説明

揮散器

【課題】コスト高を招くことなく、液漏れを防止することができる揮散器を提供する。
【解決手段】容器体11内の液状薬剤2を吸い上げる吸上芯17を容器体11の口部12の開口部13に差し込んでセットする。口部12にキャップ14を装着して開口部13を閉鎖する。キャップ14に、吸上芯17が差し込まれる脆弱部37を設定し、脆弱部37に吸上芯17を差し込んで差込穴41を形成した状態で当該脆弱部37の一部が吸上芯17の周面42に密着する舌片43を形成可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状薬剤を揮散する揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、香料及び殺虫剤等の液状薬剤を揮散する揮散器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この揮散器は、香料や殺虫剤が収容された容器と、該容器の口部を閉鎖する蓋と、該蓋の差し込み穴に差し込まれる拡散ピンとを備えている。
【0004】
該拡散ピンは、前記差し込み穴に差し込まれる吸液性の軸と、該軸の上端に設けられた球状の頭部とによって構成されており、前記容器内の殺虫剤を前記軸で吸い上げて前記頭部より揮散できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3056251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の揮散器にあっては、容器の口部における開口部を閉鎖する蓋に、予め差し込み穴が開設されている。
【0007】
このため、この差し込み穴の内径寸法が差し込みピンの外形寸法より大径の場合、あるいあは差し込みピンの外径形状と差し込み穴の内径形状とが異なる場合には、差し込みピンの外周部に隙間が形成される。すると、容器転倒時に、その隙間から液状薬剤が漏れてしまう。
【0008】
このような不具合を解消する為には、前記差し込み穴の内径と前記差し込みピンの外形とを、高い精度で加工しなければならず、製造コストの増加要因となり得る。
【0009】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、コスト高を招くことなく、液漏れを防止することができる揮散器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の揮散器にあっては、容器体内の液状薬剤を吸い上げる吸上芯を前記容器体の口部の開口部に差し込んでセットする揮散器において、前記口部に装着して前記開口部を閉鎖する閉鎖部材を備え、該閉鎖部材に、前記吸上芯が差し込まれる脆弱部を設定し、該脆弱部に前記吸上芯を差し込んで差込穴を形成した状態で当該脆弱部の一部が前記吸上芯の周面に密着する舌片を形成可能に構成した。
【0011】
すなわち、液状薬剤が収容された容器体の口部には、閉鎖部材が装着されており、当該口部の開口部は、前記閉鎖部材によって閉鎖される。
【0012】
このため、当該揮散器を配送等する際には、前記閉鎖部材で閉鎖された前記口部からの液状薬剤の不用意な漏れが防止される。
【0013】
一方、前記容器体に吸上芯をセットする際に、前記閉鎖部材に設定された脆弱部に前記吸上芯を差し込む。すると、当該脆弱部が破綻して差込穴が形成され、前記吸上芯が挿通される。
【0014】
このとき、前記脆弱部に前記吸上芯を差し込んだ状態では、当該脆弱部の一部が前記吸上芯の周面に密着する舌片を形成する。このため、前記吸上芯の周面には、前記脆弱部の一部が構成する舌片により水密性が維持される。
【0015】
また、請求項2の揮散器においては、前記閉鎖部材を、前記口部に内嵌する筒状の周壁と、該周壁の下端を連設する底面とで構成し、前記底面に前記脆弱部を設定した。
【0016】
すなわち、前記閉鎖部材は、前記口部に内嵌する筒状の周壁と、該周壁の下端を連設する底面とで構成されており、該底面に、前記吸上芯が差し込まれる前記脆弱部が設定されている。
【0017】
このような構造において、前記吸上芯を前記底面に差し込んだ際には、前記周壁が外側へ広がろうとする。しかし、当該周壁は、前記口部に内嵌されており、外方への広がりが阻止される。これにより、開設された差込穴の不用意な拡張が防止され、前記脆弱部の一部が形成する前記舌片の前記吸上芯周面への密着性が維持される。
【0018】
さらに、請求項3の揮散器では、前記閉鎖部材の前記周壁の内側面に、挿通する前記吸上芯の前記周面に密接する凸条を全周に渡って延設した。
【0019】
すなわち、前記閉鎖部材の前記周壁の内側面には、挿通する前記吸上芯の前記周面に密接する凸条が全周に渡って延設されており、該凸条が前記吸上芯の前記周面に部分的に密着することで、当該吸上芯の挿入が容易に行われ、かつ液漏れが防止される。
【0020】
このため、前記舌片のみの場合と比較して、水密性の向上および吸上芯の不用意な抜け防止効果が向上する。
【0021】
加えて、請求項4の揮散器にあっては、前記吸上芯が差し込まれる前記脆弱部を、その中心部へ向かうに従って薄肉となるように設定した。
【0022】
すなわち、前記脆弱部は、前記吸上芯が差し込まれる中心部へ向かうに従って薄肉に形成されており、当該中心部への前記吸上芯の差込が容易に行われる。
【0023】
また、この薄肉に形成された脆弱部の中心部に前記差込穴が形成された際には、該差込穴の外周部に形成される前記舌片は、先端へ向かうに従って薄肉となる。このため、舌片の先端部が厚肉に形成される場合と比較して、柔軟性が高まり、吸上芯周面への密着容易性が高められる。
【0024】
また、請求項5の揮散器においては、前記吸上芯が差し込まれる前記脆弱部の部位に中央部で溝状の線が交差した*状の昜破断部を設けた。
【0025】
すなわち、前記吸上芯が差し込まれる前記脆弱部の部位には、中央部で溝状の線が交差した*状の昜破断部が設けられているため、前記舌片の形成が容易となる。また、舌片の形状が統一され、舌片が不均一となる事に起因した液漏れが防止される。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明の請求項1の薬剤容器にあっては、液状薬剤が収容された容器体の口部に閉鎖部材を装着することで、当該口部の開口部を前記閉鎖部材で閉鎖することができる。
【0027】
このため、当該揮散器を配送等する際には、前記閉鎖部材で閉鎖された前記口部からの液状薬剤の不用意な液漏れを防止することができる。
【0028】
一方、前記容器体に吸上芯をセットする際に、前記閉鎖部材に設定された脆弱部に前記吸上芯を差し込む。すると、当該脆弱部が破綻して差込穴が形成され、前記吸上芯が挿通される。
【0029】
このとき、前記脆弱部に前記吸上芯を差し込んだ状態では、当該脆弱部の一部が前記吸上芯の周面に密着する舌片を形成する。このため、前記吸上芯の周面には、前記脆弱部の一部が構成する舌片が密着することで、水密性を維持することができる。
【0030】
このため、容器における口部の蓋に予め開設された差し込み穴へ差し込みピンを差し込む構造上、差込ピンの外周部に形成される間隙より液漏れが生じないように、差し込み穴の内径寸法と差し込みピンの外形寸法とを精度良く加工しなければならなかった従来と比較して、加工時のコスト高を招くことなく、転倒時等での液漏れを防止することができる。
【0031】
また、請求項2の揮散器においては、前記閉鎖部材を、前記口部に内嵌する筒状の周壁と、該周壁の下端を連設する底面とで構成し、該底面に、前記吸上芯が差し込まれる前記脆弱部を設定した。
【0032】
このような構造において、前記吸上芯を前記底面に差し込むと、前記周壁が外側へ広がろうとする。しかし、当該周壁は、前記口部に内嵌されており、外方への広がりが阻止される。これにより、開設された差込穴の不用意な拡張が防止され、前記脆弱部の一部が形成する前記舌片の前記吸上芯周面への密着性を維持することができる。
【0033】
このため、例えば前記周壁が前記口部に外嵌する場合と比較して、より水密性を高めることができるとともに、前記吸上芯が多少傾倒された場合であっても間隙の形成を防止することができる。
【0034】
さらに、請求項3の揮散器では、前記閉鎖部材の前記周壁の内側面に、挿通する前記吸上芯の前記周面に密接する凸条が全周に渡って延設されており、該凸条が前記吸上芯の前記周面に部分的に密着することで、当該吸上芯の挿入を容易に行え、かつ液漏れを防止することができる。
【0035】
このため、前記舌片のみの場合と比較して、水密性の向上および吸上芯の不用意な抜け防止効果が向上する。
【0036】
加えて、請求項4の揮散器にあっては、前記脆弱部を、前記吸上芯が差し込まれる中心部へ向かうに従って薄肉に形成したため、当該中心部への前記吸上芯の差込を容易に行うことができる。
【0037】
また、この薄肉に形成された脆弱部の中心部に前記差込穴が形成された際には、該差込穴の外周部に形成される前記舌片は、先端へ向かうに従って薄肉となる。
【0038】
このため、舌片の先端部が厚肉に形成される場合と比較して、柔軟性が高まり吸上芯周面への密着性を高めることができ、水密性の向上を図ることができる。
【0039】
また、請求項5の揮散器においては、前記吸上芯が差し込まれる前記脆弱部の部位に、中央部で溝状の線が交差した*状の昜破断部を設けたので、前記舌片の形成が容易となる。また、舌片の形状を統一でき、舌片が不均一となる事に起因した液漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図2】同実施の形態の要部を拡大した断面図である。
【図3】同実施の形態の断面図である。
【図4】同実施の形態の構成部品を示す図で、(a)は正面図であり、(b)は、側面から見た要部の断面図である。
【図5】(a)は、本発明の第二の実施の形態を示す図であり、(b)は、本発明の第三の実施の形態を示す図である。
【図6】(a)は、本発明の第四の実施の形態を示す図で、(b)は、本発明の第五の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(第一の実施の形態)
【0042】
以下、本発明の第一の実施の形態を図に従って説明する。
【0043】
図1は、本実施の形態にかかる揮散器1を示す図であり、該揮散器1は、液状薬剤2を揮散するものである。
【0044】
この液状薬剤2としては、芳香剤、消臭剤、防虫剤、殺虫剤、忌避剤等が挙げられ、本実施の形態では、前記液状薬剤2が芳香剤で構成された場合を例に挙げて説明する。
【0045】
この揮散器1は、前記液状薬剤2が収容された容器体11と、該容器体11の口部12の開口部13に内嵌され当該開口部13を閉鎖する閉鎖部材としてのキャップ14と、該キャップ14の上部に配置されるパッキン15と、前記口部12に装着される蓋体16と、前記容器体11にセットされる吸上芯17と、該吸上芯17の基端部に取り付けられる揮散部18とによって構成されている。
【0046】
前記容器体11は、無色透明のガラス瓶によって構成されており、内部には、前記液状薬剤2が収容されている。この容器体11には、上方へ向けて延出した円筒状の前記口部12が一体形成されており、該口部12の外周面には、雄ねじ部21が形成されている。この口部の端部には、開口部13が形成されており、該開口部13によって内部と外部とが連通している。
【0047】
この口部12の前記開口部13には、図2にも示すように、前記キャップ14が装着されるように構成されている。該キャップ14の素材としては、弾性及び可塑性を有するプラスチック、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体などが挙げられる。
【0048】
このキャップ14は、前記口部12の前記開口部13に内嵌される有底筒状の内嵌部31が形成されており、使用前状態では、当該キャップ14によって前記口部12の前記開口部13を閉鎖し、前記液状薬剤2の漏れを防止できるように構成されている。
【0049】
この内嵌部31は、前記口部12に内嵌する筒状の周壁35と、該周壁35の下端を連設する底面36とからなり、該底面36は、他の部位と比較して薄肉に形成され、その中心部へ向かうに従って薄肉となるように構成されている。これにより、当該底面36には、脆弱部37が形成されている。
【0050】
前記吸上芯17が差し込まれる前記脆弱部37の中心部には、中央部で溝状の線が交差した*状の昜破断部が設けられている(図示省略)。
【0051】
この底面36は、図3に示したように、前記吸上芯17が差し込まれた際に、前記昜破断部の中心から放射状に破綻して開口し差込穴41が開設されるように構成されており、破綻した底面36部分は、図3にも示すように、前記吸上芯17の周面42の全周に渡って密着する舌片43を形成するように構成されている。前記内嵌部31の周壁35内面には、三本のリング条45,・・・が周方向全域に渡って延設されており、各リング条45,・・・は、前記吸上芯17の周面42に密着するように構成されている。
【0052】
前記内嵌部31の前記周壁35の上縁からは、側方へ向けて鍔部51が延出しており、該鍔部51は、円形リング状に形成されている。該鍔部51は、図2に示したように、前記内嵌部31を前記口部12の前記開口部13に内嵌した状態で、前記口部12の上端に密着するように構成されており、この鍔部51の上部には、円形リング状に形成された合成樹脂製の前記パッキン15が載置されるように構成されている。前記キャップ14が装着されるとともに前記鍔部51に前記パッキン15が載置された前記口部12には、前記蓋部16が装着されるように構成されている。
【0053】
この蓋部16も合成樹脂で形成されており、当該蓋部16は、図1に示したように、円筒状の筒部61と、該筒部61の上縁より内側へ向けて延出した天部62とによって一体形成されている。該天部62の中央には、円形穴63が開設されており、該円形穴63は、前記吸上芯17を挿通できる大きさに形成されている。
【0054】
前記円筒部61の外周面には、図1に示したように、等間隔をおいた四ヶ所に円形状の平坦部71,・・・が形成されており、対向位置に配置された平坦部71,71を指で摘めるように構成されている。前記円筒部61の内周面には、図2に示したように、前記口部12の雄ねじ部21と螺合する雌ねじ部72が形成されており、前記平坦部71,71を摘んだ指で当該蓋部16を回転操作することで、当該蓋部16を前記口部12に螺着できるように構成されている。このとき、当該蓋部16の前記天部62と前記キャップ14の前記鍔部51とには、前記パッキン15が密着するように構成されており、水密性を確保できるように構成されている。
【0055】
前記吸上芯17は、図4に示すように、円柱状に形成された木材などの剛性を有する多孔質の素材で構成されており、形成された多数の細い管による毛細管現象により前記容器体11内の前記液状薬剤2を吸い上げ可能に構成されている。この吸上芯17の先端部には、先端へ向かうに従って縮径した先細り形状の突刺部81が形成されており、前記キャップ14の前記底面36を突き通して前記差込穴41を形成できるように構成されれている。これにより、この吸上芯17を前記容器体11に設けられた前記キャップ14の前記差込穴41に差し込むことで、当該吸上芯17を前記容器体11にセットできるように構成されている。
【0056】
前記吸上芯17の周面42には、当該吸上芯17を前記差込穴41に差し込む際に該差込穴41の内縁91との間に間隙92を形成する逃がし溝93が形成されている。この逃がし溝93は、前記吸上芯17の長さ方向に延在する直線状に形成されており、前記逃がし溝93は、当該吸上芯17の先端側に形成されている。これにより、該吸上芯17の先端側には、前記逃がし溝93が形成された溝有領域95が設定されており、当該吸上芯17の基端側には、前記逃がし溝93を不具備な溝無領域96が設定されている。
【0057】
前記吸上芯17の前記溝無領域96は、図1に示したように、当該吸上芯17を前記差込穴41に差し込んで当該吸上芯17の先端が前記容器体11の底面101に達したセット状態102において、当該溝無領域96が前記差込穴41の前記内縁91の高さ位置に達するように、その範囲が設定されている。
【0058】
そして、この吸上芯17の基端部には、図4にも示したように、当該吸上芯17で吸い上げた前記液状薬剤2を揮散する為の前記揮散部18が取り付けられている。該揮散部18は、円筒状に加工された木材によって形成されており、前記液状薬剤2を吸収するとともに揮散できるように構成されている。
【0059】
この揮散部18の下部には、円形の挿通穴111が外周面112から内周面113へ貫通されており、該挿通穴111には、前記吸上芯17の基端部が挿通されている。この挿通穴111に対向する前記揮散部18の前記内周面113の部位には、円形の内嵌穴114が凹設されており、該内嵌穴114には、前記挿通穴111を挿通した前記吸上芯17の基端部が内嵌された状態で固定されている。
【0060】
この揮散部18は、円筒形状の一端が正面部121を構成しており、その他端が背面部122を構成している。また、前記外周面112の一側部が左側部123を構成しており、他方が右側部124を構成している。前記正面部121及び前記背面部122のいずれでも良いが、本実施の形態では、前記正面部121を例えば利用者側である前方へ向けた状態で、前記逃がし溝93が側方、具体的には左方へ向くように当該逃がし溝93が配置されている。
【0061】
以上の構成にかかる本実施において、液状薬剤2が収容された容器体11の口部には、閉鎖部材としてのキャップ14が装着されており、当該口部12の開口部13は、前記キャップ14によって閉鎖されている。
【0062】
このため、当該揮散器1を配送等する際には、前記キャップ14で閉鎖された前記口部12からの液状薬剤2の不用意な液漏れを防止することができ、搬送時等での不具合を防止することができる。
【0063】
一方、前記容器体11に吸上芯17をセットする際に、前記キャップ14の底面36に設定された脆弱部37に前記吸上芯17を差し込む。すると、当該脆弱部37が破綻して差込穴41が形成され、前記吸上芯17が挿通される。このとき、前記底面36は、その中心部へ向かうに従って薄肉に形成されており、前記吸上芯17は、その中心部が縮径した先細り形状に形成されている。このため、前記吸上芯17の先端部を前記キャップ14の底面36に容易に差し込むことができる。
【0064】
また、このとき前記脆弱部37に前記吸上芯17を差し込んだ状態では、当該脆弱部37の一部が前記吸上芯17の周面42に密着する舌片43を形成する。このため、前記吸上芯17の周面42には、前記脆弱部37の一部が構成する前記舌片43が密着することで、水密性を維持することができる。
【0065】
このため、容器における口部の蓋に予め開設された差し込み穴へ差し込みピンを差し込む構造上、差込ピンの外周部に形成される間隙より液漏れが生じないように、差し込み穴の内径寸法と差し込みピンの外形寸法とを精度良く加工しなければならなかった従来と比較して、加工時のコスト高を招くことなく、転倒時等での液漏れを防止することができる。
【0066】
このとき、前記吸上芯17が差し込まれる前記脆弱部37の部位には、中央部で溝状の線が交差した*状の昜破断部が設けられており、前記脆弱部37は、当該昜破断部を中心として放射状に破綻することで、前記舌片43の形成が容易となる。
【0067】
また、各舌片43,・・・の形状が統一され、各舌片43,・・・が不均一となる事に起因した液漏れを未然に防止することができる。
【0068】
さらに、前記キャップ14の内嵌部31を、前記口部12に内嵌する筒状の周壁35と、該周壁35の下端を連設する底面36とで構成し、該底面36に、前記吸上芯17が差し込まれる前記脆弱部37を設定した。
【0069】
このような構造において、前記吸上芯17を前記底面36に差し込むと、前記周壁35が外側へ広がろうとする。しかし、当該周壁35は、前記口部12に内嵌されており、外方への広がりが阻止される。これにより、開設された差込穴41の不用意な拡張が防止され、前記脆弱部37の一部が形成する前記舌片43の前記吸上芯17周面42への密着性を維持することができる。
【0070】
このため、例えば前記周壁35が前記口部12に外嵌する場合と比較して、より水密性を高めることができるとともに、前記吸上芯17が多少傾倒された場合であっても間隙の形成を防止することができる。
【0071】
そして、前記脆弱部37は、前記吸上芯17が差し込まれる中心部へ向かうに従って薄肉に形成されており、当該中心部への前記吸上芯17の差し込みを容易に行うことができる。
【0072】
また、この薄肉に形成された脆弱部37の中心部に前記差込穴41が形成された際には、該差込穴41の外周部に形成される前記舌片43は、先端へ向かうに従って薄肉となる。
【0073】
このため、この舌片43の先端部が厚肉に形成される場合と比較して、柔軟性が高まり吸上芯17周面42への密着性を高めることができ、水密性の向上を図ることができる。
【0074】
一方、前記キャップ14の前記周壁35の内側面には、挿通する前記吸上芯17の前記周面42に密接する凸条としてのリング条45,・・・が全周に渡って延設されている。
【0075】
このため、このリング条45,・・・が前記吸上芯17の前記周面42に部分的に密着することで、当該吸上芯17の挿入を容易とし、かつ液漏れを防止することができる。
【0076】
なお、本実施の形態では、前記吸上芯17の先端部に設けられた突刺部81の斜面形状が丸みを帯びた場合を例に挙げて説明したが、この形状に限定されるものではない。
【0077】
(第二の実施の形態)
【0078】
すなわち、図5の(a)に示したように、前記吸上芯17の先端部に円錐状の突刺部201を設けても良い。
【0079】
(第三の実施の形態)
【0080】
さらには、図5の(b)に示したように、前記吸上芯17の先端部に円錐状に形成された突刺部211斜面の傾斜角度を第二の実施の形態の突刺部201の斜面の傾斜角度より緩いものとしても良い。
【0081】
この場合、突刺部211全体の長さを抑えることができる。
【0082】
なお、前述した各実施の形態では、前記吸上芯17の先端部を先細り形状にしたものを例に挙げて説明したが、これに限定されるもので無い。
【0083】
(第四の実施の形態)
【0084】
すなわち、図6の(a)に示すように、前記キャップ14の前記リング条45から前記舌片43にかけて、前記吸上芯17が錐状になっているものであっても良い。
【0085】
(第五の実施の形態)
【0086】
また、図6の(b)に示すように、前記リング条45が保持している部分の前記吸上芯17は円柱状であり、その下側であって前記舌片43が保持している部分の前記吸上芯17の形状が錐状になっているものであっても良い。
【符号の説明】
【0087】
1 揮散器
2 液状薬剤
11 容器体
12 口部
13 開口部
14 キャップ
35 周壁
36 底面
37 脆弱部
17 吸上芯
41 差込穴
42 周面
43 舌片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体内の液状薬剤を吸い上げる吸上芯を前記容器体の口部の開口部に差し込んでセットする揮散器において、
前記口部に装着して前記開口部を閉鎖する閉鎖部材を備え、
該閉鎖部材に、前記吸上芯が差し込まれる脆弱部を設定し、該脆弱部に前記吸上芯を差し込んで差込穴を形成した状態で当該脆弱部の一部が前記吸上芯の周面に密着する舌片を形成可能に構成したことを特徴とする揮散器。
【請求項2】
前記閉鎖部材を、前記口部に内嵌する筒状の周壁と、該周壁の下端を連設する底面とで構成し、前記底面に前記脆弱部を設定したことを特徴とする請求項1記載の揮散器。
【請求項3】
前記閉鎖部材の前記周壁の内側面に、挿通する前記吸上芯の前記周面に密接する凸条を全周に渡って延設したことを特徴とする請求項2記載の揮散器。
【請求項4】
前記吸上芯が差し込まれる前記脆弱部を、その中心部へ向かうに従って薄肉となるように設定したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の揮散器。
【請求項5】
前記吸上芯が差し込まれる前記脆弱部の部位に中央部で溝状の線が交差した*状の昜破断部を設けたことを特徴とする請求項1から4にいずれか記載の揮散器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−78533(P2013−78533A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221231(P2011−221231)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】