説明

揮発性有機物除去装置及び揮発性有機物検出方法

【課題】
ポリマーがVOCを吸収することで溶解し、その物性値が変化することを利用したVOCセンサー等を組み込んだ揮発性有機物の除去装置、そしてその除去装置における揮発性有機物の検出方法を提供することにある。
【解決手段】
揮発性有機物除去装置の揮発性有機物検出手段10に、揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部12と、反応部に張力又は押力を負荷させる応力負荷手段16と、反応部の応力変化を検出する応力変化検出手段18と、応力変化の検出に応じて揮発性有機物除去装置の動作を制御する動作制御手段20とを具備させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被浄化ガスに含まれる揮発性有機物を除去する装置及び揮発性有機物を検出する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
揮発性有機物(VOC)は、光化学オキシダントと浮遊粒子状物質の主な原因であるため、工場等の固定発生源からのVOC排出及び飛散に関して、排出規制や自主的取組の促進がなされている。
【0003】
従来から、固定発生源からのVOC排出量を減少させるには、VOC除去装置の設置が有効な手段であると考えられているが、このVOC除去装置のVOC除去効率の向上のためには、例えば、工場から排出されるVOC総量をモニタリングすることができるVOCセンサーと、除去装置から排出された清浄空気に規制値を超えたVOC量が混入した場合に検知し、警報及び安全装置を作動させる(電気回路で言うところのヒューズの役割)VOCセンサーが必要である。
【0004】
この問題を解決するために、これまで幾つかのVOCセンサーが提供されている。例えば、特許文献1及び2に開示されている半導体式ガスセンサーは、多孔質酸化スズ(SnO)に吸着した酸素が還元性物質で消費される際に発生する電気抵抗など電気的性質変化を利用してガス濃度を測ることができる。
【0005】
また、特許文献3で開示されている光導波路センサーは、VOCガスの吸着・吸収により、光導波路表層に設置された光増幅層の屈折率が変化することを利用してガス濃度を測ることができる。
【0006】
また、特許文献4及び5で開示されている高分子薄膜の膨潤に基づく干渉増幅反射法を用いたセンサーは、高分子薄膜がVOCと接触した際、吸収又は吸着することにより、膨潤し光学膜厚が変化することを利用してVOCを検知することを可能とした。
【特許文献1】特開平6−66755号公報
【特許文献2】特開2001−74681号公報
【特許文献3】特開2006−98284号公報
【特許文献4】特開2004−163185号公報
【特許文献5】特開平6−222006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなVOCセンサーが既に開発されているが、いずれの場合もVOC濃度の定量を念頭に設計された比較的複雑なVOCセンサーである。従って、VOC除去装置に組み込むと装置自体を大型なものにせざるを得ず、また装置が高価なものになり、そして装置運用のための経費も嵩むといった問題が生じる。このため、VOC除去装置の小型化等に求められているようなヒューズの役割を担うVOCセンサーの開発が望まれているが、いまだ開発されていないのが実情である。このような課題を解決するためには、VOC除去装置への組み込み及び交換が比較的容易にできるようセンサーの設計を単純化・小型化する必要がある。
【0008】
即ち、本発明の目的は、ポリマーがVOCを吸収することで溶解し、その物性値が変化することを利用したVOC総量の検出用センサー及びヒューズの役割を担うVOCセンサー等を組み込んだ揮発性有機物の除去装置、そしてその除去装置における揮発性有機物の検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明は、以下の技術的手段を講じている。
即ち、請求項1記載の発明は、被浄化ガスに含まれる揮発性有機物を処理する揮発性有機物処理部と、前記揮発性有機物を検出する揮発性有機物検出手段と、を有する揮発性有機物除去装置であって、前記揮発性有機物検出手段は、揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部と、前記反応部に張力又は押力を負荷させる応力負荷手段と、前記反応部の応力変化を検出する応力変化検出手段と、前記応力変化の検出に応じて前記揮発性有機物除去装置の動作を制御する動作制御手段と、を具備することを特徴とする揮発性有機物除去装置である。尚、揮発性有機物の処理は、吸着処理や燃焼処理等によって行うのがよい。但し、これらの処理に限定するものではない。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の揮発性有機物除去装置であって、前記揮発性有機物溶解性高分子材は、ポリスチレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、オクタデシルアクリレート及びこれらの混合物のうちから選択されたものであることを特徴としている。そして、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の揮発性有機物除去装置であって、前記揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部は、略棒状に形成されていることを特徴としている。尚、略棒状とは、例えば、棒型、鉄アレイ型、ばね型やワイヤ形状や繊維形状等を示している。
【0011】
そして、請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の揮発性有機物除去装置であって、前記揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部の中心部及び中心部近傍は、両端部よりも細く形成されていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項5記載の発明は、請求項1又は2記載の揮発性有機物除去装置であって、前記揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部は、薄膜状又はハニカム状又は芯鞘状に形成されていることを特徴としている。
【0013】
またさらに、請求項6記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の揮発性有機物除去装置であって、前記揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部の中軸として導電性物質を内挿させていることを特徴としている。
【0014】
また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の揮発性有機物除去装置であって、前記揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部の内部に導電性物質が分散されていることを特徴としている。尚、揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部に導電性物質をフィラー状に混合(分散)させて用いることが特に有効である。
【0015】
そして、請求項8記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の揮発性有機物除去装置であって、前記揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部の表面の全部又は一部に導電性物質が被覆されていることを特徴としている。
【0016】
また、請求項9記載の発明は、請求項6乃至8のいずれか1項記載の揮発性有機物除去装置であって、前記導電性物質が、金、銀、白金、銅、鉄、クロム、アルミニウム、炭素、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリビロール及びこれらの混合物の少なくともいずれかであることを特徴としている。
【0017】
またさらに、請求項10記載の発明は、請求項1乃至9のいずれか1項記載の揮発性有機物除去装置であって、前記応力変化検出手段が、前記反応部に光を照射する光照射部と、前記反応部を透過する光を検出する光検出部とを具備することを特徴としている。
【0018】
さらに、請求項11記載の発明は、揮発性有機物を処理する揮発性有機物処理部を有する揮発性有機物除去装置における揮発性有機物検出方法であって、略棒状又は薄膜状又はハニカム状又は芯鞘状に形成された揮発性溶解性高分子材からなる揮発性有機物反応部に張力又は押力を負荷させる工程と、前記揮発性有機物処理部を通った被浄化ガスを前記揮発性有機物反応部に接触させる工程と、前記揮発性有機物反応部の応力変化を検出する工程と、前記応力変化の検出に応じて前記揮発性有機物除去装置の動作を制御する工程と、を含むことを特徴とする揮発性有機物検出方法である。尚、揮発性有機物の処理は、吸着処理や燃焼処理等によって行うのがよい。但し、これらの処理に限定するものではない。
【0019】
また、請求項12記載の発明は、揮発性有機物を処理する揮発性有機物処理部を有する揮発性有機物除去装置における揮発性有機物検出方法であって、略棒状又は薄膜状又はハニカム状又は芯鞘状に形成された揮発性溶解性高分子材からなる揮発性有機物反応部に張力又は押力を負荷させる工程と、前記揮発性有機物処理部を通った被浄化ガスを前記揮発性有機物反応部に接触させる工程と、前記揮発性有機物反応部に光を照射するとともに、前記揮発性有機物反応部を透過する光を検出する工程と、前記光の検出に応じて前記揮発性有機物除去装置の動作を制御する工程と、を含むことを特徴とする揮発性有機物検出方法である。尚、揮発性有機物の処理は、吸着処理や燃焼処理等によって行うのがよい。但し、これらの処理に限定するものではない。
【0020】
そして、請求項13記載の発明は、揮発性有機物を処理する揮発性有機物処理部を有する揮発性有機物除去装置における揮発性有機物検出方法であって、略棒状又は薄膜状又はハニカム状又は芯鞘状に形成された導電性物質が含まれる揮発性溶解性高分子材からなる揮発性有機物反応部に張力又は押力を負荷させる工程と、前記揮発性有機物処理部を通った被浄化ガスを前記揮発性有機物反応部に接触させる工程と、前記揮発性有機物反応部に通電させるとともに、前記揮発性有機物反応部を流れる電流量を検出する工程と、前記電流量の検出に応じて前記揮発性有機物除去装置の動作を制御する工程と、を含むことを特徴とする揮発性有機物検出方法である。尚、揮発性有機物の処理は、吸着処理や燃焼処理等によって行うのがよい。但し、これらの処理に限定するものではない。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る揮発性有機物除去装置は、揮発性有機物処理部による揮発性有機物処理後の揮発性有機物を検出する揮発性有機物検出手段が略棒状又は薄膜状に形成された揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部と、前記反応部に張力又は押力を負荷させる応力負荷手段と、前記反応部の張力又は押力の応力変化を検出する応力変化検出手段と、前記応力変化の検出に応じて前記揮発性有機物除去装置の動作を制御する動作制御手段とを具備しているので、従来の揮発性有機物除去装置に比して設計し易く、小型化が可能となる。
【0022】
また、本発明に係る揮発性有機物を処理する揮発性有機物処理部を有する揮発性有機物検出方法は、略棒状又は薄膜状又はハニカム状又は芯鞘状に形成された揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部に張力又は押力を負荷させる工程と、前記反応部に前記揮発性有機物処理部により揮発性有機物が処理された被浄化ガスを接触させる工程と、前記反応部の応力変化を検出する工程と、前記応力変化の検出に応じて前記揮発性有機物除去装置の動作を制御する工程とを含むので、揮発性有機物処理後の揮発性有機物が基準値を超えた場合の安全性を的確に確保することができるという効果が生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態における揮発性有機物除去装置の揮発性有機物検出手段の一例を示した図である。10は揮発性有機物検出手段、12は反応部、14は両端部、16は応力負荷手段、18は応力変化検出手段、19は荷重計測手段、20は動作制御手段を示している。尚、荷重計測手段19は応力変化検出手段18の一例である。
【0024】
反応部12は、揮発性有機物溶解性高分子材を鉄アレイ型のように中心部及び中心部近傍を両端部14よりも細く加工形成したものであるが、これは例えば、略棒状に形成したり、または、薄膜状やハニカム状や芯鞘状に形成してもよい。尚、揮発性有機物溶解性高分子は、ポリスチレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、オクタデシルアクリレートや、これらの混合物を用いることが有効である。
【0025】
応力負荷手段16が両端部14を反応部12が変形しない程度に一定の引っ張り力或いは押し込み力を加え、応力変化検出手段18の一例である荷重計測手段19が反応部12に加えられている荷重をモニタリングする。尚、応力負荷手段16が、反応部12の上端部を挟持し、反応部12に対して重力による引っ張り力を与える構成にしてもよい。
【0026】
揮発性有機物を含むガスを反応部12に吹きかけることによって、反応部12の表面が溶解すると、反応部12自体の強度が弱まることになる。そうすると、反応部12は応力負荷手段16による負荷に耐え切れず断裂し、荷重計測手段19がモニタリングしていた荷重が0になる。その結果、応力変化検知手段18が反応部12の応力変化を検出する(揮発性有機物を含むガスの濃度を検出することができる)。そして、反応部12の応力変化の検知に応じて動作制御手段20が揮発性有機物除去装置の制御を行う。尚、動作制御手段20が行う制御は、例えば、警告灯を点灯させたり、警告音を発するようにしたり、揮発性有機物除去装置の動作を停止させるようにしてもよいし、これらを組み合わせても良い。
【実施例1】
【0027】
(VOC溶解性ポリマー構造体センサー)
ポリスチレンを鉄アレイ型に加工することで鉄アレイ型ポリスチレンを作製し、応力変化によるVOC検出実験を行った。両端を引っ張り試験機で一定荷重をかけて固定し、応力変化をモニターした(荷重計測を行った)。次に、アレイ中心部にVOCガスが通るようにパイプを設置し、乾燥空気を送風した。
【0028】
途中で、VOC物質を乾燥空気中に加え、その際の応力変化をモニターした。VOC濃度の上昇に伴って、ポリマー表面が溶解し、引っ張り力に耐えられなくなり、ポリマーの断裂が発生し、荷重が0になった。つまり、荷重変化によってVOCの検出が可能であることが分かる。尚、本実施例では、荷重を1g、VOC濃度を3.6%とした。
【0029】
図2は、本発明の他の実施形態における揮発性有機物除去装置の揮発性有機物検出手段の一例を示した図である。10は揮発性有機物検出手段、12は反応部、14は両端部、16は応力負荷手段、18は応力変化検出手段、20は動作制御手段、22は光照射部、24は光検出部を示している。尚、光照射部22及び光検出部24は、応力変化検出手段18の一例である。
【0030】
反応部12は、揮発性有機物溶解性高分子材を鉄アレイ型のように中心部及び中心部近傍を両端部14よりも細く加工形成したものであるが、これは例えば、略棒状に形成したり、または、薄膜状やハニカム状や芯鞘状に形成してもよい。尚、揮発性有機物溶解性高分子は、ポリスチレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、オクタデシルアクリレートや、これらの混合物を用いることが有効である。
【0031】
応力負荷手段16が両端部14を反応部12が変形しない程度に一定の引っ張り力或いは押し込み力を加え、光照射部22が、反応部12に光を照射する。尚、応力負荷手段16が、反応部12の上端部を挟持し、反応部12に対して重力による引っ張り力を与えるようにしてもよい。
【0032】
この場合、照射された光は、反応部12の光遮蔽物質により反応部12を透過することができない。この光遮蔽物質は、着色剤で、反応部12の表面に着色させたものであるが、他の光遮蔽物質を反応部12の内部に含有させてもよい。
【0033】
揮発性有機物を含むガスを反応部12に吹きかけることによって反応部12の表面が溶解すると、反応部12自体の強度が弱まることになる。そうすると、応力負荷手段16による引っ張り力に耐えられなくなり、ポリマーの断裂が発生する。
【0034】
その結果、光照射部22の照射する光が反応部12を透過し、光検出部24にて検出される。その結果、応力変化検出手段18が反応部12の応力変化を検出することになる(揮発性有機物を含むガスの濃度を検出することができる。)。そして、反応部12の応力変化の検出に応じて動作制御手段20が揮発性有機物除去装置の制御を行う。尚、本実施形態では、光検出部24が光照射部22と反応部12を挟んで対面位置に設けられているが、例えば、光軸に対して略直角位置に設けて、光量を検出するようにしてもよい。また、動作制御手段20が行う制御は、例えば、警告灯を点灯させたり、警告音を発するようにしたり、揮発性有機物除去装置の動作を停止させるようにしてもよいし、これらを組み合わせても良い。
【実施例2】
【0035】
(VOC溶解性ポリマー光遮蔽物質複合体光センサー)
ポリスチレンと樹脂用黒色着色剤を複合化したものを鉄アレイ型に加工することで、黒色鉄アレイ型ポリスチレン複合体を作製し、この黒色鉄アレイ型ポリスチレン複合体の一方に荷重をかけて固定化し、やや下部に光を照射した。尚、この時点では照射した光は、着色剤により遮蔽される。
【0036】
黒色鉄アレイ型ポリスチレン複合体の中心部にガスが通るようにパイプを設置し、乾燥空気を送風した。途中で、VOC物質を乾燥空気中に加え、その際の光検出部に入ってくる光量の変化をモニターした。VOC濃度の上昇に伴って、ポリマー表面が溶解し、引っ張り力に耐えられなくなりポリマーの断裂が生じた。尚、本実施例では、荷重を1g、VOC濃度を3.6%とした。
【0037】
それに伴い、照射していた光が光検出部に入射し、光量の上昇が光検出部によって確認された。つまり、光量の変化によってVOCの検出が可能であることが分かる。
【0038】
図3は、本発明の他の実施形態における揮発性有機物除去装置の揮発性有機物検出手段の一例を示した図である。10は揮発性有機物検出手段、12は反応部、14は両端部、16は応力負荷手段、18は応力変化検出手段、20は動作制御手段、26は導電性物質、28Aは電流検知部、28Bは電圧印加部を示している。尚、電流検知部28A及び電圧印加部28Bは応力変化検出手段18の一例である。
【0039】
反応部12は、揮発性有機物溶解性高分子材を鉄アレイ型のように中心部及び中心部近傍を両端部14よりも細く加工形成したものであるが、これは例えば、略棒状に形成したり、または、薄膜状やハニカム状や芯鞘状に形成してもよい。尚、揮発性有機物溶解性高分子は、ポリスチレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、オクタデシルアクリレートや、これらの混合物を用いることが有効である。
【0040】
また、この反応部12の表面の一部に導電性物質26をコーティングした。尚、導電性物質は、反応部12内部に分散(例えばフィラー状にして)させてもよいし、反応部12の表面全部にコーティングしてもよい。さらに反応部12が略棒状の場合は、導電性物質を反応部12内部に中軸として内挿させてもよい。
【0041】
また、導電性物質は、金、銀、白金、銅、鉄、クロム、アルミニウム、炭素、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリビロールや、これらの混合物を用いることが有効である。
【0042】
応力負荷手段16が両端部14を反応部12が変形しない程度に一定の引っ張り力或いは押し込み力を加え、電圧印加部28Bが導電性物質26に電圧を加える。そして、電流値を電流検知部28Aがモニタリングする。揮発性有機物を含むガスを反応部12に吹きかけることによって、反応部12の表面が溶解すると、反応部12の強度が弱くなり、加えられた力に耐えられなくなった反応部12が断裂する。そうすると、電気導通が遮断され、モニタリングしていた電流値が0になり、応力変化検出手段18が反応部12の応力変化を検出することになる(揮発性有機物を含むガスの濃度を検出することができる。)。
【0043】
そして、応力変化の検出に応じて動作制御手段20が揮発性有機物除去装置の制御を行うことが可能となる。尚、動作制御手段20が行う制御は、例えば、警告灯を点灯させたり、警告音を発するようにしたり、揮発性有機物除去装置の動作を停止させるようにしてもよいし、これらを組み合わせても良い。
【実施例3】
【0044】
(導電性物質VOC溶解性ポリマー複合化センサー)
ポリスチレンでコーティングされた銅線を鉄アレイ型に加工した鉄アレイ型ポリスチレンを作製した。両端を引っ張り試験機で一定荷重をかけて固定し、銅線に電圧を加えた。
【0045】
アレイ中心部にガスが通るようパイプを設置し、乾燥空気を送風した。途中で、VOC物質を乾燥空気中に加え、その際の導電性物質に流れる電流値変化をモニタリングした。VOC濃度の上昇に伴って、ポリマー表面が溶解すると、引っ張り力に耐えられなくなり、ポリマーの断裂が発生した。尚、本実施例では、荷重を1g、VOC濃度を3.6%とした。
【0046】
その結果、銅線が断線し、モニタリングしていた電流値が0になった。つまり、電流値の変化によってVOCの検出が可能であることが分かる。
【0047】
図4は、本発明の他の実施形態における揮発性有機物除去装置の揮発性有機物検出手段の一例を示した図である。10は揮発性有機物検出手段、12は反応部、14は両端部、30は導電性ばね装置、32はLED点灯手段を示している。
【0048】
反応部12は、揮発性有機物溶解性高分子材を鉄アレイ型のように中心部及び中心部近傍を両端部14よりも細く加工形成したものであるが、これは例えば、略棒状に形成したり、または、薄膜状やハニカム状や芯鞘状に形成してもよい。尚、揮発性有機物溶解性高分子は、ポリスチレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、オクタデシルアクリレートや、これらの混合物を用いることが有効である。導電性ばね装置30が、両端部14を反応部12が変形しない程度に一定の引っ張り力を加える。
【0049】
揮発性有機物を含むガスを反応部12に吹きかけることによって、反応部12の表面が溶解すると、反応部12が導電性ばね装置30の引っ張り力に耐えられなくなり断裂し、導電性ばね装置30がLED点灯手段32に接触することになる。
【0050】
その結果、LED点灯手段に電力が供給され、LEDが点灯する。そうすることによって、揮発性有機物を含むガスの濃度を検知することが可能となる。尚、本実施形態では、LEDを使用しているが、これは蛍光灯等を利用しても良いし、例えば、警告音を鳴らすように設定しても良い。
【0051】
次に、本発明の実施形態における揮発性有機物除去装置の一例を図5を参照して説明する。30は揮発性有機物除去装置、32は揮発性有機物処理部、34はパイプ、36は揮発性有機物検出手段、38はブロア、40は揮発性有機物発生源を示している。尚、本実施形態における揮発性有機物処理部32の揮発性有機物処理の方法は、吸着処理、燃焼処理等の処理方法のいずれかによる処理を示している。但し、これら処理方法に限定しているわけではない。
【0052】
まず、揮発性有機物発生源40から揮発性有機物を含むガスを揮発性有機物除去装置30に送り込む。次に、ブロア38によって、パイプ34を通じて揮発性有機物処理部32に揮発性有機物を含むガスが送られる。
【0053】
続いて、揮発性有機物処理部32が、ガス内の揮発性有機物を処理し、さらにブロア38が、揮発性有機物処理後のガスを、パイプ34を通じて揮発性有機物検出手段36に送る。
【0054】
揮発性有機物検出手段36は、送られてきたガスに含まれる揮発性有機物の濃度をチェックし、一定量を超える濃度を検出した場合には、揮発性有機物除去装置の動作を制御する。尚、動作の制御方法は、揮発性有機物除去装置の動作の停止処理を行うように設定してもよいし、警報等により揮発性有機物除去装置の管理者に知らせる等の処理を行うように設定してもよい。また、それらを組み合わせる制御方法も採ることもでき、それは安全面で極めて有効なものとなる。
【0055】
次に、本発明の実施形態である揮発性有機物検出方法の一例を図6を示して説明する。図6は、揮発性有機物検出方法をフローチャートで示しており。まず、反応部に応力負荷をかけた状態で、荷重計測手段が反応部に加えられる荷重の計測を開始する。そして、揮発性有機物処理後のガスを反応部に接触させ、続いて、揮発性有機物処理後のガスに含まれる揮発性有機物の濃度をモニタリングする。
【0056】
揮発性有機物の濃度が一定量を越えない状態であれば、そのまま揮発性有機物除去装置の作動が継続し、逆に揮発性有機物の濃度が一定量を越える状態であれば、反応部が溶解によって断裂する。すると、荷重計測手段が反応部に加えられている荷重が0になったことを検出し、反応部の応力変化を検出することになる。そして、その応力変化の検出に応じて動作制御手段が、揮発性有機物除去装置の動作を制御する。尚、動作制御手段が行う制御は、例えば、警告灯を点灯させたり、警告音を発するようにしたり、揮発性有機物除去装置の動作を停止させるようにしてもよい。また、これらを組み合わせても良い。
【0057】
図7は、本発明の他の実施形態である揮発性有機物検出方法の一例をフローチャートで示した図である。まず、反応部に応力負荷をかけた状態で、光照射部が反応部に向けて光を照射する。そして、揮発性有機物処理後のガスを反応部に接触させ、続いて、揮発性有機物処理後のガスに含まれる揮発性有機物の濃度をモニタリングする。
【0058】
揮発性有機物の濃度が一定量を越えない状態であれば、そのまま揮発性有機物除去装置の作動が継続し、逆に揮発性有機物の濃度が一定量を越える状態であれば、反応部が溶解によって断裂し、照射されていた光が、光検出部に検出される。光検出部が光を検出することにより、反応部の応力変化を検出されることになる。そして、その検出に応じて動作制御手段が、揮発性有機物除去装置の動作を制御する。尚、動作制御手段が行う制御は、例えば、警告灯を点灯させたり、警告音を発するようにしたり、揮発性有機物除去装置の動作を停止させるようにしてもよい。また、これらを組み合わせても良い。
【0059】
図8は、本発明の他の実施形態である揮発性有機物検出方法の一例をフローチャートで示した図である。まず、応力負荷をかけた状態で、電圧印加部が導電性物質をコーティングした反応部に電流を流す(電圧を加える)。そして、揮発性有機物吸着後のガスを反応部に接触させ、続いて、揮発性有機物処理後のガスに含まれる揮発性有機物の濃度をモニタリングする。
【0060】
揮発性有機物の濃度が一定量を越えない状態であれば、そのまま揮発性有機物除去装置の作動が継続し、逆に揮発性有機物の濃度が一定量を越える状態であれば、反応部が溶解によって断裂し、反応部の導電性物質に流れていた電流量が0になる。その電流量の変化を電流検知部が検知することで、反応部の応力変化を検出することになる。そして、その検出に応じて動作制御手段が、揮発性有機物除去装置の動作を制御する。尚、動作制御手段が行う制御は、例えば、警告灯を点灯させたり、警告音を発するようにしたり、揮発性有機物除去装置の動作を停止させるようにしてもよいし、これらを組み合わせても良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る揮発性有機物除去装置は、揮発性有機物検出手段が小型であることから、装置自体を小型化することができ、その結果、揮発性有機物除去装置を設置するスペースが限られた場所でも有用である。また、本発明に係る揮発性有機物検出方法は、揮発性有機物処理後の揮発性有機物が基準値を超えた場合の安全性を的確に確保することができるため、固定発生源からの揮発性有機物の排出及び飛散に関する規制等に対して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態における揮発性有機物除去装置の揮発性有機物検出手段の一例を示した図である。
【図2】本発明の他の実施形態における揮発性有機物除去装置の揮発性有機物検出手段の一例を示した図である
【図3】本発明の他の実施形態における揮発性有機物除去装置の揮発性有機物検出手段の一例を示した図である
【図4】本発明の他の実施形態における揮発性有機物除去装置の揮発性有機物検出手段の一例を示した図である
【図5】本発明の実施形態における揮発性有機物除去装置の一例を示した図である。
【図6】本発明の実施形態である揮発性有機物検出方法の一例をフローチャートで示した図である。
【図7】本発明の他の実施形態である揮発性有機物検出方法の一例をフローチャートで示した図である。
【図8】本発明の他の実施形態である揮発性有機物検出方法の一例をフローチャートで示した図である。
【符号の説明】
【0063】
10 揮発性有機物検出手段
12 反応部
14 両端部
16 応力負荷手段
18 応力変化検出手段
19 荷重計測手段
20 動作制御手段
22 光照射部
24 光検出部
26 導電性物質
28A 電流検知部
28B 電圧印加部
30 導電性ばね装置
32 LED点灯手段
32 揮発性有機物処理部
34 パイプ
36 揮発性有機物検出手段
38 ブロア
40 揮発性有機物発生源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被浄化ガスに含まれる揮発性有機物を処理する揮発性有機物処理部と、
前記揮発性有機物を検出する揮発性有機物検出手段と、
を有する揮発性有機物除去装置であって、
前記揮発性有機物検出手段は、
揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部と、
前記反応部に張力又は押力を負荷させる応力負荷手段と、
前記反応部の応力変化を検出する応力変化検出手段と、
前記応力変化の検出に応じて、前記揮発性有機物除去装置の動作を制御する動作制御手段と、
を具備することを特徴とする揮発性有機物除去装置。
【請求項2】
前記揮発性有機物溶解性高分子材は、ポリスチレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、オクタデシルアクリレート及びこれらの混合物のうちから選択されたものであることを特徴とする請求項1記載の揮発性有機物除去装置。
【請求項3】
前記揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部は、略棒状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の揮発性有機物除去装置。
【請求項4】
前記揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部の中心部及び中心部近傍は、両端部よりも細く形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の揮発性有機物除去装置。
【請求項5】
前記揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部は、薄膜状又はハニカム状又は芯鞘状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の揮発性有機物除去装置。
【請求項6】
前記揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部の中軸として導電性物質を内挿させていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の揮発性有機物除去装置。
【請求項7】
前記揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部の内部に導電性物質が分散されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の揮発性有機物除去装置。
【請求項8】
前記揮発性有機物溶解性高分子材からなる反応部の表面の全部又は一部に導電性物質が被覆されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の揮発性有機物除去装置。
【請求項9】
前記導電性物質が、金、銀、白金、銅、鉄、クロム、アルミニウム、炭素、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリビロール及びこれらの混合物の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項記載の揮発性有機物除去装置。
【請求項10】
前記応力変化検出手段が、前記反応部に光を照射する光照射部と、前記反応部を透過する光を検出する光検出部とを具備することを特徴とする請求項1乃至9いずれか1項記載の揮発性有機物除去装置。
【請求項11】
揮発性有機物を処理する揮発性有機物処理部を有する揮発性有機物除去装置における揮発性有機物検出方法であって、
略棒状又は薄膜状又はハニカム状又は芯鞘状に形成された揮発性溶解性高分子材からなる揮発性有機物反応部に張力又は押力を負荷させる工程と、
前記揮発性有機物処理部を通った被浄化ガスを前記揮発性有機物反応部に接触させる工程と、
前記揮発性有機物反応部の応力変化を検出する工程と、
前記応力変化の検出に応じて前記揮発性有機物除去装置の動作を制御する工程と、
を含むことを特徴とする揮発性有機物検出方法。
【請求項12】
揮発性有機物を処理する揮発性有機物処理部を有する揮発性有機物除去装置における揮発性有機物検出方法であって、
略棒状又は薄膜状又はハニカム状又は芯鞘状に形成された揮発性溶解性高分子材からなる揮発性有機物反応部に張力又は押力を負荷させる工程と、
前記揮発性有機物処理部を通った被浄化ガスを前記揮発性有機物反応部に接触させる工程と、
前記揮発性有機物反応部に光を照射するとともに、前記揮発性有機物反応部を透過する光を検出する工程と、
前記光の検出に応じて前記揮発性有機物除去装置の動作を制御する工程と、
を含むことを特徴とする揮発性有機物検出方法。
【請求項13】
揮発性有機物を処理する揮発性有機物処理部を有する揮発性有機物除去装置における揮発性有機物検出方法であって、
略棒状又は薄膜状又はハニカム状又は芯鞘状に形成された導電性物質が含まれる揮発性溶解性高分子材からなる揮発性有機物反応部に張力又は押力を負荷させる工程と、
前記揮発性有機物処理部を通った被浄化ガスを前記揮発性有機物反応部に接触させる工程と、
前記揮発性有機物反応部に通電させるとともに、前記揮発性有機物反応部を流れる電流量を検出する工程と、
前記電流量の検出に応じて、前記揮発性有機物除去装置の動作を制御する工程と、
を含むことを特徴とする揮発性有機物検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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