説明

揮発性有機化合物の測定装置および揮発性有機化合物の測定方法

【課題】水分を含有する測定対象物が内部に密封された検査容器から導出される混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を、高精度かつ円滑に測定すること。
【解決手段】揮発性有機化合物および水分を含有する測定対象物20が内部に密封される検査容器2を備え、該検査容器2内の空気を不活性ガスで置換した後に、測定対象物20から揮発性有機化合物を放散させて検査容器2内を不活性ガスおよび揮発性有機化合物を含む混合ガスで満たし、その後、この混合ガスを該検査容器2内から導出して該混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を測定する装置であって、内部に測定対象物20が封入されるとともに検査容器2内に配置される内容器6を備え、該内容器6は、ポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエチレンテレフタレートで形成されている揮発性有機化合物の測定装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物の測定装置および揮発性有機化合物の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、揮発性有機化合物(例えば、トルエンやキシレン等の芳香族化合物)を含有する測定対象物からの揮発性有機化合物の放散量の高精度な測定が求められている。そこで、例えば下記非特許文献1に示されるような、検査容器内に測定対象物を密封する密封工程と、検査容器内の空気を不活性ガスで置換する置換工程と、測定対象物から揮発性有機化合物を放散させ、検査容器内を不活性ガスおよび揮発性有機化合物を含む混合ガスで満たす放散工程と、混合ガスを検査容器から導出して該混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を測定する測定工程と、を有する揮発性有機化合物の測定方法を用いることが考えられる。
この方法によれば、測定工程で得られた測定結果に基づいて、測定対象物からの揮発性有機化合物の放散量を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】行谷 義治、”各種工業製品中の化学物質の評価”、[online]、[平成21年12月15日検索]、インターネット〈URL:http://www.kanagawa-iri.go.jp/kitri/kouhou/program/H20/pdf/1EP02.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の揮発性有機化合物の測定方法では、測定対象物が水分を含有している場合、放散工程時に、測定対象物から揮発性有機化合物だけでなく水分も放散され、測定工程時に検査容器から導出する混合ガスに水分が含まれるおそれがあった。この場合、検査容器から導出された混合ガスに含まれる水分に起因して、例えば、測定結果の精度が低下したり、測定装置が故障したりするおそれがあった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、水分を含有する測定対象物が内部に密封された検査容器から導出される混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を、高精度かつ円滑に測定することができる揮発性有機化合物の測定装置および測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る揮発性有機化合物の測定装置は、揮発性有機化合物および水分を含有する測定対象物が内部に密封される検査容器を備え、該検査容器内の空気を不活性ガスで置換した後に、前記測定対象物から揮発性有機化合物を放散させて前記検査容器内を不活性ガスおよび揮発性有機化合物を含む混合ガスで満たし、その後、この混合ガスを該検査容器内から導出して該混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を測定する揮発性有機化合物の測定装置であって、内部に前記測定対象物が封入されるとともに前記検査容器内に配置される内容器を備え、該内容器は、ポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエチレンテレフタレートで形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る揮発性有機化合物の測定方法は、前記本発明に係る揮発性有機化合物の測定装置を用いた揮発性有機化合物の測定方法であって、前記内容器内に前記測定対象物を封入する対象物封入工程と、前記検査容器内に前記内容器を密封する容器密封工程と、前記検査容器の空気内を不活性ガスで置換する置換工程と、前記測定対象物から揮発性有機化合物を放散させ、前記検査容器内を不活性ガスおよび揮発性有機化合物を含む混合ガスで満たす放散工程と、前記混合ガスを前記検査容器から導出して該混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を測定する測定工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
これらの発明においては、内容器が、ポリエチレン、ポリプロピレンもしくはポリエチレンテレフタレートで形成されているので、放散工程時に測定対象物から放散された揮発性有機化合物は、内容器を透過して検査容器内に放散される。一方、測定対象物中に含有される水分は、放散工程時に揮発性有機化合物とともに測定対象物から放散されても、内容器を透過し難く内容器内に留まって、検査容器内への放散が抑制される。
以上より、放散工程時に、測定対象物中の揮発性有機化合物を検査容器内に放散しつつ、測定対象物中の水分の検査容器内への放散を抑えることが可能になり、測定工程時に検査容器から導出する混合ガスに水分が含まれるのを抑制することができる。したがって、混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を高精度かつ円滑に測定することができる。
【0009】
また、測定対象物が、内容器内に封入されているので、置換工程時に検査容器内の空気を吸引して不活性ガスを導入することで空気を不活性ガスで置換する場合には、検査容器内の空気を吸引する際に、測定対象物が空気とともに吸引されるのを抑制することができる。したがって、例えば、対象物封入工程時に、内容器内に多量の測定対象物を封入することで、放散工程時に、多量の測定対象物から揮発性有機化合物を放散させることが可能になり、測定対象物中に含有される揮発性有機化合物が微量の場合であっても、この揮発性有機化合物を測定可能な十分な量、検査容器内に確実に放散させて高精度に測定することができる。
【0010】
また、本発明に係る揮発性有機化合物の測定方法では、前記測定対象物は、発泡剤として水分を含有するウレタン原料であっても良い。
【0011】
この場合、測定対象物であるウレタン原料が、発泡剤として水分を含有しているので、前述の作用効果が顕著に奏功されることとなる。
【0012】
また、本発明に係る揮発性有機化合物の測定方法では、前記測定対象物は、ウレタン発泡体であっても良い。
【0013】
この場合、測定対象物が、ウレタン発泡体であり、その内部に水分を含有し易いため、前述の作用効果が顕著に奏功されることとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水分を含有する測定対象物が内部に密封された検査容器から導出される混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を、高精度かつ円滑に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る揮発性有機化合物の測定装置を示す正面図である。
【図2】図1に示す揮発性有機化合物の測定装置を用いた揮発性有機化合物の測定方法を説明する一工程図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る揮発性有機化合物の測定装置を示す正面図である。
【図4】図1に示す揮発性有機化合物の測定装置を用いた揮発性有機化合物の測定方法の一実施例の結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る揮発性有機化合物の測定装置を説明する。
図1に示すように、揮発性有機化合物の測定装置1は、揮発性有機化合物および水分を含有するウレタン原料(測定対象物)20が内部に密封される検査容器2を備え、該検査容器2内の空気を吸引して窒素ガス(不活性ガス)を導入することで該検査容器2内を窒素ガスで置換した後に、ウレタン原料20から揮発性有機化合物を放散させて検査容器2内を窒素ガスおよび揮発性有機化合物を含む混合ガスで満たし、その後、この混合ガスを該検査容器2内から導出して該混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を測定する。
【0017】
本実施形態では、揮発性有機化合物の測定装置1は、前記検査容器2と、内部にウレタン原料20が封入されるとともに検査容器2内に配置される内容器6と、検査容器2内の空気を吸引して窒素ガスを導入することで該検査容器2内を窒素ガスで置換する置換装置30と、内部に配置された検査容器2を加熱する恒温槽40(図2参照)と、混合ガスを該検査容器2内から導出して該混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を測定する測定機50(図2参照)と、を備えている。
なおウレタン原料20は、発泡することでウレタン発泡体21(図3参照)を形成する液体であり、発泡剤として、例えば2〜4重量%の水分を含有している。またウレタン原料20には、発泡剤の他、例えば、炭化水素系の溶剤等からなる離型剤などの副原料が含まれていても良い。
【0018】
検査容器2は、扁平な袋体とされ、例えばポリ4フッ化エチレンで形成されている。図示の例では、検査容器2は、例えば、平面視矩形状の扁平な図示しない密閉袋における角部の1つが切除されることで形成され、この検査容器2には、前記密閉袋の角部が切除されることで形成された図示しない開口部を閉塞するシール部3が形成されている。なお検査容器2の内容積は、例えば5〜10リットルとなっている。
また検査容器2には、検査容器2の内部と外部とを連通する連通管4と、連通管4を通した検査容器2の内部と外部との連通、遮断を切り替えるコック5と、が設けられている。
【0019】
内容器6は、平面視矩形状の扁平な袋体とされ、その1つの辺部に沿って、外部に向けて開口する開口部7が形成されている。内容器6には、この内容器6内の収納部8を密封自在なジッパー9が形成されている。図示の例では、ジッパー9は、内容器6の内面に前記1つの辺部に沿って延設されており、前記収納部8は、内容器6内のうち、平面視において、内容器6の前記1つの辺部以外の3つの辺部およびジッパー9によって囲まれる部分となっている。なお図示の例では、収納部8内からは空気が抜き出されており、該収納部8内はウレタン原料20で満たされている。また収納部8は、例えば100ミリリットルのウレタン原料20が封入可能とされている。
【0020】
そして本実施形態では、内容器6は、ポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエチレンテレフタレート、好ましくは、ポリエチレン若しくはポリプロピレン、より好ましくは、低密度ポリエチレン若しくはポリプロピレンで形成されている。
なお内容器6の厚さは、好ましくは30μm〜150μm、より好ましくは40μm〜80μmとなっている。
【0021】
次に、以上のように構成された揮発性有機化合物の測定装置1を用いた揮発性有機化合物の測定方法について説明する。なお、検査容器2および内容器6は、それぞれからの揮発性有機化合物の放散の程度が確認され、必要に応じて洗浄された清浄なものを用いる。
【0022】
はじめに、内容器6内にウレタン原料20を封入する対象物封入工程を行う。この際、内容器6のジッパー9を開けて収納部8にウレタン原料20を注入した後、例えば指等で収納部8内の空気を収納部8から外部に追い出しながらジッパー9を閉じる。なおジッパー9を閉じた後、例えば内容器6の開口部7の内面同士を熱溶着して図示しないシール部を形成したり、揮発性有機化合物の放散が無視できる程度に小さい清浄な粘着テープを用いて開口部7を閉塞したりすることで、内容器6の収納部8の密閉を強固にしても良い。
次いで、検査容器2の前記開口部を通して検査容器2内に内容器6を配置した後、前記シール部3を形成して該検査容器2内に内容器6を密封する容器密封工程を行う。
【0023】
次いで図1に示すように、置換装置30によって、検査容器2内の空気を吸引して該検査容器2内に窒素ガスを導入することで該検査容器2内の空気を窒素ガスで置換する置換工程を行う。なお本実施形態では、置換装置30は、前記連通管4と、前記コック5と、連通管4に着脱自在に装着され該連通管4を通して検査容器2内の空気を吸引する第1ポンプ10と、窒素ガスが充填されるとともに連通管4に着脱自在に装着され、該連通管4を通して検査容器2内に窒素ガスを導入する図示しないボンベと、を備えている。
【0024】
この置換工程では、まず、連通管4に第1ポンプ10を接続するとともに、コック5により、連通管4を通して検査容器2の内部と外部とを連通させる。次いで、第1ポンプ10を作動させて検査容器2内の空気を連通管4を通して吸引する。ここで本実施形態では、ウレタン原料20が、内容器6内に封入されているので、ウレタン原料20が空気とともに吸引されるのが抑制される。
【0025】
次いで、コック5を操作して、連通管4を通した検査容器2の内部と外部との連通を遮断した後、連通管4と第1ポンプ10との接続を解除し、その後、前記ボンベを連通管4に接続する。そして、コック5を再び操作して、連通管4を通した検査容器2の内部と外部との連通の遮断を解除して、前記ボンベから連通管4を通して検査容器2内に窒素ガスを導入する。
【0026】
以上の操作を1回もしくは複数回行い、検査容器2内の空気を窒素ガスで置換することで、置換工程が終了する。なお置換工程後、コック5を操作して、連通管4を通した検査容器2の内部と外部との連通を遮断し、連通管4と前記ボンベとの接続を解除する。
【0027】
次いで、ウレタン原料20から揮発性有機化合物を放散させる放散工程を行う。この際本実施形態では、図2に示すように、検査容器2を恒温槽40内に配置して加熱し、ウレタン原料20中の揮発性有機化合物の放散を促進する。
ここで本実施形態では、内容器6が、ポリエチレン、ポリプロピレンもしくはポリエチレンテレフタレートで形成されているので、ウレタン原料20から放散された揮発性有機化合物は、内容器6を透過して検査容器2内に放散される。これにより、検査容器2内が窒素ガスおよび揮発性有機化合物を含む混合ガスで満たされることとなる。
一方、ウレタン原料20中に含有される水分は、揮発性有機化合物とともにウレタン原料20から放散されても、内容器6を透過し難く内容器6内に留まって、検査容器2内への放散が抑制される。
【0028】
次いで、測定機50によって、混合ガスを検査容器2内から導出して混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を測定する測定工程を行う。なお本実施形態では、測定機50は、前記連通管4と、前記コック5と、連通管4に接続管12を介して着脱自在に装着され連通管4および接続管12を通して検査容器2内の混合ガスを吸引する第2ポンプ11と、接続管12に着脱自在に装着され接続管12内を流通する混合ガス中の揮発性有機化合物を吸着する捕集管13と、捕集管13に吸着された揮発性有機化合物の含有量を測定する図示しない検査装置(例えば、ガスクロマトグラフ)と、を備えている。
【0029】
この測定工程では、図2に示すように、まず、第2ポンプ11を、接続管12を介して連通管4に接続する。次いで、コック5を操作して、連通管4を通した検査容器2の内部と外部との連通の遮断を解除した後、第2ポンプ11を作動させ、検査容器2内の混合ガスを連通管4から導出し接続管12内を流通させる。これにより、混合ガス中の揮発性有機化合物が、捕集管13に吸着される。その後、捕集管13を接続管12から取り外し、前記検査装置により揮発性有機化合物の含有量を測定する。
以上で測定工程が終了する。そして、この測定工程で得られた測定結果に基づいて、例えば、ウレタン原料20からの揮発性有機化合物の放散量を測定する。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る揮発性有機化合物の測定装置1および揮発性有機化合物の測定方法によれば、放散工程時に、ウレタン原料20中の揮発性有機化合物を検査容器2内に放散しつつ、ウレタン原料20中の水分の検査容器2内への放散を抑えることが可能になり、測定工程時に検査容器2から導出する混合ガスに水分が含まれるのを抑制することができる。したがって本実施形態では、例えば、測定機50の第2ポンプ11に水分が吸引されるのを抑制したり、測定機50の捕集管13に結露が生じてしまうのを抑制したりすることが可能になる。これにより、混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を高精度かつ円滑に測定することができる。
【0031】
また、ウレタン原料20が、内容器6内に封入されているので、本実施形態のように、置換工程時に検査容器2内の空気を吸引して窒素ガスを導入することで空気を窒素ガスで置換する場合には、置換工程時に検査容器2内の空気を吸引する際に、ウレタン原料20が空気とともに置換装置30の第1ポンプ10に吸引されるのを抑制することができる。したがって、例えば、対象物封入工程時に、内容器6内に多量のウレタン原料20を封入することで、放散工程時に、多量のウレタン原料20から揮発性有機化合物を放散させることが可能になり、ウレタン原料20中に含有される揮発性有機化合物が微量の場合であっても、この揮発性有機化合物を測定可能な十分な量、検査容器2内に確実に放散させて高精度に測定することができる。
【0032】
また、検査容器2内に密封される測定対象物が、前記ウレタン原料20であり、発泡剤として水分を含有しているので、前述の作用効果が顕著に奏功されることとなる。
さらに、内容器6が、ポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエチレンテレフタレートで形成されていることから、耐薬品性を確保しつつ低コスト化を図ることができる。
【0033】
なお、内容器6の厚さが30μm〜150μmの場合、ウレタン原料20から放散される揮発性有機化合物に内容器6を短時間で透過させつつ、内容器6の破損を確実に抑制することができる。すなわち、内容器6の厚さが、30μmよりも小さい場合、内容器6が容易に破損してしまうおそれがあり、150μmよりも大きい場合、揮発性有機化合物が内容器6を透過するのに時間がかかってしまう。
【0034】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、検査容器2として袋体を用いたが、測定対象ガスである揮発性有機化合物の透過を抑制できるものであれば良く、これに代えて、瓶体やチャンバー等を採用しても良い。
また内容器6の厚さは、30μmより小さくても良く、150μmより大きくても良い。
【0035】
また前記実施形態では、検査容器2内に密封される測定対象物としてウレタン原料20を採用したが、これに限られるものではなく、測定対象物としては、例えば、液体、固体、ゲル状体などを採用することが可能である。例えば、図3に示すように、測定対象物としてウレタン発泡体21を採用しても良い。この場合、測定対象物が、ウレタン発泡体21であり、その内部に水分を含有し易いため、前述の作用効果が顕著に奏功されることとなる。また前記実施形態のように、放散工程時に加熱により揮発性有機化合物の放散を促進させる場合には、ウレタン発泡体21から特に水分が放散され易く、前述の作用効果がより顕著に奏功される。なおウレタン発泡体21には、例えば、不織布等からなる補強部材が固着されていても良い。また、界面活性剤等からなる潤滑剤や、接着剤などが塗布されていても良い。
【0036】
また前記実施形態では、放散工程時に、検査容器2を恒温槽40内に配置して加熱することでウレタン原料20中の揮発性有機化合物の放散を促進するものとしたが、揮発性有機化合物の放散を促進しなくても良い。例えば、放散工程時に、検査容器2を室温で放置しても良く、恒温槽40はなくても良い。
また、前記実施形態では、置換装置30の第1ポンプ10と、測定機50の第2ポンプ11と、を異なるポンプとしたが、同一のポンプを兼用しても良い。
また前記実施形態では、置換工程時に検査容器2内の空気と置換する不活性ガスとして窒素ガスを採用するものとしたが、これに代えて、例えばアルゴンガスなどを採用しても良い。
【0037】
また前記実施形態では、測定機50に捕集管13が備えられ、測定工程時に、捕集管13を用いて、検査容器2から導出された混合ガス中の揮発性有機化合物を吸着するものとしたが、これに限られるものではない。
例えば、測定機が、前記連通管4と、前記コック5と、連通管4を通して検査容器2内の混合ガスを吸引する図示しないシリンジと、該シリンジから混合ガスが注入される図示しない測定容器と、該測定容器内の混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を測定する図示しない検査装置と、を備えていても良い。この場合、前記シリンジを用いて検査容器2内の混合ガスを吸引することで混合ガスを検査容器2から導出した後、前記シリンジ内の混合ガスを前記測定容器に注入し、その後、該測定容器内の混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を前記検査装置によって測定すれば良い。
【0038】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【実施例】
【0039】
次に、前記揮発性有機化合物の測定装置を用いた前記揮発性有機化合物の測定方法の一実施例について説明する。
なおウレタン原料としては、80重量%の水分を含有する原料を用いた。このウレタン原料には、前記揮発性有機化合物の測定装置および前記揮発性有機化合物の測定方法の作用効果を検証するため、通常のウレタン原料より多量の水分を意図的に含有させている。
また内容器としては、厚さが40μmのポリエチレンフィルム容器を採用した。
【0040】
本実施例では、対象物封入工程時に、1gのウレタン原料を内容器内に封入した。また置換工程時に、検査容器内に4リットルの窒素ガスを封入した。さらに放散工程時に、検査容器を恒温槽内に配置して120分間65℃で加熱した。
また測定工程では、前記測定機として、連通管、コック、シリンジ、測定容器および検査装置を備える構成を採用した。検査装置としては、混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を電圧値の大きさとして測定可能な「VOCアナライザー EGC−2」(アビリット社製)を採用した。そして、シリンジを用いて検出容器内から測定容器内に5ミリリットルの混合ガスを移し、この混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を測定した。
【0041】
結果を図4に示す。図4に示すグラフは、横軸が、検査装置によって測定を開始した時点からの測定時間(s)を示し、縦軸が、測定時間経過時に検査装置によって測定された電圧値(mV)を示している。ここで前記検査装置では、測定時間(横軸)と揮発性有機化合物の種類とが対応しており、図4に示すグラフにおいて、特定の測定時間における電圧値の大きさに基づいて、混合ガス中の特定の揮発性有機化合物の含有量を求めることができる。
【0042】
この結果から、混合ガス中のトルエン(To、図示の例では測定時間が約90秒)、エチルベンゼン(EB、図示の例では測定時間が約170秒)、キシレン(Xy、図示の例では測定時間が約225秒)、スチレン(SM、図示の例では測定時間が約290秒)の4種類の揮発性有機化合物の含有量を測定することができた。
【0043】
また、トルエンと対応する測定時間までの電圧値が大きくは乱れていないことから、混合ガス中の水分の含有量が抑えられていることが確認された。さらに、スチレンと対応する測定時間以降の電圧値が確実に下降していることからも、混合ガス中の水分の含有量が抑えられていることが確認された。これらより、ウレタン原料中の水分の検査容器内への放散が抑えられていることが確認された。
【0044】
なお内容器として、ポリプロピレンフィルム容器、およびポリエチレンテレフタレートフィルム容器をそれぞれ採用し、他の条件を本実施例と同様とした他の2つの実施例をそれぞれ行ったところ、本実施例とほぼ同様の結果を得ることができ、前記4種類の揮発性有機化合物の含有量を測定することができた。
【0045】
また、本実施例に対する比較例として、内容器を備えていない測定装置を用いた従来の揮発性有機化合物の測定方法を実施したところ、置換工程時に検査容器内の空気を吸引する際、ウレタン原料が空気とともに置換装置の第1ポンプに吸引されてしまい、以降の工程を行うことができなかった。
【符号の説明】
【0046】
1 揮発性有機化合物の測定装置
2 検査容器
6 内容器
20 ウレタン原料(測定対象物)
21 ウレタン発泡体(測定対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物および水分を含有する測定対象物が内部に密封される検査容器を備え、
該検査容器内の空気を不活性ガスで置換した後に、前記測定対象物から揮発性有機化合物を放散させて前記検査容器内を不活性ガスおよび揮発性有機化合物を含む混合ガスで満たし、その後、この混合ガスを該検査容器内から導出して該混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を測定する揮発性有機化合物の測定装置であって、
内部に前記測定対象物が封入されるとともに前記検査容器内に配置される内容器を備え、
該内容器は、ポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエチレンテレフタレートで形成されていることを特徴とする揮発性有機化合物の測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の揮発性有機化合物の測定装置を用いた揮発性有機化合物の測定方法であって、
前記内容器内に前記測定対象物を封入する対象物封入工程と、
前記検査容器内に前記内容器を密封する容器密封工程と、
前記検査容器内の空気を不活性ガスで置換する置換工程と、
前記測定対象物から揮発性有機化合物を放散させ、前記検査容器内を不活性ガスおよび揮発性有機化合物を含む混合ガスで満たす放散工程と、
前記混合ガスを前記検査容器から導出して該混合ガス中の揮発性有機化合物の含有量を測定する測定工程と、を有することを特徴とする揮発性有機化合物の測定方法。
【請求項3】
請求項2記載の揮発性有機化合物の測定方法であって、
前記測定対象物は、発泡剤として水分を含有するウレタン原料であることを特徴とする揮発性有機化合物の測定方法。
【請求項4】
請求項2記載の揮発性有機化合物の測定方法であって、
前記測定対象物は、ウレタン発泡体であることを特徴とする揮発性有機化合物の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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