説明

揺変性薬学組成物

本発明は、等温において、外部から加えられる物理的な力などによって粘度が変化してゲル/ゾル/ゲル状態に連続的に転移できる揺変性を有する薬学組成物に関する。本発明の揺変性薬学組成物は、薬理学的活性を有する活性物質と所定の揺変性を有する生適合性増粘剤と選択的に親水性増粘剤とを含み、組成物の粘度が比較的に迅速に且つ適正範囲内で変化し、投与する薬物の計量が容易であり、それにより、患者に正確な量の薬物投与が可能で、患者の服薬順応度が高いだけでなく、製造が容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等温において、外部から加えられる物理的な力などによって粘度が変化してゲル/ゾル/ゲル状態に連続的に転移し得る揺変性を有する薬学組成物に関し、より詳しくは、薬理学的活性を有する活性物質と所定の揺変性を有する生適合性増粘剤と選択的に親水性増粘剤とを含み、組成物の粘度が比較的に迅速に且つ適正範囲内で変化し、投与する薬物の計量が容易であり、それにより、患者に正確な量の薬物投与が可能で、患者の服薬順応度が高いだけでなく、製造が容易である揺変性薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
全身治療を目的とする経口投与用薬剤学的製剤には錠剤およびカプセル剤を含む固形剤と、シロップ、エリキシル剤、懸濁液などを含む液剤がある。固形剤の場合には、子供、老人および飲み込み難い人々が服用するのに困難な短所があるため、このような問題点を改善して患者の服薬順応度を高め、さらには薬物の体内吸収速度を増加させるために経口用液剤が開発された。
【0003】
しかし、経口用液剤は薬剤学および薬物学的に次のような問題点を抱えている。すなわち、懸濁液の場合には保管中に層分離(caking、sedimentation)などの製剤安定性に問題が生じ得るし、シロップ剤の場合には低粘度と計量器具(スプーンなど)に加えられる物理的な力により、計量および経口投与時に計量器具から薬物が流出する危険がある。その例として、運動性障害(四肢の振戦に起因した手の振戦、手の振戦、微細動作調節力の不足)を有する患者または薬物服用に対する恐れを有した小児患者の場合は、計量器具を用いた正確な投与量の計量または服用がかなり難しかった。
【0004】
このような問題を解決するために、当業界ではゲルを用いた高粘度の半固形製剤を多様に研究した。例えば、米国特許第5,300,302号には組成物の粘度を増加させるための増粘剤としてキサンタンゴム(xanthan gum)、セルロース誘導体などを用いたゲル状の剤形と定量ポンプが可能な計量容器に関する発明が開示されており、米国特許第5,881,926号、第6,071,523号、第6,355,258号、第6,399,079号および第6,656,482号には流出抵抗性製剤について開示されている(Taro社、製品:Elixsure)。しかし、これらの製剤は粘度が高いために製造工程中に高エネルギーを使って主薬を基剤に均一に分布しなければならない煩わしさがあるだけでなく、転移可能な粘度範囲の限界性により、容器を圧搾して投与量を流出させる場合に物理的な外部の力が多く必要であるか、あるいは正確な量を計量できる特殊な容器を必要とする問題点がある。
【0005】
また、ヨーロッパ特許第0 379 147号には単位計量ポンプのある容器に入っている流出可能なゲルについて公開されている。しかし、前記ゲルは3、4回にかけて12回〜60回ポンプしなければ1日容量を摂取することができないという問題点がある。このような問題点は単に薬理学的活性物質の濃度を増加させるだけでは克服できず、これは、活性物質の量が多くなれば製剤そのものの粘度が高くなり、そのためにゲルの形成が難しくなり、活性物質を基剤に均一に分布させるのに困難があるためである。
【0006】
さらに、前述した従来技術の組成物は高粘度特性を有するために製造工程が複雑で高いエネルギーを必要とする問題点がある。
【0007】
一方、米国特許第4,427,681号および第88/00825は、懸濁剤として揺変性物質を導入してシメチジン薬剤の構造的特性、すなわち多形体B型の不安定性を克服した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術による半固形製剤の高粘度特性による問題点を解決するためのものであって、製造と計量および服用が便利な揺変性薬学組成物を提供することをその目的とする。
【0009】
また、本発明は薬理学的活性物質の分布が均一な経口用薬学組成物を提供することを他の目的とする。
【0010】
以下、本発明の構成および作用についてより詳細に説明する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、一つ以上の薬理活性物質;液相基質;および揺変性を有する1種以上の生適合性増粘剤を含み、等温において外部の物理的な力が加えられる場合、ゲル/ゾル/ゲル状態に連続的に転移する揺変性薬学組成物を提供する。
【0012】
本発明で定義される初期粘度は組成物に物理的な力が加えられなかった時の粘度であり、本発明で定義される平衡粘度は初期粘度を示す組成物に物理的な力が加えられた状態の粘度を意味する。
【0013】
本発明の薬学組成物は容器を揺する程度の物理的な力を加えた時の平衡粘度が4,000cps以下であることが好ましい。このように平衡粘度が4,000cps以下である場合には、保管容器から計量器具への移送が容易であり、製造工程中の攪拌、濾過、または包装過程などが容易であるために生産性の向上を図ることができる。
【0014】
より好ましくは、前記組成物はそのまま置いた状態における初期粘度が5,000cps以上で、物理的な力を加えた時の平衡粘度が3,500cps以下であり、より好ましくは、初期粘度が7,500cps〜50,000cpsで、平衡粘度が300cps〜3,500cpsである。
【0015】
最も好ましくは、保管中の初期粘度と平衡粘度の差が少なくとも3,000cps以上、より具体的には3,000cps〜30,000cpsである。
【0016】
ここで、前記初期粘度および平衡粘度は、25℃、せん断速度30rpmにおいて、PP35plate/plate方法でHaake社のRheometer RS100を使って測定することができる。
【0017】
前記平衡粘度から前記初期粘度に転移する時間は10秒〜60秒、好ましくは10秒〜30秒であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の組成物は、スプーンを逆にひっくり返すスプーンオーバーターニングテスト(spoon overturning test)時、30秒以上、好ましくは60秒〜120秒間落ちない特性を有し得る。
【0019】
本発明の組成物は、服用準備時、連続的なゲル/ゾル/ゲル転移現象を示すので落とさずに正確な量の薬物計量および投与が可能である。すなわち,前記組成物は、計量前(保管時)には一定粘度を有する高粘度のゲル(gel)状態で存在し、計量のために組成物容器を揺すれば低粘度のゾル(sol)に迅速に転移して従来の高粘度に起因した計量の不便さを低減することができ、計量後再び可逆的に計量器具内において内部凝集力および広がり性のよい高粘度のゲルに転移して計量器具からの薬物流出危険を下げることにより正確な量の薬物投与が可能となる。経口投与後には体温と唾液による粘度低下により飲み込み易くなる。
【0020】
また、本発明の組成物は、初期粘度は高いけれど、製造時に外部の物理的な力により平衡粘度が下降して製造、貯蔵および包装が容易で、高エネルギーを必要とせず、下降した平衡粘度が初期粘度に迅速に回復して正確な量の計量が容易で、服用時に薬物流出の危険がない。
【0021】
本発明の組成物において、前記生適合性増粘剤は組成物全体に対し0.01%(w/v)〜12%(w/v)の範囲で含まれ、好ましくは0.01%(w/v)〜5%(w/v)範囲で含まれ得る。
【0022】
生適合性増粘剤が前記範囲で含まれる場合には、本発明の組成物が適切な範囲の粘度を示して計量器具からの流出防止効果を十分に得ることができるので製造、計量および投与がより容易になる。
【0023】
前記生適合性増粘剤は、揺変性を有し、生体に適合し、増粘剤の役割を果たすことができるものであればいずれを用いてもよく、好ましくは、寒天、カラギーナン(Carrageenan)、カルボキシメチルセルロース、微結晶セルロースとカルボキシメチルセルロースとの混合物、コロイド状シリコンジオキシド、キサンタンゴム、ジェランガム(Gellan gum)などを各々1種ずつまたは2種以上混合して用いることができる。
【0024】
また、本発明の組成物は、増粘剤として、揺変性を目的としない1種以上の親水性増粘剤をさらに含むこともできる。前記親水性増粘剤は揺変性を特徴とする生適合性増粘剤の低粘度を補完できるほどの十分な粘性を付与し、本発明の組成物の粘度および揺変性をより向上させることにより、本発明に係る薬学組成物の粘度、揺変性などを服用および計量により有利になるように最適化することができる。
【0025】
このような親水性増粘剤は組成物全体に対し0.01%(w/v)〜7%(w/v)の範囲で含まれ、好ましくは0.01%(w/v)〜3%(w/v)、より好ましくは0.2%(w/v)〜1%(w/v)の範囲で含まれ得る。
【0026】
前記親水性増粘剤としては親水性を示す増粘剤であればいずれを用いてもよく、好ましくは、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキシド(Polyethylene oxide)およびポリプロピレンオキシド(Polypropylene oxide)を含むアルキレンオキシド同種重合体、ポリエチレングリコール(Polyethylene glycol)、アルギネート(Alginate)類、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol)、ポビドン(Povidone)、多糖類、ビニルピロリドン重合体、カルボキシビニル重合体、カルボキシポリメチレンなどを各々1種ずつまたは2種以上混合し用いることができる。
【0027】
より好ましくは、前記親水性増粘剤として、セルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド(Polyethylene oxide)、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol)、ビニルピロリドン重合体、カルボキシビニル重合体、カルボキシポリメチレン、ポビドン(Povidone)などを各々単独または2種以上混合して用いる。
【0028】
本発明の組成物において、薬理活性物質は経口投与によって疾病治療に効果を示すものであればその種類に特に制限はなく、目的とする疾病の種類に応じて当業界で効果があるものと知られている一つ以上の薬理活性物質を当業者が適切に選択して決定することができる。
【0029】
例えば、前記薬理活性物質としては鎮痛剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤(cough suppressant)、去痰剤(expectorant)、気管支拡張剤(bronchodilator)、抗感染剤、中枢神経系活性薬物(CNS active drugs)、心臓血管薬物(cardiovascular drugs)、抗腫瘍剤、コレステロール低下剤(cholesterol−lowering drugs)、鎮吐剤(anti−emetics)、ビタミン、ミネラル補充剤、軟便化剤(fecal softner)、高血圧治療剤、抗真菌剤(antifungal)、糖尿病治療剤(antidiabetes)、アミノ酸剤などを一つ以上用いることができるが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0030】
より具体的には、アセトアミノフェン(acetaminophen)、イブプロフェン(ibuprofen)、アスピリン(aspirin)、ジフェンヒドラミン(diphenhydramine)、バルサルタン(valsartan)、モンテルカスト(monteleukast)、スコポラミン(scopolamine)、ザルトプロフェン(zaltoprofen)、トラマドール(tramadol)、ジクロフェナク(diclofenac)、アセクロフェナク(aceclofenac)、エトドラク(etodolac)、ピロキシカム(piroxicam)、ニメスリド(Nimesulide)、セレコキシブ(celecoxib)、グルコサミン(glucosamine)、ゾルミトリプタン(zolmitriptan)、アレンドロン酸(alendronic acid)、リゼドロン酸(risedreonic acid)、S−カルボキシメチルシステイン(S−carboxymethylcysteine)、デキストロメトルファン(dextromethorphan)、グアイフェネシン(guaifenesin)、偽エフェドリン(pseudoephedrine)、フェニレフリン(phenylephrine)、ロラタジン(loratadine)、エフェドリン(ephedrine)、セチリジン(cetirizine)、ミゾラスチン(mizolastine)、オロパタジン(olopatadine)、エピナスチン(epinastine)、プロカテロール(procaterol)、アセチルシステイン(acetylcystein)、エルドステイン(erdostein)、テオフィリン(theophylline)、フォルモテロール(formoterol)、ジペプロール(zipeprol)、ジフェメリン(difemerine)、チザニジン(tizanidine)、チロプラミド(tiropramide)、ジアゼパム(diazepam)、アルプラゾラム(alprazolam)、ブスピロン(buspirone)、エチゾラム(etizolam)、リスペリドン(risperidone)、オランザピン(olanzapine)、アミスルフィリド(amisulfiride)、クロミプラミン(clomipramine)、クロルプロマジン(chlorpromazine)、リバスティグミン(rivastigmine)、ドネペジル(donepezil)、ガランタミン(galantamine)、エンタカポン(entacapone)、メマンチン(memantine)、ロピニロール(ropinirole)、セレギリン(selegiline)、カルビドパ(carbidopa)、レボドパ(levodopa)、テルフェナジン(terfenadine)、ラニチジン(ranitidine)、シプロフロキサシン(ciprofloxacin)、トリアゾラム(triazolam)、テルビナフィン(terbinafine)、フルコナゾール(fluconazole)、イトラコナゾール(itraconazole)、ケトコナゾール(ketoconazole)、ボリコナゾール(voriconazole)、プロプラノロール(propranolol)、ロバスタチン(lovastatin)、シンバスタチン(simvastatin)、アトルバスタチン(atorvastatin)、ピタバスタチン(pitavastatin)、ロスバスタチン(rosuvastatin)、プラバスタチン(pravastatin)、フェノフィブラート(fenofibrate)、エゼチミブ(ezetimibe)、フルオキセチン(fluoxetine)、エナラプリル(enalapril)、イルベサルタン(irbesartan)、ロサルタン(losartan)、ラミプリル(Ramipril)、ニコランジル(nicorandil)、ドキサゾシン(doxazosin)、カルベジロール(carvedilol)、ジルチアゼム(diltiazem)、トロピセトロン(tropisetron)、オンダンセトロン(ondansetron)、メクリジン(meclizine)、アゼセトロン(azasetron)、ドラセトロン(dolasetron)、グラニセトロン(granisetron)、メトホルミン(metformin)、グリメピリド(glimepiride)、グリクラジド(gliclazide)、ミチグリニド(mitiglinide)、グリベンクラミド(glibenclamide)、レパグリニド(repaglinide)およびこれらの薬学的に許容可能な塩またはエステルなどを1種以上用いることができる。
【0031】
前記薬理活性物質の含量は特に制限されず、当業者が目的とする疾病および用いられる液相基質、増粘剤などの具体的な種類を考慮して適切に定めることができるが、好ましくは、組成物全体に対し0.01%(w/v)〜20%(w/v)の範囲で含まれる。
【0032】
前記液相基質として、用いられる薬理活性物質および増粘剤の具体的な種類などを考慮して、前記物質を適切に溶解させるか懸濁させることのできる溶媒を用いることができる。具体的には、前記液相基質は、精製水、グリセリン、エタノールなどのアルコール類、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトールなどの液相ポリオールおよびこれらの2種以上の混合物のうちから選択することができるが、必ずしもこれらに制限されるものではない。このような液相基質は組成物全体に対し40%(w/v)〜95%(w/v)の範囲で含まれ得る。
【0033】
一方、本発明に係る組成物は薬理活性物質の苦味を遮蔽するために、甘味剤および/または芳香剤をさらに含むことができる。このように甘味剤および子供の選好度が高い果物香りの適切な芳香剤を添加すれば、薬理活性物質の苦味を完全に遮蔽して小児患者の服薬順応度を高めることができる。さらに、所定の甘味剤を用いる場合には、本発明の組成物の服用時に虫歯を防止し、血中グルコース含量に影響を及ぼさないため、糖尿病患者にも安心して投与することができる。
【0034】
前記甘味剤としては当業界で通常用いられるものを制限されることなく用いることができるが、好ましくは、虫歯を誘発しないマンニトール、マルチトール、ソルビトール(Sorbitol)、キシリトール(Xylitol)、イソマルト(Isomalt)を含む糖アルコール類、アスパルテーム(Aspartame)類、アセサルフェーム(Acesulfame)類、サッカリン(Saccharin)、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、スクラロース(Sucralose)などを各々単独または2種以上混合して用いることができる。
【0035】
前記芳香剤としては当業界で通常用いられるものを制限されることなく用いることができるが、好ましくは、チョコレート香り、ストロベリー香り、オレンジ香り、ブドウ香り、バニラ香り、チェリー香りおよびリンゴ香りの芳香剤からなる群から選択された1種以上を用いることができる。
【0036】
このような甘味剤および芳香剤は組成物全体に対し0.001%(w/v)〜2%(w/v)の含量で含まれるが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0037】
また、本発明においては、用いられる薬理活性物質の苦味を遮蔽するために、前記薬理活性物質に当業界で通常に用いられる薬剤学的遮蔽技術を適用することもできる。例えば、前記薬理活性物質を生分解性高分子でコーティングするか、固体分散体に作るか、またはカプセル化することができるが、必ずしもこれらに制限されるものではない。この時、前記生分解性高分子のコーティング、固体分散体の製造、カプセル化などは従来から当業界で知られている方法によって行うことができる。
【0038】
さらに、本発明の組成物には患者の服薬順応度をより増加させるために有機酸類がさらに含まれてもよい。有機酸類が添加されれば、経口投与後、患者の唾液分泌を促進させることによって組成物そのものの粘度をより下げることができるために服用時に便利性を提供する。
【0039】
本発明に使用可能な有機酸類としては、例えば、クエン酸(Citric acid)、アスコルビン酸(Ascorbic acid)、パルミチン酸(Palmitic acid)および酒石酸(Tartaric acid)からなる群から選択された1種以上が挙げられるが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0040】
このような有機酸類は組成物全体に対し0.001%(w/v)〜5%(w/v)の範囲で含まれ得る。
【0041】
この他にも、用途および場合によっては、防腐剤、懸濁化剤、可溶化剤、緩衝剤などのその他の賦形剤を当業者が適切に選択して添加してもよい。
【0042】
このような本発明の揺変性薬学組成物は当業界で通常知られているシロップ剤または半固形製剤の製造方法によって製造することができる。特に制限されるものではないが、これについて例を挙げて説明すれば次の通りである:すなわち、攪拌器を使って揺変性を特徴とする生適合性増粘剤あるいは親水性増粘剤を十分に水和させた後、薬理活性物質は別に溶かすか懸濁させ、これに混合する。また、液相基質および防腐剤、緩衝剤、甘味剤、芳香剤、色素などの賦形剤を添加して均質に混合して製造する。この時、必要によっては、賦形剤は別に溶かして投入することができる。
【0043】
また、本発明は、前記揺変性薬学組成物をスプーンなどの計量器具に移して入れることができる保管容器に保管してもよい。この時、前記保管容器としては薬学組成物の保管または包装に通常用いられるものであれば特に制限されることなく用いることができ、例えば、squeezable tube、ポンプ式ボトル(pumpable bottle)、ポンプ式squeezable tube、個別パウチ包装などが挙げられる。
【発明の効果】
【0044】
以上、詳細に説明したように、本発明に係る揺変性薬学組成物は、揺変性を有する1種以上の生適合性増粘剤と選択的に揺変性を目的としない親水性増粘剤を含み、適正範囲で組成物の粘度が連続的で且つ迅速に移転するため、正確な量の薬物投与が可能であり、患者の服薬順応度が高く、製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1で製造された揺変性薬学組成物のヒステリシス測定結果を示すグラフである。
【図2】実施例3で製造された揺変性薬学組成物のヒステリシス測定結果を示すグラフである。
【図3】実施例4で製造された揺変性薬学組成物のヒステリシス測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の構成について実施例を挙げて詳しく説明するが、これは本発明を説明および例示するためのものであって、本発明の権利範囲を限定するものではない。
【0047】
実施例1:カラギーナンおよびAvicel CL 611を用いたイブプロフェン経口用揺変性薬学組成物の製造(100ml)
精製水40gに、キシリトール45g、ジソルビトール液10g、グリセリン10gを入れて攪拌および混合した。この液を攪拌し続けながらカラギーナン1.5g、Avicel CL 611 0.500gを入れて水和させた後、クエン酸0.25g、安息香酸ナトリウム0.1gを入れて溶解させた(A)。別途に、精製水10gにツイン80 0.1gを入れて溶かした後、イブプロフェン2gを加えて攪拌および懸濁させた(B)。AにBを加えて攪拌および混合した後、黄色5号0.075g、オレンジエッセンス0.1gを順に加えて混合し、精製水を加えて100mlにした。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例2:Aerosil 200およびHPMC2906を用いたS−カルボキシメチルシステイン経口用揺変性組成物の製造(100ml)
精製水50gに、白糖25g、ジソルビトール液10gを入れて攪拌および混合した。この液にHPMC2906 1.5g、Aerosil 200 2gを入れて攪拌および水和させた(A)。別途に、精製水15gに水酸化ナトリウム0.37gを入れて溶かした後、S−カルボキシメチルシステイン2gを入れて溶解させた(B)。AにBを加えて攪拌および混合した。別途に、エタノール1.5gにメチルパラベン0.09g、プロピルパラベン0.01gを入れて溶かした(C)。前記AとBとの混合液にCを加えて混合した後、赤色40号0.1g、ストロベリー香りエッセンス0.1gを入れて均等に混合した後、精製水を加えて100mlにした。
【0050】
【表2】

【0051】
実施例3:カラギーナンを用いたイブプロフェン経口用揺変性組成物の製造(100ml)
精製水40gに、キシリトール45g、ジソルビトール液10g、グリセリン10gを入れて攪拌および混合した。この液を攪拌し続けながらカラギーナン1.5gを入れて水和させた後、クエン酸0.25g、安息香酸ナトリウム0.1gを入れて溶解させた(A)。別途に、精製水10gにツイン80 0.1gを入れて溶かした後、イブプロフェン2gを加えて攪拌および懸濁させた(B)。AにBを加えて攪拌および混合した後、黄色5号0.075g、オレンジエッセンス0.1gを順に加えて混合し、精製水を加えて100mlにした。
【0052】
【表3】

【0053】
実施例4:ジェランガムおよびカラギーナンを用いたイブプロフェン経口用揺変性組成物の製造(100ml)
熱い精製水(約80℃)40gにメチルパラベン0.08g、ブチルパラベン0.02gを溶かした後に室温で冷却し、ジソルビトール液15g、グリセリン15gを入れて攪拌および混合した。この液を攪拌し続けながらカラギーナン0.26g、ジェランガム1.0gを入れて水和させた後、無水クエン酸(citric acid anhydrous)0.144g、クエン酸ナトリウム二水和物(sodium citrate dihydrate)0.137gを入れて溶解させた(A)。別途に、精製水10gにポロキサマー0.1gを入れて溶かした後、イブプロフェン2gを加えて攪拌および懸濁させた(B)。AにBを加えて攪拌および混合した後、スクラロース(Sucralose)0.14g、赤色40号0.01g、ストロベリー香り0.3gを順に加えて混合し、精製水を加えて100mlにした。
【0054】
【表4】

【0055】
実施例5:キサンタンゴム(Xanthan gum)、ジェランガムおよびカラギーナンを用いたイブプロフェン経口用揺変性組成物の製造(100ml)
熱い精製水(約80℃)40gにメチルパラベン0.08g、ブチルパラベン0.02gを溶かした後に室温で冷却し、ジソルビトール液10g、グリセリン10gを入れて攪拌および混合した。この液を攪拌し続けながらカラギーナン0.26g、ジェランガム0.6gおよびキサンタンゴム0.15gを入れて水和させた後、無水クエン酸0.144g、クエン酸ナトリウム二水和物0.137gを入れて溶解させた(A)。別途に、精製水10gにポロキサマー0.1gを入れて溶かした後、イブプロフェン2gを加えて攪拌および懸濁させた(B)。AにBを加えて攪拌および混合した後、スクラロース(Sucralose)0.14g、赤色40号0.01g、ストロベリー香り0.3gを順に加えて混合し、精製水を加えて100mlにした。
【0056】
【表5】

【0057】
実験例1:外部抵抗力評価1(スプーンバイブレイション評価;vibration test)
実施例1〜5および市販中の揺変性製剤であるElixsureの外部物理力に対する抵抗力を評価した。これは、Scientific Industries社のVortex Genie2を使って評価した。長さ150mmのスパチュラの長径35mm、短径25mmの長方形スプーン上にそれぞれの製剤2gを適用して機器の回転板にスプーン反対側を固定した後、弱い強さ(Vortex 3)と強い強さ(Vortex 10)で回転、振動させ、製剤がスプーンの外へ流出する時の時間を測定して評価した。その結果を下記表6に示す。
【0058】
【表6】

【0059】
実験例2:外部抵抗力評価2(スプーンオーバーターニングテスト)
実施例1〜5および市販製剤であるElixsureのまた他の外部抵抗力評価としてスプーンオーバーターニングテスト(overturning test)を実施した。これは、長さ90mm、長径35mm、短径28mmの長方形スプーン上に製剤を充填し、表面を平たくした後、スプーンを逆にして製剤がスプーンから落ちる時の時間を測定して評価した。その結果を下記表7に示す。
【0060】
【表7】

【0061】
前記実験例1および実験例2から分かるように、本発明の組成物は初期粘度が高いことを確認することができ、それにより計量および服用が容易であることが分かる。
【0062】
実験例3:揺変性評価1(外部物理力に対する粘度変化測定)
実施例1〜5および市販製剤であるElixsureの揺変性を評価した。これは、Hakke社のRheometer RS100を使って(25℃、PP35 plate/plate方法、shear rate 30rpm)測定し、製造後1日間放置したサンプルと(粘度1、初期粘度)同一のサンプルを100mlメスシリンダー(graduated cylinder)に入れ、ねじ立て盤(tapping machine)を利用して100回tappingした後のサンプル(粘度2、平衡粘度)の粘度を各々測定した。その結果を下記表8に示す。
【0063】
【表8】

【0064】
前記実験例3から分かるように、本発明の組成物は初期粘度と平衡粘度の差が3000cps以上であることを確認することができる。
【0065】
実験例4:揺変性評価2(外部物理力に対する流れ性変化測定)
実施例1〜5および市販製剤であるElixsureの揺変性を評価した。これは、一定量(100ml)のサンプルが2cm直径の流出管を有するファネル(funnel)を通過する時間を測定することによって評価した。製造後1日間放置したサンプルと(時間1)、同一のサンプルを200mlメスシリンダー(graduated cylinder)に入れ、ねじ立て盤(tapping machine)で100回tappingした後のサンプル(時間2)を各々同一量取って通過時間を測定した。その結果を下記表9に示す。
【0066】
【表9】

【0067】
前記実験例4から分かるように、本発明の組成物は外部物理力が加えられる場合、粘度が下降してファネル通過時間が減少することを確認することができる。
【0068】
実験例5:揺変性評価3(粘度回復速度測定)
実施例1〜5および市販製剤であるElixsureの揺変性を評価した。一定の外部物理力によって低くなった粘度が時間変化に伴って増加する程度をスプーンオーバーターニングテスト(overturning test;実験例2参照)を利用して測定した。製造後1日間放置したサンプルを200mlメスシリンダー(graduated cylinder)に入れ、ねじ立て盤(tapping machine)を利用して100回tappingした直後(時間1)、10秒後(時間2)、30秒後(時間3)、60秒後(時間4)のオーバーターニングタイム(overturning time)を各々測定した。その結果を下記表10に示す。
【0069】
【表10】

【0070】
前記実験例5から分かるように、本発明の組成物は外部物理力が加えられた後10秒以上から粘度が増加し、30秒では初期粘度と類似するレベルに粘度が回復し、スプーンオーバーターニングテストの結果が初期粘度における結果と類似することを確認することができる。
【0071】
実験例6:揺変性評価4(ヒステリシス測定)
実施例1、実施例3、実施例4およびElixsureの揺変性を評価した。Hakke社のRheometer RS100を使い(25℃、PP35 plate/plate、hysteresis analysis method)、各サンプルのヒステリシスを特定した。せん断速度(Shear rate)は0から200rpmまで60分間増加させ、同じ速度で200から0rpmまで減少させ、この時の粘度を測定してグラフで示した。その結果を図1〜図3に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の薬理学的活性物質;液相基質;および揺変性を有する1種以上の生適合性増粘剤を含む薬物伝達組成物であって、平衡粘度が4,000cps以下であることを特徴とする揺変性薬学組成物。
【請求項2】
初期粘度と平衡粘度の差が少なくとも3,000cps以上であることを特徴とする、請求項1に記載の揺変性薬学組成物。
【請求項3】
平衡粘度から初期粘度に転移する時間が10秒〜30秒であることを特徴とする、請求項1に記載の揺変性薬学組成物。
【請求項4】
前記生適合性増粘剤は0.01%(w/v)〜12%(w/v)の範囲で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の揺変性薬学組成物。
【請求項5】
前記生適合性増粘剤は0.01%(w/v)〜5%(w/v)の範囲で含まれることを特徴とする、請求項4に記載の揺変性薬学組成物。
【請求項6】
前記生適合性増粘剤は、寒天、カラギーナン(Carrageenan)、ジェランガム(Gellan gum)、コロイド状シリコンジオキシドおよびキサンタンゴムからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の揺変性薬学組成物。
【請求項7】
甘味剤および芳香剤からなる群から選択された1種以上をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の揺変性薬学組成物。
【請求項8】
前記甘味剤は、虫歯を誘発しないマンニトール、マルチトール(Maltitol)、ソルビトール(Sorbitol)、キシリトール(Xylitol)、イソマルト(Isomalt)を含む糖アルコール類、アスパルテーム(Aspartame)類、アセサルフェーム(Acesulfame)類、サッカリン(Saccharin)、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウムおよびスクラロース(Sucralose)からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項7に記載の揺変性薬学組成物。
【請求項9】
前記組成物は有機酸類をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の揺変性薬学組成物。
【請求項10】
前記有機酸類は、クエン酸(Citric acid)、アスコルビン酸(Ascorbic acid)、パルミチン酸(Palmitic acid)および酒石酸(Tartaric acid)からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項9に記載の揺変性薬学組成物。
【請求項11】
前記組成物は親水性増粘剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の揺変性薬学組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−519198(P2010−519198A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549514(P2009−549514)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国際出願番号】PCT/KR2008/000661
【国際公開番号】WO2008/100032
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(508353891)チュンウェ ファーマ コーポレーション (7)
【Fターム(参考)】