説明

損傷組織の修復を促進するためのWntタンパク質を含む馴化培地

本発明は、三次元型組織の培養物由来の培地の使用に基づく、損傷組織治療用の組成物および方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷組織の修復を促進するためのWntタンパク質を含む馴化培地に関する。
【0002】
関連出願への相互参照
本特許出願は、35 U.S.C. 第119条(e)に基づき、2004年8月30日出願の、「虚血組織の修復および再生を促進する方法(Methods for Promoting Repair and Regeneration of Ischemic Tissues)」と題される特許出願番号第60/606,072号に対し、および2005年6月17出願の「虚血組織の修復および再生を促進する方法(Methods for Promoting Repair and Regeneration of Ischemic Tissues)」と題される特許出願番号第60/691,731号に対する権利を主張する。これらの開示の全内容を参照により本明細書に組み入れる。
【背景技術】
【0003】
背景
血管系のような器官系の発達と維持には多数のシグナル伝達経路の作用と組み合わせが必要である。Wntシグナル伝達経路は、正常な発達および種々の病因(癌を含む)において重要な役割を果たすことが示されている。最近の研究は、発達段階および病理学的状態(例えば癌)における血管系の形成とリモデリングがWntシグナル伝達により調節されることを示唆する。Wnt因子はシステインリッチな、分泌型糖タンパク質であり、ヒドラからヒトに渡る生物種で高度に保存されている。Wntシグナルの受容とシグナル伝達は、Wntタンパク質と細胞表面受容体の2つの異なるファミリーのメンバー、すなわちFrizzled(Fz)遺伝子ファミリーのメンバーおよびLDL受容体関連タンパク質(LRP)ファミリーのメンバーとの結合を要する。Fzタンパク質は、細胞外システインリッチドメイン、7回膜貫通ドメインおよび短い細胞質尾部を含有する。少なくとも19種のWntホモログおよび10種のFzホモログが哺乳動物中で発現される。Wntタンパク質およびそのシグナル伝達経路に関するさらなる背景については、例えばGoodwin and D-Amore, 2002, Angiogenesis, 5:1-9 およびMiller JR, 2001, Genome Biology, 3:3001.1-3001.15を参照されたい。
【発明の開示】
【0004】
概要
本発明の開示は損傷組織の修復とリモデリングを促進するための方法および組成物を提供する。本明細書に記載の方法により治療することのできる損傷組織の例としては、限定するものではないが、腸組織、心臓組織、肝臓組織、腎臓組織、骨格筋、結合組織、および/または皮膚組織が挙げられる。方法は、当業者に既知の手法を用いて被験体に有効量の馴化培地を投与することを含む。例えば、いくつかの実施形態においては、組成物を注射により、例えば皮下注射針を用いて投与することができる。
【0005】
組成物は、三次元型組織から作製された馴化培地を含む。馴化培地は、三次元型組織の細胞により分泌される様々な生理活性物質、例えば増殖因子および/またはWntタンパク質を含有する。生理活性物質は損傷組織の効果的な修復に寄与する1以上の生物学的プロセスを促進し、該プロセスとしては、限定するものではないが、組織菲薄化(これは虚血組織に観察される組織リモデリングの特徴である)の予防および/もしくは低減、ならびに/または内皮化、組織成長、血管化および/もしくは血管新生の促進が挙げられる。いくつかの実施形態において、馴化培地は毛包の発達と分化を促進するために使用することができる。
【0006】
いくつかの態様において、組成物は、三次元型組織により産生した単離された生理活性物質を含みうる。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は三次元型組織により産生された単離されたWntタンパク質を含む。三次元型組織により産生されたWntタンパク質のレパートリーの1種、数種、または全種を使用することができ、これには、限定するものではないが、Wnt5a、Wnt7a、およびWnt11が含まれる。Wntタンパク質は、独立に、または他の生理活性物質、例えば三次元型組織により分泌される増殖因子と併用して使用することができる。
【0007】
他の態様において、馴化培地を含む種々の医薬配合物を含むキットを提供する。馴化培地は様々な剤形として提供することができ、例えば適当な注射用希釈剤での用時調製のための注射可能懸濁物または凍結乾燥物などがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
詳細な説明
本明細書に記載の組成物および方法には様々な用途があり、限定するものではないが、損傷組織(組織としては腸組織、心臓組織、肝臓組織、腎臓組織、骨格筋、結合組織、皮膚組織、および/または他の組織が挙げられる)の修復とリモデリングを促進することなどが挙げられる。一般に、本明細書に記載の方法は、三次元型組織から作製された馴化培地を含む有効量の組成物を被験体に投与することを含む。いかなる理論にも限定されるものではないが、馴化培地を損傷組織に与えたときに、生理活性物質、例えばWntタンパク質および/または他の増殖因子の存在ゆえに組織修復が促進されると考えられる。
【0009】
三次元型組織およびスカフォールド
種々の実施形態において、損傷組織の修復を促進することのできる馴化培地は、三次元型組織から得られる。一般に、細胞はスカフォールド(本明細書中で生物適合性、非生命材料から構成されるスカフォールドとも言う)上で培養される。スカフォールドは、(a)それに細胞が付着することができる(またはそれに細胞が付着できるように修飾することができる)、および(b)細胞が2以上の層として増殖できる(すなわち三次元型組織を形成する)ようにするものであれば、どのような材料および/または形状であってもよい。
【0010】
いくつかの実施形態において、生物適合性材料は、三次元型組織へと細胞が付着し増殖するための間質空間を有する、三次元型スカフォールドとして成形される。スカフォールドの開口部および/または間質空間は、細胞が該開口部または空間を横切って伸びることが可能な適当な大きさである。活発に増殖する細胞を、スカフォールドを横切って伸びた状態に維持することは、本明細書に記載の活性にあずかる生理活性物質のレパートリーの産生を促進するようである。開口部が小さすぎると、細胞は急速にコンフルエント状態となることができるが、しかしながら容易にメッシュの外に出ることができない。これらの閉じこめられた細胞は、接触阻止を示す、ならびに本明細書に記載の生理活性物質のレパートリー、および培養物の増殖と維持を支持するのに有用な他の因子の産生を中止する可能性がある。開口部が大きすぎると、細胞は開口部を横切って伸びることができない可能性があり、本明細書に記載の生理活性物質のレパートリー、および培養物の増殖と維持を支持するのに有用な他の因子の産生は減少する可能性がある。メッシュ型のスカフォールドを使用する場合、本明細書に実証するように、少なくとも約140μm、少なくとも約150μm、少なくとも約160μm、少なくとも約175μm、少なくとも約185μm、少なくとも約200μm、少なくとも約210μm, および少なくとも約220μmの開口部が十分に機能することが見出された。しかしながら、スカフォールドの込み入り具合によっては、他のサイズも同様に機能し得る。実際に、細胞が伸びる、複製し続ける、および適当な期間増殖することができれば、どのような形状または構造でも本明細書に記載の方法に従い生理活性物質を産生するために機能することができる。
【0011】
いくつかの実施形態において、三次元型スカフォールドは、スカフォールド(例えばメッシュもしくはファブリック)を形成するように、ブレイズにする(braid)、織る(weave)、編む(knit)または別の方法で配列させる、ポリマーもしくは糸の材料から形成する。材料形成は、材料もしくはファブリックを、泡状、マトリックス型またはスポンジ様のスカフォールドへとキャスティングすることにより行うことができる。他の実施形態において、三次元型スカフォールドは、間質空間を有する材料を製造するために、ポリマーまたは他の繊維を一緒にプレスすることにより製造した、もつれさせた繊維の形態である。三次元型スカフォールドは、そこから生成される馴化培地が本明細書に記載の少なくとも1種の組織修復促進活性を示す限り、培養中の細胞の増殖に合わせてどのような形態または形状であってもよい。三次元型スカフォールドを用いた細胞培養の記載は、米国特許第6,372,494号、第6,291,240号、第6121,042号、第6,022,743号、第5,962,325号、第5,858,721号、第5,830,708号、第5,785,964号、第5,624,840号、第5,512,475号、第5,510,254号、第5,478,739号、第5,443,950号、および第5,266,480号にあり、参照によりこれらの開示の全内容を本明細書に組み入れる。下に詳細に説明するように、他の種類のスカフォールドも、適当な馴化培地の製造に十分でありうる。
【0012】
スカフォールドを形成するために、種々の材料を使用することができる。こうした材料には非ポリマー性およびポリマー性材料も含まれる。ポリマー性材料はどのような種類のブロックポリマー、共ブロックポリマー(例えばジ、トリ、など)、線状または分枝状ポリマーであってもよく、架橋型または非架橋型であり得る。スカフォールドとして使用するための材料の非限定的例としては、ガラス繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド(例えばナイロン)、ポリエステル(例えばダクロン)、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリビニル化合物(例えばポリ塩化ビニル; PVC)、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、TEFLON)、拡張型PTFE (ePTFE)、サーマノックス(TPX)、ニトロセルロース、多糖類(例えばセルロース、キトサン、アガロース)、ポリペプチド(例えば絹、ゼラチン、コラーゲン)、ポリグリコール酸(PGA)、およびデキストランなどが挙げられる。
【0013】
いくつかの実施形態において、スカフォールドは使用する条件下で経時的に分解される材料を含む。本明細書に用いる分解性材料とは、分解するまたは分解される材料を言う。いくつかの実施形態において、分解性材料は生分解性である。すなわち、直接または間接的に、生物学的物質の作用を解して分解する。生分解性材料の非限定的例としては、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(すなわち、PLGA)、ポリエチレンテレフタレート (PET)、トリメチレンカーボネート(TMC);TMC、PGA、および/もしくはPLAのコポリマー、ポリカプロラクトン、腸線縫合糸材料、コラーゲン(例えばウマコラーゲンフォーム(foam))、ポリ乳酸、またはヒアルロン酸などが挙げられる。例えばこれらの材料を、三次元型スカフォールド(例えばコラーゲンスポンジまたはコラーゲンゲル)へと織ることができる。
【0014】
培養物を、長期間維持する、凍結保存する場合、および/またはさらなる構造的完全性が望まれる場合の実施形態においては、三次元型スカフォールドは典型的には非分解性材料を含む。本明細書において用いる非分解性材料とは、三次元型組織を培養するために用いる条件下では有為に分解しないまたは分解されない材料を言う。典型的な非分解性材料としては、限定するものではないが、ナイロン、ダクロン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリビニル、テフロン、およびセルロースが挙げられる。典型的な非分解性三次元型スカフォールドは、Nitex(登録商標)として販売されているナイロンメッシュであり、これは平均孔径が140μmおよび平均ナイロン繊維直径が90μmのナイロン濾過メッシュ(#3-210/36, Tetko, Inc., N.Y.)である。
【0015】
他の実施形態において、三次元型スカフォールドは分解性材料と非分解性材料の組み合わせである。非分解性材料は培養中のスカフォールドに安定性を付与し、一方分解性材料は損傷組織の修復を促進するのに十分な生理活性物質を産生する三次元型組織の形成のための十分な間質空間の形成を可能にする。分解性材料は、非分解性材料上にコーティングすることができ、またはメッシュへと織る、ブレイズにするまたは成形することができる。種々の組み合わせの分解性材料と非分解性材料を使用することができる。典型的な組み合わせは、極性構造を得るための、薄い生分解性ポリマーフィルム(ポリ[D-L-乳酸-コ-グリコール酸] PLGA)でコーティングしたポリ(エチレンテレフタレート) (PET)ファブリックである。
【0016】
種々の実施形態においては、スカフォールド材料を細胞接種に先だって前処理して、スカフォールドへの細胞付着を促進することができる。例えば、細胞での接種前に、ナイロン製の篩を、0.1 M酢酸で処理すること、およびポリリシン、ウシ胎仔血清、および/またはコラーゲン中でインキュベートすることにより、ナイロンをコーティングすることができる。いくつかの実施形態において、ポリスチレンは硫酸を用いて同様に処理することができる。他の実施形態において、三次元型スカフォールドの存在下での細胞増殖は、タンパク質(例えばコラーゲン、エラスチン繊維、細網繊維)、糖タンパク質、グリコサミノグリカン(例えばヘパラン硫酸、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸など)、フィブロネクチン、細胞性マトリックス、グリコポリマー(ポリ[N-p-ビニルベンジル-D-ラクトアミド], PVLA)および/または他の材料を細胞付着を改善するためにスカフォールドに添加する、またはこれらでスカフォールドをコーティングすることによりさらに促進される。スカフォールド処理またはスカフォールドは細胞の付着を改善するのに有用である。
【0017】
他の実施形態において、三次元型組織を製造するためのスカフォールドは、粒子を含み、粒子はその存在下で培養した組織が組織修復を促進する生理活性物質を産生するように寸法を合わせたものである。いくつかの実施形態において、粒子は微粒子または他の適当な粒子、例えばマイクロカプセルおよびナノ粒子を含み、それらは生分解性または非生分解性でありうる(例えば“Microencapsulates : Methods and Industrial Applications,” in Drugs and Pharmaceutical Sciences, 1996, Vol 73, Benita, S. 編, Marcel Dekker Inc., New York, および本特許出願と同時出願された「培養三次元型組織およびその使用(Cultured Three Dimensional Tissues and Uses Thereof)」と題された米国特許出願第______________号を参照のこと。参照によりそれらの開示の全内容を本明細書に組み入れる)。一般に、微粒子の粒径範囲は、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約25μm、少なくとも約50μm、少なくとも約100μm、少なくとも約200μm、少なくとも約300μm、少なくとも約400μm、少なくとも約500μm、少なくとも約600μm、少なくとも約700μm、少なくとも約800μm、少なくとも約900μm、少なくとも約1000μmである。ナノ粒子は粒径範囲が、少なくとも約10 nm、少なくとも約25 nm、少なくとも約50 nm、少なくとも約100 nm、少なくとも約200 nm、少なくとも約300 nm、少なくとも約400 nm、少なくとも約500 nm、少なくとも約600 nm、少なくとも約700 nm、少なくとも約800 nm、少なくとも約900 nm、少なくとも約1000 nmである。粒子は多孔性または無孔性でありうる。三次元型組織を調製するために様々な粒子配合物(上記メッシュまたは織られたポリマーを形成するために使用した生分解性または非生分解性材料から製造した粒子も含まれる)を使用することができる。本特許出願と同時出願された「培養三次元型組織およびその使用(Cultured Three Dimensional Tissues and Uses Thereof)」と題される米国特許出願番号第______________号も参照のこと。参照によりそれらの開示の全内容を本明細書に組み入れる。
【0018】
典型的な非生分解性粒子としては、限定するものではないが、ポリスルホン、ポリ(アクリロニトリル-コ-塩化ビニル)、エチレン-酢酸ビニル、ヒドロキシエチルメタクリル酸-メチル-メタクリル酸コポリマーが挙げられる。生分解性粒子には、フィブリン、カゼイン、血清アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、レシチン、キトサン、アルギン酸またはポリ-アミノ酸(例えばポリリシン)から製造されるものが含まれる。生分解性合成ポリマーとしては、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド (PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド) (PLGA)、ポリ(カプロラクトン)、ポリジオキサノントリメチレンカーボネート、ポリヒドロキシアルカノエート(例えば、ポリ(y-ヒドロキシ酪酸))、ポリ(Y-グルタミン酸エチル)、ポリ(DTH イミノカルボニル(ビスフェノールA イミノカーボネート)、ポリ(オルトエステル)、およびポリシアノアクリレートが挙げられる。
【0019】
生理活性物質を送達するためにはヒドロゲルもまた有用である。一般に、ヒドロゲルは架橋された、親水性ポリマーネットワークである。ヒドロゲル組成物に有用なポリマーの非限定的例としては、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(メタクリル酸-γ-ポリエチレングリコール)、ポリアクリル酸およびポリ(オキシプロピレン-コ-オキシエチレン)グリコール、および天然化合物、例えばコンドロイチン硫酸、キトサン、ゼラチン、フィブリノーゲン、または合成ポリマーと天然ポリマーの混合物、例えばキトサン-ポリ(エチレンオキシド)などのポリマーから形成されるものが挙げられる。ポリマーは典型的には可逆的にまたは不可逆的に架橋されており、細胞が付着し三次元型組織を形成するのに適当なゲルを形成する。
【0020】
粒子を製造する種々の方法が当技術分野で周知であり、それらには溶媒除去法(例えば米国特許第 4,389,330号を参照)、乳化および蒸発法 (Maysinger ら, 1996, Exp. Neuro. 141: 47-56; Jeffrey ら, 1993, Pharm. Res. 10: 362-68)、噴霧乾燥法、および押出法が含まれる。三次元型組織を調製するための典型的な粒子はまた、米国特許公開出願第2003/0211083号および米国特許第5,271,961号; 第5,413,797号; 第5,650,173号; 第5,654,008号; 第5,656,297号; 第5,114,855号; 第6,425,918号;および第6,482,231号;ならびに本特許出願と同時出願された「培養三次元型組織およびその使用(Cultured Three Dimensional Tissues and Uses Thereof)」と題される米国特許出願第______________号にも記載されている。参照によりそれらの開示の全内容を本明細書に組み入れる。
【0021】
上記以外の種々の形状の材料も、組織修復促進特性を有する馴化培地を産生することのできる三次元型組織を製造するために使用することができる、と理解すべきである。したがって材料は本明細書に開示した実施形態に限定されない。
【0022】
細胞および培養条件
三次元型組織を形成するためには、スカフォールドを形成する生物適合性材料に適当な細胞を接種し、組織修復促進特性を有する馴化培地の産生を促進するのに適当な条件下で増殖させる。細胞はドナーから直接、またはドナーから作製された細胞培養物から、または樹立した細胞培養系から取得することができる。場合によっては、細胞を任意の適当な死体臓器または胎児供給源から多量に得ることができる。いくつかの実施形態において、同じ種の、かつ好ましくは1以上のMHC遺伝子座のマッチする細胞を、当該被験体または近親血縁者から生検により取得し、次いでそれを標準条件を用いてコンフルエント状態まで培地で増殖させ、必要に応じて使用する。ドナー細胞の特徴付けは、投与する被験体、馴化培地および/またはその単離成分に関して行う。
【0023】
従って、いくつかの実施形態において、細胞は自己由来であり、自己細胞とは目的とする受容者を起源とする細胞を言う。馴化培地中の産物が受容者自身の細胞に由来するため、馴化培地の活性を中和する免疫学的反応の可能性を減少させることができる。こうした実施形態では、細胞は典型的には馴化培地を製造するために十分な数が得られるように培養する。
【0024】
他の実施形態では、細胞は意図する培養培地の受容者ではないドナーから取得する。こうした実施形態のいくつかにおいて、細胞は同系(syngeneic)であり、全てのMHC遺伝子座が遺伝的に同一のドナー由来である。他の実施形態では、細胞は同種異系(allogeneic)であり、意図する受容者とは少なくとも1つのMHC遺伝子座が異なるドナー由来である。細胞が同種異系のときは、細胞は単一ドナー由来であり得る、またはそれら自体が互いに同種異系である異なるドナー由来の細胞の混合物を含み得る。さらなる実施形態において、細胞は、異種細胞、すなわち意図する受容者とは異なる種由来の細胞を含む。
【0025】
本明細書の様々な実施形態において、スカフォールド上に接種する細胞は間質細胞であり、典型的には線維芽細胞を含む。典型的実施形態において間質細胞は、結合組織由来であり、結合組織としては限定するものではないが、(1)骨、(2)疎性結合組織(コラーゲンおよびエラスチンを含む)、(3) 靱帯や腱を形成する線維性結合組織、(4)軟骨、(5)血液の細胞外マトリックス、ならびに(6) 脂肪細胞を含有する脂肪組織が挙げられる。
【0026】
種々の実施形態において、間質細胞は、種々の組織または臓器、例えば皮膚、心臓、血管、骨格筋、肝臓、膵臓、脳、包皮由来であってもよく、これらは生検(適当であれば)によりまたは剖検により取得することができる。
【0027】
線維芽細胞は、胎児、新生児、成人由来またはその組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、間質細胞は、種々の細胞および/または組織の増殖を支持することのできる胎児線維芽細胞を含む。本明細書に用いる胎児線維芽細胞とは、胎児供給源由来の線維芽細胞を言う。本明細書に用いる新生児線維芽細胞とは、新生児供給源由来の線維芽細胞を言う。適当な条件下では、線維芽細胞は他種の細胞、例えば骨細胞、脂肪細胞、および平滑筋細胞ならびに中胚葉起源の他の細胞を生じうる。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は真皮線維芽細胞を含む。本明細書に用いる真皮線維芽細胞とは、皮膚由来の線維芽細胞を言う。正常ヒト真皮線維芽細胞は新生児包皮から単離することができる。これらの細胞は典型的には一次培養の最後に凍結保存する。
【0028】
いくつかの実施形態においては、線維芽細胞をスカフォールドに接種する。線維芽細胞は、胎児、新生児、成人由来またはその組み合わせであり得る。
【0029】
他の実施形態において、三次元型組織は、幹細胞もしくは前駆細胞を、単独で、または本明細書に記載の任意の細胞種と併用して用いて製造することができる。「幹細胞」という用語には、限定するものではないが、胚性幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、および間葉幹細胞も含まれる。
【0030】
いくつかの実施形態においては、「特異的」三次元型組織を調製することができ、これは、三次元型スカフォールドに、特定の器官、すなわち、皮膚、心臓由来、および/または後に本明細書に記載の方法により増殖させた細胞および/または組織を受容する特定の個体由来の細胞を接種することにより行う。
【0031】
特定の実施形態においては、間質細胞に加え、他種の細胞も三次元型組織に存在してもよい。さらなる細胞種としては、限定するものではないが、平滑筋細胞、心筋細胞、内皮細胞または骨格筋細胞が挙げられる。線維芽細胞の他に、他種の細胞を加えて、長期間の培養増殖を支持するのに必要な三次元型組織を形成することができる。例えば、疎性結合組織に存在する他種の細胞を、線維芽細胞と共に、または線維芽細胞の代わりに三次元型スカフォールド上に接種することができる。適当な細胞としては、限定するものではないが、内皮細胞、周皮細胞、マクロファージ、単球、脂肪細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、および/または心筋細胞が挙げられる。さらなる細胞種は、適当な組織または器官、例えば皮膚、心臓および血管から、当技術分野の既知方法(上記の方法を含む)を用いて容易に得ることができる。
【0032】
いくつかの実施形態において、上記1種以上のさらなる細胞種を、線維芽細胞の不在下で三次元型スカフォールド上に接種することができる。他の実施形態においては、上記1種以上のさらなる細胞種を、線維芽細胞と併用して三次元型スカフォールド上に接種することができる。線維芽細胞は、胎児由来、新生児由来、成人由来またはその組み合わせであり得る。
【0033】
細胞、例えば間質細胞は、適当な器官または組織を解離させることにより容易に単離することができる。これは当業者の周知技術を用いて容易に行うことができる。例えば組織または器官は、機械的に解離させるならびに/または隣接細胞との結合を弱め、感知できるほどの細胞破壊を伴うことなく組織を個々の細胞の懸濁物へと分散させることを可能にする消化酵素および/もしくはキレート剤で処理することができる。酵素解離は、組織を細片化し、その後細片化した組織を任意の数の消化酵素を単独でまたは併用して施すことにより達成することができる。こうした酵素としては、限定するものではないが、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、エラスターゼ、および/またはヒアルロニダーゼ、DNアーゼ、プロナーゼ、ならびにディスパーゼが挙げられる。機械的破砕は多くの方法により達成することができ、限定するものではないがいくつか挙げるとすれば、グラインダー、ミキサー、篩器、ホモゲナイザー、加圧セルまたは超音波処理器(insonator)の使用が挙げられる。組織解離技術の総説については、Freshney, Culture of Animal Cells. A Manual of Basic Technique, 第2版, A.R. Liss, Inc., New York, 1987, 第9章, pp. 107-126を参照されたい。
【0034】
組織を一旦個々の細胞の懸濁物まで分解したならば、懸濁物を亜集団へと分画することができ、そこから種々の実施形態において、線維芽細胞および/または他種の間質細胞を得ることができる。これは細胞分離の標準技術を用いて達成することができ、そのような標準技術としては、限定するものではないが、特定細胞種のクローニングと選択、不要細胞の選択的破壊(負の選択)、混合集団における細胞凝集能の差異に基づく分離法、凍結融解手法、混合集団における細胞の接着特性の相違、濾過法、慣用遠心分離法およびゾーン遠心分離法、遠心分離水簸法(elutriation)(向流遠心分離counter-streaming centrifugation)、単位重力分離法、向流分配法、電気泳動法および蛍光活性化セルソーティング法が挙げられる。クローン選択および細胞分離技術の総説については、Freshney, Culture of Animal Cells. A Manual of Basic Techniques, 第2版, A.R. Liss, Inc., New York, 1987, 第11 および12章, pp. 137-168を参照されたい。
【0035】
細胞(例えば間質細胞)の単離は、一例として次のように行うことができる:新鮮な組織サンプルを十分に洗浄し、その後ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中で細片化し血清を除く。細片化した組織を、新たに調製した解離酵素(例えばトリプシン)溶液中で1〜12時間インキュベートする。インキュベート後、解離細胞を、懸濁し、遠心分離によりペレット化し、培養ディッシュ上に接種することができる。間質細胞は他の細胞よりも先に付着することから、適当な間質細胞を選択的に単離し増殖させることができる。単離された間質細胞をコンフルエント状態まで増殖させ、コンフルエント状態の培養物から取り出し、その後三次元型スカフォールド上に接種することができる(米国特許第4,963,489号、Naughton ら, 1987, J. Med. 18(3&4):219-250)。三次元型スカフォールドに高濃度の細胞、例えば約1 x 106 〜5 x 107 間質細胞/mlを接種すると、結果的に短時間で三次元型組織を確立することができる。
【0036】
接種後、細胞を、三次元型組織への細胞の増殖を支持する適当な栄養培地でインキュベートする。多くの市販培地、例えばダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI 1640、フィッシャー培地、イスコフ(Iscove)培地、およびマッコイ(McCoy)培地が使用に適している。培地に追加の塩、炭素源、アミノ酸、血清および血清成分、ビタミン、ミネラル、還元剤、緩衝化剤、脂質、ヌクレオシド、抗生物質、付着因子、および増殖因子を添加してもよい。様々な種類の培地の配合は当業者に入手可能な参考資料に記載されている(例えばMethods for Preparation of Media, Supplements and Substrates for Serum Free Animal Cell Cultures, Alan R. Liss, New York (1984); Tissue Culture: Laboratory Procedures, John Wiley & Sons, Chichester, England (1996); Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Techniques, 第4版, Wiley-Liss (2000)。典型的には、三次元型組織はインキュベート期間中に培地に懸濁し、そのことにより増殖活性と、生理活性物質(例えば増殖因子(溶解型およびマトリックス結合型)、サイトカイン、およびWntタンパク質)の分泌とを促進する。いくつかの実施形態において、培養物を定期的に「栄養補給」することにより、消耗した培地を除き、遊離細胞の数を削減し、かつ新鮮な培地を加えることができる。インキュベーション期間中、培養細胞は三次元型スカフォールドのフィラメントに沿って直線的に増殖し、かつそれを包み込み、その後スカフォールドの開口部内へと増殖を開始する。
【0037】
スカフォールド上に沈着した様々な種類のコラーゲンの比率の違いは、三次元型スカフォールドと接触する細胞の増殖に影響を及ぼしうる。沈着する細胞外マトリックス(ECM) タンパク質の比率は、適当なコラーゲン型を産生する線維芽細胞を選択することにより、操作または増強することができる。これは、補体を活性化することができ、特定の種類のコラーゲンを特徴付ける、適当なアイソタイプまたはサブクラスのモノクローナル抗体を使用することにより達成することができる。こうした抗体や補体は、所望の種類のコラーゲンを発現する線維芽細胞に対して負の選択を行うために使用することができる。あるいはまた、スカフォールドに接種するために使用する細胞は、細胞種の混合物、例えば所望の適当な種類のコラーゲンを合成する複数種の間質細胞の混合物であり得る。様々な種類のコラーゲンの分布と由来を表1に示す。
【0038】
表I:様々な種類のコラーゲンの分布と由来
【表1】

【0039】
種々の実施形態において、三次元型組織は、細胞の産生する生理活性物質のレパートリーを特徴とする。こうした生理活性物質としては、増殖因子(溶解型およびマトリックス結合型)、サイトカイン、および/またはWntタンパク質が挙げられる。培養三次元型組織により産生されうる種々の生理活性物質の記載は、「培養三次元型組織から産生される生理活性物質」と題される下の章に提供される。
【0040】
三次元型組織による種々の生理活性物質(溶解型およびマトリックス結合型増殖因子)、サイトカイン、および/もしくはWntタンパク質を含む)の発現および/または分泌は、対象の因子を様々なレベルで放出する細胞を組込むことによりモジュレートすることができる。例えば、血管平滑筋細胞は、ヒト真皮線維芽細胞よりも実質的に多くのVEGFを産生することが知られている。線維芽細胞の代わりにまたは線維芽細胞に加えて、血管平滑筋細胞を利用することにより、例えば三次元型組織によるVEGFの発現および/または分泌をモジュレートすることができる。
【0041】
培養三次元型組織から産生される生理活性物質
種々の実施形態において、三次元型組織は、組織の産生する生理活性物質のレパートリーを特徴とする。こうした生理活性物質としては、増殖因子(溶解型およびマトリックス結合型)、サイトカイン、および/またはWntタンパク質が挙げられる。
【0042】
いくつかの実施形態において、三次元型組織は、表IIに記載の増殖因子の発現および/または分泌を特徴とする。
【0043】
表II:三次元型細胞組織の発現する増殖因子およびサイトカイン
【表2】

【0044】
いくつかの実施形態において、三次元型組織は、結合組織増殖因子(CTGF)の発現および/または分泌を特徴とする。例えばLuo, Q., ら, 2004, J. Biol. Chem., 279:55958-68; Leask and Abraham, 2003, Biochem Cell Biol, 81:355-63; Mecurio, S.B., ら, 2004, Development, 131:2137-47;および、Takigawa, M., 2003, Drug News Perspect, 16:11-21を参照されたい。
【0045】
上に示したリストの増殖因子の他に、三次元型組織は、Wntタンパク質の発現を特徴としうる。Wntは、細胞経路および細胞-細胞相互作用プロセスにおいて無数の役割を果たすシグナル伝達分子である。例えば、Wntシグナル伝達は、腫瘍形成、胚の初期中胚葉パターン形成、脳および腎臓の形態形成、乳腺成長の調節およびアルツハイマー病に関与している。
【0046】
本明細書に用いる「Wnt」または「Wntタンパク質」とは、次の1以上の機能的活性を有するタンパク質を言う:(1)Wnt受容体、別名Frizzledタンパク質、との結合、(2)wnt仲介シグナル伝達、(3)Dishevelledタンパク質のリン酸化、およびAxinの細胞局在をモジュレートすること、(4)細胞性β-カテニンレベルおよび対応するシグナル伝達経路をモジュレートすること、(5)TCF/LEF転写因子をモジュレートすること、および(6) 細胞内カルシウム、およびCa+2 感受性タンパク質 (例えばカルモジュリン依存性キナーゼ)の活性化を上昇させること。Wntタンパク質に関して用いる「モジュレートする」とは、細胞性レベルを上昇もしくは低下させること、細胞内分布を変化させること、および/またはWntによりモジュレートされる分子の機能的(例えば酵素的)活性を変化させることを言う。
【0047】
「Wnt仲介シグナル伝達」とは、Wntタンパク質とそのコグネイトな受容体タンパク質との相互作用により開始されるまたは依存性であるシグナル伝達活性の活性化を言う。参考までに、カノニカル(canonical) Wntシグナル伝達経路は、Wntタンパク質とその対応する細胞性受容体であるFrizzled タンパク質との結合に関する。受容体活性化は、タンパク質Dishevelledのリン酸化によりシグナルを伝達し、該リン酸化されたDishevelledはAxinと相互作用する。この相互作用は、プロテオソーム仲介経路を解してβ-カテニンの分解を促進することによりβ-カテニン活性を調節すると考えられているグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3β (GSK-3)、大腸腺腫様ポリポーシス(APC)タンパク質、およびタンパク質 Axinからなる細胞性複合体の形成を妨害する。DishevelledおよびAxinに対する作用によりWntシグナル伝達は、β-カテニンの分解を阻害し、そのことにより細胞質と核におけるβ-カテニン蓄積をもたらす。β-カテニンは、転写因子TCF/LEFと相互作用し、核へのトランスロケーションを促進し、核で該タンパク質複合体は種々の遺伝子の転写をモジュレートする。
【0048】
しかしながら、Wntシグナル伝達はそのカノニカル(canonical)経路に限定されるものではなく、また、細胞はWntにより仲介されるシグナル伝達の影響を受ける異なる経路を有しうると理解すべきである。β-カテニンは、他の種類の転写因子、例えばp300/CBP、BRG-1、およびLIMドメインタンパク質FHL-2と相互作用することが示されれている。さらに、β-カテニンとは独立に作用する、複数の非カノニカル(canonical) Wntシグナル伝達経路が解明されている(例えばLustig and Behrens, 2003, J. Cancer Res. Clin. Oncol. 129:199-221; Polakis, P., 2000, Genes Dev. 14:1837-1851を参照されたい)。1つの非カノニカル経路において、WntはFrizzled 受容体に結合し、その結果ヘテロ三量体G-タンパク質の活性化、およびその後ホスホリパーゼCとホスホジエステラーゼの可動化をもたらす。このことはcGMP減少、細胞内Ca+2上昇、ならびにタンパク質キナーゼCおよび他のCa+2 調節タンパク質の活性化をもたらす。第2の非カノニカル(canonical)経路は平面内細胞極性(PCP)経路であり、これは選択上皮組織において、特に頂端−基底境界に垂直な軸に沿って、極性を決定する。脊椎動物においては、この経路は内耳毛細胞不動毛の分化と方向付けに寄与し、原腸形成期間中の中胚葉と神経外胚葉の拡大を方向付ける可能性がある(Dabdoub and Kelley, 2005, J. Neurobiol. 64(4):446-57)。PCP経路の活性化は、WntがFrizzledに結合し、FrizzledがDishevelledを活性化することにより生じると考えられている。Dishevelledはその後RhoA/Racを動員し、これは最終的にはJNK (c-jun NH2-末端キナーゼ)経路活性化をもたらす。JNK経路の主要な標的はAP-1 (アクチベータータンパク質-1)転写因子のようである。
【0049】
「Wnt」もしくは「Wntタンパク質」はまた、構造的には、マウスWnt-1およびショウジョウバエ(Drosophila)のWinglessとの配列類似性または配列同一性を特徴とする。本明細書に用いる「配列同一性のパーセンテージ」および「相同性パーセンテージ」は、相互に置き換え可能に使用され、ポリヌクレオチド間やポリペプチド間の比較を言い、これらは比較ウィンドウ上に最適にアライメントした2つの配列を比較することにより決定する。このとき、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列部分は、2つの配列の最適アライメントのために、参照配列(付加もしくは欠失を含まない)と比べて、付加または欠失(すなわちギャップ)を含みうる。パーセンテージの計算は、両方の配列に同一核酸塩基またはアミノ酸残基が出現する位置の数を決定してマッチする位置の数を得ること、マッチする位置の数を比較ウィンドウ中の位置の総数で割ること、および得られた結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ること、により行うことができる。別の方法として、パーセンテージの計算は、同一核酸塩基もしくはアミノ酸残基が両方の配列に出現する、または核酸塩基もしくはアミノ酸残基をギャップとアラインする位置の数を決定することによりマッチする位置の数を得ること、マッチする位置の数を比較ウィンドウ中の位置の総数で割ること、および得られた結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ること、により行うことができる。2つの配列のアライメントを行うための多種の定評あるアルゴリズムが利用可能であることを当業者は理解している。比較のための配列の最適アライメントは、例えばSmith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アライメントアルゴリズムにより、Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性手法の検索により、こうしたアルゴリズムのコンピューター上での実装物(GCG Wisconsinソフトウェアパッケージ中のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または視覚的検討(大まかにはCurrent Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubelら, 編, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., 1995 Supplementを参照されたい)により行うことができる。パーセント配列同一性および配列類似性を決定するための適当なアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれAltschul ら, 1990, J. Mol. Biol. 215: 403-410およびAltschul ら, 1977, Nucleic Acids Res. 3389-3402に記載されている。BLAST解析を実行するソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationウェブサイトから公に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さの文字列とアライメントしたときにいくらかの陽性評価閾値スコアTとマッチするもしくはそれを満たす、問い合わせ配列中の長さWの短い文字列を同定することにより、最初に高スコア型配列対(HSP)を同定することに関する。Tのことを、近傍文字列スコア閾値と言う(Altschul ら, 上記)。こうした初期近傍文字列ヒットは、それを含有する長いHSPを発見するための検索を開始する種配列の機能を果たす。次に文字列ヒットを、各配列に沿って両方向に伸長するが、それは累積アライメントスコアが上昇しつづける範囲までである。累積スコアの計算は、ヌクレオチド配列については、パラメーターM (マッチする残基の対の報酬スコア;常に>0) およびパラメーターN(ミスマッチ残基のペナルティースコア;常に<0)を用いて行う。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアを計算する。それぞれの方向への文字列ヒットの伸長を中止するのは、累積アライメントスコアがその最大達成値から量Xだけ下落するとき、1以上の負にスコアリングする残基アライメントの蓄積により累積スコアが0以下になるとき、またはいずれかの配列の端に到達するときである。BLASTアルゴリズムパラメーターのW、T、およびXは、アライメントの感度と速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)には、初期設定として、文字列長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両側の鎖の比較が採用されている。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムには、初期設定として、文字列長(W) 3、期待値(E) 10、およびBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照)が採用されている。
【0050】
配列アライメントおよび%配列同一性の決定には全ての上記アルゴリズムおよびプログラムが適当であるが、いくつかの実施形態においては、GCG Wisconsinソフトウェアパッケージ (Accelrys, Madison WI)中のBESTFITもしくはGAPプログラムを、用意された初期設定パラメーターを用いて、%配列同一性の決定に使用する。
【0051】
本明細書の開示に関連するのは、哺乳動物、例えば齧歯類、ネコ科動物、イヌ科動物、有蹄動物および霊長類の発現するWntタンパク質である。例えば、同定されたヒトWntタンパク質は、27%〜83%アミノ酸配列同一性を共有する。Wntタンパク質のさらなる構造的特徴には、約23もしくは24個のシステイン残基の保存パターン、疎水性シグナル配列、および保存されたアスパラギン連結型オリゴ糖修飾配列がある。いくつかのWntタンパク質は脂質修飾も受けており、例えばパルミトイル基で修飾されている (Wilkert ら, 2003, Nature 423(6938):448-52)。哺乳動物中で発現する典型的Wntタンパク質および対応する遺伝子としては、Wnt 1、Wnt 2、Wnt 2B、Wnt 3、Wnt3A、Wnt4、Wnt 4B、Wnt5A、Wnt 5B、Wnt 6、Wnt 7A、Wnt 7B、Wnt8A、Wnt8B、Wnt9A、Wnt9B、Wnt10A、Wnt11、およびWnt 16などが挙げられる。他の同定された型のWnt、例えばWnt12、Wnt13、Wnt14、およびWnt 15は、Wnt 1〜11および16について記載されたタンパク質に含まれるようである。各哺乳動物Wntタンパク質のタンパク質配列およびアミノ酸配列は、SwissProtやGenbank (NCBI) (例えばU.S. 特許公開2004/0248803を参照されたい、参照によりその全内容を本明細書に組み入れる)などのデータベースから入手することができる。
【0052】
本明細書の実施形態において、三次元型組織により産生されるWnt因子のレパートリーは、組織修復を促進するために使用することができる。三次元型組織により産生されるWnt因子は、少なくともWnt5a、Wnt7a、およびWnt11を含む。本明細書に用いるWnt5aとは、上記機能的活性を有し、かつNCBI登録番号AAH74783 (gI:50959709)またはAAA16842 (gI:348918) (Danielson ら, 1995, J. Biol. Chem. 270(52):31225-34も参照のこと)のアミノ酸配列のヒトWntタンパク質と配列類似性を有するWntタンパク質を言う。Wnt7aとは、上記Wntタンパク質の機能的特性を有し、かつNCBI 登録番号BAA82509 (gI:5509901); AAC51319.1 (GI:2105100); およびO00755 (gI:2501663) (Ikegawa ら, 1996, Cytogenet Cell Genet. 74(1-2):149-52; Bui ら, 1997, Gene 189(1):25-9も参照のこと)のアミノ酸配列のヒトWntタンパク質と配列類似性を有するWntタンパク質を言う。Wnt11とは、上記機能的活性を有し、かつNCBI登録番号 BAB72099 (gI:17026012); CAA74159 (gI:3850708); およびCAA73223.1 (gI:3850706) (Kirikoshi ら, 2001, Int. J. Mol. Med. 8(6):651-6); Lako ら, 1998, Gene 219(1-2):101-10も参照のこと)のアミノ酸配列のヒトWntタンパク質と配列類似性を有するWntタンパク質を言う。本明細書に特定のWntタンパク質に関して用いる「配列類似性」とは、参照配列と比較して、少なくとも約80%以上、少なくとも約90%以上、少なくとも約95%以上、または少なくとも約98%以上のアミノ酸配列同一性を言う。例えば、ヒトWnt7aは、マウスWnt7aに対して約97% アミノ酸配列同一性を示し、ヒトWnt7aのアミノ酸配列は、ヒトWnt5a (Bui ら, 上記)に対して約64% アミノ酸同一性を示す。
【0053】
他の実施形態において、単離および精製もしくは部分精製Wntタンパク質は、組織修復を促進するために単独で使用するおよび/または三次元型組織から製造する馴化培地への添加物として使用する。Wntタンパク質は、独立に、または他の生理活性物質、例えば三次元型組織により分泌される増殖因子と併用して使用することができる。他の生理活性物質は、当業者に周知の方法を用いて単離および精製もしくは部分精製することができる。
【0054】
「Wnt」および「Wntタンパク質」の範囲には、タンパク質断片、変異体、キメラタンパク質(例えば異種ポリペプチドに融合もしくは結合した1以上のWntタンパク質ドメインもしくはその一部分)、および同定Wntタンパク質の突然変異体も含まれるが、ここで該断片、変異体、および突然変異体はWntタンパク質ファミリーに特徴的な機能的活性を有するものである。
【0055】
いくつかの実施形態において、三次元型組織により産生される1以上のWntタンパク質のレパートリーは、当業者の利用可能な種々の技術により単離する。いくつかの実施形態において、同定Wntタンパク質に対する抗体は、三次元型組織の産生するWntタンパク質の集団を単離するために、ひとまとめに(en mass)使用することができる。他の実施形態においては、種々のWntタンパク質中に示される共通のエピトープに対する抗体を使用して、複数種のWntタンパク質を単離することができる。さらに別の実施形態においては、特定のWntタンパク質(例えばWnt5a、Wnt7a、およびWnt11)に対する抗体を使用して、培養物により産生されるWntタンパク質の単一種を単離することができる。抗体は、Wntタンパク質を単離するためにカラム内にまたは固体表面上(例えば磁気ビーズ、アガロースビーズなど)に固定することができ、または別の方法として作用物質(例えばStaph Aタンパク質または他種の抗体結合物質)により沈降させることができる。抗体に基づく精製の手順は、多くの参考資料に記載されている。一例としてAusubel, Current Methods in Molecular Biolgy, JohnWiley & Sons, updates to 2005; Antibodies: A Laboratory Manual; Scopes, 1984, Protein Purification: Principles and Practice, Springer Verlag New York, Inc., N.Y.; および Livingstone, 1974, Methods In Enzymology: Immunoaffinity Chromatography of Proteins 34:723 731など。全ての刊行物は参照によりその全内容を本明細書に組み入れる。
【0056】
いくつかの実施形態において、Wntタンパク質は、米国特許公開第2004/0248803号に記載の手法により単離する。参照によりその開示の全内容を本明細書に組み入れる。
【0057】
タンパク質精製のための当技術分野の他の公知技術も使用可能である。例えば逆相クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィーなど。Wntタンパク質を単離するために使用する実際の条件は、部分的には、例えば正味荷電、疎水性、親水性、分子量などの因子に依存し、これらは当業者に明らかとなるであろう。
【0058】
三次元型組織により追加の生理活性物質(他の増殖因子も含む)も産生可能であり、そのため三次元型組織から産生される馴化培地の範囲は、上の記載に限定されるものではない、と理解すべきである。
【0059】
遺伝子操作細胞
遺伝子操作された三次元型組織は、米国特許第5,785,964号および第5,957,972号に記載のように調製することができ、これらは参照によりその全内容を本明細書に組み入れる。遺伝子操作された組織は、in vivoでの生理活性物質(例えば増殖因子(溶解型およびマトリックス結合型)、サイトカイン、および/またはWntタンパク質)の徐放出用のための遺伝子送達ビヒクルとして機能し得る。例えば、特定の実施形態では、細胞(例えば間質細胞)を遺伝子操作して、該遺伝子操作細胞に外来性または内在性の遺伝子産物を発現させることができる。有用に遺伝子操作することのできる間質細胞としては、限定するものではないが、線維芽細胞(胎児、新生児または成人由来)、平滑筋細胞、心筋細胞、幹細胞または前駆細胞、および疎性結合組織に存在する他の細胞、例えば内皮細胞、マクロファージ、単球、脂肪細胞、周皮細胞、および骨髄に存在する細網細胞が挙げられる。種々の実施形態において、幹細胞または前駆細胞を、外来性または内在性遺伝子産物を発現するように遺伝子操作して、その後三次元型スカフォールド上で、単独でまたは間質細胞と併用して、培養することができる。
【0060】
細胞と組織を遺伝子操作して、多様な機能(限定するものではないが、in vivoで移植したときに組織修復を促進するために、遺伝子操作した細胞および組織の機能を増強することが含まれる)を付与することのできる所望の遺伝子産物を発現するようにすることができる。操作した遺伝子産物は、ペプチドもしくはタンパク質、例えば酵素、ホルモン、サイトカイン、調節タンパク質、例えば転写因子もしくはDNA結合タンパク質、構造タンパク質、例えば細胞表面タンパク質であり得る、または目的の遺伝子産物は、核酸、例えばリボソームまたはアンチセンス分子であり得る。いくつかの実施形態において、目的の遺伝子産物は、本明細書に記載の種々の細胞の分化と増殖に役割を果たす1種以上のWntタンパク質である(例えば米国特許公開第2004/0248803号および第2005/0043260号、ならびにMiller, J.R., 2001, Genome Biology 3:3001.1-3001.15を参照のこと。参照によりこれらの開示の全内容を本明細書に組み入れる)。
【0061】
いくつかの実施形態において、遺伝子操作細胞に増強された特性を付与するために使用することのできる操作遺伝子産物としては、限定するものではないが、細胞増殖を促進する遺伝子産物、例えば血管内皮増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、結合組織増殖因子(CTGF)およびWnt因子が挙げられる。組換え操作細胞をWnt因子を発現するようにした実施形態においては、細胞内発現のための特定のWnt因子は、Wnt5a、Wnt7a、およびWnt11の少なくとも1種を含む。他の実施形態においては、細胞および組織を遺伝子操作して、細胞不死化を促進するための所望の遺伝子産物、例えば癌遺伝子またはテロメラーゼを発現させる。
【0062】
他の実施形態においては、細胞および組織を遺伝子操作して、in vitroで保護的機能(例えば凍結保存および乾燥耐性特性)を提供することのできる遺伝子産物を発現させる(例えばトレハロース)(米国特許第4,891,319号、第5,290,765号、第5,693,788号)。細胞および組織はまた、in vivoで保護的機能を提供する遺伝子産物(例えば細胞を炎症応答から保護するものおよび宿主免疫系による拒絶から保護するもの、例えばHLAエピトープ、MHCアレル、免疫グロブリンおよび受容体エピトープ、細胞性接着分子、サイトカインおよびケモカインのエピトープ)を発現するように操作することができる。
【0063】
所望の遺伝子産物は、本明細書に記載の細胞および組織により発現されるように操作することができる。所望の遺伝子産物は、構成的に発現されるまたは組織特異的もしくは刺激特異的様式で発現されるように遺伝子操作することができる。所望の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、例えば構成的に活性な、組織特異的な、または1以上の特定の刺激の存在により誘導されるプロモーターエレメントに機能的に連結することができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、操作遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、せん断応力または半径方向応力に応答性の調節プロモーターエレメントに機能的に連結することができる。こうした実施形態において、プロモーターエレメントは、血流を通すことにより(せん断)、ならびに心臓または血管を通る血液の拍動流の結果誘発される半径方向応力により活性化することができる。
【0065】
本明細書に記載の三次元型組織組成物および方法に有用な他の調節プロモーターエレメントの例としては、テトラサイクリン応答因子、ニコチン応答因子、インスリン応答因子、グルコース応答因子、インターフェロン応答因子、グルココルチコイド応答因子、エストロゲン/プロゲステロン応答因子、レチノイド酸応答因子、ウイルストランスアクチベーター、SV40アデノウイルスの初期もしくは後期プロモーター、lacシステム、trpシステム、TACシステム、TRCシステム、3-ホスホグリセリン酸用プロモーターおよび酸性ホスファターゼのプロモーターが挙げられる。その上、人工応答エレメントも構築可能であり、それは転写因子結合部位およびホルモン応答エレメントの多量体を含み、典型的には天然のプロモーターおよびエンハンサーの分子構造と類似する。(例えばHerr and Clarke, 1986, J Cell 45(3): 461-70を参照のこと)。かかる人工合成調節領域は、任意の所望のシグナルに応答し、かつ選択したプロモーター/エンハンサー結合部位に応じて特定の細胞種に発現するように設計することができる。
【0066】
馴化培地および医薬組成物の加工
三次元型組織により産生される馴化培地は、直接使用するまたは様々にさらに加工することができる。培地は、組織修復を促進する生理活性物質を保存するおよび/または濃縮するために、凍結乾燥することができる。典型的凍結乾燥工程は、3つの別の相互関連する工程、すなわち凍結、一次乾燥(凝華)、および二次乾燥(脱着)を含む。必要であれば、種々の生物適合性保存料、凍結防止剤、および安定剤を使用して活性を保存することができる。生物適合性物質の非限定的な例としては、グリセロール、ジメチルスルホキシド、およびトレハロースなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、凍結乾燥物はまた、1種以上の賦形剤、例えば緩衝剤、充填剤、および張性修正剤を含む。凍結乾燥培地は、下に詳細に記載するように、適当な溶液または製薬上の希釈剤を添加することにより再構成する。
【0067】
いくつかの実施形態において、生理活性物質(例えば増殖因子、サイトカイン、および/またはWntタンパク質)を培地中で沈殿させることにより馴化培地を加工することができる。沈殿化は、種々の手順、例えば硫酸アンモニウムを用いた塩析または親水性ポリマー、例えばポリエチレングリコールの使用により行うことができる。
【0068】
他の実施形態においては、種々の選択性フィルターを用いて馴化培地を濾過する。馴化培地を濾過処理することは、組織修復を促進する因子を濃縮する、および馴化培地に使用された小分子および溶質を除去するために有用である。フィルターの特定分子量に対する選択性には<5000ダルトン、<10,000ダルトン、および<15,000ダルトンが含まれる。他のフィルターも使用可能であり、処理した培地を組織修復促進活性について本明細書に記載のようにアッセイすることができる。典型的フィルターおよび濃縮システムとしては、中空繊維フィルター、フィルターディスク、およびフィルタープローブ(例えばAmicon Stirred Ultrafiltration Cellsを参照)などに基づくものが挙げられる。
【0069】
他の実施形態では、馴化培地をクロマトグラフィーにかけて、塩、不純物を除く、または培地の種々の成分を分画する。種々のクロマトグラフィー技術が利用可能であり、例えば分子ふるい、イオン交換、逆相、アフィニティークロマトグラフィー技術がある。顕著な生理活性の喪失を伴うことなく馴化培地を処理するためには、穏やかなクロマトグラフィー媒体を使用する。非限定的例としては、デキストラン、アガロース、ポリアクリルアミドに基づく分離媒体(例えばSephadex、Sepharose、およびSephacryl など様々な商標で販売されている)などが挙げられる。
【0070】
いくつかの実施形態において、馴化培地からの不純物の除去は、米国特許公開第2004/0248803号に開示の方法を用いて行う。参照によりその開示の全内容を本明細書に組み入れる。
【0071】
馴化培地は、製薬上許容可能な賦形剤、ビヒクルまたは担体を添加することなく直接使用することもでき、または馴化培地と種々の製薬上許容可能な賦形剤、ビヒクルまたは担体とを含む医薬組成物を調製することもできる。医薬組成物とは、馴化培地と、少なくとも1種の製薬上許容可能なビヒクル、担体、または賦形剤との形態を言う。皮内、皮下または筋肉内投与については、組成物を、馴化培地の滅菌懸濁物、溶液またはエマルジョンとして水性または油性ビヒクル中に調製することができる。組成物はまた、配合剤、例えば懸濁化剤、安定化剤または分散化剤を含有することができる。注射用製剤は、単位投与剤形として、複数回用量容器のアンプルとして、保存剤を伴ってもしくは伴わずに、提供することができる。あるいは、組成物は、適当なビヒクル(例として、限定するものではないが、滅菌済み発熱物質不含性の水、生理食塩水、緩衝液、またはデキストロース溶液が挙げられる)との用時調製用の粉末製剤として提供することができる。
【0072】
さらに他の実施形態では、生理活性物質を含む馴化培地を、リポソームの内腔に導入または封入して、送達するまたは生理活性物質の寿命を延長することができる。当技術分野で周知のように、リポソームは様々な種類、例えば多層型(MLV)、安定多数層型(SPLV)、小型単層型(SUV)または大型単層型(LUV)小胞、などに分類することができる。リポソームは様々な脂質化合物から調製可能であり、そうした脂質化合物は合成または天然であってもよく、ホスファチジルエーテルおよびエステル、例えばホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ジミリストイルホスファチジルコリン; ステロイド類、例えばコレステロール; セレブロシド; スフィンゴミエリン; グリセロ脂質; および他種の脂質(例えば米国特許第5,833, 948号を参照)などが挙げられる。
【0073】
カチオン性脂質もまたリポソーム形成に適当である。一般にカチオン性脂質は、正味の正電荷と親脂質性部分、例えばステロールまたはアシルもしくはジアシル側鎖を有する。いくつかの実施形態において、頭部基は正に荷電している。典型的カチオン性脂質としては1, 2-ジオレイルオキシ-3-(トリメチルアミノ)プロパン; N-[1-(2,3,-ジテトラデシクルオキシ)プロピル]-N,N-ジメチル-N-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド; N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N, N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド; N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド; 3-[N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール;およびジメチルジオクタデシルアンモニウムが挙げられる。
【0074】
他の実施形態において、リポソームは融合性リポソームであり、これらは、生理学的条件の適当な変化、または融合成分、特に融合性ペプチドもしくはタンパク質の存在により細胞膜と融合する能力を特徴とする。いくつかの実施形態において、融合性リポソームは、pHおよび/または温度感受性であり、細胞膜との融合は温度および/またはpH変化の影響を受ける。(例えば米国特許第4,789,633号および第4,873,089号、第6,200,598号および第6,726,925号を参照されたい)。一般に、pH感受性リポソームは酸感受性である。従って、pHが弱酸性である生理学的環境、例えばリソソーム、エンドソーム、および炎症性組織などの環境においては、融合が促進される。この性質は、リポソームのエンドサイトーシスの後に、リポソーム内容物が細胞内環境に直接放出されるようにする(Mizoue, T., 2002, Int. J. Pharm. 237: 129-137)。
【0075】
リポソームとしてはまた、親水性ポリマーにより誘導体化された小胞、例えば米国特許第5,013,556号および第5,395,619号(参照によりこれらを本明細書に組み入れる)に提供されるものも挙げられ、誘導によりin vivoでの循環寿命が延長される(またKono, K. ら, 2000, J. Controlled Release 68: 225-35; Zalipsky ら, 1995, Bioconjug. Chem. 6: 705-708も参照のこと)。リポソームのコーティングまたは誘導体化用の親水性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、およびポリアスパルトアミドが挙げられる。他の種類の適当なコーティングは当業者に明らかとなるであろう。
【0076】
リポソームは当技術分野の周知技術により調製される(例えば、Szoka ら, 1980, Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9: 467-508を参照のこと)。ある典型的な方法は、脂質薄膜水和技術であり、この方法では脂質成分を有機溶媒中で混合し、その後溶媒を蒸発させて脂質薄膜を製造する。薄膜を水性緩衝溶液(好ましくは目的ポリペプチドまたは核酸を含有する溶液)で水和させるとエマルジョンが得られ、それを超音波で分解するまたは押出により大きさを縮小し多分散性を減少させる。他の方法としては、逆相蒸発法(例えばPidgeon ら, 1987, Biochemistry 26:17-29; Duzgunes ら, 1983, Biochim. Biophys. Acta. 732:289-99を参照)、リン脂質混合物の凍結および融解法、ならびにエーテル注入法が挙げられる。
【0077】
局所投与のためには、生理活性物質を、当技術分野で周知のように、溶液、ゲル、軟膏、クリームおよび懸濁物として配合することができる。いくつかの実施形態においては、馴化培地を、経皮送達システムを介して適用することができ、該システムは経皮吸収される生理活性物質を徐々に放出する。浸透促進剤を使用して、馴化培地中の活性因子の経皮浸透を促進することができる。経皮パッチは、例えば米国特許第5,407,713号; 第5,352,456号; 第5,332,213号; 第5,336,168号; 第5,290,561号; 第5,254,346号; 第5,164,189号; 第5,163,899号; 第5,088,977号; 第5,087,240号; 第5,008,110号; および第4,921,475号に記載されている。
【0078】
さらに、1種以上の結合性タンパク質/ペプチドを、微粒子ポリマーマトリックス内に、その形成時に部分的に封入することができる。こうした環境下では、かかる封入された結合性タンパク質/ペプチドは、該微粒子に残存する選択的結合特性を付与する。穏やかな微粒子形成条件、例えばCohen ら, 1991, Pharmaceutical Research 8:713-720に使用された条件を用いて、馴化培地中の因子の活性を保持することができる。かかる封入された結合性タンパク質はまた、エキソサイトーシスを経て部分分解された微粒子が標的細胞に再付着するに有用であり得る。種々の露出官能基を有する他のポリマー性微粒子型剤形(例えば非生分解性剤形)を、上に論じた原理に従い、結合性タンパク質またはペプチドに結合させることができる。
【0079】
馴化培地は、単独で、または組織修復を促進するのに有用な他種の適合性生理活性物質と併用して、用いることができる。いくつかの実施形態においては、下にさらに説明するが、馴化培地を、(例えば心血管疾患を治療するために)使用する他の化合物または組成物と併用して使用することができる。いくつかの実施形態において、併用する物質はVEGF活性のモジュレーターを含む。
【0080】
組織修復を促進するための培養三次元型組織から産生される生理活性物質の使用
馴化培地またはその成分、例えば三次元型組織により産生されるWnt因子のレパートリーは、損傷組織を成長および/または修復するために使用することができる。組織損傷および欠陥は、多数の症状、限定するものではないが、例えば疾患、手術、環境的曝露、負傷、および加齢などの結果生じうる。例えば、組織損傷は、虚血(典型的には筋肉への血液と酸素の供給不足により引き起こされる)の結果生じうる。一般に、本明細書において「組織修復促進活性および/または特性」とは、馴化培地もしくはその成分を適用することにより、損傷組織内の1以上の次の生理学的変化が促進されることを意味する: (1)血管新生および/または再血管形成; (2)新組織の刺激および/または成長; (3)内皮形成; および(4)タイトジャンクション数の改善; (5)細胞性突起および微絨毛の増加; ならびに(6)治療組織の1以上の機能の、対応する健康組織において観察されるレベルへの、部分的または完全な回復。例えば、治療組織が心臓組織であれば、駆出率または心拍出量により測定される、心臓のポンプ効率の改善が観察される。再血管形成は、非侵襲的手段、例えば当業者が通常使用する超音波画像診断法により測定することができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、損傷組織としては、心筋組織、骨格筋組織、脳組織(例えば脳梗塞または脳を覆う動脈と静脈の奇形(すなわち、AV奇形)に冒された脳組織)、腎臓、肝臓、胃腸管の臓器、萎縮を患っている筋肉組織(神経学的要因の筋萎縮を含む)、および肺組織が挙げられる。さらなる実施形態において、損傷組織は、哺乳動物、例えばヒトに存在する。
【0082】
他の実施形態において、損傷組織としては限定するものではないが皮膚が挙げられ、これには組織傷害、例えば皮膚潰瘍および火傷、ならびにもはや毛幹を産生しなくなった毛包が含まれる。
【0083】
いくつかの実施形態において、損傷組織は人工的に作られたもの、すなわち、外科手術の結果生み出されたものであり得る。
【0084】
種々の実施形態において、三次元型組織により産生され、かつ典型的には馴化培地にさらに存在するタンパク質のレパートリーには、Wnt5a、Wnt7a、およびWnt11の少なくとも1種、典型的にはWnt5a、Wnt7aおよびWnt11(上に記載)がそれぞれ、含まれる。
【0085】
いくつかの実施形態において、馴化培地またはその成分(例えば単離されたWntタンパク質)は、損傷心臓組織の修復促進に有用性である。いくつかの実施形態において、馴化培地またはその成分を損傷心臓組織に投与することができる。他の実施形態においては、馴化培地の投与を他の治療法と併用して行うことができる。例えば、本特許出願と同時出願された「虚血組織の治療方法(Methods for Treating Ischemic Tissue)」と題された米国特許出願番号第__________号を参照されたい。参照によりその全内容を本明細書に組み入れる。
【0086】
いくつかの実施形態においては、馴化培地またはその成分を、培養した三次元型組織と併用して、損傷心臓組織に投与することができるが、このとき後者は幹細胞を含む(例えば本特許出願と同時出願された「虚血組織の治療方法(Methods for Treating Ischemic Tissue)」と題された米国特許出願番号第__________号を参照のこと、参照によりその全内容を本明細書に組み入れる)。いくつかの実施形態において、損傷組織は心臓組織である。理論に拘束されることを意図するものではないが、この方法は、幹細胞または前駆細胞の機能性心臓組織への動員および/または分化を促進すると考えられている。馴化培地の投与後の損傷心臓組織の改善を測定する適当な方法は、本特許出願と同時出願された「虚血組織の治療方法(Methods for Treating Ischemic Tissue)」と題される米国特許出願番号第__________号に記載されている。参照によりその全内容を本明細書に組み入れる。
【0087】
いくつかの実施形態において、馴化培地またはその成分、例えば単離されたWntタンパク質は、損傷腸組織、例えば小腸、大腸、結腸またはその組み合わせに存在する組織の修復促進に有用である。いくつかの実施形態において、損傷腸組織は、種々の腸疾患、例えばクローン病、過敏性腸疾患、および潰瘍性大腸炎と診断された個体に存在する。治療後に、損傷腸組織の機能改善を、細胞間アドヘレンスジャンクションおよびタイトジャンクションの増加による腸浸透性変化により測定することができる。腸浸透性変化を測定するためのさらなる検査は、Bjarnason, 1994, Gut, 35 (1Suppl):S18-22, およびDeMeo ら, 2002, J. Clin Gastroenterol, 34(4):385-96, Korzenik, JR, 2005, J Clin Gastroenterol, 39(4 Suppl 2):S59-65に考察されており、参照によりその全開示内容を本明細書に組み入れる。損傷腸組織の機能改善を測定するために使用可能な他の手法としては、限定するものではないが、治療の前後で外傷の数および/または位置を比較すること、治療後の患者の健康の報告、治療後の下痢、鼓腸、筋痙攣、および出血などの症状の軽減が挙げられる。
【0088】
いくつかの実施形態において、損傷腸組織の治療は、損傷腸組織と培養三次元型組織とを接触させることにより行うことができる。これは例えば本特許出願と同時出願された「虚血組織の治療方法(Methods for Treating Ischemic Tissue)」と題される米国特許出願番号第__________号、および「三次元型組織およびその使用(Three Dimensional Tissues and Uses Thereof)」と題される米国特許出願番号第__________号に記載のように行う。参照によりこれらの全内容を本明細書に組み入れる。こうした実施形態において、馴化培地またはその成分、例えば単離されたWntタンパク質を、培養三次元型組織による治療と同時にまたはその後に、組織に適用することができる。例えば、いくつかの実施形態においては、馴化培地を、培養三次元型組織による治療後の選択した時間に投与することにより、治療した腸組織を非病変状態に維持することができる。治療後の損傷腸組織の機能改善は上記のように測定することができる。
【0089】
いくつかの実施形態において、馴化培地またはその成分、例えば単離されたWntタンパク質は、追加の発毛が望まれるまたは望ましい被験体における発毛促進に有用である。実施形態は、例えば本特許出願と同時出願された「発毛促進用の組成物および方法(Compositions and Methods for Promoting Hair Growth)」と題される米国特許出願番号第________号に記載されており、参照によりその全内容を本明細書に組み入れる。
【0090】
用量
生理活性物質は典型的には対象の損傷組織を治療する有効量で使用する。生理活性物質は、治療的に投与して治療効果を上げるか、または予防的に投与して予防効果を上げることができる。治療効果とは、治療中の基礎症状または障害の根絶または改善を意味する。治療効果はまた、改善が認識されるか否かに無関係に、疾患の進行を停止または遅らせることも含む。
【0091】
予防投与については、活性化合物を、損傷組織を特徴とする、損傷組織により引き起こされる、または損傷組織の形成を伴う障害(例えば上記の種々の障害)を形成するリスクのある患者に投与することができる。例えば、馴化培地の投与を、損傷組織の症状の出現の前に、または組織損傷の最初の兆候の後に症状の悪化を回避するために、行うことができる。予防投与は、基礎障害を有すると診断された患者における症状の発症を回避するために実施することができる。活性化合物はまた、投与が美容目的、例えば脱毛に対する処置または予防のためである健康個体に投与することができる。
【0092】
投与する、馴化培地またはそこから部分的にもしくは完全に精製もしくは単離された因子の量は、種々の要因に依存し、要因としては例えば、治療するその特定の症状、投与様式、所望の効果が予防であるのか治療であるのか、治療する症状の重症度、および患者の年齢と体重、ならびに剤形の効率、などが挙げられる。有効用量の決定は、明らかに当業者の能力の範囲内にある。
【0093】
初回量は、in vitroアッセイから最初に推定することができる。例えば、初回量は、米国特許公開第20040219134号および本特許出願と同時出願された「虚血組織の治療方法(Methods for Treating Ischemic Tissue)」と題される米国特許出願番号第__________号に記載の血管新生アッセイを用いて策定することができる。参照によりこれらの全内容を本明細書に組み入れる。初回量はまた、in vivoデータ、例えば動物モデルから推定することもできる。化合物の有効性を検査するのに有用な動物モデルとしては、齧歯類、霊長類および他の哺乳動物、例えばブタ、ウサギ、およびイヌが挙げられる。当業者はかかる情報を定型的に応用して、ヒト投与に適当な用量を決定することができる。
【0094】
用量は、馴化培地の活性、投与様式、処置する症状、および上記の種々の要因などの要因に依存する。用量と投与間隔は、治療または予防効果を維持するのに十分なレベルを提供するために個別に調節することができる。組成物は、処置する症状、所望の組織修復のレベル、および処方する臨床医の判断などに応じて、必要な頻度(例えば1日1回、1日2回以上、週1回、週2回以上、月1回、月2回以上)で投与することができる。組成物は実質的な毒性または有害な免疫反応を引き起こすことなく、治療または予防効果を提供する。当業者は、過度の実験なしに有効な局所用量を最適化することができる。
【0095】
投与の空間密度(例えば所定の表面積に対する局所投与)は、組織の種類、組織損傷の程度、所望の組織修復のレベル、投与する馴化培地の容積、および組成物の有効性に依存する。馴化培地またはその部分的もしくは完全に精製もしくは単離された因子の投与についての種々の空間密度の利用に関する種々の実施形態は、本特許出願と同時出願された「三次元型組織およびその使用(Three Dimensional Tissues and Uses Thereof)」と題される米国特許出願番号第__________号に記載されており、参照によりその全内容を本明細書に組み入れる。
【0096】
キット
本明細書において、馴化培地または加工したその分画を本明細書に記載のような様々な形態で含むキットを提供する。キットは、馴化培地の液体、固体または粉末配合物を、投与に適当な形態で含有し得る。種々の実施形態においては、組成物を用時調製するための適当な希釈剤を、組成物を投与すべく調製するためにキットに追加することができる。キットはさらに投与用の機器、例えば注射器具(例えば手動、機械駆動または電動)を、当業者の使用のために、含み得る。他の化合物を馴化培地と併用して投与する場合には、それらもキットに含めることができる。典型的に組成物と一緒に付属するのは、組成物の調製と投与のための説明書である。これは様々な様式のもの、例えば印刷物、磁気ディスク、磁気テープ、コンパクトディスク、フラッシュメモリーまたは適当な情報を伝達するのに適当な他の媒体であり得る。
【0097】
本明細書に引用した全ての刊行物および類似資料(限定するものではないが、かかる刊行物および類似資料の様式に関わりなく特許、特許出願、論文雑誌、書籍および学術論文を含む)は、参照によりその全内容をあらゆる目的のために明確に本明細書に組み入れる。1以上の組み入れた刊行物および類似資料が本開示と異なるまたは矛盾する(限定するものではないが、用語定義、用語使用、記載手法などを含む)場合には、本明細書が優先する。
【0098】
本明細書の全ての数値範囲は、その上限と下限を含むことを意図する。
【0099】
特に断らない限り、本明細書に用いる全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。特に断らない限り、本明細書に用いたまたは考慮した技術は、当業者に周知の標準的方法論のものである。材料、方法および実施例は、例示的であるに過ぎず、限定的なものではない。
【実施例】
【0100】
実施例1:三次元型組織馴化培地により促進された上皮細胞の分化と修復
方法および材料
上皮細胞増殖および分化アッセイ
この研究では、三次元型組織馴化培地のin vitroにおける4種の異なるヒト上皮細胞系に対する影響を評価した。用いた細胞系は次の通りである: (1)継代2〜3代目(P2〜3)の一次ヒト表皮ケラチノサイト、(2)不死化腸上皮細胞系 (Caco-2)、(3)不死化呼吸器官上皮細胞系(NCI-H292)、および (4)不死化結腸上皮細胞系(HT-29)。これらの不死化細胞系はそれらの由来する組織の一般に認められたモデルであり、in vitroで詳しく特徴付けされている。表皮ケラチノサイトは一次細胞型を表す。
【0101】
細胞増殖
細胞系をATCCから入手し、24ウェルプレートに約5000 細胞/cm2塗布し、その後10%(v/v)試験物質または対照非馴化培地の存在下で2〜3日培養した。KGM-2培地(Clonetics, Inc.)中のP2の一次ヒト表皮ケラチノサイトもまたいくつかの実験において評価した。対照は、陰性対照としての、未処理細胞ならびに非馴化培地からなるものであった。PBS中で短時間洗浄した後、相対的細胞数を、Molecular Probes, Inc. CyQuant細胞増殖キットを用いてDNA蛍光から推定し、データをウェル当たりの相対DNA蛍光として、各条件につき6ウェルとして表した。実験を各細胞系について2回反復した。本明細書における研究において、馴化培地をNouricelという。
【0102】
免疫蛍光および位相差顕微鏡法
継代2代目の一次ヒト表皮ケラチノサイトを、10%(v/v) 対照非馴化培地または試験物質を添加した無血清培地を用いて、コラーゲンコーティング済みスライドガラスチャンバー上で2日間培養した。培養物を洗浄し、パラホルムアルデヒドで固定し、PBS中0.1 % Tween-20で可透過化(permeabilize)した。一次抗体はMab x ZO-1およびRb x Claudin-1 (Zymed, Inc.)であり、それぞれ2 μg/mlで30分間作用させ、その後、蛍光色素コンジュゲート型二次抗体を用いて、核対比染色試薬としてDAPIを添加し、Vectashield (Vector Labs, Inc.)に組み込んで検出した。固定化前に、生きた培養物を位相差照射下で約100x倍率で撮影した。
【0103】
器官型細胞培養物に対する透過型電子顕微鏡法
細胞を、コラーゲンコーティング済み微多孔膜に高細胞密度(100,000/cm2)( Caco-2細胞系の分化を支持することが知られている条件)で接種後、10%(v/v)の<10 kD三次元型間質組織馴化培地浸透物または未処理対照の存在下で、10日間培養した。Caco-2細胞系とNCI-H292細胞系の両方を評価した。培養物を洗浄し、その後改変カルノフスキー(Karnovsky)固定試薬を用いて固定し、その後標準法を用いて電子顕微鏡法のために加工した。
【0104】
蛍光遺伝子チップアレイによる発現解析
表皮ケラチノサイト、Caco-2細胞、およびNCI-H292細胞の10 cmディッシュ上での単層低密度培養物に、濃縮三次元型間質組織馴化培地または非馴化培地対照を3〜5日間施し、その後mRNAを単離した。cDNAへの変換と蛍光標識後、プールしたcDNAを遺伝子チップアレイとハイブリダイズさせた。約10,000種の既知遺伝子転写産物に対してハイブリダイズしたプローブの蛍光検出は、UC Irvine大学で行い、データはGenespringソフトウェアを用いて解析した。発現プロファイルにおける相対変化を比較しながら正規化蛍光をグラフにした。
【0105】
結果
三次元型間質組織馴化培地が4種の異なる上皮細胞型の細胞増殖に及ぼす影響の比較を図1に示す。全ての細胞系が応答したわけではなく、またすべての馴化培地が有効であったわけではない。三次元型間質組織馴化培地の細胞増殖に対する影響は細胞型特異的であり、すなわち三次元型間質組織馴化培地は一次表皮ケラチノサイトおよびNCI-H292細胞の両方の細胞増殖を促進したが、Caco-2細胞またはHT-29細胞の大部分については促進しなかった。こうした三次元型間質組織馴化培地処理培養物を位相差顕微鏡法で観察したところ、やはり影響は細胞型特異的であり、すなわちHT-29細胞は形態学的に変更されていなかったが、これに対してケラチノサイト(データ未掲載)、Caco-2細胞およびNCI-H292細胞は変更された。Caco-2およびNCI-H292細胞系の両方は、位相差顕微鏡法で観察したところ、ドーム様構造物の形成を示した。Caco-2細胞系はまた、三次元型間質組織馴化培地を施した後に、免疫蛍光により、アドヘレンスジャンクション(ZO-1)およびタイトジャンクションマーカーの両方の局在変化を示した。
【0106】
細胞間アドヘレンスジャンクションおよびタイトジャンクションの形成が上皮細胞分化の鍵となる要素であることから、三次元型間質組織馴化培地のCaco-2およびNCI-H292細胞系に及ぼす影響を、高密度器官型培養物において、頂端/基底外側分化およびジャンクション形成を促進するために微多孔性挿入物を用いて、細胞について評価した。これらの培養物の透過型電子顕微鏡法(TEM)を用いた解析からは、三次元型間質組織馴化培地を濃縮する工程由来の>10 kD浸透物が細胞分化に及ぼすいくつかの明確な影響が明らかになった。
【0107】
Caco-2およびNCI-H292細胞系のドーム様構造物の明確な形成は、分化の促進または誘発を示す可能性がある。なぜならば、ムチン産生(腸上皮および呼吸器官上皮の両方のマーカー)は、こうした細胞系ならびに培養における一次ヒト腸細胞および呼吸器官細胞において類似の形態学的変化をもたらすことが報告されているからである。
【0108】
こうした推定上分化した構造物の形成が細胞間ジャンクションの変更を伴うことから、本発明者らは、馴化培地がCaco-2細胞のアドヘレンスジャンクションおよびタイトジャンクションマーカーに及ぼす影響を免疫蛍光により評価した。この実験結果を図3に示す。図3では、コラーゲンコーティング済みスライドガラス上で、三次元型間質組織馴化培地を施したときのCaco-2細胞のアドヘレンスジャンクション(ZO-1)およびタイトジャンクション(claudin-1)マーカーに対する免疫蛍光分析を示す。対照培地パネル中には不連続性のZO-1染色が見られ(白矢印)、また三次元型間質組織馴化培地で処理したパネルの全てにはclaudin-1のジャンクション局在化が見られた(破線の白い矢印)ことに留意されたい。
【0109】
単純な上皮分化は、透過型電子顕微鏡法(TEM)により最もよく同定することのできる多数の詳しく特徴付けされた形態学的変化を示すことから、およびこの分化経路については標準単層培養が好都合ではないことから、TEM分析を、三次元型間質組織馴化培地で処理した器官型高密度微多孔膜培養物について行った。対照および三次元型間質組織馴化培地で処理したCaco-2細胞について厚みのある切片を示す(図4)。三次元型間質組織馴化培地で処理した細胞は、全厚が変化しており、円柱状構造が増加しており、細胞間空間が増加している。これらは全て、この種類の細胞の正常な分化の特徴である。
【0110】
倍率を大幅に高めると、三次元型間質組織馴化培地処理後に変化する多数の特徴が観察される。図5は、高密度器官型培養物において馴化培地<10 kD浸透物がCaco-2細胞に及ぼす影響のTEM分析を示す。下の2つのパネルでは、次の特徴が際立っている:核膜、冊子縁(brushborder)微絨毛、ミトコンドリアおよび細胞性突起。細胞性突起、微絨毛の増加、およびミトコンドリア配置(三次元型間質組織馴化培地サンプルの頂端)に留意されたい。強調されてはいないが、馴化培地サンプルは対照と比較してタイトジャンクションの頻度が少なかった。
【0111】
図6は、高密度器官型培養物において馴化培地<10 kD浸透物がCaco-2細胞に及ぼす影響のTEM分析であり、細胞性突起、頂端微絨毛および高密度グリコーゲン沈着物に対する影響を示す。顕微鏡写真は、こうしたCaco-2細胞の培養物における三次元型間質組織馴化培地により明らかに誘導された高密度の細胞性突起を示す。グリコーゲン沈着物および高密度の微絨毛も観察される。
【0112】
予備スクリーニングにおいて、濃縮した三次元型間質組織馴化培地が全体的な遺伝子発現に及ぼす影響を、表皮ケラチノサイト、Caco-2細胞、およびNCI-H292細胞の培養物について調べた(添加物として)。非馴化培地対照と比較したときに、三次元型間質組織馴化培地により3種の細胞型(表皮ケラチノサイト、Caco-2細胞、およびNCI-H292細胞)の遺伝子発現レベルが変化したが、これは相対的順位にするとケラチノサイト>NCI-H292>>Caco-2細胞の順であった。
【0113】
上記結果は、馴化培地が、in vitroで一部の上皮細胞に影響を及ぼすことのできる活性(または複数種の活性)を含有することを示唆する。三次元型間質組織馴化培地は、上皮細胞の細胞増殖を細胞系特異的様式で増強することができるが、ただし全種類の馴化培地が有効であるわけではない。三次元型間質組織馴化培地はまた、低密度単層型および器官型細胞培養物において、光学顕微鏡および電子顕微鏡レベルの両方で、上皮細胞形態学を変更させることができる。こうした変化の一部は促進された分化と一致する。
【0114】
実施例2 マウス毛髪モデルにおける間質組織馴化培地の注射
この研究では、C57B1/6マウスにおいて、線維芽細胞からなる三次元型組織由来の馴化培地が、毛包発達に及ぼす影響を評価した。実験は、発毛を誘発する真皮乳頭細胞由来の誘導性シグナルの擬似因子を含有するか否かを調べることを目的とした。真皮線維芽細胞馴化培地により誘導される発毛活性の候補物質としては、Wnt遺伝子産物が挙げられる。なぜならば、(1) Wnt-シグナル伝達は、胎児発育中に核のβ-カテニンを介して行われる; (2)安定型β-カテニン突然変異導入遺伝子はマウスおよびヒトにおいて毛包脂腺腫瘍を形成する、および(3)移植された真皮乳頭は齧歯類において小胞を誘発させ、これにはWntシグナル伝達が必要である、ことが挙げられる。また、毛髪成長誘導には、KGF/FGF-7、ホルモン(T3、PTH、アンドロゲン)、ソニックヘッジホッグ、およびWnt遺伝子産物が関わっていると考えられている。
【0115】
C57B1/6マウスは、毛髪研究に適している。なぜならばC57B1/6マウスは、約P45〜P65日の長い毛髪休止期である同期した毛包周期を示すこと、および、毛髪成長期中の毛球においてのみ濾胞性メラノサイトを示し、そのことにより毛髪成長期の開始が皮膚の黒い色から視覚的に明白となることが挙げられる。この研究では、馴化培地が発毛に及ぼす影響を、約7週齢雌C57B1/6マウスの背側皮膚における1回の皮下注射(SQ)により調べた(背側注射部位は毛髪休止期)。組織学と写真撮影は14日目(全種類)および30日目(対照、希釈なし(neat)) N=3に行った。試験群は、ブランク培地対照、10x 希釈なし(neat)、10x 希釈1/10、1/100 浸透物形態の10kD濃縮物、局所投与型、および実験用無血清馴化培地を含む。組織を毛包形成について調べた。
【0116】
in vitroにおける表皮ケラチノサイト中のWntシグナル伝達のIn vitro分析も行った。図15は、in vitroにおける表皮ケラチノサイト中のWntシグナル伝達を示す。β-カテニンの核トランスロケーションが馴化培地により誘発されており、馴化培地がWntタンパク質を含有するとの強力な証拠を提供する。
【0117】
マウスの結果は、三次元型組織から製造した馴化培地が、皮膚に注射したときに活性であり発毛を誘発することを示す。毛包発達は注射部位に限局される。WntおよびWnt仲介シグナル伝達活性は、馴化培地で処理したマウスにおける発毛の原因となる機構である可能性がある。なぜならば(a) 遺伝子チップにおいて線維芽細胞はWnt遺伝子を発現している、また(b) 馴化培地はin vitroにおいて表皮ケラチノサイト中のWntシグナル伝達を誘発するからである。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は、4種の異なる上皮細胞型(Caco-2、NCI-H292、一次ケラチノサイト、およびHT29)の細胞増殖に対する三次元型組織馴化培地の影響を示す。馴化培地は、一次ケラチノサイトおよびNCI-H292細胞の増殖を促進したが、Caco-2またはHT29細胞の大部分については促進しなかった。全ての細胞系が応答したわけではなく、また全ての馴化培地が有効であったわけではない。
【図2】図2は、馴化培地で処理した細胞の位相差顕微鏡法結果を示す。Caco-2、NCI-H292および表皮ケラチノサイト(未掲載)の形態は馴化培地により変化するのに対して、HT-29細胞は影響されなかった(未掲載)。Caco-2細胞系およびNCI-H292細胞系のドーム様構造物の明確な形成は、分化の促進または誘発を示し得る。なぜならば、ムチン産生(腸上皮および呼吸器官上皮の両方のマーカー)は、こうした細胞系ならびに培養における一次ヒト腸細胞および呼吸器官細胞において類似の形態学的変化をもたらすことが報告されているからである。
【図3】図3は、コラーゲンコーティング済みスライドガラス上に載せ、三次元型間質細胞組織由来の馴化培地で処理したCaco-2細胞中の、アドヘレンスジャンクションマーカー(ZO-1)およびタイトジャンクションマーカー(claudin-1)の免疫蛍光による分析を示す。対照培地パネル中には不連続性のZO-1染色が見られ(白矢印)、また三次元型組織馴化培地処理済みパネルの全てにclaudin-1のジャンクション局在化が見られた(破線の白矢印)。
【図4】図4は、透過型電子顕微鏡法により分析した、馴化培地で処理した器官型、高密度微多孔膜培養物の形態学的変化を示す。対照培地および三次元型間質組織馴化培地で処理したCaco-2細胞の組織切片を示す。三次元型組織馴化培地で処理した細胞は、全厚が増しており、より円柱状構造をしており、細胞内空間が増加している。これらは全て、この種類の細胞の正常な分化の特徴である。
【図5】図5は、高密度器官型培養物において三次元型間質組織馴化培地<10 kD浸透物がCaco-2細胞に及ぼす影響の高倍率透過型電子顕微鏡分析を示す。細胞性突起、微絨毛の増加、およびミトコンドリア配置(三次元型間質組織馴化培地サンプルの頂端に)が見られる。タイトジャンクションは、対照よりも三次元型組織馴化培地サンプルにおいて低頻度であった。
【図6】図6は、高密度器官型培養物におけるCaco-2細胞に対する三次元型間質組織馴化培地<10 kD透過物のTEM分析であり、細胞性突起、頂端微絨毛、および密なグリコーゲン沈着に対する影響が示されている。
【図7】図7は、成熟C57B1/6マウスの発毛を刺激するために注射した馴化培地の影響を示す。注射から30日後に発毛を観察した。
【図8】図8は、馴化培地で処理したC57B1/6マウスを示す。
【図9】図9は、馴化培地注射の30日後の皮膚色素沈着変化を示す。
【図10】図10は、馴化培地で処理した動物の皮膚の組織学的検査を示す。
【図11】図11は、1/100希釈した10X 馴化培地を与えたマウスにおいて、ブランク培地対照と比較して、馴化培地の注射から14日後に毛包が誘導されたことを示す、14日後の組織学的比較(トリコーム染色を使用)である。
【図12】図12は、馴化培地による毛包成長期誘導が注射部位に限定されることを示す。
【図13】図13は、馴化培地の注射により誘導された濾胞の断面を示す。濾胞は、結合組織鞘、外毛根鞘、内毛根鞘、皮質、マトリックス、および真皮乳頭を含め、正常な毛髪成長期形態を示す。
【図14】図14は、馴化培地誘発毛包におけるケラチン15およびケラチン10発現を示す。これは正常型成熟毛包の証拠となる。
【図15】図15は、in vitroにおける表皮ケラチノサイトのWntシグナル伝達を示す。馴化培地によりβ-カテニンの核トランスロケーションが誘発され、これは馴化培地がWntタンパク質を含有することの証拠となる。
【図16】図16は、成熟SCIDマウスにおける毛包形成の組織学的評価を示す。左パネルはブランク培地対照を注射した動物の組織切片であり、右パネルは三次元型組織馴化培地を注射した動物の組織切片を示す。成熟SCIDマウスに皮下(SQ)注射を1回施し、その10日後に動物を観察した。
【図17】図17は、三次元型間質組織馴化培地により誘導される濾胞構造の14日後の定量化を示す。y軸は組織学領域における濾胞様構造物の数である。
【図18】図18は、濾胞構造を定量した統合データを示す(N = 6)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
損傷組織の治療方法であって、損傷組織と、三次元型組織による1種以上の生理活性物質の分泌に適当な条件下で培養した三次元型組織培養物由来の培地を含む組成物とを、接触させることを含む前記方法。
【請求項2】
損傷組織の治療方法であって、損傷組織と、三次元型組織による1種以上の生理活性物質の分泌に適当な条件下での三次元型組織培養物から得られた培地から少なくも部分精製された少なくとも1種の生理活性物質を含む組成物とを接触させることを含む前記方法。
【請求項3】
組成物が少なくとも1種のWntタンパク質を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
1種以上のWntタンパク質が、Wnt5a、Wnt7a、およびWnt11aからなる群より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
組成物が1種以上の増殖因子をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項6】
増殖因子が、血管内皮増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、結合組織増殖因子(CTGF)、およびトランスフォーミング増殖因子(TGF) からなる群より選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
損傷組織が心臓組織である、請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
損傷組織が虚血組織である、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
虚血組織が虚血心臓組織である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
損傷組織が腸組織である、請求項1または2記載の方法。
【請求項11】
損傷腸組織が小腸、大腸、結腸またはその組み合わせである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
三次元型組織が線維芽細胞を含む、請求項2記載の方法。
【請求項13】
三次元型組織が幹細胞を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項14】
1種以上の生理活性物質を含む組成物の製造方法であって、
a) 三次元型組織を生理活性物質の増殖培地への分泌に適した条件下で培養するステップ、
b) 該増殖培地から1種以上の生理活性物質を少なくとも部分精製するステップ、および
c) 該1種以上の部分精製した生理活性物質を製薬上許容される担体に加えるステップ、
を含む前記方法。
【請求項15】
1種以上の生理活性物質がWntタンパク質である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
1種以上のWntタンパク質が、Wnt5a、Wnt7a、およびWnt11aからなる群より選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
組成物が1種以上の増殖因子をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
増殖因子が、血管内皮増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、結合組織増殖因子(CTGF)、およびトランスフォーミング増殖因子(TGF)からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
三次元型組織が線維芽細胞を含む、請求項14記載の方法。
【請求項20】
三次元型組織が幹細胞を含む、請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2008−511662(P2008−511662A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530301(P2007−530301)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/030939
【国際公開番号】WO2006/026652
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
2.テフロン
【出願人】(505175375)セレゲン,インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】