空気取入口に設けられた室内空気清浄フィルターと、
前記循環空気取入口から前記給気送風機に吸引される循環風の通気断面積を調節する通気断面積調節手段と、
前記室外空気取入口から前記本体ケース内に取り入れられる室外空気取入量を少なくとも検出する給気風量検出手段と、
前記排気送風機を駆動制御する排気送風機制御手段とを備え、
前記通気断面積調節手段により調節される前記通気断面積に応じて風量が変化する前記循環風を前記循環空気取入口から前記本体ケース内に取り入れ、当該循環風と前記室外空気取入口からの室外空気とを混合した給気流を前記給気口から室内へ給気する循環併用運転において、
前記排気送風機制御手段は、前記給気風量検出手段により検出された前記室外空気取入量と略同量の前記排気流が得られるよう前記排気送風機を駆動制御する
ことを特徴とする換気装置。
【請求項2】
前記室内空気清浄フィルターは、空気流から揮発性有機化合物を吸着または除去する
ことを特徴とする請求項1記載の換気装置。
【請求項3】
前記室内空気清浄フィルターにおける汚染物質捕集効率を算出する捕集効率算出手段を備え、
前記給気風量検出手段は、前記室外空気取入量に加えて、前記循環空気取入口から前記本体ケース内に取り入れられる循環風量を検出し、
前記循環併用運転において、
前記捕集効率算出手段により算出された前記汚染物質捕集効率、及び前記給気風量検出手段により検出される前記循環風量、及び室外空気取入量に基づいて、以下の算式により有効換気換算量を算出し、
有効換気換算量=循環風量×汚染物質捕集効率+室外空気取入量
前記有効換気換算量と換気量の目標値である換気量設定値との差異が所定範囲内となるよう、前記循環風の通気断面積及び前記給気送風機の送風能力の少なくとも何れか一方を調節する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の換気装置。
【請求項4】
前記有効換気換算量が前記換気量設定値に対して所定値以上小さい場合には、
前記通気断面積調節手段は、前記汚染物質捕集効率が低いほど、前記循環風の通気断面積を小さくして前記給気流に占める前記循環風量の割合を減少させる
ことを特徴とする請求項3記載の換気装置。
【請求項5】
前記有効換気換算量が前記換気量設定値に対して所定値以上大きい場合には、
前記給気送風機の送風能力を低減させる
ことを特徴とする請求項3または請求項4記載の換気装置。
【請求項6】
前記換気量設定値は、前記換気装置が設置される建物の必要換気回数以上となるように設定されている
ことを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載の換気装置。
【請求項7】
前記循環空気取入口は、前記換気装置が設置される建物の室内上層空間と連通している
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の換気装置。
【請求項8】
建物の内部に設置された請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の換気装置を備え、
前記給気口は前記建物の室内に連通し、前記室外空気取入口と前記排気口は前記建物の室外に連通し、前記室内空気取入口は前記建物の室内に連通し、前記循環空気取入口は前記建物の室内上層空間に連通するようにダクトが配設されている
ことを特徴とする換気システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−92267(P2013−92267A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232768(P2011−232768)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】