説明

揮発性塩を用いた可溶性デリバリーシステムの製造方法

可溶性デリバリーシステム形態の製造方法であって、(a)各成分を概ね乾燥した形態で結合する結合過程であって、前記成分が、希釈剤と、前記成分及び/または剤形の硬さを許容レベルまで高めるに十分な量の結合剤と、各剤形に効果的な量だけ含められるような量の活性薬剤と、除去されたとき形成された前記財形の表面積を大きくし重量を低下させるに効果的な量の揮発性塩とを含む、該結合過程と、(b)前記結合過程の生成物を処理して、概ね均一な混合物を形成する均一化過程と、(c)前記均一化過程の産物である粉末からデリバリーシステムを形成するデリバリーシステム形成過程と、(d)前記揮発性塩またはその成分を、前記デリバリーシステムから揮発させる揮発過程とを有することを特徴とする可溶性デリバリーシステム形態の製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
揮発性塩を用いた可溶性デリバリーシステムの製造方法 本発明は、限定を意図するものではないが特に医薬品、獣医学用の製品、農芸化学薬品のような活性薬剤の、剤形及び他の製剤形態を含む、可溶性デリバリーシステムに関する。本発明によるデリバリーシステムは、錠剤、カプセル、トローチ剤、顆粒剤、基質、微小球等を含み得る。本発明はまた、このようなデリバリーシステムの製造方法に関するものである。
薬物及び他の活性薬剤は、固形の剤形によって経口投与されるのが最も一般的である。それらの調合に使用される大規模な生産方式では、これらの剤形が、活性成分の他に他の添加物を含んでいることが通常必要である。これらの添加物は通常賦形剤として知られており、剤形(formulation)に含められて運搬処理(handling)を促進し、物理的な外観を強化し、安定性を改善し、更に活性薬剤の放出または吸収能力を強化する。添加物、即ち賦形剤は、希釈剤(diluent)、崩壊剤(disintegrant)、結合剤、及び潤滑剤を含み得る。
錠剤は、適当な希釈剤を含んでいるか、或いは含んでいない薬物又は他の活性物質を含む固形の剤形である。好適なのは、急速に分解又は分散する可溶性の錠剤である。
錠剤は通常、加圧、押し出し、凍結乾燥、又は成形により製造される。錠剤には、製造者及び患者の双方にとっての利点があり、前者にとっての利点には、例えば製造が簡単で経済的であること、安定であること、パッケージング、運搬、及び分配に便利であることがあり、後者にとっての利点には、例えば投与量が正確であること、かさばらないこと、口当たりがよいこと、及び投与が容易であることがある。錠剤は、最も一般的な固形の薬物送達用の剤形の1つである。以下の論文、Pogany et al.(1988)Acta Pharm.Hung.58:49-58:49-55;Doelker et al.(1988)Boll.Chim.Farm.127:37-49;Hiestand et al.(1977)J.Pharm.Sci.66:510-519;and Cooper et al.(1972)J.Pharm.Sci.61:1511-1555を参照されたい。
すりこみ錠剤(molded tablet)が通常小規模な操作によって製剤されるのに対し、圧縮錠剤は通常大規模生産方式で製造される。圧縮錠剤は通常特別なコーティングが施されておらず、顆粒形成手順のみで作られる少数の粉末のクリスタリン又は賦形剤から形成されるか、或いはそれと共に崩壊剤、放出制御用ポリマー、ワックス、潤滑剤、希釈剤、及び多くの場合着色剤を組み合わせて作られる。
圧縮錠剤は、その物理的性質の改変や、活性成分の放出の速度及び程度を変化させるといった様々な目的のために、様々な物質によってコーティングされ得る。糖衣が形成されても良い。このようなコーティングは、口当たりの悪い、又は臭いの悪い薬物をマスクするため、或いは湿度、光線、又は酸化に対する感受性のある物質を保護するのに役立つ。錠剤は、薄膜や、水溶性又は不溶性の物質の薄膜でカバーされても良い。腸溶剤は、胃液における溶解には耐性を有するが腸では崩壊する物質でコーティングされている。ポリマーコーティング材料又は他のコーティング材料を用いて、放出を制御しても良い。多重圧縮錠剤は、複数回の圧縮サイクルにより製造される。このような錠剤には、インレー錠剤、層状錠剤、及びプレスコーティング錠剤(press-coated)が含まれる。圧縮錠剤は、長時間かけて薬物を放出する徐放剤になるように製剤され得る。一般に、これらの錠剤は拍動放出性、或いは徐放性の錠剤である。
圧縮錠剤は、直接的な経口投与以外の目的で用いられる剤形に形成することもできる。このようなものの例には、限定を意図しないが、溶解錠、発泡錠、咀嚼錠又は分散錠、圧縮坐剤、ペッサリ又は挿剤、バッカル剤及び舌禍錠がある。
錠剤の製造において、錠剤のかさを、圧縮のための実用的なサイズに高めるために多数の希釈剤が用いられる。一般に使用される希釈剤には、燐酸2カルシウム、二水化物、燐酸3カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、噴霧乾燥ラクトース、α化でんぷん、微結晶性セルロース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥でんぷん、及び粉末の砂糖が含まれる。ある種の希釈剤、特にマンニトール、トレハロース、ラクトース、ソルビトール、スクロース及びイノシトールを用いて、咀嚼錠を製造することができる。微結晶セルロースは、噴霧乾燥洗浄、及び酸で処理されたセルロースから得られたセルロースの非繊維性形態であり、平均粒度が200〜100マイクロメートルの範囲内のいくつかのグレードのものが入手できる。
ある希釈剤の使用には何らかの欠点が伴う。このような欠点は、使用目的及び薬物との反応性に基づいて選択されなければならない。広く使用されているのはラクトースである。しかし、アミン塩基又はアミン塩とラクトースをアルカリ性潤滑剤の存在下で組み合わせると、活性薬剤のバイオアベイラビリティーが失われ、時間の経過につれ錠剤が退色(discolor)する。
含水ラクトースは流動可能であるという特性を有しておらず、その使用は湿式造粒法により製造される錠剤に限定される。無水ラクトース及び噴霧乾燥ラクトースの双方は良好な特性、即ち流動可能性及び圧縮可能性を有しており、錠剤に適切な分解剤及び潤滑剤が存在しているという条件の下で、直接圧縮において使用することができる。類似のトレハロースは、様々用途の製剤の加工のための大きな柔軟性を与える二水化物及び無水物状態の双方のアモルファス又はクリスタリン形態で入手可能である。
結合剤及び造粒剤を用いて、粉末の材料に粘着性を与えることができる。結合剤及び造粒剤は、圧縮の後錠剤を無傷の状態で残すことを確実にする粘着性を製剤に与えると共に、粒子を所望の硬さ及びサイズにすることにより自由に流動する性質、即ち流動性を改善する。
特定の成分の配合の選択は、仕上げられたデリバリーシステムが要求する物理的特性を含む様々なパラメータにより決定される。正確な配合は、多数の成分を含み、各成分は、特定の機能を与えると共に、所望の特定の特性を発揮するように選択される。このような作用は通常実験的に決定される。
錠剤の物理的特性は、強度、脆さ、寸法の均一性、重量、及び崩壊や分解にかかる時間について測定される。
硬さ又は引っ張り強さとも呼ばれる錠剤の強度は、錠剤の粘着性の測定値である。
硬さは、錠剤の、保管、輸送、及び取り扱い中の条件下における削り取り、摩耗、又は破損に対する耐性として定義される。硬さを測定するための装置には、例えばVector社製のHebeleinのような様々な装置がある。錠剤が硬すぎる場合には、所望の時間内に錠剤が崩壊せず、又は分解仕様に適合しない。錠剤が柔らかすぎる場合には、後続の処理、パッケージング、フィルムコーティング、輸送との間の取り扱いに耐えられない。
脆さとは、錠剤の削り取りや摩耗に抵抗する能力である。脆さは、錠剤をタンブリング(tumbling)し、重量の低下を求めることにより特定される。タンブリングは例えばRoche friabilatorにより機械的に、若しくは手によって行われ得る。
錠剤の厚さ、重量、崩壊時間、及び内容物の均一性は、比較的一定でなければならない。錠剤は、パッケージングの前にコーティングのような更なる処理を受け得る。様々なコーティング剤が従来より周知となっている。
急速に溶解可能な錠剤の必要性のために、発泡性の錠剤が開発され、錠剤において内部顆粒崩壊剤及び外部顆粒崩壊剤が使用されるようになったが、これらは調合及び使用が困難であることから限界が生じた。
本発明の第1の実施例によれば、可溶性デリバリーシステムの製造方法であって、 (a)各成分を概ね乾燥した形態で結合する結合過程であって、前記成分が、希釈剤と、前記成分及び/または剤形の硬さを許容レベルまで高めるに十分な量の結合剤と、各剤形に効果的な量だけ含められるような量の活性薬剤と、除去されたとき形成された前記財形の表面積を大きくし重量を低下させるに効果的な量の揮発性塩とを含む、該結合過程と、 (b)前記結合過程の生成物を処理して、概ね均一な混合物を形成する均一化過程と、 (c)前記均一化過程の産物である粉末からデリバリーシステムを形成するデリバリーシステム形成過程と、 (d)前記揮発性塩またはその成分を、前記デリバリーシステムから揮発させる揮発過程とを有することを特徴とする可溶性デリバリーシステムの製造方法が提供される。
揮発性塩は、この製剤から完全に揮発するべく適合され得る。別形態として、揮発性塩は、分解して揮発性成分、例えばガス及び非揮発性残基を形成するべく適合され得る。
好適な揮発性塩は、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、及びそれらの混合物から選択され得る。
分解して揮発性成分を形成する好適な塩は、製薬学的に許容できる重炭酸、好ましくは重炭酸ナトリウムである。
本発明は、粉末トレハロースの異なる物理的形態から、可溶性の錠剤、他の製剤、及びそれらの組み合わせを生成する方法を、その範囲に含む。トレハロースの形態は、結晶性である二水化トレハロース(TD)、ガラス様であるアモルファストレハロース(AT)、及びトレハロースの無水化物形態である無水アモルファストレハロース(AAT)及び無水結晶性トレハロース(ACT)を含む。
無水トレハロース粉末(AAT及びACT)は、アモルファス無水トレハロース、及び/又は結晶性無水トレハロースを含み得る。
固形剤形におけるトレハロースの使用については、US08/599277及びUS08/599273から優先権主張している、我々の共願であるPCT/GB97/00367に開示されており、これらの出願を本明細書と一体に参照されたい。
本明細書において、「トレハロース」とは、無水物、部分的に水化された、完全に水化されたトレハロース、及びそれらの混合物や水溶液のトレハロースの任意の物理的形態を意味する。
「無水トレハロース」とは、約2%未満の水を含むトレハロースの任意の物理的形態を意味する。トレハロースのこのような無水形態は、約0〜2%の水を含み、錠剤形成において有益な特性を保持している。アモルファストレハロース(AT)は、約2〜9%の水分を含み、TDは約9〜10%の水分を含む。
本発明は、崩壊剤を含むか或いは含まない剤形又は他のデリバリーシステムの形態をその範囲に含む。崩壊剤を含むデリバリーシステムは、急速に分解し、活性成分を水性の媒体に放出し得る。
本発明の好適実施例は、AAT及び/又はAACから成る錠剤であって、TD及び/又はATを含むか或いは含まず、所望に応じて他の賦形剤を含む錠剤のような剤形である。これらの成分を異なる比率で或いは異なる量を含む調剤により異なる物理化学的及び生理学的特性を備えた数多くの活性薬剤と共に使用するのに適する様々な特性を備えた剤形が得られる。トレハロース、特にその無水化物を使用することにより、カプセルを、カプセルシェルからの水の移動について安定化させることができる。
本発明の好適実施例においては、揮発性塩を混合した剤形が、揮発性塩又はその成分を除去するに十分な条件の下で、一定時間低圧又は熱に曝される。従って、得られた剤形は、同程度の寸法の固形錠剤と比較して、利用できる表面積が大きくなっており、重量が小さくなっており、且つ分解速度が高められている。この剤形は、本発明の範囲に含まれ得るものである。
本発明による好適な剤形又は他のデリバリーシステムは、錠剤、カプセル又はマイクロカプセルを含み得る。別実施例は、トローチ剤、顆粒剤、マトリクス及び微少球を含み得る。カプセル、マイクロカプセル、及び微少球の使用は、圧縮が不要で、揮発塩の除去が促進され、分解を含む水性媒地への接触に最適な表面積が得られるという点で特に好適である。
カプセルは、いくつかの形状の中の一つの形状をとり得る、ハードシェル又はソフトシェルを備えた固形の製剤形態である。カプセルは、滑らかな外形を有し、嚥下が容易で、不快な味をマスクできるという利点を備えた経口投与用の剤形として用いられ得る。ハードシェルカプセルは、シェルとその内容物とを有する。このシェルは、約12〜16%の水分を有し、多くの場合ゼラチンから成る。
又、シェルは通常半分に分かれた形態で提供される。この本体部(或いはカプセルの2つの主たる構成要素の一方)は、製剤の粒子で満たされ、次いで本体部にキャップを固定することによりカプセルが封止される。封止剤は使用してもしなくても良い。色素及び鎮静剤をシェルに用いても良い。
カプセルへの充填操作は、特定の良好な粉末の流動性が一定の均一性を保つために必要となるように、小さい規模で行われ得る。
大規模生産の場合は、粉末/剤形が、ドセイタ(dosator)又はタンピング装置(tamping device)によりカプセルの本体内に送り込まれる。
使用される粉末は、ドセイタを利用した方法を用いる場合、粘着性のプラグを形成しないため、自由に流動する必要はない。
カプセル充填装置としては、例えばZanasi等が利用可能である(Ridgeway K,(editor)Hand Capsules:Development and Technology London,Pharmaceutical Press 1987参照)。
通常結合剤として使用される材料には、でんぷん、ゼラチン、スクロース、グルコース、デキストロース、モラサス、及びラクトースのような糖が含まれる。
同様に使用される天然又は合成のガムには、アラビアゴム、ナトリウム、アルギン酸塩、アイリッシュモスの抽出物、粉末ガム、ガッティガム(ghatti gum)、アイサポールハスクス(isapol husks)の粘液、カルボキシメチルセルロース等が含まれ得る。従来より周知の他の適当な結合剤には、Ludipress、Kollidon(商標)及びHESのようなポリビニルピロリドン(PVP)が含まれており、これも添加され得る。Kollidon VA64(BASF)
は、好適なポリビニルピロリドンに基づく結合剤である。Ludipress(BASF)は、ラクトース及びPVPの市販の錠剤形成用の混合物である。Byco A(Croda)は、分子量が2500〜4000の分解ゼラチンである。HIS(NPBI)は、ヌクレオキシエチルでんぷんである。以下に説明するように、ある条件の下では、外形部において適当なレベルの硬さを得るために追加の結合剤が必要となる。
潤滑剤は、混合された材料がダイ及びパンチの表面に貼着することを防止すること、粒子間の摩擦を低減すること、錠剤のダイのキャビティーからの放出を促進すること、及び錠剤の粒子の流動を改善することを含む数多くの目的で使用される。
ここに開示する実施例においては、潤滑剤として好適な潤滑剤であるステアリン酸マグネシウムが繰り返し用いられた。従来より周知の他の適切な潤滑剤として、限定を意図しないが、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、硬化植物油、ルトロール(lutrol)、及びポリエチレングリコール(PEG)が含まれ、これらも使用され得る。錠剤の投与前又は投与後の崩壊又は分解を促進するために崩壊剤が加えられる。着色剤は、剤形の外観をよりきれいにし、かつ薬剤を識別できるようにする役目を果たし得る。
味付け剤は、甘みを咀嚼錠又は溶解性の錠剤に与えるために通常添加される。本発明は、任意の賦形剤又は適当な賦形剤の組み合わせを含んでいるか、或いは含んでいないトレハロースから形成された錠剤をその範囲に含む。
活性薬剤は通常医薬品、生物学的修飾因子、又は診断用成分である。医薬品には、限定を意図するものではないが、解熱薬、及び抗炎症薬、鎮痛薬、抗関節炎薬、鎮痙薬、抗鬱剤、抗精神病薬、トランキライザー、抗不安薬、麻酔性アンタゴニスト、抗パーキンソン氏病薬、コリン作用性アンタゴニスト、化学用法薬、免疫抑制薬、抗ウイルス剤、抗生物質、冠動脈、脳又は末梢血管血管拡張剤、ホルモン剤、避妊薬、抗血栓薬、利尿薬、抗高血圧剤、心血管薬、オピオイド(opioid)及びビタミンが含まれる。このような活性薬剤の詳細なパラメータ及び説明は、例えば、Physician’s Desk Reference(1995)49th ed.,Medical Economics DataProduction Co.New Jerseyに見られる。活性薬剤の量は、各錠剤ごとに「効果的な量」存在するように用いられる。従って効果的な量とは、錠剤が医師の処方により得られるものか、店頭で購入できるものかによって変わってくることがある1単位の投与量である。例えば、販売名Sudafed(登録商標)である鼻のうっ血除去薬は、店頭で販売されているものは1単位投与量あたり30mgの擬エフェドリン塩化水素酸を含むが、医師の処方箋により得られるものは、それを1単位投与量当たり60mg含む。
このような活性薬剤の化学的構造には、限定を意図するものではないが、脂質、有機物、タンパク質、合成ペプチド、天然ペプチド、ペプチド様物質、ペプチドホルモン、ステロイドホルモン、Dアミノ酸ポリマー、Lアミノ酸ポリマー、オリゴトール、多糖類、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、タンパク質−核酸ハイブリッド、抗原、及び小分子が含まれる。適当なタンパク質には、限定を意図するものではないが、酵素、生物薬剤、成長ホルモン、成長因子、インスリン、モノクローナル抗体、インターフェロン、インターロイキン、コラーゲン、及びサイトカインが含まれる。適当な有機物には、限定を意図するものではないが、ビタミン、神経伝達物質、抗菌剤、抗ヒスタミン剤、鎮痛薬、及び免疫抑制剤が含まれる。適当なステロイドホルモンには、限定を意図するものではないが、コルチコステロイド、エストロゲン、プロゲストロン、テストステロン、及びそれらの生理学的活性の類似物が含まれる。適当な核酸には、限定を意図するものではないが、DNA、RNA及びこれらの生理学的活性の類似物が含まれる。
診断用として一般に用いられる活性薬剤には、限定を意図するものではないが、色素、抗体、酵素、ホルモン、及び抗生物質が含まれる。
デリバリーシステムの製造方法は、粉末形態の、好ましくはトレハロースである結合剤、活性薬剤、不発性塩、適切な硬さの剤形を生成するに十分な量の追加の結合剤及び他の任意の賦形剤を徹底的に混合する過程を含む。製剤の調合の後、塩及びその揮発性成分を概ね完全に除去するに十分な条件の下で、一定時間周囲気圧を下げた状態に曝して塩を揮発させる。例えば、重炭酸アンモニウムの場合は、3mmの厚みの錠剤から塩を除去するために、60℃、1.5トルで2時間低圧乾燥すれば充分であった(実施例1参照)。最適な条件は実験的に決定されなければならないが、このような決定は本明細書に記載の指示に従い当業者は容易に行うことができるであろう。得られたRS錠剤は、他の類似のサイズの錠剤と比較して重量が低減している(最大50%)。
発泡性錠剤とは異なり、本発明のデリバリーシステムは、高湿度に曝されても分解され得ない。従って、この錠剤は発泡性錠剤固有の軽さや高速の溶解性を保持しているが、周囲条件の下で製造、取り扱い、及びパッケージングを行うことができ、これは発泡性錠剤には不可能なことである。又、発泡性錠剤とは異なり、これらの多孔性剤形は、水の存在の下で二酸化炭素を放出せず、従って咀嚼錠やトローチ錠に適する。多孔性剤形の大きな表面積のために、多孔性錠剤は固形状剤ほどの硬さは有していない。このような錠剤の脆さを改善するために、効果的な量の追加の結合剤が処理中に添加される。結合剤には、それが活性薬剤に適合するものであるという条件の下で任意のものが使用され得る。結合剤の効果的な量は、本明細書に示された指示に従って実験的に決定され得る。例えば、2〜5%のLidipress又はKollidon(商標)が効果的であることが分かった。
トレハロースを使用することにより、有利な特性を備えた剤形、例えば錠剤が製造される。アモルファスラクトースとは異なり、ATから作られた錠剤は、過剰な硬さを有しておらず、適切な条件の下で容易に分解する。更に、非還元糖としてのトレハロースは、アミノ基と反応せず、その優れた加水分解に対する耐性により還元された糖が生み出され、活性薬剤又は任意の賦形剤が易動性のアミノ基を含むという条件の下でその使用が可能となる。
この製剤は、更にATを希釈剤として含み得る。本明細書において、ATは水分を2%強(無水)10%(完全に水化されたもの)未満の量だけ含む、非晶性又は「ガラス質」のトレハロースを指す。ATはその中で乾燥された活性薬剤に安定性を与え、従って乾燥固形トレハロース製剤で活性薬剤を含むものは、容易に完全に適合な錠剤形成様賦形剤としてトレハロースと他の形態と共に錠剤形成され得る。製造されたAT製剤が十分に乾燥されて少なくとも非水化トレハロース及びATの混合物が形成された場合、乾燥固形賦形剤で活性薬剤を含むものを、賦形剤としての追加の無水トレハロースを使用することなく、直接錠剤形成に使用することができる。この場合エネルギー消費がより多くなるが、錠剤内に分子レベルで単体の活性薬剤が分散していることの利点が得られる。これはある状況においてはより望ましいものである。
従来より周知の任意の賦形剤は、この製剤に含められ得る。希釈剤以外の賦形剤には、限定を意図していないが、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、及び着香剤が含まれる。
任意の他の剤形又は製剤及び従来より周知の製造方法も使用することができる。例えば、本発明は、コーティングされた錠剤、咀嚼可能な錠剤、発泡剤、すりこみ錠剤、カプセル錠、マイクロカプセル錠、徐放剤、カプセル及びマイクロカプセルをその範囲に含む。製造される剤形は、ヒトを含む任意の動物において使用するに適するものである。ここに開示する錠剤は、ヒトが使用するためのものであるが、適切な獣医学用或いは農業科学用のデリバリーシステムは、以下の実施例を参照することにより当業者は容易に製造することができるであろう。
以下の実施例は本発明を説明するための例であり、本発明をこれに限定しようとするものではない。固形剤形製剤において使用される粉末は、優れた流動特性及び一定の分子サイズを有していなければならない。これらの試行の目的のために、粒子サイズは厳格に調整する必要はないが、粉末は調剤製造のために適する流動特性を有するように調合された。得られた流動特性は、困難を伴うことなく錠剤のダイに負荷できるものであることが分かった。粒子サイズをより均一にするためにふるいにかける工程を組み込むこともできる。バッチサイズがより大きくなる場合、成分を徹底的に混合できるようにすることが必須であり。又適切なふるいにかける手順を工夫することは当業者には容易であろう。
例1RS錠剤の製剤 抗菌性のペプチド66mg/mlを含むトレハロース43.4mg/mlの溶液のアプリコート30μlが、FTS乾燥機の10mlポリプロピレンの管(直径10mm)内で乾燥された。サンプルが、25°Cで、乾燥機内の棚の上に置かれ、この乾燥機は予め35℃に加熱されたものであった。チャンバ内の真空圧力が、10分間に亘って段階的に低減されて20トルとされた。この20トルの圧力が、更に30分間保たれ、その後更に低減されて、30ミリトルまで低減された。17時間が経過した後に、棚の温度が50℃に上昇された。この棚の温度は、3時間に亘って保たれ、その後に、このサイクルが停止された。生成されたアモルファストレハロース(AT)マトリクスは、発泡トレハロースガラス(FTG)内の固体が溶け込んだ溶液内に活性薬剤を含み、且つフリーズドライされた物質と同様の開いたプラグに類似の構造を有した。水分含有量は、概ね、1.
1から2%(重量%)であった。1.59%の水分含有量の通常のサンプルのDSCトレースは、トレハロースのアモルファス形状の83℃から84℃でのガラス遷移特性を示している(第1図)。
形成されたFTGは、15%の相対的湿度(RH)の調節された環境内で、ワーニングブレンダ内で細かい粉末に擦り潰されて、その後に、錠剤の製剤に用いられた。
全ての錠剤の組成は、次に、ゆっくりと、20mlのガラス瓶内で混合され、粉末の0.5gのアリコットが1.27cm(0.5インチ)のマネスティ(Monesty)タイプの型内に計り分けられた。錠剤は、1回の軽い位置決めの打撃で上部のポンチを叩くことによって形成され、次により強い1回の打撃が加えられた。この錠剤は、凸状の卵形の形状を有し、少なくとも3mmの厚みを有した。型から外されると、錠剤は、密閉されたガラス瓶、若しくはアンモニウム重炭酸塩を含む製剤のケース内に保管され、揮発性の塩を除去するために、2時間に亘って1.5トル、60℃で真空乾燥された。重炭酸アンモニウムを含む錠剤の2つのセットが作られ、一方のセットは真空にさらされて、揮発性の塩を除去され、もう一方のセットは、更に処理されることはなかった。錠剤の分解及び溶解が、ゆっくりと撹拌された水溶液内で実験された。錠剤化のために得られた組成と結果が、表1に表されている。表2は、錠剤の様々な物理的な特性に対する揮発性の塩を除去することの影響を表している。これらの結果は、揮発性の塩を含む錠剤の、分を単位とする分解時間(Distgn)と、分を単位とする溶解時間(Dissln)によって表されている。分解は、全体の溶解によって定義され、「no dis」は、分解がなかったことを表している。表1では、サンプル1は、吹き付け乾燥によって生成されたAATを用いて生成された錠剤のサンプルからなる。その他の全ての例も、FTGの時に生成されたAATを用いている。表1では、「amm.bicarb.」は、重炭酸アンモニウムを表しており、Lは、ルディプレス(Ludipress)を表しており、Mgステアリン酸塩が結合剤といて用いられている。ルディプレスは、93%の一水化ラクトースと6%のコリドン(Kollidon)の混合物からなる。従って、ブレンド1のようなある製剤では、ラクトースは、生成されたRS錠剤における主要な錠剤化賦形剤であり、錠剤の質及び特性の相異は、RS錠剤を製剤するために異なる賦形剤を用いることによっては観測されなかった。




表1及び表2に表された結果は、FTGもしくは吹きつけ乾燥製剤によって生成されたAATが、良好な錠剤を形成したことを表している。揮発性の塩を含む製剤を用いて形成された錠剤は、真空のもとで錠剤から揮発性の塩を除去した後に、改善された溶解速度を表した。揮発性の塩の50%(重量%)までが、適切な結合体を用いることによって錠剤内に組み込める。FTGは、概ね、吹きつけ乾燥製剤よりも良好な錠剤をもたらすが、ある特定の錠剤混合物を用いるという制約がある。これらの結果は、また、RS錠剤内で用いるために様々な結合剤が適しているということをも表している。ステアリンマグネシウムのみに対する結果が表されているが、安息香酸酸ナトリウムやステアリルフマル酸ナトリウムなどのその他の潤滑剤も、また、使用するのに適したものであることが明らかにされた。即ち、任意の潤滑剤がAATを用いて形成された錠剤に用いるのに適している。
例2錠剤の生成に対するAAT及びACTの使用 以下の例では、錠剤を生成するために、無水トレハロースのアモルファス及び結晶性の形が用いられている。無水トレハロースは、大気圧中で温度60℃で結晶性TDを加熱することにより、ACTが得られ、又、真空中で加熱することにより、AATが得られる。結晶性TDは、温度を55°、70°、及び80°の各々で、標準的な実験用のオーブンで24時間から72時間に亘って開放されたトレイでインキュベートされた。サンプルが、カールフィッシャー(Karl Fischer)分析法による水の含有量に関して検定され、選択されたサンプルが、更に、DSCによって分析された。驚くべきことに、全てのサンプルは、正確に55℃に加熱された状態で、0.1%から2%の範囲の水の含有量を表した。48時間に亘って70℃に加熱されたサンプルのEDSCトレースが、ACTの溶融温度のおよそ210℃から216℃において結晶の溶融を表した。サンプルの水の含有量は、0.33%であった。このエンドサームは、結晶性に無水化物のDSC分析で見られた、DTのより低い96°から101°での特性での溶融エンドサームとは異なる。
結晶性TDが、制限された1.5トルの圧力でのヘラウス(Heraus)真空オーブン内で、又は、制限された圧力の30ミリットルでSTSフリーズ乾燥機内で、棚の温度を60℃に設定して、16時間から24時間に亘ってオーブンのトレイ内でインキュベートされた。サンプルは、2つあり、カールフィシャー分析法によって水の含有量を検定され、選択されたサンプルは、DSCによって分析された。サンプルは、通常、上述されたサンプルよりも低い水の含有量を表し、即ち0.1%から1.5%の水の含有量を表した。1.5トルで真空オーブン内で24時間に亘って温度60℃で加熱されたサンプルのDSCトレースは、もはや、およそ215℃での結晶の溶融を表さなかったが、しかし、そのかわりに、AATの形成を表すトレハロールのアモルファス形態の116℃から117℃でのガラス遷移の特性を表した。このサンプルの水の含有量は、0.1%以下であった。
無水トレハロースの錠剤化で用いられたブレンドは、無水トレハロースの単一の形態もしくはそれらの混合物を含み、さらに、商業的に入手可能な、コリドン(Kollidon)VA64、ルピプレス(Ludipress)、BycoA及びHESなどの結合材と、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びルトュロール(Lutrol)などの潤滑油剤を含んでいた。
急速に溶解する錠剤を生成することは、錠剤化ブレンドに揮発性の塩を加え、次に真空の下でその塩を除去し、揮発性の塩を組み込まれていない同じブレンドの錠剤と比較して、改善された溶解速度を表す多孔性の錠剤を得ることによって、達成される。粉末の0.5gのアリコットが、1.27cm(0.5インチ)
のマネスティータイプの型内へ計り分けられた。錠剤が、上側のポンチへの打撃によって形成された。(1回の軽い位置決めの打撃と、その次のより強い1回の打撃による)。錠剤は、凸状の卵形の形状を有し、少なくとも3mmの厚みを有した。型から取り外されると、錠剤は、密閉されたガラス瓶内に貯蔵された。重炭酸アンモニウムを含むブレンドから形成された錠剤では、揮発性の塩が、6時間に亘って温度60℃で、1.5トルの真空の下で除去され、多孔性の急速に溶解する錠剤が得られ、この錠剤が、分析される前に密閉されたガラス瓶内に貯蔵された。この錠剤の分解及び溶解は、緩やかな攪拌の下で28℃の蒸留水内で測定された。
無水トレハロールの様々なブレンドを錠剤化して得られた結果に対して、分解及び溶解が、各々、表3と表4とに表されている。表3では、「アフタリスク」は、ムスイトレハロールを表し、Kは、コリドンを表し、Bは、BycoAを表している。表4は、選択された錠剤の分解−溶解の速度に対する、改善された有孔性の効果を表している。同様な結果が、自動化されたマネスティF3錠剤化プレスを用いたこれらの製剤によって得られた錠剤の製剤に対しても得られた。




表4に表された結果は、与えられた多孔性の錠剤から揮発性の塩を除去することによって、生成された錠剤の分解時間及び溶解時間が大きく改善されたことを表している。揮発性の塩を完全に除去することは、真空中の処理の前後での錠剤の重さの違いによって査定された。FTGより良好なAT圧縮と、揮発性の塩は、少なくとも50%(重量%)まで組み込まれた。これによって、揮発性の塩が除去された後に、多孔性の高いマトリクスがもたらされた。ATは単独で良好な結合剤を残し、重炭酸アンモニウムを組み込むブレンドの錠剤において、とりわけ揮発性の塩が除去された後に本来の強さの一部が失われることが見いだされる。ある種の結合剤なしで、これらの多孔性の錠剤は、非常に脆く、従って、揮発性の塩の高い比率と結合剤の低い割合の含有量との間のバランスが肝要となる。
当業者に知られた任意の結合剤を用いることができる。これらの多孔性の錠剤は、トレハロース単独で形成された錠剤と比較して溶解速度が高く、完全に分解するのに要する時間は、10分から15分から、1分へ短縮される。

【特許請求の範囲】
1.可溶性デリバリーシステムの製造方法であって、 (a)各成分を概ね乾燥した形態で結合する結合過程であって、前記成分が、希釈剤と、前記成分及び/または剤形の硬さを許容レベルまで高めるに十分な量の結合剤と、各剤形に効果的な量だけ含められるような量の活性薬剤と、除去されたとき形成された前記財形の表面積を大きくし重量を低下させるに効果的な量の揮発性塩とを含む、該結合過程と、 (b)前記結合過程の生成物を処理して、概ね均一な混合物を形成する均一化過程と、 (c)前記均一化過程の産物である粉末からデリバリーシステムを形成するデリバリーシステム形成過程と、 (d)前記揮発性塩またはその成分を、前記デリバリーシステムから揮発させる揮発過程とを有することを特徴とする可溶性デリバリーシステムの製造方法。
2.前記揮発性塩が、前記デリバリーシステムから完全に揮発するように適合されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
3.前記揮発性塩が、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、及びこれら何れかの混合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
4.前記揮発性塩が、分解して揮発性成分と非揮発性残基とを形成するように適合されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
5.前記揮発性塩が、製薬上許容される炭酸水素塩であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
6.前記揮発性塩が、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
7.前記デリバリーシステムが、錠剤、トローチ剤、顆粒剤、マトリクス、カプセル、マイクロカプセル及び微小球から選択されることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の方法。
8.前記希釈剤が、トレハロース、燐酸2カルシウム、二水化物、カルシウム、燐酸塩、硫酸塩、ラクトース、噴霧乾燥ラクトース、α化でんぷん、微結晶性セルロース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥でんぷん、または粉末の糖、及びこれら何れかの混合物から選択されることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の方法。
9.前記トレハロースが、二水化トレハロース、アモルファストレハロース、無水アモルファストレハロース、無水結晶性トレハロース、及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
10.前記結合過程で結合される成分が、希釈剤、崩壊剤、着色剤、及びこれら何れかの混合物から選択された少なくとも1つの賦形剤を含むことを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の方法。
11.前記潤滑剤が、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、硬化(水素化)植物油、ルトロール(lutrol)、ポリエチレングリコール、及びこれら何れかの混合物から選択されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
12.前記結合剤が、てんぷん、ゼラチン、糖、天然または合成のガム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルでんぷん、及びこれら何れかの混合物から選択されることを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の方法。
13.前記揮発過程が、前記製剤を、前記揮発性塩を揮発させるに十分な時間だけ低圧に曝す過程を更に含むことを特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載の方法。
14.前記低圧が0.5〜30,000ミリトルで、前記製剤を低圧に曝す時間が0.5〜6時間であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
15.請求項1乃至14の何れかに記載の方法で製造された剤形。
16.請求項1乃至14の何れかに記載の方法で製造された錠剤。
17.請求項1乃至14の何れかに記載の方法で製造されたカプセル。

【図1】
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【公表番号】特表2000−505429(P2000−505429A)
【公表日】平成12年5月9日(2000.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−528306
【出願日】平成9年2月10日(1997.2.10)
【国際出願番号】PCT/GB97/00368
【国際公開番号】WO97/28789
【国際公開日】平成9年8月14日(1997.8.14)
【出願人】
【氏名又は名称】クアドラント・ホールディングズ・ケンブリッジ・リミテッド