説明

搬送コンベヤ

【課題】 コンベヤベルトの始端部から終端部まで起立部分を保持でき、搬送に関与しない無駄なスペースがなく、荷こぼれや運搬物の側方に対するベルトの送り作用がなくなるという問題がない搬送コンベヤを提供する。
【解決手段】 無端帯状のベルト1の幅方向の縁部付近を、走行方向の全域に亘り一様に起立させており、無端帯状ベルトの少なくとも起立時に折曲げられる部分2を伸縮自在な材質、形状とし、走行方向の終端部におけるベルトの折返し部分をほぼ同一線上に位置させており、ベルトの水平直線部分および水平直線部分の縁部付近の起立直線部分の幅方向両端付近にそれぞれ対をなして配置した側板8、8を連結して水平直線部分枠体および両側の起立直線部分枠体を構成し、枠体を所定の角度で一体に繋ぎ合わせてコンベヤフレーム7とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端帯状のベルトコンベヤを走行させてコンベヤベルト上に載置された運搬物を搬送する搬送コンベヤに関する。本発明は、特にコンベヤベルトの縁部付近を走行方向に沿って適宜起立させた状態で使用し、粒、粉体や液体を含んだ軟弱物などの搬送に最適な搬送コンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粒、粉体や液体を含んだ軟弱物などの搬送に際しては、特許文献1(特開平7−285630号公報)に示されるように、無端帯状のコンベヤベルトを一対のコンベヤローラー間に巻き懸けて走行方向に走行させつつ、走行方向に沿ってコンベヤベルトの縁部付近をローラーなど使用して漸次起立させるようにしていた。
【特許文献1】特開平7−285630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されたコンベヤベルトでは無端帯状のベルトを一対のコンベヤローラー間に巻き懸けて走行させる。このため、コンベヤローラーの近傍区間ではコンベヤベルトは平坦な状態とする必要があり、幅方向の両端部を起立させることができず、この区間の外側でコンベヤベルトを漸次起立させるので、搬送と言う観点からすると、この起立させる間の走行区間が無駄である。
同様な理由により、搬送終端部に近付くにつれ、コンベヤベルトの縁部付近の起立部分は、漸次、元に戻され平面状となるので、この区間においては荷こぼれや運搬物の側方に対するコンベヤベルトの送り作用がなくなるという問題がある。
【0004】
本発明は、上述した従来技術に付随する問題点を解消して、コンベヤベルトの始端部から終端部までの全て、またはコンベヤベルトの始端部若しくは終端部の少なくとも何れかにおいて、起立部分を保持でき、搬送に関与しない無駄なスペースがなく、荷こぼれや運搬物の側方に対するベルトの送り作用がなくなるという問題がない搬送コンベヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては、無端帯状のコンベヤベルトの幅方向の縁部付近を、走行方向の全域に亘り一様に起立させており、該無端帯状コンベヤベルトの少なくとも起立時に折曲げられる部分を伸縮自在な材質または形状とし、走行方向の終端部におけるベルトの折返し部分を走行方向に直交したほぼ同一面上に位置させていることを特徴とする搬送コンベヤにより上記の目的を達成する。
【0006】
更に本発明においては、無端帯状のコンベヤベルトの幅方向の縁部付近を、走行方向の始端部または終端部の少なくとも何れかにおいて起立させており、該無端帯状コンベヤベルトの少なくとも起立時に折曲げられる部分を伸縮自在な材質または形状とし、走行方向の終端部におけるコンベヤベルトの折返し部分を走行方向に直交したほぼ同一面上に位置させていることを特徴とする搬送コンベヤにより上記の目的を達成することもできる。
【0007】
また、本発明によれば、前記コンベヤベルトの複数の直線部分の縁部付近の幅方向両端付近にそれぞれ対をなして配置した側板を連結してそれぞれ枠体を構成し、該枠体を所定の角度で一体に繋ぎ合わせてコンベヤフレームとすることにより、本発明の搬送コンベヤの組立てが容易に行なえる。
【0008】
ここにおいて、前記無端帯状のコンベヤベルトの折曲げ部分をジャバラ状にしてもよいし、折曲げ部分をコンベヤの直線部分より伸び率の高い可撓性材料で形成してもよい。
【0009】
この場合に、無端帯状のコンベヤベルトの折曲げ部分に、別体のジャバラまたは直線部分より伸び率の高い可撓性材料で形成した無端帯を繋ぎ合わせて一体としてもよい。
【0010】
また、本発明においては、無端帯状のコンベヤベルトの幅方向の両縁部分を起立させてベルト断面をほぼ、上向きのコ状にしてもよいし、無端帯状のコンベヤベルトの幅方向の1箇所を折曲げてV字状断面としてもよく、更に、無端帯状のコンベヤベルトの幅方向の複数箇所を折り曲げて多角形状断面としてもよい。
【0011】
更に、本発明においては、無端帯状のコンベヤベルトの複数の直線部分が走行方向の前後に設けられた一対のコンベヤローラーに巻回されており、該コンベヤローラーの何れか一方がコンベヤローラーに内蔵されたモーターにより駆動されることが好ましい。
【0012】
更に、無端帯状のコンベヤベルトの起立直線部分が走行方向の前後に設けられた一対のコンベヤローラーに巻回されており、該起立直線部分内にモーター内蔵コンベヤローラーが設けられ、該起立直線部分のモーター内蔵コンベヤローラーから隣接する他の直線部分のコンベヤローラーに動力を伝達する装置が設けられていてもよい。この場合に、前記動力伝達装置は等速度型ユニバーサルジョイント、一対のベベルギアー等とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コンベヤベルトの幅方向の縁部付近を、走行方向の全域に亘り一様に起立させており、粒、粉状および軟弱な搬送物において荷くずれすることなく始端部から最終端まで搬送できる。
【0014】
また、本発明においては、走行方向の始端部または終端部の少なくとも何れかにおいて、コンベヤベルトの起立部に、搬送物の側面が接しているので始端部または終端部においても確実に搬送される。
【0015】
本発明によれば液体を含んだ搬送物の場合、液体がコンベヤベルトの側方から流れ落ちないので、ベルトの裏側、ローラーなどに液体を含んだ搬送物が付着することもなく衛生的である。
【0016】
本発明によれば搬送ベルトの折り曲げ部がローラー間の伝導装置を被覆しているので、搬送物の流入、噛み込みがなく、また、安全性も高い。
【0017】
本発明によれば搬送コンベヤの全長が短くできるので安価となり、据付面積も少なくてすむ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図示した添付図面を参照して、本発明を詳細に説明する。図1は本発明に係る搬送コンベヤの一実施例の斜視図である。
【0019】
図1に示すように、一体的に形成された無端帯状のコンベヤベルト1を折曲げ部分2から折曲げてコンベヤベルト1の幅方向の縁部付近を、走行方向の全域に亘り一様に起立させている。無端帯状コンベヤベルト1の少なくとも起立時に折曲げられる部分2を直線部分より伸び率の高い高分子材料などの可撓性材料とし、またはジャバラ状形状として、伸縮自在としている。走行方向の終端部におけるコンベヤベルト1の折返し部分を走行方向に直交したほぼ同一面上に位置させている。
【0020】
図2は、図1に示す搬送コンベヤを部分的に剥ぎ取った状態の平面図であり、図面の向かって左半分を起立角度分だけ水平に戻した状態とした展開図としている。また、図3は、図2に示す搬送コンベヤを部分的に剥ぎ取った状態のA−A断面図である。
【0021】
図2において、コンベヤベルト1の水平直線部分、および両側の起立部分の両端付近にそれぞれ一対の側板8、8を配置しており、適宜連結棒9、9を挟んで両側板8、8をボルト10、10で締付けて、水直線平部分、両側起立直線部分の三組の枠体を構成している。これらの枠体には、コンベヤベルト1の裏面側を受ける受け板やガイドローラー(共に図示せず)を適宜設けている。また、上記受け板やガイドローラーの配置によってコンベヤベルトの縁部付近をより内側に押圧して搬送途中の搬送物を包囲するようにして搬送することもできる。
【0022】
この三組の枠体を所定の角度を持った数本の連結用エルボ11、11で繋ぎ合わせて、走行方向の全域に亘り一様に起立させた形状とした一体構成のコンベヤフレーム7を形成する。
【0023】
図3に示すように、両外側に位置する側板8、8に、適宜固定ステー12、12をボルトなどで着脱自在に取付けて、コンベヤフレーム7を定位置に固定する。このようにして、本発明の搬送コンベヤの組立てが容易に行なえる。
【0024】
コンベヤベルト1の水平直線部分および両側の起立直線部分の駆動側ローラーとして、モーターを内蔵した周知のモータープーリ3aを利用している。なお、モータープーリ3aと反対側のローラー3は遊動ローラー3bとし、このローラー3bの両軸端はエアシリンダー13、13で支持してコンベヤベルト1を緊張できるようしている。
【0025】
上記構成のコンベヤベルト1を外す場合には、まず、エアシリンダー13により遊動ローラー3bを移動させてコンベヤベルト1を弛緩させる。ついで、前記固定ステー12の何れか一方を取外し、取外された側からコンベヤベルト1を抜き取る。
【0026】
コンベヤベルト1の組付けは、上述のコンベヤベルト1を外す場合とは逆の順序となる。すなわち、固定ステー12が取外された側からコンベヤベルト1を装着した後で、固定ステー12を固定し、エアシリンダー13により遊動ローラー3bを移動させてコンベヤベルト1を緊張させる。
【0027】
ローラー3への動力伝達方法としては、前述の各ローラー3をモータープーリ3aとして、それぞれの駆動側ローラー3を個別に回転させる方法がある。このほかに、モータープーリ3aを、片方の起立直線部分の一個のみとし、水平直線部分と一方の起立直線部分との駆動側ローラー軸へは、後述の伝達機素を介装させて順に伝動していく方法がある。
【0028】
更にまた、例えば、図2における外側に位置するどちらかのコンベヤローラー3aを軸付ローラー3とし、軸の両端部を、側板8、8に設けられた軸受に軸支させ、コンベヤローラー3の外側の軸端から適宜伝導機構を介して外部動力(モーターなどからの動力)を入力し、内側の軸端と隣接する他のコンベヤローラーの軸端との間には、下記動力伝達機素を介在させるなど自由に組み合わせて展開できる。
【0029】
上記ローラー軸端間の動力伝達機素の例として、図4に示す一組のべベルギヤー5、5′を使用したもの、図5に示す等速形ユニバーサルジョイント6で連結したものがあげられる。
【0030】
図6および図7は図1、図2および図3に示した実施例の構成に準ずるものであって屈曲部を増減したものであり、図1、図2および図3に示した実施例では、コンベヤベルト1の幅方向の両縁部分を起立させてコンベヤベルト断面をほぼ、上向きのコ状にしていた。これに対して、図6においては、コンベヤベルトの幅方向の1箇所を折曲げてV字状断面としており、また、図7においては、コンベヤベルトの幅方向の複数箇所を折り曲げて多角形状断面としている。
【0031】
上記実施例においては、一体成型した無端帯状のコンベヤベルトの折曲げ部分をジャバラ状にし、または直線部分より伸び率の高い可撓性材料で形成していた。しかし、無端帯状のコンベヤベルトの折曲げ部分に、別体のジャバラまたは直線部分より伸び率の高い可撓性材料で形成した無端帯を繋ぎ合わせて一体としてもよい。このようにすると、コンベヤベルトの個々の部分を個別に作り、後で繋ぎ合わせることができるので、製造が容易になる。
【0032】
更に、上記実施例においては、無端帯状のコンベヤベルトの幅方向の縁部付近を、走行方向の全域に亘り一様に起立させていた。しかし、本発明においては、コンベヤベルトの幅方向の縁部付近を、走行方向の始端部または終端部の少なくとも何れかにおいて起立させていればよい。このような実施例を図8に示す。図8の実施例においては、コンベヤベルト1の幅方向の縁部付近を、始端部において起立させ(コンベヤベルトを実線矢印方向に移動させる場合)、始端部における搬送物のこぼれを防止し、または終端部において起立させ(コンベヤベルトを破線矢印方向に移動させる場合)、終端部における搬送物のこぼれを防止している。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る搬送コンベヤの一実施例の斜視図である。
【図2】図1に示す搬送コンベヤを部分的に剥ぎ取った状態の平面図であり、図面の向かって左半分を起立角度分だけ水平に戻した状態とした展開図としている。
【図3】図2に示す搬送コンベヤを部分的に剥ぎ取った状態のA−A断面図である。
【図4】ローラー間の動力駆動装置がベベルギヤーである実施例の部分拡大図である。
【図5】ローラー間の動力駆動装置が等速型ユニバーサルジョイントである実施例の部分拡大図であり、ユニバーサルジョイントは模式的に示している。
【図6】本発明に係る搬送コンベヤの他の実施例の正面図である。
【図7】本発明に係る搬送コンベヤの更に別の実施例の正面図である。
【図8】本発明に係る搬送コンベヤの更に別の実施例の斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 搬送ベルト
2 折曲げ部分
3 ローラー
3a モータープーリ
3b 遊動ローラー
5、5′ ヘベルギヤー
6 ユニバーサルジョイント
7 コンベヤフレーム
8 側板
9 連結棒
10 ボルト
11 連結用エルボ
12 固定ステー
13 エアシリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端帯状のコンベヤベルトの幅方向の縁部付近を、走行方向の全域に亘り一様に起立させており、該無端帯状コンベヤベルトの少なくとも起立時に折曲げられる部分を伸縮自在な材質または形状とし、走行方向の終端部におけるコンベヤベルトの折返し部分を走行方向に直交したほぼ同一面上に位置させていることを特徴とする搬送コンベヤ。
【請求項2】
無端帯状のコンベヤベルトの幅方向の縁部付近を、走行方向の始端部または終端部の少なくとも何れかにおいて起立させており、該無端帯状コンベヤベルトの少なくとも起立時に折曲げられる部分を伸縮自在な材質または形状とし、走行方向の終端部におけるコンベヤベルトの折返し部分を走行方向に直交したほぼ同一面上に位置させていることを特徴とする搬送コンベヤ。
【請求項3】
無端帯状のコンベヤベルトの幅方向の縁部付近を、走行方向の全域に亘り起立させており、該無端帯状コンベヤベルトの少なくとも起立時に折曲げられる部分を伸縮自在な材質または形状とし、走行方向の終端部におけるコンベヤベルトの折返し部分を走行方向に直交したほぼ同一面上に位置させており、前記コンベヤベルトの複数の直線部分の縁部付近の幅方向両端付近にそれぞれ対をなして配置した側板を連結してそれぞれ枠体を構成し、該枠体を所定の角度で一体に繋ぎ合わせてコンベヤフレームとしたことを特徴とする搬送コンベヤ。
【請求項4】
前記無端帯状のコンベヤベルトの折曲げ部分をジャバラ状にしたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の搬送コンベヤ。
【請求項5】
前記無端帯状のコンベヤベルトの折曲げ部分を直線部分より伸び率の高い可撓性材料で形成したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の搬送コンベヤ。
【請求項6】
前記無端帯状のコンベヤベルトの折曲げ部分に、別体のジャバラまたは直線部分より伸び率の高い可撓性材料で形成した無端帯を繋ぎ合わせて一体としたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の搬送コンベヤ。
【請求項7】
前記無端帯状のコンベヤベルトの幅方向の両縁部分を起立させてベルト断面をほぼ、上向きのコ状にしたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の搬送コンベヤ。
【請求項8】
前記無端帯状のコンベヤベルトの幅方向の1箇所を折曲げてV字状断面としたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の搬送コンベヤ。
【請求項9】
前記無端帯状のコンベヤベルトの幅方向の複数箇所を折り曲げて多角形状断面としたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の搬送コンベヤ。
【請求項10】
前記無端帯状のコンベヤベルトの複数の直線部分が走行方向の前後に設けられた一対のコンベヤローラーに巻回されており、該コンベヤローラーの何れか一方がコンベヤローラーに内蔵されたモーターにより駆動されることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の搬送コンベヤ。
【請求項11】
前記無端帯状のコンベヤベルトの起立直線部分が走行方向の前後に設けられた一対のコンベヤローラーに巻回されており、該起立直線部分内にモーター内蔵コンベヤローラーが設けられ、該起立直線部分のモーター内蔵コンベヤローラーから隣接する他の直線部分のコンベヤローラーに動力を伝達する装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の搬送コンベヤ。
【請求項12】
前記無端帯状のコンベヤベルトの外側位置に位置するコンベヤローラーを軸付ローラーとし、軸の両端部を側板に設けられた軸受に軸支させ、該コンベヤローラーの外側の軸端から適宜伝導機構を介して外部動力を入力するとともに、内側の軸端と他のコンベヤローラーの軸端との間に、動力を伝達する装置が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の搬送コンベヤ。
【請求項13】
前記動力伝達装置が等速度型ユニバーサルジョイントであることを特徴とする請求項11または12に記載の搬送コンベヤ。
【請求項14】
前記動力伝達装置が一対のベベルギアーであることを特徴とする請求項11または12に記載の搬送コンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−106504(P2007−106504A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295850(P2005−295850)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000152815)株式会社日本キャリア工業 (61)
【Fターム(参考)】