説明

揮発性有機化合物処理装置の運用方法

【課題】揮発性有機化合物含有ガスを吸着塔に導入して吸着させた後、加熱した脱着用水蒸気で脱着させて、脱着用水蒸気に同伴した揮発性有機化合物を、脱着用水蒸気を生成するための燃料として利用する際に、他の燃料の消費量を抑制する。
【解決手段】吸着塔11への脱着用水蒸気の供給口を吸着塔11両端方向に複数段となるように設け、脱着後の水蒸気を抜き出して燃焼炉13へ通じる一端側に設けた供出口16に近い供給口15Aと、吸着塔の他端側に設けた供給口15Eとを少なくとも設けて、供出口16に近い側の供給口15Aから順に開放するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、揮発性有機化合物を含むガスを排出する前に、ガスから揮発性有機化合物を処理するにあたり、その処理作業の効率を向上させる運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場から発生する排ガスには、そのまま大気中に排出すると問題を起こす揮発性有機化合物が含まれる場合がある。この場合、排ガスを大気中に排出する前に、含有している揮発性有機化合物を処理しなければならない。その方法として、活性炭等の吸着剤を内蔵した吸着塔で、排ガス中に含まれる揮発性有機化合物を吸着剤に吸着させ、ガス中の濃度を低減させて大気へ排出し、その後、吸着剤から揮発性有機化合物を脱着させて吸着塔を再利用可能にするとともに、揮発性有機化合物を処理するという吸脱着方式が一般的である。
【0003】
上記の脱着には、揮発性有機化合物を含まないガスを吸着剤に接触させることが必要である。一基の吸着塔で脱着と同時に吸着することはできないので、脱着は速やかに実行することが好ましい。脱着を速める方法としては、脱着用のガスを大量に導入する方法、真空ポンプで吸引して圧力を低下させる方法、吸熱反応である脱着を促進するために高温の脱着用水蒸気を導入する方法などがある。
【0004】
高温の脱着用水蒸気を導入するには、その加熱のために燃料を大量に消費してしまうので、燃料を節約する方法が検討されている。特許文献1には、この回収した揮発性有機化合物を含む脱着用水蒸気を燃焼炉に誘導し、揮発性有機化合物を燃料として燃焼させ(請求項1)、その燃焼熱を利用して、脱着用水蒸気の加熱を行うこと(請求項2)が記載されている。
【0005】
一方、特許文献2には、真空ポンプで吸引する吸着塔で、吸着剤を設けた吸着剤層を複数段に分けて設けることで、高性能の真空ポンプを使わなくても、脱着速度を速める方法が提案されている。この文献に記載の吸着塔は、揮発性有機化合物であるアルコール類を含有するガスを下方から導入して、アルコール類が低減された排ガスを上方から抜き出すものである(特許文献2図1)。脱着用ガスの導入孔(パージエア導入管)を最上部の吸着剤層より上の箇所と各吸着剤層間に設け、脱着したガスの排気孔(排気導管)を各吸着剤層間と最下部の吸着剤層より下の箇所とに設けてある(特許文献2[0039])。その上で、脱着用ガスの導入孔と、それと吸着剤層を一つ挟んだ下にある排気導管との自動弁をセットで上から順次開き、脱着が終わり次第順次閉じる(特許文献2[0042]〜[0045])。
【0006】
ただし、この方法は吸引によって各層で段階的に脱着するものであり、加熱した脱着用水蒸気による方法では、個々の層間からガスを吸引する特許文献2の方法を採用してもこのような効果はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−222736号公報
【特許文献2】特開2002−293754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1(図1)に記載のように、揮発性有機化合物を含有する排ガスを吸着塔の下方から導入して、処理済みのガスを上方から排出するのに対して、脱着用水蒸気を吸着剤層の上方から導入して、吸着剤層の全部分で脱着させて、吸着剤層の下方側から抜き出すのでは、脱着用水蒸気が吸着剤層を通過するのに時間がかかりすぎてしまう。それはつまり、燃焼炉において脱着用水蒸気を生成するための加熱開始から、有機化合物が水蒸気に同伴して抜き出されて、燃焼炉(水蒸気生成装置)に到達するまでに時間が掛かりすぎてしまう。それまでの間は回収した揮発性有機化合物を燃料として用いることができず、LNGガスなどの別の燃料を使用しなければならず、無駄が生じていた。
【0009】
そこでこの発明は、加熱した脱着用水蒸気を用いて吸着塔から揮発性有機化合物を脱着する際に、脱着開始から燃料として利用可能にするまでのタイムラグを短縮して、燃料の無駄を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、
脱着用水蒸気の吸着塔への供給口を両端方向に分かれた複数段からなるものとして、
そのうちの最も吸着塔の一端側の供給口を、吸着塔の内部に吸着層が占める位置の側面に設け、
吸着塔の一端側に位置する供給口から開放して脱着用水蒸気を吸着層の途中から導入し、脱着させて揮発性有機化合物を取り込んだ有機化合物含有水蒸気を吸着塔の前記一端側から抜き出すことで、上記の課題を解決したのである。
【0011】
複数段の供給口のうち、最初に開く供給口は前記一端側、すなわち、有機化合物含有水蒸気の抜き出しをする供出口側に最も近いものである。このため、脱着用水蒸気が最初に吸着層を抜け出て燃焼炉に到達するまでの時間は、従来のように吸着層の全域を通過させていた場合よりも短縮できるようになる。これにより、燃料のみで燃焼炉の加熱を行わなければならない時間を短縮できる。
【0012】
また、全供給口のうち、最後に開放することになる最も前記他端側のものは、吸着層よりも前記他端側に設けることにより、吸着層全体を脱着対象とすることができる。
【0013】
具体的には、最も前記一端側の供給口は、吸着層の両端方向中央の位置よりも前記一端側の位置に設けてあると、供給された脱着用水蒸気が吸着層を抜けるまでの時間を大幅に短縮することができる。なお、最も前記他端側の供給口は、吸着層の前記他端側の端部か、それよりも前記他端側にあることが望ましい。最も前記他端側に位置する供給口より供出口から遠くなる箇所にある吸着剤の脱着効率が下がるためである。
【0014】
燃焼炉には温度センサを設けておき、燃焼炉での温度上昇を検知したら、燃焼炉に供給する燃料の量を絞るようにする燃料制御回路を設けておくとよい。揮発性有機化合物を含んだ脱着用水蒸気が燃焼炉に到達したら、燃焼炉に供給される可燃物質の量が増えて温度が上昇するので、この温度上昇を検知して、燃焼炉内の温度が適温となるように燃料の供給量を絞ることで、燃料を節約することができる。
【0015】
さらにその後、温度センサが燃焼炉の温度の低下を検知したら、供給される揮発性有機化合物の量が低下していることを意味するので、より他端側にある供給口を開いて、吸着層のうち未だ揮発性有機化合物を脱着されていない部分に脱着用水蒸気を供給して、脱着されて燃焼炉に供給される揮発性有機化合物を増やし、燃焼炉での燃焼を安定させることができる。また、それぞれの供給口を、上記一端側にあるものから時間経過とともに順に開放していってもよい。この場合、予め各供給口を開放しておく時間を設定しておく。さらに、各供給口を時間経過とともに開放し、最も他端側の供給口だけを、上記温度センサが温度の低下を検知したら開放するようにしてもよい。
【0016】
なお、吸着層は一層だけからなるものでもよいし、複数段設けた脱着用水蒸気の供給口ごとに、複数層設けても良い。複数層に分かれている場合、最も上記一端側に位置する供給口は、最も上記一端側に位置する吸着層の存在する箇所か、又はその吸着層とそれより一つ上記他端側に位置する吸着層との間に設ける。
【0017】
なお、供出口は最も上記一端側の供給口よりも上記一端側に設けてあればよく、吸着層が占める箇所の側面でもよいし、吸着層の端部より上記一端側でもよい。
【発明の効果】
【0018】
この発明を、揮発性有機化合物を含有するガスを処理する吸着塔で実施することにより、揮発性有機化合物の除去に用いる燃料の消費を抑え、省エネを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明を実施する吸着塔及びその周辺装置の概念図
【図2】この発明を実施する脱着工程のフロー図
【図3】吸着塔を二基備えて実施する吸着工程及び脱着工程のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を説明する。この発明は、揮発性有機化合物含有ガスの濃度を低減させて大気中へ排出可能とし、その分の揮発性有機化合物を回収して燃料として使用する揮発性有機化合物処理装置にかかるものである。図1はこの発明にかかる揮発性有機化合物処理装置の全体像の例を示す。
【0021】
この発明で処理する揮発性有機化合物とは、常圧で加熱することで気体になり得る有機化合物であり、特に常温で液体であるものが吸着処理しやすい。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数が1〜8程度のアルコール、トルエン、ベンゼンなどの芳香族有機化合物などの、炭化水素系の溶剤が挙げられる。
【0022】
この発明を実施する揮発性有機化合物処理装置は、吸着塔11と、燃焼炉13と、熱交換器14とからなる。
【0023】
吸着塔11は、略円筒形であり、内部は下方側の端部近傍に設けた一枚の多孔板20で仕切ってある。この多孔板上に、揮発性有機化合物を吸着し、加熱により脱着できる吸着剤を充填させた吸着層12を設けている。この吸着剤としては、例えば活性炭などが挙げられる。
【0024】
吸着塔11の吸着層12より上端側には、揮発性有機化合物含有ガスAの導入口17が設けてあり、吸着層12より下端側には、揮発性有機化合物を吸着剤に吸着されて濃度が低下した処理後ガスBの排出口18が設けてある。排出口18は大気中へ放出するものである。
【0025】
また、吸着塔11の吸着層12を設けた部分の側面と下端とに、複数段(図1では合計5段)からなる脱着用水蒸気Fの供給口15A〜15Eが設けてある。最上段の供給口15Aは吸着層12の上下方向中央よりも上で吸着層12の上端の多孔板20よりも下に位置しており、最下段の供給口15Eは吸着層12の下端よりも下に位置している。また、有機化合物を脱着した有機化合物含有水蒸気Kを抜き出すための供出口16が、吸着層12の上端よりも上端側に設けてある。
【0026】
燃焼炉13は、上記脱着用水蒸気Fを生成するための熱を発生させるものであり、燃料Dを供給する燃料供給口21と、吸着塔11の供出口16から送られてきた有機化合物含有水蒸気Kを供給する含有水蒸気供給口22、バーナ(図示せず)、煙突(図示せず)、内部温度を測定する燃焼炉温度センサ24を有する。この燃焼炉13で発生した熱が、熱交換器14へ供給される。
【0027】
熱交換器14には、水蒸気の元となる水Eを供給する水供給口26を備え、水Eを加熱して得られた脱着用水蒸気Fを吸着塔11の供給口15A〜15Eへ供給する、脱着用水蒸気供給路25と、脱着用水蒸気供給路25の内部温度を測定する水蒸気温度センサ28とを有する。なお、水供給口26は、脱着用水蒸気供給路25内に水Eを噴霧する機能を有している。また、脱着用水蒸気供給路25は、途中で分岐(27a,27b)しており、一の分岐27bは大気への開放口29に繋がるとともに、分岐27aと熱交換器14の間で循環経路を形成している。
【0028】
この発明にかかる揮発性有機化合物処理装置は、まず、吸着塔11に導入された揮発性有機化合物含有ガスAに含まれる揮発性有機化合物を、吸着層12の吸着剤に吸着させる。吸着層12を通過した処理後ガスBは排出口から出て大気中へ放出される。この吸着作業を一定時間が経過するまで、又は、吸着能が一定以下になるまで行う。なお、吸着能の低下を検知して吸着を止めるには、排出口18に揮発性有機化合物の検出装置(図示せず)を設け、そこで処理後ガスBに含まれる揮発性有機化合物の濃度を測定し、予め定めた値以上になったら、吸着層12の吸着能が限界に達していると解釈して導入口17の弁へ閉める命令を出す制御回路を設ける。
【0029】
一方、吸着を終える前から脱着の準備を進めておく。脱着用水蒸気Fは即座に供給開始できるものではないので、吸着終了後から加熱を始めると、脱着が始まるまでの間にタイムラグが生じてしまい、本来必要な吸着工程が止まってしまうためである。なお、吸着塔11が二基以上ある場合は、一方で吸着工程を止めても他方で吸着工程を行うことができるが、その場合は常に脱着用水蒸気Fを用意していることとなる。
【0030】
この脱着工程を図2のフローを用いて説明する。まず、燃焼炉13で燃料Dの燃焼を開始し、脱着用水蒸気供給路25の循環経路内の空気を、経路中に設けたファン(図示せず)で循環させる(S11)。この時の空気温度を水蒸気温度センサ28で検知し、水蒸気が生成できる設定温度T1以上になったことを水制御回路30が確認したら(S12)、分岐27aから熱交換器14へ戻る脱着用水蒸気供給路25中への水Eの水供給口26の弁を開放し、水Eを噴霧して熱交換器14内で水蒸気を生成させる(S13)。熱交換器14では、水蒸気温度センサ28で生成する水蒸気の温度を検知しておき、脱着用水蒸気Fが脱着に好適な温度T2になるまで(S14)、又は吸着が終了するまで、開放口29への弁を開放して、大気中へ放出する(S15)。脱着は吸熱反応であるため、十分に高温の水蒸気でなければ脱着が速やかに進行しないからである。なお、ここで脱着用水蒸気Fとは、過熱水蒸気又は飽和水蒸気である。
【0031】
吸着塔11での吸着が終了し、脱着用水蒸気Fが所定の温度T2以上になったら(S14)、開放口制御回路31は、開放口19への弁を閉じ、最も供出口16に近い供給口15Aへの脱着用水蒸気Fの弁を開放する(S16)。供給口15Aに供給された脱着用水蒸気Fは、吸着層12の上層部分に吸着した揮発性有機化合物を脱着させて、有機化合物含有水蒸気Kとなって供出口16から供出させる(S17)。ここで、供給口15Aは吸着層12の上端に近いほど、脱着した有機化合物含有水蒸気Kが吸着層12を抜けて上方の供出口16に到達するまでの時間は短くなる。ひいては、その供出口16から燃焼炉13へ通じる含有水蒸気供給口22に有機化合物含有水蒸気Kが到達する(S18)までの時間も短縮される。
【0032】
有機化合物含有水蒸気Kが燃焼炉13に到達すると(S18)、燃焼炉13に供給される可燃物の合計量が増えるので、燃焼炉13内の温度が上昇する。この温度上昇を燃焼炉温度センサ24で検知する。燃料Dのみの燃焼の際の温度上昇の誤差分を上回るとして規定する規定の温度T3を燃料制御回路33に予め規定しておき、燃焼炉温度センサ24の検知温度がT3以上となったら(S19)、有機化合物含有水蒸気Kの到達により、可燃物が増えたとみなして、燃料供給口21へ供給される燃料Dの弁を絞り、燃料Dを節約する(S20)。
【0033】
ただし、有機化合物含有水蒸気Kに含まれる有機化合物は、供給口15A付近に吸着した揮発性有機化合物が徐々に脱着されていくにつれて減っていくので、順次供出口16に近い側の供給口15B、15C,15D,15Eの弁を開放していき、燃焼炉13に供給される揮発性有機化合物の量が過度に低下しないようにする。この開放するタイミングは、最も供出口16側にある供給口15Aを開放してからの経過時間によって決定しておいてもよいし、燃焼炉13の燃焼炉温度センサ24が予め規定した温度低下を示す、すなわち、燃やすべき可燃物の量が減少したことを検知したら、順次開放するようにしてもよい。温度低下を検知する場合、可燃物が減少して対処すべきと考えられる炉内温度T4を予め規定した供給口制御回路32が、燃焼炉温度センサ24の温度低下を検知したら(S21)、供給口15B〜15Eの未開放の弁のうち、最も供出口16側(上端側)にある弁を開放する(S22〜S25)。一つの弁を開放して、一旦炉内温度が上昇したら、再び炉内温度を監視し、温度低下を検知したら次の弁を開放する。これを、全ての供給口が開くまで続ける(S26)。なお、次の弁を開放したら、それまで開放していた供給口の弁は閉鎖する。
【0034】
供給口15A〜15Eを開放してから、吸着層12における脱着が十分に進行する時間t1が経過したら(S27)、弁15A〜15Eを閉鎖して脱着を終了する(S28)。また、吸着塔11が一基である場合には、燃料Dを供給する燃料供給口21の弁を閉めて、燃焼炉13での燃焼を終了する(S29)。また、合わせて供出口16の弁も閉じる。
熱交換器14でなお生成する余剰の脱着用水蒸気は、開放口29の弁を開放して大気中へ放出する(S30)。
【0035】
以上で吸着塔11の脱着は終了し、再び吸着層12での吸着が可能な状態になったので、揮発性有機化合物含有ガスAの導入口17を開放して吸着を開始し、一定時間吸着した後、上記と同様の手順で脱着を行う。
【0036】
この発明の他の実施形態として、吸着塔11に設ける供給口15A〜15E、供出口16,導入口17、排出口18の位置は、上下方向が逆でもよい。
【0037】
また、別の実施形態として、吸着塔11を二基備えた実施形態が挙げられる。吸着塔11が一基である前記の実施形態では、脱着をしている間は揮発性有機化合物含有ガスAの処理ができないので、一時的に処理を停止して蓄えておかなければならないが、吸着塔11を二基備えていると、一基で吸着を終えて脱着へ移行する間に、もう一基で吸着を開始することができるので、脱着に要する時間が吸着可能な時間よりも短ければ、揮発性有機化合物含有ガスAの処理を停止することなく続けることができる。この実施形態を実現するには、各々の吸着塔11への供給、排出等を行う口をそれぞれ設けて、個々の弁を独立に動作可能とするように前記の制御回路を用意する。
【0038】
このような吸着塔11を二基備えた実施形態での吸着及び脱着の手順を図3に示す。まず、吸着塔αでの吸着終了とともに、吸着塔βでの吸着を開始する。吸着塔βの吸着能が低下しきるまでに、吸着塔αの吸着層12に対して脱着を開始する。まず供給口15Aを開放し、最初の有機化合物含有水蒸気Kが到達して燃焼炉13の温度が上昇したら、燃料Dの供給量を低減させる(S20)。その後、燃焼炉13の温度低下(S21)を検知するとともに、順次供給口15B〜15Eを開放して(S16)、吸着層12の脱着を進行させる。脱着が十分に進行したら、吸着塔αへの脱着用水蒸気の導入を停止する(S41)。燃焼炉13には有機化合物含有水蒸気Kが到達しなくなるので、足りなくなった燃焼物質分を補うために、一旦燃料Dの供給量を回復させ(S42)、燃焼を維持する。また、この間脱着用水蒸気Fは常に生成しているが、供給口15A〜15Eは全て閉ざされているので、分岐27aから熱交換器14に循環させておくか、適宜開放口29から開放する。そして、吸着塔βでの吸着が終了したら、脱着により機能を回復した吸着塔αでの吸着を開始し、その間に吸着塔βへの脱着用水蒸気Kの供給を開始して、同様に脱着を行う。
【符号の説明】
【0039】
11 吸着塔
12 吸着層
13 燃焼炉
14 熱交換器
15A〜15E 供給口
16 供出口(有機化合物含有水蒸気)
17 導入口(揮発性有機化合物含有ガス)
18 排出口(処理後ガス)
21 燃料供給口
22 含有水蒸気供給口
24 燃焼炉温度センサ
25 脱着用水蒸気供給路
26 水供給口
27a,27b 分岐
28 水蒸気温度センサ
29 開放口
30 水制御回路
31 開放口制御回路
32 供給口制御回路
33 燃料制御回路
A 揮発性有機化合物含有ガス
B 処理後ガス
D 燃料
E 水
F 脱着用水蒸気
H 排出水蒸気
K 有機化合物含有水蒸気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物を吸着する吸着剤を充填した吸着層を内部に有する吸着塔に、揮発性有機化合物を含有するガスを導入し、揮発性有機化合物を吸着剤に吸着させて含有量を低減させた処理後ガスを排出した後、燃焼炉で加熱した脱着用水蒸気を導入して吸着剤から揮発性有機化合物を脱着させ、脱着した有機化合物含有水蒸気を前記燃焼炉に導入して燃焼させる、吸着塔の運用方法であって、
上記脱着用水蒸気の吸着塔への供給口は吸着塔の両端方向に分かれた複数段からなるものとし、そのうちの最も前記一端側の供給口を、吸着塔の内部に吸着層が占める位置の側面に設け、揮発性有機化合物を脱着した後の有機化合物含有水蒸気を抜き出す供出口を前記一端側の供給口よりも前記一端側に設け、
前記一端側に位置する供給口から脱着用水蒸気を導入する、
揮発性有機化合物吸着塔の運用方法。
【請求項2】
上記燃焼炉に温度センサを設け、燃焼開始後に予め規定した以上の温度上昇を検知したら、上記燃焼炉に供給する燃料の量を低減させる請求項1に記載の運用方法。
【請求項3】
上記燃焼炉に温度センサを設け、最も前記他端側の供給口は、上記温度センサが予め規定した温度下限値以下になった際に開放する、請求項1又は2に記載の運用方法。
【請求項4】
上記吸着塔を複数基からなるものとし、一方の吸着塔で吸着を終えた後脱着を行う間に、他方の吸着塔で吸着を行うことで、上記ガスの処理を継続して行う請求項1乃至3のいずれか1項に記載の運用方法。
【請求項5】
有機化合物を吸着する吸着剤を充填した吸着層を内部に有する吸着塔と、その吸着剤から前記揮発性有機化合物を脱着させるための脱着用水蒸気を加熱する熱交換器と、熱交換器のために燃料及び脱着した有機化合物含有水蒸気とを燃焼させる燃焼炉とからなる、揮発性有機化合物を含有するガスの含有量を低減させる揮発性有機化合物処理装置であって、
上記脱着用水蒸気の上記吸着塔への供給口は両端方向に複数段からなり、それら供給口は前記一端側にあるものから開放する供給口制御回路を有し、
揮発性有機化合物を脱着した後の有機化合物含有水蒸気を抜き出す供出口は最も前記一端側の供給口よりも前記一端側に設けた、揮発性有機化合物処理装置。
【請求項6】
上記燃焼炉が温度センサを有し、予め規定した温度T3と炉内温度とを比較して炉内温度がT3以上となったら上記燃焼炉に供給する燃料の量を低減させる燃料制御回路を有する請求項5に記載の揮発性有機化合物処理装置。
【請求項7】
上記燃焼炉が温度センサを有し、
上記供給口制御回路は、予め規定した温度T4と炉内温度とを比較して炉内温度がT4以下となった後に、最も前記他端側にある供給口を開放する請求項5又は6に記載の揮発性有機化合物処理装置。
【請求項8】
上記吸着塔を複数基有し、一の吸着塔が吸着を行っている間に、他の吸着塔に脱着用水蒸気を供給して脱着を実行可能とするように、それぞれの吸着塔への供給口を両端方向に複数段設けた請求項5乃至7のいずれか1項に記載の揮発性有機化合物処理装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−206690(P2011−206690A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77251(P2010−77251)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】