説明

揮発性物質除去装置

【課題】吸着剤の微小粉末の発生を抑えて良好な計測性能を維持できるようにした揮発性物質除去装置の構成を提供する。
【解決手段】被測定物質と揮発性物質を含むサンプルガスを流通させる間に加熱して、前記揮発性物質を気化させ、該気化した揮発性物質を吸着剤に吸着させて除去する揮発性物質除去装置であって、前記吸着剤3を繊維状物質により薄板状に成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物質と揮発性物質を含むサンプルガスから、揮発性物質を気化させ吸着剤に吸着除去する揮発性物質除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の排気を希釈してサンプルガスを生成し、該サンプルガス中に浮遊する微粒子(パーティキュレート)の量(数)を計測することにより、排気中の微粒子濃度(密度)を計測することが行われるが、前記サンプルガスには排気中の揮発性物質が含まれ、常温では該揮発性物質が凝縮された微粒子となって、被測定物質である固体の微粒子(カーボン等のパーティキュレート)の計測に誤差を生じる。このため、計測前にサンプルガス中の揮発性物質を加熱して気化させ、吸着剤に吸着除去する装置が設けられる。
従来の揮発性物質除去装置として、特許文献1に開示された装置では、サンプルガス配管(チューブ)を案内されるサンプルガスを加熱して揮発性物質を気化させ、サンプルガス配管に設けられた開口部(線材格子壁部)からサンプルガス配管外に拡散させ、サンプルガス配管外の吸着剤(顆粒状のチャコール)に吸着させ、揮発性物質を除去している。上記処理後、サンプルガスに含まれる被測定物質である固体の微粒子(パーティキュレート)の量を計測している。
【特許文献1】特開2004−354370
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示された装置では、吸着剤は顆粒状の活性炭で形成されているため、装置移動の際や、吸着剤交換などの際に、吸着剤の顆粒同士の衝突や磨耗によって吸着剤の微小粉末が発生し、これがサンプルガス配管(チューブ)に異物として混入すると、計測に悪影響を及ぼすという問題点があった。
本発明は、以上のような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、吸着剤の微小粉末の発生を抑えて良好な計測性能を維持できるようにした揮発性物質除去装置の構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このため本発明は、被測定物質と揮発性物質を含むサンプルガスを流通させる間に加熱して、前記揮発性物質を気化させ、該気化した揮発性物質を吸着剤に吸着させて除去する揮発性物質除去装置であって、前記吸着剤を繊維状物質により薄板状に成形する構成とした。
【発明の効果】
【0005】
上記のように、繊維状物質を薄板状に成形した吸着剤を用いることによって、上述のような吸着剤の顆粒同士の衝突や磨耗は発生せず、吸着剤の微小粉末の発生を抑えられる。これにより、前記微小粉末がサンプルガス配管に混入しなくなり、被測定物質の計測に悪影響を及ぼす懸念も解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明における実施形態について説明する。
実施形態にかかる揮発性物質除去装置の全体構成を示す図1〜図3において、箱状の本体1には、サンプルガス配管2が貫通して配設され、サンプルガス配管2内を流通する被測定物質と揮発性物質を含むサンプルガスが、本体1内を通過する間に、該サンプルガス中の揮発性物質を除去された後、下流側(図1における右側)に流出されるように構成されている。
【0007】
以下、詳細を説明すると、サンプルガス配管2は、本体1内の入口部分において、上流部2aが蛇行状(または螺旋状)に屈曲して形成され、本体1内は、サンプルガス配管2の上流部2aが配設された部分が仕切り壁10によって画成され、該上流部2aを加熱する加熱部11に構成されている。
サンプルガス配管2は、本体1内において前記加熱部11より下流側が、水平方向に偏平な薄板状に形成され、その上流部分の上下壁には網目状に多数の微細孔2b(開口部)が開口されている。ここで、微細孔2bの大きさは、サンプルガス中の被測定物質であるパーティキュレートを放出させず、気化した揮発性物質のみを放出できるように設定されている。
【0008】
サンプルガス配管2を挟んで上下の本体1内部空間には、それぞれ、複数個(2個)ずつの吸着剤3が上下に間隔をおいて層状に配置されている。
ここで、本体1内の中央に配置されたサンプルガス配管2の上下に面した吸着剤3とサンプルガス配管2との間隙、上下に隣り合う吸着剤3同士の間隙、吸着剤3と本体1内壁との間隙を所定以上確保する。
【0009】
吸着剤3は、繊維状の吸着物質(例えば活性炭)を薄板状に成形して構成され、長手方向(サンプルガス流通方向)の両端部が金属材4によって被覆され、金属材4で被覆された両端部が、本体1の前記加熱部11より下流側の室の両側壁に固定された支持板13上に支持されている。
【0010】
前記本体1の前面(図1の紙面手前側)は扉12で構成し、該扉12を本体1の前面上端部にヒンジを介して回動自由に取付け、該扉12によって本体1前面を開閉できるように構成されている。
開放した本体1前面からは、吸着剤3が、図4に示すように前記金属材4で被覆された両端部を前記支持板13のガイド壁13aに沿ってスライドさせながら着脱自由に構成されている。吸着剤3は、上下方向に層状に配置されているため、前後方向にスライドさせて、容易に挿入、取り出しができる。
本体1前面の前記扉12との接合部には、該接合部のシール材として、ガスケット14が装着されている。ガスケット14は、加熱部11の発熱に対する耐熱性を備えた材料(たとえばシリコン)が望ましい。
【0011】
次に、上記のように構成された実施形態の作用を説明する。
サンプルガス配管2を通って本体1内に流入した前記サンプルガスは、加熱部11において加熱され、前記サンプルガス中の揮発性物質が気化される。
加熱部11より下流側に流出した前記サンプルガスは、サンプルガス配管2の前記編目状に開口された微細孔2bから、前記気化した揮発性物質を放出する。ここで、上記微細孔2bの大きさの設定により、被測定物質は放出されることなく、揮発性物質のみを放出できる。
【0012】
前記微細孔2bから放出された揮発性物質は、複数の吸着剤3に吸着除去される。
このようにして、揮発性物質を除去された前記サンプルガスが、網目部(微細孔2b)より下流側のサンプルガス配管2を通って本体1外に流出し、下流側に設置された図示しない計測装置によって前記サンプルガス中の被測定物質(パーティキュレート)の量が計測される。
【0013】
ここで、吸着剤3は、繊維状の活性炭を薄板状に成形して構成されているので、従来のように顆粒状の活性炭で構成された場合のような、装置移動の際や、吸着剤3の交換などの際に、吸着剤の顆粒同士の衝突や磨耗によって吸着剤の微小粉末が発生することを回避でき、該微小粉末のサンプルガス中への混入による被測定物質計測への悪影響を防止できる。
【0014】
また、吸着剤3の両端部を金属材4で覆い、該金属材4を介して吸着剤3を本体1内壁に支持するようにしたので、本体1内の他物体との衝突による吸着剤3の磨耗、およびこれに起因する吸着剤の微小粉末の発生をも回避できる。なお、金属材4は、耐熱性および耐摩耗性に優れた他の材料で代用してもよい。
【0015】
また、前記加熱部11内において、サンプルガス配管2の上流部2aが蛇行状(または螺旋状)に屈曲し、十分大きな長さを有するため、揮発性物質の加熱部11内での滞留時間を稼げ、低沸点から高沸点まで多種の揮発性物質を十分に気化できる。
【0016】
また、サンプルガス配管2の本体1内の加熱部11よりも下流側の部分が薄板状に形成され、同じく薄板状に形成された吸着剤3と対向する上下壁に微細孔2bが形成されているため、前記気化した揮発性物質は該微細孔2bから対向する直上、直下の吸着剤3に向かって放出されるので、これら吸着剤3によって効率的に吸着される。
サンプルガス配管2の直上、直下の吸着剤3で吸着されなかった揮発性物質も、吸着剤3と本体1内壁との間隙を回り込んで、他の吸着剤3に吸着し、全ての吸着剤3によって揮発性物質を効率よく吸着除去することができる。
【0017】
ここで、各吸着剤3が個々に着脱自由であるので、吸着効率の高いサンプルガス配管2の直上、直下の吸着剤3と、最上、最下の吸着剤3とを取り替えることにより、効率よく使用することができる。
【0018】
なお、本発明は以上のような構成に限られず、以下のような構成としてもよい。
加熱部11は本体1の外部に別体として設けてもよい。
また、扉12の開閉は、前記ヒンジを中心とした回動式に代え、たとえばスライド式にしてもよい。
さらに、シール材として、ガスケット14に代わり、扉12の内面周縁にパッキンを装着してもよい。
また、支持板13を本体1内壁と一体に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る揮発性物質除去装置の斜視図
【図2】図1の正面図
【図3】図2におけるA−A線断面図
【図4】図1における吸着剤の取り付けの詳細図
【符号の説明】
【0020】
1 本体
2 サンプルガス配管
2a 上流部
2b 微細孔
3 吸着剤
4 金属材
11 加熱部
12 扉
14 ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物質と揮発性物質を含むサンプルガスを流通させる間に加熱して、前記揮発性物質を気化させ、該気化した揮発性物質を吸着剤に吸着させて除去する揮発性物質除去装置であって、前記吸着剤を繊維状物質により薄板状に成形したことを特徴とする揮発性物質除去装置。
【請求項2】
箱状の本体内部に、
前記サンプルガスを流通させるサンプルガス配管と、
前記サンプルガス配管の上流部を加熱する加熱部と、
前記サンプルガス配管の前記上流部より下流側の一部に開口された開口部から放出される前記気化した揮発性物質を吸着する前記吸着剤と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の揮発性物質除去装置。
【請求項3】
前記吸着剤は、前記本体内に複数個が、層状に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の揮発性物質除去装置。
【請求項4】
前記吸着剤は、前記本体内に対して、着脱自在に配置されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の揮発性物質除去装置。
【請求項5】
前記吸着剤は、前記本体に支持される両端部が金属材によって覆われていることを特徴とする請求項4に記載の揮発性物質除去装置。
【請求項6】
前記加熱部で加熱されるサンプルガス配管の上流部は、蛇行状または螺旋状に形成されたことを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか1つに記載の揮発性物質除去装置。
【請求項7】
前記本体は、吸着剤着脱用の扉を備え、該扉と前記本体との接合部をシールする耐熱性のシール材を含んで構成されたことを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれか1つに記載の揮発性物質除去装置。
【請求項8】
前記サンプルガス配管は、前記本体内の前記加熱部より下流側が、前記吸着剤と略平行に対向した薄板状に形成され、前記開口部は、前記吸着剤と対向した壁に設けられたことを特徴とする請求項2〜請求項7のいずれか1つに記載の揮発性物質除去装置。
【請求項9】
前記開口部は、多数の微細孔によって構成されていることを特徴とする請求項2〜請求項8のいずれか1つに記載の揮発性物質除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−10406(P2007−10406A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189677(P2005−189677)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】