説明

揺動装置、フィン振分装置、フィン整列装置、および熱交換器の製造方法

【課題】 揺動装置の摩耗を抑えることのできるフィン整列装置を提供する。
【解決手段】 回転ドラム21のカム部がカムレール26によって設けられる。カムレール26の波打変位を追従部材に伝える手段として、追従部材は、カムレール26を挟み込む第1、第2カムフォロア34、35を備える。回転ドラム21の回転に伴ってカム勾配が逆転しても、第1、第2カムフォロア34、35は常に一方向のみに回転し、第1、第2カムフォロア34、35に回転の逆転が生じない。これにより、回転の逆転に伴う摩耗を抑えることができ、首振部のガタツキを抑えることができる。この結果、フィン振分装置から治具スライド装置へのコルゲートフィンの受け渡し部分のズレの発生が防がれ、熱交換器の生産性の低下を防ぐことができるとともに、メンテナンス間隔を広げることができ、熱交換器の生産性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動装置に関するとともに、この揺動装置を用いたフィン振分装置、フィン整列装置および熱交換器(フィンとチューブを交互に積層してなる例えば冷媒凝縮器、冷媒蒸発器、ラジエータ、ヒータコア、オイルクーラ、インタークーラ等の熱交換器)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の一例を、特許文献1、2を参照して説明する。
特許文献1は、熱交換器の製造方法に用いられるフィン整列装置に関る技術を開示するものであり、このフィン整列装置は、フィン製造装置で製造された熱交換用フィンが供給される搬送部と、搬送部からフィンを受け取り、受け取ったフィンを首振搬送するフィン振分装置と、このフィン振分装置からフィンを順次受け取り、受け取った複数のフィンを隙間を隔てて平行に整列させる治具スライド装置とを備える。
【0003】
フィン振分装置は、搬送部からフィンを受け取る首振溝を有する首振部と、この首振部における搬送部に近い側を回動自在に支持するシャフトと、首振部における治具スライド装置に近い側を揺動させる揺動装置とを備え、この揺動装置の作動によって首振部が首振動作を行なうものである。
揺動装置の従来技術として、特許文献2に開示される技術が知られている。特許文献2に開示される揺動装置の概略を図1(a)を参照して説明する。
【0004】
従来技術の揺動装置は、回転駆動される回転ドラムJ1と、この回転ドラムJ1に環状に形成されたカム溝J2(従来技術におけるカム部)内に挿入されるカムフォロアJ3を備える追従部材とを具備する。そして、カムフォロアJ3がカム溝J2におけるカム勾配の変化に追従することで、追従部材が揺動変位するものである。
なお、カムフォロアJ3は、追従部材によって回転自在に支持されるものであり、カムフォロアJ3がカム溝J2の溝側面におけるカム勾配に接触して回転することで、接触部分の接触抵抗の低減が図られている。
【0005】
ここで、回転ドラムJ1の回転に伴ってカム溝J2が1回転すると、カム溝J2におけるカム勾配の方向(傾き方向)が少なくとも1回以上逆転する。ここで、カムフォロアJ3は、図1(b)に示すように、カム溝J2の溝側面と接触して回転するものであるため、カム勾配が逆転すると、カムフォロアJ3とカム溝J2の接触部αがカム溝J2の一方の溝側面βから、他方の溝側面γへと切り替わる。この結果、カム勾配が逆転する部位において、カムフォロアJ3の回転方向が瞬時に切り替わる。
なお、図1(b)はカムフォロアJ3の回転方向が切り替わることを説明するための図であり、実際にはカムフォロアJ3が回転ドラムJ1の回転方向(図中、左右方向)に移動するものではない。
【0006】
カムフォロアJ3の回転方向が切り替わるには、カムフォロアJ3の回転を停止させるエネルギーと、カムフォロアJ3に対して逆方向の回転力を与えるためのエネルギーとが必要となる。これらのエネルギーは、カム溝J2から接触部αを介してカムフォロアJ3に与えられるものであるため、カム勾配が逆転する部位Zにおいて、カム溝J2とカムフォロアJ3の摩擦が大きくなる。この結果、カム勾配が逆転する部位Zにおいて、カム溝J2とカムフォロアJ3に摩耗が生じる。
そして、カム溝J2とカムフォロアJ3に摩耗が生じると、カム溝J2とカムフォロアJ3のガタツキ量が増大し、揺動装置の揺動精度が低下する。
【0007】
具体的に、揺動装置の揺動精度が低下すると、フィン振分装置から治具スライド装置へのフィンの受け渡し部分にズレが生じて、フィン振分装置から治具スライド装置へのフィンの受け渡し部分でフィンの引っ掛かりが生じ、熱交換器の生産性が損なわれる可能性がある。
また、カム溝J2とカムフォロアJ3が摩耗することでメンテナンスコストが上昇するとともに、カム溝J2が摩耗した回転ドラムJ1またはカムフォロアJ3の交換作業の間、熱交換器の製造が中断されて熱交換器の生産性が損なわれる。
【特許文献1】特開2007−112556号公報
【特許文献2】特開平11−314198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転ドラムにおけるカム部と、このカム部に接触して回転するカムフォロアとの摩耗を抑えることのできる揺動装置、フィン振分装置、フィン整列装置、および熱交換器の製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[請求項1の手段]
請求項1の手段を採用する揺動装置(11)は、回転ドラム(21)のカム部(26)が、周方向に伸びて環状に連続するレール状のカムレール(26)によって設けられる。一方、カムレール(26)に追従して変位する追従部材(23)は、カムレール(26)を挟み込む第1、第2カムフォロア(34、35)を備える。
この構成により、第1カムフォロア(34)はカムレール(26)の一方の側面のみと接触し、第2カムフォロア(35)はカムレール(26)の他方の側面のみと接触する。このため、カムレール(26)の回転に伴ってカム勾配が逆転しても、第1、第2カムフォロア(34、35)には回転方向の逆転が発生せず、常に一方向のみに回転する。
このように、第1、第2カムフォロア(34、35)の回転方向が逆転しないため、摩耗の発生を抑えることができる。その結果、長期にわたって追従部材(23)の揺動(首振り動作を含む)のガタツキの発生を抑えることができる。
【0010】
[請求項2の手段]
請求項2の手段を採用するフィン振分装置(4)の揺動装置(11)は、上記請求項1の手段を採用する。
このため、揺動装置(11)によって駆動される首振部(3)のガタツキの発生が抑えられ、長期にわたり首振部(3)の首振り精度を高めることができる。
【0011】
[請求項3の手段]
請求項3の手段を採用するフィン整列装置の揺動装置(11)は、上記請求項2の手段と同様、上記請求項1の手段を採用する。
このため、揺動装置(11)によって駆動される首振部(3)のガタツキの発生が抑えられ、長期にわたり首振部(3)の首振り精度を高めることができる。
これによって、フィン振分装置(4)から治具スライド装置(6)へのフィン(1)の受け渡し部分のズレの発生が防がれ、フィン振分装置(4)から治具スライド装置(6)へのフィン(1)の受け渡し部分でのフィン(1)の引っ掛かりを抑えることができ、熱交換器の生産性の低下を防ぐことができる。
また、フィン整列装置における揺動装置(11)のメンテナンス間隔を広げることができるため、メンテナンスコストを抑えることができるとともに、メンテナンスによって熱交換器の製造が中断される頻度も下がり、熱交換器の生産性を向上することができる。
【0012】
[請求項4の手段]
請求項4の手段を採用する熱交換器の製造方法は、上記請求項2のフィン振分装置(4)または請求項3のフィン整列装置によって振り分けられる複数のフィン(1)を隙間を隔てて平行に整列させ、整列した各フィン(1)を、隙間を隔てて平行に整列させた複数のチューブの間に挟んで熱交換器を製造するものである。
この熱交換器の製造方法は、上述したように摩耗が抑えられる揺動装置(11)を用いて製造されるものであるため、熱交換器の生産性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
最良の形態1として、揺動装置(11)を搭載したフィン整列装置を示す。
このフィン整列装置は、熱交換器の製造工程で用いられるものであり、フィン製造装置で製造された熱交換用フィン(1)が供給される搬送部(2)と、この搬送部(2)からフィン(1)を受け取り、受け取ったフィン(1)を首振搬送するフィン振分装置(4)と、このフィン振分装置(4)からフィン(1)を順次受け取り、受け取った複数のフィン(1)を隙間を隔てて平行に整列させる治具スライド装置(6)とを備える。
【0014】
フィン振分装置(4)は、搬送部(2)からフィン(1)を受け取る首振溝(8)を有する首振部(3)と、この首振部(3)における搬送部(2)に近い側を回動自在に支持する回動シャフト(9)と、首振部(3)における治具スライド装置(6)に近い側を揺動させる揺動装置(11)とを備え、この揺動装置(11)の作動によって首振部(3)が首振動作を行なうものである。
揺動装置(11)は、電動モータ(22)によって回転駆動され、回転軸方向に変化するカム勾配が設けられた環状のカム部(26)を有する回転ドラム(21)と、この回転ドラム(21)の回転に伴うカム部(26)の変位に追従して揺動する追従部材(23)とを備える。
【0015】
カム部(26)は、周方向に伸びて環状に連続するレール状のカムレール(26)によって設けられる。
一方、追従部材(23)は、カムレール(26)における軸方向の一方の面に接触して回転可能な第1カムフォロア(34)と、カムレール(26)における軸方向の他方の面に接触して回転可能な第2カムフォロア(35)とを備え、第1、第2カムフォロア(34、35)がカムレール(26)を挟み込んで設けられる。
これにより、カムレール(26)の回転に伴ってカム勾配が逆転しても、第1、第2カムフォロア(34、35)は常に一方向のみに回転し、摩耗の発生が抑えられる。その結果、長期にわたって首振部(3)の首振り精度が高められ、熱交換器の生産性を向上できる。
【0016】
治具スライド装置(6)は、複数のフィン(1)を隙間を隔てて平行に整列させる複数のパレット溝(12)を有するパレット(5)と、パレット溝(12)と直交する方向にパレット(5)をスライドさせるパレット駆動部(13)とを備え、このパレット駆動部(13)の作動によりパレット(5)をパレット溝(12)と直交する方向にスライド駆動させ、首振溝(8)とパレット溝(12)のいずれかとを順次一致させて、首振溝(8)から順次搬送されるフィン(1)を、各パレット溝(12)に順次案内して、パレット(5)上において複数のフィン(1)を隙間を隔てて平行に整列させる動作を行なうものである。
そして、パレット(5)上において隙間を隔てて平行に整列されたフィン(1)は、隙間を隔てて平行に整列させた複数のチューブの間に挟まれて熱交換器が製造される。
【実施例1】
【0017】
積層型熱交換器の製造方法に用いられるフィン整列装置にフィン振分装置を用い、そのフィン振分装置の揺動装置に本発明を適用した実施例1を、図1〜図5を参照して説明する。
積層型熱交換器は、偏平なチューブとコルゲートフィン1(所定形状、所定長さに設けられた熱交換用フィンの一例)とを交互に積層し、各チューブの端部にタンクを組付け、その状態で一体ろう付けして製造される。この積層型熱交換器の製造工程は、隙間を隔てて平行に整列させた複数のチューブの各間に、隙間を隔てて平行に整列させたコルゲートフィン1を挿入するフィン挿入工程を備える。
【0018】
このフィン挿入工程を実施するために、複数のコルゲートフィン1を隙間を隔てて平行に整列させるフィン整列装置が用いられる。
(フィン整列装置の説明)
フィン整列装置は、図4、図5に示すように、(a)フィン製造装置で製造されたコルゲートフィン1が供給される搬送部2と、(b)この搬送部2からコルゲートフィン1を受け取り、受け取ったコルゲートフィン1を首振搬送する首振部3を備えたフィン振分装置4と、(c)このフィン振分装置4からコルゲートフィン1を順次受け取り、受け取った複数のコルゲートフィン1を隙間を隔てて平行に整列させるパレット5を備えた治具スライド装置6とで構成される。
【0019】
(搬送部2の説明)
搬送部2は、固定支持されるものであり、フィン製造装置からコルゲートフィン1の供給を受ける搬送溝7が形成されている。この搬送溝7は、溝開口(溝を成す凹部の開口部)が上向きで、水平方向に延びる溝であり、少なくとも搬送溝7における首振部3に近い側は、搬送されたコルゲートフィン1を首振部3にスムーズに導くために直線状に設けられている。
なお、以下では、搬送溝7における首振部3に近い側の直線方向をX軸方向と称し、このX軸に対して垂直な水平方向をY軸方向と称して説明する(図4中の矢印参照)。
【0020】
(フィン振分装置4の説明)
フィン振分装置4は、(d)搬送部2からコルゲートフィン1の供給を受ける首振溝8が形成された首振部3と、(e)搬送溝7に近い側(図5の点A参照)において首振部3を回動自在に支持する回動シャフト9と、(f)首振部3におけるパレット5に近い側(図5の矢印B−C方向参照)を揺動駆動する揺動装置11とで構成される。
【0021】
首振溝8は、溝開口が上向きで、水平方向に直線状に延びて設けられており、首振溝8の溝底面が上述した搬送溝7の溝底面と同じ高さに設けられている。また、首振溝8の揺動中心は、X軸方向に一致するように設けられている。
搬送部2に近い側の首振溝8は、首振部3が揺動装置11に揺動駆動される状態であっても、搬送溝7と常に接続して搬送溝7から搬送されるコルゲートフィン1を常に首振溝8内に案内するように設けられている。
回動シャフト9は、天地方向に延びて、首振部3を水平方向に回動自在に支持する支持軸であり、パレット5に近い側が水平方向に回動可能に支持される。
なお、揺動装置11の詳細については後述する。
【0022】
(治具スライド装置6の説明)
治具スライド装置6は、(g)複数のコルゲートフィン1を平行に整列保持する複数のパレット溝12を備えたパレット5と、(h)このパレット5をY軸方向(図5の矢印D方向およびE方向参照)にスライド駆動するパレット駆動部13とで構成される。
【0023】
パレット5は、上方から見て矩形形状を呈するものであり、パレット5の上面には、搬送部2から首振部3を介して搬送されるコルゲートフィン1を順次受け取り、受け取った複数のコルゲートフィン1を隙間を隔てて平行に整列させる複数のパレット溝12が設けられている。このパレット溝12は、溝開口が上向きで、X軸方向に沿って直線状に延びるものであり、パレット溝12の溝底面が上述した首振溝8の溝底面と同じ高さに設けられている。
各パレット溝12の間隔(パレット溝12とパレット溝12の間のY軸方向の距離)は、製造される熱交換器のチューブ幅(コルゲートフィン1とコルゲートフィン1の間に挟まれるチューブの幅)に略一致する。
【0024】
パレット駆動部13は、上述したようにパレット5をY軸方向にスライド駆動するものである。具体的な一例を示すと、パレット駆動部13は、通電制御により、回転方向および回転量のコントロールが行なわれるサーボモータと、このサーボモータにより駆動されるギヤ装置(ボールギヤ等)とからなり、サーボモータの回転方向および回転量をコントロールすることでギヤ装置を介してパレット5のY軸方向の位置が制御される。
【0025】
(フィン整列装置の制御装置)
フィン整列装置は、積層型熱交換器の各製造工程を制御するコントロール盤(制御装置)により作動が制御される。
ここで、フィン整列装置には、フィン製造装置で製造されたコルゲートフィン1を、搬送溝7、首振溝8、パレット溝12の順に移動させるフィン搬送用のエア装置(図示しない)が設けられている。そして、コントロール盤は、エア装置、揺動装置11、パレット駆動部13の作動制御を行なう。
【0026】
コントロール盤は、周知のコンピュータを用いたものであり、記憶装置に記憶された制御プログラムと、コルゲートフィン1の搬送位置を検出するフィンセンサ等の各種センサ信号とに基づき、エア装置、揺動装置11、パレット駆動部13の作動制御を行なう。
コントロール盤は、首振部3を首振動作させながら、この首振動作に同期してパレット5もスライド変位させて、首振溝8からパレット溝12のいずれかへコルゲートフィン1の搬送を行なうものである。
また、コントロール盤は、パレット5にコルゲートフィン1を整列させる際、Y軸方向の一方側よりパレット溝12にコルゲートフィン1を整列供給させる。このとき、溝配列の一列飛びにコルゲートフィン1を供給する。そして、最終溝で反転し、コルゲートフィン1の未挿入のパレット溝12にコルゲートフィン1を一列飛びに供給するように設けられている。
【0027】
上記の整列制御例を具体的に説明する。
この実施例では説明の便宜上、パレット5に設けられるパレット溝12の数を10本とする(この溝数は実施例の説明のための数であって限定されるものではないことは言うまでもない)。
また、実施例におけるフィン整列装置では、2つの治具スライド装置6が用いられている。そして、一方の治具スライド装置6において複数のコルゲートフィン1の整列を行なう間に、他方の治具スライド装置6では平行に整列させたコルゲートフィン1を、隙間を隔てて平行に整列させた複数のチューブの各間に挿入するフィン挿入工程を実施するように設けられている。
【0028】
ここで、図5の上側のパレット5を第1のパレット5、図5の下側のパレット5を第2のパレット5と称して説明する。
また、第1のパレット5のパレット溝12を、図5の下側から上側に向かって第1溝〜第10溝と称す。
さらに、第2のパレット5のパレット溝12を、図5の上側から下側に向かって第11溝〜第20溝と称す。
【0029】
コントロール盤は、第1のパレット5にコルゲートフィン1の整列を行う動作と、第2のパレット5にコルゲートフィン1の整列を行う動作とを交互に繰り返す。
そして、コントロール盤は、第1のパレット5にコルゲートフィン1を整列させる際、コルゲートフィン1を第2溝→第4溝→第6溝→第8溝→第10溝→第9溝→第7溝→第5溝→第3溝→第1溝の順で整列させる。
また、コントロール盤は、第2のパレット5にコルゲートフィン1を整列させる際、コルゲートフィン1を第12溝→第14溝→第16溝→第18溝→第20溝→第19溝→第17溝→第15溝→第13溝→第11溝の順で整列させるものである。
【0030】
具体的にパレット5の各パレット溝12にコルゲートフィン1を整列させる例を説明する。
コントロール盤は、パレット溝12にコルゲートフィン1を搬送する際、揺動装置11とパレット駆動部13を制御して、首振溝8と、これからコルゲートフィン1を搬送するフィン搬送対象のパレット溝12とを一致させる。即ち、例えば第1溝にコルゲートフィン1を搬送する際は、首振溝8と第1溝とを一致させる。
次に、エア装置を制御してコルゲートフィン1をフィン搬送対象のパレット溝12へ搬送する。
【0031】
この時、フィン搬送対象のパレット溝12にコルゲートフィン1の搬送が完了するまでに、首振部3を次回のフィン搬送に備えて、予め一方の回動端に回動させる次期予備動作を実施する。
具体的に、次のフィン搬送対象のパレット溝12が図5の上側にある場合は、首振部3を図5の下側の回動端に回動させる。逆に、次のフィン搬送対象のパレット溝12が図5の下側にある場合は、首振部3を図5の上側の回動端に回動させる。
なお、この次期予備動作の実施中は、首振溝8と、フィン搬送対象のパレット溝12との一致が保たれるようにパレット駆動部13が制御されるものである。
【0032】
フィン搬送対象のパレット溝12にコルゲートフィン1の搬送が完了すると、コントロール盤は、揺動装置11とパレット駆動部13を同時に作動させて、首振溝8と、次にコルゲートフィン1を搬送するフィン搬送対象のパレット溝12とを一致させる。
具体的に、次のフィン搬送対象のパレット溝12が図5の上側にある場合は、首振部3を図5の上側に向けて回動させるとともに、パレット5を図5の下側に向けてスライドさせて、首振溝8と、次のフィン搬送対象のパレット溝12とを素早く一致させる。逆に、次のフィン搬送対象のパレット溝12が図5の下側にある場合は、首振部3を図5の下側に向けて回動させるとともに、パレット5を図5の上側に向けてスライドさせて、首振溝8と、次のフィン搬送対象のパレット溝12とを素早く一致させる。
【0033】
首振溝8と、次のフィン搬送対象のパレット溝12とが一致したら、エア装置を制御してコルゲートフィン1をフィン搬送対象のパレット溝12へ搬送し、上記を繰り返して各パレット溝12に順次コルゲートフィン1を搬送し、パレット5に複数のコルゲートフィン1を整列させる。
このようにして、第1のパレット5におけるコルゲートフィン1の整列と、第2のパレット5におけるコルゲートフィン1の整列とを交互に行なう。
そして、第1のパレット5において複数のコルゲートフィン1の整列を行なう間に、第2のパレット5で整列させたコルゲートフィン1を複数のチューブの各間に挿入し、第2のパレット5において複数のコルゲートフィン1の整列を行なう間に、第1のパレット5で整列させたコルゲートフィン1を複数のチューブの各間に挿入する。
【0034】
上述したように、フィン整列装置は、フィン搬送対象のパレット溝12へコルゲートフィン1を搬送した直後に、フィン振分装置4と治具スライド装置6を同時に作動させて、首振溝8と、次のフィン搬送対象のパレット溝12とを素早く一致させる。
これにより、フィン搬送対象のパレット溝12の切り替わりが速く、パレット5に複数のコルゲートフィン1を整列させる時間を短縮することができる。その結果、熱交換器の生産性を向上できる。
【0035】
(フィン振分装置4の詳細説明)
フィン振分装置4は、上述したように、首振溝8を備えた首振部3と、搬送溝7に近い側において首振部3を回動自在に支持する回動シャフト9と、首振部3におけるパレット5に近い側を揺動駆動する揺動装置11とで構成され、搬送部2の搬送溝7から所定形状、所定長さに設けられたコルゲートフィン1を受け取り、受け取ったコルゲートフィン1をパレット溝12のいずれかに向けて搬送する。
【0036】
フィン振分装置4は、図3に示すように、支持ベース14の上に設けられている。
天地方向に延びる回動シャフト9の下側は、支持ベース14に支持される軸受15によって回転自在に支持される。回動シャフト9の上部は、首振部3における搬送溝7に近い側と結合されている。
一方、パレット5に近い側の首振部3は、揺動支持部16を介してY軸方向に揺動変位可能に支持されている。揺動支持部16は、パレット5に近い側の首振部3から下方に向かって延びる脚部17と、この脚部17に設けられたカムフォロア18とからなり、このカムフォロア18が支持ベース14の上面に設けられたレール19上を転がることで、パレット5に近い側の首振部3がY軸方向に揺動自在に支持される。
【0037】
揺動装置11は、図2に示すように、Y軸方向に延びる回転軸を有する回転ドラム21と、この回転ドラム21を一方向のみに回転駆動するサーボモータ22と、回転ドラム21に設けられたカム部のY軸方向の変位に追従してY軸方向に揺動する追従部材23とを備える。
サーボモータ22は、コントロール盤により回転量および回転速度が制御されるものであり、回転伝達手段(プーリ24とベルト25)を介して回転ドラム21を回転駆動する。
【0038】
カム部は、円筒形状を呈する回転ドラム21の外周面において周方向に伸びる環状に連続したレール状のカムレール26によって設けられる。このカムレール26は、鉄等の硬質金属よりなり、回転ドラム21と一体に設けられている。カムレール26の外周縁は、Y軸方向から見て回転ドラム21と同芯の円形を呈する。また、カムレール26は、Y軸方向の厚みが全周にわたって一定に設けられる。さらに、カムレール26は、回転ドラム21が回転すると、Y軸方向に波打つものであり、例えばカム部が1回転すると、カムレール26が1回、Y軸方向に波打変位するものである。
【0039】
追従部材23は、支持ベース14に支持されたY軸方向に延びるレール27に嵌合して、Y軸方向にスライド変位可能なものであり、上部に設けられた結合手段28を介して首振部3とY軸方向において結合している。
この結合手段28は、追従部材23のY軸方向の変位を首振部3に伝えるが、追従部材23と首振部3とのX軸方向のズレを逃がすものであり、追従部材23の上面に形成されたX軸方向に延びるカム溝31と、このカム溝31内に挿入され、首振部3の下面にアーム32を介して取り付けられたカムフォロア33とからなる。
【0040】
追従部材23は、カムレール26におけるY軸方向の一方の面{図1(c)中、符号β}に接触して回転可能な第1カムフォロア34と、カムレール26におけるY軸方向の他方の面{図1(c)中、符号γ}に接触して回転可能な第2カムフォロア35とを備える。この第1、第2カムフォロア34、35は、追従部材23においてX軸方向に延びるシャフトによって回動自在に支持された鉄等の硬質金属よりなるローラであり、カムレール26をY軸方向に挟み込んで設けられる。
これにより、回転ドラム21の回転に伴いカムレール26がY軸方向に変位することで、第1、第2カムフォロア34、35とともに追従部材23がY軸方向に揺動する。
即ち、サーボモータ22により回転ドラム21が回転することで、追従部材23がY軸方向に変位して、首振部3のパレット5に近い側が首振り動作を行なうものである。
【0041】
(実施例1の効果)
この実施例のフィン整列装置は、上述したように、回転ドラム21のカム部がレール状のカムレール26によって設けられ、このカムレール26が追従部材23に設けられた第1、第2カムフォロア34、35によって挟み込まれる構成を採用している。
この構成により、第1カムフォロア34はカムレール26の一方の側面のみと接触し、第2カムフォロア35はカムレール26の他方の側面のみと接触する。このため、カムレール26が回転に伴ってカム勾配が逆転しても、第1、第2カムフォロア34、35はともに回転方向の逆転が発生せず、常に一方向のみに回転する。
このように、第1、第2カムフォロア34、35の回転方向が逆転しないため、第1、第2カムフォロア34、35およびカムレール26の摩耗の発生を抑えることができる。その結果、長期にわたってカムレール26に対する追従部材23のガタツキの発生を抑えることができる。
【0042】
これにより、揺動装置11によって駆動される首振部3のガタツキを抑えることができ、首振部3の首振り精度を高めることができる。この結果、フィン振分装置4から治具スライド装置6へのコルゲートフィン1の受け渡し部分のズレの発生が防がれ、フィン振分装置4から治具スライド装置6へのコルゲートフィン1の受け渡し部分でのコルゲートフィン1の引っ掛かりを抑えることができ、積層型熱交換器の生産性の低下を防ぐことができる。
また、フィン整列装置における揺動装置11のメンテナンス間隔を広げることができるため、メンテナンスコストを抑えることができるとともに、メンテナンスによって積層型熱交換器の製造が中断される頻度が下がり、その結果、積層型熱交換器の生産性を向上することができる。
【0043】
〔変形例〕
上記の実施例では、本発明をフィン整列装置の揺動装置11に適用する例を示したが、フィン整列装置とは異なる揺動装置(首振装置を含む)に本発明を適用しても良い。即ち、熱交換器とは異なる他の製造工程に用いられる製造装置の揺動装置などに本発明を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】要部作動説明図である。
【図2】揺動装置の概略上視図である。
【図3】フィン振分装置の概略側面図である。
【図4】フィン整列装置の概略斜視図である。
【図5】フィン整列装置の概略上視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 コルゲートフィン(熱交換用フィン)
2 搬送部
3 首振部
4 フィン振分装置
5 パレット
6 治具スライド装置
7 搬送溝
8 首振溝
11 揺動装置
12 パレット溝
21 回転ドラム
23 追従部材
26 カムレール(カム部)
34 第1カムフォロア
35 第2カムフォロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動され、回転軸方向(Y)に変化するカム勾配が設けられた環状のカム部(26)を有する回転ドラム(21)と、
この回転ドラム(21)の回転に伴う前記カム部(26)の変位に追従して揺動する追従部材(23)と、を備える揺動装置(11)において、
前記カム部(26)は、周方向に伸びて環状に連続するレール状のカムレール(26)によって設けられるとともに、
前記追従部材(23)は、前記カムレール(26)における軸方向の一方の面に接触して回転可能な第1カムフォロア(34)と、前記カムレール(26)における軸方向の他方の面に接触して回転可能な第2カムフォロア(35)とを備え、前記第1、第2カムフォロア(34、35)が前記カムレール(26)を挟み込んで設けられることを特徴とする揺動装置(11)。
【請求項2】
所定形状、所定長さに設けられた熱交換用フィン(1)を受け取り、受け取った前記フィン(1)を一方向に向けて搬送する首振溝(8)を有する首振部(3)を備え、この首振部(3)を首振りさせて前記首振溝(8)に案内された前記フィン(1)を搬送先に振り分け供給するフィン振分装置(4)において、
前記首振部(3)は、前記フィン(1)の搬送先側が請求項1に記載の揺動装置(11)により揺動駆動されることを特徴とするフィン振分装置(4)。
【請求項3】
所定形状、所定長さに設けられた熱交換用フィン(1)を受け取り、受け取った前記フィン(1)を一方向に向けて搬送する首振溝(8)を有する首振部(3)を備え、この首振部(3)を首振りさせて前記首振溝(8)に案内された前記フィン(1)を搬送先に振り分け供給するフィン振分装置(4)と、
複数の前記フィン(1)を隙間を隔てて平行に整列させる複数のパレット溝(12)を有するパレット(5)を備え、このパレット(5)をスライドさせて前記首振溝(8)から前記パレット溝(12)に前記フィン(1)を案内して、複数の前記フィン(1)を隙間を隔てて平行に整列させる治具スライド装置(6)と、を具備するフィン整列装置において、
前記首振部(3)は、前記フィン(1)の搬送先側が請求項1に記載の揺動装置(11)により揺動駆動されることを特徴とするフィン整列装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のフィン振分装置(4)またはフィン整列装置によって振り分けられる複数の前記フィン(1)を隙間を隔てて平行に整列させ、整列した各フィン(1)を、隙間を隔てて平行に整列させた複数のチューブの間に挟んで熱交換器を製造することを特徴とする熱交換器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−299793(P2009−299793A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155196(P2008−155196)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】