説明

搬送システムの時刻管理システム及び方法、並びにコンピュータプログラム

【課題】例えば半導体素子製造用の各種基板などの被搬送物を搬送する搬送システムの各部における時刻を管理する時刻管理システムにおいて、主制御手段及び複数の副制御手段間の時刻差を解消し、搬送スケジュールに沿った搬送を正常に実行する。
【解決手段】時刻管理システム(100)は、主制御手段(11)側に設けられ、当該時刻管理システムの基準となる基準時刻を設定すると共に配信する基準時刻配信手段(12)と、複数の副制御手段(2)の各々に設けられ、複数の副制御手段の各々が搬送制御時に参照する自己時刻を設定する自己時刻設定手段(3)と、複数の副制御手段の各々に設けられ、配信された基準時刻及び設定された自己時刻間の時刻差を取得する時刻差取得手段(3)と、複数の副制御手段の各々に設けられ、取得された時刻差に応じて、設定された自己時刻を段階的に更新する更新手段(3)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体素子製造用の各種基板などの被搬送物を搬送する搬送システムの各部における時刻を管理する時刻管理システム及び方法の技術分野に関する。本発明は更に、コンピュータをこのような時刻管理システムとして機能させるコンピュータプログラムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の時刻管理システムとして、例えばネットワークに接続可能な機器であって同一ネットワークに接続された他の複数の機器の時刻を取得して、統一時刻を決定し、その統一時刻に自己時刻を調整するものがある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−228010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の時刻管理システムによれば、ネットワークに接続される全ての機器の自己時刻が統一時刻に調整可能であるが、その調整を行うタイミングや周期について一切開示されていない。これに関し、特に本願発明者が見出した課題として、次のものがある。
【0005】
即ち、例えば、コントローラ等の制御手段が制御パラメータとして使用する自己時刻は、例えばホストコンピュータにインストールされたウィンドウズ(WINDOWS)(登録商標)等のOS(Operating System)が示す時刻(即ち、OS時刻)との時刻差により調整される。しかしながら、OS時刻について、例えばオペレータによる変更、サマータイムによる自動変更、RTC(Real Time Clock)による自動調整がなされることがある。この場合に、時系列の一連の処理が実行される間に、自己時刻が逆戻りしたり、一定時間行われる処理の途中で、自己時刻が飛んでしまいかねない。
【0006】
具体的には、自己時刻の逆戻りにより、例えば、台車が荷の受け渡し位置に進入を開始する時間「10:00:00」と、その進入を終了する時間「9:59:00」とが時系列にならず、台車の進入時間を計時する搬送系タイマーにエラーが生じたと見なされ、搬送システムが停止されてしまいかねないという技術的問題点がある。また、自己時刻の飛びにより、例えば、正常時に搬送系タイマーによる監視処理が15秒間行われるのに対し、15秒が経過するより前にその監視処理がタイムアウトして、不正な処理が実行されてしまいかねないという技術的問題点がある。
【0007】
更に、上述した自己時刻の逆戻り、飛びにより、例えばログデータ、統計データ等の制御パラメータを特定する情報に正当性が得られないという技術的問題点もある。
【0008】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、搬送システムに含まれる主制御手段及びこれに管理される複数の副制御手段間の時刻差を解消し、搬送スケジュールに沿った搬送を正常に実行することを可能ならしめる時刻管理システム及び方法、並びにコンピュータをこのような時刻管理システムとして機能させるコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の搬送システムの時刻管理システムは上記課題を解決するために、主制御手段及び該主制御手段により管理される複数の副制御手段の各々のうち少なくとも一方が、複数の搬送手段を搬送させる際における搬送スケジュールを立てると共に、該立てられた搬送スケジュールに沿って前記複数の搬送手段の搬送制御を行う搬送システムにおいて、時刻を管理する時刻管理システムであって、前記主制御手段側に設けられ、当該時刻管理システムにおいて基準となる基準時刻を設定すると共に、前記設定された基準時刻を所定周期毎に配信する基準時刻配信手段と、前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記複数の副制御手段の各々が前記搬送制御を行う際に参照する自己時刻を設定する自己時刻設定手段と、前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記配信された基準時刻及び前記設定された自己時刻間の時刻差を取得する時刻差取得手段と、前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記取得された時刻差に応じて、前記設定された自己時刻を段階的に更新する更新手段とを備える。
【0010】
本発明の搬送システムの時刻管理システムによれば、当該時刻管理システムは、例えばOHT(Overhead Hoist Transport)を備える搬送システムに適用される。該搬送システムでは、例えば、主制御手段によって、被搬送物が搬送される際における搬送スケジュールが立てられる。すると、主制御手段によって、搬送スケジュールに沿って、被搬送物の搬送が副制御手段に指示される。すると、複数の副制御手段によって、その指示の通りに、複数の搬送手段が搬送制御される。ここで「搬送制御」は、例えば、搬送すべき被搬送物の積載及び移載、並びに搬送元及び搬送先への走行等に係る制御である。
【0011】
本発明では、例えば搬送制御が行われる間、基準時刻配信手段によって、基準時刻が設定され、設定された基準時刻が、例えば数秒毎に、複数の副制御手段に配信される。ここで「基準時刻」は、例えばホストコンピュータにインストールされたウィンドウズのOS時刻、又は該OS時刻に基づいて特定される時刻である。このような基準時刻は、例えば、ホストコンピュータと接続される主制御手段によって、ホストコンピュータから直接に読み取られたり、或いは読み取られたOS時刻及び後述するチックカウント値差に基づいて設定される。続いて、複数の副制御手段の各々によって、基準時刻配信手段からの基準時刻が受信されると、該基準時刻と、自己時刻設定手段により設定される自己時刻との間の時刻差が取得される。ここで「自己時刻」は、各副制御手段に固有の時刻であって、搬送制御を実行する際に読み取られる時刻である。
【0012】
続いて、更新手段によって、時刻差取得手段による時刻差に応じて、自己時刻設定手段による自己時刻が段階的に更新される。ここで「段階的に更新する」とは、例えばパラメータの最小単位時刻(例えば、1.0秒)ずつ自己時刻を進めることを意味する。また、一定時刻又は不定時刻で複数回に渡って自己時刻を進めることも意味する。ここで「最少単位時刻」は、例えば自己時刻が進められた際に、搬送制御がエラーと判定されたり、不正に処理されることがない時刻であることが好ましい。このような段階的な更新により、基準時刻及び自己時刻間の時刻差が零となる。
【0013】
このように、主制御手段に設定された基準時刻に、複数の副制御手段の各々に設定された自己時刻が合わせられることにより、当該時刻管理システムにおいて、主制御手段及び複数の副制御手段間の時刻差を解消することが可能となる。特に、基準時刻に自己時刻が合わせられる際に、基準時刻に向けて自己時刻が段階的に進められることによって、複数の搬送手段の搬送制御に及ぶ影響を最小限に抑え、搬送スケジュールに沿った搬送を正常に実行することが可能となる。
【0014】
尚、本発明を適用するシステムには、上述した搬送システムの他、例えば半導体素子製造の工場内において、例えばMCS(Material Control System)等の製造指示手段によって指示される半導体素子製造工程に従って、例えば半導体素子製造用の各種基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)を、例えば複数の領域の内部及び領域間で搬送すると共に、その搬送されるFOUPに各種処理を施すことにより、半導体素子を製造する製造システムが含まれる。
【0015】
本発明の搬送システムの時刻管理システムの一態様では、前記主制御手段は、前記搬送スケジュールの少なくとも一部を立て、前記基準時刻は、前記搬送スケジュールの少なくとも一部を立てる際の基準となる。
【0016】
この態様によれば、主制御手段によって、基準時刻を基準として、搬送スケジュールの少なくとも一部が立てられる。よって、基準時刻に、各副制御手段に設定された自己時刻を合わせることにより、搬送スケジュールに沿った搬送を正常に実行することが可能となる。
【0017】
本発明の搬送システムの時刻管理システムの他の態様では、前記複数の副制御手段は、前記搬送スケジュールの少なくとも一部を立て、前記自己時刻は、前記搬送スケジュールの少なくとも一部を立てる際の基準となる。
【0018】
この態様によれば、例えば複数の副制御手段によって、自己時刻を基準として、搬送スケジュールの少なくとも一部が立てられる。よって、自己時刻を、基準時刻に合わせることにより、複数の副制御手段間で自己時刻が統一され、搬送スケジュールに沿った搬送を正常に実行することが可能となる。
【0019】
本発明の時刻管理システムの他の態様では、前記更新手段は、前記取得された時刻差が所定の閾値より大きい場合に、前記取得された自己時刻を前記所定の閾値分進め、前記取得された時刻差が零より大きく且つ前記所定の閾値より小さい場合に、前記取得された自己時刻を前記配信された基準時刻と一致させ、前記取得された時刻差が零より小さい場合に前記自己時刻を停止させる。
【0020】
この態様によれば、先ず、例えば時刻差取得手段により時刻差が取得されると、その時刻差が所定の閾値より大きいか、零より大きく且つ所定の閾値より小さいか、又は零より小さいか判定される。ここで「所定の閾値」は、自己時刻を段階的に更新するか否かの判定の基準となる閾値である。「所定の閾値」は、例えば、実験的、経験的に或いはシミュレーション等によって、自己時刻が基準時刻に向けて進められることにより時刻の飛びが生じても、搬送制御に影響のない時刻として、求められ、予め内蔵メモリ等内に設定される。「所定の閾値」は、例えばパラメータの最小単位時刻(例えば、1.0秒)であってもよい。
【0021】
すると、更新手段によって、時刻差が所定の閾値より大きい場合に、自己時刻が所定の閾値分だけ進められる。即ち、基準時刻に所定の閾値分近づけられる。一方、時刻差が零より大きく且つ所定の閾値より小さい場合に、自己時刻が基準時刻と一致される。即ち、自己時刻が基準時刻に合わせられる。一方、時刻差が零より小さい場合に、自己時刻が停止される。即ち、停止された自己時刻に基準時刻が追い付くのを待つ状態となる。尚、「所定の閾値より大きい場合」とは、「所定の時刻以上である場合」でもよいし、或いは、「所定の時刻より遅い場合」でもよい。
【0022】
以上のように、時刻差が所定の閾値より大きい場合には、基準時刻に向けて自己時刻が所定の閾値分だけ進められることにより、自己時刻が所定の閾値に値する時刻分だけ飛ぶ。これにより、複数の搬送手段の搬送制御に及ぶ影響を最小限に抑えることが可能となり、実践上極めて有利である。
【0023】
この態様では、前記更新手段は、前記取得された時刻差が零より小さい場合に、前記配信された基準時刻が前記取得された自己時刻に追い付くまで前記自己時刻を停止させてもよい。
【0024】
このように構成すれば、更新手段によって、時刻差が零より小さいと判定されると、自己時刻が一旦停止される。その後に、基準時刻が自己時刻に追い付いた時点で、自己時刻の停止が解除される。このように、自己時刻を逆戻りさせないことにより、複数の搬送手段の搬送制御に及ぶ影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0025】
本発明の時刻管理システムの他の態様では、前記複数の副制御手段は、複数のコンピュータに夫々設定されており、前記複数のコンピュータの各々が起動されてから前記複数の副制御手段の各々が前記配信された基準時刻を受信するまでのカウント値を示す現在チックカウント値、及び前記複数のコンピュータの各々が起動されてから前記自己時刻が前回更新されるまでのカウント値を示す基準チックカウント値を特定し、前記特定された現在チックカウント値から前記基準チックカウント値を減算したチックカウント値差を取得するチックカウント値差取得手段を夫々備え、前記設定された自己時刻は、前記取得されたチックカウント値差を含んでいる。
【0026】
この態様によれば、複数の副制御手段の各々が自己時刻を夫々設定する際に、チックカウント値差取得手段によって、現在チックカウント値及び基準チックカウント値間のチックカウント値差が取得される。ここで「カウント値」とは、例えば複数のコンピュータの各々(言い換えれば、各コンピュータにインストールされたウィンドウズ)が起動された時点からカウントされる値である。このようなカウント値の差(即ち、チックカウント値差)を、自己時刻に含めることにより、複数の副制御手段の各々における自己時刻をより正確に設定することが可能となる。
【0027】
本発明の搬送システムの時刻管理方法は上記課題を解決するために、主制御御手段及び該主制御手段により管理される複数の副制御手段の各々のうち少なくとも一方が、複数の搬送手段を搬送させる際における搬送スケジュールを立てると共に、該立てられた搬送スケジュールに沿って前記複数の搬送手段の搬送制御を行う搬送システムにおいて、時刻を管理する時刻管理方法であって、前記主制御手段側に設けられ、当該時刻管理システムにおいて基準となる基準時刻を設定すると共に、前記設定された基準時刻を所定周期毎に配信する基準時刻配信工程と、前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記複数の副制御手段の各々が前記搬送制御を行う際に参照する自己時刻を設定する自己時刻設定工程と、前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記配信された基準時刻及び前記設定された自己時刻間の時刻差を取得する時刻差取得工程と、前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記取得された時刻差に応じて、前記設定された自己時刻を段階的に更新する更新工程とを備える。
【0028】
本発明の搬送システムの時刻管理方法によれば、上述した本発明に係る時刻管理システムの場合と同様に、主制御手段及び複数の副制御手段間の時刻差を解消することが可能となる。また、複数の搬送手段の搬送制御に及ぶ影響を最小限に抑え、搬送スケジュールに沿った搬送を正常に実行することが可能となる。
【0029】
尚、本発明の時刻管理方法においても、上述した本発明の時刻管理システムにおける各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
【0030】
本発明のコンピュータプログラムは上記課題を解決するために、主制御御手段及び該主制御手段により管理される複数の副制御手段の各々のうち少なくとも一方が、複数の搬送手段を搬送させる際における搬送スケジュールを立てると共に、該立てられた搬送スケジュールに沿って前記複数の搬送手段の搬送制御を行う搬送システムにおいて、時刻を管理する時刻管理システムに備えられるコンピュータを、前記主制御手段側に設けられ、当該時刻管理システムにおいて基準となる基準時刻を設定すると共に、前記設定された基準時刻を所定周期毎に配信する基準時刻配信手段と、前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記複数の副制御手段の各々が前記搬送制御を行う際に参照する自己時刻を設定する自己時刻設定手段と、前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記配信された基準時刻及び前記設定された自己時刻間の時刻差を取得する時刻差取得手段と、前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記取得された時刻差に応じて、前記設定された自己時刻を段階的に更新する更新手段ととして機能させる。
【0031】
本発明のコンピュータプログラムによれば、当該コンピュータプログラムを格納するCD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体から、当該コンピュータプログラムを、時刻管理システムに備えられたコンピュータに読み込んで実行させれば、或いは、当該コンピュータプログラムを通信手段を介してダウンロードさせた後に実行させれば、上述した本発明に係る時刻管理システムを比較的簡単に構築できる。これにより、上述した本発明に係る時刻管理システムの場合と同様に、主制御手段及び複数の副制御手段間の時刻差を解消することが可能となる。また、複数の搬送手段の搬送制御に及ぶ影響を最小限に抑え、搬送スケジュールに沿った搬送を正常に実行することが可能となる。
【0032】
尚、本発明のコンピュータプログラムにおいても、上述した本発明の時刻管理システムにおける各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
【0033】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0035】
先ず、実施形態に係る時刻管理システムの構成について説明する。ここに図1は、実施形態に係る時刻管理システムの構成を機能的に示す。
【0036】
図1において、本実施形態に係る時刻管理システム100を適用する製造システム200は、複数の搬送コントローラ2(2a,2b…2x)、搬送指示部10、及び製造指示部20を備える。製造システム200は、半導体素子製造工程に従って、不図示の作業装置であるストッカ(或いは、スタッカ)、製造装置に、不図示のFOUPを搬送すると共に、搬送されるFOUPに各種処理を施す。
【0037】
製造指示部20は、MCSであって、半導体素子製造工程のうち、FOUPの搬送に係る搬送工程を示す信号を、搬送指示部10に送信する。製造指示部20は、ホストコンピュータ21を備えており、ホストコンピュータ21には、OSがインストールされている。
【0038】
搬送指示部10は、OHVC(Overhead Hoist Vehicle Control)であって、製造指示部20及び複数の搬送コントローラ2と夫々有線により接続されている。搬送指示部10は、マスタコントローラ11を備える。
【0039】
マスタコントローラ11は、本発明に係る「主制御手段」の一例として、製造指示部20からの搬送工程に従って、後述する基準マスタ時刻を基準として搬送スケジュールを立てる。マスタコントローラ11は、その搬送スケジュールに沿って、搬送すべきFOUPの識別番号、並びに搬送元及び搬送先を示す信号を、複数の搬送コントローラ2に送信する。マスタコントローラ11は、クロックを内蔵するマスタ時刻管理部12を備える。
【0040】
マスタ時刻管理部12は、本発明に係る「基準時刻配信手段」の一例として、ホストコンピュータ21のOSが示す時刻(即ち、OS時刻)T0を、所定時刻に読み取り、その読み取ったOS時刻T0に基づいて基準マスタ時刻Tm(即ち、本発明に係る「基準時刻」の一例)を設定する。基準マスタ時刻Tmの刻時(即ち、カウント)は、例えば、搬送指示部10或いはマスタコントローラ11の電源オンの際に、即ち、起動時に開始される。
【0041】
次に、基準マスタ時刻Tmの設定方法について図2を参照して説明する。ここに図2は、実施形態に係る基準時刻を設定する際に使用されるテーブルを示す。
【0042】
マスタ時刻管理部12は、不図示のメモリを備える。図2において、そのメモリには、基準マスタ時刻Tmを設定するためのテーブル41が記憶されている。
【0043】
テーブル41には、「パラメータ名称」、「パラメータ(変数)」、及び「算出式」の三項目が設けられている。テーブル41について、「OS時刻」は、ホストコンピュータ21のOSが有する時刻を示すパラメータ「T0」である。「基準マスタ時刻差」は、OS時刻T0と基準マスタ時刻Tmとの時刻の差を示すパラメータ「Tm」(即ち、算出式「T0−Tm」で示される)である。「現在チックカウント値」は、マスタ時刻管理部12によって、起動時からカウントされている現在のチックカウント値を示すパラメータ「Tc」である。「基準チックカウント値」は、起動時から、前回の基準マスタ時刻Tmが更新されるまでのチックカウント値を示すパラメータ「Tr」である。「チックカウント値差」は、現在チックカウントTcと基準チックカウント値Trとのチックカウント値の差を示すパラメータ「Tcr」(即ち、算出式「Tc−Tr」で示される)である。及び「基準マスタ時刻」は、複数の搬送コントローラ2(2a,2b…2x)の各々に配信される時刻を示すパラメータ「Tm」であって、初回に、式(1)で示される。
Tm = T0 + Ts (1)
【0044】
基準マスタ時刻Tmは、二回目以降に、式(2)で示される。
Tm = 前回のTm + Tcr (2)
【0045】
マスタ時刻管理部12は、テーブル41に対して、上述したパラメータを記録又は更新すると共に、式(1)又は式(2)で設定された基準マスタ時刻Tmを、一定周期毎(例えば、4秒毎)に、複数の搬送コントローラ2の各々に配信する。
【0046】
図1において、複数の搬送コントローラ2は、一つ又は複数の作業装置を夫々含む複数の領域A(A1,A2…Ax)に夫々対応している。各搬送コントローラ2は、本発明に係る「副制御手段」の一例として、OHTの一部として機能し、対応される領域Aの内部に存在するビークル1を制御する。具体的には、搬送コントローラ2aは、搬送指示部20からの信号に基づいて、搬送すべきFOUPを搬送元で積載した後、積載されたFOUPを搬送先に搬送するように、ビークル1aに搬送を指示する(言い換えれば、ビークル1aの搬送制御を行う)。各搬送コントローラ2は、時刻管理部3(3a,3b…3x)を備える。
【0047】
時刻管理部3は、本発明に係る「自己時刻設定手段」、「時刻差取得手段」及び「更新手段」の一例として、自己が有する自己マスタ時刻Tmxを設定する。
【0048】
次に、自己マスタ時刻Tmxの設定方法について図3を参照して説明する。ここに図3は、実施形態に係る自己時刻を設定する際に使用されるテーブルを示す。
【0049】
時刻管理部3は、不図示のメモリを備える。図3において、そのメモリには、自己マスタ時刻Tmxを設定するためのテーブル42が記憶されている。
【0050】
テーブル42には、図2のテーブル41と同様に、「パラメータ名称」、「パラメータ(変数)」、及び「算出式」の三項目が設けられている。テーブル42について、「基準マスタ時刻」は、マスタ時刻管理部12により設定された基準マスタ時刻を示すパラメータ「Tm」である。「現在チックカウント値」は、時刻管理部3によって、起動時からカウントされている現在のチックカウント値を示すパラメータ「Tcx」である。「基準チックカウント値」は、起動時から、前回の自己マスタ時刻Tmxが更新されるまでのチックカウント値を示すパラメータ「Trx」である。「チックカウント値差」は、現在チックカウントTcxと基準チックカウント値Trxとのチックカウント値の差を示すパラメータ「Tcrx」(即ち、算出式「Tcx−Trx」で示される)である。及び「自己マスタ時刻」は、自己が有する時刻を示すパラメータ「Tmx」であって、式(3)で示される。
Tmx = 前回のTmx + Tcrx (3)
【0051】
時刻管理部3は、マスタ時刻管理部12からの基準マスタ時刻Tmを受信することに伴って、テーブル42に対して、上述したパラメータを記録又は更新する。各搬送コントローラ2は、式(3)で設定された自己マスタ時刻Tmxを基準として、ビークル1の各部を制御する。
【0052】
各搬送コントローラ2は、マスタ時刻管理部12からの基準マスタ時刻Tmと、自己マスタ時刻Tmxとを比較し、これら二値の時刻の差(以下、「二値の時刻差」と言う)を示すパラメータ「Tdef」(即ち、算出式「Tm−Tmx」で示される)を算出する。本実施形態では、各搬送コントローラ2は、算出される二値の時刻差Tdefに応じて、基準マスタ時刻に自己マスタ時刻を一致させるための各種時刻合わせ処理を行う。
【0053】
次に、時刻合わせ処理について説明する。各搬送コントローラ2は、式(4)に示すように、二値の時刻差Tdefが1秒以上大きい(即ち、自己マスタ時刻Tmxより基準マスタ時刻Tmが1秒以上早い)場合に、時刻合わせ処理として、式(5)に示すように、自己マスタ時刻Tmxを1秒進める。
Tm−Tmx ≧ 1 (4)
Tmx = 前回のTmx + 1 (5)
【0054】
また、式(6)に示すように、二値の時刻差Tdefが零より大きく且つ1秒より小さい(即ち、自己マスタ時刻Tmxより基準マスタ時刻Tmが零〜1秒早い)場合に、時刻合わせ処理として、式(7)に示すように、自己マスタ時刻Tmxを基準マスタ時刻Tmと一致させる。
0 > Tm− Tmx > 1 (6)
Tmx = Tm (7)
【0055】
また、式(8)に示すように、二値の時刻差Tdefが零より小さい(即ち、自己マスタ時刻Tmxより基準マスタ時刻Tmが遅い)場合に、時刻合わせ処理は行わない。その代わりに、自己マスタ時刻Tmxを、一時的に停止し、基準マスタ時刻Tmが自己マスタ時刻Tmxに追い付いた時に停止を解除する。
Tm−Tmx < 0 (8)
【0056】
(時刻管理処理)
次に、実施形態に係る時刻管理システムにおける時刻管理処理について図4を参照して説明する。ここに図4は、実施形態の時刻管理処理を示すフローチャートである。該時刻管理処理は、上述した時刻合わせ処理を含んでおり、搬送スケジュールに沿って、ビークル1の搬送制御が行われる間、一定周期毎に実行される。
【0057】
図4において、先ずマスタコントローラ11によって、基準マスタ時刻Tmが設定され、各搬送コントローラ2に配信される(ステップS51)。すると、各搬送コントローラ2によって、基準マスタ時刻Tmが受信されたか否かが判定される(ステップS52)。この判定により、基準マスタ時刻Tmが受信されない場合に(ステップS52:NO)、受信されるまで待機状態となる。
【0058】
一方、ステップS51の判定により、基準マスタ時刻Tmが受信された場合に(ステップS52:YES)、受信された基準マスタ時刻Tmと、自己マスタ時刻Tmxとの時刻差Tdefが算出される(ステップS53)。すると、算出された時刻差Tdefが1秒以上であるか否かが判定される(ステップS54)。この判定により、1秒以上である場合に(ステップS54:YES)、自己マスタ時刻Tmxに「1」が加算され、自己マスタ時刻Tmxが1秒進められる(ステップS55)。これにより、一連の時刻管理処理が終了される。
【0059】
一方、ステップS54の判定により、時刻差Tdefが1秒以上でない場合に(ステップS54:NO)、時刻差Tdefが零より大きく且つ1秒より小さいか否かが判定される(ステップS56)。この判定により、零より大きく1秒より小さい場合に(ステップS56:YES)、自己マスタ時刻Tmxが基準マスタ時刻Tmに一致され(ステップS57)、一連の時刻管理処理が終了される。
【0060】
一方、ステップS56の判定により、時刻差Tdefが零より小さい場合に、時刻差Tdefが零となるまで、自己マスタ時刻Tmxが停止状態となる(ステップS58)。これにより、一連の時刻管理処理が終了される。
【0061】
このように、本実施形態の時刻管理処理によれば、マスタコントローラ11で設定される基準マスタ時刻Tmに、複数の搬送コントローラ2の各々で設定される自己マスタ時刻Tmxが合わせられることによって、当該時刻管理システム100において、マスタコントローラ11及び複数の搬送コントローラ2間の時刻差を解消することが可能となる。また、基準マスタ時刻Tmに自己マスタ時刻Tmxが合わせられる際、基準マスタ時刻Tmに向けて自己マスタ時刻Tmxが段階的に進められることによって、複数の搬送コントローラ2の搬送制御に及ぶ影響を最小限に抑え、搬送スケジュールに沿った搬送を正常に行うことが可能となる。
【0062】
よって、特に、OS時刻である基準マスタ時刻Tmについて、例えばオペレータによる変更、サマータイムによる自動変更、RTC(Real Time Clock)による自動調整がなされた場合にも、実践的な意味で殆ど支障のないまま、通常動作に戻れる、或いは通常動作を継続できる。即ち、このような場合にも、搬送システムが停止されることを未然防止でき、例えばログデータ、統計データ等の制御パラメータを特定する情報についての正当性も確保できる。
【0063】
尚、本実施形態では、ビークル1の搬送制御を行うコントローラとして、領域A毎に、搬送コントローラ2が設定されているが、搬送コントローラ2を一切設定せずに、時刻管理部3を含む搬送コントローラ2の機能を、ビークル1のコントローラが備えてもよい。この場合に、マスタ時刻管理部12からビークル1へ、基準マスタ時刻Tmが直接に配信される。すると、その基準マスタ時刻Tmと、ビークル1側の自己マスタ時刻Tmxとの時刻差に応じて、ビークル1側の自己マスタ時刻Tmxが基準マスタ時刻Tmに段階的に合わせられることにより、搬送指示部10及びビークル1間の時刻差が解消される。
【0064】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う搬送システムの時刻管理システム及び方法、並びにコンピュータプログラムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施形態に係る時刻管理システムを適用した製造システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る基準時刻の設定に使用されるテーブルである。
【図3】実施形態に係る自己時刻の設定に使用されるテーブルである。
【図4】実施形態に係る時刻管理処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
2…搬送コントローラ、3…時刻管理部、11…マスタコントローラ、12…マスタ時刻管理部、100…時刻管理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主制御手段及び該主制御手段により管理される複数の副制御手段の各々のうち少なくとも一方が、複数の搬送手段を搬送させる際における搬送スケジュールを立てると共に、該立てられた搬送スケジュールに沿って前記複数の搬送手段の搬送制御を行う搬送システムにおいて、時刻を管理する時刻管理システムであって、
前記主制御手段側に設けられ、当該時刻管理システムにおいて基準となる基準時刻を設定すると共に、前記設定された基準時刻を所定周期毎に配信する基準時刻配信手段と、
前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記複数の副制御手段の各々が前記搬送制御を行う際に参照する自己時刻を設定する自己時刻設定手段と、
前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記配信された基準時刻及び前記設定された自己時刻間の時刻差を取得する時刻差取得手段と、
前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記取得された時刻差に応じて、前記設定された自己時刻を段階的に更新する更新手段と
を備えることを特徴とする搬送システムの時刻管理システム。
【請求項2】
前記主制御手段は、前記搬送スケジュールの少なくとも一部を立て、
前記基準時刻は、前記搬送スケジュールの少なくとも一部を立てる際の基準となる
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送システムの時刻管理システム。
【請求項3】
前記複数の副制御手段は、前記搬送スケジュールの少なくとも一部を立て、
前記自己時刻は、前記搬送スケジュールの少なくとも一部を立てる際の基準となる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送システムの時刻管理システム。
【請求項4】
前記更新手段は、前記取得された時刻差が所定の閾値より大きい場合に、前記取得された自己時刻を前記所定の閾値分進め、前記取得された時刻差が零より大きく且つ前記所定の閾値より小さい場合に、前記取得された自己時刻を前記配信された基準時刻と一致させ、前記取得された時刻差が零より小さい場合に前記自己時刻を停止させる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送システムの時刻管理システム。
【請求項5】
前記更新手段は、前記取得された時刻差が零より小さい場合に、前記配信された基準時刻が前記取得された自己時刻に追い付くまで前記自己時刻を停止させる
ことを特徴とする請求項4に記載の搬送システムの時刻管理システム。
【請求項6】
前記複数の副制御手段は、
複数のコンピュータに夫々設定されており、
前記複数のコンピュータの各々が起動されてから前記複数の副制御手段の各々が前記配信された基準時刻を受信するまでのカウント値を示す現在チックカウント値、及び前記複数のコンピュータの各々が起動されてから前記自己時刻が前回更新されるまでのカウント値を示す基準チックカウント値を特定し、前記特定された現在チックカウント値から前記基準チックカウント値を減算したチックカウント値差を取得するチックカウント値差取得手段を夫々備え、
前記設定された自己時刻は、前記取得されたチックカウント値差を含んでいる
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の搬送システムの時刻管理システム。
【請求項7】
主制御御手段及び該主制御手段により管理される複数の副制御手段の各々のうち少なくとも一方が、複数の搬送手段を搬送させる際における搬送スケジュールを立てると共に、該立てられた搬送スケジュールに沿って前記複数の搬送手段の搬送制御を行う搬送システムにおいて、時刻を管理する時刻管理方法であって、
前記主制御手段側に設けられ、当該時刻管理システムにおいて基準となる基準時刻を設定すると共に、前記設定された基準時刻を所定周期毎に配信する基準時刻配信工程と、
前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記複数の副制御手段の各々が前記搬送制御を行う際に参照する自己時刻を設定する自己時刻設定工程と、
前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記配信された基準時刻及び前記設定された自己時刻間の時刻差を取得する時刻差取得工程と、
前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記取得された時刻差に応じて、前記設定された自己時刻を段階的に更新する更新工程と
を備えることを特徴とする搬送システムの時刻管理方法。
【請求項8】
主制御御手段及び該主制御手段により管理される複数の副制御手段の各々のうち少なくとも一方が、複数の搬送手段を搬送させる際における搬送スケジュールを立てると共に、該立てられた搬送スケジュールに沿って前記複数の搬送手段の搬送制御を行う搬送システムにおいて、時刻を管理する時刻管理システムに備えられるコンピュータを、
前記主制御手段側に設けられ、当該時刻管理システムにおいて基準となる基準時刻を設定すると共に、前記設定された基準時刻を所定周期毎に配信する基準時刻配信手段と、
前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記複数の副制御手段の各々が前記搬送制御を行う際に参照する自己時刻を設定する自己時刻設定手段と、
前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記配信された基準時刻及び前記設定された自己時刻間の時刻差を取得する時刻差取得手段と、
前記複数の副制御手段の各々に設けられ、前記取得された時刻差に応じて、前記設定された自己時刻を段階的に更新する更新手段と
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−33402(P2010−33402A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195916(P2008−195916)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】