説明

搬出入システム

【課題】搬出入作業時に建物内へ外気が吹き込むのを有効に防止すると共に、輸送車両から天井クレーンによって荷物を建物内の主エリアの所定箇所へ移送して荷下ろしをしたり、主エリア内の所定箇所から天井クレーンによって直接荷物を輸送車両へ積み込んだりすることができる搬出入システムを提供する。
【解決手段】扉で開閉される搬出入口11aの内側に位置して建物内に設置されこの建物内の主エリアから隔絶した入出荷エリア2Aを画成可能な開閉ブース2と、前記建物内に開閉ブース2の上側を経由して移動可能に設けられた天井クレーン3とを備え、開閉ブース2が、輸送車両が進入可能であって、天蓋部を有し入れ子状に重合可能な複数の可動セグメント21,22からなり、これらの可動セグメント21,22が互いに引き戸式に移動することにより開閉される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場や倉庫等の建物における製品や機械、原材料等の荷物を搬出入するためのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の工場や倉庫等の建物を示す概略的な平面図である。すなわち、建物100の外壁101には搬出入口102が開口しており、この搬出入口102に貨物自動車等の輸送車両200が進入して、製品や機械、原材料等の荷物Fが搬出入される。また、建物100内には、その長手方向(X方向)の外壁101の上部に設けられたレール103a,103a間に架設されてこのレール103a,103a上を走行する桁103bと、この桁103b上をY方向へ走行するトロリ又はホイスト等の巻上走行機103cとを備える天井クレーン103が設置されており、輸送車両200への荷物Fの積み込みや輸送車両200からの荷物Fの搬入は、この天井クレーン103を用いて行うことができる。
【0003】
ところが、搬出入口102を開放して輸送車両200を進入させて荷物Fの搬出入作業を行う際には、建物100内への外気Aの吹き込みを生じる。特に、冬季や夏季には寒気や熱気などが入り込むことによって、適切に保たれていた建物100内部の温度環境が損なわれるばかりでなく、外気Aと共に塵埃も建物100内へ吹き込んだり、鳥類などが入り込んだりするおそれもある。
【0004】
図9は、このような問題を解決するための従来技術として、搬出入ブースを有する建物を示す概略的な平面図、図10は、同じく概略的な鉛直断面図である。すなわちこれら図9及び図10に示される従来技術では、建物100内に、扉111によって開閉される搬出入口102を通じて輸送車両200が進入可能な搬出入ブース110を構築したものである。搬出入ブース110内は、扉113を有する壁面112によって建物100内の主エリア(建物100が工場である場合は生産エリア)100aと区画されている。
【0005】
すなわち、この構成によれば、搬出入ブース110と主エリア100aを区画している壁面112に設けた扉113を閉鎖した状態で、搬出入口102の扉111を開放して、輸送車両200を後進により搬出入ブース110内へ進入させてから、扉111を閉鎖し、次に搬出入ブース110の壁面112の扉113を開放して、輸送車両200に積まれた荷物Fを図10に示されるフォークリフト300及び天井クレーン103などを用いて主エリア100a内の所定箇所へ移送し、あるいは主エリア100a内の荷物Fを天井クレーン103及びフォークリフト300などを用いて搬出入ブース110内で待機する輸送車両200へ積み込む。したがって、搬出入ブース110への輸送車両200の進入や搬出入ブース110からの輸送車両200の退出に際しては扉113を閉鎖し、輸送車両200への荷物Fの積み込みや輸送車両200からの荷物Fの搬入に際しては搬出入口102の扉111を閉鎖しておくことによって、搬出入作業時の建物100内への外気の吹き込みを有効に防止することができる。
【0006】
なお、このように搬出入口にブースを設けることによって内部の温度環境を保持するようにした典型的な従来技術としては、下記の特許文献1のようなものが知られている。
【特許文献1】特開平9−235003号公報
【0007】
しかしながら、上記従来技術によれば、建物100に搬出入ブース110を一体に構築しているため、レール103a,103aによる桁103bの走行可能距離、言い換えればX方向に対する天井クレーン103の可動距離Lは、搬出入ブース110の壁面112によって制限される。このため搬入の場合は、輸送車両200に積まれた荷物Fを、図10に示されるフォークリフト300や別設のクレーンなどを用いていったん主エリア100a内へ下ろしてから、天井クレーン103によって主エリア100a内の所定箇所へ移送する必要があり、搬出の場合にも同様に、主エリア100a内の所定箇所から荷物Fを天井クレーン103によって扉113による搬出入ブース110への出入り口付近まで移送してから、搬出入ブース110内で待機する輸送車両200へフォークリフト300や別設のクレーンなどを用いて積み込む必要がある。
【0008】
このため、フォークリフト300や別設のクレーンなどが必要となる分、搬出入のための設備コストが高くなるばかりでなく、搬出入ブースが存在しない場合(図8)のように輸送車両200から天井クレーン103によって直接荷物Fを主エリア100a内の所定箇所へ移送して荷下ろしをしたり、主エリア100a内の所定箇所から天井クレーン103によって直接荷物Fを輸送車両200へ積み込んだりすることができず、作業が煩雑になる問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述のような問題に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、搬出入作業時に建物内へ外気が吹き込むのを有効に防止すると共に、輸送車両から天井クレーンによって荷物を建物内の主エリアの所定箇所へ移送して荷下ろしをしたり、主エリア内の所定箇所から天井クレーンによって直接荷物を輸送車両へ積み込んだりすることができる搬出入システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の技術的課題を有効に解決するための手段として、本発明に係る搬出入システムは、扉で開閉される搬出入口の内側に位置して建物内に設置されこの建物内の主エリアから隔絶した入出荷エリアを画成可能な開閉ブースと、前記建物内に前記開閉ブースの上側を経由して移動可能に設けられた天井クレーンとを備え、前記開閉ブースが、輸送車両が進入可能であって、天蓋部を有し入れ子状に重合可能な複数の可動セグメントからなり、これらの可動セグメントが互いに引き戸式に移動することにより開閉されるものである。
【0011】
上記構成によれば、搬出入口を通じて開閉ブースによる入出荷エリアへ輸送車両が進入したりこの入出荷エリアから輸送車両が退出したりする際には、開閉ブースの可動セグメントを閉鎖し、輸送車両からの荷物の搬入や輸送車両への荷物の積み込みに際しては、搬出入口の扉を閉鎖しておくことによって、搬出入作業時に建物内の主エリアへ外気が吹き込むのを有効に防止することができる。また、建物の内部に設けられた天井クレーンが、開閉ブースの上側を経由しているので、開閉ブースの可動セグメントを開くことによって、入出荷エリア内の輸送車両から天井クレーンで直接、荷物を前記主エリアの所定箇所へ移送して荷下ろしをしたり、主エリア内の所定箇所から天井クレーンで直接、荷物を入出荷エリア内の輸送車両へ積み込んだりすることができる。
【0012】
また、本発明に係る搬出入システムにおける好ましい例としては、搬出入口が建物の長手方向中間位置に設けられ、この搬出入口の内側に位置する開閉ブースが、その両側の主エリアに対して開閉されるものである。
【0013】
また、本発明に係る搬出入システムにおける好ましい他の例としては、開閉ブースの可動セグメントが下端に車輪を有し、この車輪が建物の床面に敷設されたレール上を転動するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る搬出入システムによれば、搬出入作業時に建物内の主エリアへ外気が吹き込むのを有効に防止することができる。また、開閉ブースによる入出荷エリア内の輸送車両から天井クレーンで直接、荷物を建物内の主エリアの所定箇所へ移送して荷下ろしをしたり、主エリア内の所定箇所から天井クレーンで直接、荷物を輸送車両へ積み込んだりすることができるので、フォークリフトなど他の搬出入設備が不要であり、搬出入作業を容易・迅速に行うことができる。しかも、荷物の搬出入を行わない場合は、可動セグメントを互いに入れ子状に重合させておけば開閉ブースが開放されると共に縮小されるので、建物内を広く使うことができる。
【0015】
また、搬出入口が建物の長手方向中間位置に設けられ、開閉ブースがこの搬出入口の内側に設けられることによって、その両側の建物内エリアに対して入出荷を行うことができる。
【0016】
また、開閉ブースの可動セグメントが建物の床面に敷設されたレール上を転動する車輪によって円滑に移動可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る搬出入システムの好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る搬出入システムの第一の形態を示す概略的な平面図、図2は、図1におけるII-II断面図、図3は、第一の形態における開閉ブース及び天井クレーンの一部を示す部分斜視図である。
【0018】
まず図1及び図2において、参照符号1は工場又は倉庫等の建物である。この建物1の躯体壁11には、その長手方向(X方向)中間位置に、貨物自動車等の輸送車両4が通り抜け可能な搬出入口11aが開口しており、この搬出入口11aは跳ね上げ式の扉12で開閉可能となっている。
【0019】
建物1内には、搬出入口11aの内側に位置して設置された開閉ブース2と、この開閉ブース2の上側を経由して移動可能に設けられた天井クレーン3とを有する。
【0020】
開閉ブース2は輸送車両4が進入可能な大きさであって、入れ子状に重合可能な外側の可動セグメント21及び内側の可動セグメント22を1組として1対、すなわち合計4台の可動セグメントを有する。
【0021】
詳しくは図3に示されるように、各可動セグメント21(22)は、鋼材からなるフレームにテント材又は軽量の金属板や合成樹脂板を張った構造を有するものであって、互いに平行で略鉛直な1対の側壁部21a(22a)及びその上端間を覆うように延びる天蓋部21b(22b)からなる将棋駒状を呈する。図1に示されるように、各可動セグメント21(22)の奥行、言い換えれば側壁部21a(22a)の幅Lwは、建物1の躯体壁11,11間の内法、すなわちY方向の内法をLとすると、L/2>Lw>L/4であり、かつLw≒L/4となっている。
【0022】
各可動セグメント21(22)の側壁部21a(22a)の下端には、それぞれ複数の車輪21c(22c)が取り付けられている。
【0023】
建物1の床面には搬出入口11aの左右両側の位置から建物1の躯体壁11に対して直交する方向(Y方向)へ互いに平行に延びる2本1組の、2組のレール25が敷設されており、外側の可動セグメント21の車輪21cは外側のレール25a上を転動し、内側の可動セグメント22の車輪22cは内側のレール25b上を転動するようになっている。
【0024】
すなわちこの開閉ブース2は、車輪21c,22cがレール25に沿って転動しながら可動セグメント21,22がY方向へ互いに引き戸式に移動し、外側の可動セグメント21,21同士、又は内側の可動セグメント22,22同士が互いに近接又は離間することによって開閉を行うもので、建物1内の主エリア1A(例えば工場における生産ラインなどのエリア)のX方向中間に位置している。
【0025】
天井クレーン3は、建物1のY方向両側の躯体壁11,11の内側面上部にそれぞれ設けられX方向へ延びる1対のレール31,31と、Y方向に延びて両端にこのレール31,31上をX方向へ走行する車輪32a(図2参照)を有する桁32と、この桁32上をY方向へ走行する車輪33a(図3参照)を有するトロリ又はホイスト等の巻上走行機33とからなり、巻上走行機33により鉛直方向(Z方向)へ巻き上げられるロープの先端に設けられたフック33bに荷物Fを玉掛けして揚重するものである。
【0026】
この天井クレーン3において、レール31,31は建物1におけるY方向両側の躯体壁11,11のX方向全長にわたって設けられているので、桁32の走行可能範囲はX方向両側の側壁13,13間の内法Lに近似する長さを有し、桁32はY方向両端がレール31,31上に達しているので、巻上走行機33の走行可能範囲はY方向両側の躯体壁11,11間の内法Lに近似する長さを有する。したがって、天井クレーン3による搬送可能範囲は、建物1内のほぼ全域に及ぶものとなっている。
【0027】
なお、可動セグメント21,22をY方向に投影したときの外郭は、図2に示されるように、搬出入口11aの開口縁より大きく、図3に示されるように、可動セグメント21,22の天蓋部21b,22bの高さは、天井クレーン3における巻上走行機33の走行高さよりも低いものとなっている。
【0028】
以上のように構成された第一の形態において、輸送車両4から原材料等の荷物Fを建物1内の主エリア1Aの所定箇所へ搬入する場合について説明すると、この場合はまず、例えば外側の可動セグメント21,21を建物1の躯体壁11とほぼ衝合させた状態で、内側の可動セグメント22,22をその対向方向へ移動させて躯体壁11,11間の中間位置で互いに衝合させることによって、予め開閉ブース2を閉鎖しておく。すなわち、これによって開閉ブース2内の入出荷エリア2Aが前記主エリア1Aと隔絶される。
【0029】
次に、搬出入口11aの扉12を開放し、荷物Fを積んだ輸送車両4を後進によって搬出入口11aから開閉ブース2内の入出荷エリア2Aへ進入させる。そして、車体全体が入出荷エリア2A内に入ったことを確認して停車させてから、扉12を閉鎖する。なお輸送車両4は、後進によって進入させる結果、図1に示されるように、荷物Fが積まれた荷台4aが開閉ブース2の真中付近に位置することになる。
【0030】
次に、開閉ブース2における内側の可動セグメント22,22を、レール25に沿って互いに離間する方向へ移動させる。これによって、内側の可動セグメント22,22が、それぞれ外側の可動セグメント21,21の内側へ引き戸式に移動して入れ子状に重合されて行き、すなわち図3に示されるように開閉ブース2がY方向の真中から開かれる。このとき、上述のようにすでに搬出入口11aの扉12は閉鎖されているので、建物1の外部から塵埃などを含む外気が主エリア1Aへ吹き込むのを防止することができる。
【0031】
次に、輸送車両4に積まれた荷物Fを、天井クレーン3のフック33bに玉掛けする。詳しくは、レール31,31上で桁32をX方向へ走行させると共に、この桁32上で巻上走行機33をY方向へ走行させることによって、この巻上走行機33からロープを介して下垂されたフック33bを、開閉ブース2の開放部へ誘導し、輸送車両4の荷台4a上へ下ろして、このフック33bに荷物Fを繋着する。そして玉掛けが済んだら、巻上走行機33でロープを巻き上げて荷物Fを所要の高さまで吊り上げ、主エリア1Aにおける所定の位置まで搬送する。
【0032】
すなわち、天井クレーン3の搬送可能範囲は開閉ブース2によって制約を受けないため、開閉ブース2による入出荷エリア2A内の輸送車両4に積まれた荷物Fを、天井クレーン3によって、建物1内のあらゆる位置へ直接搬送することができる。
【0033】
主エリア1A内の製品や原材料などの荷物Fを開閉ブース2による入出荷エリア2A内の輸送車両4に積み込む場合も同様であり、すなわち予め開閉ブース2を閉鎖することによって入出荷エリア2Aを主エリア1Aに対して隔絶してから、搬出入口11aの扉12を開放して輸送車両4を後進によって入出荷エリア2Aへ進入させ、次に開閉ブース2を開いて、天井クレーン3によって主エリア1Aから吊り上げた荷物Fを開閉ブース2の開放部へ誘導し、そこから直接、入出荷エリア2A内の輸送車両4の荷台4a上へ吊り下ろせば良い。
【0034】
上述した輸送車両4から主エリア1A内への荷物Fの搬入、あるいは輸送車両4への荷物Fの積み込みが終わったら、開閉ブース2を閉鎖することによって入出荷エリア2Aを主エリア1Aに対して隔絶してから、搬出入口11aの扉12を開放して輸送車両4を発進させる。したがってこの過程でも、建物1の外部から塵埃などを含む外気が主エリア1Aへ吹き込むのを防止することができる。
【0035】
なお上述の説明では、開閉ブース2の閉鎖を、外側の可動セグメント21,21を建物1の躯体壁11,11とほぼ衝合させると共に、内側の可動セグメント22,22をその対向方向へ移動させて躯体壁11,11間の中間位置で互いに衝合させることによって行うものとしたが、これとは逆に、内側の可動セグメント22,22を建物1の躯体壁11,11とほぼ衝合させ、外側の可動セグメント21,21をその対向方向へ移動させて躯体壁11,11間の中間位置で互いに衝合させることによっても、開閉ブース2を閉鎖することができ、あるいは外側の可動セグメント21と内側の可動セグメント22がY方向へ交互に並んだ状態にすることによって閉鎖することもできる。
【0036】
さらに上述の説明では、開閉ブース2をY方向の真中から開くものとしたが、入出荷エリア2A内の輸送車両4の進入位置や向きによっては、外側の可動セグメント21と内側の可動セグメント22を入れ子状に互いに重合させた状態で、片側の躯体壁11へ寄せるように開くこともできる。
【0037】
開閉ブース2を何段重ねの構造にするかは任意である。例えば図4は、本発明に係る搬出入システムの第二の形態として、開閉ブース及び天井クレーンの一部を示す斜視図である。この形態では、開閉ブース2が4段の入れ子状に重合可能な可動セグメント21〜24を有し、レール25が、各可動セグメント21〜24の車輪と対応する4本のレール25a〜25dを1組として、2組敷設されている。
【0038】
次に図5は、本発明に係る搬出入システムの第三の形態を示す概略的な平面図、図6は、図5におけるVI-VI断面図、図7は、第三の形態における開閉ブース及び天井クレーンの一部を示す部分斜視図である。
【0039】
この第三の形態においては、輸送車両4が通過可能な搬出入口11aが、建物1の躯体壁11におけるX方向一端に位置して開口し、この搬出入口11aの内側に位置して、輸送車両4が進入可能な開閉ブース2が、建物1内に設置されている。
【0040】
詳しくは、開閉ブース2は、入れ子状に重合可能な外側の可動セグメント21及び内側の可動セグメント22を1組として1対、すなわち合計4台の可動セグメントを有する。そして図7に示されるように、各可動セグメント21(22)は、鋼材からなるフレームにテント材又は軽量の金属板や合成樹脂板を張った構造を有するものであって、略鉛直な側壁部21a(22a)及びその上端から水平又はゆるい勾配をもって延びる天蓋部21b(22b)からなる略L字形の屈曲形状を呈する。この場合も、図5に示されるように、各可動セグメント21(22)の奥行、言い換えれば側壁部21a(22a)の幅Lwは、建物1の躯体壁11,11間の内法、すなわちY方向の内法をLとすると、L/2>Lw>L/4であり、かつLw≒L/4となっている。
【0041】
各可動セグメント21(22)の側壁部21a(22a)の下端には、複数の車輪21c(22c)が取り付けられ、天蓋部21b(22b)における側壁部21a(22a)と反対側の端部には、複数の車輪21d(22d)が取り付けられている。
【0042】
建物1の床面には搬出入口11aの片側(X方向一側の側壁13から離れた側)の位置から建物1の躯体壁11に対して直交する方向(Y方向)へ互いに平行に延びる2本1組の下レール25Lが敷設されている。そして、外側の可動セグメント21の側壁部21aに取り付けられた車輪21cは外側の下レール25La上を転動し、内側の可動セグメント22の側壁部22aに取り付けられた車輪22cは内側の下レール25Lb上を転動するようになっている。
【0043】
建物1のX方向両側の側壁13,13のうち、開閉ブース2(可動セグメント21,22)によって画成される入出荷エリア2Aに面する一方の側壁13には、図6及び図7に示されるように、可動セグメント21(22)の天蓋部21b(22b)を、側壁部21a(22a)がほぼ鉛直となるように車輪21d(22d)を介して支持する支持突起13aが水平に突設されY方向へ延びており、この支持突起13aの上面には、Y方向へ互いに平行に延びる2本1組の上レール25Uが敷設されている。そして、外側の可動セグメント21の天蓋部21bに取り付けられた車輪21dは外側の上レール25Ua上を転動し、内側の可動セグメント22の天蓋部22bに取り付けられた車輪22dは内側の上レール25Ub上を転動するようになっている。
【0044】
すなわちこの開閉ブース2は、下側の車輪21c,22c及び上側の車輪21d,22dが下レール25L及び上レール25Uに沿って転動しながら可動セグメント21,22がY方向へ互いに引き戸式に移動することによって開閉を行うもので、建物1内の主エリア1A(例えば工場における生産ラインなどのエリア)のX方向一端に位置している。
【0045】
天井クレーン3は、先に説明した第一の形態と同様に構成されており、すなわちレール31,31による桁32の走行可能範囲はX方向両側の側壁13,13間の内法Lに近似する長さを有し、桁32による巻上走行機33の走行可能範囲はY方向両側の躯体壁11,11間の内法Lに近似する長さを有する。したがって、天井クレーン3による搬送可能範囲は、建物1内のほぼ全域に及ぶものとなっている。
【0046】
なお、図6に示されるように、可動セグメント21,22をY方向に投影したときの外郭は、搬出入口11aの開口縁より大きく、図6及び図7に示されるように、可動セグメント21,22の天蓋部21b,22bの高さは、天井クレーン3における巻上走行機33の走行高さよりも低いものとなっている。
【0047】
以上のように構成された第三の形態も、輸送車両4から原材料等の荷物Fを建物1内の主エリア1Aの所定箇所へ搬入する場合や、主エリア1A内の製品や原材料などの荷物Fを輸送車両4に積み込む場合には、先に説明した第一の形態と同様に、予め開閉ブース2を閉鎖することによって入出荷エリア2Aを主エリア1Aに対して隔絶してから、搬出入口11aの扉12を開放して輸送車両4を後進によって入出荷エリア2Aへ進入させ、次に開閉ブース2を開くことによって、建物1の外部から塵埃などを含む外気が主エリア1Aへ吹き込むのを防止しつつ、輸送車両4の荷台4aから天井クレーン3によって直接、荷物Fを主エリア1Aの所定箇所へ搬送することができ、あるいは主エリア1Aの所定箇所から天井クレーン3によって直接、輸送車両4の荷台4a上へ搬送することができる。
【0048】
また、輸送車両4から主エリア1A内への荷物Fの搬入、あるいは輸送車両4への荷物Fの積み込みが終わったら、開閉ブース2を閉鎖してから、搬出入口11aの扉12を開放して輸送車両4を発進させる。したがってこの過程でも、建物1の外部から塵埃などを含む外気が主エリア1Aへ吹き込むのを防止することができる。
【0049】
なお、この第三の形態でも、図示の例とは逆に内側の可動セグメント22,22を建物1の躯体壁11,11とほぼ衝合させ、外側の可動セグメント21,21をその対向方向へ移動させて躯体壁11,11間の中間位置で互いに衝合させることによっても、開閉ブース2を閉鎖することができ、あるいは外側の可動セグメント21と内側の可動セグメント22がY方向へ交互に並んだ状態にすることによって閉鎖することもできる。
【0050】
また、入出荷エリア2A内の輸送車両4の進入位置や向きによっては、外側の可動セグメント21と内側の可動セグメント22を入れ子状に互いに重合させた状態で、片側の躯体壁11へ寄せるように開くこともでき、開閉ブース2を何段重ねの構造にするかも任意である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る搬出入システムの第一の形態を示す概略的な平面図である。
【図2】図1におけるII-II断面図である。
【図3】第一の形態における開閉ブース及び天井クレーンの一部を示す部分斜視図である。
【図4】本発明に係る搬出入システムの第二の形態として、開閉ブース及び天井クレーンの一部を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る搬出入システムの第三の形態を示す概略的な平面図である。
【図6】図5におけるVI-VI断面図である。
【図7】第三の形態における開閉ブース及び天井クレーンの一部を示す斜視図である。
【図8】工場や倉庫等の建物を示す概略的な平面図である。
【図9】従来技術としての搬出入ブースを有する建物を示す概略的な平面図である。
【図10】従来技術としての搬出入ブースを有する建物を示す概略的な鉛直断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 建物
1A 主エリア
11,13 躯体壁
11a 搬出入口
12 扉
2 開閉ブース
2A 入出荷エリア
21〜24 可動セグメント
21a,22a 側壁部
21b,22b 天蓋部
21c,22c,21d,22d 車輪
25,25a〜25d レール
25L,25La,25Lb 下レール
25U,25Ua,25Ub 上レール
3 天井クレーン
4 輸送車両
F 荷物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉で開閉される搬出入口の内側に位置して建物内に設置されこの建物内の主エリアから隔絶した入出荷エリアを画成可能な開閉ブースと、前記建物内に前記開閉ブースの上側を経由して移動可能に設けられた天井クレーンとを備え、前記開閉ブースが、輸送車両が進入可能であって、天蓋部を有し入れ子状に重合可能な複数の可動セグメントからなり、これらの可動セグメントが互いに引き戸式に移動することにより開閉されるものであることを特徴とする搬出入システム。
【請求項2】
搬出入口が建物の長手方向中間位置に設けられ、この搬出入口の内側に位置する開閉ブースが、その両側の主エリアに対して開閉されることを特徴とする請求項1に記載の搬出入システム。
【請求項3】
開閉ブースの各可動セグメントが下端に車輪を有し、この車輪が建物の床面に敷設されたレール上を転動するものであることを特徴とする請求項1に記載の搬出入システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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