説明

揮発性液体散布装置

【課題】使用時に手間をかけず、揮発性液体を揮発可能な状態に速やかにセッティングすること。
【解決手段】揮発性液体Wが充填された容器2と、容器の口部11に装着されると共に容器の内部に差し込まれた挿入筒3と、下方移動可能で且つ基端部が容器外に突出するように挿入筒内に収容され、挿入筒の底部22側に位置する先端部に刃部30aが設けられた可動体4と、可動体に保持され、揮発性液体を容器外まで吸い上げた後に揮発させる吸上げ芯5と、容器軸O方向に下降可能な周壁部40と、頂壁部41と、を有するカバー体6と、を備え、可動体が、カバー体の下降に伴って下方移動すると共に、刃部により挿入筒の底部の少なくとも一部を開口させて挿入筒内と容器内とを連通させ、揮発性液体を吸上げ芯に到達させる揮発性液体散布装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性液体を大気中に散布する揮発性液体散布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香剤や消臭剤等の揮発性液体を大気中に散布する装置は、様々なものが提供されているが、その基本的構成は容器内に充填された揮発性液体を吸上げ芯で吸い上げ、この吸い上げた揮発性液体を容器外で揮発させて大気中に散布する構成とされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平06−38996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、揮発性液体は、大気中に触れたままにしておくと揮発が進行してしまうため、使用前の段階では、揮発性液体を収容する容器の口部をキャップやシール等で蓋をしておく構成が一般的である。
そのため、使用する際には、口部からキャップやシール等を取り外す手間が必要であった。特に、容器の上部には、揮発性液体の揮発成分を散布する散布孔が形成されたカバー体が着脱可能に固定される場合が多い。この場合には、キャップやシール等を取り外した後、カバー体を装着するといった手順となり、余計に手間のかかるものであった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、使用時に手間をかけず、揮発性液体を揮発可能な状態に速やかにセッティングすることができる揮発性液体散布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
(1)本発明に係る揮発性液体散布装置は、揮発性液体を大気中に散布する揮発性液体散布装置であって、前記揮発性液体が充填された容器と、前記容器の口部に装着されると共に、口部内から容器の内部に差し込まれた有底筒状の挿入筒と、下方移動可能で且つ基端部が前記容器外に突出するように前記挿入筒内に収容され、挿入筒の底部側に位置する先端部に刃部が設けられた可動体と、前記可動体に保持され、前記揮発性液体を前記容器外まで吸い上げた後に揮発させる柱状の吸上げ芯と、前記容器の外周面に装着され、容器軸方向に下降可能な周壁部と、該周壁部に連設された頂壁部と、を有する有頂筒状のカバー体と、を備え、前記可動体が、前記カバー体の下降に伴って下方移動すると共に、前記刃部により前記挿入筒の底部の少なくとも一部を開口させて挿入筒内と容器内とを連通させ、前記揮発性液体を前記吸上げ芯に到達させることを特徴とする。
【0007】
この発明に係る揮発性液体散布装置においては、使用前の段階では、口部に装着された挿入筒の底部が閉じている。そのため、容器内に充填されている揮発性液体が、容器外の大気に触れることがない。従って、使用前の段階で、揮発性液体が揮発しないようになっている。
【0008】
一方、使用する場合には、カバー体を容器軸方向に下降させる。すると、カバー体の頂壁部が容器外に突出した可動体の基端部に下向きの力を作用させる。これにより、可動体及び該可動体に保持されている吸上げ芯は、共に挿入筒内を下方移動する。そして、下方移動した結果、可動体の先端部に設けられた刃部が挿入筒の底部に押し当たり、底部の少なくとも一部を開口させる。これにより、挿入筒内と容器内とを連通させることができ、容器内に充填されている揮発性液体を吸上げ芯に到達させることができる。すると、揮発性液体は、吸上げ芯によって上方に吸い上げられた後、容器外にて大気に触れることで揮発する。そして、揮発した成分は装置の周囲に散布される。
【0009】
このように、カバー体を容器軸方向に下降させることで、揮発性液体を揮発させ、大気中に散布することができる。特に、従来のように口部からキャップやシール等を取り外すような手間がかかるものとは異なり、カバー体を下降させるだけの簡便な操作で、手間をかけずに揮発性液体を揮発可能な状態に速やかにセッティングすることができる。従って、非常に使い易く、利便性に優れている。
【0010】
(2)本発明に係る揮発性液体散布装置は、上記本発明の揮発性液体散布装置において、前記カバー体が、前記容器軸回りに回転下降可能に前記容器に装着されていることを特徴とする。
【0011】
この発明に係る揮発性液体散布装置においては、カバー体を容器軸回りに回転下降させることで、容易に可動体を下降させることができ、より速やかに揮発性液体を揮発可能な状態にセッティングすることができる。特に、この場合にはカバー体を回転下降させることで可動体を下方移動させる構成なので、可動体が急激に下方移動し難い。従って、刃部を挿入筒の底部に確実に押し当てながら、開口を確実に開けることができる。
【0012】
(3)本発明に係る揮発性液体散布装置は、上記本発明の揮発性液体散布装置において、前記可動体が、前記カバー体の回転下降に伴って回転しながら下方移動することを特徴とする。
【0013】
この発明に係る揮発性液体散布装置においては、カバー体を回転下降させた際に、可動体が単に下方移動するのではなく、カバー体の回転下降に伴って回転しながら下方移動する。よって、挿入筒の底部に刃部を回転させながら押し当てることができ、より効率良く底部に開口を開けることができる。従って、より速やかに揮発性液体を揮発可能な状態にセッティングすることができる。
【0014】
(4)本発明に係る揮発性液体散布装置は、上記本発明の揮発性液体散布装置において、前記可動体の基端部には、前記吸上げ芯に接触し、該吸上げ芯によって吸い上げられた前記揮発性液体が含浸される含浸プレートが固定されていることを特徴とする。
【0015】
この発明に係る揮発性液体散布装置においては、吸上げ芯によって吸い上げた揮発性液体を、容器外にて含浸プレートに含浸させることができる。この際、含浸された揮発性液体は、含浸プレートの全体に拡がるのでより大気に触れ易くなる。つまり、含浸プレートの表面積が大きいので、揮発性液体をより広範囲で大気に触れさせることができる。従って、揮発性液体をより効率良く揮発させることができ、散布性能を高めることができる。
【0016】
(5)本発明に係る揮発性液体散布装置は、上記本発明の揮発性液体散布装置において、前記カバー体の頂壁部には、散布孔が形成されており、前記含浸プレートが、前記散布孔を遮蔽するように配設されていることを特徴とする。
【0017】
この発明に係る揮発性液体散布装置においては、含浸プレートが散布孔を遮蔽するように配設されているので、揮発成分を直ちに散布孔を通じて散布させることができる。従って、散布性能をさらに高めることができる。
【0018】
(6)本発明に係る揮発性液体散布装置は、上記本発明の揮発性液体散布装置において、前記可動体には、前記刃部の先端から前記吸上げ芯に向かって前記揮発性液体を流通させる流路が形成されていることを特徴とする。
【0019】
この発明に係る揮発性液体散布装置においては、挿入筒の底部を開口させた際、仮にこの開口が僅かであったとしても、流路を介して揮発性液体を吸上げ芯に効率良く到達させることができる。従って、散布の信頼性を高めることができる。
【0020】
(7)本発明に係る揮発性液体散布装置は、上記本発明の揮発性液体散布装置において、前記容器の外周面には、前記カバー体の下降を規制する規制部材が取り外し可能に設けられていることを特徴とする。
【0021】
この発明に係る揮発性液体散布装置においては、使用前の段階ではカバー体の下降が規制部材によって規制されているので、不意に或いは誤ってカバー体が下降し難い。従って、揮発性液体を無駄に揮発させてしまうことを防止することができる。一方、使用時には、規制部材を容易に取り外すことができるので、手間をかけることなく直ちにカバー体を下降させることができる。
【0022】
(8)本発明に係る揮発性液体散布装置は、上記本発明の揮発性液体散布装置において、前記挿入筒が、前記口部の内周面に当接する当接筒を有し、前記当接筒の内周面には、前記可動体の下方移動をガイドするガイドリブが前記容器軸回りに複数設けられていることを特徴とする。
【0023】
この発明に係る揮発性液体散布装置においては、挿入筒の当接筒の外周面が口部の内周面に当接しているので、口部に装着された挿入筒のがたつきを抑え、装着時のさらなる安定化を図ることができる。よって、挿入筒内で可動体を滑らかに下方移動させることができる。
また、ガイドリブによって可動体の下方移動がガイドされているので、下方移動時に可動体にがたつき等が生じ難い。従って、挿入筒の底部に確実に刃部を押し当てることができ、この点においても底部に開口を開け易くすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る揮発性液体散布装置によれば、使用時にカバー体を下降させるだけの簡便な操作で、手間をかけずに揮発性液体を揮発可能な状態に速やかにセッティングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る揮発性液体散布装置の実施形態を示す図であって、全体の外観斜視図である。
【図2】図1に示す揮発性液体散布装置の縦断面図である。
【図3】図2に示す断面矢視A−A図である。
【図4】図2に示す吸上げ芯を保持した可動体の斜視図である。
【図5】図2に示す断面矢視B−B図である。
【図6】図2に示す状態から、外装カバーを回転下降させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る揮発性液体散布装置の実施形態について、図1から図6を参照して説明する。
本実施形態の揮発性液体散布装置1は、図1及び図2に示すように、揮発性液体Wを大気中に散布する装置であって、容器2と、挿入筒3と、可動体4と、吸上げ芯5と、外装カバー(カバー体)6と、を備えている。
なお、本実施形態では、外装カバー6を回転下降させることで、可動体4を下降させる場合を例に挙げて説明する。
【0027】
なお、図1は、揮発性液体散布装置1の外観斜視図である。図2は、揮発性液体散布装置1の縦断面図である。また、各構成品のそれぞれの中心軸は、共通軸上に位置している。本実施形態では、この共通軸を容器軸Oといい、この容器軸Oに直交する方向を径方向、容器軸Oを中心に周回する方向を周方向とする。また、揮発性液体Wとしては、例えば、芳香剤、消臭剤や殺虫剤等である。
【0028】
容器2は、底部10及び口部11を有する有底筒状に形成されており、内部に揮発性液体Wが充填されている。口部11の外周面には、挿入筒3の雌ねじ部20aが螺合される雄ねじ部11aが形成されている。また、本実施形態の容器2は、外周面が段付きになるように形成されており、底部10側が大径部12、口部11側が小径部13となっている。そして、大径部12と小径部13とは、段差部14を介して連設されている。
また、小径部13の外周面には、外装カバー6の周壁部40に形成された雌ねじ部40aに螺合される雄ねじ部13aが形成されている。
【0029】
挿入筒3は、有底筒状に形成された部材であり、容器2の口部11に装着されると共に、口部11内から容器2の底部10に向かって容器2の内部に差し込まれている。
詳細に説明すると、挿入筒3は、口部11の周囲を囲み、雄ねじ部11aに螺合される雌ねじ部20aが内周面に形成された外筒20と、該外筒20の径方向内側に配設され、底部22によって下端部が遮蔽された内筒21と、外筒20の上端部と内筒21の上端部とを連設する連設部23と、を備えている。
そして、外筒20の雌ねじ部20aを口部11に形成された雄ねじ部11aに螺合することにより、挿入筒3を容器2の口部11に装着可能とされている。
【0030】
内筒21は、挿入筒3の装着時に、口部11内から容器2の内部に差し込まれる筒部材であり、口部11から容器2の底部10に向かって延在するように形成されており、下端部が底部10近くに位置するように設計されている。そして、この下端部には、上述した底部22が連設されている。
これにより、底部22が開口しない限り、容器2の内部に差し込まれた内筒21内に揮発性液体Wが侵入しないようになっている。
ここで、本実施形態の底部22には、容器軸O回りに環状に形成された環状溝24が形成されている。この環状溝24は、他の部分よりも剛性が弱い弱化部として機能するので、底部22がこの環状溝24を基点に開口し易いように設計されている。
【0031】
ところで、内筒21の上端部には、下端部側よりも大径に形成され、口部11の内周面に当接する当接筒21aが設けられている。これにより、挿入筒3のがたつきを抑えることができ、挿入筒3の安定化を図ることができる。また、容器2を過度に傾けてしまったとしても、当接筒21aと口部11との間から揮発性液体Wが漏れない構造となっている。
また、この当接筒21aの内周面には、図3に示すように、後述する可動体4の下方移動をガイドするガイドリブ25が容器軸O回りに、90度毎に4つ形成されている。なお、図3は、図2に示すA−A線に沿った断面図である。但し、ガイドリブ25の数は、この数に限定されるものではなく、自由に設計して構わない。また、ガイドリブ25の位置に関しても、周方向に均等である必要はなく、不均等に形成しても構わない。
【0032】
可動体4は、図2に示すように、下方移動可能で且つ基端部が容器2外に突出するように挿入筒3内に収容され、挿入筒3の底部22側に位置する先端部に刃部30aが設けられた部材である。
詳細に説明すると、本実施形態の可動体4は、図2及び図4に示すように、円筒状に形成されると共に容器軸Oに沿って長尺に形成されたロッド部30と、ロッド部30の基端部に取り付けられたプレート31と、を備えている。
なお、図4は、吸上げ芯5を保持した可動体4の斜視図である。また、図を見易くするために、プレート31を透過した状態を図示している。
【0033】
ロッド部30は、挿入筒3内に収容された際に、内筒21との間に若干の隙間が確保されるサイズに形成されている。このロッド部30の先端部は、周方向の1箇所だけ下方に突出するように形成されている。そして、この突出した部分が、上述した刃部30aとされている。この刃部30aを挿入筒3の底部22に押し当てることで、底部22の少なくとも一部を開口させることが可能とされている。
【0034】
また、ロッド部30の基端部は、容器2外に突出していると共に、端部にプレート31が一体的に取り付けられている。このプレート31は、容器軸Oに対して垂直な平面に沿って延在したプレートであり、平面視円形状に形成されている。但し、平面視楕円状や、矩形状、多角形状に形成されていても構わない。プレート31の下面の略中心には、三角状に突起したリブ31aが形成されている。
また、ロッド部30の基端部には、周方向に沿って切り欠かれた切欠部32が容器軸Oを挟んで対向するように形成されている。
【0035】
このように構成された可動体4には、吸上げ芯5が保持されている。この吸上げ芯5は、不織布等によりロッド部30と同程度の長さの長尺な円柱状に形成されており、揮発性液体Wを容器2外まで吸い上げた後に揮発させる役割を担っている。なお、吸上げ芯5は、下端部がロッド30から突出しないように長さが調整されている。
また、本実施形態では、可動体4のロッド部30の先端から吸上げ芯5が挿入されることで、保持されている。この際、吸上げ芯5の基端部は、プレート31に接触した状態となっている。よって、吸上げ芯5の一部は、切欠部32を介して露出するようになっている。しかも、プレート31に形成されたリブ31aによって、吸上げ芯5の基端部は径方向外方に若干膨らみ、切欠部32からロッド部30の外側に飛び出るように力が加わった状態となっている。
【0036】
また、可動体4の基端部には、吸上げ芯5に接触し、この吸上げ芯5によって吸い上げられた揮発性液体Wが含浸される含浸プレート35が固定されている。
この含浸プレート35は、吸上げ芯5と同様の材料により平面視円形状に形成された含浸体であり、切欠部32によって現れた円弧状のロッド部30の端面32aと、プレート31との間で挟まれることで固定されている。具体的には、図5に示すように、含浸プレート35の中心部に形成されたスリット35aに、吸上げ芯5を保持した可動体4を差し込むことで、基端部に固定されるようになっている。なお、図5は、図2に示すB−B線に沿った断面図である。
特に、上述したように、吸上げ芯5の一部が切欠部32を介して露出しているので、この露出した部分と含浸プレート35とが確実に接触するようになっている。しかも、リブ31aによって、切欠部32からロッド部30の外側に飛び出るように吸上げ芯5に力が加わっているので、含浸プレート35に対して密に接触するようになっている。
【0037】
外装カバー6は、図1及び図2に示すように、周壁部40と頂壁部41とによって有頂筒状に形成された部材であり、可動体4及び容器2を上方から覆っている。
詳細に説明すると、周壁部40は容器2の小径部13の周囲を囲むように形成されており、内周面には雄ねじ部13aに螺合する雌ねじ部40aが形成されている。よって、周壁部40は、容器軸O回りに回転下降が可能とされている。つまり、外装カバー6自体を、容器軸O回りに回転下降させることができるようになっている。
【0038】
頂壁部41は、周壁部40の上端部に連設されており、揮発性液体Wが揮発した成分を外装カバー6の外側に放出し、散布させる散布孔42が形成されている。本実施形態の散布孔42は、頂壁部41の中心から径方向外方側に若干ずれた位置に形成され、平面視円形状とされている。また、この散布孔42は、周壁部40の内周面近くまで延在した含浸プレート35によって遮蔽された状態となっている。
【0039】
また、頂壁部41の下面は、可動体4の基端部、具体的にはプレート31に接触している。従って、外装カバー6を回転下降させることで、可動体4を押し下げて下方移動させることができるようになっている。また、可動体4を下方移動させることで、刃部30aを挿入筒3の底部22に押し当てて底部22の少なくとも一部を開口させ、挿入筒3内と容器2内とを連通させると共に、揮発性液体Wを吸上げ芯5に到達させることができるようになっている。この点は、後に詳細に説明する。
【0040】
ところで、本実施形態では、容器2の外周面に取り外し可能な帯状の規制部材45が全周に亘って形成されている。この規制部材45は、下端部が容器2の段差部14に載置されていると共に、上端部が外装カバー6の周壁部40の下端部に弱化部(薄肉部や複数の連結片等)によって破断容易に接続されている。また、規制部材45の端部には、該規制部材45を取り外す際の摘み部45aが設けられている。そして、摘み部45aを利用して規制部材45を取り外すことで、外装カバー6の周壁部40の下端部と、容器2の段差部14との間に隙間を開けることができるので、外装カバー6を回転下降させることが可能になる。
つまり、規制部材45を取り外さない限り、外装カバー6を回転下降させることができないように設計されている。よって、この規制部材45が、外装カバー6の回転下降を規制している。
なお、前記規制部材45は、外装カバー6に対して弱化部を介して連結されていなくとも良い。この場合には、規制部材45の上端部が外装カバー6の周壁部40の下端部に当接或いは近接すれば良い。
【0041】
また、本実施形態の可動体4には、図2及び図4に示すように、刃部30aの先端から吸上げ芯5に向かって揮発性液体Wを毛細管現象等によって流通させる流通溝(流路)46が形成されている。
この流通溝46は、可動体4のロッド部30の内周面上に形成されている。具体的には、刃部30aの先端部から真上に向かって吸上げ芯5に達するまで形成された後、周方向に沿って1/4回転程度延在するように形成されている。これにより、刃部30aによって挿入筒3の底部22に開口を開けた際に、仮に開口が僅かであったとしても、流通溝46を介して揮発性液体Wを吸上げ芯5に到達させることができるようになっている。
なお、流通溝46を形成する際、吸上げ芯5に達するまで刃部30aの先端から真上に向かって形成した後、吸上げ芯5の周囲を一周囲むようにロッド部30の内周面に環状に形成しても構わない。
【0042】
次に、このように構成された揮発性液体散布装置1を使用して、揮発性液体Wを大気中に散布させる場合について説明する。
はじめに、使用前の状態について簡単に説明する。
使用前の段階では、図2に示すように、有底筒状の挿入筒3によって容器2の口部11が塞がれているうえ、挿入筒3の底部22が閉じている。そのため、容器2内に充填されている揮発性液体Wが容器2外の大気に触れることがない。従って、使用前の段階で、揮発性液体Wが揮発しないようになっている。
また、規制部材45によって外装カバー6の回転下降が規制されているので、不意に或いは誤って外装カバー6が回転下降してしまうことを防止している。
【0043】
続いて、使用する場合について説明する。
まず、摘み部45aを利用して規制部材45を取り外す。この際、規制部材45の上端部は、周壁部40に対して破断容易に接続されているだけであるので、容易に取り外すことができ、以降の外装カバー6の回転下降動作に直ちに移ることができる。
【0044】
規制部材45を取り外した後、図6に示すように、外装カバー6を容器軸O回りに回転させ、容器2側に回転下降させる。すると、これに伴って外装カバー6の頂壁部41が容器2外に突出した可動体4の基端部に下向きの力を作用させる。これにより、可動体4及び該可動体4に保持されている吸上げ芯5は、共に挿入筒3内を下方移動する。そして、下方移動した結果、可動体4の先端部に設けられた刃部30aが挿入筒3の底部22に押し当たり、底部22の少なくとも一部を開口させる。これにより、挿入筒3内と容器2内とを連通させることができ、容器2内に充填されている揮発性液体Wを吸上げ芯5に到達させることができる。
【0045】
すると、揮発性液体Wは、吸上げ芯5によって上方に吸い上げられた後、容器2外にて大気に触れることで揮発する。そして、揮発した成分は、外装カバー6の散布孔42を通じて揮発性液体散布装置1の周囲に散布される。
【0046】
このように、外装カバー6を容器軸O回りに回転下降させることで、揮発性液体Wを揮発させ、大気中に散布させることができる。特に、従来のように口部11からキャップやシール等を取り外すような手間がかかるものとは異なり、外装カバー6を回転下降させるだけの簡単な操作で、手間をかけずに揮発性液体Wを揮発可能な状態に速やかにセッティングすることができる。従って、非常に使い易く、利便性に優れている。
【0047】
また、本実施形態の揮発性液体散布装置1によれば、以下の作用効果を奏することもできる。
まず、挿入筒3の底部22には、環状溝24が形成されているので、底部22に刃部30aを押し当てた際に環状溝24を基点に底部22に開口を開け易い。従って、より速やかに揮発性液体Wを揮発可能な状態にセッティングすることができる。
また、ガイドリブ25によって可動体4の下方移動がガイドされているので、下方移動時にがたつき等が生じ難い。従って、挿入筒3の底部22に刃部30aを確実に押し当てることができ、この点においても底部22に開口を開け易くすることができる。
【0048】
また、挿入筒3の底部22に開口を開けた際、仮にこの開口が僅かであったとしても、流通溝46を介して毛細管現象等により揮発性液体Wを吸い上げ、吸上げ芯5にまで到達させることができる。従って、散布の信頼性を高めることができる。
【0049】
また、可動体4の基端部には含浸プレート35が固定されているので、吸上げ芯5によって吸い上げた揮発性液体Wを、容器2外にて含浸プレート35に含浸させることができる。特に含浸プレート35に含浸された揮発性液体Wは、含浸プレート35の全体に拡がるので、より大気に触れ易くなる。つまり、含浸プレート35の表面積が大きいので揮発性液体Wをより広範囲で大気に触れさせることができる。従って、揮発性液体Wを効率良く揮発させることができ、散布性能を高めることができる。
しかも、含浸プレート35は、散布孔42を遮蔽するように配設されているので、揮発成分を直ちに散布孔42を通じて散布させることができる。従って、散布性能をさらに高めることができる。
【0050】
また、挿入筒3の当接筒21aの外周面が口部11の内周面に当接しているので、口部11に装着された挿入筒3のがたつきを抑え、挿入筒3の安定化を図ることができる。よって、この挿入筒3内にて可動体4を滑らかに下方移動させることができる。
【0051】
なお、使用中においては、散布孔42から外装カバー6内に入った空気が、挿入筒3と可動体4との隙間を通じて容器2内に達するように設計されている。これにより、吸い上げられた揮発性液体Wの分だけ空気置換を好適に行うことができる。従って、容器2内が負圧になることを防止することができると共に、揮発性液体Wの吸い上げを良好に促すことができる。
【0052】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態では、ロッド部30を円筒状に形成したが、この場合に限定されるものではなく、自由に設計して構わない。少なくとも、吸上げ芯5を保持でき、挿入筒3内に収容された状態で下方移動可能な形状であれば良い。
また、外装カバー6の頂壁部41に平面視円形の散布孔42を形成したが、円形に限られず、楕円形状や多角形状、或いは、波形形状や幾何学形状等、自由に設計して構わない。また、散布孔42の数に関しても、自由に設計して構わない。
【0054】
また、上記実施形態では、外装カバー6と可動体4とを別部材とし、外装カバー6の頂壁部41の下面に押し下げプレート31が接するように構成したが、頂壁部41の下面に押し下げプレート31を連結させ、外装カバー6と可動体4とを一体的に成形しても構わない。
この場合には、外装カバー6の不回転時に可動体4が単独で下降してしまうことがないので、使用前に刃部30aが挿入筒3の底部22に当たってしまったり、外装カバー6の回転下降後に可動体4が容器2の底部10に向けてさらに下降したりしてしまうことを防止することができる。特に、上記実施形態では、外装カバー6を回転下降させた際、周壁部40の下端部が容器2の段差部14に当たるので、外装カバー6の下降量を制限することができる。従って、可動体4が過度に下降してしまうことを同時に防止することができる。
【0055】
また、上記実施形態のように、外装カバー6と可動体4とを別部材とした場合には、可動体4のロッド部30と挿入筒3の内筒21との間に若干の隙間を開けるのではなく、内筒21に対してロッド部30を容器軸O方向に移動可能に摺接させても構わない。
この場合には、摺接による摩擦力を利用して、外装カバー6の不回転時に可動体4が下降してしまうことを防止することができる。従って、同様に、使用前に刃部30aが挿入筒3の底部22に当たってしまったり、外装カバー6の回転下降後に可動体4が容器2の底部10に向けてさらに下降したりしてしまうことを防止することができる。
【0056】
但し、内筒21に対してロッド部30を摺接させた場合には、空気置換の際の空気が流通し難くなるので、この流通用の凹状の溝部を内筒21の内周面或いはロッド部30の外周面のいずれかに容器軸Oに沿って形成すれば良い。
【0057】
更に、外装カバー6と可動体4とを別部材とした場合、可動体4のロッド部30と挿入筒3の内筒21との間に若干の隙間を開けた状態であっても、可動体4が単独で下降してしまうことを規制する部材を設けても構わない。
例えば、ロッド部30の外周面に径方向外方に向けて突出する突起部を形成し、内筒21の内周面に可動体4が下降した際に突起部が乗り越え可能な係止突起を形成する。こうすることで、外装カバー6の不回転時に可動体4の下降を防止することができるうえ、外装カバー6の回転時に可動体4の下降を可能とさせることができる。しかも、このように構成した場合には、ロッド部30と内筒21との間を利用して空気を流通させることができるので、空気置換を確実に行うことができる。
【0058】
また、上記実施形態では、外装カバー6を回転下降させた際に、可動体4を回転させることなく単に下方移動させる構成としたが、外装カバー6の回転下降に伴って回転しながら下方移動させるように構成しても構わない。
この場合には、例えば、外装カバー6の頂壁部41の下面とプレート31の上面とに、互いに係合し合う突起部や凹部等をそれぞれ形成し、外装カバー6の回転力を可動体4に伝える構成にすれば良い。特に、可動体4を回転しながら下方移動させることで、挿入筒3の底部22に刃部30aを回転させながら押し当てることができ、より効率良く底部22に開口を開けることができる。従って、より速やかに揮発性液体Wを揮発可能な状態にセッティングすることができる。
【0059】
また、上記実施形態では、外装カバー6を回転下降させる場合を例に挙げて説明したが、容器2に対して外装カバー6を容器軸O方向に単に下降可能に装着させても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
但し、上記実施形態のように、外装カバー6を回転下降させるように構成することで、可動体4が急激に下方移動してしまうことを防止することができる。従って、刃部30aを挿入筒2の底部22に確実に押し当てながら、開口を確実に開けることができる。従って、より好ましい。
【0060】
また、散布孔42は、外装カバー6の周壁部40に設けても良く、周壁部40と頂壁部41との両方に設けても良い。また、散布孔42の個数及び形状は、上記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0061】
O…容器軸
W…揮発性液体
1…揮発性液体散布装置
2…容器
3…挿入筒
4…可動体
5…吸上げ芯
6…外装カバー(カバー体)
10…容器の底部
11…容器の口部
21a…挿入筒の当接筒
22…挿入筒の底部
24…環状溝(弱化部)
25…ガイドリブ
30a…刃部
35…含浸プレート
40…カバー体の周壁部
41…カバー体の頂壁部
42…散布孔
45…規制部材
46…流通溝(流路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性液体を大気中に散布する揮発性液体散布装置であって、
前記揮発性液体が充填された容器と、
前記容器の口部に装着されると共に、口部内から容器の内部に差し込まれた有底筒状の挿入筒と、
下方移動可能で且つ基端部が前記容器外に突出するように前記挿入筒内に収容され、挿入筒の底部側に位置する先端部に刃部が設けられた可動体と、
前記可動体に保持され、前記揮発性液体を前記容器外まで吸い上げた後に揮発させる柱状の吸上げ芯と、
前記容器の外周面に装着され、容器軸方向に下降可能な周壁部と、該周壁部に連設された頂壁部と、を有する有頂筒状のカバー体と、を備え、
前記可動体は、前記カバー体の下降に伴って下方移動すると共に、前記刃部により前記挿入筒の底部の少なくとも一部を開口させて挿入筒内と容器内とを連通させ、前記揮発性液体を前記吸上げ芯に到達させることを特徴とする揮発性液体散布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の揮発性液体散布装置において、
前記カバー体は、前記容器軸回りに回転下降可能に前記容器に装着されていることを特徴とする揮発性液体散布装置。
【請求項3】
請求項2に記載の揮発性液体散布装置において、
前記可動体は、前記カバー体の回転下降に伴って回転しながら下方移動することを特徴とする揮発性液体散布装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の揮発性液体散布装置において、
前記可動体の基端部には、前記吸上げ芯に接触し、該吸上げ芯によって吸い上げられた前記揮発性液体が含浸される含浸プレートが固定されていることを特徴とする揮発性液体散布装置。
【請求項5】
請求項4に記載の揮発性液体散布装置において、
前記カバー体の頂壁部には、散布孔が形成されており、
前記含浸プレートは、前記散布孔を遮蔽するように配設されていることを特徴とする揮発性液体散布装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の揮発性液体散布装置において、
前記可動体には、前記刃部の先端から前記吸上げ芯に向かって前記揮発性液体を流通させる流路が形成されていることを特徴とする揮発性液体散布装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の揮発性液体散布装置において、
前記容器の外周面には、前記カバー体の下降を規制する規制部材が取り外し可能に設けられていることを特徴とする揮発性液体散布装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の揮発性液体散布装置において、
前記挿入筒は、前記口部の内周面に当接する当接筒を有し、
前記当接筒の内周面には、前記可動体の下方移動をガイドするガイドリブが前記容器軸回りに複数設けられていることを特徴とする揮発性液体散布装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−260587(P2010−260587A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111461(P2009−111461)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】