説明

揮発性有機化合物(VOC)の放出が少ないシリカ補強ゴムの配合

アルコキシ変性シルセスキオキサン化合物類について記載する。該アルコキシ変性シルセスキオキサン化合物類は、ゴム中でシリカ分散助剤としてアルコキシシラン−シラン反応に関与し、配合中及び更なる加工中に、ゴム成分の0から約0.1重量%の揮発性有機化合物(VOC)、特にアルコールを放出するアルコキシシラン基を含む。アルコキシ変性シルセスキオキサン類の製造方法、アルコキシ変性シルセスキオキサン類を含む加硫可能なゴム配合物類の製造方法、アルコキシ変性シルセスキオキサン類を含む加硫可能なゴム配合物類の製造方法、アルコキシ変性シルセスキオキサン類を含む加硫可能なゴム配合物類、及びアルコキシ変性シルセスキオキサン類を含む構成部材からなる空気入りタイヤについて更に記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2005年3月24日出願の米国特許仮出願シリアル番号第60/664,757号の優先権を主張するものであり、これを本願に引用して援用する。
【0002】
本技術は、概してアルコキシ変性シルセスキオキサン化合物類及び補強剤としてシリカを含む加硫可能なエラストマー中においてかかる化合物を分散剤として使用することに関する。
【背景技術】
【0003】
タイヤ、パワーベルトなどのゴム物品中で使用するエラストマー組成物を製造する場合、これらのエラストマー組成物は配合している間、容易に加工でき、且つ分子量分布、ガラス転移点温度(T)及びビニル結合含量が制御されていると共に高分子量であることが望ましい。また、シリカ及び/又はカーボンブラック等の補強性充填剤は、配合物のムーニー粘度、モデュラス、タンジェントデルタ(tanδ)など種々の物性を改善するため、ゴム全体に渡って十分に分散していることが望ましい。これらの性質の改善を示す加硫エラストマーから製造されたゴム物品、特にタイヤは、ヒステリシスロスが低減され、転がり抵抗、氷雪上でのトラクション、ウェットトラクションが改善され、かかるタイヤを具える車両の燃費を改善する。
【0004】
しかしながら、表面に極性のシラノール基を含むシリカ粒子は、配合後、頻繁に自己会合し且つ再凝集する傾向にあり、シリカの分散性が悪化し配合物の粘度が高くなるため、シリカをゴムストックに混合することは難しい。強固なシリカ充填剤のネットワークは、結果として押し出しや成型作業における作業が困難な硬い未加硫の配合物をもたらす。
【0005】
こうした問題を軽減するために、特に限定されるものではないが、周知のビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィド類(例えば、テトラスルフィド及びジスルフィド)並びにオクチルトリエトキシシランとメルカプトアルキルトリアルコキシシラン類の組み合わせを含むシリカカップリング剤を使用して、シリカの分散性及び配合物の粘度を改善している。これらのカップリング剤は、シリカの表面と反応可能な部分(例えばアルコキシシリル基)及びポリマーと結合する部分(例えばメルカプト基又はその他の硫黄基)を有する。
【0006】
また、オルガノアルコキシシラン配合物は、分散性及び配合物の粘度を改善する遮蔽剤又は疎水剤としてシリカ表面と反応する物質として使用されてきた。これらの配合物のアルコキシシリル基は、シリカ表面と反応するもののポリマーと結合する部分は持っていない。これらの物質として周知なものの例としては、特に限定されるものではないが、オクチルトリエトキシシラン類、デシルトリエトキシシラン類、ドデシルトリエトキシシラン類、及びこれらのトリメトキシシランの等価物などが挙げられる。更に、エラストマーを、シリカと反応するアルコキシシラン基を含む官能基で終結処理して配合物の性質を改善することも知られている。
【0007】
前述のシリカ分散助剤及び官能化エラストマー全てについての特徴は、ゴム配合物の混合中にシリカ表面のシラノール基と反応して(アルコキシシラン−シリカ反応)、アルコールを発生させ環境中に放出する一個以上のアルコキシシラン基が存在することである。特に、かかる混合が高い加工温度で実行される場合、アルコールが放出され、ゴム配合物の加工中に揮発性有機化合物類(VOC)が発生し、場合によっては放出される一因となる。低い加工温度では、配合した生成物が相当量の未反応のアルコキシシリル基を保持しており、貯蔵、押し出し、タイヤ成型及び/又は加硫中にシリカや水蒸気と更に反応し、その結果、配合物の粘度の望ましくない上昇を引き起こしたり、貯蔵寿命を短くしてしまう可能性がある。混合した配合物中でのこうした持続的な反応は、配合物の更なる加工を阻害し得るアルコールを更に発生する。その結果、引き伸ばした生成物が仕様と一致することを保証するため、トレッドストリップを引き出す速度を低速で維持しなければならないが、このことは生産性を低下させ、コストの増加を伴う。
【0008】
これまでのところ、ゴム製造技術においてゴム配合物に大量のシリカをローディングする傾向が続いているが、環境中に放出されるアルコールの水準を抑制する課題がある。更に、生産性を向上させコストを下げるため、混合した生成物中に含まれるアルコールの量を減少させる必要がある。従って、シリカ補強ゴムの配合中、加工中、加硫中及び貯蔵中のアルコールの発生を著しく少なくする又は無くす必要性が存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
アルコキシ変性シルセスキオキサン配合物についてここに説明する。該アルコキシ変性シルセスキオキサン配合物は、ゴム中のシリカ分散助剤としてアルコキシシラン−シリカ反応に関与するアルコキシシラン基を含み、配合中及び更なる加工中に、ゴムの重量の0から約0.1%の揮発性有機化合物(VOC)、特にアルコールを放出する。更に、アルコキシ変性シルセスキオキサン類の製造方法、アルコキシ変性シルセスキオキサン類を含む加硫可能なゴム配合物の製造方法、アルコキシ変性シルセスキオキサン類を含む加硫可能なゴム配合物、及びアルコキシ変性シルセスキオキサン類を含む部材を具える空気入りタイヤについて説明する。
【0010】
特に、ここに記載したアルコキシ変性シルセスキオキサン類は、下記式:
【化1】

[式中、w、x及びyはモル分率を表し、yはゼロではなく、wかxの何れかがゼロである可能性はあるが両方がゼロであることはなく、且つw+x+z=1.00である]で表わされるアルコキシ変性シルセスキオキサン及びこれらの混合物からなる群から選択される一種以上の化合物を含み、R、R及びR、は同じであるか又は異なっており、(i)H又は1から約20の炭素原子を有するアルキル基、(ii)3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、(iii)7から約20個の炭素原子を有するアルキルアリール基、及び(iv)RX[式中、XはCl、Br、SH、S、NR、OR、COH、SCOR、CO、OH、オレフィン類、エポキシド類、アミノ基、ビニル基、アクリレート類及びメタクリレート類からなる群から選択され、aは1から約8であり、Rは1から約20の炭素原子を有するアルキレン基及び3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基からなる群から選択され、R及びRは1から約5個の炭素原子を有するアルキル基、3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、及び7から約20個の炭素原子を有するアルキルアリール基からなる群から選択される]からなる群から選択されることを特徴とする。
【0011】
アルコキシ変性シルセスキオキサン類を含む加硫ゴム配合物は、ゴム補強性を高め、ポリマー−充填剤相互作用を増大させ、且つ配合物の粘度を低下させ、ウェットトラクション及びスノートラクションが改善され、転がり抵抗が低下し、反発性が向上し且つヒステリシスロスが減少したタイヤを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のアルコキシ変性シルセスキオキサン(AMS若しくはco−AMS)化合物又は化合物類は、下記式:
【化2】

[式中、w、x及びyはモル分率を表し、yはゼロではなく、wかxの何れかがゼロである可能性はあるが両方がゼロであることはなく、且つw+x+z=1.00である]及びこれらの混合物を有し、R、R及びR、は同じであるか又は異なっており、(i)H又は1から約20の炭素原子を有するアルキル基、(ii)3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、(iii)7から約20個の炭素原子を有するアルキルアリール基、及び(iv)RX[式中、XはCl、Br、SH、S、NR、OR、COH、SCOR、CO、OH、オレフィン類、エポキシド類、アミノ基、ビニル基、アクリレート類及びメタクリレート類からなる群から選択され、aは1から約8であり、Rは1から約20の炭素原子を有するアルキレン基及び3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基からなる群から選択され、R及びRは1から約5個の炭素原子を有するアルキル基、3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、及び7から約20個の炭素原子を有するアルキルアリール基からなる群から選択される]からなる群から選択されることを特徴とする。
【0013】
一般に、AMS化合物(類)は、縮合触媒の存在下、アルコール水溶液においてアルキルトリアルコキシシラン又はアルキルトリクロロシランを加水分解及び縮合することにより製造できる。この反応は、アルキルトリアルコキシシラン又はアルキルトリクロロシランの実質的全量がAMS化合物(類)に転換するために十分な時間だけ持続する。反応混合物中の水の量を制御することにより、反応物を最終生成物に転換する速度を加速しうることが見出されてきた。その後、AMS生成物を相分離により反応混合物から取り出す。また、反応混合物中の残余のAMS生成物は何れも、水と、特に限定されないが、クロロヘキサンなどの有機溶媒とにより抽出できる。次に、熱真空オーブンでAMS生成物を乾燥することにより、前記反応混合物中の残余のアルコール及び水を大体除去できる。得られる生成物は液体又は固体であり、好ましくは高粘度の液体であり、実質的に水分及びアルコールを含まない。
【0014】
AMS化合物(類)の望ましい製造方法を以下の実施例中に記載する。また、この開示による教示により、前記化合物(類)を生成する他の方法が当業者に明白となるであろう。
【0015】
AMS化合物類の製造に使用するために適した加水分解及び縮合触媒については周知であり、特に限定されるものではないが、塩酸、硫酸、リン酸などの強酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの強塩基、並びに(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)、イミダゾール類、グアニジン類などの有機強酸及び有機強塩基、並びに当業者に周知の種々のスズ化合物及びチタン化合物が挙げられる。強酸触媒類はAMS化合物類の製造に使用するために特に好ましい。使用した触媒の量は、所望の有効反応速度に基づく。反応剤としてアルキルトリクロロシランを使用する場合、反応混合物に水を加えることにより結果的に塩酸が生成し、そのため反応物に更に触媒を加える必要がないことが認められるであろう。
【0016】
かかる反応が起こる温度は、重要ではない。例えば、AMS生成物は、室温(約25℃)〜約60℃〜100℃において、ほぼ同一の収量が得られる。AMS生成物は曇った残留物として観察でき、必要に応じて、反応物の実質的全量がAMS生成物に転換するまでの間、反応混合物から漸次除去できる。更に、反応中、追加のアルキルトリアルコキシシラン又はアルキルトリクロロシラン反応物を水と共に加えることにより、連続的に生成物を産生できる。
【0017】
反応物がAMS生成物に全て転換するための時間は、反応物の初期濃度並びに追加で加える反応物及び/又は処理中に加える熱に依存する。しかしながら、追加の反応物を使用しなければ、かかる時間は約0.5時間から約200時間、多くの場合約0.75時間から約120時間、又は約1時間から約72時間の範囲である。全てが転換するための時間は、上記のように、相分離により更なる生成物が除去されず、また水や有機溶媒により反応混合物から更なる生成物が抽出されなくなるまでの経過時間で定義される。
【0018】
AMS生成物の製造における典型的なアルキルトリアルコキシシラン反応物としては、特に限定されるものではないが、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリブトキシシラン、メチル−トリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、ノニル−トリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリアルコキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチル−トリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、オクタデシル−トリメトキシシラン、2−エチルヘキシル−トリエトキシシラン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0019】
AMS化合物を製造するための典型的なアルキルトリクロロシランとしては、特に限定されるものではないが、オクチルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘプチルトリクロロシラン、ノニルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシランなど、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0020】
co−AMS化合物は、アルキルトリアルコキシシラン又はアルキルトリクロロシランを、AMS化合物に(上記でXRと定義した)官能基を与えうる他の化合物と共に、加水分解及び縮合することにより共反応することによって得られる。例えば、ゴム配合物中で使用するためには、エラストマーと結合しうる硫黄原子を含むco−AMS化合物を生成することが望ましい。従って、望ましいco−AMS化合物は、アルキルトリアルコキシシラン又はアルキルトリクロロシランを、例えばメルカプトアルキルトリアルコキシシランと共に共重合及び共縮合させてメルカプトアルキル基を導入するか、或いはブロック化メルカプトアルキルトリアルコキシシランと共に共重合及び共縮合させてブロック化メルカプトアルキル基を導入することにより製造できる。
【0021】
本明細書においては、“ブロック化メルカプトアルキルトリアルコキシシラン”という用語の使用は、シリカ反応性のメルカプトシラン部分には作用しない一方で、分子のメルカプト部をブロックするブロック化部分を含むメルカプトシランシリカカップリング剤と定義している(すなわち、メルカプト水素原子は他の基で置換され、その後“ブロッキング基”と呼ばれる)。望ましいブロック化メルカプトシランとしては、特に限定されるものではないが、米国特許第6,127,468号、第6,204,339号、第6,528,673号、第6,635,700号、第6,649,684号、第6,683,135号が挙げられ、これらの開示について、記載されている実施例と共に本願に引用し援用する。この開示のために、シリカ反応性“メルカプトシラン部”は、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランの分子量に等しい分子量と定義される。脱ブロック化剤を製造工程の後、すなわちシリカ−シラン反応が起こった後に加えて、メルカプトシランの硫黄原子をゴムに速やかに結合させることができる。脱ブロック化剤は、脱ブロック化が望ましい如何なる混合段階中でも、混合工程中の如何なる時にも、単一成分として加えることができる。しばしば、脱ブロック化は配合の加硫段階中が望ましく、追加の脱ブロック化剤は最終混合段階中に加える。脱ブロック化剤は硫黄加硫用パッケージに含めることができ、また、特に亜鉛塩と共同して、しばしば加硫促進剤として働きうる。脱ブロック化剤の例は、当業者に周知である。
【0022】
生じたAMS生成物またはco−AMS生成物は、通常、あらゆる大きさのオリゴマーの混合物であり、ここから特定の大きさ又は分子量の一種以上の化合物を、クロマトグラフィーなどの周知の方法によりかかる混合物から分離できる。これらの一種以上の生成物がアルコキシ変性シルセスキオキサン類であることが望ましい。例えば、こういったアルコキシ変性シルセスキオキサン類としては、特に限定されるものではないが、オクチルアルコキシ変性シルセスキオキサン類、フェニルアルコキシ変性シルセスキオキサン類、2−クロロプロピルアルコキシ変性シルセスキオキサン類、2−メルカプトプロピルアルコキシ変性シルセスキオキサン類、チオアシルプロピルアルコキシ変性シルセスキオキサン類など、及びこれらの混合物が挙げられる。前記アルコキシ変性シルセスキオキサンは、アルキル−共−メルカプトアルコキシ変性シルセスキオキサンを含みうることが望ましい。
【0023】
産生されるAMS生成物又はco−AMS生成物のそれぞれの特徴は、前記一種以上のアルコキシ変性シルセスキオキサン“w基”及び/又は“x基”に結合した反応性のアルコキシシリル基“y基”が存在することである。AMS化合物において、wとxの何れかがゼロである可能性はあるが、両方がゼロではない。co−AMSにおいては、wとxはゼロではない。一種以上のw基又はx基のモル分率は、w又はxのモル分率を合計のモル分率w+xで割ることにより計算する。w+xの割合の合計に対するwのモル分率の割合(又はxのモル分率の割合)は約0.01から約0.5であることが望ましい。また、x、y及びzの相対存在量が測定可能であれば、x、y及びzのモル分率はR、R及びRのモル分率を介して測定できる。w、x及びyのモル分率の合計は常に1に等しく、yはゼロではない。
【0024】
w、x及びyの個々の重量分率は、それぞれの式量(FW)をかけたモル分率を、w、x及びyの個々の重量分率の合計で割ることにより計算できる。例えば、xの重量パーセント(W%(x))は、下記式(1):
【数1】

で計算する。
【0025】
アルコール(HOR)の重量パーセントは、下記式(2):
【数2】

により計算できる。
【0026】
これらの方法を用いて製造したアルコキシ変性シルセスキオキサン類は、反応性のアルコキシシリル基を有する“開放”構造から実質的になり、種々の化合物においてナノ粒子充填剤としての用途が周知な、純粋な閉鎖ケージ構造の多面体有機シルセスキオキサン類(POSS)を実質的に含まない。例えば、典型的なオリゴマー混合物中の29Si含有率に関する核磁気共鳴(NMR)分析が図2中に説明されており、これは(百万分の1で)約−47ppmから約−71ppmの広範囲を表している。これに対して、純粋な閉鎖ケージPOSS構造の29Si含有率のNMR分析(図1)では、約−68ppmに明確なピークを示す。図1において、POSS構造は、ハイブリッドプラスチック、ファウンテンバレー、カルフォルニアから得られる閉鎖多面体Si1018(T10)構造及びSi1218(T12)構造の混合物である。表6において、以下に議論するように、調製した典型的なオリゴマーのAMS生成物及びco−AMS生成物のppmでの29SiNMRの範囲では、この構造に結合した各種R基が存在することによりケイ素原子がシフトする結果として生じうる−67ppmから−77ppmの範囲で小さなピークが示される。しかしながら、理論に縛られるものではないが、上記のようにAMS生成物及びco−AMS生成物を調製する方法は、速やかにトリアルコキシシランを縮合させる無数の異なる幾何学的結合のため、純粋なPOSS構造の形成を不可能にするか又は最小化するものと思われる。また、生成物中のH及び/又は13Cの量に関してはNMRスペクトルの領域によって決定できるが、これらのスペクトルは、前記構造に結合する各種R基により異なることがある。これらのスペクトルはここに図示しない。
【0027】
生成した各AMS生成物及びco−AMS生成物の他の重要な特徴は、反応性のアルコキシシリル基が、前記生成物の加水分解によりアルコールを極少量のみ遊離し得るような少ない量存在していることにある。すなわち、前記生成物を実質的に全て酸加水分解処理した場合、アルコキシシリル基yは約0.05から約10重量%のアルコールのみ生成する。生成するアルコールの量は約0.5重量%から約8重量%が好ましく、生成するアルコールの量は約1重量%から約6重量%が好ましい。
【0028】
それ故、生成したAMS生成物(類)又はco−AMS生成物(類)は、補強性充填剤としてシリカを用いるゴム組成物に使用することが非常に望ましい。特に、AMS生成物類又はco−AMS生成物類に結合する反応性のアルコキシシラン基は、アルコキシシラン−シリカ反応に関与でき、またゴム中のシリカの分散性を改善しうる。上記の議論のように、アルコキシシラン−シリカ反応は、アルキルトリアルコキシシラン類及び/又はアルキルシラン末端のポリマー基がゴム配合物中のシリカの分散のために使用される場合、副生成物としてアルコールが生成する。通常、使用されるトリアルコキシシランは、トリエトキシシラン又はトリメトキシシランであり、発生するアルコールはそれぞれエタノール又はメタノールである。これらアルコールの排出は、その他のタイヤゴム部材の加工により発生するVOC排出を増加させるので、使用する補強性シリカの量及びそれに伴うトリアルコキシシランの量は、政府の環境規制により規定され、制限される。
【0029】
理論に縛られるものではないが、AMS生成物又はco−AMS生成物中で一定限度量のアルコールが利用可能であり、このことがゴム配合物中でこれら化合物を非常に有用にするものと思われ、これは、配合中及び更なる加工中に、VOC類がアルコールとして排出される可能性のレベルを著しく減少させうるからである。更に、混合中及び混合後に、一定限度量の利用可能な未反応のアルコキシシラン基は、加硫ゴム配合物中及びこれらにより製造されるタイヤ中のブリスターの度合いを大幅に制限できると思われていた。更に、本発明の生成物を使用することにより、補強に使用するシリカの量を著しく増加できると思われていた。
【0030】
ゴム配合物中でAMS生成物及び/又はco−AMS生成物を使用することは、ゴムの混合及び更なる加工中のアルコールの排出を最小化するだけでなく、これら生成物がシリカ分散助剤として十分に働いて前記化合物を含むストックの物理的性質を改善する。特に、以下の例中の記載のように、AMSを含みシリカ分散助剤を含まないゴムストックは、シリカ分散助剤もしくはシリカカップリング剤としてアルキルトリアルコキシシラン又はビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ジスルフィド又はメルカプトトリアルコキシシランを含む類似のストックよりも50℃におけるtanδが低いが、これはこれらAMSを含むストックから製造されるタイヤトレッドのヒステリシスロスが減少し、転がり抵抗が改善することを表している。AMSを含むストックの他の機械的且つ力学的な粘性と弾性を併せ持つ物性は、類似のストックに比べて好ましく、このことは他の物性に重大な影響を及ぼすことなく物性が改善されたことを示唆する。ゴム配合物のシリカ分散助剤としてメルカプト基を含むco−AMS生成物を使用した場合にも同様の結果が得られた。
【0031】
更に、AMS及びco−AMSを含むゴム配合物中でアルコキシシラン−シリカ反応のために強塩基触媒を使用することにより、ゴム補強性を高め、ポリマー−充填剤相互作用を増強し、且つ配合物の粘性を低下させるゴムストックが生成した。また、触媒を使用することにより、50℃でのtanδ及び−20℃でのG’(スノートラクション改善の指標)が更に低下した。従って、触媒とAMSシリカ遮蔽剤又はco−AMSシリカ遮蔽剤を組み合わせることにより、かかる化合物を含むタイヤトレッドにおいて、シリカの分散性、ウェットトラクションとスノートラクションが改善し、転がり抵抗が低下し且つヒステリシスが減少したゴム配合物が生成する。
【0032】
また、配合中及び更なる加工中にVOCとしてゴム配合物から放出されるアルコールの量は、ゴム配合物の0から約0.1重量%、時として0から約0.05重量%であることが見出された。
【0033】
ここに記載した加硫可能なゴム配合物は、(a)エラストマー、(b)シリカ又はシリカとカーボンブラックの混合物を含む補強性充填剤、(c)下記式:
【化3】

[式中、w、x及びyはモル分率を表し、yはゼロではなく、wかxの何れかがゼロである可能性はあるが両方がゼロであることはなく、且つw+x+z=1.00である]で表わされ、式中のR、R及びRは同じであるか又は異なっており、(i)H又は1から約20個の炭素原子を有するアルキル基、(ii)3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、(iii)7から約20個の炭素原子を有するアルキルアリール基、並びに(iv)RX[式中、XはCl、Br、SH、S、NR、OR、COH、SCOR、CO、OH、オレフィン類、エポキシド類、アミノ基、ビニル基、アクリレート類及びメタクリレート類からなる群から選択され、aは1から約8であり、Rは1から約20個の炭素原子を有するアルキレン基及び3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基からなる群から選択され、R及びRは1から約5個の炭素原子を有するアルキル基、3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、及び7から約20個の炭素原子を有するアルキルアリール基からなる群から選択される]からなる群から選択されることを特徴とするアルコキシ変性シルセスキオキサン類及びこれらの混合物からなる群から選択される一種以上の化合物を含む、アルコキシ変性シルセスキオキサンを含むシリカ分散助剤、(d)任意にシリカに基づいて約0.05から約3%の硫黄を有するカップリング剤、(e)任意にアルコキシシラン−シリカ反応のための触媒、並びに(f)加硫剤を含む。
【0034】
前記アルコキシ変性シルセスキオキサン化合物は、少量のアルコキシシランy基を含み、従ってアルコキシシラン−シリカ反応中に放出されうるアルコールを有意に減少するので、配合物中に存在するシリカの量を、所望により現在の使用量から大幅に増加させることができる。すなわち、シリカは、ゴム成分100重量部に対して約15重量部(phr)から200重量部以上存在しうる。また、シリカは、ゴム成分100重量部に対して約15から約150phr、約15から約120phr、約30から約90phr、約60から約80phrなどで存在しうる。前記アルコキシ変性シルセスキオキサンは、シリカの約0.1重量%から約20重量%の量で存在しうる。また、前記アルコキシ変性シルセスキオキサンは、シリカに基づき約0.2から約15重量%、約0.5から約10重量%、又は約1から約6重量%の量で存在しうる。
【0035】
ゴム物性の改善にとって必須ではないが、アルコキシ変性シルセスキオキサンのR基、R基及びR基のうち少なくとも一つはエラストマーに結合する基であることが望ましい。かかる基としては、特に限定されるものではないが、アクリレート基、メタクリレート基、アミノ基、ビニル基、メルカプト基、硫黄及びスルフィド基などが挙げられる。任意に、アニオン重合後のポリマーのリビング末端との反応は、アルコキシ変性シルセスキオキサンをポリマーに結合しうる。更に、アルコキシ変性シルセスキオキサンのR基、R基及びR基のうち少なくとも一つを、特に限定されるものではないが、メルカプトアルキル基、ブロック化メルカプトアルキル基、及び約2から約8個の硫黄原子などを含む有機基にすることができる。
【0036】
或いは、又はエラストマーに結合する一個以上の基に加えて、ゴム配合物は、特に限定されるものではないが、シリカに基づき約0.05から約3%のメルカプトアルキルトリアルコキシシラン類、ブロック化メルカプトアルキルトリアルコキシシラン類、シリカと結合したメルカプトアルキルシラン類、シリカと結合したブロック化メルカプトアルキルシラン類、ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)テトラスルフィド類又はジスルフィド類などの別の含硫黄カップリング剤を任意に含みうる。シリカ上に担持されたメルカプトシランを含む特に有用な市販品としては、実質上トリアルコキシシランが存在しない、シリカに固定されたメルカプトシランである、PPGインダストリーズのシプタン(Ciptane)(商標)255LDが入手できる。この製品を使用する場合、ゴム配合物中のシリカの量をシプタン(商標)による追加のシリカについて調整することによって、シリカの総量を所望量にできる。
【0037】
アルコキシシラン−シリカ反応のための任意の触媒としては、有機強塩基類及び無機強塩基類が挙げられる。本発明の触媒として好適な有機強塩基としては、水性溶媒中でのpKが約10より大きいことが好ましく、約11より大きいことが更に好ましく、約12より大きいことが最適である。強塩基は、シリカの重量に基づいて約0.01から約10%、通常は約0.1%から約5%の量で配合物中に存在しうる。例えば、有機強塩基の触媒量は、通常、ゴム成分100重量部に対して約0.003重量部(phr)から約8重量部、通常約0.03重量部から約4重量部である。本発明の化合物に使用するための典型的な有機強塩基類としては、特に限定されるものではないが、ナトリウムアルコキシド及びカリウムアルコキシド等の強アルキル金属アルコキシド類;トリフェニルグアニジン(TPG)、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ−o−トリルグアニジン(DTG)、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン(TMG)などのグアニジン類;及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)などのヒンダードアミン塩基類;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の3級アミン触媒;テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アミン触媒;ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル類等のビス−アミノエーテル類など、特に限定されるものではないが、5から7員環のヘテロ環等の含窒素ヘテロ環が挙げられる。含窒素ヘテロ環の非限定的な例としては、特に限定されるものではないが、イミダゾール、4−エチルアミノイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどの置換又は非置換イミダゾールが挙げられる。
【0038】
更に、アルコキシシラン−シリカ反応に好適な触媒としては、特に限定されるものではないが、ブチルスズトリス(2−エチルヘキサノエート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ブチルスズクロライドジヒドロキシド、ブチルスズヒドロキシドオキシドハイドレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレエート、ジブチルスズオキシドなどのアルキルスズ化合物が挙げられる。アルキルスズ化合物の触媒量は、シリカの重量に基づいて約0.01重量%から約5重量%、望ましくは約0.05重量%から約3重量%、また約0.1重量%から約2重量%にできる。
【0039】
更に、アルコキシシラン−シリカ反応に対して望ましい別の触媒としては、ジルコニウム化合物類が挙げられる。望ましいジルコニウム触媒の例としては、特に限定されるものではないが、ジルコニウム−2−エチルヘキサノエート、ジルコニウムテトラキス−(2−エチルヘキサノエート)、テトラオクチルジクロネート、ジルコニウム−n−ブトキシド、ジルコニウム−t−ブトキシド、ジルコニウム−ジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキシド−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウム−2−エチルヘキソキシド、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウム−3,5−ヘプタンジオネート、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウム−2−メチル−2−ブトキシド、ジルコニウム−2,4−ペンタンジオネート、ジルコニウム−n−プロポキシドなどが挙げられる。ジルコニウム化合物の触媒量は、シリカの重量に基づいて約0.01重量%から約5重量%、望ましくは約0.05重量%から約3重量%、また、約0.1重量%から約2重量%にできる。
【0040】
更に、アルコキシシラン−シリカ反応に対して望ましい別の触媒としては、チタン化合物類が挙げられる。望ましいチタン触媒の例としては、特に限定されるものではないが、チタントリメチルシロキシド、チタン(イソプロポキシド)(2,4−ペンタンジオネート)、チタン(ブトキシド)(2,4−ペンタンジオネート)、チタン(イソプロポキシド)(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。チタン化合物の触媒量は、シリカの重量に基づいて約0.01重量%から約5重量%、望ましくは約0.05重量%から約3重量%、また約0.1重量%から約2重量%にできる。
【0041】
望ましい触媒は、上記の範疇及びこの下位範疇の混合物にできることが分かっている。
【0042】
また、加硫可能なゴム配合物としては、特に限定されるものではないが、以下に更に詳細に記載しているように、ジエチルグリコール、ポリエチレングリコール類などのグリコール類、水素化されている又は水素化されていないC又はC糖類の脂肪酸エステル類、水素化されている又は水素化されていないC又はC糖類の脂肪酸エステルのポリオキシエチレン誘導体類及びこれらの混合物等の非アルコキシシランシリカ遮蔽剤、或いは鉱物系又は非鉱物系の充填剤等が任意に挙げられる。非アルコキシシランシリカ遮蔽剤については米国特許第6,221,943号及び第6,384,117号中に見出され、この両方をここに引用して援用する。
【0043】
アルコキシシランを含まないシリカ分散助剤として有用な水素化されている又は水素化されていないC又はC糖類(例えば、ソルボース、マンノース、及びアラビノース)の典型的な脂肪酸エステル類としては、特に限定されるものではないが、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート等のソルビタンオレエート類、及びラウリン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。水素化されている又は水素化されていないC又はC糖類の脂肪酸エステルは、商標名スパン(SPAN)(商標)で、ICIスペシャルティーケミカルズ(ウィルミントン、デラウエア)(ICI Specialty Chemicals(Wilmington, DE))から市販されている。代表的な製品としては、スパン(商標)60(ソルビタンステアレート)、スパン(商標)80(ソルビタンオレエート)、及びスパン(商標)85(ソルビタントリオレエート)が挙げられる。また、他の市販されているソルビタンの脂肪酸エステルとしては、アルカムル(Alkamul)(商標)SMO、カプムル(Capmul)(商標)O、グルコムル(Glycomul)(商標)O、アーラセル(Arlacel)(商標)80、エムソルブ(Emsorb)(商標)2500及びS−Maz(商標)80が入手できる。これら任意のシリカ分散助剤の有効量は、シリカの量に基づいて約0.1重量%から約25重量%で、また約0.5重量%から約20重量%が望ましく、又約1重量%から約15重量%が更に望ましく、また約1重量%から約15重量%が好ましい。
【0044】
水素化されている又は水素化されていないC又はC糖類である脂肪酸エステルのポリオキシエチレン誘導体類の典型例としては、特に限定されるものではないが、エチレンオキシド基がそれぞれ水酸基に置換されていることを除いては、上記の水素化されている又は水素化されていない糖類の類似体であるポリソルベート類及びポリオキシエチレンソルビタンエステル類が挙げられる。ソルビタンのポリオキシエチレン誘導体類の典型的な例としては、POE(商標)(20)ソルビタンモノオレエート、ポリソルベート(商標)80、ツイン(商標)80、エムソルブ(Emsorb)(商標)6900、リポソルブ(Liposorb)(商標)O−20、T−Maz(商標)80などが挙げられる。前記ツイン(商標)製品は、ICIスペシャルティーケミカルズから市販されている。一般に、これら追加のシリカ分散助剤の有効量は、シリカの重量に基づいて約0.1重量%から約25重量%で、約0.5重量%から約20重量%が望ましく、またシリカの重量に基づいて約1重量%から約15重量%が望ましい。
【0045】
加硫可能なゴム配合物は、シリカ又はシリカ及びカーボンブラックの混合物等の補強性充填剤と共に配合する。適切なシリカ補強性充填剤の例としては、特に限定されるものではないが、沈降アモルファスシリカ、湿式シリカ(ケイ酸水和物)、乾燥シリカ(ケイ酸無水物)、ヒュームドシリカ、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。他の適切な充填剤としては、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどが挙げられる。これらの中でも、湿式処理した沈降アモルファスケイ酸水和物が好ましい。これらのシリカ類は、水中での化学反応により、超微細の球状粒子として沈降させて製造される。これらの一次粒子は、強く会合して凝集体となっており、該凝集体は、次に、より弱く組み合わさって集合体となっている。BET法で測定した表面積は、異なるシリカの補強性能に関する最善の尺度を提供する。本発明に関わるシリカとしては、表面積が約32m/gから約400m/gである必要があり、約100m/gから約250m/gであることが好ましく、約150m/gから約220m/gであることが最も好ましい。シリカ充填剤のpHは、一般的に約5.5から約7を若干超えるほどであり、約5.5から約6.8が好ましい。
【0046】
使用可能な市販のシリカとしては、特に限定されないが、PPGインダストリーズ(ピッツバーグ、ペンシルバニア)製のHi−Sil(商標) 190、Hi−Sil(商標)210、Hi−Sil(商標) 215、Hi−Sil(商標)233、Hi−Sil(商標)243などが挙げられる。また、異なるシリカの多くの有用な市販グレード品がデグッサコーポレーション(Degussa Corporation)(例えばVN2、VN3)、ローンポーレンク(Rhone Poulenc)(例えばゼオシル(Zeosil)(商標)1165MP)、及びJ.M.ヒューバーコーポレーション(J.M. Huber Corporation)から市販されている。
【0047】
前記エラストマーには、シリカとの混合物において、全ての形態のカーボンブラックを混合できる。前記カーボンブラックは、ゴム成分100重量部に対して約1から約50重量部、約5から約35重量部などで含まれうる。前記カーボンブラックとしては、一般に入手可能な市販のカーボンブラックが挙げられるが、表面積(EMSA)が少なくとも20m/gであることが好ましく、少なくとも35m/gから200m/g以下であるか又はこれを超えることがより好ましい。本願中で使用された表面積値のは、セチルトリメチル−アンモニウムブロマイド(CTAB)法を用いてASTM D−1765により測定したものである。有用なカーボンブラックは、ファーネスブラック、チャネルブラック及びランプブラックである。更に具体的に、有用なカーボンブラックの例としては、超耐摩耗性ファーネス(SAF)ブラック、高耐摩耗性ファーネス(HAF)ブラック、高速押出性ファーネス(FEF)ブラック、微粒子ファーネス(FF)ブラック、準超耐摩耗性ファーネス(ISAF)ブラック、半補強性ファーネス(SRF)ブラック、中級作業性チャネルブラック、ハード作業性チャネルブラック、及び導電性チャネルブラックが挙げられる。利用可能な他のカーボンブラック類としては、アセチレンブラックが挙げられる。上記カーボンブラックの二種以上の混合物を、本発明のカーボンブラック製品の調製に使用できる。望ましい典型的なカーボンブラックは、ASTM D−1765−82aで指定されている、N−110、N−220、N−339、N−330、N−351、N−550、N−660である。本発明の加硫可能なエラストマー組成物の調製に利用される前記カーボンブラックは、ペレットの形態又はペレット化されていない凝集した塊でもよい。より均一に混合するには、ペレット化しされていないカーボンブラックが好ましい。
【0048】
クレー(ケイ酸アルミニウム水和物)、タルク(ケイ酸マグネシウム水和物)、アルミニウム水和物[Al(OH)]及びマイカ等の鉱物系充填剤、並びに尿素及び硫酸ナトリウム等の非鉱物系充填剤等のある種の追加の充填剤を、加工助剤として、本発明に従って利用することができる。好ましいマイカは主としてアルミナとシリカを含むが、他の周知の変種も有用である。前述の追加の充填剤は、任意のものであり、約0.5から約40phr、約1から約20phr、また1から約10phrなどの量で使用できる。
【0049】
本発明の一実施態様において、本発明の加硫可能な化合物は、(a)追加の硫黄及び加硫剤がない状態で、エラストマー、シリカ又はシリカとカーボンブラックの混合物を含む補強性充填剤、一種以上のアルコキシ変性シルセスキオキサン類、任意に含硫黄カップリング剤、及び任意にアルコキシシラン−シリカ反応のための触媒を約130℃から約200℃(落下温度)の温度で共に混合する工程、(b)混合物を混合温度未満に冷却する工程、(c)前記工程(b)で得られた混合物を、加硫剤及び有効量の硫黄と共に加硫温度未満で混合して十分に加硫する工程、並びに(d)前記工程(c)で得られた混合物を加硫する工程により調製される。配合物は、通常約140℃から約190℃で約5分から約120分加硫される。また、成分を共に混合するための落下温度は、約145℃から約190℃又は約155℃から約180℃にできる。
【0050】
初期混合工程は、少なくとも2つの下位工程を含みうる。すなわち、初期混合工程は、(i)約130℃から約180℃の温度において、エラストマー、シリカの少なくとも一部、アルコキシ変性シルセスキオキサン類の少なくとも一部、任意の触媒の少なくとも一部、及び含硫黄カップリング剤の一部を共に混合する下位工程、(ii)混合物を混合温度未満に冷却する下位工程、並びに(iii)約130℃から約180℃において、工程(ii)で得られた混合物と、シリカの残余がある場合は該残余と、アルコキシ変性シルセスキオキサン類の残余がある場合は該残余と、任意の触媒の残余がある場合は該残余と、任意の硫黄含有カップリング剤の残余がある場合は該残余とを混合する下位工程を含みうる。少なくとも2つの下位工程により到達した温度は、前記温度範囲内において、それぞれ同じにも別々にもできる。含硫黄カップリング剤を任意に何れかの下位工程で使用した場合、適切な温度範囲は約130℃から約180℃である。
【0051】
前記方法は、配合物の粘度を減少させ、またシリカ補強充填剤の分散性を改善するために、如何なる成分も初期混合物に加えないか、又は如何なる加硫成分も加えない、リミル工程を更に含みうる。前記リミル工程の落下温度は、通常約130℃から約175℃、特に約145℃から約165℃である。
【0052】
混合工程の最終工程は、最終化合物を十分に加硫するために有効な量の硫黄を含む加硫剤を、前記混合物に追加することである。任意に、追加の触媒を加えることで、アルコキシ変性シルセスキオキサン類とシリカ充填剤の間の反応を促進できる。最終混合物を混合する温度は、配合物の不必要な予備加硫を避けるため、加硫温度未満にしなければならない。従って、最終混合工程の温度は、約120℃を超えるべきではなく、通常約40℃から約120℃であり、約60℃から約110℃が適切であり、特には約75℃から約100℃である。
【0053】
ここに含まれる開示に基づいて、また以下に記載する本発明の組成物の例において、ゴム配合の当業者は、過度に実験することなく、配合物を十分に加硫するために必要な硫黄の効果的な量を容易に決定できる。追加の硫黄は、溶解性硫黄、不溶性硫黄、又は以下で加硫剤と記載されている硫黄を提供する化合物、又は前記混合物を含む如何なる形態もとりうる。
【0054】
本発明は、如何なる溶液重合可能なエラストマー又は乳化重合可能なエラストマーとも一緒に使用できる。溶液重合法及び乳化重合法は、当業者に周知である。例えば、共役ジエンモノマー類、芳香族モノビニルモノマー類、トリエンモノマー類などはアニオン重合することにより、共役ジエンポリマー類、又は共役ジエンモノマー類及び芳香族モノビニルモノマー類(例えば、スチレン、α−メチルスチレンなど)及びトリエンモノマー類のコポリマー類もしくはターポリマー類を形成しうる。従って、エラストマー製品としては、モノマーAによるジエンホモポリマー類及びこれと芳香族モノビニルモノマー類Bとのコポリマー類を含みうる。典型的なジエンホモポリマー類は約4から約12個の炭素原子を有するジオレフィンモノマー類から調製する。典型的な芳香族ビニルコポリマー類は、約8から約20個の炭素原子を有するモノマー類から調製する。コポリマーは、ジエンユニット約99重量パーセントから約50重量パーセント、及び芳香族モノビニルユニット又はトリエンユニット類約1から約50重量パーセントを、合計で100重量パーセント含みうる。本発明のポリマー類、コポリマー類及びターポリマー類は、ジエン含量に基づいて約10パーセントから約80パーセントの範囲で1,2−ミクロ構造を含むことができ、好ましいポリマー類、コポリマー類又はターポリマー類は、約25から65パーセントの1,2−ミクロ構造を有する。エラストマー性コポリマー類は、当業者が周知であるように、ランダム化剤を用いてでモノマーA及びBを同時に共重合させる結果として生成するランダムコポリマー類であることが好ましい。
【0055】
本発明の加硫可能なエラストマー配合物において使用するのに特に好ましいゴムポリマー類としては、スチレン/ブタジエンコポリマー類、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリブタジエン/イソプレンコポリマー、ブタジエン/イソプレン/スチレンターポリマー類、イソプレン/スチレンコポリマー、天然ゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0056】
共役ジエンポリマー類、又は共役ジエンモノマー類と芳香族モノビニルモノマー類のコポリマーもしくはターポリマー類は、トレッドストック配合物中において100重量部利用でき、或いは、これらは、天然ゴム、合成ゴム及びこれらの混合物を含む従来から使用されているトレッドストックゴムと共に混合できる。こういったゴム類は当業者に周知であり、合成ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、ブタジエン−イソプレンゴム、ポリブタジエン、ブチルゴム、ネオプレン、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、フルオロエラストマー類、エチレンアクリルゴム、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エピクロロヒドリンゴム類、塩素化ポリエチレンゴム類、クロロスルホン酸ポリエチレンゴム類、水素化ニトリルゴム、テトラフルオロエチレンプロピレンゴムなどが挙げられる。本発明の加硫可能なエラストマー組成物を従来のゴムと共に混合する場合、全ゴム量の約10重量パーセントから20重量パーセントを下限値としつつ、広範囲に渡って量を変えることができる。この最小量は、主として所望の物性に依存する。
【0057】
本発明の加硫可能なエラストマー化合物は、上記方法により調製する。前記ゴム配合物は、種々の加硫可能なポリマー(類)に、例えば加硫剤、活性化剤、抑制剤、及び促進剤等の一般的に用いられる種々の追加の材料、オイル類、粘着性樹脂等の樹脂類、可塑剤類、顔料類、追加の充填剤類、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス類、酸化防止剤類、オゾン劣化防止剤類、及び素練り促進剤等の加工添加物類を配合すること等の、一般に知られているゴムの混合方法により配合できることを当業者は直ちに理解する。当業者には周知なように、硫黄加硫可能な材料(ゴム類)及び硫黄加硫した材料(ゴム類)の使用目的により、標準的なゴム混合装置及び手順を用いて、例えばその他の充填剤、可塑化剤、酸化防止剤、加硫剤などを含む従来からあるゴム添加物と共に、上記添加物を選択し、また標準的な量で普通に使用する。
【0058】
かかるエラストマー組成物類は、従来のゴム加硫条件を用いて加硫する場合、ヒステリシスの減少を示し、このことは反発力が増加し、転がり抵抗が減少し、且つ応力を受けた場合に熱の発生が少ない製品であることを意味する。タイヤ、パワーベルトなどを含む製品が想定される。もちろん、転がり抵抗が減少することは、ラジアルプライ型及びバイアスプライ型の両方の空気入りタイヤにとって有用な性質である。従って、本発明の加硫可能なゴム組成物は、タイヤ等のトレッドストックを形成するために利用できる。空気入りタイヤは、米国特許第5,866,171号、第5,876,527号、第5,931,211号、及び第5,971,046号に開示されている構成に従い製造できる。これらの開示をここに引用して援用する。また、前記組成物は、サブトレッド、サイドウォール、ボディプライスキン、ビードフィラー、エペックス、チェーファー、サイドウォールインサート、ワイヤーコート、インナーライナーなどの他のエラストマー状のタイヤ部品を形成するためにも使用できる。
【0059】
粘着付与樹脂を使用する場合、粘着付与樹脂の一般的な量は、約0.5から約10phrであり、通常約1から約5phrである。混合助剤の一般的な量は、約1から約50phrである。かかる混合助剤は、例えば、アロマ系、ナフテン系、及び/又はパラフィン系のプロセスオイルが挙げられる。老化防止剤の一般的な量は、約0.1から約5phrである。ジフェニル−p−フェニレンジアミン等の好ましい老化防止剤は、当業者に周知である。オゾン劣化防止剤の一般的な量は、約0.1から約5phrである。
【0060】
脂肪酸を使用する場合、脂肪酸の一般的な量は約0.5から約3phrであり、該脂肪酸としてはステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸又は一種以上の脂肪酸の混合物が挙げられる。酸化亜鉛の一般的な量は、約1から約5phrである。ワックス類の一般的な量は、約1から約2prである。マイクロクリスタリンワックスがしばしば使用される。素練り促進剤を使用する場合、素練り促進剤の一般的な量は、約0.1から約1phrである。一般的な素練り促進剤は、例えばペンタクロロチオフェノール及びジベンザミドジフェニルジスルフィドである。
【0061】
強化ゴム配合物は、従来の方法により既知の加硫剤を約0.1から10phr用いて加硫できる。好ましい加硫剤の一般的な開示として、カーク−オスマーの化学技術百科事典、第三版、ワイリーインターサイエンス(Wiley Interscience)、第20巻、ニューヨーク、1982年、p.365−468、特に“加硫剤及び副原料”、p.390−402を参照することができる。加硫剤はそれのみで又は組み合わせて使用できる。
【0062】
加硫は、硫黄系加硫剤の存在下で実施する。好ましい硫黄系加硫剤の例としては、“ゴム製造者の”溶解性硫黄、アミンジスルフィド等の硫黄供与性加硫剤、ポリマー状ポリスルフィド、又は硫黄オレフィン付加物、及び不溶性ポリマー状硫黄が挙げられる。硫黄加硫剤は溶解性硫黄又は溶解性硫黄及び不溶性重合性硫黄の混合物が好ましい。硫黄系加硫剤は、約0.1から約10phrの範囲で使用することが好ましく、約1.5から約7.5phrの範囲がより好ましく、約1.5から約5phrの範囲が最も好ましい。
【0063】
促進剤を使用して、加硫に必要な時間及び/又は温度を制御し、加硫物の性質を改善する。本発明で使用する加硫促進剤は、特に限定されない。この例としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)などのチアゾール加硫促進剤、及びジフェニルグアニジン(DPG)などのグアニジン加硫促進剤が挙げられる。使用する加硫促進剤の量は、約0.1から約5phr、好ましくは約0.2から約3phrである。
【0064】
引張り機械特性及び動的粘弾性が改善されており、本発明の硫黄加硫したエラストマー配合物から製造された少なくとも一つの部材を含む空気入りタイヤは、かかる配合物を含むタイヤトレッドにおいて、シリカ分散性の改善、ウェットトラクション及びスノーラクションの改善、転がり抵抗の低減、跳ね返りの増加、ヒステリシスロスの減少を示す。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は、アルコキシ変性シルセスキオキサン類の製造方法、並びにこれらを含むゴム配合物及びタイヤ部材について説明するものである。しかしながら、かかる実施例は限定することを意図するものではなく、他のアルコキシ変性シルセスキオキサン類も同様に記載の方法により調製できる。更に、かかる方法は単に例であって、当業者は、ここに開示しクレームする本発明の範囲を逸脱することなく、アルコキシ変性シルセスキオキサン類、及び異なる配合処方を含む他のゴム配合物を調製するための他の方法を決定できる。
【0066】
以下の実施例において、全ての加水分解反応により形成されることが期待される元のシラン及び完全なシルセスキオキサンの式量は以下の通りである。
【0067】

これらの値を、所望のAMSのためのおよその理論収量を決定するために投入したシランのモル分率と共に使用した。
【0068】
以下の例のそれぞれにおいて、各AMS最終生成物及び/又はco−AMS最終生成物中のトリアルコキシシランの量は、ゴムの化学及び技術、第75巻、2001年、p.215中に公開されている方法に従い、生成物から回収可能なアルコールの量により決定した。具体的には、生成物のサンプルを、シロキサン加水分解試薬(0.2N トルエンスルホン酸、0.24Nの水、15%のn−トルエンスルホン酸、85%のトルエン)を用いて全て加水分解処理した。この試薬は、残りのエトキシシラン(EtOSi)又はメトキシシラン(MeOSi)と定量的に反応し、実質的に全量のエタノール又はメタノールを遊離する。次に、これらの量をヘッドスペース/ガスクロマトグラフ法により測定し、サンプル中の重量パーセントで表す。
【0069】
同様に、AMS生成物及び/又はco−AMS生成物並びにシリカ充填剤から製造したゴム配合物を説明している実施例において、未反応のトリアルコキシシランの量は、配合中及び更なる加工後のゴムのサンプルにより決定し、得られたアルコールの重量%で表した。VOCとして環境中に放出される可能性のあるアルコールの量は、引き算で決定した。例えば、従来のシリカ分散助剤であるオクチルトリエトキシシラン(OTES)は、完全加水分解により50.2重量%のアルコールを遊離する。配合中にVOCとして放出される可能性のあるアルコールは、50.2%とゴム配合物中のOTESの%の積から、配合後にゴムサンプルの加水分解によって放出されるアルコールの量を引いたもの以下である。同様の減法を用いて、配合中のAMS生成物からのVOCの放出を計算し、次の加工後に放出される可能性のあるVOCを決定した。
【0070】
(実施例1)
(n−オクチルアルコキシ変性シルセスキオキサン(オクチル−AMS)の調製)
3つの別々の反応で、すなわち(A)25℃で撹拌して、(B)25℃で撹拌して、(C)60℃で撹拌せずに、11.06g(40mmol)のオクチルトリエトキシシラン(OTES)に、12N塩酸6.5ml含む155mlのメタノールを加える。これら各反応により、16時間後には、ほぼ等しい高収率の生成物が得られた。生成物の大部分(〜90%)は、下層を分液漏斗で分離することにより単離した。原料の残りの〜10%は、水とシクロヘキサンにより抽出し、50℃、0.1mmHgで少なくとも6時間乾燥した。これら反応の概要を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
個々の生成物のサンプルの加水分解により遊離しうるアルコール(ROH)の重量パーセント(%)による分析を表2に示す。H、13C及び29SiのNMRスペクトルのデータは、生成物が類似のアルコキシシリル基を保持している本質的に同一の混合物であること、従ってPOSS構造を持っていないことを示していた。
【0073】
【表2】

【0074】
理論に制約されるものではないが、生成物の高い反応率及び相分離が閉じたケージPOSS構造の合成を阻害したと思われる。以下の実施例により説明された追加の調製は、使用したアルコールのタイプ、加えた水の存在及び量、異なるシロキサン有機基の使用、並びに触媒のレベル及びタイプにより、このタイプの生成物の生産量を制御しうることを示していた。
【0075】
(実施例2)
(半連続合成法によるn−オクチルアルコキシ変性シルセスキオキサン(オクチル−AMS)の調製)
この実施例においては、無水エタノール375ml、12N塩酸17.9ml(0.215mol)及びOTES27.64g(0.100mol)を1Lの分液漏斗中で混合し、25℃で放置する。生成物を除去し、表3に示すとおり、更にトリアルコキシシロキサンと水を加えた。
【0076】
エタノール中での初期のゆっくりした反応は、第二のトリアルコキシシランを添加すると共に水を加えることにより促進した。更に、各工程の収率は、反応物の濃度及び反応時間の増加とともに上昇した。全てのサンプルを0.1mmHgで少なくとも1時間、暖かい真空オーブン(25℃から45℃)中で乾燥し、残りのアルコール溶液全てを除去した。その後の反応には追加の触媒やエタノール溶液を使用しなかった。
【0077】
各種段階で残存するアルコールの割合を示す。具体的には、出発反応物において加水分解に利用できるエタノールであるOTESの重量%は、50.2%である。サンプル2Cではエタノールが2.8%だけ残っており、サンプル2Iではエタノールが2.2%だけ残っており、2Aから2K(2L)の混合生成物ではエタノールが3.5%だけ残っており、また抽出した生成物2Mはエタノールを2.8%だけ含んでおり、これらは所望のAMS生成物からのアルコールの除去におけるこの手段の効率を表している。
【0078】
【表3】

【0079】
POSS及びサンプル2LのH、13C及び29SiのNMRスペクトルを測定した。簡単に評価するため、29SiのNMRスペクトルを図1及び2にそれぞれ示し、また表6に一覧を示す。具体的には、サンプル2Lの29SiのNMRスペクトルは、生成物が部分的に加水分解したオクチルトリエトキシシランの混合物であることを示していた。
【0080】
(実施例3)
(オクチルトリクロロシランの使用)
塩酸を加えず、OTESをオクチルトリクロロシラン(OTCS)と水に取り替えたのを除いて、実施例2の手順を使用した。表4中のデータは、形成した生成物のおよその重量を、時間と2種類のOTCSを添加した後に得られたファイナルの全量との関数として示している。
【0081】
【表4】

【0082】
この実施例において、生成物は、実施例2の生成物と同様に、OTES前駆物質(OTCS)と水性エタノールを用いて得た。この生成物の29SiのNMRスペクトルを図3に、またアルコール分析を表4に示す。反応速度は、加水分解されたシランが増加し塩酸触媒が生成するにつれて増加した。
【0083】
(実施例4)
(オクチルアルコキシ変性シルセスキオキサン(co−AMS)への10モル%のメルカプトプロピル基の調製)
実施例3による反応溶媒混合物を、23.09gのOTCS、3mlの水、及び1.58g(8mmol)の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)を追加投入して更に処理し、10モル%のメルカプトプロピル官能基を添合した。時間の関数として得た相分離した生成物の概要を表5に示す。
【0084】
【表5】

【0085】
図4に示したように、29SiのNMRスペクトルは、前に調製した開鎖シルセスキオキサンに一致し、H及び13CのNMRスペクトルは、MPSが添合されたことを証明していた。
【0086】
(実施例5)
(基本的な触媒類の使用)
(高レベルの水酸化ナトリウム(5A))
塩酸触媒を水酸化ナトリウム溶液(0.228mol)と置換したのを除いて、OTES(0.1mol)と共に実施例2の手順を用いた。かかる手順を用いて、加水分解したシロキサンのナトリウム塩を、一晩、速やかに形成させた。次に、混合物を中和反応しシクロヘキサンで抽出することによりこの生成物を分離した。表6に示すように、高い収率が得られ、このことから、29SiのNMRスペクトルが高レベルの複雑な環化縮合生成物を示すことが分かった。保持していたエタノール濃度は、0.251%であった。
【0087】
(水酸化ナトリウムの触媒レベル(5B))
触媒レベルの水酸化ナトリウム(0.63mmol)を用いると、より少ない不溶性ナトリウム塩が、72時間の反応中にゆっくりと形成された。かかる分析によれば、上記の(5A)で実行したのと同様に、収率及び構造に関してほぼ同一の結果であった。しかしながら、29SiのNMRは、若干異なる縮合生成物類の混合物が生成したことを表している。
【0088】
(DBU、有機強塩基(5C))
DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)3g(2.07mmol)を触媒として用いたのを除いて、上記(5A)の手順を繰り返した。はっきりと見えるゲル生成物が得られたが、これはシクロヘキサンと塩酸による抽出後に液体となった。真空乾燥後の収率は約90%であった。NMR分析では、上記(5A)と同様のスペクトルを示し、全加水分解により1.68%のエタノールが同定された。
【0089】
(実施例6)
(3−クロロプロピルトリエトキシシランの使用)
実施例2と同様に反応性シロキサンとして3−クロロプロピルトリエトキシシラン(CPS)を用いたところ、26時間後に均一溶液が得られた。反応混合物を30%増加させるために更に水を付加したところ、上記高度に縮合したシロキサンの調製と大体同じ速度で、所望の相分離が生じた。アルコールのレベルが0.615%であることが測定され、29SiのNMRは他の酸触媒による縮合と同等であった。
【0090】
(実施例7)
(CPS縮合生成物のブロック化メルカプト官能基への部分的転換)
チオ酢酸5.44mL(5.81g、0.764mol)を、0℃に冷却した28.5mLの21%ナトリウムエトキシドのエタノール溶液(24.74g、74mmol)に加え、チオ酢酸ナトリウム溶液を調製した。pHは、試薬を用いて7から8の範囲に調整した。この溶液に、実施例6の22g(0.169mol)のCPS縮合生成物を含む冷却したテトラヒドロフラン(THF)溶液50mLを加えた。室温に暖めた後に、水とシクロヘキサンで抽出することにより、所望の部分転換した(〜50%)ブロック化アセチルメルカプトプロピルシロキサンを得た。
【0091】
(実施例8)
((10%)ブロック化メルカプトアルコキシシランとオクチルトリアルコキシシランを用いるAMSの合成)
実施例2と同様の手順において、43.69g(0.157mol)のOTES、オクタノイル−3−メルカプトプロピルトリエトキシシランであるNXT(商標)(クロンプトングリーンビッチ(Crompton Greenwich)、コネチカット)5.73g(16mmol)、及び26.8mL(0.322mol)の12N塩酸を1Lの分液漏斗に加えた。室温で一晩放置した後、下層を分離し真空乾燥することにより、反応物から予想された共縮合シロキサンが収率96%で生じた。分析によれば、完全加水分解により4.04%のエタノールを示した。NMRは、前記酸触媒により調製した物と一致していた。結果として生じた生成物は、オクチル−co−オクタノイルブロック化メルカプトプロピルAMS(co−AMS−Oct−Mer)であった。
【0092】
(実施例9)
(33%ブロック化されたメルカプトシランアルコキシシラン共縮合物の調製)
27.67g(0.10mol)のOTESと18.38g(50mmol)のNXT(商標)を実施例8で得られた溶媒混合物に加えた。一晩の後、完全に転換した33%の目的共縮合物が得られた。
【0093】
(実施例10)
(10%MSのOTES溶液からの共縮合による調製)
実施例9の手順を用いて、52.65g(0.190mol)のOTESと4.05g(21mmol)の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MS)を、675mLの反応溶媒と塩酸触媒を含む1Lの分液漏斗に加えた。一晩静置した後、10モル%のMSを含む共縮合物を分離、乾燥した。分析によれば、完全加水分解により4.31%のエタノールが得られることを示していた。NMRスペクトルは、期待していた生成物を示していた。
【0094】
(実施例11)
(10%MSのフェニルトリエトキシシラン溶液からの共縮合物の調製)
実施例2と同様の手順において、49.11g(0.248mol)のフェニルトリエトキシシラン(PTMS)、6.42g(33mmol)の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MS)、100mLの水及び26.8mL(0.322mol)の12N塩酸を、560mLの無水エタノールを含む分液漏斗に加えた。一晩後、相分離しなかった。更に150mLの水を加えたところ、縮合物は乳状の懸濁液となった。室温で一晩定置した後、下層を分離、真空乾燥することにより、反応物から収率〜95%で予期した共縮合シロキサンが得られた。
【0095】
(実施例12)
(MSのオクチルトリクロロシラン溶液からの共縮合物の調製)
実施例3と同様の手順において、23.09g(0.100mol)のオクチルトリクロロシラン、1.58g(8mmol)の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MS)及び18.5mLの水を、375mLのエタノールを含む分液漏斗に加えた。振盪後、所望の生成物が曇った不溶性の物質としてゆっくりと形成され、漏斗の底部で相分離した。3日後、両層は透明になり、少量の反応溶媒と共に分離し、20.65gの無臭のオクチル−co−メルカプトプロピルAMSを生じた。50℃に加熱し0.05mmHgで16時間真空乾燥することにより、酸及びアルコールを含まない生成物を得た。生成物のNMRスペクトルは期待した通りであった。生成物は、オクチル−co−メルカプトプロピルAMS(co−AMS−Mer)であった。
【0096】
(実施例13)
(縮合したシロキサン縮合生成物の29SiNMR分析)
上記実施例で得られた生成物は、例えば一つの純粋な成分のスペクトルとして同定できない数多くの構造を有しているアルコキシ変性シルセスキオキサン類の縮合生成物である。しかしながら、異なる百万分の一(ppm)領域の29SiNMRの強度は縮合生成物の分布の評価に使用できる。比較するために、−47から−77ppmの領域を含むスペクトルをそれぞれ5ppmの区間を含む部分に分割して、得られたか又は文献に報告されている、より完全なPOSS構造と比較した。かかる比較を表6に明らかにする。
【0097】
【表6】

【0098】
純粋な閉じたPOSS(ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン)構造に起因するスペクトルが−67ppm未満のシグナルからなるものとして見出され、これは8及び10個のシリコーンを含む環を意味する。純粋なPOSS構造中に残っているアルコキシシラン基はなかった。NMRの−67ppmを超える領域における化学シフトは、トリアルコキシシラン同士の縮合により得られる無数の構造による。これらの構造は開放オリゴマー配列を有しており、この中では、残っているアルコキシシランが構造を制御する機構として働き、シリコーンや酸素原子が高度に安定で且つ非反応性のPOSS配列を形成するのを防ぐ。すなわち、本発明で得られる開放オリゴマー構造は、依然として反応性であるアルコキシシラン類の残量を含んでいる。これらの−67から−72及び−72から−77の範囲の一連のNMRデータは、Si原子の周波数のシフトは、しばしば使用する触媒及び/又はR基に依存することを表している。これらの構造は、依然として残りのアルコキシシラン類を含む開放構造のままであり、これらの周波数は閉じたPOSS構造を表していない。
【0099】
(実施例14)
(シリカ補強ゴム中でのAMSの評価)
実施例2で調製したAMS生成物を、ゴム組成物中での使用に関して評価した。3つのゴムストックを表7に示した配合により、シリカ及びAMS(ストック1)、OTES(比較ストック2)、又はシリカを含まないカップリング添加物もしくはシリカ分散添加物(比較ストック1)、と共に配合した。
【0100】
投入した全てをゴム100重量部当たりの部数(phr)として示した。混合工程の落下温度は以下の通りである:マスターバッチ1、160℃;リミル、155℃;ファイナル、110℃。配合したファイナルストックの全てをシート化し、次に171℃で15分焼きなました。使用した焼きなましの条件は、従来の加硫条件と同様に選択した。
【0101】
【表7】

【0102】
(実施例15)
グリーン(未加硫)ストック及び加硫したストックについてアルコール含有量を測定した。グリーンストックの配合中にVOCとして放出されたアルコールの量は、シリカ分散剤を使用して配合物に最初に導入した、アルコールに加水分解できるアルコキシシランの理論量から、各グリーンストックに残存している利用可能なアルコールの量を引くことにより得た。表8の結果から示されるように、OTESを含む未加硫の比較ストック2は、配合後に加水分解してアルコールにできるアルコキシシランを約50%保持していた。OTESを含むストックの配合中にVOCとして放出されるアルコールは、サンプルの約0.933%に相当する。
【0103】
これに対して、実施例2の最初のAMS生成物は、配合混合物に導入された時に、3.5%未満の利用可能なアルコールを保持している。表8に示すように、ストック3においてアルコールに加水分解できるアルコキシシランは、ストック2から得られるものの4%にすぎなかった。従って、配合中にVOCとして放出されるアルコールの量はごくわずかであった。更に、AMSを含むグリーンストックは、ゴムを更にタイヤ部材に加工する間にVOCとして放出されうるアルコールを含んでいなかった。
【0104】
以下の実施例中で議論しているように、AMS生成物の使用は、ゴム製品加工中にVOCが更に放出される問題を解決するだけでなく、またAMSはシリカ分散助剤としても十分に働き、この配合物を含むストックの物性を改善する。
【0105】
【表8】

【0106】
(実施例16)
実施例14で調製したグリーンストックのムーニー粘度(ML)を評価した。ムーニー粘度の測定は、130℃で大ローターを用い、ローターが4分間回転した時のトルクを記録することにより行った。ストックはローターの運転開始前に130℃で1分間予備加熱した。
【0107】
表8で示したように、AMSを含むゴムストック1はOTESを含む比較ゴムストック2と同程度のムーニー粘度を有しており、このことは、AMSが配合物の混合中にOTESに匹敵するシリカ遮蔽剤として働いたことを示していた。配合物のムーニー粘度が減少することは、特に押し出し加工中の加工性及び操作性に優れるため有利である。比較ストック1は、シリカカップリング剤又はシリカ遮蔽剤を含まないため、ムーニー粘度が高すぎて加工できない。
【0108】
加硫したストックの動的粘弾性の機械的性質は、レオメトリクスダイナミックアナライザー(レオメトリクス社)(Rheometrics Dynamic Analyzer) (Rheometrics Inc.)を用いた引張り操作試験及び温度操作試験から得た。具体的には、−20℃、25℃及び50℃での貯蔵弾性率(G’)、並びに0℃及び50℃でのtanδについては、−100℃から−30℃の範囲の温度で歪0.5%、並びに−30℃から+100℃の範囲の温度で歪2%を用い、31.4ラジアン/秒の周波数で行った。引張り走査は、0℃及び50℃において、周波数0.5Hz、0.25%から14.75%Eで引張り走査することで実行した。
【0109】
AMSを含むストックは、OTESを含むストックよりも50℃のtanδが低く、このことは、これらのストックで製造したタイヤのトレッドはヒステリシスロスが減少し、転がり抵抗が改善することを示唆している。
【0110】
また、ゴムストックのヒステリシスの特性は、MTSエラストマーテスター(MTS社)を用いて動的圧縮試験(0℃及び50℃のtanδ)することにより評価した。動的圧縮試験のサンプル形態は、直径9.5mm、長さ15.6mmの円筒状ボタンである。かかるサンプルを、1.25kgの動的圧縮負荷、周波数1Hzにて試験する前に2kgの静加重下で圧縮した。これら試験の結果は、温度走査を用いた結果と同様であった。AMSを含むストックは、この場合でもOTESを含むストックよりも50℃のtanδが低く、このことは、上記により得られたヒステリシスの減少及び転がり抵抗の改善を追認している。
【0111】
優れたシリカカップリング剤又はシリカ分散剤は、配合中にシリカを分散させ、配合物の貯蔵中及び加硫中に充填剤の形態を安定化する。それ故、171℃にて15分間加硫処理した前後の充填剤の凝集(ペイン効果(the Payne effect)、ΔG’)に関して、3種のストックを検査した。未加硫ストックのペイン効果は、ゴムプロセスアナライザー(アルファテクノロジー社)(Rubber Process Analyzer (Alpha Technologies, Inc.))を用いて、50℃、周波数0.1Hz、0.25%から1000%までの引張り走査で3種のストックを引張り走査試験することにより得た。引張り走査試験を実施する前に、加硫処理したゴム配合物を40℃に30分間冷却した。
【0112】
全てのストックにおける充填剤の凝集挙動は、加硫処理前後の加硫剤を含まないストック中のペイン効果であるδ(ΔG’)の変化を試験することにより評価し、ここで、δ(ΔG’)は、ΔG’(熱アニールあり)引くΔG’(熱アニールなし)で定義する。171℃での15分間の熱アニールは、加硫中に通常直面する熱履歴を擬態した。
【0113】
前記ΔG’は充填剤ネットワークの尺度として汎用されている。δ(ΔG’)の測定により、加硫処理後の充填剤凝集の純増加及びポリマー−充填剤結合の強さの度合い並びに加硫処理前のシリカ疎水性(遮蔽性)の評価を可能にする。ゴム中のポリマー−充填剤間の相互作用及びシリカ遮蔽性の度合いが高くなるほど、加熱による充填剤の凝集はより少なくなる。
【0114】
AMSを含むストック及びOTESを含むストックのペイン効果は同程度であり且つ許容範囲内にあり、シリカ分散助剤を含まない比較ストックよりも著しく低い。前記AMSは、遮蔽剤としてOTESと同等であることが見出される。
【0115】
表8に示し且つ上記で議論したように、AMSを含むストックが50℃のtanδで測定されたヒステリシスの減少という予期せぬ好ましい例外を持つと共に、AMSを含むストック及びOTESを含むストックは同程度の機械的性質及び動的粘弾性を有していた。
【0116】
(実施例17)
(シリカ充填ゴム中でのco−AMS−メルカプト配合物及びイミダゾール触媒の評価)
実施例8及び10で得られる生成物であるオクチル−co−オクタノイルブロック化メルカプトプロピルAMS(co−AMS−Oct−Mer)及びオクチル−co−メルカプトプロピルAMS(co−AMS−Mer)を、それぞれゴムストック中で混合した。また、この実施例において、アルコキシ変性シルセスキオキサン及びシリカ充填剤間の反応を促進する触媒であるイミダゾールの使用について評価した。ゴム配合物の成分、並びにマスターバッチ、リミル及びファイナル段階での落下温度を表9に記載した。配合したファイナルストックは全てシート化し、続いて171℃、15分間加硫した。
【0117】
(実施例18)
ゴム配合物の加工性は、配合物のムーニー粘度及び加硫特性を試験することにより評価した。ムーニー粘度は実施例15の記載と同様に測定した。前記tは、ムーニースコーチ測定中に5ムーニー単位増加させるために必要な時間である。これは、押し出し等の加工中に、配合物の粘度がどのくらい速く上昇するかを予測する指数として使用されている。160℃、周波数1.67Hz及び歪7%の条件でモンサントレオメーターMD2000を使用して、ストックの加硫加工を評価した。加硫加工中に、トルクが総トルクのそれぞれ2%、10%及び90%に上昇する時間であるtS2、t10、及びt90は、上記のようにして測定した。これら時間は、加硫加工中に粘度が上昇する速さ(tS2、t10)、及び加硫速度(t90)を予測するために使用されている。
【0118】
ストックの配合物のムーニー粘度(ML)及び加硫特性を表10に示す。イミダゾール触媒の添加はMLを減少させ、イミダゾールを含まないco−AMSを含むストックである2及び4と比較した場合、co−AMSを含むストック3及び5のt90を改善した。
【0119】
【表9】

【0120】
【表10】

【0121】
(実施例19)
全てのストック中での充填剤の凝集挙動を、実施例16で開示したのと同様にして評価した。表11に示すように、充填剤の凝集は、イミダゾール触媒を含むゴムストック3及び5、並びに触媒を含まないゴムストック2及び4の比較から明らかなように、イミダゾールの存在により大きく抑制されることが見出される。これらの結果は、追加のイミダゾールを含むゴム中では、ポリマー−充填剤相互作用の度合いがより高くなり、及び/又はシリカ疎水性の度合いがより高くなることを意味する。これらの結果は前項中の結果と一致する。
【0122】
【表11】

【0123】
(実施例20)
ストックの動的粘弾性の機械的性質は、実施例16に記載の手順により得た。表12に示したように、イミダゾール触媒を含むストック3及び5は、イミダゾールを含まないストック2及び4よりも−20℃でのG’及び50℃でのtanδの値が低かった。また、ストック3及び5は、ストック2及び4と同等の0℃でのtanδの値を有していた。0℃でのtanδはタイヤのウェットトラクションの予測の判断材料として、50℃でのtanδは転がり抵抗の予測の判断材料として、また−20℃でのG’はスノートラクションの予測の判断材料として使用されている。従って、イミダゾールを含むストックは、co−アルコキシ変性シルセスキオキサン又は触媒を含まない比較ストックに較べて、より優れたウェットトラクション及びスノートラクション及びより低い転がり抵抗を有することが予想された。
【0124】
【表12】

【0125】
(実施例21)
加硫したゴムストックの弾性を、ズウィック反発弾性試験機(Zwick rebound resilience tester)で測定した。試験片は、直径38mm、厚さ19mmの円形であった。この試験片を半サイクル変形させた。すなわち、衝撃後の跳ね返りがないインデンターを用い、衝撃により試験片を変形させた。反発弾性は、衝撃前後の機械的エネルギーの比と定義する。試験サンプルは、試験前に50℃、30分間予備加熱した。
【0126】
跳ね返り試験結果を表13に示す。全てのco−AMSストックは、比較ストックよりもヒステリシスロスがより低かった。イミダゾール触媒を含むストック3及び5は、イミダゾール触媒を含まないストック2及び4よりもより高い弾性値(より低いヒステリシスロス)を有していた。
【0127】
【表13】

【0128】
実施例16から21の試験データにより示したように、イミダゾール等の触媒を有し、AMS及び/又はco−AMSを含むゴムストックは、ゴムの補強性が高くなり、ポリマー−充填剤相互作用が増加し、また配合物の粘性がより低くなる。従って、アルコキシ変性シルセスキオキサンシリカ遮蔽剤を含む触媒の使用することにより、シリカ分散性、ウェットトラクション及びスノートラクションが改善し、転がり抵抗がより低下し、且つヒステリシスが減少したタイヤが製造された。
【0129】
(実施例22)
(シリカ充填ゴム中での、AMS、AMS及びメルカプトシラン、並びにイミダゾール触媒の評価)
実施例2で調製したAMSを、実施例14に記載の方法に従い、シリカ及びカーボンブラックを含むゴムの配合中に評価した。組成物中の成分を表14に記載した。
【0130】
【表14】

【0131】
【表15】

【0132】
表15に提示した試験データにより示されたように、AMS、及び実質的にトリアルコキシシランを含有しない追加のシリカ結合メルカプトシランを含むゴムストックは、ジスルファンシリカカップリング剤を含む比較ストック並びにOTESに加えてメルカプトシランを含む比較ストックよりも−20℃でのG’及び50℃でのtanδの値が低い。イミダゾール触媒をAMSストックに更に添加することにより、物性がより改善される。従って、AMS及びシリカカップリング剤を含むゴムストック、又は、AMS、シリカカップリング剤及びアルコキシシラン−シリカ反応の触媒を含むストックを使用することにより、シリカ分散性及びウェットトラクション及びスノートラクションが改善され、転がり抵抗がより低くヒステリシスが減少した空気入りタイヤが製造できる。更に、配合中及び更なる加工中に放出される全アルコール量はごくわずかであった。
【0133】
(実施例23)
(シリカ充填ゴム中でのAMS及びグアニジン触媒の評価)
実施例2(2L)で調製したAMSを、実施例15に記載の方法により、シリカ及びカーボンブラックを含むゴムの配合中において評価した。AMS−シリカ反応の触媒はジフェニルグアニジンであった。ジフェニルグアニジン(DPG)等のグアニジン類は、ゴムの加硫段階において、一次促進剤(例えば、スルフェンアミド、チアゾールなど)及び硫黄と共に、二次促進剤として使用できる。理論に縛られるものではないが、加硫段階において、強塩基性のグアニジン類がシリカ表面上に残っている酸性部位に結合し、硫黄−ポリマー架橋反応を生じさせるための、亜鉛、一次促進剤類及び他の加硫剤類がシリカに結合を抑制すると思われる。従って、ファイナル段階での混合中の、大部分のアルコキシシラン−シリカ反応が既に起ってしまった後に、加硫温度未満、通常120℃を超えない温度で、他の加硫物および硫黄と共に、二次促進剤として使用されるグアニジンを加える。これに対して、本発明では、加硫剤及び追加の硫黄がない場合、初期の高温混合段階において、グアニジン類等の有機強塩基がAMS−シリカ反応の触媒として働く。
【0134】
4つのゴムストックを、表16で示した配合により、シリカ及びカーボンブラックと配合した。ジスルファンシリカカップリング剤及びDPGを含む比較ストック5を、二次促進剤としてファイナルバッチに加えた。実施例2のAMS及びDPGを、二次促進剤としてファイナルバッチとして加えた。実施例2LのAMS及びDPGを含むストック8を、二次促進剤としてファイナルバッチに加えた。ストック9は、マスターバッチにおいては触媒としてDPGを含み、またファイナルバッチにおいては二次促進剤として加えたDPGを含んでいた。ストック10は、マスターバッチにおいて触媒としてAMS及びDPGを含んでいた。しかしながら、かかるストックはファイナルバッチにおいて如何なる追加のDPGも含んでいなかった。
【0135】
【表16】

【0136】
各ストックのムーニー粘度及び加硫特性は、171℃にて15分間加硫する前と、この間に評価した。結果を表17に示す。
【0137】
グリーンストックのムーニー粘度(ML)について評価した。ムーニー粘度の測定は、130℃で大ローターを用い、ローターが4分間回転した時のトルクを記録することにより行った。ストックはローターの運転開始前に130℃で1分間予備加熱した。前記tは、ムーニースコーチ測定中に5ムーニー単位増加させるために必要な時間である。これは、押し出し等の加工中に、配合物の粘度がどのくらい速く上昇するかを予測する指数として使用されている。160℃、周波数1.67Hz及び歪7%の条件でモンサントレオメーターMD2000を使用して、ストックの加硫加工を評価した。加硫加工中に、トルクが総トルクのそれぞれ2%、10%及び90%に上昇する時間であるtS2、t10、及びt90は、上記のようにして測定した。これら時間は、加硫加工中に粘度が上昇する速さ(tS2、t10)、及び加硫速度(t90)を予測するために使用されている。
【0138】
【表17】

【0139】
ムーニー粘度及び加硫特性の結果は、ストック9と同様、マスターバッチにAMS−シリカ反応の触媒として、またファイナルバッチに二次促進剤として、DPG配合物を加えると、マスターバッチにおいてAMS又はジスルファンのみを含むストックに較べて、グリーンストックのムーニー粘度を改善すること、またt90を改善することを表している。
【0140】
4つのストックの動的粘弾性の機械的特性は、−100℃から−20℃の範囲の温度で歪0.5%、並びに−20℃から100℃の範囲の温度で歪2%を用い、31.4ラジアン/秒の周波数で行った。結果を表18に示す。
【0141】
【表18】

【0142】
マスターバッチ中に触媒として加えたDPGを含むストック9及び10は、0℃でのtanδの値はほぼ等しく、−20℃でのG’及び50℃でのtanδの値が低い。0℃でのtanδの値がタイヤトレッドのウェットトラクション、50℃でのtanδの値が転がり抵抗、また−20℃でのG’の値がスノートラクション、を予想するために使用されるため、これらの特性はタイヤトレッド配合物として有用である。上記結果によれば、ゴムストック9及び10(マスターバッチ中のDPG)を含むトレッドを有するタイヤは、比較ストックに較べて、ウェットトラクション及びスノートラクションにより優れ且つ転がり抵抗がより低いことが予想される。
【0143】
(実施例24)
(シリカ充填ゴム中での、Co−AMS−ブロック化メルカプトオクチル配合物及びアルキルスズ触媒の評価)
実施例8で得られた生成物であるオクチル−co−オクタノイルブロック化メルカプトオクチルAMS(co−AMS−Oct−Mer)をゴムストック中で配合した。また、この実施例では、二価のスズ化合物である触媒、すなわちアルコキシ変性シルセスキオキサンとシリカ充填剤との反応を促進するスズ−2−エチルヘキサノエートSn(EHA)の使用についても評価した。ゴム配合物の成分、並びにマスターバッチ、リミル及びファイナル段階の落下温度を表19に記載する。比較するため、ストック1のゴムはSn(EHA)を含まず、ストック2のゴムはSn(EHA)を0.5phr含み、ストック3のゴムはSn(EHA)を1.0phr含む。配合した全てのファイナルストックをシート化し、その後、171℃で15分間加硫した。
【0144】
【表19】

【0145】
各ストックのムーニー粘度及び加硫特性(tS2及びt90)を評価した。結果を表20に記載する。グリーンストックをムーニー粘度(ML)について評価し、モンサントレオメーターMD2000を使用して、上記の実施例23で議論した方法を用いるストックの加硫加工を評価した。tS2の時間は、どのくらい速く粘度が高くなるかを予想するために使用し、t90の時間は加硫速度を示す。
【0146】
【表20】

【0147】
ムーニー粘度及び加硫特性の結果は、Sn(EHA)を追加するとグリーンストックのムーニー粘度は改善するが、tS2又はt90の時間は大きく変化しないことを表している。
【0148】
3つのストックの動的粘弾性の機械的特性は、−100℃から−20℃の範囲の温度で歪0.5%、並びに−20℃から100℃の範囲の温度で歪2%を用い、31.4ラジアン/秒の周波数で行った温度走査実験(TS)から得た。また、引張り走査実験(SS)としての50℃でのtanδは、50℃において周波数3.14ラジアン/秒を用い、0.25%から14.75%まで引張り走査することで得た。結果を表21に記載する。
【0149】
【表21】

【0150】
Sn(EHA)を含むストック12及び13は、ストック11に比べて−20℃でのG’の値が低く、0℃でのtanδの値が高く、50℃でのtanδは同様の値である。温度走査(TS)試験値におけるトレッドは、特定のタイヤの性能的側面を表している:−20℃でのG’値はスノートラクションを予想するために用いられる(値が低いほどスノートラクションがより優れていることを示す);0℃でのtanδの値はウェットトラクションを予想するために用いられる(値が高いほどウェットトラクションがより優れていることを示す);50℃でのtanδの値は転がり抵抗を予想するために用いられる。従って、ストック12及び13(これらの配合物はSn(EHA)を含む)は、ストック11(Sn(EHA)を含まない)と比較した場合、同様の転がり抵抗を維持している一方で、ウェットトラクション及びスノートラクションはよりすぐれていることが予想される。
【0151】
また、ストック11、12および13の機械的引張り特性は、ASTM−D 412の25に記載の標準的な手順を用いて測定した。試験片は、内径44mm、外径57.5mm、厚さ2.5mmのギザギザの丸い輪であった。引張り試験に使用したゲージ長は25.4mmであった。ストック11、12及び13に関して測定した機械的引張り特性を表22に記載する。
【0152】
【表22】

【0153】
表24に記載した各機械的引張り特性は、Sn(EHA)を添加したストック12及び13で改善した。
【0154】
概して、実施例24の結果は、ストック2及び3の加工性、粘弾性特性及び機械的特性がSn(EHA)の添加により改善されたことを表している。
【0155】
(実施例25)
(シリカ充填剤ゴム中での、co−AMS−ブロック化メルカプトオクチル配合物及びアルキルジルコニウム触媒の評価)
実施例8で得た生成物であるオクチル−co−オクタノイルブロック化メルカプトプロピルAMS(co−AMS−Oct−Mer)は、ゴムストック中で混合した。また、この実施例において、二価のジルコニウム化合物の触媒であり、アルコキシ変性シルセスキオキサンとシリカ充填剤との反応を促進するジルコニウム2−エチルヘキサノエート Zr(EHA)の使用についても評価した。ゴム配合物の成分、及びマスターバッチ、リミル及びファイナル段階での落下温度を表25に記載する。比較するために、ストック11のゴムはZr(EHA)を含まず、ストック14のゴムはZr(EHA)を0.5phr含み、ストック15のゴムはZr(EHA)を1.0phr含む。混合した全てのファイナルストックをシート化し、その後、171℃で15分間加硫した。
【0156】
【表25】

【0157】
各ストックのムーニー粘度及び加硫特性(t、tS2、及びt90)を評価した。結果を表26に記載する。グリーンストックのムーニー粘度(ML)を評価し、モンサントレオメーターMD2000を使用して、上記実施例23で議論した方法を用いてストックの加硫工程を評価した。tの時間は加工中にどのくらい速く粘度が高くなるかを予想するために使用し、t90の時間は加硫速度を示す。
【0158】
【表26】

【0159】
ムーニー粘度及び加硫特性の結果は、Zr(EHA)を追加するとグリーンストックのムーニー粘度が改善され、tを改善するが、tS2及びt90の時間は大きく変化しないことを示している。
【0160】
3つのストックの動的粘弾性の機械的特性は、−100℃から−20℃の範囲の温度で歪0.5%、並びに−20℃から100℃の範囲の温度で歪2%を用い、31.4ラジアン/秒の周波数で行った温度走査実験(TS)から得た。また、0℃及び50℃でのtanδは、動的圧縮試験測定から得た。サンプルの形態は直径9.5mm、長さ15.6mmの円筒状ボタンであった。各サンプルを、1.25kgの静負荷、周波数1Hzで圧縮した。その後、各サンプルを動的圧縮及び伸張させ、tanδの値を得た。結果を表27に記載する。
【0161】
【表27】

【0162】
Zr(EHA)を含むストック14及び15は、ストック11に比べて−20℃でのG’の値が低く、0℃でのtanδの値が高く、50℃でのtanδが同様の値である。温度走査(TS)試験及び圧縮試験の値の傾向は、特定のタイヤの性能的側面を表している:−20℃でのG’値はスノートラクションを予想するために用いられる(値が低いほどスノートラクションがより優れていることを示す);0℃でのtanδの値はウェットトラクションを予想するために用いられる(値が高いほどウェットトラクションがより優れていることを示す);50℃でのtanδの値は転がり抵抗を予想するために用いられる。従って、ストック14及び15(これらの配合物はZr(EHA)を含む)は、ストック11(Zr(EHA)を含まない)と比較した場合、同様の転がり抵抗を維持している一方で、ウェットトラクション及びスノートラクションはよりすぐれていることが予想される。
【0163】
ゴム配合物の反発弾性は、ズウィック反発弾性試験機で測定した。ズウィック試験機において、試験片(直径38.1mmで厚さ19mmの円形片であり、試験前に50℃、30分間予備加熱した)をこの試験片を半サイクル変形させた。衝撃後の跳ね返りがないインデンターを用い、衝撃により試験片を変形させた。反発弾性は、衝撃前後の機械的エネルギーの比と定義する。ストック11、14及び15の反発弾性を表28に記載する。
【0164】
【表28】

【0165】
ストック11、14及び15について測定した反発弾性は、反発弾性がZr(EHA)を加えることにより認めうるほど変化しないことを示している。
【0166】
また、ストック11、14及び15の機械的引張り特性は、ASTM−D 412の25に記載されている標準的な手順を用いて測定した。試験片は、内径44mm、外径57.5mm、厚さ2.5mmのギザギザの丸い輪であった。引張り試験に使用したゲージ長は25.4mmであった。ストック11、14及び15について測定した機械的引張り特性を表29に記載する。
【0167】
【表29】

【0168】
表29に記載した各機械的引張り特性は、Zr(EHA)を加えたストック14及び15で改善した。
【0169】
概して、実施例25の結果は、ストック14及び15の加工性、粘弾性特性及び機械的特性が、Zr(EHA)の添加により改善したことを表している。
【0170】
(実施例26)
(シリカ充填剤ゴム中での、異なるマスターバッチ落下温度とリミル落下温度を用いることによる、co−AMS−ブロック化メルカプトプロピル配合物の評価)
実施例10で得られた生成物であるオクチル−co−メルカプトプロピルAMSを、ゴムストック中で、マスターバッチでの混合中及び第一リミルでの混合中に種々の落下温度を用いて配合した。ストック16、17及び18のマスターバッチ及び第一リミルでの落下温度を表30に記載した。ゴム配合物の成分及び第二リミル及びファイナル段階での落下温度を表31に記載する。配合したファイナルストックの全てをシート化し、その後、171℃で15分間加硫した。
【0171】
【表30】

【0172】
【表31】

【0173】
各ストックのムーニー粘度及び様々な加硫特性(tS2及びt90)を評価した。結果を表32に記載する。グリーンストックのムーニー粘度(ML)について評価し、モンサントレオメーターMD2000を使用し、上記実施例23で議論した方法を用いてストックの加硫工程を評価した。tS2の時間は加工中にどのくらい速く粘度が高くなるかを予想するために使用され、t90の時間は加硫速度を示す。
【0174】
【表32】

【0175】
ムーニー粘度及び加硫特性の結果は、マスターバッチ及びリミル1の混合工程の落下温度を高めると、グリーンストックのムーニー粘度が改善し、t90が減少するが、tS2は大きく変化しないことを示している。
【0176】
3つのストックの動的粘弾性の機械的特性は、−100℃から−20℃の範囲の温度で歪0.5%、並びに−20℃から100℃の範囲の温度で歪2%を用い、31.4ラジアン/秒の周波数で行った温度走査実験(TS)から得た。また、0℃及び50℃でのtanδは、動的圧縮試験測定から得た。動的圧縮試験測定用サンプルの形態は直径9.5mm、長さ15.6mmの円筒状ボタンである。各サンプルを、1.25kgの静負荷、周波数1Hzにて圧縮した。その後、各サンプルを動的圧縮し且つ伸張させ、tanδの値を得た。結果を表33に記載する。
【0177】
【表33】

【0178】
落下温度を上昇させたストック17及び18は、−20℃でのG’の値がより低く、0℃でのtanδの値がより高く、50℃でのtanδは同様の値であった。温度走査(TS)試験及び圧縮試験の値の傾向は、特定のタイヤの性能的側面を表している:−20℃でのG’の値はスノートラクションを予想するために用いられる(値が低いほどスノートラクションがより優れていることを示す);0℃でのtanδの値はウェットトラクションを予想するために用いられる(値が高いほどウェットトラクションがより優れていることを示す);50℃でのtanδの値は転がり抵抗を予想するために用いられる。従って、ストック17及び18(これらの配合物は高い落下温度で製造した)は、ストック16と比較した場合、同じ様な転がり抵抗を維持している一方で、ウェットトラクション及びスノートラクションはより優れていることが予想される。
【0179】
ゴム配合物の反発弾性は、ズウィック反発弾性試験機を用いて測定した。ズウィック試験機において、試験片(直径38.1mmで厚さ19mmの円形片であり、試験前に50℃、30分間予備加熱した)を半サイクルの半サイクル変形させた。各サンプルに衝撃を与えた後に跳ね返りがないインデンターを用い、衝撃により試験片を変形させた。反発弾性は、衝撃前後の機械的エネルギーの比と定義する。ストック11、14及び15の反発弾性を表34に記載する。
【0180】
【表34】

【0181】
ストック16、17及び18について測定した反発弾性は、反発弾性が、落下温度を上昇させることにより認めうるほど変化しないことを示している。これら反発弾性の値は、50℃でのtanδの値を支持している(同様の転がり抵抗を示唆している)。
【0182】
また、ストック16、17及び18の結合ゴムの含量及び耐摩耗(摩擦)性を測定した。結合ゴムの含量は、ゴムストック中で充填剤粒子に結合するポリマーの割合により測定した。結合ゴムの量はゴムサンプルを溶媒(この場合はトルエン)に数日間(この場合は3日間)浸すことにより測定した。サンプル中の溶解性のゴム、すなわち充填剤粒子に結合していないゴム、は溶媒によりゴムサンプルから抽出される。溶媒露曝期間が終了した時、過剰な溶媒を排出し、サンプルをまず大気中で、次に乾燥オーブン(この場合、温度は100℃)で乾燥する。充填剤と共に残っているゴムの量が結合ゴムである。結合ゴムの含量は下記式:
【数3】

(式中、Wは乾燥させたサンプルの重量、Fはサンプル中の充填剤の重量(最初の量と同じ)、Rは最初のサンプルの重量である)で計算する。表35に示すように、落下温度が最も高いストック18では、結合ゴムの割合がわずかに増加している。
【0183】
各ストックの耐摩耗(摩擦)性は、ランボーン(Lambuorn)試験を用いて摩耗量を測ることで評価した。試験サンプルは、内径約22.9mm、外径約48.3mmで厚さ約5mmの環状のドーナツからなる。車軸に試験サンプルを取り付け、駆動している摩耗面に対してスリップ率65%で一定時間運転する。時間に対する重量減少の傾き(摩耗率)を測定した。摩耗指数はコントロールのサンプルの摩耗率を試験サンプルの摩耗率で割ることにより得た。より摩耗指数の高いサンプルはより優れた耐摩耗性を有している。表35に示すように、ストック17及び18は、ストック16よりも耐摩耗指数が高い。
【0184】
【表35】

【0185】
ストック16、17及び18の機械的引張り特性について、ASTM−D 412の25に記載の標準的な方法を用いて更に測定した。試験片は、内径44mm、外径57.5mm、厚さ2.5mmのギザギザの丸い輪であった。引張り試験に使用したゲージ長は25.4mmであった。ストック16、17及び18について測定した機械的引張り特性を表36に記載する。
【0186】
【表36】

【0187】
表36に記載した各機械的引張り特性は、落下温度の上昇によって改善されたか、又は認めうるほどに変化しなかった。
【0188】
好ましい実施態様を参照して、ここに本発明を説明したが、開示した特定の形態により本発明を限定する意図のないことを理解すべきである。一方、本発明は、添付の請求の範囲内にある全ての修正及び代替形態に及ぶことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】図1は、約−68(百万分の一(ppm))に明確なピークを示す、純粋な閉鎖ケージPOSS構造の29Si含有率に関する核磁気共鳴(NMR)分析を例示している。例示したPOSS構造は、閉鎖ポリヘドラルのSi12(T)、Si1015(T10)及びSi1218(T12)構造が混ざった物である。かかる構造は従来技術であり、本発明によるアルコキシ変性シルセスキオキサン類の例示ではない。
【図2】図2は、本発明によるアルコキシ変性シルセスキオキサン類の典型的な混合物の29Si含有率に関するNMR分析を例示しており、約−47ppmから約−71ppmまでの広範なスペクトル域を示している。該NMRは、実施例中の表6に纏めたサンプル2LのNMRである。
【図3】図3は、本発明によるアルコキシ変性シルセスキオキサン類の別の典型的な混合物の29Si含有率に関するNMR分析を例示しており、約−47ppmから約−71ppmの範囲の幅広いスペクトルを示している。このNMRは、実施例中の表6に纏めた実施例3のものである。
【図4】図4は、本発明による共アルコキシ変性シルセスキオキサン類の別の典型的な混合物の29Si含有率に関するNMR分析を例示しており、約−47ppmから約−71ppmの範囲の幅広いスペクトルを示している。このNMRは、実施例中の表6に纏めた実施例4のものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化1】

[式中、w、x及びyはモル分率を表し、yはゼロではなく、wかxの何れかがゼロである可能性はあるが両方がゼロであることはなく、且つw+x+z=1.00である]で表わされるアルコキシ変性シルセスキオキサン及びこれらの混合物からなる群から選択される一種以上の化合物を含み、
、R及びRは同じであるか又は異なっており、(i)H又は1から約20個の炭素原子を有するアルキル基、(ii)3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、(iii)7から約20個の炭素原子を有するアルキルアリール基、及び(iv)RX[式中、XはCl、Br、SH、S、NR、OR、COH、SCOR、CO、OH、オレフィン類、エポキシド類、アミノ基、ビニル基、アクリレート類及びメタクリレート類からなる群から選択され、aは1から約8であり、Rは1から約20個の炭素原子を有するアルキレン基及び3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基からなる群から選択され、R及びRは1から約5個の炭素原子を有するアルキル基、3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、及び7から約20個の炭素原子を有するアルキルアリール基からなる群から選択される]からなる群から選択されることを特徴とするアルコキシ変性シルセスキオキサン。
【請求項2】
モル分率(w+x)に対するモル分率wの割合が、約0.01から約0.50の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のアルコキシ変性シルセスキオキサン。
【請求項3】
yは、実質的に全てを酸加水分解処理した場合に、約0.05重量%から約10重量%のアルコールを遊離するアルコキシシラン成分であることを特徴とする請求項1に記載のアルコキシ変性シルセスキオキサン。
【請求項4】
yは、実質的に全てを酸加水分解処理した場合に、約0.5重量%から約8重量%のアルコールを遊離するアルコキシシラン成分であることを特徴とする請求項1に記載のアルコキシ変性シルセスキオキサン。
【請求項5】
yは、実質的に全てを酸加水分解処理した場合に、約1重量%から約6重量%のアルコールを遊離するアルコキシシラン成分であることを特徴とする請求項1に記載のアルコキシ変性シルセスキオキサン。
【請求項6】
前記アルコキシ変性シルセスキオキサンのR基、R基及びR基のうち少なくとも一つがエラストマーと結合しうる基であることを特徴とする請求項1に記載のアルコキシ変性シルセスキオキサン。
【請求項7】
基、R基及びR基のうち少なくとも一つが、メルカプトアルキル基、ブロック化メルカプトアルキル基、及び約2から約8個の硫黄原子の鎖を含む有機基からなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載のアルコキシ変性シルセスキオキサン。
【請求項8】
前記一種以上の化合物の少なくとも一種がアルキルアルコキシ変性シルセスキオキサンを含むことを特徴とする請求項1に記載のアルコキシ変性シルセスキオキサン。
【請求項9】
前記アルキルアルコキシ変性シルセスキオキサンが、オクチルアルコキシ変性シルセスキオキサン類、2−エチルヘキシルアルコキシ変性シルセスキオキサン類、フェニルアルコキシ変性シルセスキオキサン類、2−クロロプロピルアルコキシ変性シルセスキオキサン類、2−メルカプトプロピルアルコキシ変性シルセスキオキサン類、チオアシルプロピルアルコキシ変性シルセスキオキサン類、チオオクタノイルプロピルアルコキシ変性シルセスキオキサン類、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載のアルコキシ変性シルセスキオキサン。
【請求項10】
前記アルキルアルコキシ変性シルセスキオキサンがアルキル−co−メルカプトアルコキシ変性シルセスキオキサンを含むことを特徴とする請求項9に記載のアルコキシ変性シルセスキオキサン。
【請求項11】
(a)反応混合物として:
(i) 水;
(ii)アルコール;
(iii)アルキルトリアルコキシシラン、アルキルトリクロロシラン、又はこれらの混合物;及び
(iv)加水分解及び縮合触媒
を混合し、
(b)反応混合物を約0.5時間から約200時間反応させ;且つ
(c)アルコキシ変性シルセスキオキサンを回収する、アルコキシ変性シルセスキオキサン類の混合物の製造方法であって、
該アルコキシ変性シルセスキオキサン類の混合物が、本質的に反応性のアルコキシシリル基を有する開放構造のアルコキシ変性シルセスキオキサン類からなり、且つ本質的に閉鎖ケージ構造の多面体有機シルセスキオキサン類を含まないことを特徴とするアルコキシ変性シルセスキオキサン類の混合物の製造方法。
【請求項12】
前記アルコールがエタノール又はメタノールであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アルキルトリアルコキシシランが、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリブトキシシラン、メチル−トリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、ノニル−トリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリアルコキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチル−トリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、オクタデシル−トリメトキシシラン、2−エチルヘキシル−トリエトキシシラン、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記アルキルトリクロロシランが、オクチルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘプチルトリクロロシラン、ノニルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記加水分解及び縮合触媒が、塩酸、硫酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、イミダゾール類、グアニジン類、スズ触媒類、チタン触媒類、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記反応混合物を約0.75時間から約120時間反応させることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記反応混合物を約1時間から約72時間反応させることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記アルコキシ変性シルセスキオキサンを相分離により回収することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項19】
(a)エラストマー;
(b)シリカ又はシリカとカーボンブラックの混合物からなる補強性充填剤;
(c)下記式:
【化2】

[式中、w、x及びyはモル分率を表し、yはゼロではなく、wかxの何れかがゼロである可能性はあるが両方がゼロであることはなく、且つw+x+z=1.00である]で表わされ、式中のR、R及びRは同じであるか又は異なっており、(i)H又は1から約20個の炭素原子を有するアルキル基、(ii)3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、(iii)7から約20個の炭素原子を有するアルキルアリール基、並びに(iv)RX[式中、XはCl、Br、SH、S、NR、OR、COH、SCOR、CO、OH、オレフィン類、エポキシド類、アミノ基、ビニル基、アクリレート類及びメタクリレート類からなる群から選択され、aは1から約8であり、Rは1から約20個の炭素原子を有するアルキレン基及び3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基からなる群から選択され、R及びRは1から約5個の炭素原子を有するアルキル基、3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、及び7から約20個の炭素原子を有するアルキルアリール基からなる群から選択される]からなる群から選択されることを特徴とするアルコキシ変性シルセスキオキサン類及びこれらの混合物からなる群から選択される一種以上の化合物を含む、アルコキシ変性シルセスキオキサンを含むシリカ分散助剤;並びに
(d)加硫剤
を含む加硫可能なゴム配合物。
【請求項20】
前記シリカが、約15phrから約120phr存在することを特徴とする請求項19に記載のゴム配合物。
【請求項21】
前記アルコキシ変性シルセスキオキサンが、前記シリカの量に基づいて約0.1から約20重量%存在することを特徴とする請求項19に記載のゴム配合物。
【請求項22】
yが、実質的に全量を酸加水分解した場合に、約0.05から約10重量%のアルコールを遊離するアルコキシ変性シルセスキオキサンのアルコキシシラン成分であることを特徴とする請求項19に記載のゴム配合物。
【請求項23】
yが、実質的に全量を酸加水分解した場合に、約0.1から約8重量%のアルコールを遊離するアルコキシ変性シルセスキオキサンのアルコキシシラン成分であることを特徴とする請求項19に記載のゴム配合物。
【請求項24】
yが、実質的に全量を酸加水分解した場合に、約1から約6重量%のアルコールを遊離するアルコキシ変性シルセスキオキサンのアルコキシシラン成分であることを特徴とする請求項19に記載のゴム配合物。
【請求項25】
配合中及び更なる加工中にVOCとして放出されるアルコールの量がゴム配合物の0から約0.1重量%であることを特徴とする請求項19に記載のゴム配合物。
【請求項26】
配合中及び更なる処理中にVOCとして放出されるアルコールの量がゴム配合物の0から約0.05重量%であることを特徴とする請求項19に記載のゴム配合物。
【請求項27】
更に、含硫黄カップリング剤を含むことを特徴とする請求項19に記載に記載のゴム配合物。
【請求項28】
前記含硫黄カップリング剤がシリカの含有量に基づいて約0.05から約3重量%の量存在することを特徴とする請求項27に記載のゴム配合物。
【請求項29】
前記含硫黄カップリング剤が、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン類、ブロック化メルカプトアルキルアルコキシシラン類、シリカに結合したメルカプトアルキルシラン類、シリカに結合したブロック化メルカプトアルキルシラン類、ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)テトラスルフィド類又はジスルフィド類、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項27に記載のゴム配合物。
【請求項30】
前記含硫黄カップリング剤が、実質的にトリアルコキシシランが存在しない状態でシリカに固定されたメルカプトシランであることを特徴とする請求項27に記載のゴム配合物。
【請求項31】
更に、アルコキシシラン−シリカ反応の触媒を含むことを特徴とする請求項19に記載のゴム配合物。
【請求項32】
前記アルコキシシラン−シリカ反応の触媒が、水性媒体中で約10を超えるpKを有する有機強塩基、無機強塩基、アルキルスズ触媒、ジルコニウム触媒、チタン触媒、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項31に記載のゴム配合物。
【請求項33】
前記有機強塩基触媒が、強アルカリ金属アルコキシド類;グアニジン類;ヒンダードアミン類、3級アミン類;4級アンモニウム塩基類;ビス−アミノエーテル類、及び5員環から7員環である含窒素複素環、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項32に記載のゴム配合物。
【請求項34】
前記含窒素複素環が置換又は非置換イミダゾールを含むことを特徴とする請求項33に記載のゴム配合物。
【請求項35】
前記置換又は非置換イミダゾールが、イミダゾール、4−エチルアミノイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項34に記載のゴム配合物。
【請求項36】
前記グアニジンが、トリフェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項33に記載のゴム配合物。
【請求項37】
前記グアニジンがジフェニルグアニジンを含むことを特徴とする請求項33に記載のゴム配合物。
【請求項38】
前記有機強塩基が0.003phrから約8phr存在することを特徴とする請求項32に記載のゴム配合物。
【請求項39】
前記アルキルスズ触媒が、ブチルスズトリス(2−エチルヘキサノエート)、ビス(2−エチル−ヘキサノエート)スズ、ブチルスズクロライドジヒドロキシド、ブチルスズヒドロキシドオキシドハイドレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレエート、ジブチルスズオキシド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項32に記載のゴム配合物。
【請求項40】
前記アルキルスズ触媒がビス(2−エチル−ヘキサノエート)スズを含むことを特徴とする請求項32に記載のゴム配合物。
【請求項41】
前記アルキルスズ触媒が、シリカの重量に基づいて約0.01重量%から約5重量%存在することを特徴とする請求項32に記載のゴム配合物。
【請求項42】
前記ジルコニウム触媒が、ジルコニウム−2−エチルヘキサノエート、ジルコニウムテトラキス−(2−エチルヘキサノエート)、テトラオクチルジルコネート、ジルコニウム−n−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、ジルコニウム ジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキシド−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウム−2−エチルヘキソキシド、ジルコニウム−3,5−ヘプタンジオネート、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウム−2−メチル−2−ブトキシド、ジルコニウム−2,4−ペンタンジオネート、ジルコニウム−n−プロポキシド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項32に記載のゴム配合物。
【請求項43】
前記ジルコニウム触媒がジルコニウム−2−エチルヘキサノエートを含むことを特徴とする請求項32に記載のゴム配合物。
【請求項44】
前記ジルコニウム触媒が、シリカの重量に基づいて約0.01重量%から約5重量%の量で存在することを特徴とする請求項32に記載のゴム配合物。
【請求項45】
前記チタン触媒が、チタントリメチルシロキシド、チタン(イソプロポキシド)(2,4−ペンタンジオネート)、チタン(ブトキシド)(2,4−ペンタンジオネート)、チタン(イソプロポキシド)(エチル−アセトアセテート)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項32に記載のゴム配合物。
【請求項46】
前記アルコキシ変性シルセスキオキサンのR基、R基及びR基のうち少なくとも一つが、エラストマーに結合している基であることを特徴とする請求項19に記載のゴム配合物。
【請求項47】
前記アルコキシ変性シルセスキオキサンのR基、R基及びR基のうち少なくとも一つが、メルカプトアルキル基、ブロック化メルカプトアルキル基、及び約2から約8個の硫黄原子の鎖を含む有機基からなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載のゴム配合物。
【請求項48】
前記一種以上のアルコキシ変性シルセスキオキサン類がアルキルアルコキシ変性シルセスキオキサンであることを特徴とする請求項19に記載のゴム配合物。
【請求項49】
前記アルコキシ変性シルセスキオキサンが、オクチルアルコキシ変性シルセスキオキサン類、フェニルアルコキシ変性シルセスキオキサン類、2−クロロプロピルアルコキシ変性シルセスキオキサン類、2−メルカプトプロピルアルコキシ変性シルセスキオキサン類、2−チオアシルプロピルアルコキシ変性シルセスキオキサン類及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載のゴム配合物。
【請求項50】
前記ゴム配合物が、更に非アルコキシシランシリカ遮蔽剤を含むことを特徴とする請求項19に記載のゴム配合物。
【請求項51】
前記非アルコキシシランシリカ遮蔽剤が、グリコール類、水素化されている又は水素化されていないC若しくはCの糖類の脂肪酸エステル類、水素化されている又は水素化されていないC若しくはCの糖類の脂肪酸エステル類のポリオキシエチレン誘導体類、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項50に記載のゴム配合物。
【請求項52】
前記エラストマーが、共役ジエンモノマーのホモポリマー、並びに共役ジエンモノマー類と芳香族モノビニルモノマー類及びトリエン類とのコポリマー及びターポリマーからなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載のゴム配合物。
【請求項53】
前記エラストマーが、スチレン/ブタジエンコポリマー、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/イソプレンコポリマー、ブタジエン/イソプレン/スチレンターポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー、天然ゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載のゴム配合物。
【請求項54】
請求項19に記載の加硫可能なゴム配合物から製造された加硫ゴムを含む部材を少なくとも一つ具える空気入りタイヤ。
【請求項55】
前記加硫ゴムが硫黄で加硫されていることを特徴とする請求項54に記載の空気入りタイヤ。
【請求項56】
前記タイヤ部材が、トレッド、サブトレッド、サイドウォール、ボディプライスキン、ビードフィラー、エペックス、チェーファー、サイドウォールインサート、ワイヤーコート、インナーライナー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項54に記載の空気入りタイヤ。
【請求項57】
前記タイヤ部材がトレッドであることを特徴とする請求項54に記載の空気入りタイヤ。
【請求項58】
(a)(i)エラストマー;
(ii)シリカ又はシリカとカーボンブラックの混合物を含む補強性充填剤;及び
(iii)下記式:
【化3】

[式中、w、x及びyはモル分率を表し、yはゼロではなく、wかxの何れかがゼロである可能性はあるが両方がゼロであることはなく、且つw+x+z=1.00である]で表わされ、式中のR、R及びRは同じであるか又は異なっており、(i)H又は1から約20の炭素原子を有するアルキル基、(ii)3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、(iii)7から約20個の炭素原子を有するアルキルアリール基、並びに(iv)RX[式中、XはCl、Br、SH、S、NR、OR、COH、SCOR、CO、OH、オレフィン類、エポキシド類、アミノ基、ビニル基、アクリレート類及びメタクリレート類からなる群から選択され、aは1から約8であり、Rは1から約20個の炭素原子を有するアルキレン基及び3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基からなる群から選択され、R及びRは1から約5個の炭素原子を有するアルキル基、3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、及び7から約20個の炭素原子を有するアルキルアリール基からなる群から選択される]からなる群から選択されることを特徴とするアルコキシ変性シルセスキオキサン類及びこれらの混合物からなる群から選択される一種以上の化合物を含む、アルコキシ変性シルセスキオキサンを含むシリカ分散助剤を、ある混合温度において一緒に混合することにより混合物を形成すること、
(b)前記混合物を前記混合温度未満に冷却し、
(c)加硫が開始しない温度で前記混合物に加硫剤を混合する、
配合中のVOC放出レベルが低い加硫可能なゴム組成物の製造方法。
【請求項59】
前記混合温度が約130℃から約200℃であることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記混合温度が約145℃から約190℃であることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記混合温度が約155℃から約180℃であることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記シリカが約15phrから約120phrの量で存在することを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項63】
前記アルコキシ変性シルセスキオキサンがシリカの量に基づいて約0.1重量%から約20重量%の量で存在することを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項64】
yが、実質的に全てを酸加水分解処理した場合に、約0.05重量%から約10重量%のアルコールを遊離するアルコキシ変性シルセスキオキサンのアルコキシシラン成分であることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項65】
yが、実質的に全てを酸加水分解処理した場合に、約0.1重量%から約8重量%のアルコールを遊離するアルコキシ変性シルセスキオキサンのアルコキシシラン成分であることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項66】
yが、実質的に全てを酸加水分解処理した場合に、約1重量%から約6重量%のアルコールを遊離するアルコキシ変性シルセスキオキサンのアルコキシシラン成分であることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項67】
配合中及び更なる加工中にVOCとして放出されるアルコールの量がゴム配合物の0から約0.1重量%であることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項68】
配合中及び更なる加工中にVOCとして放出されるアルコールの量がゴム配合物の0から約0.05重量%であることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項69】
前記エラストマーが、共役ジエンモノマーのホモポリマー、並びに共役ジエンモノマーと芳香族モノビニルモノマー及びトリエンとのコポリマー及びターポリマーからなる群から選択されることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項70】
前記エラストマーが、スチレン/ブタジエンコポリマー、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/イソプレンコポリマー、ブタジエン/イソプレン/スチレンターポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー、天然ゴム、ブチルゴム、エチレン−プロプレン−ジエンゴム及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項71】
更に含硫黄カップリング剤を含むことを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項72】
前記含硫黄カップリング剤が存在しているシリカの量に基づいて約0.05重量%から約3重量%の量で存在することを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記含硫黄カップリング剤が、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン類、ブロック化メルカプトアルキルトリアルコキシシラン類、シリカに結合したメルカプトアルキルシラン類、シリカに結合したブロック化メルカプトアルキルシラン類、ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)テトラスルフィド類又はジスルフィド類、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記含硫黄カップリング剤は、実質的にトリアルコキシシランが存在しない状態でシリカに固定されたメルカプトシランであることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項75】
更に、アルコキシシラン−シリカ反応の触媒を含むことを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項76】
前記アルコキシシラン−シリカ反応の触媒が、水性媒体中で約10を超えるpKaを有する有機強塩基、無機強塩基、アルキルスズ触媒、ジルコニウム触媒、チタン触媒、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記有機強塩基触媒が、強アルカリ金属アルコキシド類、グアニジン類、ヒンダードアミン類、3級アミン類、4級アンモニウム塩基類、ビス−アミノエーテル類、及び5員環から7員環である含窒素複素環、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記アルキルスズ触媒が、ブチルスズトリス(2−エチルヘキサノエート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ブチルスズクロライドジヒドロキシド、ブチルスズヒドロキシドオキシドハイドレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレエート、ジブチルスズオキシド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記ジルコニウム触媒が、ジルコニウム−2−エチルヘキサノエート、ジルコニウムテトラキス−(2−エチルヘキサノエート)、テトラオクチルジルコネート、ジルコニウム−n−ブトキシド、ジルコニウム−t−ブトキシド、ジルコニウム−ジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキシド−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウム−2−エチルヘキソキシド、ジルコニウム−3,5−ヘプタンジオネート、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウム−2−メチル−2−ブトキシド、ジルコニウム−2,4−ペンタンジオネート、ジルコニウム−n−プロポキシド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項76に記載の方法。
【請求項80】
前記チタン触媒が、チタントリメチルトリメチルシロキシド、チタン(イソプロポキシド)(2,4−ペンタンジオネート)、チタン(ブトキシド)(2,4−ペンタンジオネート)、チタン(イソプロポキシド)(エチルアセトアセテート)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項76に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−537740(P2008−537740A)
【公表日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503194(P2008−503194)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/010610
【国際公開番号】WO2006/102518
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】