説明

揮発量測定装置及び方法

【課題】ノズルから流出して秤量容器に流入する、小流量域での液体の揮発量を精度よく測定する揮発量測定装置及び方法を提供すること。
【解決手段】揮発量測定装置10は、ノズル200の先に、流量が一定の値より小さい場合に連続で流れる層流95を形成する細管ノズル201と、細管ノズル201の先端と秤量容器300の底との相対的な距離を変更する移動装置301と、移動装置301によって距離の変更を制御する制御部410と、を備える。そして、揮発量測定装置10は、秤量容器300に流入する液体の重量を秤量計400によって測定した第1の測定による重量と、細管ノズル201の先端と秤量容器300の底との相対的な距離を変更した第2の測定による重量と、の差を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細管流出流の揮発量測定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化学プラントや鉄鋼プラントで使用されている中型の流量計や大型の流量計を校正するために、それぞれ中流量や大流量の液体流量校正設備が存在する。
【0003】
従来の液体流量校正設備の概要を説明する。図8は、従来の液体流量校正設備の概要を示す図である。図9は、従来のノズルを説明する図である。図8において、液体流量校正設備は、液体を溜めた試験液タンク906から液体を試験管路908に導き、試験管路908において安定な流れを発生させる。発生させた安定な流れは、試験管路908に設けた流量計905を通過し、サンプルノズル902と秤量容器907との間に設けたダイバータ901を経由して秤量容器907に流入する。その後、液体流量校正設備は、所定時間(流入時間)経過後、ダイバータ901により流れを高速で切り替えて、秤量容器907への液体の流入を停止させる。そして、液体流量校正設備は、秤量容器907へ流入した液体の流入量と流入時間とから単位時間あたりの液体の流量を求め、求めた流量と、流量計905によって計測された流量とにより、流量計905を校正する。また、図9で示すように、小流量の場合、安定した流れを作るために、サンプルノズル902の管の中央に針921を取り付けて使用していた。
【0004】
このような流量計905の校正装置において、小流量域での流量計905の高精度な校正を行うには、サンプルノズル902から流出して秤量容器907に流入する液体を連続流にする必要があるが、連続流にした場合、流れが秤量容器907に入るまでに液体の揮発が発生する。そのためサンプルノズル902から流出して秤量容器907に流入する液体が、秤量容器907に流入するまでにどの程度揮発するのかを正確に測定する必要がある。
【0005】
例えば、エンジンオイルの燃料希釈を推定する技術を開示する特許文献1が知られている。特許文献1に開示する希釈監視コンピュータは、燃料の後噴射による排気浄化装置の再生制御が実行されるごとに、再生制御の実行期間におけるエンジンオイルへの燃料の新規混入量と、再生制御の前回の実行から今回の実行までの再生インターバルにおけるエンジンオイルからの燃料の揮発量とを算出する。そしてそれら算出された新規混入量と揮発量との差を再生制御の実行ごとに積算してエンジンオイル中の燃料混入量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−9597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示する技術は、ノズルから流出して秤量容器に流入する、小流量域での液体の流量の揮発量を測定する技術ではない。小流量域での液体の揮発量を事前に測定することができれば、測定した揮発量を補正値として使用して、揮発量に影響されずに小流量域での流量計の校正を精度よく行うことができる。
【0008】
そこで、ノズルから流出して秤量容器に流入する、小流量域での液体の揮発量を精度よく測定する装置が求められている。
【0009】
本発明は、ノズルから流出して秤量容器に流入する、小流量域での液体の揮発量を精度よく測定する揮発量測定装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0011】
(1) 液体が流出するノズルと、前記ノズルから流出する液体を溜める秤量容器と、前記秤量容器に流入した液体の重量を測定する秤量計と、を備え、前記ノズルから流出する液体が前記秤量容器に溜まるまでの揮発量を測定する揮発量測定装置であって、前記ノズルの先に、流量が一定の値より小さい場合に層流な連続流を形成する細管ノズルと、前記細管ノズルの先端と前記秤量容器の底との相対的な距離を変更する距離変更手段と、前記距離変更手段によって前記距離の変更を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記細管ノズルから前記秤量容器に流入する液体の重量を前記秤量計によって測定する測定手段と、前記測定手段によって第1の測定を行う第1測定手段と、前記距離を変更し、前記測定手段によって第2の測定を行う第2測定手段と、前記第1測定手段によって測定した重量と、前記第2測定手段によって測定した重量と、の差を算出する算出手段と、をさらに備える、揮発量測定装置。
【0012】
(1)の構成によれば、本発明に係る揮発量測定装置は、ノズルの先に、流量が一定の値より小さい場合に層流な連続流を形成する細管ノズルと、細管ノズルの先端と秤量容器の底との相対的な距離を変更する距離変更手段と、距離変更手段によって距離の変更を制御する制御手段と、を備える。そして、揮発量測定装置は、細管ノズルから秤量容器に流入する液体の重量を秤量計によって測定する測定手段を有し、測定手段によって第1の測定を行い、細管ノズルの先端と秤量容器の底との相対的な距離を変更し、測定手段によって第2の測定を行い、第1の測定によって測定した重量と、第2の測定によって測定した重量と、の差を算出する。
【0013】
すなわち、揮発量測定装置は、細管ノズルによって層流な連続流を形成させ、秤量容器に流入する流量の定流量性を確保して、秤量容器に流入する液体の重量を、細管ノズルの先端から秤量容器の底までの距離を変えて測定する。したがって、本発明に係る揮発量測定装置は、ノズルから流出して秤量容器に流入する、小流量域での液体の揮発量を精度よく測定することができる。
【0014】
(2) 液体が流出するノズルと、前記ノズルから流出する液体を溜める秤量容器と、前記秤量容器に流入した液体の重量を測定する秤量計と、を備え、前記ノズルから流出する液体が前記秤量容器に溜まるまでの揮発量を測定する揮発量測定装置が実行する方法であって、
前記揮発量測定装置は、前記ノズルの先に、流量が一定の値より小さい場合に層流な連続流を形成する細管ノズルと、前記細管ノズルの先端と前記秤量容器の底との相対的な距離を変更する距離変更手段と、前記距離変更手段によって前記距離の変更を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記細管ノズルから前記秤量容器に流入する液体の重量を前記秤量計によって測定する測定手段を有し、
前記方法は、前記制御手段が、前記測定手段によって測定する第1測定ステップと、前記制御手段が、前記距離を変更する変更ステップと、前記制御手段が、前記測定手段によって測定する第2測定ステップと、前記制御手段が、前記第1測定ステップによって測定した重量と、前記第2測定ステップによって測定した重量と、の差を算出する算出ステップと、を備える、方法。
【0015】
したがって、本発明に係る方法は、(1)と同様に、ノズルから流出して秤量容器に流入する、小流量域での液体の揮発量を精度よく測定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ノズルから流出して秤量容器に流入する、小流量域での液体の揮発量を精度よく測定することができる。その結果、本発明は、揮発量に影響されずに小流量域での流量計の校正を精度よく行うことができるように、揮発量の補正値を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態である揮発量測定装置の概要を示す概要図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る細管ノズルの一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る揮発量測定装置における制御部のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る揮発量測定装置における制御部の処理内容を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る揮発量測定装置における揮発量の測定を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る揮発量測定装置における、距離を変えての揮発量の測定を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る揮発量測定装置における、揮発量の推定を示す図である。
【図8】従来の液体流量校正設備の概要を示す図である。
【図9】従来のノズルを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態である揮発量測定装置10の概要を示す図である。揮発量測定装置10は、液体を溜める試験液タンク504と、試験液タンク504に連結された管路505と、管路505を流れる液体が流出するノズル200と、ノズル200の先に設置された細管ノズル201と、細管ノズル201から流出する液体を溜める秤量容器300と、細管ノズル201の先端と秤量容器300の底との相対的な距離を変更する距離変更手段としての移動装置301と、秤量容器300に流入した液体の重量を測定する秤量計400と、を備え、細管ノズル201から流出する液体が秤量容器300に溜まるまでの揮発量を測定する。
【0020】
図1において、液体を溜めた試験液タンク504から液体が管路505に導かれる。管路505において、圧力調整弁502と、液量調整弁501とによって、細管ノズル201の手前に一定な圧力が形成される。
【0021】
圧力調整弁502と、液量調整弁501とにより形成された一定な圧力の液体は、ノズル200の先に設置された細管ノズル201から流出する。細管ノズル201から流出する流れは、従来の図9に示すような滴下状態とならずに、連続で流れる層流95を形成する(後述する図2参照)。
【0022】
層流95は、液体の流速分布が細管ノズル201の中心を回転軸とする回転放物面であり、渦等の不規則な変動を含まない定常な流れである。具体的には、液体が流れる細管ノズル201の管内径と、長さと、液体の流速と、密度と、粘度とにより層流95が形成される。層流95では、流体が同一であり、細管の前後差圧が一定であれば、管内を流れる流量が決まる。
【0023】
秤量容器300に流入した液体の重量は、秤量計400によって測定される。秤量計400は、測定した重量値を制御部410に送信する。
【0024】
移動装置301(例えば、昇降台)は、秤量容器300を昇降させ、細管ノズル201の先端と秤量容器300の底との相対的な距離を変更する。
この他に、ノズル200に設置され、細管ノズル201の先端の位置を移動させる装置(例えば、ノズル200の位置を変更させる装置)が、細管ノズル201の先端と秤量容器300の底との相対的な距離を変更するとしてもよい。また、移動装置301を秤量計400の下に設置し、秤量計400を昇降させ、細管ノズル201の先端と秤量容器300の底との相対的な距離を変更するとしてもよい。
【0025】
制御部410は、移動装置301によって細管ノズル201の先端と秤量容器300の底との相対的な距離の変更を制御する。
具体的には、制御部410は、移動装置301によって、細管ノズル201の先端を秤量容器300の底近傍に位置させる。次に、制御部410は、一定時間、秤量容器300に流入する液体の重量を所定の時間ごとに連続して受信し、格納する(第1測定という)。
次に、制御部410は、移動装置301によって、細管ノズル201の先端と秤量容器300の底との相対的な距離を変更し、例えば、ダイバータ(図示せず)を使用するときの細管ノズル201の先端と秤量容器300の底との距離にする。
次に、制御部410は、同様に、一定時間、秤量容器300に流入する液体の重量を所定の時間ごとに連続して受信し、格納する(第2測定という)。
そして、制御部410は、第1測定による重量と第2測定による重量との差を算出して、揮発量を推定する。
【0026】
具体的には、制御部410は、第1測定において記憶した所定の時間ごとの重量により、所定の時間(測定時間)と重量との関係式(例えば、最小二乗法による直線式)を算出する。同様に、制御部410は、第2測定において記憶した所定の時間ごとの重量により、所定の時間(測定時間)と重量との関係式(例えば、最小二乗法による直線式)を算出する。そして、算出した関係式の差(例えば、直線式の差)から、揮発量を算出する。
【0027】
秤量計400に用いられる電子天秤(図示せず)について、事前に動的検証が行われているものとする。通常電子天秤での測定は静的な測定であるため、校正は分銅による静的校正である。しかし、細管ノズルから流出する液体の揮発量の測定では、基準とする電子天秤の動的な校正が必要となる。特に細管ノズルから流出する液体の揮発量の補正が必要なのは、小流量時の流量計の校正であるため、小流量における電子天秤の動的校正に限定して方法を説明する。
小流量における電子天秤の動的校正は、次の(1)から(4)の手順で行う。
(1)揮発量が無視できる液体で、細管ノズル201による層流流れにより一定流量を作り出す。
(2)電子天秤の静的確認を行う。すなわち、秤量容器300への流入開始前の重量と、ダイバータにより秤量容器300に流入させた後、サンプル時間tにおける重量とを測定し、差からサンプル重量を算出する。
(3)秤量容器300への流入開始後の電子天秤の連続データと読込みタイミング時間とを記録し、結果からサンプル時間t間の重量を確認する。
(4)(2)の値と(3)の値とから電子天秤の動的精度を評価する。(3)の値は、測定値をそのまま使用して重量とする場合と、測定値から最小二乗法により求めた式から求めた値を重量とする場合とがある。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態に係る細管ノズル201の一例を示す図である。例えば、内径φ0.08からφ0.3の管を細管ノズル201として使用することによって、細管ノズル201は、流量が一定の値より小さい小流量であっても連続で流れる層流95を形成することができる。例えば、液体粘度0.00077[Pa・s]の液体を流量0.3L/hの連続流で流す場合、細管内径0.15mm、長さ15mmで前後差圧100kPaで、層流95を実現することができる。このように構成された細管ノズル201によって、定流量性を実現することができる。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態に係る揮発量測定装置10における制御部410のハードウェア構成の一例を示す図である。制御部410は、CPU(Central Processing Unit)1010、バスライン1005、通信I/F1040、メインメモリ1050、BIOS(Basic Input Output System)1060、I/Oコントローラ1070、キーボード/マウス1100、表示器1022及び入出力I/F装置・移動装置コントローラ2000を備える。
【0030】
BIOS1060は、制御部410の起動時にCPU1010が実行するブートプログラムや、制御部410のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0031】
I/Oコントローラ1070には、ハードディスク1074、半導体メモリ1078等の記憶手段を接続することができる。
【0032】
ハードディスク1074は、制御部410が本発明の機能を実行するためのプログラムを記憶しており、さらに、算出した揮発量や、受信した測定値等を記憶し、各種データベースを構成可能である。
【0033】
制御部410に提供されるプログラムは、ハードディスク1074、又はメモリカード等の記録媒体に格納されて提供される。このプログラムは、I/Oコントローラ1070を介して、記録媒体から読み出され、又は通信I/F1040を介してダウンロードされることによって、制御部410にインストールされ実行されてもよい。
【0034】
前述のプログラムは、専用通信回線に接続されたサーバシステムに設けたハードディスク又は光ディスクライブラリ等の記憶装置を記録媒体として使用し、通信回線を介して制御部410に提供されるとしてもよい。
【0035】
ここで、表示器1022は、制御部410による演算処理結果、例えば、算出した揮発量や、受信した測定値等を表示したりするものであり、ブラウン管表示装置、液晶表示装置等のディスプレイ装置を含む。
【0036】
また、通信I/F1040は、制御部410を専用ネットワークを介して端末等と接続できるようにするためのネットワーク・アダプタである。
【0037】
入出力I/F装置・移動装置コントローラ2000は、制御部410と、移動装置301及び秤量計400とを接続するI/F装置と、移動装置301をコントロールする移動装置コントローラとの装置である。制御部410は、入出力I/F装置・移動装置コントローラ2000を介して、移動装置301に移動制御信号を出力し、秤量計400から重量を受信する。
【0038】
図4は、本発明の一実施形態に係る揮発量測定装置10における制御部410の処理内容を示すフローチャートである。
【0039】
ステップS101において、CPU1010は、所定時間ごと(例えば、1秒ごと)に秤量計400から測定値である重量を受信し、受信した重量を格納する。
【0040】
ステップS102において、CPU1010は、一定時間が経過したか否かを判断する。この判断がYESの場合、CPU1010は、処理をステップS103に移し、NOの場合、CPU1010は、処理をステップS101に移す。
【0041】
ステップS103において、CPU1010は、細管ノズル201の先端と秤量容器300の底との相対距離を変更する。より具体的には、CPU1010は、入出力I/F装置・移動装置コントローラ2000を介して移動制御信号を出力して、秤量容器300の位置を変え、細管ノズル201の先端と秤量容器300の底との相対距離を変えて、所定の距離にする。
【0042】
ステップS104において、CPU1010は、所定時間ごと(例えば、1秒ごと)に秤量計400から測定値である重量を受信し、受信した重量を格納する。
【0043】
ステップS105において、CPU1010は、一定時間が経過したか否かを判断する。この判断がYESの場合、CPU1010は、処理をステップS106に移し、NOの場合、CPU1010は、処理をステップS104に移す。
【0044】
ステップS106において、CPU1010は、ステップS101で格納した重量値と、ステップS104で格納した重量値との差を算出する。具体的には、CPU1010は、ステップS101で格納した所定時間ごとの重量により、所定時間と重量との直線式を最小二乗法により算出する。次に、CPU1010は、同様に、ステップS104で格納した所定時間ごとの重量により所定時間と重量との直線式を最小二乗法により算出する。そして、CPU1010は、ステップS101の直線式による重量と、ステップS104の直線式による重量との差から、揮発量を算出する。
【0045】
図5は、本発明の一実施形態に係る揮発量測定装置10における揮発量の測定を示す図である。図5(1)が示すように、揮発量測定装置10は、細管ノズル201の先端を容器底近傍に位置させ、細管ノズル201の先端と秤量容器300の底との距離401を短くして、第1の測定を行う。すなわち、揮発量測定装置10は、細管ノズル201から液体を規定の流量で流し出し、秤量計400で容器に流れ込む液体の重量を連続で測定し、格納する。次に、揮発量測定装置10は、図5(2)が示すように、格納した測定値のディジタル値と読取り時の時間とから、最小二乗法により式(重量W=a×時間t+c)を求める。また、相関係数Rの値から測定結果の直線性を評価する。
【0046】
図6は、本発明の一実施形態に係る揮発量測定装置10における、距離を変えての揮発量の測定を示す図である。図6(1)が示すように、揮発量測定装置10は、図5(1)と異なり細管ノズル201の先端を容器底から所定の位置まで離して位置させ、細管ノズル201の先端と秤量容器300の底との距離401を長くして、第1の測定と同様に第2の測定を行う。すなわち、図5と同様に、揮発量測定装置10は、細管ノズル201から液体を図5と同じ規定の流量で流し出し、秤量計400で容器に流れ込む液体の重量を連続で測定し、格納する。次に、揮発量測定装置10は、図6(2)が示すように、格納した測定値のディジタル値と読取り時の時間とから、最小二乗法により式(重量W=b×時間t+d)を求める。また、相関係数Rの値から測定結果の直線性を評価する。
【0047】
図7は、本発明の一実施形態に係る揮発量測定装置10における、揮発量の推定を示す図である。図5(2)の傾きと、図6(2)の傾きとの差が、細管ノズル201を流出した液体が秤量容器300の底に着くまでに揮発した量402であると推定できる。よって、初期値を同じにすれば、サンプル時間に対する揮発量Vtpは、Vtp=a×t−b×t=(a−b)×t(t:一定時間(サンプル時間))となる。ここで容器に溜まった後の揮発については、図5でも図6でも同じ量なので考慮しなくてよい。ただし、測定値取得の時間に等間隔性がない場合は、時間のずれが無視できる程度の時間でサンプルを行う。また、空の容器から開始した場合、初期段階において、液体が底面を満たすまでの間、空気に接触する液体表面積の増加による揮発が考えられるため、液体を一定量入れて液体表面積が変わらないようにした状態から開始する。
【0048】
本実施形態によれば、揮発量測定装置10は、ノズル200の先に、流量が一定の値より小さい場合に連続で流れる層流95を形成する細管ノズル201と、細管ノズル201の先端と秤量容器300の底との相対的な距離を変更する移動装置301と、移動装置301によって距離の変更を制御する制御部410と、を備える。そして、揮発量測定装置10は、細管ノズル201から秤量容器300に流入する液体の重量を秤量計400によって一定時間、連続して測定する。そして、揮発量測定装置10は、第1の測定を行い、細管ノズル201の先端と秤量容器300の底との相対的な距離を変更し、第2の測定を行い、第1の測定によって測定した重量と、第2の測定によって測定した重量と、の差を算出する。したがって、揮発量測定装置10は、小流量域での液体の揮発量を精度よく測定することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0050】
10 揮発量測定装置
95 層流
200 ノズル
201 細管ノズル
300 秤量容器
301 移動装置
400 秤量計
410 制御部
501 液量調整弁
502 圧力調整弁
504 試験液タンク
505 管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流出するノズルと、前記ノズルから流出する液体を溜める秤量容器と、前記秤量容器に流入した液体の重量を測定する秤量計と、を備え、前記ノズルから流出する液体が前記秤量容器に溜まるまでの揮発量を測定する揮発量測定装置であって、
前記ノズルの先に、流量が一定の値より小さい場合に層流な連続流を形成する細管ノズルと、
前記細管ノズルの先端と前記秤量容器の底との相対的な距離を変更する距離変更手段と、
前記距離変更手段によって前記距離の変更を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記細管ノズルから前記秤量容器に流入する液体の重量を前記秤量計によって測定する測定手段と、
前記測定手段によって第1の測定を行う第1測定手段と、
前記距離を変更し、前記測定手段によって第2の測定を行う第2測定手段と、
前記第1測定手段によって測定した重量と、前記第2測定手段によって測定した重量と、の差を算出する算出手段と、をさらに備える、
揮発量測定装置。
【請求項2】
液体が流出するノズルと、前記ノズルから流出する液体を溜める秤量容器と、前記秤量容器に流入した液体の重量を測定する秤量計と、を備え、前記ノズルから流出する液体が前記秤量容器に溜まるまでの揮発量を測定する揮発量測定装置が実行する方法であって、
前記揮発量測定装置は、
前記ノズルの先に、流量が一定の値より小さい場合に層流な連続流を形成する細管ノズルと、
前記細管ノズルの先端と前記秤量容器の底との相対的な距離を変更する距離変更手段と、
前記距離変更手段によって前記距離の変更を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記細管ノズルから前記秤量容器に流入する液体の重量を前記秤量計によって測定する測定手段を有し、
前記方法は、
前記制御手段が、前記測定手段によって測定する第1測定ステップと、
前記制御手段が、前記距離を変更する変更ステップと、
前記制御手段が、前記測定手段によって測定する第2測定ステップと、
前記制御手段が、前記第1測定ステップによって測定した重量と、前記第2測定ステップによって測定した重量と、の差を算出する算出ステップと、を備える、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−145340(P2012−145340A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1540(P2011−1540)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)