説明

揮発性有機物測定システム

【課題】2つの恒温槽を有するプロセスガスクロマトグラフの一つの恒温槽を有効活用することにより小型化を実現したVOC測定システムを提供する。
【解決手段】一台に2つの恒温槽を有するプロセスガスクロマトグラフにおいて、2つの恒温槽のうちの一つの恒温槽に気化器および除湿器を設け、除湿器で除湿された気体はカラムを経て検出器に送出するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの恒温槽を有する一般的なガスクロマトグラフ(以下PGCという)の一つの恒温槽をサンプリング装置として流用した揮発性有機物(以下VOCという)測定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、揮発性有機物測定に際してはPGCの前段にサンプリング装置を設け液体中に溶け込んだ微量のVOC成分を気化した後PGCに送り込んでいた。
図2はPGCの前段に設けられたサンプリング装置20の概略を示す構成図である。
【0003】
図において、たとえば浄水場に流れ込むサンプル(原水)はろ過装置21によりろ過される。ろ過された原水は弁28を開閉することにより一定量がスパージャに送られる。スパージャ21に流入した液体は例えば50度程度に加熱され窒素ガスによりバブリングされ、気化されてサンプルに含まれるVOC成分がドレンセパレータ24に送られる。
【0004】
ドレンセパレータ24で水分が取り除かれた気体は更に除湿器25に送られて乾燥空気により水分1%以下に除湿される。除湿された気体はガスクロマトグラフ26に送られてVOCの濃度が測定される。
このようなVOC測定装置の従来例としては下記の特許文献が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−269660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述の従来例におけるのVOC測定に際しては、PGCの前段にVOCを抽出するためのサンプリング装置が必要であり、VOC測定システム装置の小形化が難しいという問題があった。
【0007】
本発明は上記従来技術の問題点を解決するためになされたもので、2つの恒温槽を有するPGCの一つの恒温槽を有効活用するすることにより小型化を実現したVOC測定システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を達成するための本発明の揮発性有機物測定システムは、
一台に2つの恒温槽を有するプロセスガスクロマトグラフにおいて、前記2つの恒温槽のうちの一つの恒温槽に気化器および除湿器を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2においては、請求項1に記載の揮発性有機物測定システムにおいて、
前記除湿器で除湿された気体はカラムを経て検出器に送出するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したことから明らかなように本発明の請求項1,2によれば、次のような効果がある。2つの恒温槽を有するPGCの一つの恒温槽をVOCのサンプリング装置として活用することで小型化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の実施形態の一例を示すVOC測定システムの要部構成図である。
図1において、図2の従来例と同一要素には同一符号を付している。
Aは第1恒温槽、Bは第1恒温槽内に配置された第2恒温槽である。1はろ過器21からのサンプルの流路を切換える6方弁。
【0012】
2はキャリアガスの流路を切換える第一4方弁、3は第一4方弁を通ったキャリアガスおよび絞り4を通らずに流入するキャリアガスの流路を切換える第二4方弁である。これら第一、第二4方弁は流路方向が同時に切換えられるようになっている。
【0013】
22はスパージャ、25は除湿器であり第二恒温槽B内に配置されている。除湿器25の出口はカラム6に接続されカラム6の出口は第二4方弁3に接続されている。5は第二4方弁に接続された検出器である。
【0014】
上述の構成において、洗浄モードでは6方弁1、第一,第二4方弁2,3は実線で示す経路が導通状態となっている。そして、ろ過装置21を通ったサンプルは6方弁1の接続口1から入り接続口6から出て計量管1aを通り、接続口3から入り接続口2から出て排出されている。
【0015】
また、キャリアガスは2方に分岐され一方は第一4方弁2の接続口7から入り接続口8から出て絞り4を通って第二4方弁3の接続口14に入り接続口13から出て検出器5を通って排出されている。絞り4はキャリアガスの消費量を制限する機能を有している。
【0016】
分岐された他方のキャリアガスは第二4方弁3の接続口11に入り接続口12から出る。接続口12から出たキャリアガスはカラム6の出口から入り除湿器25およびスパージャ22の出口から入って6方弁1の接続口5に入る。6方弁1の接続口5に入ったキャリアガスは接続口4から出て第一4方弁2の接続口10に入り、接続口9から排出されている。
【0017】
次に測定モードになると6方弁1及び第一,第二4方弁2,3は点線で示す経路に切り換わる。その結果、第一4方弁2の接続口7から入ったキャリアガスは接続口10から出て6方弁1の接続口4に入り接続口3から出て計量管1a中のサンプルを押し出して接続口6に入り接続口5から出る。
【0018】
6方弁1から出たサンプルは第2恒温槽B内に配置されたスパージャ22で窒素ガスによりバブリングされ、サンプルに含まれる有機化合物が気化される。気化された有機化合物は除湿器25で水分1%以下に除湿されカラム6を通って第二4方弁3の接続口12に入り接続口13から出て検出器5に搬送される。
【0019】
一方第一4方弁2の前で分岐したキャリアガスは第二4方弁3の接続口14に入り接続口11から出て絞り4を通って第一4方弁2の接続口8から入って接続口9から排出される。
【0020】
上述の構成によれば、一台に2つの恒温槽を有するプロセスガスクロマトグラフを用い、2つの恒温槽のうちの一つの恒温槽に気化器および除湿器を設け、VOCのサンプリング装置として活用することで小型化を実現することができる。
【0021】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。例えば実施例では第2恒温槽Bを第1恒温槽内に設けたが外側に配置されたものであってもよい。また、切換え弁として6方弁1及び4方弁2,3を用いたが同様に機能するものであれば実施例以外の弁であってもよい。また、図では省略したがスパージャと除湿器の間にドレンセパレータを設けてもよい。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用した揮発性有機物測定システムの要部構成図である。
【図2】従来の揮発性有機物測定システムの要部構成図である。
【符号の説明】
【0023】
A 第1恒温槽
B 第2恒温槽
1 6方弁
2 第一4方弁
3 第二4方弁
4 絞り
5 検出器
6 カラム
20 サンプリング装置
21 ろ過装置
22 スパージャ
23 窒素ガスボンベ
24 ドレンセパレータ
25 除湿器
26 ガスクロマトグラフ
27 パソコン
28 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一台に2つの恒温槽を有するプロセスガスクロマトグラフにおいて、前記2つの恒温槽のうちの一つの恒温槽に気化器および除湿器を設けたことを特徴とする揮発性有機物測定システム。
【請求項2】
前記除湿器で除湿された気体はカラムを経て検出器に送出するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の揮発性有機物測定システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−145171(P2009−145171A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322192(P2007−322192)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】