説明

揮発性有機化合物処理システム及び揮発性有機化合物の処理方法

【課題】ドレンが有する揮発性有機化合物(VOC)の化学エネルギーを廃棄することなく有効に回収することができる揮発性有機化合物処理システム及び揮発性有機化合物の処理方法を提供する。
【解決手段】処理対象ガスに含まれるVOCを吸着剤10に吸着させ、吸着剤10に吸着されたVOCを加圧環境下で水蒸気を用いて脱着して上記水蒸気に混入させる吸着・脱着装置1と、VOCが混入した水蒸気を燃焼させるガスタービン2とを有する揮発性有機化合物処理システムAであって、VOCが混入した水蒸気が液化したドレンを回収するドレン排出系4と、ドレン排出系4により回収したドレンをミスト化して吸着剤10に噴霧するエゼクタ5とを有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス状の揮発性有機化合物を処理する揮発性有機化合物処理システム及び揮発性有機化合物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トルエンやキシレン等の各種揮発性有機化合物を取り扱う工場では、揮発性有機化合物を含むガス(処理対象ガス)を処理するための処理システムを設けている。
このような処理システムとして、特許文献1には、処理対象ガスを吸着・脱着装置に供給して揮発性有機化合物を活性炭等の吸着剤に吸着させ、また吸着剤が吸着した揮発性有機化合物を水蒸気で吸着剤から脱着して揮発性有機化合物を水蒸気に混入させる。そして、揮発性有機化合物が混入した水蒸気をガスタービンやボイラ等の燃焼装置により燃焼させて揮発性有機化合物を分解・無害化すると共に揮発性有機化合物が有する化学エネルギーを有効利用して処理する揮発性有機化合物処理システムが開示されている。
【特許文献1】特許第3956996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記処理システムでは、吸着剤から揮発性有機化合物を脱着させるために吸着・脱着装置内を所定の圧力まで加圧する工程を有するが、当該加圧に伴って揮発性有機化合物を含んだ水蒸気等が凝縮し、揮発性有機化合物を含む液体(ドレン)が生じることがある。このドレンは、揮発性有機化合物を含むため、従来、上記処理システムから回収した後、回収したドレンを専門の処理業者等へ引き渡して廃棄処理している。
しかしながら、上記の様な揮発性有機化合物を含んだドレンの廃棄処理では、揮発性有機化合物が有する化学エネルギーを無駄に廃棄することとなり、また、廃棄処理コストが掛かるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ドレンが有する揮発性有機化合物の化学エネルギーを廃棄することなく有効に回収することができる揮発性有機化合物処理システム及び揮発性有機化合物の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、処理対象ガスに含まれる揮発性有機化合物を吸着剤に吸着させ、上記吸着剤に吸着された上記揮発性有機化合物を加圧環境下で水蒸気を用いて脱着して上記水蒸気に混入させる吸着・脱着装置と、上記揮発性有機化合物が混入した上記水蒸気を燃焼させる燃焼装置とを有する揮発性有機化合物処理システムであって、上記揮発性有機化合物が混入した上記水蒸気が液化した液体を回収する液体回収装置と、上記液体回収装置により回収した上記液体をミスト化して上記吸着剤に噴霧する噴霧装置とを有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、揮発性有機化合物が混入した水蒸気が液化した液体を回収して再度吸着剤に噴霧することで、揮発性有機化合物を廃棄することなく吸着剤に回収することができる。
【0006】
また、本発明では、上記噴霧装置は、水蒸気の供給により駆動するエゼクタを用いて上記液体をミスト化するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、電源等の動力を必要としないで容易に液体をミスト化することができる。
【0007】
また、本発明では、上記脱着に用いられる上記水蒸気の一部を供給して上記エゼクタを駆動させるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、揮発性有機化合物処理システムの内部で使用する水蒸気をエゼクタに供給することで、エゼクタを駆動させるための外部動力を別途用意することが不要となる。
【0008】
また、本発明では、上記噴霧装置は、上記吸着剤に上記水蒸気が供給される供給側に、上記液体を噴霧するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、ミスト化した液体を吸着剤に供給される水蒸気の流れに混入させて気化させると共に吸着剤を通過させて、液体に含まれる揮発性有機化合物を吸着剤に回収させ易くすることができる。
【0009】
また、本発明では、上記吸着・脱着装置から上記揮発性有機化合物が混入した上記水蒸気が上記燃焼装置へ供給される供給経路から分岐する液体回収経路が設けられており、上記液体回収装置は、上記液体回収経路を開閉する開閉機構を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、液体回収装置は、開閉機構による液体回収経路の開閉によって液体を回収することができる。
【0010】
また、本発明では、上記液体回収装置は、回収した上記液体を貯溜する貯溜部を有し、上記噴霧装置は、上記貯溜部に貯溜された上記液体を上記吸着剤に噴霧するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、ドレンを一時的に貯溜することができるためドレンを噴霧するタイミングの調整が可能となる。
【0011】
また、本発明は、処理対象ガスに含まれる揮発性有機化合物を吸着剤に吸着させ、上記吸着剤に吸着された上記揮発性有機化合物を加圧環境下で水蒸気を用いて脱着して上記水蒸気に混入させる吸着・脱着工程と、上記揮発性有機化合物が混入した上記水蒸気を燃焼させる燃焼工程とを有する揮発性有機化合物の処理方法であって、上記揮発性有機化合物が混入した上記水蒸気が液化した液体を回収する液体回収工程と、上記液体回収工程により回収した上記液体をミスト化して上記吸着剤に噴霧する噴霧工程とを有するという処理方法を採用する。
このような処理方法を採用することによって、本発明では、揮発性有機化合物が混入した水蒸気が液化した液体を回収して再度吸着剤に噴霧することで、揮発性有機化合物を廃棄することなく吸着剤に回収することができる。
【0012】
また、本発明は、上記噴霧工程では、上記吸着剤に上記水蒸気が供給される供給側に、上記液体を噴霧するという処理方法を採用する。
このような処理方法を採用することによって、本発明では、ミスト化した液体を吸着剤に供給される水蒸気の流れに混入させて気化させると共に吸着剤を通過させて、液体に含まれる揮発性有機化合物を吸着剤に回収させ易くすることができる。
【0013】
また、本発明は、上記液体回収工程では、回収した上記液体を貯溜する貯溜工程を有し、上記噴霧工程では、前記貯溜工程により貯溜された上記液体を上記吸着剤に噴霧するという処理方法を採用する。
このような処理方法を採用することによって、本発明では、ドレンを一時的に貯溜することができるためドレンを噴霧するタイミングの調整が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、処理対象ガスに含まれる揮発性有機化合物を吸着剤に吸着させ、上記吸着剤に吸着された上記揮発性有機化合物を加圧環境下で水蒸気を用いて脱着して上記水蒸気に混入させる吸着・脱着装置と、上記揮発性有機化合物が混入した上記水蒸気を燃焼させる燃焼装置とを有する揮発性有機化合物処理システムであって、上記揮発性有機化合物が混入した上記水蒸気が液化した液体を回収する液体回収装置と、上記液体回収装置により回収した上記液体をミスト化して上記吸着剤に噴霧する噴霧装置とを有するという構成を採用することによって、揮発性有機化合物が混入した水蒸気が液化した液体を回収して再度吸着剤に噴霧することで、揮発性有機化合物を廃棄することなく吸着剤に回収することができる。つまり、吸着剤に回収された揮発性有機化合物を水蒸気と共に燃焼装置に供給して燃焼させることができる。
したがって、本発明は、ドレンが有する揮発性有機化合物の化学エネルギーを廃棄することなく有効に回収することができると共に、廃棄処理コストの低減を図ることができる効果がある。
【0015】
また、本発明によれば、処理対象ガスに含まれる揮発性有機化合物を吸着剤に吸着させ、上記吸着剤に吸着された上記揮発性有機化合物を加圧環境下で水蒸気を用いて脱着して上記水蒸気に混入させる吸着・脱着工程と、上記揮発性有機化合物が混入した上記水蒸気を燃焼させる燃焼工程とを有する揮発性有機化合物の処理方法であって、上記揮発性有機化合物が混入した上記水蒸気が液化した液体を回収する液体回収工程と、上記液体回収工程により回収した上記液体をミスト化して、上記吸着剤に噴霧する噴霧工程とを有するという処理方法を採用することによって、揮発性有機化合物が混入した水蒸気が液化した液体を回収して、噴霧することで再度水蒸気に混入させることができる。つまり、吸着剤に回収された揮発性有機化合物を水蒸気と共に燃焼工程にて燃焼させることができる。
したがって、本発明は、ドレンが有する揮発性有機化合物の化学エネルギーを廃棄することなく有効に回収することができると共に、廃棄処理コストの低減を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態における揮発性有機化合物処理システムAの概要を示す模式図である。
揮発性有機化合物処理システムAは、トルエンやキシレン等の各種揮発性有機化合物の処理を必要とする工場内に構築されるものであり、図1に示すように、吸着・脱着装置1、ガスタービン(燃焼装置)2、熱交換器3、ドレン排出系(液体回収装置)4、エゼクタ(噴霧装置)5及び不図示の制御装置を備えている。
【0017】
吸着・脱着装置1は、円筒状の部材の開口をドーム状の部材で閉じたような形状の金属製の浄化容器11と、浄化容器11内部中段に設けられた吸着剤10とを有する。吸着・脱着装置1は、処理対象ガスである揮発性有機化合物(以下、VOCと称する)含有ガスに含まれるVOCを浄化容器11内部の吸着剤10に吸着させることによって処理対象ガスからVOCを除去し、吸着剤10に吸着したVOCを加圧環境下で水蒸気を用いて脱着して水蒸気に混入させる。吸着剤10には、例えば活性炭が使用される。また、上記加圧環境は、水蒸気を吸着・脱着装置1に供給することによって実現される。
【0018】
このような吸着・脱着装置1には、吸着剤10より上側の外部から、水蒸気を入力する配管X1、VOCが除去された処理済ガスを外部へ出力する配管X2及び、ミスト化したドレンを入力する配管X10が設けられており、一方、吸着剤10より下側の外部から、処理対象ガスを入力する配管X3及び、VOCが混入した水蒸気を外部へ出力する配管(供給経路)X4が設けられる構成となっている。また、吸着・脱着装置1は、吸着剤10を冷却する必要から、空気(冷却用空気)を下側の外部から入力する配管X5が設けられる。
【0019】
ガスタービン2は、圧縮機21、燃焼器22、タービン23を備えている。
圧縮機21は、外部から吸気した空気を加圧して圧縮空気とし、燃焼器22に供給する構成となっている。燃焼器22は、圧縮機21から供給される圧縮空気と燃料ガスとを混合して燃焼させ、タービン23へ排出する。また、燃焼器22には、吸着・脱着装置1から出力されたVOCが混入した水蒸気が配管X4を介して供給され、この水蒸気を燃料ガスと共に燃焼させる構成となっている。タービン23は、燃焼器22から供給される燃焼ガスの運動エネルギー及び圧力エネルギーによって回転駆動されて、圧縮機21の駆動力と、ガスタービン2外部の負荷25の駆動力とを発生する構成となっている。そして、ガスタービン2から排出される燃焼ガス(排ガス)は、熱交換器3へ排出される構成となっている。
【0020】
熱交換器3は、ガスタービン2から供給される燃焼ガスの保有する熱を利用して水蒸気を生成する構成となっている。熱交換器3が生成した水蒸気の一部は、配管X6を介して工場のプロセス用として使用され、残りの水蒸気は、配管X7を介して吸着・脱着装置1等に供給される。なお、配管X7は、途中3つの配管に分岐しており、一つは吸着・脱着装置1に水蒸気を入力する配管X1に、もう一つは吸着・脱着装置1を経由することなく配管X4に合流位置100で接続される配管X8に、そしてもう一つはエゼクタ5に水蒸気を供給する配管X9に分岐する構成となっている。
【0021】
ドレン排出系4は、VOCが混入した水蒸気が凝縮して液化し、VOCが微量ながら溶け込んでいるドレン(液体)を回収するものであり、配管X4から分岐するドレン配管(液体回収経路)X41と、ドレン配管X41の途中に設けられたドレン排出弁42と、ドレン排出弁42をバイパスするように設けられたバイパス配管X41aとを有しており、また、バイパス配管X41aには上流側から順に第1仕切弁43、ドレントラップ(開閉機構)44及び第2仕切弁45が設けられる構成となっている。
【0022】
ドレン排出系4は、ドレントラップ44の保守点検時等以外は、ドレン排出弁42は常時閉状態とされ、また、第1仕切弁43及び第2仕切弁45は常時開状態とされており、配管X4を流通するドレンがドレン配管X41を介してバイパス配管X41aに導入される構成となっている。
ドレントラップ44は、バイパス配管X41aの上流側にてドレンを滞留させると共に、所定量のドレンが滞留すると余剰のドレンを自動的に下流側に排出する構成となっている。ドレントラップ44は、フロート式、バイメタル式、ベローズ式等の各種方式を採用することができるが、本実施形態ではドレンが滞留することによる温度変化で開閉するバイメタル式のドレントラップを採用している。
【0023】
エゼクタ5は、ドレン排出系4により回収した液体のドレンをミスト化して配管X10を介して吸着・脱着装置1の吸着剤10に噴霧するものであり、配管X9から供給される水蒸気により駆動する構成となっている。このような構成のエゼクタ5は、水蒸気の供給により内部が負圧となり、ドレン配管X41を介して回収されたドレンを吸引すると共に、供給された水蒸気と吸引したドレンとを混合して噴射することにより、ドレンをミスト化(霧状化)して、液体と気体とが混合した二相流体として配管X10に導入させる構成となっている。
【0024】
不図示の制御装置は、内部メモリに記憶された制御プログラム及び各種制御用データ等に基づいて、本システムの全体の動作を制御するものである。すなわち、制御装置は、各種制御用データ等に基づいて制御演算を行う制御機器及び上記各構成機器(吸着・脱着装置1、ガスタービン2、熱交換器3等)とのデータ授受を行う各種入出力インターフェース回路等から構成されており、上記各構成機器を統括的に制御する構成となっている。
このような制御装置は、例えば、配管X2に設けられた開閉弁Y2、配管X3に設けられた開閉弁Y3、配管X4に設けられた開閉弁Y4、配管X5に設けられた開閉弁Y5、配管X9に設けられた開閉弁Y9及び配管X10に設けられた開閉弁Y10の開放/閉塞の動作を各々制御する構成となっている。また、制御装置は、配管X1に設けられた調節弁Y1、配管X4に設けられた調節弁Y4a及び調節弁Y4b、配管X8に設けられた調節弁Y8の開放/閉塞、さらにこれらの当該開放量を調節することで流体の供給量を各々制御することができる構成となっている。
【0025】
続いて、上記のように構成された揮発性有機化合物処理システムAによるVOCを処理する動作について図2及び図3を参照して説明する。
図2及び図3は、吸着・脱着装置1の各工程における様子を示す模式図であって、図2(a)は吸着工程、図2(b)は加圧・加温工程、図3(a)は脱着工程、図3(b)は冷却工程を示している。吸着・脱着装置1は、これらの各工程(吸着・脱着工程)を繰り返し行うことにより、処理対象ガスからVOCを除去する。
なお、図2及び図3において、各弁の白抜き表示は「開状態」にあることを示し、各弁の黒抜き表示は「閉状態」にあることを示している。
【0026】
(吸着工程)
不図示の制御装置は、図2(a)に示すように、開閉弁Y4、開閉弁Y5、開閉弁Y9、開閉弁Y10、調節弁Y1、調節弁Y4aを閉状態とすると共に、開閉弁Y2及び開閉弁Y3を開状態とする。開閉弁Y2及び開閉弁Y3が開状態となることで、吸着・脱着装置1にVOCを含んだ処理対象ガスが配管X3を介して下側から順次入力され、中段に設けられた吸着剤10を通過して上側の配管X2から順次出力される。この吸着工程において、処理対象ガスは、吸着剤10を通過する際にVOCが活性炭に吸着されるために浄化され、処理済ガスとして配管X2を介して外部に排出されることとなる。
なお、このとき調節弁Y8及び調節弁Y4bは、開放量を調節した開状態となっており、配管X8及び配管X4を介して常時一定量の水蒸気をガスタービン2に供給している。
【0027】
(加圧・加温工程)
次に、制御装置は、加圧・加温工程を行うべく、図2(b)に示すように、開閉弁Y2、開閉弁Y3、開閉弁Y4、開閉弁Y5、開閉弁Y9、開閉弁Y10及び調節弁Y4aを閉状態とすると共に、調節弁Y1を開状態とする。調節弁Y1が開状態となることで、吸着・脱着装置1に水蒸気が配管X1を介して上側から順次入力され、浄化容器11内が加圧・加温状態となり、吸着剤10の雰囲気が加温されることとなる。
このとき、常温状態にあった吸着・脱着装置1に、加圧・加温用の水蒸気を供給することによって当該水蒸気の一部が凝縮して液体のドレンとなる。そして、このドレンには、吸着工程によって吸着剤10に付着したVOCが微量ながら溶け込んでいる。
【0028】
(脱着工程)
浄化容器11内が十分に加圧・加温されると、制御装置は、脱着工程を行うべく、図3(a)に示すように、開閉弁Y2、開閉弁Y3、開閉弁Y5及び調節弁Y8を閉状態とすると共に、開閉弁Y4、開閉弁Y9、開閉弁Y10、調節弁Y1及び調節弁Y4aを開状態とする。調節弁Y1及び調節弁Y4aが開状態となることで、吸着・脱着装置1に水蒸気が配管X1を介して上側から順次入力されると共に、中段に設けられた吸着剤10を通過してVOCが混入した水蒸気が下側の配管X4を介して順次出力される。この脱着工程では、吸着剤10の活性炭に吸着されたVOCは、所定温度に加温された環境下において、吸着剤10を通過する水蒸気によって活性炭から脱着され、水蒸気に混入した状態で配管X4を介して排出されることとなる。
このとき、加圧・加温工程において生じたドレンもVOCが混入した水蒸気と共に配管X4を介して排出される。さらに、配管X4を流通するVOCが混入した水蒸気は、その流通過程での熱損失等により一部が液化し、ドレンを生じさせる。
なお、制御装置は、調節弁Y8を、開放量を調節して開状態とし、配管X4を流通するVOCが混入した水蒸気に、配管X8を介して水蒸気を加えて、一定量の水蒸気をガスタービン2に供給させる制御を行う構成であっても良い。
【0029】
VOCが混入した水蒸気と共に排出されたドレン及び流通過程で液化したドレンは、調節弁Y4a及び開閉弁Y4との間に設けられたドレン排出系4により回収される(液体回収工程)。より具体的には、先ず、ドレンは、配管X4から分岐して設けられたドレン配管X41に導入される。次に、ドレンは、ドレン配管X41からバイパス配管X41aに流動すると共に、ドレントラップ44の上流側に滞留する。ドレントラップ44は、所定量のドレンを滞留させると、ドレンが滞留することによる温度変化で開閉するバイメタル構造が動作し、余剰のドレンを自動的に下流側に排出することでドレンのみを回収する。
一方、ドレン排出系4によりドレンのみが分離された後のVOCが混入した水蒸気は、配管X4を流通してガスタービン2に連続的に供給され、ガスタービン2の燃焼器22により燃焼されることで分解・無害化されることとなる(燃焼工程)。
【0030】
ドレン排出系4により回収されたドレンは、ドレン配管X41を介してエゼクタ5に導入される。エゼクタ5は、開閉弁Y9が開状態となることで、脱着に用いられる水蒸気の一部が配管X9を介して供給され駆動する。エゼクタ5は、水蒸気の供給により内部が負圧となり、ドレン配管X41を介して回収されたドレンを吸引すると共に、供給された水蒸気と吸引したドレンとを混合して噴射することにより、ドレンをミスト化し、液体と気体が混合した二相流体となった状態で配管X10に導入する。
【0031】
ミスト化したドレンは、開閉弁Y10が開状態にあることから、配管X10を介して吸着・脱着装置1内に噴霧される(噴霧工程)。ここで、ミスト化したドレンは、吸着剤10に配管X1を介して水蒸気が供給される供給側に噴霧され、配管X1から流通する水蒸気の流れに混入して再び吸着剤10に回収されることとなる。このとき、ミスト化したドレンは、水蒸気との混入あるいは加温状態の吸着剤10の作用により気化するとともに、吸着剤10を通過することで吸着剤10にVOCを再び吸着・回収させる。そして、吸着剤10に回収されたVOCは、順次供給される水蒸気の作用により脱着され、当該水蒸気と共に、配管X4を介してガスタービン2に供給されることとなる。
【0032】
(冷却工程)
次に、制御装置は、冷却工程を行うべく、図3(b)に示すように、開閉弁Y3、開閉弁Y4、開閉弁Y9、開閉弁Y10、調節弁Y1及び調節弁Y4aを閉状態とすると共に、開閉弁Y2及び開閉弁Y5を開状態とする。開閉弁Y2及び開閉弁Y5が開状態となることで、吸着・脱着装置1に空気が配管X5を介して下側から順次入力され、中段に設けられた吸着剤10を通過して上側の配管X2から順次出力される。この冷却工程では、開閉弁Y2を開状態にすることで浄化容器11内を減圧させ常圧に戻し、空気が吸着剤10を通過することによって活性炭の雰囲気を冷却することで常態に戻すこととなる。
【0033】
そして、制御装置は、再び上記した吸着工程に移行させ、上記工程を順に繰り返し行うことで処理対象ガスからVOCを順次除去処理することとなる。
【0034】
したがって、上述の本実施形態によれば、処理対象ガスに含まれるVOCを吸着剤10に吸着させ、吸着剤10に吸着されたVOCを加圧環境下で水蒸気を用いて脱着して上記水蒸気に混入させる吸着・脱着装置1と、VOCが混入した水蒸気を燃焼させるガスタービン2とを有する揮発性有機化合物処理システムAであって、VOCが混入した水蒸気が液化したドレンを回収するドレン排出系4と、ドレン排出系4により回収したドレンをミスト化して吸着剤10に噴霧するエゼクタ5とを有するという構成を採用することによって、ドレンを回収して再度吸着剤10に噴霧することで、VOCを廃棄することなく吸着剤10に回収することができる。つまり、脱着時に、吸着剤10に回収されたVOCを水蒸気と共にガスタービン2に供給して燃焼させることができる。
したがって、本実施形態は、ドレンが有するVOCの化学エネルギーを廃棄することなく有効に回収することができると共に、廃棄処理コストの低減を図ることができる効果がある。
【0035】
また、本実施形態では、水蒸気の供給により駆動するエゼクタ5を用いてドレンをミスト化するという構成を採用することによって、電源等の動力を必要としないで容易にドレンをミスト化することができる。
【0036】
また、本実施形態では、脱着に用いられる水蒸気の一部を供給してエゼクタ5を駆動させるという構成を採用することによって、揮発性有機化合物処理システムAで使用する水蒸気をエゼクタ5に供給することで、エゼクタ5を駆動させるため外部に水蒸気を供給する機構を別途用意することが不要となり、廃棄処理コストの低減に寄与することができる。
【0037】
また、本実施形態では、エゼクタ5は、吸着剤10に水蒸気が供給される供給側に、ドレンを噴霧するという構成を採用することによって、ミスト化したドレンを吸着剤10に供給される水蒸気の流れに混入させて気化させると共に、吸着剤10を通過させてVOCを吸着剤10に回収させ易くすることができる。
【0038】
また、本実施形態では、吸着・脱着装置1からVOCが混入した水蒸気がガスタービン2へ供給される配管X4から分岐するドレン配管X41が設けられており、ドレン排出系4は、ドレン配管X41に設けられたバイパス配管X41aを開閉するドレントラップ44を有するという構成を採用することによって、ドレントラップ44によるバイパス配管X41aの開閉によって自動的にドレンのみを回収することができる。
【0039】
また、本実施形態は、処理対象ガスに含まれるVOCを吸着剤10に吸着させ、吸着剤10に吸着されたVOCを加圧環境下で水蒸気を用いて脱着して水蒸気に混入させる吸着・脱着工程と、VOCが混入した水蒸気を燃焼させる燃焼工程とを有する揮発性有機化合物の処理方法であって、VOCが混入した水蒸気が液化したドレンを回収する液体回収工程と、液体回収工程により回収したドレンをミスト化して吸着剤10に噴霧する噴霧工程とを有するという処理方法を採用することによって、ドレンを回収して再度吸着剤10に噴霧することで、VOCを廃棄することなく吸着剤10に回収することができる。つまり、脱着工程時に、吸着剤10に回収されたVOCを水蒸気と共に燃焼工程で燃焼させることができる。
したがって、本実施形態は、ドレンが有するVOCの化学エネルギーを廃棄することなく有効に回収することができると共に、廃棄処理コストの低減を図ることができる効果がある。
【0040】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0041】
例えば、図4の揮発性有機化合物処理システムAの別実施形態に示す様に、ドレン排出系4には、ドレン配管X41のドレン排出先に貯溜槽(貯溜部)46を設け、また、エゼクタ5の代わりに、貯溜槽46に貯留されたドレンを吸着・脱着装置1に圧送する電動ポンプ50及び電動ポンプ50により圧送されたドレンをミスト化して吸着剤10に噴霧する噴霧ノズル51が設けられる構成であっても良い。
なお、上記別実施形態では、貯溜槽46によりドレンを一時的に貯溜することができるため(貯溜工程)、本実施形態のようにドレンが排出されたら順次回収して噴霧する必要は無くなり、例えば、次のサイクルの吸着・脱着工程にて、ドレンを噴霧するといったような、ドレンを噴霧するタイミングの調整が可能となる。したがって、別実施形態では、例えば、ガスタービン2における負荷変動が起きたタイミングで、ドレンを噴霧するといったことが可能となるため、ドレンの有する化学エネルギーを利用して負荷変動に対応することができる揮発性有機化合物処理システムAを構成することができる効果がある。
また、VOCの非水溶性の特性を利用し、VOC成分を水成分と比重分離させて、当該VOC成分のみを吸着剤10に噴霧する構成であってもよい。このような構成を採用することで、水成分が除去されるため、VOCの処理能率が向上する効果がある。
【0042】
また、例えば、本実施形態では、揮発性有機化合物処理システムAは、吸着・脱着装置1を一つ有する構成を説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、例えば、吸着・脱着装置1が複数設けられ、各吸着・脱着装置1から順次吸着・脱着工程を行わせる構成であっても良い。
【0043】
また、例えば、本実施形態では、燃焼装置は、ガスタービン2であると説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、例えば、排熱回収ボイラ等の各種ボイラ等であっても良い。
【0044】
また、例えば、本実施形態では、開閉機構は、ドレントラップ44であると説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、例えば、制御装置によりある一定のタイミングで開状態となる開閉弁でドレンを回収する構成であっても良い。
【0045】
また、例えば、本実施形態では、揮発性有機化合物処理システムAは、脱着工程時に、ドレンを回収し噴霧すると説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、例えば、加圧・加温工程にて吸着・脱着装置1の底部に溜まったドレンを、調節弁Y4aを微開にすることでドレン排出系4により回収し、回収したドレンを吸着剤10に噴霧して再吸着させ、ドレンが生じていない状態で、加圧・加温工程から脱着工程に移行させる構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態における揮発性有機化合物処理システムの概要を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態における吸着・脱着装置の吸着工程と加圧・加温工程における様子を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態における吸着・脱着装置の脱着工程と冷却工程における様子を示す模式図である。
【図4】本発明の別実施形態における揮発性有機化合物処理システムの概要を示す模式図である。
【符号の説明】
【0047】
1…吸着・脱着装置、2…ガスタービン(燃焼装置)、4…ドレン排出系(液体回収装置)、5…エゼクタ(噴霧装置)、10…吸着剤、44…ドレントラップ(開閉機構)、46…貯溜槽(貯溜部)、50…電動ポンプ、51…噴霧ノズル、A…揮発性有機化合物処理システム、X4…配管(供給経路)、X41…ドレン配管(液体回収経路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象ガスに含まれる揮発性有機化合物を吸着剤に吸着させ、前記吸着剤に吸着された前記揮発性有機化合物を加圧環境下で水蒸気を用いて脱着して前記水蒸気に混入させる吸着・脱着装置と、前記揮発性有機化合物が混入した前記水蒸気を燃焼させる燃焼装置とを有する揮発性有機化合物処理システムであって、
前記揮発性有機化合物が混入した前記水蒸気が液化した液体を回収する液体回収装置と、
前記液体回収装置により回収した前記液体をミスト化して前記吸着剤に噴霧する噴霧装置とを有することを特徴とする揮発性有機化合物処理システム。
【請求項2】
前記噴霧装置は、水蒸気の供給により駆動するエゼクタを用いて前記液体をミスト化することを特徴とする請求項1に記載の揮発性有機化合物処理システム。
【請求項3】
前記脱着に用いられる前記水蒸気の一部を供給して前記エゼクタを駆動させることを特徴とする請求項2に記載の揮発性有機化合物処理システム。
【請求項4】
前記噴霧装置は、前記吸着剤に前記水蒸気が供給される供給側に、前記液体を噴霧することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の揮発性有機化合物処理システム。
【請求項5】
前記吸着・脱着装置から前記揮発性有機化合物が混入した前記水蒸気が前記燃焼装置へ供給される供給経路から分岐する液体回収経路が設けられており、
前記液体回収装置は、前記液体回収経路を開閉する開閉機構を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の揮発性有機化合物処理システム。
【請求項6】
前記液体回収装置は、回収した前記液体を貯溜する貯溜部を有し、
前記噴霧装置は、前記貯溜部に貯溜された前記液体を前記吸着剤に噴霧することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の揮発性有機化合物処理システム。
【請求項7】
処理対象ガスに含まれる揮発性有機化合物を吸着剤に吸着させ、前記吸着剤に吸着された前記揮発性有機化合物を加圧環境下で水蒸気を用いて脱着して前記水蒸気に混入させる吸着・脱着工程と、前記揮発性有機化合物が混入した前記水蒸気を燃焼させる燃焼工程とを有する揮発性有機化合物の処理方法であって、
前記揮発性有機化合物が混入した前記水蒸気が液化した液体を回収する液体回収工程と、
前記液体回収工程により回収した前記液体をミスト化して前記吸着剤に噴霧する噴霧工程とを有することを特徴とする揮発性有機化合物の処理方法。
【請求項8】
前記噴霧工程では、前記吸着剤に前記水蒸気が供給される供給側に、前記液体を噴霧することを特徴とする請求項7に記載の揮発性有機化合物の処理方法。
【請求項9】
前記液体回収工程では、回収した前記液体を貯溜する貯溜工程を有し、
前記噴霧工程では、前記貯溜工程により貯溜された前記液体を前記吸着剤に噴霧することを特徴とする請求項7または8に記載の揮発性有機化合物の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−233617(P2009−233617A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85079(P2008−85079)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】