説明

揺動玩具

【課題】揺動体の基台への組付けが容易で且つ回転抵抗をも低減することができる揺動玩具を提供すること。
【解決手段】基台と、前記基台によって水平に支持され少なくとも支持される部分が丸棒状の軸と、前記軸に固定され前記基台に対して当該軸を中心に揺動可能な揺動体と、を備える揺動玩具であって、前記基台には、弾性変形可能な丸棒状の2つの弾性線材と、当該2つの弾性線材の両端部を中間部が下方に撓むことを許容するよう支持する線材支持部とが設けられ、前記弾性線材は、前記軸に直交する方向に延在し、前記中間部に載置された当該軸の軸方向に離れた2つの部分を下方から支持し、当該中間部は前記揺動体の荷重によって曲げ作用を受けて弾性変形して下方に撓むように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、揺動体を軸により基台に取り付けて当該軸の軸線を中心に所定の角度範囲で往復回転自在に構成し、揺動体における軸から離れた部分に永久磁石を設置するとともに、基台に電磁コイルを設置し、当該電磁コイルに流れる電流を制御することによって当該電磁コイルと永久磁石との間に磁力を作用させることによって、揺動体を基台に対して揺動させるようにした揺動玩具が知られている(例えば、特許文献1)。
この揺動玩具においては、軸は断面が方形であり、トーションばねによって支持されている。軸は、角部(軸外周の隣設する2つの面で形成される稜線)がトーションばねの腕(断面円形)に点接触している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−152514号公報(図2乃至図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1の揺動玩具において、揺動体は、静止状態(中立状態)にあるときに、軸の角部とトーションばねの腕とは点接触し、揺動体が揺動した際に、軸の角部とトーションばねの腕とは点接触状態を保ちながら揺動体が揺動する。このように、軸の角部とトーションばねとは点接触しながら揺動体が揺動することになるので、軸の回転抵抗を可及的に小さくすることが可能である。
しかし、そのためには、揺動体の重心位置を割り出し、軸の角部が所定の方向(下方向)を向くように当該軸を揺動体に取り付ける必要があるとともに、当該軸の両端部をトーションばねで支持する場合には、2つのトーションばねの腕の延在方向や高さを合致させなければならない。
また、軸に角部を設ける場合、角部の形状の良し悪しで揺動のバランスが悪くなるなど、製造誤差の影響を受けやすい。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、揺動体の基台への組付けが容易で且つ回転抵抗をも低減することができる揺動玩具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、
基台と、前記基台によって水平に支持され少なくとも支持される部分が丸棒状の軸と、前記軸に固定され前記基台に対して当該軸を中心に揺動可能な揺動体と、を備える揺動玩具であって、
前記基台には、弾性変形可能な丸棒状の2つの弾性線材と、当該2つの弾性線材の両端部を中間部が下方に撓むことを許容するよう支持する線材支持部とが設けられ、
前記弾性線材は、前記軸に直交する方向に延在し、前記中間部に載置された当該軸の軸方向に離れた2つの部分を下方から支持し、当該中間部は前記揺動体の荷重によって曲げ作用を受けて弾性変形して下方に撓むように構成されている、
ことを特徴とする揺動玩具である。
ここで、「軸」は少なくとも支持される部分が丸棒状すなわち断面が円形であればよい。他の部分は断面が方形であってもよい。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の揺動玩具において、前記軸は、断面が軸方向全体に亘って円形の丸棒となっている。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2の揺動玩具において、前記基台には、前記軸の軸方向に離れた2つの部分の幅方向両側に、それぞれ、当該軸の幅寸法よりも大きな間隔を保ち当該軸を間に互いに対峙する一対の第1のストッパが設けられ、前記一対の第1のストッパは、前記軸の外周との接触によって当該軸を係止して当該軸の幅方向の移動範囲を規制するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3の揺動玩具において、前記一対の第1のストッパは、前記軸の外周との点接触によって当該軸を係止して当該軸の幅方向の移動範囲を規制することを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項3または4の揺動玩具において、前記基台には、前記軸の軸方向に離れた2つの部分の幅方向両側に、それぞれ、前記一対の第1のストッパに連設され前記軸の上方に位置する第2のストッパが設けられ、前記第2のストッパは当該軸の外周との接触によって当該軸を係止して当該軸の上方への移動範囲を規制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の揺動玩具によれば、2つの弾性線材に軸を介して揺動体の荷重が作用したとき、2つの弾性線材の中間部が撓み、静止状態ではその撓んだ部分に軸が自動的に保持され、そこが揺動中心となるので、揺動体の基台への組付け(取付け)が容易である。また、請求項1の揺動玩具によれば、揺動体が揺動すると、軸が弾性線材上を点接触状態または線接触状態で転動するので、転がり抵抗ひいては軸の回転抵抗を小さくすることができる。
また、少なくとも軸の支持される部分が丸棒状となっているため、揺動のバランスが製造誤差の影響を受けにくい。
【0012】
請求項2の揺動玩具によれば、軸の断面が軸方向全体に亘って円形となっているので、断面が方形の軸に比べて、その製造や取扱いが容易である。
【0013】
請求項3の揺動玩具によれば、軸が幅方向に移動した際に第1のストッパによって係止されるので、その規制範囲を適切に選択することで、揺動体を安定的に揺動させることができる。
【0014】
請求項4の揺動玩具によれば、第1のストッパは軸の外周との点接触によって当該軸を係止するので、係止した状態での回転抵抗を小さくすることができる。
【0015】
請求項5の揺動玩具によれば、軸が上方向に移動した際に第2のストッパによって係止されるので、軸の脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る揺動玩具の一実施形態を概念的に示した斜視図であり、前枠を透明に描いて示している。
【図2】図1に示した揺動玩具を分解して示した斜視図である。
【図3】図1に示した揺動玩具の側方から見た場合の縦断面図である。
【図4】図1に示した揺動玩具の軸受構造体の一部を切り欠いて示す平面図である。
【図5】図1に示した揺動玩具の動作を示した模式図である。
【図6】図1に示した揺動玩具における回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る揺動玩具を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
揺動玩具1は、図1に示すように、揺動体10と、この揺動体10を揺動可能に支持する基台30とを備えている。
【0019】
揺動体10は卵型の枠体を備える。この揺動体10の枠体は、図2に示すように、前枠10aおよび後枠10bによって構成されている。前枠10aおよび後枠10bの各々の開口縁下端部には同一形状の切欠き11a,11bが対向して形成されている(図3参照)。前枠10aの内側両脇には4つのボス12aが設けられ、各ボス12aには雌ねじ13aが形成されている。後枠10bの内側両脇には4つのボス12bが設けられ、各ボス12bにはねじ挿通孔13bが形成されている。そして、各ねじ挿通孔13bには後枠10bの外側から雄ねじ14(図2には2本だけ示されている。)が挿入され、その雄ねじ14が前枠10aの雌ねじ13aに螺合されることによって、前枠10aと後枠10bとが合体されている。なお、前枠10aと後枠10bとが合体した際には、切欠き11a,11bが合わさって長孔11が形成される。
【0020】
前枠10aの内側中央には、軸穴16aが形成されたボス15aが設けられている。また、後枠10bの内側中央には、軸穴16bが形成されたボス15bが設けられている。このボス15aの軸穴16aには軸17の前端部が嵌合され、ボス15bの軸穴16bには軸17の後端部が嵌合される。これによって、軸17は揺動体10に固定される。なお、軸17は金属製で断面円形に形成されている。ただし、軸17は軸方向全体に亘って断面が円形である必要はなく、軸17が支持される部分だけが断面円形であってもよい。
【0021】
後枠10bの外側上部には、図3に示すように、後枠10bの内方に向けて窪んだ矩形状の窓18が形成されている。窓18は横長に形成されている。窓18の内側の開口は、窓枠の内端に取り付けられた回路基板21によって塞がれている。回路基板21にはソーラパネル20や、コイル駆動回路40(図5参照)の回路部品22が取り付けられている。また、窓18の外側の開口は、透明板23によって塞がれている。
【0022】
後枠10bの内側下部には、電磁石を構成する電磁コイル24が配置されている。電磁コイル24は、前面板25aとこの前面板25aを支持する2つの側面板25bとによって構成されるブラケット25の前面に、その円形端面の一方が前枠10aに向くように取り付けられている。この電磁コイル24は、導線26によって配線基板21に接続されている。
【0023】
さらに、後枠10bの内側下部には、電磁コイル24の後方にバランサー(重り)27が設置されている。すなわち、ブラケット25と後枠10bの内面とに囲まれた領域にはポケットが形成されており、このポケットにはバランサー27が設置されている。バランサー27には軸27bが付設されている。この軸27bは、後枠10bの外面に形成された凹部28の底壁を貫通している。軸27bの頭部は凹部28内に位置している。軸27bの頭部は他の部分より径が大きくなっている。この頭部には、ドライバー等によって操作される操作部27cが形成されている。
このバランサー27は、操作部27cを操作することによって揺動体10の重心位置を変更させる働きをする。また、バランサー27は、揺動体10の上下の重さバランスを取り、揺動体10の揺れを遅くする働きをする。
【0024】
基台30は、図2に示すように、円板状の台座部30aと、この台座部30aの上面中央に立設された支柱30bと、この支柱30bの上端に設けられた軸受構造体30cとによって構成されている。支柱30bの後面には、永久磁石31が取り付けられている。この永久磁石31と電磁コイル24の位置関係は、揺動体10が静止状態にあるときに、永久磁石31の中心と電磁コイル24の中心とが揺動方向に少しずれていることが好ましい。これは、初期に小さな電力で揺動体10を揺動させるためである。
【0025】
軸受構造体30cは、2つの線材支持部32と、2つの弾性線材33と、カバー34とによって構成されている。
2つの線材支持部32は支柱30bの上に固定されている。2つの線材支持部32は所定の隙間を保って互いに平行に延在している。2つの線材支持部32の間には、前後に、金属線材からなる断面円形の弾性線材33が掛け渡されている。各弾性線材33は、2つの線材支持部32に載せられているだけである。この前後の弾性線材32には軸17が載せられる。
なお、各線材支持部32の前端部および後端部には、横断面が鉤型の壁(ストッパ)32aが立設されている。この壁32aは、弾性線材33の線材支持部32からの脱落を防止する働きをする。
カバー34は、図4に示すように、2つの線材支持部32の間で支柱30bに固定されている。カバー34は、軸17の幅寸法よりも大きな隙間を保って対峙する2つの側板34aと、2つの側板34の前後に設けられ2つの側板34aを連結させる前板34bおよび後板34cとから構成されている。前板34bおよび後板34cには軸17を受容する切欠き37が形成され、切欠き37を区画する縁によって軸17を上方および側方の3方から取り囲むことができるようになっている。切欠き37を区画する縁のうち軸17の側方に位置する2つの縁の間の隙間は軸17の幅寸法よりも大きく設定されている。また、この2つの縁は、横断面で見た場合、軸17が切欠き37内で水平方向に移動した際に点接触するように切欠き37の内方に向けて山形状となっている。
このカバー34は、切欠き37を区画する縁がストッパとしての機能を有し、前後の弾性線材33に載せられる軸17の脱落を防止するとともに、軸17の幅方向および上方向の移動範囲を規制する働きをする。
【0026】
続いて、基台30に揺動体10を取り付ける場合の順序を説明する。
まず、2つの線材支持部32の前後に弾性線材33を載せる。軸17をカバー34の切欠き34dに挿入し、前後の弾性線材33の上に載せる。軸17の前端部と前枠10aの軸穴16aとを嵌合させるとともに、軸17の後端部と後枠10bの軸穴16bとを嵌合させる。この状態で、後枠10bの外側からねじ挿通孔13bに雄ねじ14を挿入し、その雄ねじ14を前枠10aの雌ねじ13aに螺合させる。これによって、前枠10aと後枠10bとが合体し、基台30に揺動体10が取り付けられることになる。
【0027】
このようにして基台30へ揺動体10を取り付けた場合、図5に示すように、揺動体10による荷重によって軸17を支持する弾性線材33は曲げ作用を受けて中間部が撓んだ状態で支持される。そして、揺動体10が揺動すると、揺動体10の揺動方向に対応した方向に軸17が弾性線材33の上で転動する。この際に、弾性線材33の最大撓みが生じる部分も軸17の転動方向に移動することになる。
このように、弾性線材33の最大撓みを生じる部分は揺動体10が一方向に揺動した際に軸17の転動方向に一時的に移動するが、弾性線材33には常に中心位置で最大撓みとなるように復帰する力が働くため、軸17は当該復帰する力によって中心方向に転動しようとし、揺動体10の前記一方向とは逆の方向への揺動もスムースに行える。また、揺動体10の揺動が停止した場合も軸17は常に弾性線材33の中心位置(最大撓みの位置)で安定する。
【0028】
図6は揺動玩具1の制御構成を示している。同図において符号40で指示するものはコイル駆動回路40である。コイル駆動回路40はIC(集積回路)を備えている。このコイル駆動回路40はソーラバッテリ42を電源とし、電磁コイル24の通電を制御する。これによって、電磁コイル24と一体である揺動体10が左右に揺動されることになる。
【0029】
以上のように構成された揺動玩具1は次のような効果を奏する。
2つの弾性線材33に軸17を介して揺動体10の荷重が作用したとき、2つの弾性線材33の中間部が撓み、静止状態ではその撓んだ部分に軸17が保持され、その保持位置が揺動中心となる。このように、実施形態の揺動玩具1によれば、揺動体10を基台30に取り付けるだけで、自動的に揺動中心位置が定まるので、揺動体10の基台30への取付けが簡単に行えることになる。弾性線材33が当初に多少湾曲していたとしても同じである。
また、揺動体10が揺動したときには、軸17は弾性線材33の上を点接触状態または線接触状態で転動するので、転がり抵抗が小さくなり、小さい電力でも円滑に揺動を行うことができる。
【符号の説明】
【0030】
1 揺動玩具
10 揺動体
10a 前枠
10b 後枠
11 基台
11c 軸受構造体
24 電磁コイル
27 バランサー
30 基台
31 永久磁石
32 線材支持部
33 弾性線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記基台によって水平に支持され少なくとも支持される部分が丸棒状の軸と、前記軸に固定され前記基台に対して当該軸を中心に揺動可能な揺動体と、を備える揺動玩具であって、
前記基台には、弾性変形可能な丸棒状の2つの弾性線材と、当該2つの弾性線材の両端部を中間部が下方に撓むことを許容するよう支持する線材支持部とが設けられ、
前記弾性線材は、前記軸に直交する方向に延在し、前記中間部に載置された当該軸の軸方向に離れた2つの部分を下方から支持し、当該中間部は前記揺動体の荷重によって曲げ作用を受けて弾性変形して下方に撓むように構成されている、
ことを特徴とする揺動玩具。
【請求項2】
前記軸は、断面が軸方向全体に亘って円形の丸棒となっていることを特徴とする請求項1に記載の揺動玩具。
【請求項3】
前記基台には、前記軸の軸方向に離れた2つの部分の幅方向両側に、それぞれ、当該軸の幅寸法よりも大きな間隔を保ち当該軸を間に互いに対峙する一対の第1のストッパが設けられ、
前記一対の第1のストッパは、前記軸の外周との接触によって当該軸を係止して当該軸の幅方向の移動範囲を規制するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の揺動玩具。
【請求項4】
前記一対の第1のストッパは、前記軸の外周との点接触によって当該軸を係止して当該軸の幅方向の移動範囲を規制することを特徴とする請求項3に記載の揺動玩具。
【請求項5】
前記基台には、前記軸の軸方向に離れた2つの部分の幅方向両側に、それぞれ、前記一対の第1のストッパに連設され前記軸の上方に位置する第2のストッパが設けられ、前記第2のストッパは当該軸の外周との接触によって当該軸を係止して当該軸の上方への移動範囲を規制することを特徴とする請求項3または4に記載の揺動玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−10815(P2011−10815A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156827(P2009−156827)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000003584)株式会社タカラトミー (248)
【Fターム(参考)】