説明

揮発性物質を持続放出するためのポリマー組成物

低融点ポリアミドポリマーと極性のある熱可塑性エラストマーとの併用に基づく、揮発性物質(例えば、香料)を組み込んで持続的に放出することのできるポリマー組成物。このような組成物は、低温での加工が容易であり、多量の揮発性物質を安定に組み込んで徐々に放出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低融点ポリアミドポリマーと極性のある熱可塑性エラストマーとの併用に基づく、揮発性物質(例えば、香料)を組み込んで持続的に放出することのできるポリマー組成物に関する。本発明の組成物は、空気清浄装置、防臭剤、香料入りの物体、殺虫剤など、揮発性物質を長期にわたって環境に供給することが望まれる様々な用途を見出すことができる。
【背景技術】
【0002】
揮発性成分を吸収及び放出することができるポリマー組成物は、当該分野では、特に香料の供給に関して周知である。
【0003】
GB1558960(ナガエ(Nagae))には、傘に用いられる、香料放射PVCフィルムが記載されている。
【0004】
米国特許第4618629号(T・バーネット社(T. Burnett & Co, Inc))には、粒子状の芳香剤運搬樹脂が中に組み込まれた芳香剤放射ポリウレタンフォームが記載されている。該樹脂は、ポリマーのリスト(ポリオレフィン、ポリエステル、PVC及び類似物、ポリアミド、セルロースポリマー)から選択され得る。
【0005】
香料供給のためのポリマー組成物の通常利用には、例えば、空気清浄装置が含まれる。これらは、典型的には、GB2286531(ケルコ(Kelco))や米国特許第3969280号(ジョンソン・アンド・ジョンソン(Johnson & Johnson))に記載されているもののように架橋多糖類ポリマー(デンプン、アルギネート又はCMC)から通常得られる水性ゲルの形態である。
【0006】
これら及びその他の文献は揮発性物質の長期的な供給の提供を主張しているが、多くの理由から、依然として決して十分に満足いくものではない。これらのポリマー組成物は、通常、非常に限られた量の揮発性物質、ほとんどの場合、該組成物の総重量の最高10%までの量の揮発性物質しか組み込んで放出することができない。さらに、前述のポリマー組成物は、単に、現代の香料産業でますます望まれるようになってきたより洗練された香料を一貫して供給することができないので、一般に、通常シトロネロールなどの単一の揮発性物質から成る、単純な香料を供給するために使用されている。
【0007】
US4734278は、揮発性活性物質(香料、防臭剤、殺虫剤など)の持続放出をもたらすブロックポリエーテル−アミド系樹脂(例えば、ペバックス(Pebax)(商標))の成形体を記載している。アトケム(Atochem)によって改良が行われており、アトケムのPCT国際公開特許WO9726020A1は、ペバックス(Pebax)(商標)プラス複合香料(すなわち、5を超える構成成分)によって製造された改良型の芳香樹脂を記載している。そのような樹脂は、揮発性成分の経時的な分離が低減された複合香料を供給することができる。
【0008】
US4552693は、熱可塑性ポリアミド樹脂と、スルホンアミド可塑剤を含む可塑剤/溶媒系と、芳香剤とを含む組成物から得られた透明な芳香剤放射物品を記載している。これらの組成物において可塑剤を使用する利点は、前記組成物を比較的低温で加工(成型、押出、フィルム化)可能なことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
低融点ポリアミドベースのポリマー組成物は、比較的低い温度で成型でき、したがって組み込まれるべき揮発性物質が成型プロセス中に最小限の量しか失われず、またこのプロセスに追加の可塑剤が必要ないので、特に望ましく、さらに、前記低融点ポリアミドは、広範な揮発性物質を組み込んで供給できるので望ましい。しかし、高い負荷量の香料(>30%)を含む低融点ポリアミドベースの組成物は、ポリマー物質自体の表面上を液体形態で移動する可溶化香料を徐々に失う傾向にある。この現象は、ブリーディング(bleeding)として知られている。低融点ポリアミドベースのポリマー組成物のもう1つの欠点は、可溶化した揮発性物質の濃度が増加して特定のレベルを超えたときに、前記組成物が融解温度の急激な低下を示す傾向にあることである。これが起こると、該物質は、室温又はわずかに室温を上回る温度でさえ、ゲル状若しくはワックス状となり、その一体性を失いうる。
【0010】
したがって、高い負荷量の揮発性物質を組み込んで持続的に放出することができ、容易に加工・成形して物品にすることができ、且つ室温前後の広範な温度(0〜50℃)において固体状態で物理的に安定である低融点ポリアミドベースのポリマー物質が、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
a)低融点ポリアミドポリマーと、
b)極性のある熱可塑性エラストマーと、
c)揮発性物質とを含む、ポリマー組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
驚いたことに、a)低融点ポリアミドポリマーと、b)極性のある熱可塑性エラストマーと、c)揮発性物質とを含む組成物が、比較的低い温度(130℃を下回る、好ましくは110℃を下回る、より好ましくは100℃を下回る温度)でなお成型可能であることに加えて、ブリーディング(bleeding)を起こすことなく高い負荷量の揮発性物質を組み込むことができ、また室温前後の広範な温度(0〜50℃)において固体状態でそれらの一体性を維持することができ、その結果、本発明のポリマー組成物で作製される物品を、様々な環境において、例えば、空気清浄機や非常に暑い国々でも使用される防虫剤において使用できることが判明した。
【0013】
理論に束縛されるものではないが、極性のある熱可塑性エラストマーと低融点ポリアミドポリマーとを組み合わせることによって得られるポリマーマトリックスは、ポリアミドが広範な揮発性物質を可溶化する能力を維持すると同時に、極性のある熱可塑性エラストマーによってもたらされるポリマー骨格に起因する改善された機械的特性及び物理的安定性を有すると考えられている。
【0014】
極性のある熱可塑性エラストマーがポリアミドブロックを含むブロックコポリマーである好ましい場合には、ポリアミドブロックと低融点ポリアミドとの間の特定の親和性が、ポリマーマトリックスにさらに向上した物理的安定性をもたらすと考えられている。
【0015】
本発明のポリマー組成物によってもたらされる非常に重要なもう1つの利益は、広範な揮発性物質を取り入れられる可能性があることである。
【0016】
従来技術の解決策には、ポリエーテル−ポリアミドブロックコポリマー又は純粋なポリアミドポリマーのような特定のポリマーをベースとするポリマー組成物が記載されていた。結果として、揮発性物質の選択は、こうした特定のポリマーと溶解又は相溶できる成分に限られていた。
【0017】
従来技術とは異なり、配合者がすべての低融点ポリアミドポリマーの中から第1のポリマーを選ぶことができ、極性のあるすべての熱可塑性エラストマーの中から第2のポリマーを選ぶことができるので、本発明の組成物は、供給できる揮発性物質の組成の点ではるかに柔軟性がある。さらに、以下で詳細に説明するように、配合の極性特徴を微調整するために、可塑剤及び他の多くの添加剤のような任意成分を配合に取り入れることもできる。ポリマーマトリックス(異なる2つのポリマー、任意で可塑剤及び他のポリマー若しくは添加剤)のそのような配合の柔軟性によって、その極性特徴を非常に精密に調整できるようになる。これによって、ポリマーマトリックスに取り入れることのできる、それゆえに本発明によるポリマー組成物が得られるいかなる揮発性物質との相溶性も、最大限にすることができる。理論に束縛されるものではないが、揮発性物質の良好な組込み及び持続放出をもたらすには、ポリマーマトリックスと揮発性物質との間にある程度の極性の合致が必要になると考えられている。
【0018】
ゆえに、本発明のポリマー組成物の低融点ポリアミドポリマーと、極性のある熱可塑性エラストマーと、場合によっては追加の任意成分とは、ポリマーマトリックスの極性が揮発性物質の極性と実質的に合致するように選択することができ、その際、極性は、それらそれぞれの水/オクタノール分配係数を測定するなど、当該技術分野において既知の方法の1つを用いて評価することができる。
【0019】
用語「低融点ポリアミドポリマー」には、130℃を下回る、好ましくは110℃を下回る、より好ましくは100℃を下回る融点を有するすべてのポリアミドが包含される。典型的には、また好ましくは、本発明の低融点ポリアミドは、室温で固体である。好ましいポリアミドは、末端処理されたポリアミドであり、特に好ましいのはエステル末端処理されたポリアミドである。これら低融点ポリアミドの例としては、アリゾナ・ケミカルズ(Arizona chemicals)から商標名シルバクリア(Sylvaclear)として市販されているものが挙げられる。
【0020】
用語「極性のある熱可塑性エラストマー」には、ポリマー鎖内に化学的に結合された「ハード」相と「ソフト」相とを一緒に含む、多相ポリマーが包含される。「ハード」相は、室温で固体であり、加熱すると流動する。その例としては、アミド、エステル、及びウレタン基のブロックが挙げられる。「ソフト」相は、室温でゴム状である。その例としては、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、又はポリ(テトラメチレングリコール)などのポリエーテルブロックが挙げられる。室温では、ポリマー内の「ハード」相の存在が、強度及び良好な機械的特性を付与する。ポリマーが加熱されると、これらの相が液体になり、ポリマーが融解して、溶融状態での加工が可能になる。再び室温まで冷却すると、相が固化し、良好な機械的特性を取り戻す。熱可塑性エラストマーの包括的な定義は、カークオスマー(Kirk-Othmer)の工業化学百科事典(Encyclopedia of Chemical Technology)(第4版、ワイリーインターサイエンス(Wiley-Interscience)、1996)の第9巻、ヴォイス(voice)「エラストマー(Elastomers)」、サブヴォイス(subvoice)「熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Elastomers)」に見ることができる。
【0021】
これらのポリマーのうち、本発明に適しているのは、少なくとも1つの極性モノマーを含むものである。極性モノマーは、分子内に少なくとも1つのC−X結合を含むモノマーであり、前記C−X結合が極性結合である。好ましくは、Xは、N、S、F、Cl、又はO原子である。より好ましくは、前記極性結合は、カルボニル基の一部であり、より好ましくはエステル基の一部である。本発明に好ましい極性モノマーは、ビニルアセテート、ビニルアルコール、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリル酸及びそれらから形成される塩、メタクリル酸及びそれらから形成される塩、無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート、及び一酸化炭素である。ハード相は、好ましくは、アミド、エステル、若しくはウレタン基のブロックを含み、ソフト相は、好ましくはポリエーテルブロックを含むものが、より好ましい。
【0022】
これら極性のある熱可塑性エラストマーの例としては、ノベオン(Noveon)から商標名エスタン(ESTANE)として製造されるものや、ダウ・ケミカルズ(Dow Chemicals)から商標名ペレタン(PELLETHANE)として製造されるものなどの、熱可塑性ポリウレタン、デュポン(Dupont)から商標名ハイトレル(HYTREL)として製造されるものや、DSMから商標名アーニチル(ARNITEL)として製造されるものなどの、ポリエーテルエステルコポリマーとしても知られる熱可塑性ポリエステル、並びにアトフィナ(Atofina)から商標名ペバックス(PEBAX)として製造されるものなどの、ポリエーテルアミドコポリマーとしても知られる熱可塑性ポリアミドが挙げられる。
【0023】
本発明の第3の必須成分は、本発明の組成物に組み込まれた後、本発明の組成物によって持続的に供給される揮発性物質である。
【0024】
本発明で使用できる揮発性物質は、例えば、フレーバ、防臭剤、殺虫剤、フェロモン、アロマ、防虫剤(repelling agents)であり、最も有利には香料である。
【0025】
本発明によってもたらされる利益は、揮発性物質が香料である場合に特に関連がある。香料は、典型的に、揮発性の異なる多数の構成成分から構成される。本発明は、構成成分がそれらの異なる揮発性に基づいて分離することを避けて、香料の香り全てを長時間持続供給することが可能である。本発明の好ましい実施形態では、揮発性物質は、好ましくは複数の構成成分、より好ましくは5つを超える構成成分で構成される香料である。
【0026】
本明細書で使用するとき、香料という用語は、いかなる発香性物質をも意味する。一般的には、かかる物質は、室温において大気圧よりも低い蒸気圧で特徴付けられる。本明細書で使用される香料は、ほとんどの場合、室温で液体であるが、当技術分野で既知の様々な樟脳系香料のように固体であることもできる。アルデヒド、ケトン、エステル、アルコール及びテルペンなどの物質を含む多種多様な化学物質が、香料製造業での使用において知られている。様々な化学構成成分の複雑な混合物を含む天然起源の植物油及び動物油並びに滲出物は香料としての使用で知られており、このような物質を本明細書で使用することができる。本明細書の香料は、比較的単純な組成のものであることができ、又は天然及び合成化学成分の極めて高度で複雑な混合物を含むことができ、すべて、いずれか所望の香りをもたらすように選択される。
【0027】
本発明で使用できる典型的な香料は、例えば、ビャクダン油、シベット及びパチョリ油などのような特異的な物質を含有する木質/土壌性の基剤を含む。他の好適な香料は、例えば淡い、花の芳香剤、例として、バラ抽出物、スミレ抽出物などである。香料は、例えば、ライム、レモン及びオレンジなどのような望ましい果実の香りを提供するように配合することもできる。
【0028】
要するに、心地よい香り又は他の望ましい香りを発するいかなる化学的に相溶する物質も、本発明において香料として使用することができる。
【0029】
香料物質については、S.アークタンダー(S. Arctander)、香料フレーバ及び化学物質(Perfume Flavors and Chemicals)、第I巻及び第II巻、オーサー(Aurthor)(ニュージャージー州モントクレア(Montclair))、及びメルクインデックス(Merck Index)、第8版、メルク社(Merck & Co., Inc.)(ニュージャージー州ローウェイ(Rahway))に、より詳細に記載されている。
【0030】
好ましくは、本発明の揮発性物質は、前記揮発性物質を構成する化学物質がポリマーマトリックス中に化学的に溶解するのを妨げない形態でポリマー組成物に取り入れられる。具体的には、カプセル封入された揮発性物質、及び非揮発性の種(例えば、香料前駆体(pro-perfumes))に共有結合した揮発性の種を含む化学物質は、推奨されず、好ましくは本発明による揮発性物質としての本明細書での使用から除外される。いかなる理論にも束縛されるものではないが、揮発性物質の放出が揮発性物質と可塑化ポリマーマトリックスとの間の分子レベルの相互作用に関係しているので、揮発性物質が可塑化ポリマーマトリックス中に可溶化されたときに、本発明のポリマー組成物の有利な特性が見られると考えられている。
【0031】
好ましくは、本発明のポリマー組成物は、該ポリマー組成物の5重量%〜40重量%、好ましくは7重量%〜30重量%、より好ましくは15重量%〜25重量%の低融点ポリアミドと、該ポリマー組成物の2重量%〜30重量%、好ましくは5重量%〜20重量%、より好ましくは7重量%〜15重量%の、極性のある熱可塑性エラストマーと、該ポリマー組成物の30重量%〜90重量%、好ましくは40重量%〜80重量%、より好ましくは50重量%〜75重量%の揮発性物質とを含む。
【0032】
本発明のポリマー組成物は、組成物の加工性や機械的特徴、並びにこのようなポリマー組成物から形成される物体の粘着性、光と酸素及び熱によるエージングに対する耐性、目に見える外観などのような他の特徴もさらに改善するために、追加の任意成分をさらに含んでもよい。
【0033】
本発明のポリマー組成物における好ましい任意成分は、可塑剤である。可塑剤は、好ましくは本発明のポリマー組成物中に、該ポリマー組成物の0重量%〜60重量%、好ましくは5重量%〜40重量%、より好ましくは7重量%〜25重量%のレベルで存在する。本発明によるポリマー組成物で使用するのに好適な可塑剤としては、クエン酸エステル、低分子量ポリエステル、ポリエーテル、液体ロジンエステル、芳香族スルホンアミド、フタレート、ベンゾエート、スクロースエステル、多官能性アルコールの誘導体(多官能性とは、2以上のヒドロキシル基を有することを意味する)、アジペート、タータレート、セバケート、リン酸のエステル、脂肪酸のエステル、二塩基酸のエステル、脂肪族アルコール及びジオール、エポキシ化植物油など、並びにこれらの混合物が挙げられる。既に前述したように、異なる相溶性可塑剤の異なる極性を使用して、揮発性物質の極性とのより良好な合致をもたらすようにポリマーマトリックスの極性を調整することができる(極性は、当業者に公知のいずれかの方法、例えば、水/オクタノール分配係数によって測定可能である)。
【0034】
他の任意成分には、それらの特性を改善するために、例えば、基材との接着性又は相溶性を高めるために配合に包含することのできる他のコポリマーが挙げられる。この目的のために、好ましい任意のコポリマーは、極性基と非極性基との両方を特徴とするものであって、例えば以下のものが挙げられる。エチレンと少なくとも1つの他のビニル若しくはアクリル性モノマーとのコポリマー、スチレンと少なくとも1つの他のビニル若しくはアクリル性モノマーとのコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)のコポリマー、ポリアミド、ポリ(ビニルピロリドン)のコポリマー、ポリアクリレート、ポリビニルエーテルのコポリマー)、アイオノマー、ポリエステルアミドコポリマーなど。
【0035】
本発明によるポリマー組成物が熱可塑性組成物であって、好ましくはホットメルトレオロジーを有する場合に好ましく使用され得る他の任意成分は、ロジン誘導体、脂肪族樹脂、芳香族樹脂又は混合された脂肪族−芳香族樹脂のような粘着付与樹脂である。これで、本発明の組成物を、揮発性物質を放出する能力に加えて、ホットメルト接着剤の特徴も有するように配合することができる。他のポリマー又はコポリマー、充填剤、架橋剤、顔料、染料、酸化防止剤及び他の安定化剤などのような更なる任意成分を添加して組成物に所望の特性を与えることもできる。
【0036】
本発明のポリマー組成物は、好ましくは熱可塑性ポリマー組成物である。これらは、熱可塑性ポリマー組成物を製造するためのいかなる既知の方法を用いて製造することもでき、典型的には、前記ポリマーを溶融する工程と、その後可塑剤と揮発性物質とをブレンドして均質な塊を形成する工程とを含み、次いで前記塊を冷却すると本発明によるポリマー組成物が得られる。熱可塑性組成物の中でも好ましいのは、溶解温度と粘度が低く、そのためにホットメルトとして加工することができるものである。これらの方式では、ブレンド時の揮発性物質の損失は最小限に抑えられる。
【0037】
本発明のポリマー組成物は、中間工程又は最終工程のどちらかとして、ポリマー溶液を用いて調製されてもよい。この種の調製は、当業者には周知であり、通常、選択されたポリマー及び揮発性物質を有効な溶媒に溶解させる工程と、溶液若しくはゲルを調製するために必要に応じて加熱する工程とを含む。溶媒は、その後、蒸発によって除去することができる。
【0038】
或いは、本発明のポリマー組成物は、水性エマルション又は分散液の形態で調製することができる。ポリマーの水性エマルション又は分散液を得る技術は当業者には周知である。例えば、選択されたポリマー及び揮発性物質を熱可塑性物質としてブレンドすることができる。得られた溶融物はその後、好ましくはその融点を超える温度において、混合することによって水に分散させることができる。当業者に既知の界面活性剤及び/又は安定化系を使用して、得られたエマルション又は分散液を安定化することができる。
【0039】
別の方法として、予め形成された水性ポリマー分散液若しくはエマルションを、選択された揮発性物質とブレンドすることもできる。これは、成分をポリマー分散液若しくはエマルションに直接加えることによって、又は香料の水性分散液を形成し、これをポリマー分散液若しくはエマルションとブレンドすることによって実施することができる。どちらの手順も、本発明によるポリマー組成物の水性分散液を形成することになる。
【0040】
別の方法として、ポリマーの1つを、揮発性物質及び他のポリマーの存在下で水分散液中に直接形成することもできる。この方法は、分散された揮発性物質及び他のポリマーを含有する水中の、モノマー若しくはプレポリマーの溶液又は分散液に関わることもできる。次いで、重合を開始してポリマー分散液を形成することができる。必要に応じて、代替的に揮発性物質を後で添加して、本発明による分散ポリマー組成物を生成することもできる。
【0041】
本発明によるポリマー組成物は、揮発性物質の放出が望まれる場合いつでも、様々な用途を有してよい。例えば、それらは、空気清浄装置(室内清浄剤、車内清浄剤、トイレ用のリムブロックなど)、瓶、箱、袋などの包装内の香料放出ヘッドスペース、洗浄/乾燥システム(タンブラー乾燥機、食器洗浄機、ドライクリーニングシステムなど)、洗濯洗剤、衣類仕上げ剤、ホームケア製品、パーソナルケア製品(防臭剤、制汗剤、シャンプー、コンディショナー、化粧品、皮膚保湿剤、メークアップなど)、高級香料、香料入りのコーティング、フィルム、ラミネート、衛生物品(女性用ケアパッド、パンティライナー、おむつ、靴の中敷きなど)、香料入りのインク、香料入りの3次元物体、消毒剤放出/殺虫剤放出/防虫剤放出用の物品、フレーバ放出、香料の試供用物質などに使用することができる。
【実施例】
【0042】
70部のラベンダー天然抽出物を、可塑剤として10部のスクロースアセテートイソブチレート(SAIB、イーストマン・ケミカル(Eastman Chemical)より)とともに容器に詰め(封止して、又は還流下で)、室温で混合する。次いで、温度を80℃まで上昇させる。極性のある熱可塑性エラストマーとして10部のペバックス2533(Pebax 2533)(トータル・フィナ(Total Fina)より)と、10部の低融点ポリアミドであるシルバクリアAF1900(Sylvaclear AF 1900)(アリゾナ・ケミカル(Arizona Chemical)より)とを、容器に詰め、完全に溶解するまで攪拌する。次いで、組成物を冷却し、室温で固化させる。得られる組成物は、揮発性物質のブリーディング(bleeding)を起こすことなく、温度50℃において固体であり、安定である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)低融点ポリアミドポリマーと、
b)極性のある熱可塑性エラストマーと、
c)揮発性物質と
を含む、ポリマー組成物。
【請求項2】
低融点ポリアミドポリマーは、130℃を下回る、好ましくは110℃を下回る、より好ましくは100℃を下回る融点を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
低融点ポリアミドポリマーは、末端処理されたポリアミド、好ましくはエステル末端処理されたポリアミドである、請求項1又はに記載のポリマー組成物。
【請求項4】
極性のある熱可塑性エラストマーは、ポリマー鎖内に化学的に一緒に結合されたハード相とソフト相とを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
極性のある熱可塑性エラストマーは、少なくとも1つの極性モノマーを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
極性のある熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリエーテルエステルコポリマー、及び熱可塑性ポリエーテルアミドコポリマーから選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
低融点ポリアミドポリマーは、ポリマー組成物の5重量%〜40重量%、好ましくは7重量%〜30重量%、より好ましくは15重量%〜25重量%であり、極性のある熱可塑性エラストマーは、ポリマー組成物の2重量%〜30重量%、好ましくは5重量%〜20重量%、より好ましくは7重量%〜15重量%であり、揮発性物質は、ポリマー組成物の30重量%〜90重量%、好ましくは40重量%〜80重量%、より好ましくは50重量%〜75重量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記揮発性物質は、香料である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
香料は、アルデヒド、ケトン、アルコール、テルペン、又はエステルを含む、請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
可塑剤を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
可塑剤は、ポリマー組成物の0重量%〜60重量%、好ましくは5重量%〜40重量%、より好ましくは7重量%〜25重量%の濃度で存在する、請求項10に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
可塑剤は、クエン酸エステル、低分子量ポリエステル、ポリエーテル、液体ロジンエステル、芳香族スルホンアミド、フタレート、ベンゾエート、スクロースエステル、多官能性アルコールの誘導体(多官能性とは、2以上のヒドロキシル基を有することを意味する)、アジぺート、タータレート、セバケート、リン酸のエステル、脂肪酸のエステル、二塩基酸のエステル、脂肪族アルコール及びジオール、エポキシ化植物油など、並びにこれらの混合物から成る群から選択される、請求項10又は11に記載のポリマー組成物。

【公表番号】特表2008−519145(P2008−519145A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540393(P2007−540393)
【出願日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/039599
【国際公開番号】WO2006/052579
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】