説明

揮散器

【課題】揮散能力を低下させることなく、商品性の向上を図ることのできる揮散器を提供する。
【解決手段】揮散器1は、透明ガラス製の容器2を有しており、このこの容器2は、底面部3、周面部4及び開口5aを備えた首部5を一体的に有している。周面部4には、シボ加工が施されている。容器2の内部には、芳香剤、消臭剤、防黴剤、防虫剤等の揮散して所定の薬効を発生する薬液15が収容されており、この薬液15中に吸液芯11が浸漬されている。さらに、容器2内には薬液15とともに複数個のゲル化体16が収容されており、このゲル化体16は、高吸水性合成樹脂である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香剤や消臭剤等の薬剤を周囲空間に揮散させる揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香剤や消臭剤等の薬液を揮散させる揮散器は、容器内に収容された薬液を該薬液に浸漬された吸液芯を介して導出し、外部に揮散させるように構成されている。また、容器は収容されている薬液の残存量を外部から視認可能とすべく、透明あるいは半透明で外部から透視可能なものが用いられている。
【0003】
このように、揮散器の容器は内部を透視可能な構成となっていることから、内部の薬液に浸漬されている吸液芯までも外部から見えてしまい、商品性が低下してしまう。そこで、薬液を着色することにより、着色された薬液により吸液芯を隠蔽して商品性の低下を防止したり、あるいは容器の形状に工夫を凝らすことにより、吸液芯が見えることにより低下した商品性を高めようとすることも試みられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、薬液の着色により商品性の低下を防止する場合には、吸液芯を隠蔽できる程度に着色濃度を濃くしなければならず、薬液中に多量の顔料を混入させる必要がある。このため、吸液芯に顔料が目詰まりして、吸液芯の吸液能力が低下し、延いては揮散器の揮散能力が低下してしまう不都合が生ずる。
【0005】
また、容器の形状に工夫を凝らした場合、商品それ自体の形状は固定的であることから、見る者の視覚を度々刺激できるものではなく、よって吸液芯が見えることにより低下した商品性を高めるには不十分なものであった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、揮散能力を低下させることなく、商品性の向上を図ることのできる揮散器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために請求項1記載の発明にあっては、内部を透視可能な容器内に収容された薬液を、該薬液に浸漬された吸液芯を介して導出し、外部に揮散させる揮散器において、前記容器内に前記薬液とともに、高吸水性合成樹脂からなるゲル化体を遊動可能な状態で収容し、前記容器の周面にシボ加工を施してある。
【0008】
かかる構成において、前記高吸水性合成樹脂からなるゲル化体を薬液とともに容器内に収容すると、該ゲル化体が薬液を吸水して膨潤し、体積が増大する。したがって、この体積が増大したゲル化体により見る角度によっては、吸液芯が隠蔽されて、吸液芯が見えることに起因する商品性の低下が抑制される。また、例えば自動車の車室内に設置した場合のように、自動車の発進停止、揺れにより容器が動くと、遊動自在なゲル化体が遊動することから、容器の内部の状態が千変万化し、見る者の視覚が刺激される。よって、見る角度によって吸液芯が隠蔽されて商品性の低下が抑制されることと、ゲル化体が遊動して容器の内部の状態が千変万化して視覚が刺激されることとが相俟って、揮散器の商品性は著しく向上する。
【0009】
また、薬液を高濃度で着色する必要もないことから、顔料の目詰まりによる揮散能力の低下もない。よって、揮散能力を低下させることなく、商品性の向上を図ることができる。
【0010】
また、前記容器の周面にシボ加工を施してある。したがって、容器の周面が半透明となって吸液芯の隠蔽度が高められるのみならず、内部のゲル化体が霞んで見えることにより、商品に柔らかな感じを与えることができる。
【0011】
また、請求項2記載の発明にあっては、前記ゲル化体を複数個収容してある。したがって、吸液芯の隠蔽度が高められて、商品性も高められる。
【0012】
また、請求項3記載の発明にあっては、前記ゲル化体を着色してある。したがって、容器が動かされる度にこの着色されたゲル化体が遊動して、見る者の視覚が刺激される。
【0013】
また、請求項4記載の発明にあっては、前記薬液を着色するとともに、前記ゲル化体をこの薬液とは異なる色に着色してある。したがって、容器が動かされると、この着色されたゲル化体が異なる色の薬液中で遊動して、見る者の視覚が強く刺激される。
【0014】
また、請求項5記載の発明にあっては、複数の各ゲル化体を各々異なる複数の色に着色してある。したがって、容器が動かされると、異なる色のゲル化体が遊動して、見る者の視覚が強く刺激される。
【0015】
また、請求項6記載の発明にあっては、前記容器の周面を多面形状としてある。したがって、容器の内部で遊動しているゲル化体を外部から見た際に、ゲル化体の動きが視覚上突飛的に変化するように感じられて、視覚が刺激される。
【0016】
また、請求項7記載の発明にあっては、前記吸液芯は、合成樹脂製異形モノフィラメント状体からなる。この合成樹脂製異形モノフィラメント状体からなる吸液芯は吸液性能がフェルト芯よりも優れ、細い径であってもこれより遥かに太い径のフェルト芯よりも多量に吸液し得る。したがって、この合成樹脂製異形モノフィラメント状体からなる吸液芯を用いることにより、ゲル化体による吸液芯の隠蔽度が相対的に高められる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明は、容器内に薬液とともに、高吸水性合成樹脂からなるゲル化体を遊動可能な状態で収容するようにした。よって、薬液を吸水して膨潤し体積が増大したゲル化体により、吸液芯が隠蔽されて、吸液芯が見えることに起因する商品性の低下を防止することができる。また、自動車の車室内に設置した場合のように、自動車の発進停止、揺れにより容器が動くと、ゲル化体が遊動することから、容器の内部の状態が千変万化し、見る者の視覚が刺激される。よって、見る角度によっては吸液芯が隠蔽されて商品性の低下が抑制されることと、ゲル化体が遊動して容器の内部の状態が千変万化して視覚が刺激されることとが相俟って、揮散器の商品性を著しく向上させることができる。また、薬液を高濃度で着色する必要もないことから、顔料の目詰まりによる揮散能力の低下もなく、よって、揮散能力を低下させることなく、商品性の向上を図ることができる。また、容器の周面にシボ加工を施すようにしたことから、吸液芯の隠蔽度が高められるのみならず、内部のゲル化体が霞んで見えることにより、商品に柔らかな感じを与えて商品性を高めることができる。
【0018】
また、ゲル化体を複数個収容し、あるいはゲル化体を着色し、若しくは薬液を着色するとともに、ゲル化体をこの薬液とは異なる色に着色するようにした。よって、容器が動かされると、この着色されたゲル化体が異なる色の薬液中で遊動して、見る者の視覚を強く刺激することができ、これにより商品性の向上を図ることができるのみならず、装飾品として機能させることができる。このとき、吸液芯はゲル化体により隠蔽されることから、薬液の着色濃度を濃くする必要はなく、よって、薬液に含まれている顔料による吸液芯の目詰まりも少なく、揮散の揮散能力が低下することもない。
【0019】
また、容器の周面を多面形状とししたことから、容器の内部で遊動しているゲル化体を外部から見た際に、ゲル化体の動きが視覚上突飛的に変化するように感じられて、視覚が刺激され、これにより装飾品としての機能を高めることができる。
【0020】
また、吸液芯を合成樹脂製異形モノフィラメント状体としたことから、吸液芯が細い径であっても所定の吸液能力を確保することができ、よって、所定の旧液能力を確保しつつゲル化体による吸液芯の隠蔽度を相対的に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図に従って説明する。すなわち、図1に示すように、本実施の形態にかかる揮散器1は、透明プラスチック製の容器2を有しており、このこの容器2は、底面部3、周面部4及び開口5aを備えた首部5を一体的に有している。周面部4には、斜状に上下方向へ延在する複数の凹条6が等間隔に設けられているとともに、各凹条6間には容器の外部方向へ湾曲状に膨出した断面形状からなる凸面部7が形成されている。
【0022】
前記首部5には、捨て蓋9が螺合されているが、この捨て蓋9は使用開始に際して除去される。前記開口5aには、図2に示すように、中蓋10が嵌着されており、該中蓋10の中心部には、吸液芯11の一端部が嵌着されている。この吸液芯11は、前記中蓋10の中心部に嵌着された大径部11aと、この大径部11aに上端部を結合されて下端部が容器2の底面部3に接触する小径部11bとで構成されている。そして、大径部11aは、ポリエチレン粒子の焼結体やポリエステル繊維を接着剤等で集束結合したのもから構成されている。また、小径部11bは、ポリアセタール、ナイロン、ポリオレフィン等の熱可塑性合成樹脂よりなる異形モノフィラメント(実開昭63−166243号公報参照)から構成され、その横断面形状と相似形のダイスを用いて押出成形機により成形したものである。
【0023】
前記首部5の周部には、濾紙ホルダ12が配置されており、この濾紙ホルダ12上には濾紙13が載置されている。そして、使用開始に際して前記捨て蓋9を除去することにより、吸液芯11の大径部11aが濾紙13の中央部に接触するように構成されている。
【0024】
また、濾紙13の上部には外蓋14が配置されている。この外蓋14の上面には、複数の揮散口14aが形成されており、また周部下端には突縁部14bが形成されている。そして、この突縁部14bを容器2の周面4の上部に形成された凹部2aに係止させることにより、外蓋14は容器2に結合されている。
【0025】
前記容器2の内部には、芳香剤、消臭剤、防黴剤、防虫剤等の揮散して所定の薬効を発生する薬液15が収容されており、この薬液15中に前記吸液芯11の小径部11bが浸漬されている。さらに、容器2内には薬液15とともに複数個のゲル化体16が収容されている。
【0026】
このゲル化体16は、高吸水性合成樹脂であって、例えば、デンプン、セルロース等の多糖類に、水溶性又は加水分解により水溶性になる重合性単量体、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸塩、メタアクリル酸塩、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタアクリル酸アミド、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、マレイン酸、スルホン化スチレン、ポリビニルビリジンなど、又はこれらのオリゴマー若しくはコオリゴマーをグラフト重合させた親水性ポリマー及びクラフト重合後必要に応じて加水分解した親水性ポリマー、又はポリエチレンキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリスチレン、ポリビニルビリジン、ポリアクリル酸アミド、ポリメタクリル酸塩、ポリアクリル酸アミド等の親水性ポリマーを架橋剤によって三次元的に重合させたものなどが用いられる。
【0027】
また、この実施の形態においてはゲル化体16は所定の色(例えば、ピンク)に着色されるべく顔料を含んでおり、一方前記薬液15は無色透明である。
【0028】
以上の構成にかかる本実施の形態において、前記高吸水性合成樹脂からなるゲル化体16を薬液15とともに容器2内に収容すると、該ゲル化体16が薬液15を吸水して膨潤し、図2に示すように体積が増大する。したがって、この体積が増大したゲル化体16により見る角度によっては、吸液芯11の小径部11bが隠蔽されて、吸液芯11の小径部11bが見えることに起因する商品性の低下が防止される。
【0029】
また、例えば自動車の車室内に設置した場合のように、自動車の発進停止、揺れにより容器2が動くと、着色された複数個のゲル化体16が遊動することから、容器2の内部の状態が千変万化し、見る者の視覚が刺激される。よって、見る角度によっては吸液芯11の小径部11bが隠蔽されて商品性の低下が抑制されることと、ゲル化体16が遊動して容器2の内部の状態が千変万化して視覚が刺激されることとが相俟って、揮散器1の商品性は著しく向上する。
【0030】
また、薬液15を高濃度で着色する必要もないことから、吸液芯11に顔料が目詰まりすることななく、この目詰まりによる揮散能力の低下もない。よって、揮散能力を低下させることなく、商品性の向上を図ることができる。
【0031】
しかも、本実施の形態においては、容器2の周面部4は、前記複数の凹条6と凸面部7が形成されて多面形となっていることから、容器2の内部で遊動しているゲル化体16を外部から見ると、ゲル化体16の動きが視覚上突飛的に変化するように感じられて、視覚が刺激される。さらに、本実施の形態においては、容器2の周面部4にシボ加工も施されていることから、容器2の周面部4が半透明となって吸液芯11の小径部11bの隠蔽度が高められる。また、内部のゲル化体16が霞んで見えることにより、揮散器1に柔らかな感じを付加することができ、これによっても商品性の向上を図ることができる。
【0032】
加えて、本実施の形態においては、吸液芯11の小径部11bは、合成樹脂製異形モノフィラメント状体からなり、この合成樹脂製異形モノフィラメント状体からなる吸液芯11の小径部11bは吸液性能がフェルト芯よりも優れ、細い径であってもこれより遥かに太い径のフェルト芯よりも多量に吸液し得る。したがって、この合成樹脂製異形モノフィラメント状体からなる小径の吸液芯11を用いることにより、ゲル化体16による吸液芯11の隠蔽度を相対的に高めることができる。
【0033】
図3は、本発明の他の実施の形態を示すものであり、吸液芯17は合成樹脂製異形モノフィラメント状体ではなく、フェルト等の一般的な芯材で構成されている。また、容器2は透明ガラス製であって、周面部4はすりガラス状であり、外蓋14は前述した実施の形態と同様に、薬液15が外部に揮散可能な構造を備えている。
また、薬液15は所定の色に着色されており、複数個のゲル化体16はこの薬液15とは異なる色に着色されている。
【0034】
したがって、この実施の形態において揮散器1が動かされると、着色されたゲル化体16が異なる色の薬液15中で遊動して、見る者の視覚が強く刺激される。よって、揮散器1の商品性が一層高められるとともに、装飾品として機能させることができる。
【0035】
なお、この実施の形態においては、薬液15が着色されていはいるが、吸液芯17はゲル化体16により隠蔽されることから、薬液15の着色濃度を濃くする必要はない。よって、薬液15に含まれている顔料による吸液芯11の目詰まりも少なく、揮散の妨げとなることはない。
【0036】
また、実施の形態においては、同一色で着色された複数個のゲル化体を用いるようにしたが、各々異なる色で着色された複数のゲル化体16を容器2に収容したり、各ゲル化体16を複数色で着色するようにしてもよい。これにより、見る者の視覚が一層刺激されて、商品性が高まるのみならず、装飾品としての機能も高めることができる。さらに、実施の形態においては、複数個のゲル化体16を容器2内に収容するようにしたが、例えば吸液芯の周部を取り囲むようなドーナッツ型のゲル化体を1個のみ、薬液とともに容器内に収容するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(A)は本発明の一実施の形態にかかる揮散器の正面図、(B)は一部断面側面図である。
【図2】同揮散器の垂直断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態にかかる揮散器の正面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 揮散器
2 容器
15 薬液
16 ゲル化体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を透視可能な容器内に収容された薬液を、該薬液に浸漬された吸液芯を介して導出し、外部に揮散させる揮散器において、
前記容器内に前記薬液とともに、高吸水性合成樹脂からなるゲル化体を遊動可能な状態で収容し、前記容器の周面にシボ加工を施したことを特徴とする揮散器。
【請求項2】
前記ゲル化体を複数個収容したことを特徴とする請求項1記載の揮散器。
【請求項3】
前記ゲル化体を着色したことを特徴とする請求項1又は2記載の揮散器。
【請求項4】
前記薬液を着色するとともに、前記ゲル化体をこの薬液とは異なる色に着色したことを特徴とする請求項1又は2記載の揮散器。
【請求項5】
前記複数個のゲル化体を各々異なる複数の色に着色したことを特徴とする請求項2記載の揮散器。
【請求項6】
前記容器の周面を多面形状としたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の揮散器。
【請求項7】
前記吸液芯は、合成樹脂製異形モノフィラメント状体からなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の揮散器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−119477(P2008−119477A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317894(P2007−317894)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【分割の表示】特願平10−14819の分割
【原出願日】平成10年1月9日(1998.1.9)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】