説明

揮発溶媒用カラムラック

【課題】揮発溶媒を滴下させるときに揮発溶媒用カラムのノズルを捕集用容器の口部に挿入させることにより空気中の水蒸気がノズルに露化して捕集用容器内に滴下することを防止することができる揮発溶媒用カラムラックを提供する。
【解決手段】揮発溶媒用カラム17から捕集用容器16に溶媒を滴下させるときは、カラムのノズル17aが捕集用容器の口部16aに挿入されるようにカラム支持台18が下降位置18Lに下降されて、揮発溶媒用カラムのノズル先端が揮発溶媒の蒸気雰囲気内に挿入される。これにより、ノズル17aから滴下する揮発溶媒の気化熱によって温度が低下してもノズル外周面に水蒸気が露化して捕集用容器内に滴下することが無くなる。捕集用容器を出し入れするときは、揮発溶媒用カラムのノズル下端が捕集用容器の口部上端より上方に離脱するようにカラム支持台が上昇位置18Hに上昇される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発溶媒用カラム及び捕集用容器を上下方向に整列して保持し、揮発溶媒用カラムから自然落下する揮発溶媒を捕集用容器に捕集する揮発溶媒用カラムラックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図6に示すように、揮発溶媒用カラム60をカラムラック61の上方に垂直に保持し、捕集用容器62を揮発溶媒用カラム60のノズル60aの下方に対向してカラムラック61の下方に載置し、ノズル60aから自然落下する揮発溶媒63を捕集用容器62に捕集することが行われている。しかしながら、これによると、揮発溶媒用カラム60のノズル60aから滴下する揮発溶媒の気化熱によってノズル60aの外周面の温度が低下し、ノズル外周面に水蒸気が露64となって付着し、捕集用容器62内に滴下して、溶媒65内に小さな露64となって混入する。このため、溶媒に溶融した特定物質の分析精度が低下する。
【0003】
かかる不具合を解消するために、特許文献1の図2に示されたカートリッジ固定用具では、溶媒が供給される固相抽出カートリッジ10(カラム)をカートリッジ固定用具1を介して試験管20(補修用容器)に固定し、試験管20を試験管立て40に立てるものがある。カートリッジ固定用具1は、試験管20の口頸部20aに被せられるキャップ本体2と、キャップ本体2の天井部2aに穿設され固相抽出カートリッジ10のノズル10cが差し込まれる差込み孔3とを有し、差込み孔3にノズル10cを差し込まれて起立した固相抽出カートリッジ10を保持した状態で試験管20にキャップ本体2で被せられ、この試験管20が試験管立て40に立てられる。
【特許文献1】特開2006−329940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたものでは、カートリッジ10と試験管20とを、外気との接触を最小限に抑制した状態でカートリッジ固定用具1によって連結することができるので、カートリッジ10のノズル10cが外気に触れることがなく、ノズル10cの外周面に水蒸気が露となって付着し、試験管20内に滴下して溶媒に混入することはない。しかしながら、カートリッジ10と試験管20とを1本ずつ連結しなければならず、固相抽出に多大の労力と時間を要する問題がある。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、揮発溶媒を滴下させるときに揮発溶媒用カラムのノズルを捕集用容器の口部に挿入させることにより空気中の水蒸気がノズルに露化して捕集用容器内に滴下することを防止することができる揮発溶媒用カラムラックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、揮発溶媒用カラム及び捕集用容器を上下方向に整列して保持し、揮発溶媒用カラムから自然落下する揮発溶媒を捕集用容器に捕集する揮発溶媒用カラムラックにおいて、枠体に設けられ前記捕集用容器が載置される容器台と、前記揮発溶媒用カラムをノズルを下方にして直立支持し前記枠体に上下方向に移動可能に装架されたカラム支持台と、前記枠体に設けられ前記カラム支持台を、前記捕集用容器を出し入れするときに前記揮発溶媒用カラムのノズル下端を前記捕集用容器の口部上端より上方に離脱させる上昇位置と、前記揮発溶媒用カラムから溶媒を滴下させるときに前記揮発溶媒用カラムのノズルを前記捕集用容器の口部に挿入させる下降位置との間で昇降させる昇降装置と、を備えたことである。
【0007】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記昇降装置は、前記枠体に水平軸線回りに回転可能に軸承された回転軸と、該回転軸に所定量偏心して平行に設けられ前記カラム支持台に下方から当接し、前記回転軸の回転によって前記カラム支持台を前記上昇位置と下降位置との間で昇降させる偏心軸と、前記偏心軸が上死点を僅かに通過した位置で前記回転軸の回転を規制する停止部材と、を備えることである。
【0008】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2において、前記容器台は、該容器台に載置された前記捕集用容器が前記昇降台に支持された揮発溶媒用カラムと上下方向に整列する捕集位置と、前記捕集用容器を前記容器台に着脱する着脱位置との間で移動可能に前記枠体に装架されていることである。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、揮発溶媒用カラムから捕集用容器に溶媒を滴下させるときは、前記揮発溶媒用カラムのノズルが前記捕集用容器の口部に挿入されるようにカラム支持台が下降位置に下降されて、前記揮発溶媒用カラムのノズル先端が揮発溶媒の蒸気雰囲気内に挿入されるので、前記ノズルから滴下する揮発溶媒の気化熱によって温度が低下してもノズル外周面に水蒸気が露化して前記捕集用容器内に滴下することが無くなる。これにより、この水滴が溶媒と混合し、溶媒に溶融した特定物質の分析精度が低下することを防止できる。さらに、前記捕集用容器を出し入れするときは、前記揮発溶媒用カラムのノズル下端が捕集用容器の口部上端より上方に離脱するように前記カラム支持台を上昇位置に上昇させるので、前記捕集用容器を揮発溶媒用カラムのノズルと干渉することなく容易に着脱することができる。
【0010】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、回転軸が枠体に水平軸線回りに回転可能に軸承され、該回転軸に所定量偏心して平行に設けられた偏心軸が前記カラム支持台に下方から当接し、前記回転軸の回転に基いて前記カラム支持台が上昇位置と下降位置との間で昇降され、前記偏心軸が上死点を僅かに通過した位置で前記回転軸の回転が規制されることにより、前記カラム支持台が安定して上昇位置に停止され、前記偏心軸の下降により前記カラム支持台が下降位置まで下降されるので、簡素な構成でカラム支持台を上昇位置と下降位置とに保持することができる。
【0011】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、捕集用容器を載置する容器台が、前記捕集用容器を前記カラム支持台に支持された揮発溶媒用カラムと上下方向に整列させる捕集位置と、前記捕集用容器を着脱する着脱位置との間で移動可能に枠体に装架されているので、前記捕集用容器を前記容器台から揮発溶媒用カラムのノズルと干渉することなく容易に着脱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る揮発溶媒用カラムラック10の実施の形態について説明する。図1乃至図3に示すように、揮発溶媒用カラムラック10は、枠体11と、枠体11のベース部12上に前後方向に移動可能に載置され複数の捕集用容器16が載置される容器台15と、枠体11の垂直壁13に上下方向に移動可能に装架され複数の揮発溶媒用カラム17をノズル17aを下方にして垂直に着脱可能に支持するカラム支持台18と、枠体11に装架されカラム支持台18を上昇位置18Hと下降位置18Lとの間で昇降させる昇降装置19とを備えている。
【0013】
枠体11は、水平な長方形のベース部12及び垂直な長方形の垂直壁13が左右側壁14a,14bに固定されて形成されている。左右側壁14a,14bは、縦壁14cと縦壁14dとがL字状に屈曲するように連結されて形成され、縦壁14dの下辺は内側に屈曲して底壁14eを形成している。ベース部12は左右両端部が左右側壁14a,14bの底壁14e上に重ねられボルトで固定されている。垂直壁13の左右両端に形成された屈曲部は縦壁14cの中央部で重ねられボルトで左右側壁14a,14bに固定されている。左右側壁14a,14bの底壁14eの下面前後には、脚部32が固定されている。
【0014】
容器台15は、ステンレスの長方形状板が断面ロの字状に屈曲され両端を接合して形成されている。容器台15には、捕集用容器16の外径より僅かに広い幅を有し容器台15の前面の下面より僅かに高い位置から上面の後部にかけて延在する複数の屈曲長穴15aが、長手方向に等ピッチで形成されている。そして、容器台15は、容器台15の底面上に屈曲長穴15aを通って載置された捕集用容器16がカラム支持台18に支持された揮発溶媒用カラム17と上下方向に整列する捕集位置と、捕集用容器16を容器台15に着脱する着脱位置との間で前後方向に移動可能にベース部12上に装架されている。
【0015】
カラム支持台18は、ステンレスの長方形状板が断面コの字状に屈曲されて形成されている。カラム支持台18の上下に離間して平行に延在する保持板部18a、18bには、揮発溶媒用カラム17の直径より僅かに大径の複数の保持穴18cが屈曲長穴15aと長手方向で整列する位置に等ピッチで上下方向に貫通して形成されている。保持穴18cの内周前面と保持板部18a、18bの前端面との間には、保持穴18cの直径より短い幅を有する長穴が開設されている。揮発溶媒用カラム17は、ノズル17aを下方にして保持穴18cに挿通され、後端に突設された大径フランジ部17bが上方の保持板部18aに当接することによりカラム支持台18に直立支持される。
【0016】
カラム支持台18の保持板部18a、18bの後端をつなぐ背板部18dの両端部には、長穴18eが上下方向に延在して穿設され、各長穴18eには、2個の環状の樹脂製ブッシュ20の小径部20aの外周が上下方向に離間した位置で嵌入されている。図4に示すように、樹脂製ブッシュ20の中心穴20b及び垂直壁13に穿設されたボルト穴13aに挿通されたボルト21にナット22が螺合され、ナット22がブッシュ20の大径部20cの端面に当接することにより、樹脂製ブッシュ20は小径部20aの端面が垂直壁13の前面に当接した状態で垂直壁13に固定されている。これにより、カラム支持台18は、各長穴18eに嵌入する2個のブッシュ20の小径部20aに案内され、大径部20cと垂直壁13との間に挟持されて、枠体11の垂直壁13に上下方向に移動可能に装架されている。
【0017】
昇降装置19は、枠体11の垂直壁13に上下方向に移動可能に装架されたカラム支持台18を、捕集用容器16を容器台15に出し入れするときに、揮発溶媒用カラム17のノズル17aの下端を捕集用容器16の口部16aの上端より上方に離脱させる上昇位置18Hと、揮発溶媒用カラム17から溶媒を滴下させるときにノズル17aを捕集用容器16の口部16aに挿入させる下降位置18Lとの間で昇降させる装置である。
【0018】
図2、図5に示すように、枠体11の左右側壁14a,14bの垂直壁13より後方に延在する部分には、回転軸23が両端部で水平軸線回りに回転可能に軸承され、右側壁14bを貫通した端部にはハンドル24が固定されている。回転軸23の左側壁14aの近傍には半径方向に突出する停止部材25が固定され、回転軸23は停止部材25が左側壁14aの内壁面に固定された規制部材26,27に当接することにより時計方向及び反時計方向の回動端を規制される。回転軸23の両端部には、半径方向に同位相で突出するアーム28が夫々固定され、アーム28の先端には回転軸23と平行で所定量偏心するローラ29が偏心軸として回転可能に支承されている。垂直壁13の左右両端部には、上下方向に延在する長穴13bがローラ29と対向する位置に形成され、カラム支持台18の背板部18bの後面に固定された当接部材30が長穴13bを通って垂直壁13の後方に突出し、下面に固定された樹脂製当接片30aを介してローラ29に上方から当接している。
【0019】
回転軸23がハンドル24によって時計方向に回転され、ローラ29が上死点を僅かに通過すると、停止部材25が規制部材26に当接して回転軸23の回転が規制される。カラム支持台18の荷重が上死点を僅かに通過したローラ29に当接部材30を介して作用し、回転軸23を時計方向に回動させようとするが、停止部材25が規制部材26に当接して回転軸23の回転を規制するので、カラム支持台18は上昇位置18Hに停止される。この状態から回転軸23がハンドル24によって反時計方向に回転され、ローラ29が上死点と下死点との間の所定位置まで旋回すると、停止部材25が規制部材27に当接して回転軸23の回転が規制される。カラム支持台18の荷重がローラ29に作用し、回転軸23を反時計方向に回動させようとするが、停止部材25が規制部材27に当接して回転軸23の回転を規制するので、カラム支持台18は下降位置18Lに停止される。
【0020】
次に、上述した揮発溶媒用カラムラック10の作動について説明する。前方の着脱位置15Fに引き出された容器台15の各屈曲長穴15a内に捕集用容器16が挿入載置された後、容器台15は捕集位置15Rに後退させる。上昇位置18Hに停止されたカラム支持台18の各保持穴18cに揮発溶媒用カラム17がノズル17aを下方にして挿通され大径フランジ部17bが保持板部18aに当接して保持されている。
【0021】
各揮発溶媒用カラム17に揮発溶媒が注入された後に、回転軸23がハンドル24によって反時計方向に回転され、カラム支持台18が下降位置18Lに下降されて停止される。これにより、揮発溶媒用カラム17のノズル17aが捕集用容器16の口部16aに挿入される。捕集用容器16の口部16aの内部は揮発溶媒の蒸気雰囲気になるので、ノズル17aから滴下する揮発溶媒の気化熱によって温度が低下してもノズル17aの外周面に水蒸気が露化して付着することがない。これにより、ノズル17aの外周面に付着した露が成長して捕集用容器16内に滴下し、この水滴が溶媒と混合して溶媒に溶融した特定物質の分析精度を低下させることを防止できる。
【0022】
揮発溶媒用カラム17から溶媒の滴下が終了すると、回転軸23がハンドル24によって時計方向に回転され、カラム支持台18が上昇位置18Hに上昇されて停止される。これにより、捕集用容器16を取り出すために容器台15を前方に引き出すとき、揮発溶媒用カラム17のノズル17aが捕集用容器16の口部16aと干渉することがない。各捕集用容器16は着脱位置に引き出された容器台15の屈曲長穴15aから前方に傾斜されて容易に取り出だされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る揮発溶媒用カラムラックの実施の形態の正面図。
【図2】図1に示す揮発溶媒用カラムラックの平面図。
【図3】図1に示す揮発溶媒用カラムラックの側面図。
【図4】図1の4−4線に沿って切断した部分拡大断面図。
【図5】昇降装置を示す斜視図。
【図6】従来のカラムラックを示す図。
【符号の説明】
【0024】
10…揮発溶媒用カラムラック、11…枠体、12…ベース部、13…垂直壁、14a,14b…左右側壁、15…容器台、16…捕集用容器、16a…口部、17…揮発溶媒用カラム、17a…ノズル、18…カラム支持台、19…昇降装置、23…回転軸、24…ハンドル、25…停止部材、26,27…規制部材、28…アーム、29…ローラ(偏心軸)、30…当接部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発溶媒用カラム及び捕集用容器を上下方向に整列して保持し、揮発溶媒用カラムから自然落下する揮発溶媒を捕集用容器に捕集する揮発溶媒用カラムラックにおいて、
枠体に設けられ前記捕集用容器が載置される容器台と、
前記揮発溶媒用カラムをノズルを下方にして直立支持し前記枠体に上下方向に移動可能に装架されたカラム支持台と、
前記枠体に設けられ前記カラム支持台を、前記捕集用容器を出し入れするときに前記揮発溶媒用カラムのノズル下端を前記捕集用容器の口部上端より上方に離脱させる上昇位置と、前記揮発溶媒用カラムから溶媒を滴下させるときに前記揮発溶媒用カラムのノズルを前記捕集用容器の口部に挿入させる下降位置との間で昇降させる昇降装置と、
を備えたことを特徴とする揮発溶媒用カラムラック。
【請求項2】
請求項1において、前記昇降装置は、前記枠体に水平軸線回りに回転可能に軸承された回転軸と、該回転軸に所定量偏心して平行に設けられ前記カラム支持台に下方から当接し前記回転軸の回転によって前記カラム支持台を前記上昇位置と下降位置との間で昇降させる偏心軸と、前記偏心軸が上死点を僅かに通過した位置で前記回転軸の回転を規制する停止部材と、を備えることを特徴とする揮発溶媒用カラムラック。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記容器台は、該容器台に載置された前記捕集用容器が前記昇降台に支持された揮発溶媒用カラムと上下方向に整列する捕集位置と、前記捕集用容器を前記容器台に着脱する着脱位置との間で移動可能に前記枠体に装架されていることを特徴とする揮発溶媒用カラムラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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